(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
H02K1/18 A
(21)【出願番号】P 2022557256
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032107
(87)【国際公開番号】W WO2022080030
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020174064
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】金井 猛
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-306842(JP,A)
【文献】特開2019-187132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回され、ロータを回転させる回転磁界を形成するステータと、
前記ステータを収納するフレームと、
を備え、
前記ステータは、
環状の磁路を形成するコア本体部と、
前記コア本体部の外周面から径方向外側に突出された固定部と、
を有し、
前記固定部は、前記ロータの回転軸線方向に沿って貫通形成され、前記フレームに前記ステータを固定するための固定部材が挿通される固定孔を有し、
前記フレームは、
前記固定部を前記回転軸線方向で受ける取付座部と、
前記コア本体部における前記回転軸線方向の端部を受けるコア受部と、
を有し、
前記取付座部上には、前記固定部における前記回転軸線方向の端部を受ける固定受部が設けられ、
前記コア受部及び前記固定受部は、前記取付座部よりも前記コア本体部側に突出されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記固定受部は、前記コア本体部の軸心を中心とし、前記固定部材が固定される被固定孔の中心を通る円弧の径方向外側に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記固定受部は、前記回転軸線方向において前記固定部材と重なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記固定受部は、前記コア本体部の軸心を中心に対向するように2つ設けられ、少なくとも1つの前記固定受部に前記コア受部が並んで配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記コア受部に対して前記コア本体部側を+とし、前記コア本体部とは反対側を-としたとき、
前記固定受部の位置は、前記コア受部に対して-0.1mm~0.3mmの位置にあることを特徴とする請求項
1に記載のモータ。
【請求項6】
前記コア受部は、少なくとも周方向へ120°の間隔をあけて3箇所に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項7】
前記コア受部は、前記ステータに給電する給電部を避けて配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のワイパー装置等に用いられるモータとして、コイルが巻回されたステータの径方向内側にロータが配置され、ステータ及びロータがフレームに収容されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この種のモータのなかには、フレームに収容されたステータが、一対の締結ねじによって締め付けられた状態でフレームのコア受部に支持されるものがある。ステータは円環状のコア本体部を有し、このコア本体部の外周(すなわち、径方向外側)に、一対の締結ねじが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コア本体部の外周に締結ねじを配置してこの締結ねじを締め付けると、コア受部を支点としてステータの径方向中央部が軸方向に浮き上がるように変形してしまう可能性があった。ステータの径方向中央部が浮き上がることにより、例えば、ステータが2つの締結ねじの2点間に対して交差する方向に傾き、ステータの内径真円度を確保することが難しい。このため、モータの作動音が悪化し、さらに、ロータとステータとが干渉してしまう可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、ステータの浮き上がりを抑えることにより、ステータの傾きを抑制し、さらにステータの傾き方向をコントロールできるモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るモータは、コイルが巻回され、ロータを回転させる回転磁界を形成するステータと、前記ステータを収納するフレームと、を備え、前記ステータは、環状の磁路を形成するコア本体部と、前記コア本体部の外周面から径方向外側に突出された固定部と、を有し、前記固定部は、前記ロータの回転軸線方向に沿って貫通形成され、前記フレームに前記ステータを固定するための固定部材が挿通される固定孔を有し、前記フレームは、前記コア本体部における前記回転軸線方向の端部を受けるコア受部と、前記固定部における前記回転軸線方向の端部を受ける固定受部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステータの浮き上がりを抑えることにより、ステータの傾きを抑制し、さらにステータの傾き方向をコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態におけるモータ装置の斜視図。
【
図3】本発明の実施形態におけるモータから第2モータケースを外した斜視図。
【
図4】本発明の実施形態におけるステータを軸方向からみた平面図。
【
図5】本発明の実施形態における第1モータケースを回転軸の軸方向からみた平面図。
【
図6】本発明の実施形態における第1モータケースの第1締結受部及び第1コア受部を示す斜視図。
【
図7】本発明の実施形態における第1モータケースに、締結ねじによってステータを締結固定した概念図。
【
図9】比較例の第1モータケースを軸方向からみた平面図。
【
図10】比較例の第1モータケースに、締結ねじによってステータを締結固定した概念図。
【
図11】比較例の第1モータケースに、締結ねじによって締結固定したステータの傾きを誇張して示したシミュレーション図。
【
図12】本発明の実施形態における第1モータケースに、締結ねじによって締結したステータの傾きを誇張して示したシミュレーション図。
【
図13】本発明の実施形態及び比較例におけるステータの傾き及び内径変位を説明するグラフ。
【
図14】本発明の実施形態における第1変形例の第1締結受部を示す斜視図。
【
図15】本発明の実施形態における第2変形例の第1締結受部を示す斜視図。
【
図16】本発明の実施形態における第3変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図17】本発明の実施形態における第4変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図18】本発明の実施形態における第5変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図19】本発明の実施形態における第6変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図20】本発明の実施形態における第7変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図21】本発明の実施形態における第8変形例の第1締結受部を示す概念図。
【
図22】本発明の実施形態及び比較例におけるモータ装置の作動音の大きさを説明するグラフ。
【
図23A】本発明の実施形態及び比較例におけるモータ装置の振動の大きさを説明するグラフ。
【
図23B】本発明の実施形態及び比較例におけるモータ装置の振動の大きさを説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<モータ装置>
図1は車両に用いられるモータ装置1の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
モータ装置1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる。
図1,
図2に示すように、モータ装置1は、モータ2と、モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ2の駆動制御を行うコントローラ4と、を備える。
なお、以下の説明において、単に「軸方向」と言う場合は、モータ2の回転軸31の回転軸線方向に沿う方向を意味するものとする。単に「周方向」と言う場合は、回転軸31の周方向を意味するものとする。単に「径方向」と言う場合は、回転軸31の径方向を意味するものとする。また、「軸方向」において、回転軸31の一端部側(
図2,
図3において矢印がD1を指す側)を「第1方向」と言い、回転軸31の他端部側(
図2,
図3において矢印がD2を指す側)を「第2方向」と言う。
【0011】
<モータ>
モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納された略円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に配置され、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備える。本実施形態のモータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0012】
モータケース5は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた材料によって形成されている。モータケース5は、軸方向で分割可能に構成された第1モータケース(フレーム)6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6と第2モータケース7は、それぞれ有底円筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギヤケース40と接続されるように、当該ギヤケース40と一体成形されている。第1モータケース6及びギヤケース40は、溶融したアルミニウム合金等を鋳造成形等することで所定形状に形成されている。底部10の径方向略中央には、モータ2の回転軸31を挿通可能な貫通孔が形成されている。なお、本実施形態では、モータケース5とギヤケース40がモータ装置1のケーシングを構成している。
【0013】
また、第1モータケース6と第2モータケース7の各開口部6a,7aには、径方向外側に向かって張り出す外フランジ部16,17がそれぞれ形成されている。モータケース5は、外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間が形成されている。モータケース5の内部空間には、ステータ8とロータ9が配置されている。ステータ8は、第1モータケース6の内周壁12に形成された段差部(後述する第1、第2、第3コア受部71,72,73(
図5参照))に圧入固定され、ロータ9の外周に沿って配置されている。
第1モータケース6の詳細構造については後述する。
【0014】
<ステータ>
図3は、モータ2から第2モータケース7を外した斜視図である。
図4は、ステータ8を軸方向からみた平面図である。
図2から
図4に示すように、ステータ8は、積層した鋼板(電磁鋼板)からなるステータコア20と、ステータコア20に巻回される複数のコイル27と、を備える。ステータコア20は、円環状のコア本体部21と、コア本体部21の内周部から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では6つ)のティース22と、コア本体部21の外周部に形成された複数(例えば、本実施形態では6つ)の製造誤差吸収部23、及び複数(例えば、本実施形態では2つ)の締結部(請求項における固定部の一例)24と、を有する。
【0015】
製造誤差吸収部23は、モータケース5とステータ8との製造誤差を吸収するものである。製造誤差吸収部23は、コア本体部21の外周部の一部を切除して径方向に可撓可能とした舌片である。製造誤差吸収部23は、径方向でティース22の延長線上に配置されている。また、製造誤差吸収部23は、コア本体部21の最外径(具体的には、コア本体部21の外周縁21a)よりも内周(すなわち、径方向内側)に設けられている。
【0016】
このような構成のもと、モータケース5内にステータ8を配置する際、モータケース5やステータ8の製造誤差によってステータ8に無理な応力がかかってしまうことが防止される。すなわち、モータケース5へのステータ8への当たりが強くなってしまう場合、製造誤差吸収部23が弾性的に撓むことによりステータ8に無理な応力がかかってしまうことが防止される。また、製造誤差吸収部23は、弾性的に撓むことによりモータケース5に対して突っ張るので、モータケース5内にステータ8を径方向で支持させる役割も有する。
【0017】
コア本体部21の外周部において、径方向でティース22の延長線上に製造誤差吸収部23が配置されたのは、ステータ8は、ティース22が設けられている箇所では径方向への外力に対する機械的強度が高まり、このティース22が設けられている箇所で径方向に変形しにくいからである。また、径方向でティース22の延長線上に製造誤差吸収部23を配置することにより、コア本体部21で形成される磁路を阻害しない。このことについての詳細は後述する。
【0018】
ここで、6つの製造誤差吸収部23のうち、周方向へ120°の間隔をあけて設けられた3つの製造誤差吸収部23は、第1モータケース6に径方向において支持される他、軸方向においても支持される。以下、第1モータケース6に支持される3つの製造誤差吸収部23を、第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cとして説明する。
【0019】
締結部24は、回転軸31の回転軸線(軸心C1)を中心に径方向で対向するように2つ設けられている。2つの締結部24は、コア本体部21の最外径(具体的には、コア本体部21の外周縁21a)よりも外周(すなわち、径方向外側)に設けられている。2つの締結部24のうちの1つは、第1製造誤差吸収部23Aと周方向で並んで配置されている。以下、2つの締結部24のうち、第1製造誤差吸収部23Aと周方向で並んで配置された1つの締結部24を第1締結部24Aとして説明する。2つの締結部24のうち、周方向において第2製造誤差吸収部23Bと第3製造誤差吸収部23Cとの間に設けられた1つの締結部24を第2締結部24Bとして説明する。
【0020】
第1締結部24A及び第2締結部24Bには、軸方向に貫通する取付孔(請求項における固定孔の一例)24aがそれぞれ形成されている。各取付孔24aに、締結ねじ(請求項における固定部材の一例)28が挿通される。取付孔24aに挿通された締結ねじ28が第1モータケース6に螺合されることにより、2つの締結部24(すなわち、ステータ8)が第1モータケース6に締結固定される。
【0021】
第1締結部24A及び第2締結部24Bは、コア本体部21の外周縁21aの接線のうち、出力軸48の回転軸線(軸心C4)に垂直な線(接線C5)よりも回転軸31側に配置されている。また、第1締結部24A及び第2締結部24Bは、コア本体部21の外周縁21aの接線のうち、出力軸48の回転軸線(軸心C4)に平行な線(接線C6)よりも回転軸31側に配置されている。これにより、出力軸48の回転軸線(軸心C4)に垂直及び平行な方向において、各締結部24A、24Bがモータ装置1の外面から突出しないようにできるため、モータ装置1を小型化できる。
【0022】
コア本体部21の内周面と各ティース22は、樹脂製のインシュレータ26によって覆われている。コイル27は、インシュレータ26の上から対応する所定のティース22に巻回されている。各コイル27は、コントローラ4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界を生成する。コア本体部21は、円環状の磁路を形成する。このとき、周方向で隣り合うティース22間に渡って磁路が軸方向からみて弧状に形成される。このため、コア本体部21の外周部において、径方向でティース22の延長線上には磁束が殆ど形成されない。このため、製造誤差吸収部23が磁路を阻害することがない。
【0023】
<ロータ>
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に配置され、ステータ8の磁界を受けて回転する。ロータ9は、回転軸31と、内周部に回転軸31が圧入固定される軸芯孔69を有する略筒状のロータコア32と、ロータコア32の外周部に組付けられた4つの永久磁石33(
図3,
図5,
図6等参照)と、を備える。
【0024】
回転軸31は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体に形成されている。しかし、ウォーム軸44は、これに限るものではなく、回転軸31と別体に形成され、回転軸31の端部に連結されるものであっても良い。回転軸31とウォーム軸44は、ギヤケース40(ケーシング)に軸受46,47を介して回転自在に支持されている。回転軸31とウォーム軸44は、回転軸線(軸心C1)回りに回転する。なお、永久磁石33としては、例えば、フェライト磁石が用いられる。しかしながら、永久磁石33は、これに限るものではなく、ネオジムボンド磁石やネオジム焼結磁石等を適用することも可能である。
【0025】
<減速部>
減速部3は、モータケース5と一体化されたギヤケース40と、ギヤケース40内に収納された減速機構41と、を備える。ギヤケース40は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた金属材料によって形成されている。ギヤケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギヤケース40は、減速機構41を内部に収容するギヤ収容部42を有する。また、ギヤケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体形成されている箇所に、第1モータケース6の貫通孔とギヤ収容部42を連通する開口部43が形成されている。
【0026】
ギヤケース40の底壁40cには、略円筒状の軸受ボス49が突設されている。軸受ボス49は、減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであり、内周側に不図示の滑り軸受が配置されている。軸受ボス49の先端部内側には、不図示のOリングが装着されている。また、軸受ボス49の外周面には、剛性確保のための複数のリブ52が突設されている。
【0027】
ギヤ収容部42に収容された減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、軸方向の両端部が軸受46,47を介してギヤケース40に回転可能に支持されている。ウォーム軸44は、モータ2の回転軸31と同軸に、かつ一体に設けられている。ウォームホイール45には、減速機構41の出力軸48が同軸に、かつ一体に設けられている。ウォームホイール45と出力軸48とは、これらの回転軸線が、ウォーム軸44(モータ2の回転軸31)の回転軸線(軸心C1)と略直交するように配置されている。出力軸48は、ギヤケース40の軸受ボス49を介して外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、モータ駆動する対象物品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0028】
また、ウォームホイール45には、不図示のセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、後述するコントローラ4に設けられた磁気検出素子61によって位置を検出される。つまり、ウォームホイール45の回転位置は、コントローラ4の磁気検出素子61によって検出される。
【0029】
<コントローラ>
コントローラ4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62を有する。コントローラ基板62は、磁気検出素子61がウォームホイール45のセンサマグネット(不図示)に対向するように、ギヤケース40の開口部40a内に配置されている。ギヤケース40の開口部40aは、カバー63によって閉塞されている。
【0030】
コントローラ基板62には、ステータコア20から引き出された複数のコイル27の端末部が接続されている。また、コントローラ基板62には、カバー63に設けられたコネクタ11(
図1参照)の端子が電気的に接続されている。コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル27に供給する駆動電圧を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)や、電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0031】
<第1モータケースの詳細構造>
図5は、第1モータケース6を回転軸31の軸方向からみた平面図である。
図6は、第1モータケース6の第1締結受部81及び第1コア受部71を示す斜視図である。
図5、
図6に示すように、第1モータケース6は、底部10と内周壁12とによって、開口部6aで開口する収容空間が形成されている。内周壁12は、軸心C1を中心とする円形に形成されている。
第1モータケース6は、内周壁12の底部10寄りに段差部を形成してなる複数のコア受部71,72,73と、内周壁12の各コア受部71,72,73に対応する箇所に設けられた複数のコア受部74,75,76と、ステータ8の締結部24が載置される複数の取付座部77,78、及び複数の締結受部(請求項における固定受部の一例)81,82と、を備える。
【0032】
内周壁12の底部10寄りに段差部を形成してなるコア受部(請求項におけるコア受部の一例)71,72,73として、本実施形態では、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の3つを例示するが、個数は任意に選択してもよい。また、内周壁12の複数のコア受部74,75,76として、実施形態では、第4コア受部74、第5コア受部75、及び第6コア受部76の3つを例示するが、個数は任意に選択してもよい。
さらに、複数の取付座部77,78として、実施形態では、第1取付座部77、及び第2取付座部78の2つを例示するが、個数は任意に選択してもよい。また、複数の締結受部81,82として、実施形態では、第1締結受部81、及び第2締結受部82の2つを例示するが、個数は任意に選択してもよい。
なお、本実施形態では、ステータコア20の軸方向一端は、各コア受部71,72、73の3点でバランスよく支持されるため、各締結受部81、82は最低限2つあればよい。この場合、締結ねじ28の数を2つにすることができ、部品点数を削減できる。
【0033】
ここで、各コア受部71、72、73は、軸方向における高い寸法精度が要求されるため、切削加工により形成されるのが好ましい。仮に各取付座部77、78に各コア受部71,72、73を設けた場合、各コア受部71,72を1つの工具で同時に切削することができない。そこで本実施形態では、各取付座部77、78よりも径方向内側に各コア受部71,72、73を設けている。これにより、各コア受部71,72を1つの工具で同時に切削できるため、各コア受部71、72、73を精度よく形成することができる。さらに、ステータコア20の径方向外側の部分であって各取付座部77、78以外の部分が不要となるため、ステータコア20を小型化することができる。具体的には、
図4に示すように、出力軸48の回転軸線(軸心C4)に垂直な方向(接線C5に沿う方向)及び平行な方向(接線C6に沿う方向)において、ステータコア20の寸法を小さくできる。
【0034】
第1モータケース6の底部10には、給電開口部84が形成されている。給電開口部84には、ステータ8に給電する給電部(不図示)が配置される。
第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73は、給電開口部84を避けて内周壁12に設けられ、周方向へ120°の間隔をあけて3箇所に配置されている。すなわち、第1コア受部71から第3コア受部73は、不図示の給電部を避けて配置されている。
【0035】
第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73は、内周壁12から径方向内側に向けて張り出され、開口部6aに対向する各支持面が軸線Cに対して直交するように精度よく形成(加工)されている。第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の各支持面には、ステータ8の第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23C(
図4参照)のうち軸方向の端部が開口部6a側から軸方向において当接(支持)される。
【0036】
第4コア受部74、第5コア受部75、及び第6コア受部76は、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の各支持面から開口部6aに向けて突出された形になる。このような第4コア受部74、第5コア受部75、及び第6コア受部76のうち、径方向内側に対向する各支持面に、ステータ8の第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cのうち径方向の端部が径方向において当接(支持)される。
【0037】
第1コア受部71と第4コア受部74、第2コア受部72と第5コア受部75、そして第3コア受部73と第6コア受部76は、それぞれ周方向で同じ位置に設けられている。また、第1コア受部71及び第2コア受部72は給電開口部84の周方向両側に隣接して配置され、第3コア受部73は回転軸31(軸心C1)に対して給電開口部84と反対側に配置されている。これにより、各コア受部71、72、73及び各コア受け部74,75,76は、それぞれ周方向で120°間隔に配置されているため、ステータコア20をバランスよく支持することができる。
【0038】
第1取付座部77及び第2取付座部78は、ステータ8の締結部24に対応するように、内周壁12から径方向外側に向けて突出されている。また、第1取付座部77及び第2取付座部78は、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73よりも径方向外側に配置されている。すなわち、第1取付座部77及び第2取付座部78は、第1モータケース6の回転軸線(軸心C1)を中心に径方向で対向するように、周方向に180°の間隔をあけて設けられている。第1取付座部77及び第2取付座部78には、軸方向へ延びるねじ孔(請求項における被固定孔の一例)86がそれぞれ設けられている。
【0039】
ねじ孔86には、第1モータケース6にステータ8を固定するための締結ねじ28のねじ部28a(
図3参照)が螺合される。
第1取付座部77は、ステータ8の第1締結部24Aに対応するように、第1コア受部71と周方向で並んで設けられている。すなわち、第1取付座部77は、周方向及び径方向において、第1コア受部71及び第4コア受部74の近傍に設けられている。
第2取付座部78は、ステータ8の第2締結部24Bに対応するように、周方向において、第2コア受部72及び第5コア受部75と、第3コア受部73及び第6コア受部76との間に設けられている。
【0040】
第1締結受部81及び第2締結受部82は、第1取付座部77及び第2取付座部78上にそれぞれ設けられている。すなわち、第1締結受部81及び第2締結受部82は、ステータ8の軸心C1を中心に対向するように、周方向に180°の間隔をあけて設けられている。また、第1締結受部81及び第2締結受部82は、ステータ8の軸心C1を中心とし、ねじ孔86の中心C2を通る円弧C3の外周(すなわち、径方向外側)に設けられている。
【0041】
図7は、第1モータケース6に、締結ねじ28によってステータ8を締結固定した概念図である。
図8は、
図7のVIII部を拡大した概念図である。
図5に示すように、第1締結受部81及び第2締結受部82は、軸方向からみて略円弧状に形成されている。すなわち、第1締結受部81及び第2締結受部82は、外周が第1取付座部77及び第2取付座部78の外周に沿ってそれぞれ略円弧形に形成されている。また、第1締結受部81及び第2締結受部82は、内周がねじ孔86に沿ってそれぞれ円弧形に形成されている。
【0042】
さらに、第1締結受部81及び第2締結受部82は、軸方向からみて長手方向の両端部が円弧C3に沿って直線状に形成されている。第1締結受部81及び第2締結受部82は、軸方向に沿う断面形状が四角形(矩形)に形成されている。これにより、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面(上端面)81a,82aが平坦に形成されている。この結果、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aは比較的大きく確保されている。
さらに、
図7、
図8に示すように、第1締結受部81及び第2締結受部82は、軸方向において締結ねじ28の頭部28bと重なる位置に設けられている。
【0043】
ここで、
図6、
図7、
図8に示すように、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の各支持面の底部10からの軸方向の高さ、及び第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aの底部10からの軸方向の高さは、第1取付座部77及び第2取付座部78の底部10からの軸方向の高さよりも高い。つまり、換言すれば、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の各支持面、及び第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aは、軸方向において、第1取付座部77及び第2取付座部78よりもステータ8(コア本体部21、
図7参照)の方向(すなわち、開口部6a方向)に突出している。
【0044】
また、本実施形態では、各コア受部71,72,73の支持面に対して底部10の方向を「-」(マイナス)とし、ステータ8の方向を「+」(プラス)としたとき、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aの位置は、例えば、各コア受部71,72,73の支持面に対して-0.1mm~0.3mmの位置にある。しかしながら、各コア受部71,72,73の支持面に対する第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aは、これに限られるものではない。
なお、各コア受部71,72,73の支持面に対する各受面81a,82aの突出量を0.3mm以内とすることで、締結ねじ28の締めつけトルクにより、ステータ8のコア本体部21と各コア受部71,72,73の支持面とを当接させることができる。
【0045】
<ステータの組付け>
次に、ステータ8の組付けについて説明する。
図3から
図5、
図7に示すように、ステータ8の組付けに際しては、最初に、ステータ8を第1モータケース6の開口部6aから収容空間に配置する。ステータ8には、第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B(
図4参照)、及び第3製造誤差吸収部23Cが設けられている。
【0046】
第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73は、軸方向で第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cを受ける。つまり、第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cは、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73によって軸方向で支持される。
【0047】
また、第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cは、第4コア受部74、第5コア受部75、及び第6コア受部76に径方向で突っ張る形で支持される。
この状態において、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aは、軸方向でステータ8の第1締結部24A及び第2締結部24Bを受ける。つまり、ステータ8の第1締結部24A及び第2締結部24Bは、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aによって軸方向で支持される。
【0048】
次に、この状態から、第1取付座部77及び第2取付座部78の各ねじ孔86に、これら第1取付座部77及び第2取付座部78の上から締結ねじ28を挿通する。そして、締結ねじ28のねじ部28aを、各取付座部77,78のねじ孔86に締め付ける。このとき、締結ねじ28によって締結固定された第1締結部24A及び第2締結部24Bを、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aで受ける。
これにより、ステータ8は、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73に軸方向に支持され、かつ第4コア受部74、第5コア受部75、及び第6コア受部76に径方向に支持された状態で第1モータケース6に締結固定される。
【0049】
<モータ装置の動作>
次に、モータ装置1の動作について説明する。
図2に示すように、モータ装置1は、ステータ8の径方向内側にロータ9が微小隙間を介して回転自在に配置されている。ステータ8が形成する回転磁界を受けてロータ9が回転する。
ここで、ロータコア32の軸芯孔69には、回転軸31のウォーム軸44側と逆側の端部(一端部)が圧入(嵌合)されている。これにより、ロータコア32が回転することにより、このロータコア32と一体となって回転軸31が回転される。回転軸31が回転することにより、ウォーム軸44及びウォームホイール45を介して出力軸48が回転する。
【0050】
<実施形態の効果>
上述の実施形態のモータ装置1は、
図5、
図7、
図8に示すように、締結ねじ28によって締結固定されたステータ8の第1締結部24A及び第2締結部24Bの軸方向の端部を、第1モータケース6の第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aで受ける。ステータ8のコア本体部21(第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、第3製造誤差吸収部23C)の軸方向の端部を、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73で受ける。
このため、締結ねじ28による締付力F1の一部を、第1締結部24A及び第2締結部24Bを経て第1締結受部81及び第2締結受部82で受けることができる。これにより、締結ねじ28による締付力F1で第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73を支点とするステータ8の径方向中央部の軸方向への浮上がりを抑制して、ステータ8の変形を小さく抑えることができる。
【0051】
したがって、ステータ8の傾きを抑制し、さらにステータ8の傾き方向をコントロールできる。これにより、ステータ8の内径真円度を良好に確保でき、モータ2(
図2参照)の組付け精度を高めることができる。よって、モータ2の作動音を低減でき、さらに、ステータ8とロータ9との間のエアギャップの確保が容易になり、ステータ8とロータ9との干渉を防止できる。
【0052】
また、第1締結受部81及び第2締結受部82は、ステータ8の軸心C1を中心とし、ねじ孔86の中心C2を通る円弧C3の外周(すなわち、径方向外側)に設けられている。このため、締結ねじ28に対する径方向において、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73(特に、第1コア受部71)の反対側で、締結ねじ28の締付力F1の一部を受けることができる。これにより、締結ねじ28の締付力F1でステータ8の径方向中央部が第1コア受部71を支点として軸方向に浮き上がる変形を好適に抑制できる。
【0053】
さらに、第1締結受部81及び第2締結受部82は、軸方向において締結ねじ28の頭部28bと重なる位置に設けられている。このため、締結ねじ28の締付力F1を第1締結受部81及び第2締結受部82で効率よく受けることができる。これにより、締結ねじ28の締付力F1でステータ8の径方向中央部が第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73を支点として軸方向に浮き上がる変形を好適に抑制できる。
【0054】
また、第1締結受部81及び第2締結受部82は、第1モータケース6の軸心C1を中心として対向するように設けられている。これにより、締結ねじ28による締付力F1をステータ8の両側の第1締結受部81及び第2締結受部82でバランスよく受けることができる。
【0055】
さらに、1つの第1締結受部81に、周方向に並んで第1コア受部71が配置されている。これにより、第1締結受部81で受ける締結ねじ28の締付力F1を、第1締結受部81とこの第1締結受部81に直近する第1コア受部71で受けることができる。換言すれば、締結ねじ28(取付孔24a、ねじ孔86)を挟んで両側に位置する第1締結受部81及び第1コア受部71で締結ねじ28の締付力F1を受けることができる。このため、締結ねじ28の締付力F1でステータ8の径方向中央部が第1コア受部71を支点として軸方向に浮き上がる変形を一層好適に抑制できる。
【0056】
ここで、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の各支持面、及び第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aは、軸方向において、第1取付座部77及び第2取付座部78よりもステータ8(コア本体部21)の方向に突出している。このため、締結ねじ28によって、第1モータケース6にコア本体部21を締め付ける際、コア本体部21の第1モータケース6に当接される箇所(第1モータケース6に受けられる箇所)を、確実に周方向にバランスよく配置することができる。このため、締結ねじ28の締付力F1によってコア本体部21にかかる荷重をバランスよく分散できる。
【0057】
加えて、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73は、周方向へ120°の間隔をあけて3箇所に配置されている。これにより、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73の3つで、ステータ8の第1製造誤差吸収部23A、第2製造誤差吸収部23B、及び第3製造誤差吸収部23Cを軸方向でより一層バランスよく支持することができる。
【0058】
さらに、各コア受部71,72,73の支持面に対して底部10の方向を「-」(マイナス)とし、ステータ8の方向を「+」(プラス)としたとき、第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aの位置は、例えば、各コア受部71,72,73の支持面に対して-0.1mm~0.3mmの位置とした。このため、締結ねじ28による締付力F1をこの締付力F1が発生する箇所の直近にある第1締結受部81及び第2締結受部82で好適に受けることができる。これにより、締結ねじ28の締付力F1でステータ8の径方向中央部が第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73(特に、第1コア受部71)を支点として軸方向に浮き上がる変形を一層好適に抑制できる。
【0059】
また、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73は、給電開口部84(給電部)を避けて配置されている。このため、第1コア受部71、第2コア受部72、及び第3コア受部73に影響されることなく、給電部を最適な位置にレイアウト(配置)できる。
【0060】
以下、実施形態の効果を
図7から
図13及び
図22、
図23A、
図23Bに基づいて比較例と比較して説明する。
図9は、比較例の第1モータケース100を軸方向からみた平面図である。
図10は、比較例の第1モータケース100に、締結ねじ28によってステータ8を締結固定した概念図である。
図11は、比較例の第1モータケース100に、締結ねじ28によって締結固定したステータ8の傾き(変形)を誇張して示したシミュレーション図である。
【0061】
図9、
図10、
図11に示すように、比較例の第1モータケース100は、実施形態の第1締結受部81及び第2締結受部82を備えていない。このため、ステータ8は、円環状のコア本体部21のうち、ティース22のうちのティース22Aに相当する部位21bが矢印Aの如く径方向内側に比較的大きく傾くことが確認できる。また、ティース22のうちのティース22Bに相当する部位21cが矢印Bの如く径方向外側に比較的大きく傾くことが確認できる。
【0062】
図12は、実施形態の第1モータケース6に、締結ねじ28によって締結固定したステータ8の傾き(変形)を誇張して示したシミュレーション図である。
図5、
図8、
図12に示すように、実施形態の第1モータケース6は、実施形態の第1締結受部81及び第2締結受部82を備える。これにより、ステータ8のコア本体部21は、複数(実施形態では6つ)のティース22に相当する部位の傾きが抑制される。すなわち、コア本体部21の全域の傾きを抑制できることが確認できる。
さらに、コア本体部21は、複数(実施形態では6つ)のティース22に相当する部位の傾き方向がバラつかないようにバランスよくコントロールされる。すなわち、コア本体部21の全域の傾き方向をバランスよくコントロールできる。
【0063】
図13は、締結ねじ28によりステータ8を第1モータケース6に締結するときの、締結前のステータ8に対する締結後のステータ8の傾き(mm)及び内径変位(mm)を説明するグラフである。ハッチング部G1は実施形態、ハッチング部G2は比較例における各受面81a,82aの突出量に対応する範囲を示す。
【0064】
図13において、実線で示されたグラフの縦軸は、ステータ8の傾き(mm)を示す。ステータ8の傾きとは、ステータ8の軸方向に沿って複数箇所設けた測定点において測定したコア本体部21の径方向中心を、締結ねじ28の締結前後で比較したときの径方向への変位量である。縦軸は、締結前のコア本体部21の径方向中心を原点として、出力軸48(軸心C4)の軸方向でギヤケース40側への傾きを+、出力軸48(軸心C4)の軸方向でカバー63側への傾きを-として示す。なお、
図13においては各測定点のうち最も変位量が大きい測定点のデータのみ記載している。横軸は、各コア受部71,72,73の支持面に対する第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aの突出量を示す。
【0065】
また、点線で示されたグラフの縦軸は、ステータ8の内径変位(mm)を示す。ステータ8の内径変位とは、ティース22に設けた測定点を、締結ねじ28の締結前後で比較したときの径方向への変位量である。縦軸は、各測定点のうち最も変位の大きかった測定点の変位方向を-、その反対方向を+として示す。横軸は、各コア受部71,72,73の支持面に対する第1締結受部81及び第2締結受部82の各受面81a,82aの突出量を示す。なお、
図13においては各ティース22のうち最も変位量が大きいティース22Aのデータのみ記載している。
【0066】
図13のハッチング部G2に示すように、比較例のステータ8は、各受面81a,82aの突出量が-0.4mm~0mmに設定されている。
図11から
図13において、比較例のステータ8は、コア本体部21のうちティース22Aに相当する部位の傾き方向が矢印Aの如く径方向内側に偏っていて、変位量が大きくなっていることが確認できる。
一方、実施形態のステータ8は、
図13のハッチング部G1に示すように、各受面81a,82aの突出量が-0.1mm~0.3mmに設定されている。
図11から
図13において、実施形態のステータ8は、コア本体部21のうちティース22Aに相当する部位の傾き方向が径方向内側や外側にバランスよくコントロールされ、ステータ8の傾きや内径変位の変位量が小さく抑えられていることが確認できる。
これにより、ステータ8の内径真円度を良好に確保でき、モータ2(
図2参照)の組付け精度を高めることができる。
【0067】
図22は、本発明の実施形態及び比較例におけるモータ装置1の作動音の各周波数(Hz)における音圧(dB(A))を示す。また、実線で示されたグラフは実施形態のデータであり、点線で示されたグラフは比較例のデータを示す。
図22において、実施形態のモータ装置1は比較例に比べ、特に400Hzの周波数帯において音圧が低減されていることが確認できる。
【0068】
図23A、
図23Bは、本発明の実施形態及び比較例におけるモータ装置1の振動の各周波数(Hz)における振動の大きさ(dB)を示す。また、実線で示されたグラフは実施形態のデータであり、点線で示されたグラフは比較例のデータを示す。
図23Aは、実施形態及び比較例の径方向への振動に関するデータを示す。
図23Bは、実施形態及び比較例の軸方向への振動に関するデータを示す。
図23A、
図23Bそれぞれにおいて、実施形態のモータ装置1は比較例に比べ、特に200Hzの周波数帯において振動が低減されていることが確認できる。
【0069】
ここで、一般にモータ装置を車両に配置する場合、モータ装置の作動音や振動に起因する騒音が車室内へ伝播することが懸念される。特に、高周波数の音よりも低周波数の音の方が車室内に伝播しやすい。そこで、本発明の実施形態を車両に搭載した場合、低周波数帯においてモータ装置1の作動音、振動を抑制できるため、車室内への音の伝播を効果的に抑制することができる。
【0070】
<変形例>
以下、第1締結受部81の第1変形例から第8変形例を
図14から
図21に基づいて説明する。なお、第1変形例から第8変形例において、実施形態と同一、類似構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0071】
図14は、第1変形例の第1締結受部110を示す斜視図である。
図14に示すように、第1変形例の第1締結受部110は、実施形態の第1締結受部81と同様に、外周が第1取付座部77の外周に沿って円弧形に形成され、内周がねじ孔86に沿って円弧形に形成されている。また、第1締結受部110の軸方向からみた長手方向の両端部は、ねじ孔86の中心C2から径方向外側に所定角度で放射状に延びる直線に沿って形成されている。さらに、第1締結受部110は、第1締結受部81と同様に、径方向の破断形状が四角形(矩形)に形成され、受面110aが平坦に形成されている。
【0072】
図15は、第2変形例の第1締結受部111を示す斜視図である。
図15に示すように、第2変形例の第1締結受部111は、実施形態の第1締結受部81と同様に、外周が第1取付座部77の外周に沿って湾曲状に形成されている。また、第1締結受部110は、内周が外周に沿って多角形に形成されている。さらに、第1締結受部110の軸方向からみた長手方向の一端部は
、ねじ孔86の中心C2から径方向外側に所定角度で放射状に延びる直線に沿って形成されている。第1締結受部110の軸方向からみた長手方向の他端部は、内周と外周とが交差する箇所に形成されている。さらに、第1締結受部111は、第1締結受部81と同様に、径方向の破断形状が四角形(矩形)に形成され、受面111aが平坦に形成されている。
【0073】
図16は、第3変形例の第1締結受部112を示す概念図である。
図16に示すように、第3変形例の第1締結受部112は、径方向の破断形状が円弧形に形成されている。
【0074】
図17は、第4変形例の第1締結受部113を示す概念図である。
図17に示すように、第4変形例の第1締結受部113は、径方向の破断形状が三角形に形成されている。
【0075】
図18は、第5変形例の第1締結受部114を示す概念図である。
図18に示すように、第5変形例の第1締結受部114は、径方向の破断形状が台形に形成されている。
【0076】
図19は、第6変形例の第1締結受部115を示す概念図である。
図19に示すように、第6変形例の第1締結受部115は、径方向の破断形状がアーチ状のかまぼこ形に形成されている。
【0077】
図20は、第7変形例の第1締結受部116を示す概念図である。
図20に示すように、第7変形例の第1締結受部116は、径方向の破断形状が5角形のホームベース形に形成されている。
【0078】
図21は、第8変形例の第1締結受部117を示す概念図である。
図21に示すように、第8変形例の第1締結受部117は、径方向の破断形状が凸形に形成されている。なお、第1締結受部117は、先端が凸形の湾曲に形成されていてもよい。
上述のように、各変形例のように構成しても前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、固定部材として締結ねじ28を例示したが、これに限られない。第1モータケース6にステータ8のコア本体部21を固定できる部材であればよい。例えば、固定部材として、締結ねじ28に代わってリベット等を使用してもよい。
【0080】
上述の実施形態では、モータ装置1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな電動機器に、上述のモータ装置1を適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…モータ装置、2…モータ、3…減速部、4…コントローラ、5…モータケース、6…第1モータケース(フレーム)、6a,7a…開口部、7…第2モータケース、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、11…コネクタ、12…内周壁、16…外フランジ部、17…外フランジ部、20…ステータコア、21…コア本体部、21a…外周縁、21b…部位、21c…部位、22,22A,22B…ティース、23…製造誤差吸収部、23A…第1製造誤差吸収部、23B…第2製造誤差吸収部、23C…第3製造誤差吸収部、24…締結部(固定部)、24a…取付孔(固定孔)、24A…第1締結部(固定部)、24B…第2締結部(固定部)、26…インシュレータ、27…コイル、28…締結ねじ(固定部材)、28a…ねじ部、28b…頭部、31…回転軸、32…ロータコア、33…永久磁石、40…ギヤケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…減速機構、42…ギヤ収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46,47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、52…リブ、61…磁気検出素子、62…コントローラ基板、63…カバー、69…軸芯孔、71…第1コア受部(コア受部)、72…第2コア受部(コア受部)、73…第3コア受部(コア受部)、74…第4コア受部、75…第5コア受部、76…第6コア受部、77…第1取付座部、78…第2取付座部、81,110,111,112,113,114,115,116,117…第1締結受部(固定受部)、81a,82a,110a,111a…受面、82…第2締結受部(固定受部)、84…給電開口部、86…ねじ孔(被固定孔)、100…第1モータケース、110…第1締結受部(締結受部)、C1…軸心、C2…ねじ孔の中心、C3…円弧