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特許7356592微細な析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】微細な析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/62 20060101AFI20230927BHJP
   C04B 35/01 20060101ALI20230927BHJP
   G21C 21/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G21C3/62 700
C04B35/01
G21C21/02 100
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022535912
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2020001899
(87)【国際公開番号】W WO2021137350
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178096
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516343608
【氏名又は名称】ケプコ ニュークリア フューエル カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】242,Daedeok-daero 989beon-gil Yuseong-gu Daejeon 34057,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナ,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】イム,カン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,テ シク
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ミン チェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン チェ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-001594(JP,A)
【文献】特表2006-504086(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226240(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第2000-0033456(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1652729(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/62
C04B 35/01
G21C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウラン(U)、プルトニウム(Pu)及びトリウム(Th)よりなる群から少なくとも1種が添加された酸化物で製造された核燃料焼結体であって、
前記核燃料焼結体の内部組織は、焼結過程で焼結添加剤から発生した析出物を含み、前記析出物は、円周方向に均一に分散し、
前記焼結添加剤は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、酸化物核燃料焼結体。
【請求項2】
前記析出物は、ドーナツ状の二次元析出物群集をなすことを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項3】
前記析出物が結晶粒界に沿って配置されることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項4】
前記析出物は、3~30μmの長さ及び1~10μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項5】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項6】
前記二酸化チタン(TiO)の含有量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%であることを特徴とする、請求項に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項7】
前記焼結添加剤の添加量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.5~10.0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項8】
金属アルミニウム(Al)粉末をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項9】
前記金属アルミニウム粉末は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.01~0.10重量%で含まれることを特徴とする、請求項8に記載の酸化物核燃料焼結体。
【請求項10】
微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体を製造する方法において、
ウラン(U)、プルトニウム(Pu)及びトリウム(Th)よりなる群から選択された少なくとも1種を含む酸化物粉末と、焼結添加剤粉末とを混合して混合粉末を製造するステップ(ステップ1)と、
前記混合粉末を予備圧粉及び破砕した後、篩過して顆粒化粉末を製造するステップ(ステップ2)と、
前記顆粒化粉末を300~500MPaの一軸加圧で核燃料成形体に製造するステップ(ステップ3)と、
製造された核燃料成形体を約700~1100℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で一次焼結するステップ(ステップ4)と、
一次焼結の完了後、連続的に1700~1800℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で二次焼結するステップ(ステップ5)と、を含み、
前記焼結添加剤粉末は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項11】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項12】
添加される二酸化チタン(TiO)の含有量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%であることを特徴とする、請求項11に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項13】
金属アルミニウム(Al)粉末をさらに添加することを特徴とする、請求項11に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項14】
前記一次焼結ステップは、1~10℃/minの加熱速度で加熱して300~1100℃の条件で30~120分間焼結して焼結添加剤を液相状態に維持させることを特徴とする、請求項10に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項15】
前記二次焼結ステップでは、一次焼結ステップの完了後、冷却なしに1~10℃/minの加熱速度にて1700~1800℃の条件で60~240分間焼結して液相状態の焼結添加剤が微細な板状型の析出物として酸化物核燃料焼結体の結晶粒成長と共に円周方向に均質に配置される、請求項10に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項16】
前記焼結添加剤粉末が酸化銅(I)(CuO)又は酸化銅(II)(CuO)である場合、一次焼結ステップ(ステップ4)の焼結温度は300~500℃であり、焼結時間は30~120分であることを特徴とする、請求項14に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項17】
前記水素含有還元性ガスは、二酸化炭素、窒素、アルゴン及びヘリウムガスよりなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項10に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【請求項18】
前記水素含有還元性ガスは、単一の水素ガスからなることを特徴とする、請求項10に記載の酸化物核燃料焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の核燃料として用いられる二酸化ウラン焼結体の基地内に、微細な板状型の析出物を核燃料焼結体組織内に均一に析出させてドーナツ状の析出物群集を成して分散させた酸化物核燃料焼結体及びその製造方法に係り、具体的には、二酸化ウラン核燃料焼結体の熱的及び物理的性能を向上させるために、微細な板状型の析出物を核燃料焼結体組織内に均一に析出させるか、或いはドーナツ状の二次元構造の析出物群集をなして分散させることにより、二酸化ウラン核燃料焼結体の低いクリープ変形率及び熱伝導度特性による安全性の低下を焼結体の高いクリープ変形率及び熱伝導度を向上させ、事故の際に焼結体-被覆管の相互作用(Pellet-Clad Interaction)損傷及び核燃料中心温度を低減させて原子炉の安全性を大幅に向上させることができる酸化物核燃料焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電は、核分裂によって発生する熱を利用するもので、核燃料物質である二酸化ウランからなる焼結体が装入された燃料棒を数百個ずつ一束に束ねて核燃料集合体を製造する。このような核燃料集合体は、加圧軽水炉及び加圧重水炉型原子炉の炉心に装填されて使用され、焼結体での核分裂による熱を、焼結体を経て被覆管を介して、燃料棒の周囲を流れる冷却水に伝達させる。原子力発電所の熱源である焼結体は、ウラン、プルトニウム、トリウムなどの酸化物又は混合物質を成形及び焼結して円筒状の焼結体に製造される。現在、全世界の商業用原子力発電所の核燃料焼結体として二酸化ウランが使用されている。
【0003】
このようなウラン酸化物焼結体は、ウラン酸化物粉末を出発物質として潤滑剤などを添加及び混合し、約1トン(ton)/cmの圧力で予備成形してスラグを製造し、前記スラグを破砕して顆粒を製造する。製造された顆粒に潤滑剤を添加及び混合して一軸加圧成形した後、成形体を水素含有ガス雰囲気中で~1780℃の焼結温度で焼結して焼結体を製造する。このとき、前記工程で製造されたウラン酸化物焼結体は、通常、円筒形であり、密度が理論密度の約95%を満足する。
【0004】
また、(U、Pu)O、(U、Th)O焼結体は、プルトニウム酸化物又はトリウム酸化物粉末をウラン酸化物粉末に混合した後、ウラン酸化物の製造方法と同様の方法で製造され、可燃性吸収体核燃料である(U、Gd)O焼結体は、ガドリニア酸化物粉末をウラン酸化物粉末に混合した後、ウラン酸化物の製造方法と類似の方法で製造することができる。
【0005】
一方、商業用原子力発電所の核燃料である二酸化ウラン(UO)は、溶融点が約2850℃と非常に高く、冷却水との反応が非常に小さいため、現在まで核燃料として広く使用されている。しかし、二酸化ウランは、原子力発電所の運転温度範囲で熱伝導度が約2~3W/mKと非常に低く、結晶粒径が小さくて核分裂ガス放出率及び焼結体-被覆管の相互作用による燃料棒の破断現象を促進することができる。特に、二酸化ウランの低い熱伝導度特性は、核分裂によって生成される熱が冷却水まで容易に熱伝達されなければ、焼結体が冷却水よりも非常に高い温度を有し、焼結体の中心温度は高くなり、焼結体の大きな温度勾配が発生する。このような熱的特性のため、温度に依存する全ての反応は加速化され、材料の性能は顕著な低下が発生して原子力発電所の安全性に対する余裕度が低くなる結果を生み出す。
【0006】
また、PCIによる燃料棒破損現象は、30GWD/MTU以上から被覆管と焼結体が互いに接触することから発生するが、この時から、焼結体は、被覆管の半径方向に外力を加えて機械的変形を起こして破断に至る。しかし、添加酸化物による結果である大結晶粒の微細組織を有する焼結体は、被覆管の変形を起こす前に焼結体自体で塑性変形を起こし、熱による体積膨張から発生する被覆管との相互応力を解消させる。さらに、核反応によって生成される様々な種類の核分裂ガスが抜け出せる通路となる結晶粒界の面積が減少しながら、焼結体外部への核分裂ガス放出速度を減少させる。したがって、燃料棒の内部表面を劣化させる核分裂ガスを焼結体内に捕集することにより、応力腐食割れによる破損挙動を弱めることができる。このように、PCI損傷低減焼結添加剤の役割は、基本的に、二酸化ウラン焼結体の結晶粒を大きくすることにある。これは、二酸化ウランの焼結時に酸化物添加剤が焼結温度でウランカチオン移動を促進することによる結果であり、このように発達した微細組織は、原子力発電所の炉内燃焼時に安全及び発電所運転余裕度を向上させる。
【0007】
そこで、上述したように二酸化ウランの熱伝導度を向上させるために、韓国登録特許10-0609217には、タングステン金属網を含む核燃料及びその製造方法が開示されており、詳細には、核燃料粉末及びタングステン酸化物からなる成形体を還元性ガス雰囲気中で加熱して予備焼結体を製造した後、前記予備焼結体を酸化物ガス雰囲気中で加熱して予備焼結体にタングステン酸化物の液相網を形成し、前記タングステン酸化物の液相網を還元させてタングステン金属網を含む核燃料焼結体の製造方法が開示されている。
【0008】
また、韓国登録特許10-1652729には、マイクロサイズの熱伝導性金属粉末を用いることにより、焼結体の製造時に発生する金属物質の酸化を防止して焼結体の熱伝導性を減少させる問題を解決し、板状型の金属粉末を用いることにより、焼結体微細組織の均質性をさらに改善して熱伝導度に優れる核燃料焼結体の製造方法が開示されている。
【0009】
しかし、従来技術のように液相の酸化物を焼結体の結晶粒界に沿って均質に分布させる技術は、金属物質の酸化特性が考慮されないため、揮発可能性があるうえ、焼結体の表面に不良微細組織が形成されることもあり、商業製造の観点から、大量に製造することは殆ど不可能に近い。
【0010】
そこで、本発明者らは、核燃料焼結体の機械的特性及び熱的特性の両方を向上させることができる方法を研究中に、二酸化ウランの基地内に円周方向に微細な板状型の析出物が均一に分散し、ドーナツ状の二次元群集形状に配列させて熱伝導度特性を向上させ、結晶粒径を30μm以上に成長させて焼結体の圧縮クリープ特性を非常に促進することにより、PCI抵抗性も非常に向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許公報第10-0609217号(登録日付:2006年7月27日)
【文献】韓国登録特許公報第10-1652729号(登録日付:2016年8月25日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、クリープ変形に対する抵抗性と優れた熱伝導度特性の両方を満足させることができるように、微細板状型析出物が円周方向に分散した組織を有し、ドーナツ状の二次元群集形状を有する核燃料焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ガドリニウム(Gd)、及びトリウム(Th)よりなる群から少なくとも一つが添加された酸化物で製造された核燃料焼結体であって、前記核燃料焼結体の内部組織は、焼結過程で焼結添加剤から発生した析出物を含み、前記析出物は、円周方向に均一に分散したことを特徴とする、核燃料焼結体を提供する。
【0014】
前記析出物は、ドーナツ状の二次元析出物群集をなしてもよい。
【0015】
前記析出物は、二酸化ウランの結晶粒界に沿って配置されてもよい。
【0016】
前記析出物は、3~30μmの長さ及び1~10μmの厚さを有してもよい。
【0017】
前記焼結添加剤は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0018】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含んでもよい。
【0019】
前記二酸化チタン(TiO)の含有量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%であってもよい。
【0020】
前記焼結添加剤の添加量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.5~10.0重量%であってもよい。
【0021】
金属アルミニウム(Al)粉末をさらに含んでもよい。
【0022】
前記金属アルミニウム粉末は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.01~0.10重量%で含まれてもよい。
【0023】
本発明の他の態様は、微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体を製造する方法において、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ガドリニウム(Gd)及びトリウム(Th)よりなる群から選択された少なくとも1種を含む酸化物粉末と、焼結添加剤粉末とを混合して混合粉末を製造するステップ(ステップ1)と、前記混合粉末を予備圧粉及び破砕した後、篩過して顆粒化粉末を製造するステップ(ステップ2)と、前記顆粒化粉末を300~500MPaの一軸加圧で核燃料成形体に製造するステップ(ステップ3)と、製造された核燃料成形体を約700~1100℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で一次焼結するステップ(ステップ4)と、一次焼結の完了後、連続的に1700~1800℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で二次焼結するステップ(ステップ5)と、を含む、酸化物核燃料焼結体の製造方法を提供する。
【0024】
前記焼結添加剤粉末は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0025】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含んでもよい。
【0026】
前記二酸化チタン(TiO)は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%で含まれてもよい。
【0027】
前記酸化物核燃料焼結体の製造方法は、酸化物金属アルミニウム(Al)粉末をさらに添加してもよい。
【0028】
前記一次焼結ステップは、1~10℃/minの加熱速度で加熱して300~1100℃の条件で30~120分間焼結して焼結添加剤を液相状態に維持させてもよい。
【0029】
前記二次焼結ステップでは、一次焼結ステップの完了後、冷却なしに1~10℃/minの加熱速度にて1700~1800℃の条件で60~240分間焼結して液相状態の焼結添加剤が微細な板状型の析出物として酸化物核燃料焼結体の結晶粒成長と共に円周方向に均質に配置されてもよい。
【0030】
前記焼結添加剤粉末が酸化銅(I)(CuO)又は酸化銅(II)(CuO)である場合、一次焼結ステップ(ステップ4)の焼結温度は300~500℃であり、焼結時間は30~120分であってもよい。
【0031】
前記水素含有還元性ガスは、二酸化炭素、窒素、アルゴン及びヘリウムガスよりなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0032】
前記水素含有還元性ガスは、単一の水素ガスからなってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明による酸化物核燃料焼結体及びその製造方法によれば、核燃料焼結体が、微細な板状型の析出物が円周方向に分散した組織をもってドーナツ状の二次元群集形状を有することにより、非常に高いクリープ変形特性と優れた熱伝導度特性の両方を満足させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施例1による二酸化ウラン焼結体を光学顕微鏡を用いて撮影した微細組織(100倍率)を示す。
図2】本発明の実施例1による二酸化ウラン焼結体の結晶粒界に沿って析出した板状型のモリブデンのSEM微細組織写真を示す。
図3】本発明の実施例1による二酸化ウラン焼結体の結晶粒界に沿って析出した板状型のモリブデンのSEM/EDSのマッピング写真及びXRDパターン写真を示す。
図4】本発明の比較例1による二酸化ウラン焼結体に対して、酸素分圧によって析出したモリブデン(白色)とモリブデン酸化物(黒色)を示す写真である。
図5】本発明の実施例1による二酸化ウラン焼結体に対して、アルミノテルミー(Aluminothermic)法による金属アルミニウムを添加して二酸化ウラン焼結体の基地内のモリブデン析出物の健全性を維持させる結果を示す光学顕微鏡微細組織写真を示す。
図6】本発明の実施例1~4及び比較例1による二酸化ウラン焼結体の高温圧縮クリープ試験後の時間による圧縮クリープ変形を示すグラフである。
図7】本発明の実施例1~5及び比較例1による焼結添加剤が含まれている二酸化ウラン焼結体と従来の二酸化ウラン焼結体の時間による熱伝導度変化を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施例に提示される特定の構造又は機能的説明は、単に本発明の概念による実施例を説明するための目的で例示されたものであり、本発明の概念による実施例は、様々な形態で実施され得る。また、本明細書に説明された実施例に限定されるものと解釈されてはならず、本発明の思想及び技術の範囲に含まれるすべての変更物、均等物ないし代替物を包含するものと理解されるべきである。
【0036】
本発明の一態様は、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ガドリニウム(Gd)、及びトリウム(Th)よりなる群から少なくとも1種が添加された酸化物で製造された核燃料焼結体であって、前記核燃料焼結体の内部組織は、焼結過程で焼結添加剤から発生した析出物を含み、前記析出物は、円周方向に均一に分散したことを特徴とする核燃料焼結体である。
【0037】
前記析出物は、ドーナツ状の二次元析出物群集をなすことができる。
【0038】
前記析出物は、結晶粒界に沿って配置されることができる。
【0039】
前記析出物は、3~30μmの長さ及び1~10μmの厚さを有することができる。
【0040】
前記焼結添加剤は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から少なくとも1種を含むものであり得る。前記焼結添加剤は、二酸化ウランを還元性雰囲気中で焼結する過程で一緒に還元され、焼結体内に析出物の形で残留して焼結体の熱伝導性を高める。好ましくは、前記焼結添加剤の添加量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.5~10.0重量%である。
【0041】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含むことができる。二酸化チタンは、焼結体内の結晶粒径を大きくして高温での圧縮クリープ変形速度を大きくし、PCI特性を改善して焼結体の膨張によって被覆管に印加する圧力を効果的に減少させることができる。好ましくは、前記二酸化チタン(TiO)の含有量は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%である。
【0042】
前記酸化物核燃料焼結体は、金属アルミニウム(Al)粉末をさらに含むことができる。ウラン酸化物焼結体中に還元されて析出した焼結添加剤は、熱伝導率を増加させる役割を果たすが、還元された析出物は、高い酸素分圧条件で再び酸化して機能を失う。金属アルミニウム粉末は、酸素と反応してアルミニウム酸化物(Al)を生成し、酸素分圧を減少させて、前記還元された析出物の酸化を防止するという効果がある。好ましくは、前記金属アルミニウム粉末は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.01~0.10重量%で含まれ得る。
【0043】
本発明の他の態様は、微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体を製造する方法において、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ガドリニウム(Gd)及びトリウム(Th)よりなる群から選択された少なくとも1種を含む酸化物粉末と、焼結添加剤粉末とを混合して混合粉末を製造するステップ(ステップ1)と、前記混合粉末を予備圧粉及び破砕した後、篩過して顆粒化粉末を製造するステップ(ステップ2)と、前記顆粒化粉末を300~500MPaの一軸加圧で核燃料成形体に製造するステップ(ステップ3)と、製造された核燃料成形体を約700~1100℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で一次焼結するステップ(ステップ4)と、一次焼結の完了後、連続的に1700~1800℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で二次焼結するステップ(ステップ5)と、を含む、酸化物核燃料焼結体の製造方法を提供する。
【0044】
前記焼結添加剤粉末は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、クロム炭化物(Cr23)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、炭化モリブデン(MoC)、及び二ケイ化モリブデン(MoSi)よりなる群から選択された少なくとも1種を含むことができる。
【0045】
前記焼結添加剤は、二酸化チタン(TiO)をさらに含むことができる。
【0046】
前記二酸化チタン(TiO)は、核燃料焼結体用酸化物に対して0.05~0.70重量%で含まれることができる。
【0047】
前記酸化物核燃料焼結体の製造方法は、酸化物金属アルミニウム(Al)粉末をさらに添加することができる。
【0048】
前記一次焼結ステップは、1~10℃/minの加熱速度で加熱して300~1100℃の条件で30~120分間焼結して焼結添加剤を液相状態に維持させることができる。
【0049】
前記二次焼結ステップは、一次焼結ステップの完了後、冷却なしに1~10℃/minの加熱速度で1700~1800℃の条件で60~240分間焼結し、液相状態の焼結添加剤が微細な板状型の析出物として酸化物核燃料焼結体の結晶粒成長と共に円周方向に均質に配置されることができる。
【0050】
前記焼結添加剤粉末が酸化銅(I)(CuO)又は酸化銅(II)(CuO)である場合、一次焼結ステップ(ステップ4)の焼結温度は300~500℃であり、焼結時間は30~120分であることができる。
【0051】
前記水素含有還元性ガスは、二酸化炭素、窒素、アルゴン及びヘリウムガスよりなる群から選択された少なくとも1種を含むことができる。
【0052】
前記水素含有還元性ガスは、単一の水素ガスからなることができる。
【0053】
以下、本発明を実施例及び実験例を介して詳細に説明する。ただし、これは、例示的なものに過ぎず、本発明をいかなる形態にも制限しない。
【0054】
<実施例1>二酸化ウラン焼結体の製造
ステップ1:微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体を製造する方法は、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ガドリニウム(Gd)及びトリウム(Th)よりなる群から少なくとも1種が添加された酸化物粉末と、焼結添加剤粉末とを混合して混合粉末を製造した。実施例に使用された酸化物粉末は、二酸化ウラン粉末であり、焼結添加剤の添加量は、表1の通りである。
【0055】
ステップ2:ステップ1で混合された粉末は、予備圧粉(100MPa)後、予備圧粉体を製造して破砕した後、篩過して顆粒化粉末を製造した。このとき、製造された顆粒化粉末の粒径は約400~800μm程度である。
【0056】
ステップ3:ステップ2で製造された顆粒化粉末を定形化された成形モールドに入れて300~400MPaの一軸加圧で核燃料成形体を製造した。
【0057】
ステップ4:ステップ3で製造された二酸化ウラン成形体は、約700~1100℃の焼結温度及び水素含有還元性ガス雰囲気中で約30~120分まで一次焼結した。
【0058】
ステップ5:ステップ4で一次焼結が完了すると、冷却なしに1~10℃/minの加熱速度にて1700~1800℃の焼結温度条件で60~240分間二次焼結して二酸化ウラン焼結体を製造した。
【0059】
<実施例2~10>
二酸化ウラン粉末と焼結添加剤の化学的組成以外は実施例1と同様にして、前記微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体を製造した。前記微細な析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体に添加された焼結添加剤の化学的組成は、表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<比較例1>従来の商用二酸化ウラン焼結体の製造
商用の原子力発電所で核燃料として使用されている商用の二酸化ウラン焼結体は、現在商用供給されている二酸化ウラン焼結体製造工程を介して製造される二酸化ウラン焼結体を使用した。
【0062】
<比較例2>アルミニウムを含んでいない二酸化ウラン焼結体の製造
焼結添加剤の組成中のアルミニウムを添加しなかった以外は実施例1と同様にして製造した。
【0063】
<実験例1>微細構造分析
本発明の実施例1による微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料の焼結体の微細構造を分析するために、光学顕微鏡及び電子走査顕微鏡を用いて微細構造を分析した。図1及び図2は二酸化モリブデン、二酸化チタン及び金属アルミニウムが添加された焼結体の微細組織を示す。図1及び図2に示すように添加された二酸化モリブデンは、焼結過程中に、二酸化チタンによるUO焼結体の結晶粒の成長、及び二酸化モリブデンと水素との化学反応により結晶粒界に沿って板状型の金属モリブデンとして析出したことを確認した。特に、板状型の金属モリブデンの析出物配列は、2次元のドーナツ状に均一に分散しており、このような2次元ドーナツ状及び金属モリブデンによる熱伝導度の向上を確保することができた。図3は電子走査顕微鏡(SEM/EDS)及びXRDで分析した微細組織及び析出物の元素を分析したもので、二酸化ウランの結晶粒界に沿って板状型のモリブデンが析出したことを確認した。また、微量の不純物及び結晶構造を分析するための分析装備であるXRDの分析結果、二酸化ウラン基地内の析出物は、添加剤である二酸化モリブデンが全て金属モリブデンとして析出したことを確認した。
【0064】
<実験例2>焼結雰囲気によるモリブデン析出物の健全性評価
本発明の比較例1及び実施例1による微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料の焼結体の析出物の健全性を評価するために、焼結雰囲気による析出物の健全性評価を行った。図4は、酸素分圧がCO/H=3%、5%である焼結雰囲気条件で製造された比較例1の二酸化ウランの微細組織内析出物を示した。図4に示すように、酸素分圧が増加するにつれて、モリブデンの析出物が酸化又は揮発するという問題点があった。このような焼結炉の残存酸素と二酸化ウラン中の微量酸素による酸素分圧の増加により析出したモリブデンが再び三酸化モリブデン(MoO)又は二酸化モリブデン(MoO)などのモリブデン酸化物に酸化して揮発するからである。したがって、残存酸素による金属モリブデン析出物の酸化を防止するために金属アルミニウムを微量添加し、アルミノテルミー(Aluminothermic)法によって残存酸素を金属アルミニウムと先に反応させて焼結炉内の酸素分圧を著しく低減させることにより、モリブデンの酸化を防止することができる。図5は、実施例1のように微量の金属アルミニウムの添加による析出物の健全性を維持させる試験結果を示すものである。黒色の暗い部分はモリブデン酸化物であり、白色の明るい部分はモリブデンである。図4とは異なり、図5においてモリブデンである白点が多数分布することから、アルミニウムを添加してモリブデンの酸化を防止することができることを確認した。
【0065】
<実験例3>高温圧縮クリープ実験
本発明の実施例1~4及び比較例1による微細な板状型の析出物が円周方向に分散した酸化物核燃料焼結体の高温変形特性を調べるために、次の高温圧縮クリープ試験を行った。前記実施例1~4及び比較例1の組成を有する二酸化ウラン焼結体を製造した後、高温圧縮クリープ試験の試験片を作製した。作製された焼結体試験片は、両端の端面を均一に切削した後、高温圧縮クリープ試験後の試験片変形量を評価するために試料の直径と長さを測定した。高温圧縮クリープ試験は、ドイツのZwick/Roell社の特殊目的で製作された高温クリープ試験専用装備を用いて1450℃の温度及び水素ガス雰囲気中で約20時間、40MPaの圧縮荷重を印加した。高温圧縮クリープ試験は、40MPaの圧縮荷重が印加されるときの時間による変形量はリアルタイムで非接触式レーザーエクステンソメーター(Extensometer)によって測定されて保存される。図6に示すように、本発明の実施例1~4は、比較例1に提示された商用の二酸化ウラン焼結体の高温圧縮クリープ変形量よりも少なくとも5~20倍速い高温圧縮クリープ変形量を確認した。
【0066】
<実験例4>熱伝導度評価試験
二酸化ウラン焼結体の熱伝導度は、密度、気孔度、化学当量、温度、及び不純物の濃度などに影響される。熱物性値である熱伝導度は、材料の固有の性質であって、素材の密度、比熱及び熱拡散度の関数で計算され、二酸化ウラン焼結体の熱伝導度は、密度、気孔度、化学当量、温度、及び不純物の濃度などに影響される。二酸化ウランの熱伝導度を評価するためには、レーザーフラッシュ法を用いた熱拡散度を求めなければならない。熱拡散度はNetzsch社製のLFA 427モデルを用いて測定し、密度は浮力法で測定し、比熱値は複合体における比熱計算法を用いて計算し、密度、比熱及び熱拡散度を乗算して温度による熱伝導度を計算した。図7は本発明の実施例1~5と比較例1の焼結体に対する熱伝導度を比較評価して示した。図示の如く、実施例1~5の熱伝導度は、比較例1の熱伝導度に比べて約40~70%程度高い熱伝導度を示した。このような結果は、モリブデン酸化物、モリブデン炭化物、クロム炭化物などが焼結過程で金属モリブデンとして全て板状型に均一析出したとともに、二次元ドーナツ状の分散効果によって熱伝導度が非常に向上したためであると判断される。
【0067】
以上説明した本発明は、上述した実施例及び添付図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から逸脱することなく種々の置換、変形及び変更を加え得るのは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者には明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7