(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-26
(45)【発行日】2023-10-04
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20230927BHJP
F16F 9/44 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/44
(21)【出願番号】P 2023544339
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014398
【審査請求日】2023-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政信
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-127779(JP,A)
【文献】特開2016-194339(JP,A)
【文献】特開平08-270713(JP,A)
【文献】特開2000-130488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
F16F 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動可能に挿入されて前記シリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダ内に移動可能に挿入されるとともに前記ピストンに連結されるピストンロッドと、
液体を貯留するタンクと、
前記伸側室と前記圧側室とをそれぞれ並列して連通する第1通路および第2通路と、
前記圧側室と前記タンクとを連通する第3通路と、
前記第1通路に設けられて前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、
前記第2通路に設けられて前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、
前記第3通路の途中に着脱可能に設けられたバルブユニットとを備え、
前記バルブユニットは、
前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、
前記圧側減衰バルブに並列配置されて閉弁時に前記圧側室と前記タンクとの連通を断つとともに、前記圧側室の圧力と前記タンクの圧力との差圧が開弁圧に達すると開弁して前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れを許容する圧側リリーフバルブと、
前記圧側減衰バルブに並列配置されて前記タンクから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記シリンダと前記タンクとを連結するとともに前記第3通路と前記第3通路の途中に設けられた弁孔とを有するハウジングを備え、
前記バルブユニットは、前記弁孔内に収容される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記バルブユニットは、
前記圧側減衰バルブに並列配置されて前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに流路面積を調整可能なニードルバルブを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記ニードルバルブは、環状弁座と、前記環状弁座に対して遠近可能なニードルとを有し、
前記圧側リリーフバルブは、前記ニードル内に収容される
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記ニードルは、
筒状であって、先端外周に設けられて前記環状弁座の内側に挿入可能なニードル部と、外周の中間部に設けられて前記環状弁座に離着座可能なフランジとを有する頭部と、
有底筒状であって、底部に形成された外部からの操作を可能とする操作部と、内外を連通する通孔とを具備して、前記頭部の後方に連結される操作筒とを有し、
前記圧側リリーフバルブは、前記頭部の環状の後端を環状のリリーフバルブ弁座として、前記リリーフバルブ弁座に離着可能であって前記操作筒内に収容される弁体と、前記弁体と前記操作筒との間に介装されるとともに前記操作筒内に収容されて前記弁体を前記リリーフバルブ弁座ヘ向けて付勢するばねとを有し、前記弁体が前記リリーフバルブ弁座から離間すると前記頭部内と前記通孔とを連通させる
ことを特徴とする請求項4に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記ピストンロッドの外周に摺接して前記ピストンロッドの外周をシールするシール部材を備え、
前記圧側リリーフバルブの前記開弁圧は前記シール部材が耐え得る最大圧力未満に設定される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発生する減衰力で車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
比較的軽量な鞍乗型車両に用いられる場合、緩衝器は、伸長時にのみ減衰力を発揮すれば十分に車体の振動を抑制できるので、圧側の減衰バルブを備えないものがある。
【0004】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、作動油を貯留するタンクと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室とを連通する伸側ポートと圧側ポートと、伸側ポートに設けられて伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、圧側ポートに設けられて圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、圧側室とタンクとを連通するタンク通路とを備えて構成されている。
【0005】
このように構成された緩衝器は、伸長作動時には、作動油が圧縮される伸側室から拡大する圧側室へ伸側減衰バルブを通過して移動するため、伸側室内の圧力を上昇させて伸長作動を妨げる減衰力を発生する。また、緩衝器は、収縮作動時には、作動油が圧縮される圧側室から拡大する伸側室へ圧側チェックバルブを介して移動するが、圧側チェックバルブが作動油の流れに抵抗を与えないので、収縮作動を妨げる減衰力をほとんど発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、比較的軽量な鞍乗型車両に用いられる緩衝器では、伸長作動時にのみ減衰力を発揮するように構成されているのが、収縮作動時にも減衰力の発揮が要望される場合がある。ここで、緩衝器が収縮作動時にも減衰力を発揮できるようにするには、圧側室とタンクとの間に圧側室からタンクへ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブを設ける必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の緩衝器に対して圧側減衰バルブを付加的に設けることはできず、従来の緩衝器に対して収縮作動時でも減衰力を発揮する緩衝器が望まれる場合、緩衝器の製造者は、従来の緩衝器の代わりに新たに圧側減衰バルブを搭載した緩衝器を新たに設計・製造する必要がある。そのため、圧側減衰バルブを備えていない緩衝器に収縮作動時に減衰力を発揮できる機能を簡単に付加できるようにしたいとの要望がある。
【0009】
そこで、本発明は、収縮作動時に減衰力を発揮できる機能を簡単に付加できる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、液体を貯留するタンクと、伸側室と圧側室とをそれぞれ並列して連通する第1通路および第2通路と、圧側室とタンクとを連通する第3通路と、第1通路に設けられて伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、第2通路に設けられて圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、第3通路の途中に着脱可能に設けられたバルブユニットとを備え、バルブユニットは、圧側室からタンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、圧側減衰バルブに並列配置されて閉弁時に圧側室とタンクとの連通を断つとともに圧側室の圧力とタンクの圧力との差圧が開弁圧に達すると開弁して圧側室からタンクへ向かう液体の流れを許容する圧側リリーフバルブと、圧側減衰バルブに並列配置されてタンクから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを備えている。
【0011】
このように構成された緩衝器では、圧側減衰バルブ、圧側リリーフバルブおよび伸側チェックバルブとを並列に備えたバルブユニットが圧側室とタンクとを連通する第3通路の途中に着脱可能に設けられているので、バルブユニットを装着するだけで伸長作動時にのみ減衰力を発揮する緩衝器を伸長作動時のみならず収縮作動時にも減衰力を発揮する緩衝器として機能できる。また、バルブユニットを取り外せば、緩衝器を伸長作動時にのみ減衰力を発揮する緩衝器として利用できる。
【0012】
バルブユニットの有無によって、緩衝器を、伸長作動時と収縮作動時との両方で減衰力を発生する緩衝器と、伸長作動時にのみ減衰力を発生する緩衝器とのいずれか一方に設定できる。緩衝器の製造者は、バルブユニット以外の緩衝器を同一の部品で同一のラインで組立でき、ユーザの要望に応じてバルブユニットの有無を決定して緩衝器を製造できる。したがって、製造者は、緩衝器の製造コストを低減できる。
【0013】
さらに、前述のように構成された緩衝器によれば、バルブユニットが圧側リリーフバルブを備えているので、緩衝器の収縮作動時において緩衝器の収縮速度が高速となってもシリンダ内の圧力が過大となるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態における緩衝器のバルブユニット部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、液体を貯留するタンク4と、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第1通路P1および第2通路P2と、圧側室R2とタンク4とを連通する第3通路P3と、第1通路P1に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ5と、第2通路P2に設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ6と、第3通路P3の途中に着脱可能に設けられたバルブユニットVとを備えて構成されている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0016】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、シリンダ1の
図1中下端の内周には、シリンダ外方から順に、環状のキャップ10、環状のシール部材8および環状のロッドガイド7が重ねられた状態で挿入されている。ロッドガイド7は、シリンダ1の外周の加締部1aによってシリンダ1内で固定されている。そして、キャップ10およびシール部材8は、ロッドガイド7とシリンダ1の下端の加締部1bとの間で挟持されて、シリンダ1に固定されている。なお、キャップ10、シール部材8およびロッドガイド7のシリンダ1への固定手段は、任意に設計変更できる。
【0017】
また、シリンダ1の
図1中上端には、シリンダ1の上端を閉塞してシリンダ1とタンク4とを連結するとともにバルブユニットVを収容するハウジング11が装着されている。そして、シリンダ1内には、先端にピストン2が装着されたピストンロッド3が移動可能に挿入されている。
【0018】
ピストンロッド3は、シール部材8の内周およびロッドガイド7の内周に摺動自在に挿通されてシリンダ1内に挿入されており、ロッドガイド7によって軸方向への移動が案内される。シール部材8は、ピストンロッド3の外周に摺接してピストンロッド3の外周をシールしてシリンダ1内を密閉している。
【0019】
また、シリンダ1内は、ピストン2によって、液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、本実施の形態では、作動油とされるが、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用可能である。
【0020】
ピストンロッド3の
図1中上端となる先端には、ピストン2が連結されている。また、ピストンロッド3の
図1中下端には、図示しない車両における車輪を保持する部材に連結可能なブラケットB1が取り付けられており、
図1中下端近傍の外周には筒状のバンプクッション14が装着されている。
【0021】
バンプクッション14は、緩衝器Dが最収縮する際にシリンダ1の下端内周に固定されたキャップ10に当接して圧縮されると、弾発力を発揮して緩衝器Dの最収縮時の衝撃を緩和する。
【0022】
ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第1通路P1および第2通路P2とが設けられている。さらに、ピストン2には、第1通路P1を開閉可能であって伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ5と、第2通路P2を開閉可能であって圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ6とが設けられている。なお、第1通路P1および第2通路P2は、伸側室R1と圧側室R2とを連通していればよいので、ピストン2以外に設置されてもよいので、たとえば、シリンダ1の外周に図示しない外筒を設けてシリンダ1と外筒との間の隙間を利用して形成されてもよい。なお、伸側減衰バルブ5は、第1通路P1に設けられればよく、圧側チェックバルブ6は、第2通路P2に設けられればよいので、伸側減衰バルブ5と圧側チェックバルブ6との設置箇所を第1通路P1と第2通路P2との設置態様に応じて決定すればよい。
【0023】
伸側減衰バルブ5は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに抵抗を与えて緩衝器Dの伸長作動時に緩衝器Dの伸長を妨げる減衰力を発揮できるバルブであればよい。なお、伸側減衰バルブ5は、具体的には、たとえば、ピストン2の
図1中上端に環状板を複数枚積層して構成されて伸側室R1の圧力によって撓むと第1通路P1を開放する積層リーフバルブ等とされればよい。
【0024】
また、圧側チェックバルブ6は、緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを然程抵抗を与えずに許容できるバルブであればよい。なお、圧側チェックバルブ6は、具体的には、たとえば、ピストン2の
図1中下端に重ねた環状板と当該環状板を押し付けるばね定数の小さなばねとで構成されて圧側室R2の圧力によって第2通路P2を開放するバルブ等とされればよい。
【0025】
ハウジング11は、本実施の形態では、シリンダ1の
図1中上端に装着されるアッパーキャップ11aと、アッパーキャップ11aの側方に連なってバルブユニットVを収容する弁孔hを有する中空な筒部11bと、筒部11bの
図1中下端に連なってタンク4を保持する筒状のソケット11cとを備えている。
【0026】
また、アッパーキャップ11aは、シリンダ1の
図1中上端に結合されてシリンダ1の上端を閉塞するともに、
図1中上方には図示しない車両における車体に連結可能なブラケットB2を備えている。
【0027】
筒部11bは、本実施の形態の緩衝器Dでは、
図1および
図2に示すように、一端がアッパーキャップ11aの側方に一体となって水平方向に延びており、開口端の内周に螺子部11b1を備えている。そして、筒部11b内は弁孔hとされており、弁孔hにはバルブユニットVが収容される。また、筒部11b内は、アッパーキャップ11a内に形成されたポート11a1を通じてシリンダ1内の圧側室R2に連通されている。なお、ポート11a1は、弁孔hの最深部に通じている。
【0028】
ソケット11cは、環状であって上端が筒部11bの側部であって
図1中で下方に一体に接続されており、垂直下方に向けて延びており、下端外周に螺子部11c1を備えている。そして、ソケット11cの下端外周の螺子部11c1に筒状のタンク4が螺着されている。
【0029】
ソケット11c内は、筒部11bの側部に開口するポート11b2を介して筒部11b内へ通じている。弁孔hは、最深部がポート11a1を介して圧側室R2に連通され、中間部がポート11b2を介してソケット11c内に連通されている。
【0030】
タンク4は、本実施の形態では、円筒状であってソケット11cに螺着されている。そして、タンク4内には、ダイヤフラム12が摺動自在に挿入されており、タンク4内がダイヤフラム12によって液体が充填される液室Lと、気体が充填される気室Gとに区画されている。なお、気室Gには、緩衝器Dの最伸長時において少なくとも気室G内の圧力が大気圧以上となるように気体が封入されている。なお、タンク4内の液室Lと気室Gとの区画は、ダイヤフラム12を利用する以外にも、フリーピストンやブラダ等の利用によってもよい。
【0031】
タンク4における液室Lは、ソケット11c内に開口するポート11b2、弁孔hおよびポート11a1を介して圧側室R2に連通されている。このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、ポート11b2、弁孔hおよびポート11a1によって第3通路P3が形成されている。
【0032】
このように、ハウジング11は、シリンダ1とタンク4とを連結しており、圧側室R2とタンク4とを連通する第3通路P3と第3通路P3の途中にバルブユニットVを収容する弁孔hとを備えている。そして、ハウジング11は、シリンダ1の上端を閉塞するアッパーキャップ11aの側方に弁孔hを形成する筒部11bを備えており、筒部11bの下方にタンク4を取り付けるソケット11cを備えている。よって、バルブユニットVをシリンダ1の側方に配置して緩衝器Dの全長が長くなるのを抑制できる。なお、弁孔hは、シリンダ1に対して径方向に沿って配置される筒部11bによって形成されるとともに、開口端が反シリンダ側を向いているので、バルブユニットVの着脱も緩衝器Dの側方から容易に行える。
【0033】
つづいて、バルブユニットVは、ハウジング11における第3通路P3の一部を形成する弁孔h内に収容されており、第3通路P3の途中に設置されている。また、バルブユニットVは、ハウジング11の弁孔hを形成する筒部11bに着脱可能に収容される。バルブユニットVは、第3通路P3の途中に並列に接続される圧側減衰通路PV1、圧側リリーフ通路PV2、吸込通路PV3および減衰力調整通路PV4と、圧側減衰通路PV1に設けられて圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブV1と、圧側リリーフ通路PV2に設けられて圧側減衰バルブV1に並列配置されて閉弁時に圧側室R2とタンク4との連通を断つとともに圧側室R2の圧力とタンク4の圧力との差圧が開弁圧に達すると開弁して圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れを許容する圧側リリーフバルブV2と、吸込通路PV3に設けられて圧側減衰バルブV1に並列配置されてタンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブV3と、減衰力調整通路PV4に設けられて圧側減衰バルブV1に並列配置されてタンク4と圧側室R2とを行き交う液体の流れに抵抗を与えるとともに外部操作によって当該抵抗の調整が可能なニードルバルブV4とを備えている。
【0034】
具体的には、バルブユニットVは、ハウジング11における弁孔h内に挿入される筒状のバルブ保持軸21と、バルブ保持軸21内に挿入されるニードル22と、バルブ保持軸21の外周に装着されたバルブディスク23と、バルブ保持軸21の外周に装着されるカラー24と、カラー24の外周に軸方向移動可能に嵌合される環状の間座25、環状板26および環状板27と、同じくカラー24の外周に配置されて間座25、環状板26および環状板27をバルブディスク23側ヘ向けて付勢する皿ばね28と、バルブディスク23とカラー24とをバルブ保持軸21に固定するナット29と、ニードル22内に収容される弁体30およびばね31と、バルブ保持軸21の基端開口部の内周に装着される筒状のケース32とを備えている。
【0035】
バルブ保持軸21は、
図2に示すように、筒状であって、基端に内外径が最も大きな大径部21a、先端に内外径が最も小さな小径部21b、大径部21aと小径部21bとの間に内外径が大径部21aと小径部21bとの中間の中径部21cを備えている。また、バルブ保持軸21は、大径部21aの外周であって軸方向中間に設けられたフランジ21dと、中径部21cの内外を連通する孔21eとを備えている。
【0036】
また、バルブ保持軸21は、大径部21aの外周であってフランジ21dよりも先端側に環状溝21fと、螺子部21gを備えており、螺子部21gをハウジング11の筒部11bの開口端内周の螺子部11b1に螺子結合してハウジング11に固定される。大径部21aのフランジ21dより基端側の外周形状が六角形等の工具の把持を可能とする形状とされており、工具の利用によりバルブ保持軸21を筒部11bへ容易に螺子結合できる。
【0037】
また、大径部21aの環状溝21fの外周には、シールリング21iが装着されており、バルブ保持軸21を筒部11b内に挿入すると、シールリング21iが筒部11bの内周に密着してバルブ保持軸21と筒部11bとの間がシールされる。バルブ保持軸21の小径部21bの外周には、筒部11bの内周に嵌合するバルブディスク23が装着されており、バルブ保持軸21をフランジ21dが筒部11bの端面に当接するまでハウジング11の筒部11bで形成された弁孔h内に挿入すると、弁孔h内がバルブディスク23によってポート11a1を介して圧側室R2に通じる室Aと、ポート11b2を介してタンク4に通じる室Bとに区画される。バルブ保持軸21の内部が弁孔h内の室Aおよびポート11a1を介して圧側室R2に連通されるとともに、孔21e、弁孔h内の室Bおよびポート11b2を介してタンク4における液室Lに連通される。
【0038】
さらに、バルブ保持軸21の大径部21aの内周は途中で先端側が縮径されており、縮径された内周部に螺子部21hが設けられている。バルブ保持軸21の内周側であって中径部21cと小径部21bとの境には段部が形成されている。このように、バルブ保持軸21の内周に形成された前記段部は、ニードルバルブV4における環状弁座33を形成している。
【0039】
ニードル22は、頭部22aと、頭部22aに連結される操作筒22bとを備えており、バルブ保持軸21内に軸方向となる
図2中左右方向へ移動可能に挿入されている。
【0040】
頭部22aは、筒状であって、
図2中右端となる先端外周に設けられて環状弁座33の内側に挿入可能なニードル部22a1と、外周の中間部に設けられて環状弁座33に離着座可能なフランジ22a2とを備えている。ニードル部22a1は、先端に向かうほど先細りとなる形状となっており、バルブ保持軸21における小径部21b内に挿入可能とされている。また、ニードル部22a1の基端の外径は、環状弁座33の内径よりも僅かに小径となっており、ニードル22は、バルブ保持軸21内で軸方向へ移動するとニードル部22a1と環状弁座33の内縁との間の隙間で形成される流路面積の大きさを大小調整できる。このように、ニードル22と環状弁座33とは、圧側室R2とタンク4とを連通するバルブ保持軸21内においてニードルバルブV4を形成しており、ニードルバルブV4は、ニードル22をバルブ保持軸21に対する軸方向位置の調整によって、バルブ保持軸21内で形成された減衰力調整通路PV4における流路面積を大小調整できる。
【0041】
また、フランジ22a2は、環状弁座33に軸方向で対向しており、ニードル22がバルブ保持軸21に対して先端側となる
図2中右側へ移動して環状弁座33に当接すると、バルブ保持軸21の小径部21b内と中径部21c内との連通を遮断できる。反対に、フランジ22a2は、環状弁座33から離間した状態ではバルブ保持軸21の小径部21b内と中径部21c内とを連通させる。
【0042】
操作筒22bは、筒部22b1と筒部22b1より外径が大径な底部22b2とを備えた有底筒状であって、底部22b2に形成された外部からの操作を可能とする操作部としての溝22b3と、筒部22b1の側部に形成されて筒部22b1の内外を連通する通孔22b4とを備えている。そして、操作筒22bにおける筒部22b1内には頭部22aのフランジ22a2よりも後方側の後端22a3が圧入嵌合されており、操作筒22bと頭部22aとが一体に連結されている。
【0043】
操作筒22bの底部22b2は、側方から開口する袋穴22b5と、外周であって袋穴22b5よりも先端側にバルブ保持軸21の大径部21aの内周に形成された螺子部21hに螺合する螺子部22b6が設けられている。また、操作筒22bの筒部22b1の外周にはシールリング22b7が装着されている。
【0044】
そして、ニードル22は、バルブ保持軸21内に挿入されて螺子部22b6を螺子部21hに螺合してバルブ保持軸21に装着される。ニードル22がバルブ保持軸21内に挿入されると、シールリング22b7がバルブ保持軸21の中径部21cの内周に摺接して、ニードル22とバルブ保持軸21との間がシールされる。
【0045】
また、螺子部21hにニードル22の螺子部22b6を螺合しているので、操作筒22bの後端の溝22b3に図外のドライバーを差し込んでニードル22を回転させると、ニードル22は、バルブ保持軸21内で
図2中左右方向となる軸方向へ移動する。
【0046】
バルブ保持軸21内にニードル22を前述したように収容すると、ニードル22の操作筒22bの底部22b2の外周とバルブ保持軸21の大径部21aの内周との間に環状の隙間が形成される。そして、バルブ保持軸21内にニードル22を挿入した後、バルブ保持軸21の大径部21aの内周にケース32を圧入すると、操作筒22bの底部22b2とバルブ保持軸21の大径部21aとの間の隙間が閉塞される。ケース32は、筒状であって、操作筒22bの底部22b2の後端の挿通を許容するので、操作筒22bにおける溝22b3へのドライバーの差し込みの邪魔にもならず、バルブ保持軸21に対するニードル22の軸方向の移動についても許容している。
【0047】
ケース32は、内周の先端側となる
図2中右端側に軸方向に沿う溝32aを周方向で等間隔に備えている。ケース32をバルブ保持軸21の大径部21aに圧入して固定すると、前記溝32aが操作筒22bの袋穴22b5に対向する。袋穴22b5内には、球34と、球34を袋穴22b5内から押し出す方向へ付勢するばね35とが挿入されている。ケース32、球34およびばね35は、ディテント機構を形成しており、球34が溝32aに対向して入り込むとディテントトルク以上のトルクでニードル22を回転させない限りにおいて、ニードル22のバルブ保持軸21に対する周方向への回転を規制できる。このようにディテント機構によってニードル22と環状弁座33との位置関係が維持されるので、鞍乗型車両の走行中にニードルバルブV4における流路面積が勝手に変化するのを防止できる。
【0048】
また、ニードル22内には、弁体30とばね31とが収容されている。詳しくは、弁体30は、球体とされており、ニードル22における頭部22aの環状の後端をリリーフバルブ弁座36として、操作筒22bの筒部22b1内で軸方向に移動することでリリーフバルブ弁座36に離着座可能とされている。また、弁体30と操作筒22bの底部22b2との間には、コイルばねであるばね31が介装されており、弁体30をリリーフバルブ弁座36に向けて付勢している。
【0049】
弁体30の直径は、頭部22aの後端の内周径よりも大径とされており、リリーフバルブ弁座36に着座すると、ニードル部22a1内と操作筒22b内との連通を断ち、リリーフバルブ弁座36から離間するとニードル部22a1内と操作筒22b内とを連通させる。
【0050】
ニードル22における操作筒22bの筒部22b1には、通孔22b4が設けられているので、操作筒22b内は、通孔22b4を通じてバルブ保持軸21の中径部21c内に連通されている。バルブ保持軸21の中径部21c内は孔21eおよび室Bを介してタンク4に連通されるので、操作筒22b内はタンク4に連通されている。また、操作筒22b内は、ニードル22の頭部22a内を通じてバルブ保持軸21の小径部21b内に通じている。バルブ保持軸21の小径部21b内は室Aおよびポート11a1を介して圧側室R2に連通されるので、操作筒22b内は圧側室R2にも連通されている。このように、ニードル22内は、バルブ保持軸21内で形成された減衰力調整通路PV4に対して並列配置される圧側リリーフ通路PV2を形成しており、圧側リリーフ通路PV2に弁体30、ばね31およびリリーフバルブ弁座36で構成された圧側リリーフバルブV2が設けられている。
【0051】
圧側リリーフバルブV2は、圧側室R2内の圧力とタンク4内の圧力との差圧が開弁圧に至るまでは弁体30がばね31によってリリーフバルブ弁座36に当接し続ける閉弁状態に維持される。また、圧側リリーフバルブV2は、圧側室R2内の圧力とタンク4内の圧力との差圧が開弁圧になると、弁体30が圧側室R2内の圧力によって押されてばね31を押し縮めてリリーフバルブ弁座36から離間して圧側リリーフ通路PV2を開放する。この圧側リリーフバルブV2が開弁する前記開弁圧は、ピストンロッド3の外周をシールするシール部材8が耐え得る最大圧力よりも低い圧力となるように設定されている。
【0052】
なお、ニードルバルブV4を廃止する場合、バルブ保持軸21の後端をニードル22の代わりにキャップで閉塞し、弁体30と、弁体30と前記キャップとの間に配置されるばね31とをバルブ保持軸21内に収容して、小径部21bと中径部21cとの境の段部をリリーフバルブ弁座として、圧側リリーフバルブV2を構成すればよい。
【0053】
バルブ保持軸21の小径部21bの外周には、バルブディスク23と、カラー24とが小径部21bと中径部21cとの外周における段部と小径部21bの先端の外周に螺合されるナット29とによって挟持されて固定されている。また、カラー24の外周には、環状の間座25、環状板26、環状板27および環状の皿ばね28が嵌合されている。
【0054】
バルブディスク23は、環状であって、同一円周上に並べて設けられてバルブディスク23の肉厚を軸方向に貫通する複数のポート23aと、
図2中右端に設けられて各ポート23aに通じる環状凹部で形成された環状窓23bと、
図2中右端から軸方向に突出して各ポート23aの出口端である環状窓23bを取り囲む環状の弁座23cと、外周に設けた環状溝23d内に装着されたシールリング23eとを備えている。バルブディスク23は、前述したように、バルブ保持軸21の小径部21bの外周に取り付けられて弁孔h内に挿入されると、筒部11bの内周に嵌合して弁孔h内を室Aと室Bとに区画する。バルブディスク23の外周に設けられたシールリング23eは、筒部11bの内周に密着してバルブディスク23と筒部11bとの間をシールしており、バルブディスク23と筒部11bとの間を通じて室Aと室Bとが連通されるのを防止している。
【0055】
ポート23aは、圧側室R2に通じる室Aとタンク4に通じる室Bとを連通しており、本実施の形態の緩衝器Dでは、圧側減衰通路PV1と吸込通路PV3として機能している。
【0056】
カラー24は、筒状であって、外周に間座25、環状板26、環状板27および環状の皿ばね28が嵌合される嵌合筒部24aと、嵌合筒部24aの
図2中右端に設けられたフランジ24bとを備えており、嵌合筒部24aの
図2中左端をバルブディスク23の
図2中右端の内周に当接させてバルブディスク23に重ねられている。
【0057】
バルブディスク23とカラー24は、前述したように重ねられた状態でバルブ保持軸21の外周の段部とナット29とで挟持されており、バルブ保持軸21に対して不動に固定されている。
【0058】
間座25は、小径な円環状の環状板であり、カラー24の嵌合筒部24aの外周に摺動可能に嵌合されていて、バルブディスク23に対して軸方向に移動でき、バルブディスク23に対して遠近できる。なお、間座25の外径は、ポート23aを閉塞しないように小径となっている。
【0059】
環状板26は、円環状の環状板であり、カラー24の嵌合筒部24aの外周に摺動可能に嵌合されて間座25の反バルブディスク側に重ねられており、バルブディスク23に対して軸方向に移動でき、バルブディスク23に対して遠近できる。なお、環状板26の外径は、弁座23cの内径より小径となっており、バルブディスク23に環状窓23bを設けているので、外周側のバルブディスク23側への撓みが許容されている。
【0060】
環状板27は、円環状の環状板であり、カラー24の嵌合筒部24aの外周に摺動可能に嵌合されて環状板26の反バルブディスク側に重ねられており、バルブディスク23に対して軸方向に移動でき、バルブディスク23に対して遠近できる。環状板27の外径は、バルブディスク23における弁座23cに離着座可能なように弁座23cの外径よりも少し大径となっている。また、環状板27は、同一円周上に並べて設けられて環状板27を軸方向に貫通する複数の孔27aを備えている。各孔27aの外接円の直径は、環状板26の直径未満となっており、環状板26が環状板27に当接した状態では、環状板27における孔27aは閉塞され、環状板26の外周がバルブディスク23側へ向けて撓んで環状板27から離間すると、孔27aが開放される。よって、環状板27に環状板26が当接した状態で、環状板27が弁座23cに着座すると、ポート23aを閉塞して室Aと室Bとの連通を断つが、環状板27が弁座23cに着座していても環状板26がバルブディスク23側に撓んで環状板27から離間すると孔27aが開放されるので室Aと室Bとが連通される。さらに、環状板27の外周が反バルブディスク側へ撓むか、環状板27がカラー24上をバルブディスク23から離間する方向へ移動すると、ポート23aが開放されて室Aと室Bとが連通される。
【0061】
皿ばね28は、カラー24の嵌合筒部24aの外周に嵌合されるとともに、フランジ24bと環状板27との間に初期撓みが与えられた状態で介装されており、常時、間座25、環状板26および環状板27をバルブディスク23側へ向けて付勢している。
【0062】
圧側室R2からタンク4へ向けてポート23aを通過する液体の流れに対しては、環状板27は、圧側室R2の圧力と皿ばね28の付勢力を受けて弁座23cに着座してポート23aを閉塞するが、環状板26は、孔27aを通じて圧側室R2の圧力を受けて間座25の外縁を支点として撓んで環状板27から離間してポート23aを開放し、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れを許容するとともに、この液体の流れに抵抗を与える。なお、間座25は、環状板26の撓みの支点を決定しており、間座25の外径の設定で環状板26が液体の流れに与える抵抗の大きさを調整できる。このように、環状板26は、圧側減衰バルブV1における弁体として機能し、環状板27は、弁座として機能しており、環状板26と環状板27とは、圧側減衰バルブV1を形成している。なお、環状板26の内周をバルブディスク23で直接に支持する場合、間座25を省略してもよいし、複数枚の環状板を積層して圧側減衰バルブV1の弁体を形成してもよい。
【0063】
他方、タンク4から圧側室R2へ向けてポート23aを通過する液体の流れに対しては、環状板27は、タンク4の圧力を受けて撓んで弁座23cから離間するか、或いは、皿ばね28を押し縮めてバルブディスク23から離間してポート23aを開放して、タンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れに然程抵抗を与えずにこの液体の流れを許容する。この場合、環状板26はタンク4側から圧力を受けて環状板27に当接して環状板27とともに撓むか或いはカラー24上を移動してバルブディスク23から遠ざかる。このように、環状板26、環状板27は、伸側チェックバルブV3における弁体として機能し、バルブディスク23は、伸側チェックバルブV3における弁座として機能しており、バルブディスク23、環状板26、環状板27、皿ばね28およびカラー24によって伸側チェックバルブV3を形成している。
【0064】
また、本実施の形態では、圧側減衰バルブV1と伸側チェックバルブV3とがバルブディスク23のポート23aに並列配置されており、ポート23aは、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れを許容する圧側減衰通路PV1と、タンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れを許容する吸込通路PV3と機能する。
【0065】
なお、バルブディスク23に圧側減衰通路PV1に相当するポートを設けるとともに、吸込通路PV3に相当するポートを設けて、圧側減衰通路PV1に相当するポートを開閉する圧側減衰バルブV1を設け、吸込通路PV3に相当するポートを開閉する伸側チェックバルブV3を設けてもよい。
【0066】
また、圧側減衰バルブV1は、前述のように構成されているが、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与えて緩衝器Dの収縮作動時に減衰力を発生させ得るバルブであればよいので、その限りにおいてバルブの構造を適宜設計変更可能である。
【0067】
さらに、伸側チェックバルブV3は、前述のように構成されているが、タンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容できるバルブであればよいので、その限りにおいてバルブの構造を適宜設計変更可能である。
【0068】
なお、圧側減衰バルブV1と伸側チェックバルブV3と同様の構成のバルブをピストン2における伸側減衰バルブ5と圧側チェックバルブ6として用いてもよい。
【0069】
具体的に構成されたバルブユニットVは、互いに並列された圧側減衰通路PV1、圧側リリーフ通路PV2、吸込通路PV3および減衰力調整通路PV4を備え、圧側減衰バルブV1、圧側リリーフバルブV2、伸側チェックバルブV3およびニードルバルブV4を並列に備えている。よって、バルブユニットVをハウジング11の弁孔h内に挿入すると、第3通路P3の途中に、圧側減衰バルブV1、圧側リリーフバルブV2、伸側チェックバルブV3およびニードルバルブV4を互いに並列に設置できる。
【0070】
そして、以上のように構成されたバルブユニットVの組み立て方の一例を以下に説明する。まず、カラー24の嵌合筒部24aの外周に、皿ばね28、環状板27、環状板26、間座25の順番で皿ばね28、環状板27、環状板26および間座25を嵌合して組付ける。つづいて、バルブ保持軸21の小径部21bの外周に、バルブディスク23と、皿ばね28、環状板27、環状板26および間座25が組み付けられたカラー24とを順番に嵌合して組付けたのち、ナット29を小径部21bの先端外周に螺合する。すると、バルブ保持軸21の小径部21bの外周に、バルブディスク23と、皿ばね28、環状板27、環状板26および間座25が組み付けられたカラー24とがナット29によって固定される。
【0071】
次に、ニードル22における操作筒22b内にばね31および弁体30を順に挿入し、操作筒22bの開口端に頭部22aの後端22a3を圧入嵌合して、操作筒22bに頭部22aを結合し、圧側リリーフバルブV2およびニードル22を組み立てる。つづいて、ニードル22の操作筒22bの底部22b2の側方に開口している袋穴22b5内にばね35と球34とを順に挿入した後、ニードル22をバルブ保持軸21内に挿入しつつ、バルブ保持軸21の螺子部21hに底部22b2の外周の螺子部22b6を螺合させる。
【0072】
ニードル22がバルブ保持軸21内に螺合されて収容されたら、バルブ保持軸21の大径部21aの内周と操作筒22bの外周との間の環状隙間に、溝32a側をバルブ保持軸21内に向けつつケース32を挿入して、ケース32を大径部21aの内周に圧入嵌合する。すると、ケース32は、バルブ保持軸21に固定されて、ニードル22のバルブ保持軸21からの抜けを防止する。
【0073】
このように、バルブ保持軸21に、バルブディスク23、カラー24、間座25、環状板26、環状板27、皿ばね28、圧側リリーフバルブV2を収容したニードル22およびケース32を組付けると、バルブユニットVの組立が完了する。完成したバルブユニットVは、圧側減衰バルブV1、圧側リリーフバルブV2、伸側チェックバルブV3およびニードルバルブV4を備えた1つのユニットとなっている。そして、バルブユニットVは、ハウジング11の筒部11b内に挿入されるととともに、螺子部11b1とバルブ保持軸21の大径部21aの外周の螺子部21gとの螺合により、弁孔h内に収容されるとともにハウジング11に固定される。バルブユニットVは、ハウジング11に螺子締結されているので、ハウジング11に対して容易に取り付けおよび取り外しが可能である。なお、バルブユニットVをハウジング11に着脱を可能とする締結手段であれば、螺子締結以外の締結手段を採用してもよい。
【0074】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に作動を説明する。シリンダ1に対してピストン2が
図1中下方へ移動する緩衝器Dの伸長行程において、ピストン2によって圧縮される伸側室R1から第1通路P1を介して圧側室R2へ液体が移動する。この伸長行程において緩衝器Dは、第1通路P1を通過する液体の流れに対して伸側減衰バルブ5が抵抗を与えて、伸長を妨げる伸側の減衰力を発生する。
【0075】
また、緩衝器Dの伸長行程では、ピストンロッド3がシリンダ1から退出するので、圧側室R2内でピストンロッド3がシリンダ1から退出した体積分の液体が不足するが、この不足分の液体は、ダイヤフラム12が膨張して気室Gを拡大させてタンク4の液室Lから伸側チェックバルブV3を介して圧側室R2に供給される。詳しくは、環状板27がタンク4の圧力を受けて弁座23cから離間して伸側チェックバルブV3が開弁するので、液体は、ポート23aを通過してタンク4から圧側室R2へ移動する。
【0076】
他方、シリンダ1に対してピストン2が
図1中上方へ移動する緩衝器Dの収縮行程において、ピストン2によって圧縮される圧側室R2内の液体は、圧側チェックバルブ6を開弁させて第2通路P2を介して伸側室R1へ移動する。また、緩衝器Dの収縮行程では、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入するので、シリンダ1内でピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入した体積分の液体が過剰となるが、この過剰分の液体は、圧側減衰バルブV1を介してタンク4内の液室Lへ排出され、ダイヤフラム12が収縮して気室Gを縮小する。このように緩衝器Dの収縮行程では、圧側減衰バルブV1およびニードルバルブV4が圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに対して抵抗を与える。よって、緩衝器Dの収縮行程では、第2通路P2が開放されるのでシリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2と連通状態におかれ、圧側減衰バルブV1およびニードルバルブV4が圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに対して抵抗を与える。よって、緩衝器Dの収縮行程では、伸側室R1内と圧側室R2内の圧力がともに上昇して略同じ圧力となる。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側室R1に面しているピストン2の面積が圧側室R2に面しているピストン2の面積よりもピストンロッド3の面積分だけ小さいので、収縮作動する緩衝器Dは、シリンダ1内の圧力にピストンロッド3の面積を乗じた値の減衰力を、前記収縮作動を妨げる方向に発揮する。つまり、前述したピストン2の片方にのみピストンロッド3が存在する片ロッド型に設定された緩衝器Dの場合、収縮作動時にピストンロッド3の断面積に比例した減衰力を発生する。
【0077】
なお、本実施の形態の緩衝器DではバルブユニットVがニードルバルブV4を備えているので、ニードルバルブV4における流路面積の調整によってニードルバルブV4が液体の流れに与える抵抗を変化させ得るので、緩衝器Dは、圧側の減衰力の調整が可能である。
【0078】
また、緩衝器Dの収縮行程において、圧側室R2内の圧力とタンク4内の圧力との差圧が圧側リリーフバルブV2の開弁圧に達すると、球34がリリーフバルブ弁座36から後退して圧側リリーフバルブV2が開弁するので、圧側リリーフ通路PV2によって圧側室R2とタンク4とが連通される。圧側リリーフ通路PV2の開放によって、シリンダ1内の液体がタンク4へ逃げて、シリンダ1内の圧力が圧側リリーフバルブV2の開弁圧を超えないように調整される。
【0079】
ここで、比較的軽量な鞍乗型車両に用いられる緩衝器では、強度上問題がなく緩衝器の軽量化を図れるため、ピストンロッドの外径を細くする場合がある。緩衝器の収縮作動時に発生する減衰力は、前述したようにピストンロッド3の断面積に比例する。そのため、このような緩衝器でピストンロッドの外径を細くしつつも収縮作動時に大きな減衰力を発揮しようとすると、シリンダ内の圧力を高圧にすることが求められる。収縮作動時においてシリンダ内の圧力を高圧にするには、圧側減衰バルブV1が液体の流れに与える抵抗を大きくすればよいが、緩衝器Dの収縮作動時に高速で収縮作動すると、シリンダ内の圧力が過大となってピストンロッドの外周をシールするシール部材の耐圧を超えてしまう場合がある。ところが、本実施の形態の緩衝器Dでは、前述した通り、バルブユニットVは、圧側減衰バルブV1と並列配置される圧側リリーフバルブV2を備えている。よって、緩衝器Dの収縮作動時において緩衝器Dの収縮速度が高速となっても、圧側リリーフバルブV2が開弁してシリンダ1内の圧力が過大となるのを防止でき、ピストンロッド3の外周をシールするシール部材8の保護とピストンロッド3とシール部材8との間からの液体の漏洩を防止できる。
【0080】
また、ハウジング11からバルブユニットVを取り外して、筒部11bの開口を図示しないキャップによって閉塞すると、緩衝器Dは、従来構造の緩衝器と同様に、伸長作動時にのみ減衰力を発生し、収縮作動時には減衰力を発生しない。このようにバルブユニットVの装着によって緩衝器Dは、伸長作動時と収縮作動時との両方で減衰力を発揮することができるが、バルブユニットVを緩衝器Dから取り外すと伸長作動時にのみ減衰力を発生する緩衝器となる。
【0081】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、液体を貯留するタンク4と、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第1通路P1および第2通路P2と、圧側室R2とタンク4とを連通する第3通路P3と、第1通路P1に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ5と、第2通路P2に設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ6と、第3通路P3の途中に着脱可能に設けられたバルブユニットVとを備え、バルブユニットVは、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブV1と、圧側減衰バルブV1に並列配置されて閉弁時に圧側室R2とタンク4との連通を断つとともに圧側室R2の圧力とタンク4の圧力との差圧が開弁圧に達すると開弁して圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れを許容する圧側リリーフバルブV2と、圧側減衰バルブV1に並列配置されてタンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブV3とを備えている。
【0082】
このように構成された緩衝器Dでは、圧側減衰バルブV1、圧側リリーフバルブV2および伸側チェックバルブV3とを並列に備えたバルブユニットVが圧側室R2とタンク4とを連通する第3通路P3の途中に着脱可能に設けられているので、バルブユニットVを装着するだけで伸長作動時にのみ減衰力を発揮する緩衝器を伸長作動時のみならず収縮作動時にも減衰力を発揮する緩衝器として機能できる。また、バルブユニットVを取り外せば、緩衝器Dを伸長作動時にのみ減衰力を発揮する緩衝器として利用できる。
【0083】
バルブユニットVの有無によって、緩衝器Dを、伸長作動時と収縮作動時との両方で減衰力を発生する緩衝器と、伸長作動時にのみ減衰力を発生する緩衝器とのいずれか一方に設定できる。緩衝器Dの製造者は、バルブユニットV以外の緩衝器Dを同一の部品で同一のラインで組立でき、ユーザの要望に応じてバルブユニットVの有無を決定して緩衝器Dを製造できる。したがって、製造者は、緩衝器Dの製造コストを低減できる。
【0084】
よって、前述のように構成された緩衝器Dによれば、圧側減衰バルブを備えていない緩衝器に収縮作動時に減衰力を発揮できる機能を簡単に付加できる。また、緩衝器Dの製造者は、バルブユニットV以外の緩衝器Dを同一の部品で同一のラインで組立できるので、製造者における緩衝器Dの製造コストも低減できる。
【0085】
さらに、前述のように構成された緩衝器Dによれば、バルブユニットVが圧側リリーフバルブV2を備えているので、緩衝器Dの収縮作動時において緩衝器Dの収縮速度が高速となってもシリンダ1内の圧力が過大となるのを防止できる。
【0086】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1とタンク4とを連結するとともに第3通路P3と第3通路P3の途中に設けられた弁孔hとを有するハウジング11を備え、バルブユニットVが弁孔h内に収容されている。このように構成された緩衝器Dによれば、シリンダ1とタンク4とを連結するハウジング11の弁孔hにバルブユニットVを収容するので、バルブユニットVをシリンダ1の側方に配置して緩衝器Dの全長が長くなるのを抑制できる。なお、弁孔hは、シリンダ1の径方向に沿って配置される筒部11bで形成されるとともに、開口端が反シリンダ側を向いている場合には、バルブユニットVの着脱も緩衝器Dの側方から容易に行える。
【0087】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、バルブユニットVが圧側減衰バルブV1に並列配置されて圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに流路面積を調整可能なニードルバルブV4を備えているので、収縮作動時の減衰力の調整も可能となる。
【0088】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ニードルバルブV4が環状弁座33と環状弁座33に対して遠近可能なニードル22とを備え、圧側リリーフバルブV2がニードル22内に収容されている。このように構成された緩衝器Dによれば、圧側リリーフバルブV2がニードル22内に収容されているのでバルブユニットVの全体を小型化できる。なお、圧側リリーフバルブV2がニードル22内に収容されているので、ニードル22の位置によらず圧側リリーフバルブV2の開弁圧を一定にできる。
【0089】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ニードル22は、筒状であって先端外周に設けられて環状弁座33の内側に挿入可能なニードル部22a1と外周の中間部に設けられて環状弁座33に離着座可能なフランジ22a2とを有する頭部22aと、有底筒状であって底部22b2に形成された外部からの操作を可能とする溝(操作部)22b3と内外を連通する通孔22b4とを具備して頭部22aの後方に連結される操作筒22bとを有し、圧側リリーフバルブV2は、頭部22aの環状の後端22a3を環状のリリーフバルブ弁座36として、リリーフバルブ弁座36に離着可能であって操作筒22b内に収容される弁体30と、弁体30と操作筒22bとの間に介装されるとともに操作筒22b内に収容されて弁体30をリリーフバルブ弁座36ヘ向けて付勢するばね31とを有し、弁体30がリリーフバルブ弁座36から離間すると頭部22a内と通孔22b4とを連通させるようになっている。
【0090】
このように構成された緩衝器Dによれば、ニードル22に頭部22aと操作筒22b内に弁体30とばね31とを収容するスペースを設けて、ニードル22を構成する頭部22aをリリーフバルブ弁座36として用いることで、ニードル22内に無理なく圧側リリーフバルブV2を収容できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、圧側リリーフバルブV2とニードル22とをより小型化できる。
【0091】
そしてさらに、本実施の形態の緩衝器Dは、ピストンロッド3の外周に摺接してピストンロッド3の外周をシールするシール部材8を備え、圧側リリーフバルブV2の開弁圧はシール部材8が耐え得る最大圧力未満に設定されている。このように構成された緩衝器Dによれば、シール部材8が耐え得る最大圧力をシリンダ1内の圧力が超えないので、シール部材8の保護とピストンロッド3とシール部材8との間からの液体の漏洩を防止できる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1・・・シリンダ、2・・・シリンダ、3・・・ピストンロッド、4・・・タンク、5・・・伸側減衰バルブ、6・・・圧側チェックバルブ、8・・・シール部材、22・・・ニードル、22a・・・頭部、22a1・・・ニードル部、22a2・・・フランジ、22a3・・・頭部の後端、22b・・・操作筒、22b3・・・溝(操作部)、22b4・・・通孔、30・・・弁体、31・・・ばね、33・・・環状弁座、36・・・リリーフバルブ弁座、D・・・緩衝器、h・・・弁孔、P1・・・第1通路、P2・・・第2通路、P3・・・第3通路、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、V・・・バルブユニット、V1・・・バルブユニット、V2・・・圧側リリーフバルブ、V3・・・伸側チェックバルブ、V4・・・ニードルバルブ
【要約】
緩衝器(D)は、シリンダ(1)と、シリンダ(1)内に移動可能に挿入されるピストン(2)と、ピストン(2)に連結されるピストンロッド(3)と、液体を貯留するタンク(4)と、伸側室(R1)と圧側室(R2)とをそれぞれ並列して連通する第1通路(P1)および第2通路(P2)と、圧側室(R2)とタンク(4)とを連通する第3通路(P3)と、第1通路(P1)に設けられた伸側減衰バルブ(5)と、第2通路(P2)に設けられた圧側チェックバルブ(6)と、第3通路(P3)の途中に着脱可能に設けられたバルブユニット(V)とを備える。また、バルブユニット(V)は、圧側減衰バルブ(V1)と、圧側リリーフバルブ(V2)と、伸側チェックバルブ(V3)とを並列に備えている。