(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】はんだ付けシステム、これを用いた装置及びロボット
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20230927BHJP
B23K 3/08 20060101ALI20230927BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B23K3/00 310D
B23K3/00 310A
B23K3/08
G05B19/4093 J
(21)【出願番号】P 2023007256
(22)【出願日】2023-01-20
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2022128038
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 政士
(72)【発明者】
【氏名】山下 英昭
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/065437(WO,A1)
【文献】特開2018-114524(JP,A)
【文献】特開2005-322806(JP,A)
【文献】特開2002-110725(JP,A)
【文献】特開2014-195827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00
B23K 3/08
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実際の基板を読み込んで前記基板の表示画像を作成する表示画像作成機能と、
前記表示画像を実際のはんだ付け治具に搭載した際の画像であるオブジェクトを作成するオブジェクト作成機能と、
前記オブジェクトに対してポイントはんだ又は引きはんだがされるべき位置であるはんだ付け位置、ポイントはんだ又は引きはんだのいずれかであることを情報として含むはんだ付け属性、はんだ付け経路が特定されたプログラムを作成するプログラム作成機能とを備え、
前記表示画像作成機能は、
前記基板の縦及び横の実寸が予め記憶されていて且つ前記基板の一方の面のみを読み込み画像として取得する画像読み込み部と、
前記基板の平面視にて水平又は鉛直方向にある2点を取得してこの2点間の直線の傾きから前記読み込み画像の傾きを認識して前記2点が水平又は垂直方向になるように自動的に位置させる傾き補正部とを有し、
前記オブジェクト作成機能は、
実際にはんだ付けを行う治具に前記基板を搭載した際の前記基板の状態を取得する面付け情報取得部を有し、
前記プログラム作成機能は、
前記オブジェクトに対して入力されたはんだ付け位置を取得するはんだ付け位置取得部と、
前記はんだ付け位置に対して入力された前記はんだ付け属性を取得するはんだ付け属性取得部と、
前記基板に対してはんだ付けされる順番を示す経路を前記オブジェクト上に表示する経路表示部とを有していることを特徴とするはんだ付けシステム。
【請求項2】
前記オブジェクト作成機能は、スルーホールの位置及び孔径の情報を取得するためのスルーホール情報取得部を有し、
前記プログラム作成機能は、前記スルーホール情報取得部から前記はんだ付け位置取得部により取得されたはんだ付け位置の補正を行うためのはんだ付け位置補正部を有していることを特徴とする請求項1に記載のはんだ付けシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のはんだ付けシステムがさらに備える前記プログラムを送信するためのプログラム送信機能の送信部から送信された前記プログラムを受信する受信部を備えたことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のはんだ付けシステムがさらに備える前記プログラムを送信するためのプログラム送信機能の送信部から送信された前記プログラムを受信する受信部を備えたことを特徴とするはんだ付けロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けのために特に適したプログラムを備えたはんだ付けシステム、これを用いた装置及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム知識がなくても容易に制御できるようにしたことを目的とするロボットシステム及び記録媒体が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、パソコンから所要のデータとして、はんだ付けポイントを示す座標データ、そのポイントへの移動速度、移動加速度及びはんだ付け条件データをティーチングすることにより、制御ボックスは、予め組み込まれている制御用プログラムにしたがって、ティーチングされたポイントにはんだこてを移動させ、はんだ付けユニットコントローラを介してはんだ付け条件を制御してはんだ付けを順番に行うようにしており、従来のように、ティーチングの際に専用言語を用いたプログラムの入力を不要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の基板のはんだ付け作業はその基板に応じて行う必要があり、その基板を見ながらはんだ付けプログラムの作成ができればさらに便利である。特許文献1では、実際の基板をどのように取り込むかについては記載がない。また、その際に実際の基板を読み込んだ際の画像処理も必要となるし、またはんだ付けの際には装置やロボット等が有する治具に装着されて行われるため、それらの治具に合わせるための補正も必要である。さらには、はんだ付けが行われる順番等が画面上で目視できることは利便性にもつながる。これらのはんだ付け作業において、作業者の負荷低減と利便性の向上を実際の基板からスタートして考慮し、その中で総合的にはんだ付け効率の向上を図ることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、作業者の負荷低減と利便性の向上を図ることができ、最終的にはんだ付け効率の向上を図ることができるはんだ付けシステム、これを用いた装置及びロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、実際の基板を読み込んで前記基板の表示画像を作成する表示画像作成機能と、前記表示画像を実際のはんだ付け治具に搭載した際の画像であるオブジェクトを作成するオブジェクト作成機能と、前記オブジェクトに対してポイントはんだ又は引きはんだがされるべき位置であるはんだ付け位置、ポイントはんだ又は引きはんだのいずれかであることを情報として含むはんだ付け属性、はんだ付け経路が特定されたプログラムを作成するプログラム作成機能とを備え、前記表示画像作成機能は、前記基板の縦及び横の実寸が予め記憶されていて且つ前記基板の一方の面のみを読み込み画像として取得する画像読み込み部と、前記基板の平面視にて水平又は鉛直方向にある2点を取得してこの2点間の直線の傾きから前記読み込み画像の傾きを認識して前記2点が水平又は垂直方向になるように自動的に位置させる傾き補正部とを有し、前記オブジェクト作成機能は、実際にはんだ付けを行う治具に前記基板を搭載した際の前記基板の状態を取得する面付け情報取得部を有し、前記プログラム作成機能は、前記オブジェクトに対して入力された前記はんだ付け位置を取得するはんだ付け位置取得部と、前記はんだ付け位置に対して入力された前記はんだ付け属性を取得するはんだ付け属性取得部と、前記基板に対してはんだ付けされる順番を示す経路を前記オブジェクト上に表示する経路表示部とを有していることを特徴とするはんだ付けシステムを提供する。
【0007】
好ましくは、前記オブジェクト作成機能は、スルーホールの位置及び孔径の情報を取得するためのスルーホール情報取得部を有し、前記プログラム作成機能は、前記スルーホール情報取得部から前記はんだ付け位置取得部により取得されたはんだ付け位置の補正を行うためのはんだ付け位置補正部を有している。
【0008】
また、はんだ付けシステムがさらに備える前記プログラムを送信するためのプログラム送信機能の送信部から送信された前記プログラムを受信する受信部を備えたことを特徴とする装置も提供する。
【0009】
また、はんだ付けシステムがさらに備える前記プログラムを送信するためのプログラム送信機能の送信部から送信された前記プログラムを受信する受信部を備えたことを特徴とするはんだ付けロボットも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示画像作成機能により、実際の基板から得られた画像をもとにその基板を見ながらはんだ付けプログラムの作成ができる。また、傾き補正部は、水平又は垂直方向にある2点をもとに読み込まれた画像の傾きを認識するので、確実な傾きの有無を検知でき、さらにこの2点が水平又は垂直方向になるように自動的に補正するので、作業者が傾き補正角度を入力する手間がなくなる。さらに、オブジェクト作成機能により、実際の治具に搭載された際の基板を目視することができるようになるため、作業性が向上する。また、経路表示部によりはんだ付けされる順番が経路で示されるので、目視により認識しやすくなり利便性が向上する。このような基板の読み込みからはんだ付けの具体的な動作までを一連の流れとして実現でき、作業者の負荷低減と利便性の向上を図ることができ、最終的にはんだ付け効率の向上を総合的に図ることができる。
【0011】
また、送信部から送信されたプログラムを受信する受信部を有する装置又ははんだ付けロボットにより、これら装置又はロボットはそのプログラムに応じて自動的にはんだ付けを行うため、作業者は装置又はロボットに対して操作をする必要がなくなり、作業者の利便性はさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るはんだ付けシステムの概略図である。
【
図5】表示画像作成機能及びオブジェクト作成機能で用いられる画面である。
【
図9】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図10】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図11】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図13】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図14】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図15】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図16】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図17】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図18】プログラム作成機能で用いられる画面である。
【
図20】プログラム送信機能で用いられる画面である。
【
図21】本発明に係るはんだ付けロボットの概略図である。
【
図22】オブジェクト作成機能の別の例を示す概略図である。
【
図23】スルーホール情報が記載された画面の例を示す概略図である。
【
図24】プログラム作成機能の別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明に係るはんだ付けシステム1は、表示画像作成機能2と、オブジェクト作成機能3と、プログラム作成機能4とプログラム送信機能5とを備えている。表示画像作成機能2は、実際の基板を読み込んでこの基板の表示画像を作成するものである。オブジェクト作成機能3は、表示画像作成機能2で作成された表示画像を実際のはんだ付け治具に搭載した際の画像であるオブジェクトを作成するものである。プログラム作成機能4は、オブジェクト作成機能3で作成されたオブジェクトに対してはんだ付け位置、はんだ付け属性、はんだ付け経路が特定されたプログラムを作成するものである。プログラム送信機能5は、プログラム作成機能4で作成されたプログラムを他の機器に送信するためのものである。以下、各機能を個別に説明する。
【0014】
<表示画像作成機能>
図2に示すように、システム1が有する表示画像作成機能2は、画像読み込み部2aと、トリミング部2bと、色調変更部2cと、傾き補正部2dと、表示画像保存部2eとを有している。画像読み込み部2aは、基板の縦及び横の実寸が予め記憶されていて且つこの基板の一方の面のみを読み込み画像として取得するものである。この画像読み込み部2aで読み込まれるべき基板には、はんだ付け位置を特定するための情報(シルク印刷、マーカー(マーキング)、ランド形状、ランドパターン等)が予め形成されている。これらの情報が記載されている面が基板の一方の面であり、基板に搭載すべき電子部品等の部品をはんだ付けするために、まずはこの一方の面(部品搭載面)の画像を読み込むことになる。
【0015】
システム1を作動させると、まずはシステム1を演算処理するためのPC等のモニターに、
図3のような画面が表示される。これによりまずは画像読み込み部2aが作動する。このときの画面が、基板の一方の面が読み込まれる前の段階である。システム1の作動は、基板の面を読み込むためのスキャナ(又はカメラ)を起動させるためのアイコンをクリック(タップ)した際に行ってもよい。スキャナによって基板を読み込むと、
図4のような画面となる。画面には、基板表示領域6が設けられている。ここに、読み取られた基板の一方の面が表示される。図の例では、コネクタが接続されるべき部分がCN1~CN3として、ICチップ等の電子部品が搭載されるべき部分がIC1~IC3として記載されている。これらの文字やプリント等された形状がはんだ付け位置を特定するための情報となっている。
【0016】
また、画面には「部品面」と「はんだ面」と記載された面選択ボタン領域7が形成されている。
図4で表示されている基板は、スキャナで読み込まれた状態そのままを示していて、これが「部品面」である。「はんだ面」は「部品面」と反対側の面を意味しているが、このシステム1では「はんだ面」を表示するために基板の一方の面の反対側の面をスキャナ等で読み込むことはない。したがって、「はんだ面」を選択すると、
図5のように、読み込まれた基板が反転表示される。つまりこれは、「はんだ面」側から視た「部品面」が表示されるという意味である。はんだ付けするべき面である「はんだ面」からすれば、「部品面」を反転表示させてはんだ付け位置を特定するための情報と照合させればその位置がそのままはんだ付けをするべき位置となる。したがってシステム1ではこのような反転表示させるための面選択ボタン領域7が設けられていて、さらに画像読み込み部2aははんだ付け位置を特定するための情報が表示された「部品面」のみを読み込むことにしている。このようにして、基板両面をスキャンするということを不要にして作業者にとっての簡易性及び利便性を図っている。
【0017】
また、画像読み込み部2aは、読み込むべき基板の外寸(縦と横の長さの寸法)が予め記憶されている。したがって、作業者は基板を読み込めば、あとはその基板の外観のみをチェックすればよく、外寸を別途入力する必要はない。この予めの記憶は、通常用いられているキャリブレーションの技術を用いて行うことができる。
【0018】
トリミング部2bは、画像読み込み部2aにて読み込まれた基板の画像に対して、トリミングを行う。具体的には、基板表示領域7に表示されている基板とその周りの余白に対して、基板の外縁を囲む矩形を指定することで、基板部分のみを切り出して表示させるためのものである。
【0019】
色調変更部2cは、トリミング部2bにてトリミングされた基板の画像に対して、色調を変更させるためのものである。任意のコマンドを入力、あるいは図示しない色調変更ボタンをクリックすることで、
図6に示すような画面が表示される。これにより、画面の明暗やコントラスト、あるいは彩度を変更できる。読み込まれた基板は通常ソルダレジスト等や印刷等の色が多数存在しているので、これをグレースケール表示等、表示される色の数を低減させることで画面を見やすく調整する。これは、はんだ付け位置を特定するための情報を見やすくし、後述するプログラム作成機能4にてはんだ付け位置マークや経路表示を容易に識別できるようにするためのものである。
【0020】
傾き補正部2dは、読み込まれた基板の傾き(画面に対して垂直又は水平方向に対する傾き)を補正するものである。具体的には、基板の平面視にて水平又は鉛直方向にある任意の2点を取得してこの2点間の直線の傾きから読み込まれた基板の画像の傾きを認識する。例えば、
図5でいえば、コネクタが水平方向に並んでいることが予め設定されているため、任意のコネクタ位置(例えばコネクタ位置8a、8b)が指定され、この2点8a、8bが水平になるように自動的に画像が回転される。傾き補正部2dがあることで、水平又は垂直方向にある2点をもとに読み込まれた画像の傾きを認識するので、確実な傾きの有無を検知でき、さらにこの2点が水平又は垂直方向になるように自動的に補正するので、作業者が傾き補正角度を入力する手間がなくなる。
【0021】
表示画像保存部2eは、上述した画像読み込み部2aにて読み込まれた基板の画像をトリミング部2b、色調変更部2c、傾き補正部2dにて後述するはんだ付けプログラムを作成しやすいように加工された画像を表示画像として保存する。ここで保存される画像は、読み込まれた基板の画像を反転表示させたものである(面選択ボタン領域7にて「はんだ面」を選択した状態の画像)。はんだ位置を特定するためのこれ以降の工程では、「はんだ面」側から視た「部品面」を用いることが効率的だからである。すなわち、反転表示をすることで、作業者は「部品面」に記載されたはんだ付け位置の情報を「はんだ面」から視認でき、以後の作業がやりやすくなる。
【0022】
<オブジェクト作成機能>
図7に示すように、オブジェクト作成機能3は、面付け情報取得部3aと、位置補正部3bと、オブジェクト保存部3cとを有している。面付け情報取得部3aは、実際にはんだ付けを行う治具に基板を搭載した際の基板の状態を取得するものである。オブジェクト作成機能3が作動している段階では、表示画像作成機能2と同様の画面が表示されている。具体的には、
図5のような画面が表示されている。はんだ付けを実際に行う治具は、基板が1枚のみセットされる場合と複数枚セットされる場合があり、複数枚セットされる場合でも、それらが全て同時にはんだ付けされる。画面には面付け情報入力領域9が表示されていて、ここにセットされるべき基板の枚数(縦方向の枚数と横方向の枚数)が入力される。図の例では、縦3枚、横3枚の合計9枚の基板がセットされる。そして、それらの基板間の間隔(縦方向及び横方向)も入力される。図の例では、縦方向及び横方向の基板同士の間隔が60mmのものを示している。この入力は予めどのような治具を用いるかについて面付け情報取得部3aが記憶していて、自動的に取得されていてもよいし、手動で入力してもよい。自動的であれば作業者の手間が減り、これに際するヒューマンエラーも防止できる。さらに画面には面付け状態選択ボタン領域10が表示されていて、「全体」を選択すれば実際に治具にセットされた複数枚の基板が表示される。「1枚」を選択すると表示画像保存部2eで保存された状態の基板の画像が1枚表示される。
【0023】
位置補正部3bは、面付け状態選択ボタン領域10にて「全体」が選択されて複数枚の基板が表示された状態で、後述するプログラム作成機能4で示される位置と、実機(装置、ロボット)上における治具の位置ずれを補正する為に使用する基準となる位置(シルク印刷、マーカー(マーキング)、ランド等)を指定する。基準位置を指定し、実機上でアームを基準位置に移動させる事により自動的にずれ量を検出し補正する事が可能となり、作業者が個々の実機に対して誤差を入力する手間がなくなる。オブジェクト保存部3cは、このようにして治具にセットされた状態の基板の画像をオブジェクトとして保存する。なお、表示画像保存部2eで保存された基板が読み込まれた基板の反転表示されたものであるため、オブジェクトとして保存される基板の画像も同様に反転表示されたものである。
【0024】
<プログラム作成機能>
図8に示すように、プログラム作成機能4は、オブジェクト表示部4aと、はんだ付け位置取得部4bと、はんだ付け属性取得部4cと、経路表示部4dと、経路変更部4eと、編集画面表示部4fと、プログラム保存部4gとを有している。プログラム作成機能4が起動されると、まずはオブジェクト表示部4aにてオブジェクト保存部3cで保存されたオブジェクトが
図9のように表示される。この画面には、面付け状態選択ボタン領域10があり、
図9の例では「全体」が選択された状態を示している。なお、この例では、縦方向に1枚、横方向に3枚の基板がセットされる治具に面付けされた例を示している。また、基板同士の間隔は90mmの例を示している。さらにこの画面には、上述した画像読み込み部2aで自動的に取得されている基板の寸法が表示される(図の例では75mm×55mm)。このプログラム作成機能4でのオブジェクト表示部4aでも、面付けされた全体の状態を確認することができるようになっている。
【0025】
面付け状態選択ボタン領域10にて「1枚」を選択すると、
図10のような画面となる。この画面にて、作業者は表示されたオブジェクトに対してはんだ付け位置とはんだ付け属性を入力する。この入力は、マウスではんだ付け位置をクリック(タップ)してその箇所にてはんだ付け属性を選択するような形で行われる。はんだ付け位置取得部4bは、入力されたはんだ付けの位置を取得する。はんだ付け属性取得部4cは、入力されたはんだ付け属性を取得する。はんだ付け属性とは、いわゆるはんだ付け条件であり、はんだ付けの種類(ポイントはんだ又は引きはんだ)の情報を含むものである。はんだ付け属性としては、他にはんだ付けを行う際のはんだ量、はんだ出しスピード、ランド加熱時間など、はんだ付けに必要なパラメータを含めてもよい。はんだ付け位置及びはんだ付け属性がはんだ付け位置取得部4b及びはんだ付け属性取得部4cにて取得されると、
図11のように、画面上にはんだ付け位置とはんだ付け属性が目視できるように表示される。図の例では、CN1(図では反転表示)のコネクタについて、紙面向かって左から1番目と4番目がポイントはんだが行われるものを示している。
図12に示すように、ポイントはんだがなされる箇所には、丸印の内側に十文字が記載され、この十文字の中心からコテ先方向を示す三角印がついたはんだ付け位置マーク11が付される。さらに図の例では、CN2(図では反転表示)のコネクタについて、上側及び下側の2行に対して引きはんだが行われるものを示している。引きはんだの場合は、開始点と終了点にポイントはんだと同じマークがつき、開始点と終了点が線で結ばれた引きはんだマーク12が付される。なお、はんだ付けが行われる箇所をカーソル等で選択すると、
図13に示すように、その箇所におけるはんだ付け位置のXY座標とコテ先角度(Rで示される)、それからはんだ長等のはんだ付け属性がパラメータボックス13に表示される。図の例では、CN1の紙面向かって左から4番目のはんだ付け位置について、そのXY座標が72.14mm、8.25mmを示し、コテ先角度が120°、はんだ長が2.4mmの例を示している。なお、作業者ははんだ付けを伴わない移動点を指定することもできる。はんだ付けは行わないが、コテ先が通過して欲しい点を移動点としたい場合にこの機能は利用可能である。また、作業者がその旨を入力すると経路表示部4dが動作し、
図15に示すような画面を表示する。なお、上記では基板1枚を表示した場合の例を示したが、これらの操作は面付け状態選択ボタン10にて「全体」を選択して複数枚の基板を画面上に表示した状態でも可能である。
【0026】
はんだ付け位置とはんだ付け属性が取得され、作業者がその旨を入力すると、
図14に示す画面が表示される。ここには、はんだ付け位置取得部4bとはんだ付け属性取得部4cとが取得したそれぞれの箇所でのはんだ付け位置とはんだ付け属性、コテ先角度が表示される。引きはんだについては、開始点、及び、終了点のXY座標が表示される。図の例では、紙面向かって左側のX及びYが引きはんだの開始点を示すXY座標(23.72、8.25)を示し、紙面向かってその右側のXYが開始点に対する相対的な座標(X方向に12.70ずれて、Y方向にはずれない(0.00ずれる))という終了点であることを示している。相対的な座標には、数値の末尾にRを示すことで認識できるようにしている。
【0027】
この画面にて行を選択しドラックする事により行の並び替えが行われ、はんだ付けする順番を変更する事ができる。自動設定ボタン15をクリックすると、自動的に動作開始位置から相対距離の短い順に並べ替えが行われる。すなわち、コテ先が効率よく移動するように自動的に経路の並べ替えが行われる。はんだ付け順が変更された場合、経路表示部4dが作動し、
図15に示される経路14も随時更新表示される。作業者がこの経路線14の修正を行う場合は、
図14の画面に戻ってはんだ付けする順番を指定できる。このような修正があると、経路変更部4eが作動して経路の変更に対応する。
図14及び
図15の画面を見返しながら作業者がはんだ付け位置とはんだ付け属性、及びその経路を確認し終えて、完了ボタン16をクリックすると、
図16に示す画面が表示される。ここで確定ボタン17をクリックすることで、はんだ付け経路が特定されたプログラムが完成する。
【0028】
プログラムが完成すると、編集画面表示部4fが実行動作し、
図17に示す画面が表示される。この画面にて、実際のコテ先の動きを作業者は確認できる。図の例で、No.1~No.7の動作は以下の通りである。
No.1: 座標(X:22.72、Y:8.25)まで移動する。
No.2: 座標(X:23.72、Y:8.25)に移動し引きはんだ動作を開始後、Xのみ12.7相対移動させる。Xの移動完了により、引きはんだ動作が完了。
No.3: 座標(X:22.72、Y:10.79)まで移動する。
No.4: 座標(X:23.72、Y:10.79)に移動し引きはんだ動作を開始後、Xのみ12.7相対移動させる。Xの移動完了により、引きはんだ動作が完了。
No.5: 座標(X:72.14、Y:8.25)に移動しポイントはんだ動作を行う。
No.6: 座標(X:82.30、Y:8.25)に移動しポイントはんだ動作を行う。
No.7: プログラムを終了させる
【0029】
作業者は必要に応じてコマンド追加やコマンドの編集ができる。この機能も編集画面表示部4fに備わっている。コマンドの追加や編集をする際には、作業者がその旨入力すれば、
図18に示すような画面が表示される。図で示すコマンドは一例であるが、各コマンドは以下の意味を持っている。
MOVE: ロボットアームを指定位置に移動する
HOME: ロボットアームをホーム位置(待機位置)に移動する
CLEANING: コテ先をクリーニングする。
P-SOLDER: ポイントはんだを行う。
D-SOLDER: 引きはんだを行う。
PORT OUT: ロボットのDigital I/Oの状態を設定する。
PLUSE OUT: ロボットのDigital I/Oから、パルス信号を発生させる。
【0030】
作業者が
図17及び
図18の画面にてプログラムを確認して編集を完了した旨を入力するとプログラム保存部4gによりプログラムが保存される。以上により、システム1によってはんだ付けのためのプログラムが作成される。
【0031】
<プログラム送信機能>
図19に示すように、システム1にはさらにプログラム送信機能5が備わり、ここには送信部5aが備わっている。上述した基板は治具に装着され、はんだ付け装置やはんだ付けロボット等により、はんだ付けを行う。これらの装置やロボットにプログラムを送信してそのプログラムに応じた動作をさせるため、作業者はプログラム送信機能5を起動させる。そうすると、
図20に示すように、送信部5aによりプログラムを送信するかどうかを決定できる画面が表示される。ここでOKボタン19をクリックすることでプログラムは各装置やロボットに送信される。
図21に示すように、例えばはんだ付けロボット20にプログラムを送信する場合には、このロボット20にプログラムの受信部(不図示)が備わっている。なお、装置の場合も同様で装置のいずれかの箇所に受信部が備わる。この受信部は、送信部から送信されたプログラムを受信してロボット20をそのプログラム通りに動作させるためのものである。
【0032】
以上より、本発明によれば、表示画像作成機能により、実際の基板から得られた画像をもとにその基板を見ながらはんだ付けプログラムの作成ができる。さらに、オブジェクト作成機能により、実際の治具に搭載された際の基板を目視することができるようになるため、作業性が向上する。また、経路表示部によりはんだ付けされる順番が経路で示されるので、目視により認識しやすくなり利便性が向上する。このような基板の読み込みからはんだ付けの具体的な動作までを一連の流れとして実現でき、作業者の負荷低減と利便性の向上を図ることができ、最終的にはんだ付け効率の向上を総合的に図ることができる。
【0033】
また、送信部から送信されたプログラムを受信する受信部を有する装置又ははんだ付けロボットにより、これら装置又はロボットはそのプログラムに応じて自動的にはんだ付けを行うため、作業者は装置又はロボットに対して操作をする必要がなくなり、作業者の利便性はさらに高まる。
【0034】
本発明に係るはんだ付けシステム1は、以下の構成要素を含めてもよい。
図22に示すように、オブジェクト作成機能3として、さらにスルーホール情報取得部3dを備えてもよい。基板にはスルーホールが形成されることもあり、スルーホール情報取得部3dはこのスルーホールの基板に対する位置や、スルーホールの孔径の情報を取得する。このスルーホール情報はNCデータ(ドリルデータ)として予め基板製造過程において設定されているデータを用いてもよいし、表示画像作成機能2が有する画像読み込み部2aから読み込んだデータでもよい。
【0035】
スルーホール情報は
図23のように、画面上(図では5つのスルーホールの孔径の情報が表示)に表示される。
【0036】
このスルーホール情報は、オブジェクト保存部3cでの保存の際に、位置補正部3bにより表示画像と重ね合わされることで、さらにスルーホールの位置も考慮した基板の位置合わせができるようになる。スルーホール情報によるスルーホール位置と表示画像に表示されているスルーホール位置との間にずれがある場合は、スルーホールが水平方向に並んでいることが予め設定されている箇所にて、任意のスルーホールを2点選択し、この2点が水平又は垂直になるように自動的に表示画像を回転させる。上述したコネクタの2点を元に補正する場合と同様の手順である。
【0037】
また、スルーホール情報は、プログラム作成機能4のはんだ付け位置取得部4bでも使用される。はんだをスルーホール内にも行う場合があるためである。さらに、プログラム作成機能4として、
図24に示すように、さらにはんだ付け位置補正部4hを設けてもよい。スルーホール情報があってはんだ付け位置を修正する必要がある場合は、スルーホールの位置や孔径からはんだ付けに適した位置に自動的に補正される。この補正は、スルーホール内に適切にはんだが行われるようにするためであり、スルーホールの中心軸をスルーホール情報から正確に取得し、はんだ付けするポイントを的確に中心に合わせるためのものである。
【0038】
なお、はんだ付け属性取得部4cでも、スルーホール情報を用いてはんだ量等のはんだ付け条件を自動的に出し、設定することが可能である。
【0039】
このようなスルーホール情報も取得、活用することで、基板の適正な位置合わせが可能となり、孔径情報から必要なはんだ量やその自動設定も可能となる。自動的に設定することにより、作業者の負担も軽減される。
【符号の説明】
【0040】
1:はんだ付けシステム、2:表示画像作成機能、2a:画像読み込み部、2b:トリミング部、2c:色調変更部、2d:傾き補正部、2e:表示画像保存部、3:オブジェクト作成機能、4:プログラム作成機能、5:プログラム送信機能、6:基板表示領域、7:面選択ボタン領域、8a:コネクタ位置、8b:コネクタ位置、9:面付け情報入力領域、10:面付け状態選択ボタン領域、11:はんだ付け位置マーク、12:引きはんだマーク、13:パラメータボックス、14:経路線、15:自動設定ボタン、16:完了ボタン、17:確定ボタン、19:OKボタン、20:はんだ付けロボット
【要約】
【課題】作業者の負荷低減と利便性の向上を図ることができ、最終的にはんだ付け効率の向上を図ることができるはんだ付けシステム、これを用いた装置及びロボットを提供する。
【解決手段】はんだ付けシステム1は、実際の基板を読み込んで基板の表示画像を作成する表示画像作成機能2と、表示画像を実際のはんだ付け治具に搭載した際の画像であるオブジェクトを作成するオブジェクト作成機能3と、オブジェクトに対してはんだ付け位置、はんだ付け属性、はんだ付け経路が特定されたプログラムを作成するプログラム作成機能4とを備え、表示画像作成機能は、画像読み込み部と、傾き補正部とを有し、オブジェクト作成機能は、面付け情報取得部を有し、プログラム作成機能は、はんだ付け位置取得部と、はんだ付け属性取得部と、経路表示部とを有している。
【選択図】
図1