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特許7356647クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法
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  • 特許-クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法 図1
  • 特許-クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法 図2
  • 特許-クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法 図3
  • 特許-クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F23J1/02 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019204388
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076328
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】長澤 貴司
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-324725(JP,A)
【文献】特開2009-039669(JP,A)
【文献】特開2009-240890(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109185884(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/02
B01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの底部から排出されたクリンカを冷却する冷却水を蓄えた水槽と、
前記水槽内に排出された前記クリンカを外部に排出する搬送手段と、
前記水槽から前記冷却水を回収する沈殿槽と、
前記沈殿槽から溢流した前記冷却水を貯留する貯水槽と、
前記貯水槽内の前記冷却水を前記水槽に循環させる冷却水循環ラインと、
前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽内の所定の回収位置に移動させる移動手段と、
移動された前記沈殿物を回収して前記水槽に戻す沈殿物回収ラインと、
前記水槽から溢流した冷却水を前記沈殿槽に移送する冷却水移送ラインと、
前記沈殿槽と前記貯水槽とを仕切る堰と、を備え、
前記沈殿槽の底面は、前記冷却水移送ラインの排水口から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第一傾斜面と、前記堰から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第二傾斜面と、を備え、
前記移動手段は、前記第二傾斜面に沿って前記堰から前記回収位置に向かって多段に構成されている、
ことを特徴とするクリンカ処理システム。
【請求項2】
前記移動手段は、指向性を有する水流によって前記沈殿物を移動させる噴水ノズルを含む、請求項1に記載のクリンカ処理システム。
【請求項3】
前記噴水ノズルは、前記沈殿槽の底面に向かって斜め下方に水流を形成する複数の噴水孔を有する、請求項2に記載のクリンカ処理システム。
【請求項4】
前記回収位置から離れた位置の前記移動手段から順番に作動させて前記沈殿物を前記回収位置に移動させる制御装置を含む、請求項1に記載のクリンカ処理システム。
【請求項5】
前記噴水ノズルは、前記冷却水循環ラインから分岐された前記冷却水によって前記水流を生成する、請求項2又は3に記載のクリンカ処理システム。
【請求項6】
前記沈殿物回収ラインは、前記沈殿物を汲み上げるスラッジポンプを含み、前記スラッジポンプの吸引口は、前記回収位置の上方に設定されている、請求項1に記載のクリンカ処理システム。
【請求項7】
前記冷却水循環ラインは、前記冷却水を汲み上げるポンプと、汲み上げた前記冷却水を冷却する冷却器と、を含む請求項1に記載のクリンカ処理システム。
【請求項8】
ボイラの底部から排出されたクリンカを冷却する冷却水を蓄えた水槽と、前記水槽内に排出された前記クリンカを外部に排出する搬送手段と、前記水槽から前記冷却水を回収する沈殿槽と、前記沈殿槽から溢流した前記冷却水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽内の前記冷却水を前記水槽に循環させる冷却水循環ラインと、前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽内の所定の回収位置に移動させる移動手段と、移動された前記沈殿物を回収して前記水槽に戻す沈殿物回収ラインと、前記水槽から溢流した冷却水を前記沈殿槽に移送する冷却水移送ラインと、前記沈殿槽と前記貯水槽とを仕切る堰と、を備えたクリンカ処理システムを用いたクリンカ処理方法であって、
前記沈殿槽の底面を前記冷却水移送ラインの排水口から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第一傾斜面と前記堰から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第二傾斜面とにより構成し、
前記移動手段を前記第二傾斜面に沿って前記堰から前記回収位置に向かって多段に構成し、
前記回収位置から離れた位置の前記移動手段から順番に作動させ、前記第二傾斜面に沿って前記沈殿物を前記回収位置に移動させた後、前記沈殿物を汲み上げて前記水槽に回収するようにした、
ことを特徴とするクリンカ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法に関し、特に、循環水システムを備えたクリンカ処理システム及びクリンカ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭火力発電所では、ボイラ内での石炭燃焼によって大量の石炭灰が発生する。この石炭灰の一部であるクリンカ(クリンカアッシュ、ボトムアッシュ又は炉底灰とも称される。)は、ボイラの底部に設けられたクリンカホッパに集積された後、水を使用した搬送手段(例えば、水封式チェーンコンベヤ、水力輸送処理方式搬送手段等)を介して外部に排出される。かかる水を使用した搬送手段では、搬送手段により排出されずに水中に残留するクリンカが存在するため、かかるクリンカを回収して排出する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボイラ火炉内で発生する灰を炉底ホッパーで区切られた水槽水内の水面に落下させ、水封式炉底灰コンベアで炉底灰を回収し排出するシステムが開示されている。また、特許文献1には、水槽水を沈殿槽及び循環水槽を介して循環させる循環水システムも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-296833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような循環水システムを有するクリンカ処理システムでは、特許文献1にも記載されているように、沈澱漕に溜まった沈殿物を所定の頻度でバキュームカーや人手によって排除する必要があり、大きなメンテナンスコストを要するという問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、循環水システム内で生じる沈殿物を容易に排出することができ、メンテナンスコストを低減することができる、クリンカ処理システム及びクリンカ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ボイラの底部から排出されたクリンカを冷却する冷却水を蓄えた水槽と、前記水槽内に排出された前記クリンカを外部に排出する搬送手段と、前記水槽から前記冷却水を回収する沈殿槽と、前記沈殿槽から溢流した前記冷却水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽内の前記冷却水を前記水槽に循環させる冷却水循環ラインと、前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽内の所定の回収位置に移動させる移動手段と、移動された前記沈殿物を回収して前記水槽に戻す沈殿物回収ラインと、前記水槽から溢流した冷却水を前記沈殿槽に移送する冷却水移送ラインと、前記沈殿槽と前記貯水槽とを仕切る堰と、を備え、前記沈殿槽の底面は、前記冷却水移送ラインの排水口から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第一傾斜面と、前記堰から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第二傾斜面と、を備え、前記移動手段は、前記第二傾斜面に沿って前記堰から前記回収位置に向かって多段に構成されている、ことを特徴とするクリンカ処理システムが提供される。
【0008】
前記移動手段は、指向性を有する水流によって前記沈殿物を移動させる噴水ノズルを含んでいてもよい。
【0009】
また、前記噴水ノズルは、前記沈殿槽の底面に向かって斜め下方に水流を形成する複数の噴水孔を有していてもよい。
【0010】
また、前記クリンカ処理システムは、前記回収位置から離れた位置の前記移動手段から順番に作動させて前記沈殿物を前記回収位置に移動させる制御装置を含んでいてもよい。
【0011】
また、前記噴水ノズルは、前記冷却水循環ラインから分岐された前記冷却水によって前記水流を生成してもよい。
【0012】
また、前記沈殿物回収ラインは、前記沈殿物を汲み上げるスラッジポンプを含み、前記回収位置は、前記スラッジポンプの吸引口の付近に設定されていてもよい。
【0013】
また、前記冷却水循環ラインは、前記冷却水を汲み上げるポンプと、汲み上げた前記冷却水を冷却する冷却器と、を含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、ボイラの底部から排出されたクリンカを冷却する冷却水を蓄えた水槽と、前記水槽内に排出された前記クリンカを外部に排出する搬送手段と、前記水槽から前記冷却水を回収する沈殿槽と、前記沈殿槽から溢流した前記冷却水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽内の前記冷却水を前記水槽に循環させる冷却水循環ラインと、前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽内の所定の回収位置に移動させる移動手段と、移動された前記沈殿物を回収して前記水槽に戻す沈殿物回収ラインと、前記水槽から溢流した冷却水を前記沈殿槽に移送する冷却水移送ラインと、前記沈殿槽と前記貯水槽とを仕切る堰と、を備えたクリンカ処理システムを用いたクリンカ処理方法であって、前記沈殿槽の底面を前記冷却水移送ラインの排水口から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第一傾斜面と前記堰から前記回収位置の近傍に向かって傾斜する第二傾斜面とにより構成し、前記移動手段を前記第二傾斜面に沿って前記堰から前記回収位置に向かって多段に構成し、前記回収位置から離れた位置の前記移動手段から順番に作動させ、前記第二傾斜面に沿って前記沈殿物を前記回収位置に移動させた後、前記沈殿物を汲み上げて前記水槽に回収するようにした、ことを特徴とするクリンカ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るクリンカ処理システム及びクリンカ処理方法によれば、沈殿槽に沈殿した沈殿物を回収前に所定の回収位置に移動させるようにしたことにより、沈殿物を所定の回収位置に集積することができ、沈殿物を容易に排出することができる。また、回収した沈殿物を水槽に戻すようにしたことにより、沈殿物はいずれ搬送手段によって外部に排出されることから、沈殿物をバキュームカーや人手によって排除する必要性が少なく、メンテナンスコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るクリンカ処理システムを示す全体構成図である。
図2】移動手段を示す拡大図であり、(a)は断面図、(b)は図2(a)におけるB-B矢視断面図、である。
図3】沈殿物の移動工程を示す断面図であり、(a)は第一移動工程、(b)は第二移動工程、(c)は第三移動工程、を示している。
図4】沈殿物の移動工程~回収工程を示す断面図であり、(a)は第四移動工程、(b)は第五移動工程、(c)は回収工程、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1図4(c)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係るクリンカ処理システムを示す全体構成図である。図2は、移動手段を示す拡大図であり、(a)は断面図、(b)は図2(a)におけるB-B矢視断面図、である。
【0018】
本発明の一実施形態に係るクリンカ処理システム1は、図1に示したように、ボイラの底部に配置されたクリンカホッパ2から排出されたクリンカを冷却する冷却水を蓄えた水槽3と、水槽3内に排出されたクリンカを外部に排出する搬送手段4と、水槽3から冷却水を回収する沈殿槽5と、沈殿槽5から溢流した冷却水を貯留する貯水槽6と、貯水槽6内の冷却水を水槽3に循環させる冷却水循環ライン7と、沈殿槽5内の沈殿物Pを沈殿槽5内の所定の回収位置Xに移動させる移動手段8と、移動された沈殿物Pを回収して水槽3に戻す沈殿物回収ライン9と、を備えている。なお、図1において、ボイラの図は省略してある。
【0019】
ボイラでは、石炭が燃焼することで大量の石炭灰が発生する。発生した石炭灰の一部は、クリンカホッパ2に堆積した後、クリンカホッパ2の下部に配置された水槽3にクリンカ(クリンカアッシュ、ボトムアッシュ又は炉底灰とも称される。)として集積される。このとき、クリンカホッパ2の下端は水槽3内の冷却水に浸漬されていることから、クリンカは飛散することなく冷却水内に投入される。
【0020】
水槽3は、例えば、クリンカホッパ2から投入されるクリンカを受け入れる冷却部31と、冷却部31からクリンカを外部に排出する排出部32と、を備えている。冷却部31は、冷却水を一定の水位に保持するように構成されている。排出部32は、冷却水の水位よりも高い位置までクリンカを搬送可能な通路32aと、サイロ等の回収容器10にクリンカを排出可能な排出口32bと、を備えている。
【0021】
冷却水に投入されるクリンカは約900℃の高温であることから、冷却水の冷却効果を保持するためには、冷えた冷却水を供給する必要がある。また、投入されたクリンカによって冷却水が加熱され蒸発してしまうこととなる。そこで、冷却部31には新たな冷却水を供給する給水手段11が配置されていてもよい。また、本実施形態に係るクリンカ処理システムでは、温められた冷却水を回収し、冷やした冷却水を水槽3に戻す循環水システム12を備えている。
【0022】
搬送手段4は、例えば、水封式チェーンコンベヤである。クリンカを搬送するコンベヤは、図1に示したように、冷却部31の冷却水内に略水平に浸漬されており、排出部32の通路32aに傾斜に沿って配置されている。なお、搬送手段4は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、水力輸送処理方式等の搬送手段であってもよい。
【0023】
本実施形態において、循環水システム12は、沈殿槽5、貯水槽6及び冷却水循環ライン7によって構成される。沈殿槽5には、例えば、水槽3から溢流した冷却水を沈殿槽5に移送する冷却水移送ライン51が配置されている。冷却水移送ライン51は、例えば、水槽3と沈殿槽5とを繋ぐ配管によって構成される。また、冷却水移送ライン51には、水槽3内の冷却水をバルブの開閉によって任意に沈殿槽5に移送可能な配管が接続されていてもよい。
【0024】
沈殿槽5は、貯水槽6と隣接するように配置されており、堰52によって仕切られている。また、沈殿槽5の底面は、冷却水移送ライン51の排水口から回収位置X近傍に向かって傾斜する第一傾斜面53と、堰52から回収位置X近傍に向かって傾斜する第二傾斜面54と、を備えていてもよい。かかる傾斜面を形成することにより、自然に沈殿する沈殿物Pを回収位置Xに沈殿させやすくすることができる。貯水槽6は、堰52を溢流した冷却水を一時的に貯水可能な十分な容積を有している。
【0025】
本実施形態に係るクリンカ処理システムにおいて、クリンカホッパ2から供給された高温のクリンカは、水槽3の冷却水内に投入されると、冷却水との温度差によるヒートショックにより粉砕されて搬送手段4上に堆積する。搬送手段4上に堆積したクリンカは、搬送手段4により外部に排出される。
【0026】
一方、搬送手段4により排出し切れなかったクリンカは、冷却水とともに沈殿槽5に移送される。沈殿槽5と貯水槽6とは、堰52により仕切られていることから、冷却水内のクリンカは沈殿槽5の底部に沈殿物Pとして堆積する。したがって、沈殿槽5内のクリンカが取り除かれた上澄み液(冷却水)が堰52を溢流して貯水槽6に流れ込む。
【0027】
冷却水循環ライン7は、貯水槽6と水槽3とを繋ぐ配管71と、冷却水を汲み上げるポンプ72と、汲み上げた冷却水を冷却する冷却器73と、を備えている。循環させる冷却水を冷却器73で冷却することにより、冷えた冷却水を水槽3に循環させることができる。ポンプ72及び冷却器73は、例えば、循環水システム12の付近又は離隔した位置に配置された制御装置13によって制御される。
【0028】
移動手段8は、指向性を有する水流によって沈殿物Pを移動させる複数の噴水ノズル(第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85)を備えている。噴水ノズルは、回収位置Xから離れた位置から近い位置まで多段に構成されている。例えば、堰52の近傍に第一噴水ノズル81が配置され、所定の間隔で回収位置Xに向かって、第二噴水ノズル82、第三噴水ノズル83、第四噴水ノズル84、第五噴水ノズル85が沈殿槽5内に配置されている。なお、噴水ノズルの本数は五本に限定されるものではない。
【0029】
第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85は、図2(a)及び図2(b)に示したように、沈殿槽5の側壁に沿って沈殿槽5内に挿入され、底面付近でL字状に屈曲し、沈殿槽5の横幅方向に渡って配置されている。第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85のうち、沈殿槽5の底面に沿って配置された部分には、沈殿槽の底面に向かって斜め下方(図2(a)の矢印で示した方向)に水流を形成する複数の噴水孔が形成されている。
【0030】
かかる構成により、噴水ノズルが配置された部分における沈殿槽5の底面の略全域に渡って指向性を有する水流を形成することができる。なお、噴水孔の位置は、図2(b)において矢印で示している。また、噴水ノズルの形状は、図示した形状に限定されるものではない。また、噴水孔の位置に噴射ノズルを配置するようにしてもよい。
【0031】
また、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85のうち噴水孔を有する先端部は、例えば、図2(a)に示したように、それぞれ沈殿槽5の底面から一定の隙間を有するように配置されている。かかる構成により、各噴水ノズルから一定の水圧の水流を沈殿槽5の底面に噴き付けることができる。
【0032】
また、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85は、図1に示したように、冷却水循環ライン7から分岐された分岐管86にそれぞれ連結されている。したがって、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85は、循環された冷却水によって水流を生成するように構成されている。また、分岐管86と配管71との分岐部分には開閉弁86aが配置されていてもよい。また、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85の各々には開閉弁81a~85aが配置されていてもよい。これらの開閉弁81a~86aは制御装置13によって制御される。
【0033】
沈殿物回収ライン9は、例えば、図1に示したように、沈殿槽5と水槽3とを繋ぐ配管91と、沈殿物Pを汲み上げるスラッジポンプ92と、を備えている。沈殿物Pの回収位置Xは、例えば、図2(a)に示したように、スラッジポンプ92の吸引口92aの付近に設定されている。また、スラッジポンプ92は、例えば、図2(b)に示したように、沈殿槽5の横幅方向に複数台配置されていてもよい。なお、スラッジポンプの作動は制御装置13によって制御される。
【0034】
次に、沈殿物Pの移動工程について、図3(a)~図4(c)を参照しつつ説明する。ここで、図3は、沈殿物の移動工程を示す断面図であり、(a)は第一移動工程、(b)は第二移動工程、(c)は第三移動工程、を示している。図4は、沈殿物の移動工程~回収工程を示す断面図であり、(a)は第四移動工程、(b)は第五移動工程、(c)は回収工程、を示している。
【0035】
図3(a)に示した第一移動工程は、第一噴水ノズル81のみから冷却水を噴き出して水流を形成し、第一噴水ノズル81周りの沈殿物Pを第二噴水ノズル82の方向に移動させる工程である。具体的には、図1に示した分岐管86の開閉弁86a及び第一噴水ノズル81の開閉弁81aを開放し、残りの開閉弁82a~85aを閉鎖する。
【0036】
図3(b)に示した第二移動工程は、第二噴水ノズル82のみから冷却水を噴き出して水流を形成し、第二噴水ノズル82周りの沈殿物Pを第三噴水ノズル83の方向に移動させる工程である。具体的には、図1に示した分岐管86の開閉弁86a及び第二噴水ノズル82の開閉弁82aを開放し、残りの開閉弁81a,83a~85aを閉鎖する。
【0037】
図3(c)に示した第三移動工程は、第三噴水ノズル83のみから冷却水を噴き出して水流を形成し、第三噴水ノズル83周りの沈殿物Pを第四噴水ノズル84の方向に移動させる工程である。具体的には、図1に示した分岐管86の開閉弁86a及び第三噴水ノズル83の開閉弁83aを開放し、残りの開閉弁81a,82a,84a,85aを閉鎖する。
【0038】
図4(a)に示した第四移動工程は、第四噴水ノズル84のみから冷却水を噴き出して水流を形成し、第四噴水ノズル84周りの沈殿物Pを第五噴水ノズル85の方向に移動させる工程である。具体的には、図1に示した分岐管86の開閉弁86a及び第四噴水ノズル84の開閉弁84aを開放し、残りの開閉弁81a~83a,85aを閉鎖する。
【0039】
図4(b)に示した第五移動工程は、第五噴水ノズル85のみから冷却水を噴き出して水流を形成し、第五噴水ノズル85周りの沈殿物Pを回収位置Xの方向に移動させる工程である。具体的には、図1に示した分岐管86の開閉弁86a及び第五噴水ノズル85の開閉弁85aを開放し、残りの開閉弁81a~84aを閉鎖する。上述した第一移動工程~第五工程により、沈殿物Pは回収位置Xの近傍に集積される。
【0040】
図4(c)に示した回収工程は、回収位置Xに集積された沈殿物Pをスラッジポンプ92により汲み上げる工程である。このように、沈殿槽5内に沈殿した沈殿物Pをスラッジポンプ92の吸引口92aの付近に設定された回収位置Xに移動させて集積することにより、スラッジポンプ92により効率よく沈殿物Pを回収することができる。
【0041】
スラッジポンプ92により汲み上げられた沈殿物Pは水槽3内に戻される。水槽3内に戻された沈殿物Pは、一部は搬送手段4によって外部に排出され、一部は循環水システム12に戻され、再び沈殿物Pとして回収される。かかる処理を繰り返すことによって、いずれクリンカは搬送手段4によって外部に搬出される。
【0042】
上述したクリンカ処理システム1は、沈殿槽5内の沈殿物Pを沈殿槽5内の所定の回収位置Xに移動させた後、沈殿物Pを汲み上げて水槽3に回収するようにしたクリンカ処理方法を実行できるようにしたものである。
【0043】
また、上述した本実施形態のように、水槽3から移送された冷却水からクリンカを沈殿物Pとして除去することにより、貯水槽6に混入するクリンカを低減することができ、冷却水を循環させる配管71やポンプ72の摩耗を低減することができる。
【0044】
また、上述した本実施形態のように、沈殿物Pをスラッジポンプ92により汲み上げて水槽3に戻すことにより、沈殿物P(クリンカ)はいずれ搬送手段4によって外部に排出されることから、沈殿物Pをバキュームカーや人手によって排除する必要性が少なく、メンテナンスコストを低減することができる。
【0045】
また、上述した本実施形態のように、移動手段8を用いて沈殿槽5に沈殿した沈殿物Pを回収位置Xに移動させるようにしたことにより、沈殿物Pを所定の回収位置Xに集積することができ、沈殿物Pを容易に排出することができる。
【0046】
また、上述した沈殿物Pの移動工程は、単なる一例であり、図示した工程に限定されるものではない。例えば、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85から同時に冷却水を噴き出すようにしてもよい。また、第一噴水ノズル81から冷却水を噴き出した後、第一噴水ノズル81及び第二噴水ノズル82から冷却水を噴き出し、第一噴水ノズル81~第三噴水ノズル83から冷却水を噴き出し、第一噴水ノズル81~第四噴水ノズル84から冷却水を噴き出し、第一噴水ノズル81~第五噴水ノズル85から冷却水を噴き出すようにしてもよい。
【0047】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 クリンカ処理システム
2 クリンカホッパ
3 水槽
4 搬送手段
5 沈殿槽
6 貯水槽
7 冷却水循環ライン
8 移動手段
9 沈殿物回収ライン
10 回収容器
11 給水手段
12 循環水システム
13 制御装置
31 冷却部
32 排出部
32a 通路
32b 排出口
51 冷却水移送ライン
52 堰
53 第一傾斜面
54 第二傾斜面
71 配管
72 ポンプ
73 冷却器
81 第一噴水ノズル
82 第二噴水ノズル
83 第三噴水ノズル
84 第四噴水ノズル
85 第五噴水ノズル
86 分岐管
81a~86a 開閉弁
91 配管
92 スラッジポンプ
92a 吸引口


図1
図2
図3
図4