(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G01R15/20 C
(21)【出願番号】P 2022535469
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132626
(87)【国際公開番号】W WO2021129316
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】201911354406.9
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鄭 誠
(72)【発明者】
【氏名】張 巡宇
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-076396(JP,A)
【文献】特開2020-085544(JP,A)
【文献】特開2015-175757(JP,A)
【文献】特開2010-266290(JP,A)
【文献】特開2015-111080(JP,A)
【文献】特開2016-173306(JP,A)
【文献】特開平10-145910(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117170(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212678(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状のバスバと、前記バスバの各々に対応して配置され、各前記バスバに電流が流れるときに形成された磁界を検出する磁気検出部と、前記複数のバスバと一体に前記複数のバスバを保持するハウジングと、を備えた電流センサであって、
前記複数のバスバは第1方向に並んで配置されており、
前記複数のバスバの少なくとも一部のバスバは、前記第1方向に延設された第1の導体部と、前記第1の導体部の一端と連なり、前記第1方向と交差する第2方向に延設された第2の導体部と、前記第1の導体部の他端と連なり、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延設された第3の導体部と、を有し、
前記第1の導体部の前記第1方向に延びている寸法を前記第1の導体部の長さとし、前記第1の導体部の前記第2方向における寸法を前記第1の導体部の幅とし、前記第1の導体部の前記第3方向における寸法を前記第1の導体部の厚さとし、
前記少なくとも一部のバスバは、前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きく、かつ前記第1方向に隣り合う第1のバスバ及び第2のバスバを含み、前記第3方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、第2方向上で一定の距離を隔てており、
前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きい複数のバスバのいずれか1つを基準バスバとし、当該基準バスバに対して前記第1方向両側に配置されたバスバを比較バスバとすると、
前記基準バスバの第1の導体部に対して、2つの前記比較バスバの第1の導体部は共に前記第2方向における同じ側に配置されていることを
特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記第2方向において、2つの前記比較バスバの第1の導体部と前記基準バスバの第1の導体部との間の距離は同一であることを特徴とする
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
複数の板状のバスバと、前記バスバの各々に対応して配置され、各前記バスバに電流が流れるときに形成された磁界を検出する磁気検出部と、前記複数のバスバと一体に前記複数のバスバを保持するハウジングと、を備えた電流センサであって、
前記複数のバスバは第1方向に並んで配置されており、
前記複数のバスバの少なくとも一部のバスバは、前記第1方向に延設された第1の導体部と、前記第1の導体部の一端と連なり、前記第1方向と交差する第2方向に延設された第2の導体部と、前記第1の導体部の他端と連なり、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延設された第3の導体部と、を有し、
前記第1の導体部の前記第1方向に延びている寸法を前記第1の導体部の長さとし、前記第1の導体部の前記第2方向における寸法を前記第1の導体部の幅とし、前記第1の導体部の前記第3方向における寸法を前記第1の導体部の厚さとし、
前記少なくとも一部のバスバは、前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きく、かつ前記第1方向に隣り合う第1のバスバ及び第2のバスバを含み、前記第3方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、第2方向上で一定の距離を隔てており、
前記第2方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、前記第3方向上で一定の距離を隔てていることを
特徴とする電流センサ。
【請求項4】
複数の板状のバスバと、前記バスバの各々に対応して配置され、各前記バスバに電流が流れるときに形成された磁界を検出する磁気検出部と、前記複数のバスバと一体に前記複数のバスバを保持するハウジングと、を備えた電流センサであって、
前記複数のバスバは第1方向に並んで配置されており、
前記複数のバスバの少なくとも一部のバスバは、前記第1方向に延設された第1の導体部と、前記第1の導体部の一端と連なり、前記第1方向と交差する第2方向に延設された第2の導体部と、前記第1の導体部の他端
から前記第2の方向に延在することなく連なり、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延設された第3の導体部と、を有し、
前記第1の導体部の前記第1方向に延びている寸法を前記第1の導体部の長さとし、前記第1の導体部の前記第2方向における寸法を前記第1の導体部の幅とし、前記第1の導体部の前記第3方向における寸法を前記第1の導体部の厚さとし、
前記少なくとも一部のバスバは、前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きく、かつ前記第1方向に隣り合う第1のバスバ及び第2のバスバを含み、前記第3方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、第2方向上で一定の距離を隔てていることを特徴とする電流センサ。
【請求項5】
前記第1方向は、前記電流センサの長さ方向であり、
前記第2方向は、前記電流センサの前記長さ方向に直交する幅方向であり、
前記第3方向は、前記電流センサの前記長さ方向及び前記幅方向に直交する高さ方向であることを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第2方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、一部重なっていることを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とが一部重なった部分は、各前記第1の導体部のうち、前記第2の導体部寄りの部分又は前記第3の導体部寄りの部分であることを特徴とする請求項6に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記複数のバスバは、更に、前記第2の導体部と接続する第4の導体部、及び、前記第4の導体部と接続する、第1の外部部品に接続可能な第1の接続端子部を有し、
前記第3の導体部は、第2の外部部品に接続可能な第2の接続端子部を有することを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータの複数のバスバに流れる電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の駆動部分の主な部品の1つとして、インバータは、自動車のメインモータを制御して自動車に動力を提供するためことに用いられる。現在の電気自動車は航続距離を延ばすために、限られたスペース及び重量内により多くの電気エネルギーを貯蔵することが望ましいため、電池及びインバータのエネルギー密度を向上させ、更に小型化及び軽量化を実現することが急務となっている。
【0003】
また、現行の設計では、複数のバスバ(busbar)を用いてインバータとモータとを接続しており、インバータの出力を検出する必要があるため、それぞれのバスバに流れる電流を検出する電流センサが設けられている。このような電流センサには複数のバスバが含まれるほか、それぞれのバスバに流れる電流を検出する検出部も含まれる。
【0004】
電気自動車の駆動部分の小型化及び軽量化を図るために、インバータとモータとを一体化して設計する傾向があるため、インバータとモータとを接続するための電流センサの寸法をより小さく設計する必要がある。
【0005】
バスバは通常、長尺状の金属板で構成され、複数のバスバが電流センサに一方向に並んで設けられる場合、それぞれのバスバの両端が電流センサの外部に露出し、それぞれのバスバの中央一端の接続部分が電流センサの内部に位置し、かつ当該接続部分の金属板の面が互いに平行かつ同一方向を向いて電流センサに配置されている。
【0006】
電流センサを小型化するためには、互いに平行な上記各接続部分間のピッチ(pitch)を可能な限り小さくすることが考えられる。しかしながら、配列するバスバの数が増えると、上記接続部分の長さが長くなり、インサート成形時に長い接続部分が液体樹脂の充填圧力を受けて撓むおそれがあるため、個々のバスバの上記接続部分同士が接触して短絡するリスクが存在する。
【0007】
個々のバスバ同士が接触して短絡することを防止する方法の1つとして、上記接続部分を複数のバスバの配列方向に直交する方向に順にずらして少なくとも一部が重ならないようにし、かつインサート成形金型に位置決めピンを設けて成形過程で個々のバスバの上記接続部分を押さえることが考えられるが、このようにすると、電流センサの配列方向に直交する方向の寸法が大きくなるだけでなく、インサート成形金型が複雑になり、金型の加工難易度が高くなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、バスバ間の短絡の発生を抑制することができる電流センサを提供する。
【0009】
本発明の電流センサは、複数の板状のバスバと、前記バスバの各々に対応して配置され、各前記バスバに電流が流れるときに形成された磁界を検出する磁気検出部と、前記複数のバスバと一体に前記複数のバスバを保持するハウジングと、を備えた電流センサであって、前記複数のバスバは第1方向に並んで配置されており、前記複数のバスバの少なくとも一部のバスバは、前記第1方向に延設された第1の導体部と、前記第1の導体部の一端と連なり、前記第1方向と交差する第2方向に延設された第2の導体部と、前記第1の導体部の他端と連なり、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延設された第3の導体部と、を有し、前記第1の導体部の前記第1方向に延びている寸法を前記第1の導体部の長さとし、前記第1の導体部の前記第2方向における寸法を前記第1の導体部の幅とし、前記第1の導体部の第3方向における寸法を前記第1の導体部の厚さとし、前記少なくとも一部のバスバは、前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きく、かつ前記第1方向に隣り合う第1のバスバ及び第2のバスバを含み、前記第3方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、第2方向上で一定の距離を隔てていることを特徴とする。
【0010】
ハウジングにバスバをインサート成形するとき、第2の導体部及び第3の導体部はそれぞれ第3方向両側に寄せられ、インサート成形時に図示していない金型に保持されやすくなっているため、流動する樹脂からの充填圧力を受けても撓みにくい。しかし、第3方向において中央に位置する第1の導体部は通常、金型に保持されないか、又は第1の導体部の一部のみが金型に保持され得る。当該状態では、第1の導体部の幅が厚さよりも大きいバスバは、第1の導体部の第3方向をそれぞれ向く2つの面の表面積が大きく、この2つの面が樹脂の充填圧力によって第3方向に撓みやすい。
【0011】
このような電流センサによれば、バスバの隣り合う2つの第1の導体部が第2方向に重ならず、かつ一定の距離を隔てて構成されることにより、隣り合う2つの第1の導体部の第3方向における絶縁距離が十分に大きくなり、いずれかの第1の導体部が第3方向に撓んでも第1の導体部が第3方向に揺動して短絡することを抑制することができる。そして、上記構造によって十分な絶縁距離が確保されるため、インサート成形金型における位置決めピンの設置数を減らすことができ、金型の加工難易度を下げることができる。
【0012】
また、上記電流センサにおいて、前記第1方向は前記電流センサの長さ方向であり、前記第2方向は前記電流センサの前記長さ方向に直交する幅方向であり、前記第3方向は前記電流センサの前記長さ方向及び前記幅方向に直交する高さ方向である。
【0013】
このような電流センサによれば、第1方向が電流センサの長さ方向であるため、第1方向に延びているバスバの第1の導体部においてスパンが長い場合があり、より撓みやすくなる。本発明の構造によって、スパンが長い第1の導体部が撓んでも短絡の発生を抑制することができる。
【0014】
また、上記電流センサでは、前記第1の導体部の前記幅が前記厚さよりも大きい複数のバスバのいずれか1つを基準バスバとし、当該基準バスバに対して前記第1方向両側に配置されたバスバを比較バスバとしたとき、前記基準バスバの第1の導体部に対して、2つの前記比較バスバの第1の導体部が共に前記第2方向における同じ側に配置されている。
【0015】
このような電流センサによれば、比較バスバの第1の導体部を第2方向における異なる側にそれぞれ配置すると、バスバの数が増加するにつれて、電流センサの第2方向における寸法がますます大きくなる。本実施形態の電流センサによれば、比較バスバの第1の導体部を第2方向における異なる側にそれぞれ配置する場合と比べて、電流センサの第2方向における寸法を大幅に小さくすることができる。
【0016】
また、上記電流センサでは、前記第2方向において、2つの前記比較バスバの第1の導体部と前記基準バスバの第1の導体部との間の距離が同一である。
【0017】
このような電流センサによれば、2つの比較バスバの第1の導体部と基準バスバの第1の導体部との間の距離が異なる場合と比べて、2つの比較バスバの第1の導体部と基準バスバの第1の導体部との間の距離が同一である場合の方が、電流センサの第2方向における寸法をより小さくすることができる。
【0018】
また、上記電流センサでは、前記第2方向から見て、前記第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、前記第3方向上で一定の距離を隔てている。
【0019】
このような電流センサによれば、バスバのうち第1方向に隣り合う任意の2つのバスバについては、2つの第1の導体部が第3方向上で一定の距離を隔てており、第1の導体部の第2方向における撓みによる短絡をより防止することができる。
【0020】
また、上記電流センサでは、前記複数のバスバは、更に、前記第2の導体部と接続する第4の導体部、及び、前記第4の導体部と接続する、第1の外部部品に接続可能な第1の接続端子部を有し、前記第3の導体部は、第2の外部部品に接続可能な第2の接続端子部を有する。第1の外部部品は、例えば、電気自動車のインバータである。第2の外部部品は、例えば、電気自動車のモータである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る電流センサの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る電流センサの分解斜視図である。
【
図3】電流センサにおけるハウジング及びバスバの分解斜視図である。
【
図7】変形例1の電流センサにおけるバスバの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の電流センサの第1実施形態として、
図1~
図3を参照しながら電流センサ100の全体構造について説明する。
【0023】
図面において、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を使用して各部分の配置及び構成を説明する。X1-X2方向を電流センサの長さ方向とし、Y1-Y2方向を電流センサの幅方向とし、Z1-Z2方向を電流センサの高さ方向として説明する。
【0024】
図1は第1実施形態に係る電流センサ100の斜視図である。
図2は第1実施形態に係る電流センサ100の分解斜視図である。
図3は電流センサ100におけるハウジング101及びバスバ102~112の分解斜視図である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、電流センサ100の外形は略直方体状であり、ハウジング101、複数のバスバ102~112、電流検出部材113、カバー114及び2つの出力部材115を有している。
【0026】
図2に示すように、ハウジング101は複数のバスバ102~112とインサート成形によって一体に形成され、複数のバスバ102~112を保持している。ハウジング101は合成樹脂で構成され、複数のバスバ102~112は長尺状の金属板で構成されている。また、複数のバスバ102~112は互いに独立しており(
図3参照)、電流センサ101の長さ方向(X1-X2方向)に順に並んで配置されている。各バスバ102~112の具体的な構造については後述する。
【0027】
図2に示すように、電流検出部材113は回路基板本体120及び検出素子121を含む。回路基板本体120はプリント基板(PCB)で構成されている。複数の検出素子121は、X1-X2方向に一定の距離を隔てて回路基板本体120に設けられている。磁気検出部としての複数の検出素子121はバスバ102~112に対応して配置され、各バスバ102~112に電流が流れるときに形成された磁界を検出することにより、電流の大きさを検出する。
【0028】
各バスバに流れる電流の特性の違いによって、
図2に示すように、バスバ102~110にそれぞれ対応する検出素子121は1つであり、バスバ111、112にそれぞれ対応する検出素子121は2つである。
【0029】
また、カバー114は合成樹脂で構成されている。図示しているが、ハウジング101及びカバー114の検出素子121に対応する位置にそれぞれ磁気シールド部材が内蔵されており、各磁気シールド部材は、例えば、ケイ素鋼等の磁気シールド可能な材料で角形薄板状に形成されている。
【0030】
また、各出力部材115は10本の金属出力端子122を有し、出力端子122は各検出素子121によって検出された電流値をインバータ(図示せず)に出力することに用いられる。
【0031】
図1に示す状態では、ハウジング101、電流検出部材113及びカバー114は複数のねじ123(
図2参照)によって一体に組み付けられている。このとき、出力端子115はハウジング101に組み付けられ、そして、複数の出力端子122は回路基板本体120の複数の金属孔124にそれぞれ挿入されている。当該複数の金属孔124は図示していない配線を介して複数の検出素子121にそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
以下、
図3~6を参照して、電流センサ100におけるバスバ102~112の構造について詳細に説明する。
【0033】
まず、
図3におけるX1の一端に位置するバスバ112を例に、バスバ102~112の概略構造について説明する。
【0034】
バスバ112は少なくとも、X1-X2方向に延設された第1の導体部112aと、第1の導体部112aの一端(X1側に位置する一端)と連なり、Y1-Y2方向に延設された第2の導体部112bと、第1の導体部112aの他端(X2側に位置する一端)と連なり、Z1-Z2方向に延設された第3の導体部112cと、を有する。
【0035】
また、バスバ112は、更に、第2の導体部112bと接続し、Z1-Z2方向に延びている第4の導体部112dと、当該第4の導体部112dと接続し、Y1-Y2方向に延びている第1の接続端子部112eと、を有する。
【0036】
第1の接続端子部112eは図示していない電気自動車のインバータ(第1の外部部品)に接続することに用いられる。第1の接続端子部112eとインバータとの電気的接続方式は、例えばボルト接続であってもよい。
【0037】
また、第3の導体部112cは電気自動車のモータ(第2の外部部品)と接続する第2の接続端子部112fを有する。第2の接続端子部112fとモータとの電気的接続方式は、例えば溶接である。
【0038】
また、
図3に示すように、各バスバ102~112は板状である。説明の便宜上、バスバ102~112の第1の導体部102a~112aのX1-X2方向に延びている寸法を第1の導体部102a~112aの長さとし、第1の導体部102a~112aのY1-Y2方向における寸法を第1の導体部102a~112aの幅とし、第1の導体部102a~112aのZ1-Z2方向における寸法を第1の導体部102a~112aの厚さとする。
【0039】
図4は電流センサ100におけるバスバ102~112の正面図である。
図5は電流センサ100におけるバスバ102~112の下面図である。
図6は
図4のA1-A2線に沿った断面図である。
図6には各バスバ102~112の第1の接続端子部102e~112eの一部が示されていないため、各第1の導体部102a~112aの形状が
図5よりもはっきりと見える。
【0040】
複数のバスバ102~112の形状はそれぞれ異なっている。
図4及び
図6に示すように、バスバ102~105、109~112の第1の導体部102a~105a、109a~112aの幅w(
図6参照)は厚さT(
図4参照)よりも大きく、バスバ106、107の第1の導体部106a、107aの幅wは厚さTよりも小さい。すなわち、複数のバスバ102~112において、少なくとも、幅wが厚さTよりも大きくかつX1-X2方向に隣り合うバスバ102~105と、幅Wが厚さTよりも大きくかつX1-X2方向に隣り合うバスバ109~112とを含む。
【0041】
そして、バスバ102~105、109~112のうちのX1-X2方向に隣り合う2つのバスバを第1のバスバと第2のバスバとに分けた場合、Z1-Z2方向から見て、
図6に示すように、第1のバスバの第1の導体部と第2のバスバの第1の導体部とは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てている。
【0042】
具体的には、バスバ102の第1の導体部102aとバスバ103の第1の導体部103aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てており、バスバ103の第1の導体部103aとバスバ104の第1の導体部104aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てており、バスバ104の第1の導体部104aとバスバ105の第1の導体部105aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てており、バスバ109の第1の導体部109aとバスバ110の第1の導体部110aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てており、バスバ110の第1の導体部110aとバスバ111の第1の導体部111aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てており、バスバ111の第1の導体部111aとバスバ112の第1の導体部112aとは、Y1-Y2方向上で一定の距離を隔てている。
【0043】
また、第1の導体部の幅Wが厚さTよりも大きいバスバ102~105、109~112のいずれか1つを基準バスバとし、当該基準バスバに対してX1-X2方向両側に配置されたバスバを比較バスバとしたとき、基準バスバの第1の導体部に対して、2つの比較バスバの第1の導体部が共にY1-Y2方向における同じ側に配置されている。
【0044】
例えば、
図6において、バスバ103を基準バスバとし、かつバスバ102及びバスバ104を比較バスバとしたとき、バスバ103の第1の導体部103aに対して、バスバ102の第1の導体部102a及びバスバ104の第1の導体部104aは共にY1-Y2方向における同じ側に配置されている。すなわち、第1の導体部102a及び第1の導体部104aはいずれも第1の導体部103aのY2方向側に配置されている。
【0045】
換言すると、X1-X2方向において、バスバ102の第1の導体部102a及びバスバ104の第1の導体部104aはバスバ103の第1の導体部103aの両側(X2方向側及びX1方向側)にそれぞれ配置されているが、Y1-Y2方向において、バスバ102の第1の導体部102a及びバスバ104の第1の導体部104aはバスバ103の第1の導体部103aの両側(Y1方向側及びY2方向側)にそれぞれ配置されておらず、同じ側(Y2方向側)に配置されている。
【0046】
また、本実施形態では、Y1-Y2方向において、2つの比較バスバの第1の導体部と基準バスバの第1の導体部との間の距離が同一に設定されている。例えば、
図6に示すように、Y1-Y2方向において、バスバ102の第1の導体部102aとバスバ103の第1の導体部103aとの間の距離はピッチS1である。そして、Y1-Y2方向において、バスバ102、104、110、112とバスバ103、105、109、111との間の距離はいずれもピッチS1である。
【0047】
また、上記のように、バスバ102~105、109~112のうちのX1-X2方向に隣り合う2つのバスバを第1のバスバと第2のバスバとに分けた場合、
図4に示すように、Y1-Y2方向から見て、第1のバスバの第1の導体部と前記第2のバスバの第1の導体部とは、Z1-Z2方向上で一定の距離を隔てている。本実施形態では、バスバ102~105、109~112のうちのX1-X2方向に隣り合う任意2つのバスバは、2つの第1の導体部がZ1-Z2方向に離れている距離がピッチS2である。
【0048】
また、
図6に示すように、Z1-Z2方向から見て、一部のバスバの第1の導体部(例えば、第1の導体部102a)が、隣り合うバスバの第2の導体部(例えば、第2の導体部103b)と重なるが、第2の導体部のY1-Y2方向における延伸長さ(スパン)が小さいため、インサート成形時に樹脂の充填圧力による撓みが生じにくい。
【0049】
また、バスバ106、バスバ107及びバスバ108はX1-X2方向の中央部に位置するため、第1の導体部106a~108a及び第2の導体部106b~108bの形状が他のバスバと異なる。
【0050】
バスバ106の第1の導体部106aは、厚さ方向(Z1-Z2方向)における寸法(
図4参照)が幅方向(Y1-Y2方向)における寸法(
図6参照)よりも大きく形成されている。そして、
図4及び
図6に示すように、バスバ106の第1の導体部106aの一端は第4の導体部106dと連なり、第1の導体部106aの他端は第2の導体部106bと連なり、更に第2の導体部106bは第3の導体部106cと連なっている。
【0051】
また、バスバ107の第1の導体部107a及びバスバ108の第1の導体部108aは、幅方向における寸法(
図6参照)が厚さ方向における寸法(
図4参照)よりも大きく形成されているが、X1-X2方向に延びている距離は短い。バスバ106、バスバ107及びバスバ108のようなバスバは、インサート成形時に樹脂の充填圧力による撓みが生じにくい。
【0052】
以下、第1実施形態の技術的効果について説明する。
【0053】
ハウジング101にバスバ102~112をインサート成形するとき、第2の導体部102b~112b及び第3の導体部102b~112bはそれぞれZ1方向側及びZ2方向側に寄せられており、インサート成形時に図示していない金型に保持されやすくなっているため、流動する樹脂からの充填圧力を受けても撓みにくい。しかし、Z1-Z2方向において中央に位置する第1の導体部102a~112aは通常、金型に保持されないか、又は第1の導体部102a~112aの一部のみが金型に保持され得る。当該状態では、第1の導体部の幅Wが厚さTよりも大きいバスバ102~105、109~112は、第1の導体部102a~105a、109a~112aのZ1方向及びZ2方向をそれぞれ向く2つの面(すなわち、
図6における紙面に平行な2つの面)の表面積が大きく、この2つの面が樹脂の充填圧力によってZ1-Z2方向に撓みやすい。
【0054】
本実施形態の電流センサ100によれば、バスバ102~105、109~112の隣り合う2つの第1の導体部がY1-Y2方向に重ならず、かつ一定の距離を隔てて構成されることにより、隣り合う2つの第1の導体部のZ1-Z2方向における絶縁距離が十分に大きくなり、いずれかの第1の導体部がZ1-Z2方向に撓んでも第1の導体部102a~105a、109a~112aがZ1-Z2に揺動して短絡することを抑制することができる。そして、上記構造によって十分な絶縁距離が確保されるため、インサート成形金型における位置決めピンの設置数を減らすことができ、金型の加工難易度を下げることができる。本実施形態では、基準絶縁距離が2mmに設定された場合、隣り合う2つの第1の導体部のZ1-Z2方向における絶縁距離は5mm程度である。
【0055】
また、本実施形態の電流センサ100によれば、第1方向が電流センサの長さ方向(すなわち、X1-X2方向)であるため、第1方向に延びているバスバ102~105、109~112の第1の導体部102a~105a、109a~112aにおいてスパンが長い場合(例えば、本実施形態の第1の導体部102a~104a、109a~112a)があり、より撓みやすくなる。本発明の構造によって、スパンが長い第1の導体部(例えば、本実施形態の第1の導体部102a~104a、109a~112a)が撓んでも短絡の発生を抑制することができる。
【0056】
また、比較バスバの第1の導体部を第2方向における異なる側にそれぞれ配置すると、バスバの数が増加するにつれて、電流センサ100のY1-Y2方向における寸法がますます大きくなる。本実施形態の電流センサ100によれば、比較バスバの第1の導体部をY1-Y2方向における異なる側にそれぞれ配置する場合と比べて、電流センサ100のY1-Y2方向における寸法を大幅に小さくすることができる。
【0057】
また、本実施形態の電流センサ100によれば、2つの比較バスバの第1の導体部と基準バスバの第1の導体部との間の距離が異なる場合と比べて、
図6に示すように、2つの比較バスバの第1の導体部と基準バスバの第1の導体部との間の距離が同一である(ピッチS1)場合の方が、電流センサ100のY1-Y2方向における寸法をより小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態の電流センサ100によれば、バスバ102~105、109~112のうちのX1-X2方向に隣り合う任意2つのバスバについて、
図4に示すように、2つの第1の導体部がZ1-Z2方向上で一定の距離(ピッチS2)を隔てており、第1の導体部102a~105a、109a~112aのY1-Y2方向における撓みによる短絡をより防止することができる。
【0059】
(変形例1)
上記の第1実施形態では、Y1-Y2方向から見て、X1-X2方向に隣り合う2つのバスバのうちの第1のバスバの第1の導体部と第2のバスバの第1の導体部とが一定の距離を隔てている場合を示しているが、本発明はこれに限定されない。変形例1では、隣り合う2つのバスバのうちの第1のバスバの第1の導体部と第2のバスバの第1の導体部とが一部重なっている場合を示している。以下、第1実施形態と異なる内容についてのみ説明する。
【0060】
図7は変形例1の電流センサ100の複数のバスバの正面図である。変形例1のバスバ111’及びバスバ112’はZ1-Z2方向における配置位置が第1実施形態と異なる。
【0061】
図4では、X1-X2方向に隣り合うバスバ110の第1の導体部110aとバスバ111の第1の導体部111aとの間は一定の距離を隔てているが、
図7では、X1-X2方向に隣り合うバスバ110の第1の導体部110aとバスバ111’の第1の導体部111a’とが一部重なっている。
【0062】
具体的には、バスバ110の第1の導体部110aの、第2の導体部110b側寄りの一部と、バスバ111’の第1の導体部111a’の、第3の導体部111c’側寄りの一部とが重なっている。
【0063】
変形例1の第1の導体部110a及び第1の導体部111a’は、いずれも幅Wが厚さTよりも大きい板状に形成されているため、第1の導体部110a及び第1の導体部111a’のY1-Y2方向における撓み程度が、Z1-Z2方向における撓み程度よりも小さく、Y1-Y2方向から見て、バスバ110とバスバ111’とが一部重なっていても短絡が発生しにくい。このような一部重なっている構造によって、電流センサ100のZ1-Z2方向における寸法をより小さくすることができる。換言すると、変形例1の各バスバのZ1-Z2方向における全体寸法が、第1実施形態の各バスバのZ1-Z2方向における全体寸法よりも小さくなるように一定程度小さく設計されてもよい。
【0064】
また、バスバ110の第1の導体部110aとバスバ111’の第1の導体部111a’とが一部重なる部分は、好ましくは、それぞれの第1の導体部のうち、第2の導体部寄りの部分又は第3の導体部寄りの部分である。それぞれの第1の導体部の中央寄りの部分よりも、第1の導体部の第2の導体部又は前記第3の導体部寄りの部分の方が、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向における撓み程度がいずれも小さいため、このような箇所では短絡が発生しにくい。
【0065】
各第1の導体部の形状によれば、第1の導体部のZ1-Z2方向における撓みは、X1-X2方向における中央側に近いほど大きくなり、X1-X2方向における両端に近いほど小さくなる。従って、
図7に示すように、バスバ110の第1の導体部110aの、第2の導体部110b(
図6参照)側寄りの一部と、バスバ112’の第1の導体部112a’の、第3の導体部112c’側寄りの一部とがZ1-Z2方向に対向しているが、対向している部分はそれぞれの第1の導体部の撓み程度が小さい部分であるため、バスバ110とバスバ112’との間も短絡が発生しにくい。
【0066】
(他の変形例)
上記の第1実施形態は好ましい例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。例えば、上記の第1実施形態に対して、当業者は構成要素の追加、削除、設計変更を適宜行い、各実施形態の特徴を適宜組み合わせることができ、本発明の技術的思想を備えている限り、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0067】
第1実施形態の各バスバ102~112の形状は一例に過ぎず、各バスバの異なる設置位置、機能によって適宜変更することができる。
【0068】
また、上記の第1実施形態では、2つの比較バスバの第1の導体部と前記基準バスバの第1の導体部との間のY1-Y2方向における距離(ピッチS1)が同一である場合を示したが、2つの比較バスバの第1の導体部と前記基準バスバの第1の導体部との間のY1-Y2方向における距離が異なってもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 電流センサ
101 ハウジング
102~112 バスバ
102a~112a 第1の導体部
102b~112b 第2の導体部
102c~112c 第3の導体部
102d~112d 第4の導体部
102e~112e 第1の接続端子部
102f~112f 第2の接続端子部
113 電流検出部材
114 カバー
115 出力部材
120 回路基板本体
121 検出素子
122 出力端子
123 ねじ
124 金属孔
X1-X2方向 電流センサ100の長さ方向(第1方向)
Y1-Y2方向 電流センサ100の幅方向(第2方向)
Z1-Z2方向 電流センサ100の高さ方向(第3方向)