(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B66D 1/46 20060101AFI20230928BHJP
B66D 3/18 20060101ALI20230928BHJP
B66D 3/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B66D1/46 E
B66D3/18 Z
B66D3/20 H
(21)【出願番号】P 2019199777
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069849(JP,A)
【文献】特開2019-052007(JP,A)
【文献】特開2019-018930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
前記係止部材をリンクチェーン若しくはロープで繰り出して前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記係止部材の繰り出し位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記位置検出部からの前記位置信号と前記重量検出部からの前記重量信号に基いて、前記モータ部へ指令を行う制御部と、
前記制御部へ前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を有して前記荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
前記制御部が、前記荷役物が前記係止部材により係止されて宙吊り状態となった時の重量を前記操作指令部からの重量登録指令に基づき前記重量検出部から受信して登録重量として記憶する手段と、前記操作指令部から往復昇降指令を受信してかつ前記重量検出部から受信した重量が前記登録重量未満であった時、前記位置検出部からの前記位置信号を受信して第1の位置として記憶する手段と、前記重量信号を基にした第2の位置に到達するまで前記係止部材を上昇させた後、前記第1の位置と前記第2の位置との区間にて往復昇降繰返しを実行する手段と、を有することを特徴とする荷役助力装置。
【請求項2】
前記第2の位置が、前記重量検出部からの前記重量信号の値が前記登録重量に略一致した位置であることを特徴とする請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項3】
前記第2の位置が、前記重量検出部からの前記重量信号の値が前記登録重量に略一致した時に前記位置検出部から前記位置信号を受信して記憶した位置であることを特徴とする請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項4】
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
前記係止部材をリンクチェーン若しくはロープで繰り出して前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記係止部材の繰り出し位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記位置検出部からの前記位置信号と前記重量検出部からの前記重量信号に基いて、前記モータ部へ指令を行う制御部と、
前記制御部へ前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を有して前記荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記操作指令部からの重量登録指令により前記荷役物を宙吊りにした時の前記重量信号を受信して登録重量として記憶するステップを備え、
前記操作指令部からの往復昇降繰返しの指令により、
前記重量検出部からの前記重量信号が前記登録重量未満であるかを判断するステップと、
前記荷役物を往復昇降させる第1の位置を記憶する位置記憶ステップと、
前記重量検出部からの前記重量信号を基にした第2の位置へ前記荷役物を上昇させる上昇ステップと、
前記第1の位置まで前記荷役物を下降させる下降ステップと、
を有し、
前記上昇ステップと前記下降ステップとを繰り返し実行することを特徴とする荷役助力装置の制御方法。
【請求項5】
前記第2の位置が、前記重量検出部からの前記重量信号の値が前記登録重量に略一致した位置であることを特徴とする請求項4に記載の荷役助力装置の制御方法。
【請求項6】
前記第2の位置が、前記重量検出部からの前記重量信号の値が前記登録重量に略一致した時に前記位置検出部から前記位置信号を受信して記憶した位置であることを特徴とする請求項4に記載の荷役助力装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの荷役物を吊下げて昇降移動させる荷役装置を使用している。その荷役装置の中でも、大きな重量の荷役物に対してバランス状態を作り出し、使用者が軽い操作力で任意の高さに上下移動できるように助力を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置は、モータによって助力を行いバランス状態を作り出し、荷役物に小さな操作力を加えることでスムーズに移動させるため、単に上下動作を電動モータで行うものとは異なり、荷役物の荷重やこれに加わる操作力を例えば荷重検出器で検出して、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等で細かいバランス制御を行うように構成されている。
【0003】
このような荷役助力装置を用いて、大きな重量の荷役物、例えば部品を槽内の洗浄液に繰返し浸漬させて洗浄を行いたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、操作部からの指令によって制御部がバランスを保つ技術が開示されている。しかしながら作業者が洗浄槽に荷役物を挿入すると浮力が働くため、思い通りの操作ができず改善の余地があった。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は荷役物に意図しない外力が働く場合の荷役作業において、操作性の改善を図った荷役助力装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
係止部材をリンクチェーン若しくはロープで繰り出して係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
係止部材の繰り出し位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
位置検出部からの位置信号と重量検出部からの重量信号に基いて、モータ部へ指令を行う制御部と、
制御部へ係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
制御部が、荷役物が係止部材により係止されて宙吊り状態となった時の重量を操作指令部からの重量登録指令に基づき重量検出部から受信して登録重量として記憶する手段と、操作指令部から往復昇降指令を受信してかつ重量検出部から受信した重量が登録重量未満であった時、位置検出部からの位置信号を受信して第1の位置として記憶する手段と、重量信号を基にした第2の位置に到達するまで係止部材を上昇させた後、第1の位置と第2の位置との区間にて往復昇降繰返しを実行する手段と、を有するように構成されている。
【0008】
請求項2に記載の荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
第2の位置が、重量検出部からの重量信号の値が登録重量に略一致した位置で構成されている。
【0009】
請求項3に記載の荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
第2の位置が、重量検出部からの重量信号の値が登録重量に略一致した時に位置検出部から位置信号を受信して記憶した位置で構成されている。
【0010】
請求項4に記載の荷役助力装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
係止部材をリンクチェーン若しくはロープで繰り出して係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
係止部材の繰り出し位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
位置検出部からの位置信号と重量検出部からの重量信号に基いて、モータ部へ指令を行う制御部と、
制御部へ係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
制御部は、
操作指令部からの重量登録指令により荷役物を宙吊りにした時の重量信号を受信して登録重量として記憶するステップを備え、
操作指令部からの往復昇降繰返しの指令により、
重量検出部からの重量信号が登録重量未満であるかを判断するステップと、
荷役物を往復昇降させる第1の位置を記憶する位置記憶ステップと、
重量検出部からの重量信号を基にした第2の位置へ荷役物を上昇させる上昇ステップと、
第1の位置まで荷役物を下降させる下降ステップと、
を有し、
上昇ステップと下降ステップとを繰り返し実行するように構成されている。
【0011】
請求項5に記載の荷役助力装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、
第2の位置が、重量検出部からの重量信号の値が登録重量に略一致した位置で構成されている。
【0012】
請求項6に記載の荷役助力装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、
第2の位置が、重量検出部からの重量信号の値が登録重量に略一致した時に位置検出部から位置信号を受信して記憶した位置で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の荷役助力装置によれば、荷役物に意図しない外力が働く場合であっても予めの設定を不要として、操作性の改善を図った荷役助力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の斜視構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の本体装置の一部を省略した斜視構成図と無線遠隔操作装置の拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するフローチャートの一例である。
【
図13】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するフローチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。
図1は本発明の実施形態の一例である荷役助力装置と荷役物の斜視構成図である。
【0016】
荷役助力装置1は、荷役物7の昇降を行う本体装置2と、この本体装置2から鉛直下方向へ伸びたリンクチェーン4の下方にある係止部材6と、本体装置2を遠隔操作する操作指令部9を含んで構成されている。本体装置2の天面部には吊下げフック3が設けられて、本体装置2を建物の梁や、水平移動用のレール8にて移動自在な移動ブロック34などに吊して使用することができる。
【0017】
係止部材6は、リンクチェーン4の一端に設けられた荷役物用の吊下げフックを含んで荷役物7を係止する部材である。本実施形態では、荷役物7は例えば天部に鍔が設けられ多数の孔がその側面及び底面に設けられたかご容器と、その中に入った部品等とである。したがって荷役物7がこれより大きい洗浄槽内の洗浄液に浸漬させられると、洗浄液がこの孔を通して部品に行き渡り、さらに荷役物7が繰り返し上下動されることで荷役物7が洗浄可能となる。
【0018】
係止部材6は荷役物7を移動させるために、荷役物7の鍔に係止させる略コの字型の部材と、荷役物吊下げフックに接続する部材で構成されている。係止部材6の略コの字型の間隔は、荷役物7の鍔より僅かに大きく、係止部材6を上下動させてもがたつきを生じない程度で設けられている。そして荷役物7が床面等に置かれている時、作業者は係止部材6を水平移動させることで、係止部材6に荷役物7を係止、若しくは係止部材6から荷役物7を解放することができる。
【0019】
図2は本発明の実施形態の荷役助力装置の本体装置2の一部を省略した斜視構成図と操作指令部9の拡大斜視図である。
【0020】
本体装置2はカバーを備えていて、その内部には本体装置の制御部10、モータ部11、昇降作動部16及び重量検出部12等が収納されている。
【0021】
本体装置の制御部10はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、リンクチェーン4を介して係止部材6の上下移動の制御等を行う。
【0022】
係止部材6を上下移動させるための駆動源であるモータの負荷側には減速機が取り付けられて、モータと合わせてモータ部11を構成している。このモータは例えば交流サーボモータである。
【0023】
そして減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインとからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた出力軸15に取り出されて伝達するようになっている。この装置の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って上下移動を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。
【0024】
出力軸15は、減速機にて回転速度を減速し、増大させたトルクを出力する回転軸であり、昇降作動部16に連結され、昇降作動部16を連続的に正逆に回転させるものである。
【0025】
リンクチェーン4は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものであって、一端は係止部材6に繋がっていて、他端(無負荷側)はチェーン収納部17に収納されている。
【0026】
昇降作動部16は、駆動源のモータ部11からの動力の伝達によって回転する回転部材を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部16の回転部材は中空円柱の形状であって、出力軸15と繋がっていて、リンクチェーン4を巻回し、リンクチェーン4の巻き上げ及び繰り出しを行う。リンクチェーン4が巻回される位置は、おおよそ吊下げフック3の鉛直下付近であって、本体装置2の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン4は昇降作動部16の回転部材に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では係止部材6に繋がって昇降作動部16に巻回されるものにリンクチェーン4を用いたが、これに限らずワイヤーロープであっても良い。ワイヤーロープを使用した時は、昇降作動部16はドラム形状でワイヤーロープはその一端が固定されて回転部材に巻回される。
【0027】
モータ部11の反負荷側にはモータの回転角位置を検出する位置検出部13がモータ部11に連結されている。位置検出部13はいわゆるアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置値を出力する。したがってこの位置検出部13は、係止部材6の繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。
【0028】
重量検出部12は昇降作動部16に巻きつけられているリンクチェーン4から伝達される力を検出できるように弾性変形する起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出して、重量値を重量信号にて出力する。
【0029】
そして本体装置の制御部10が本体装置2内の昇降作動部16の近傍に配置されている。本体装置の制御部10は、位置検出部13からの位置値及び重量検出部12からの重量値を基に、モータ部11を制御する。本体装置の制御部10に関連した電装部は、本体装置2を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバー内に配置されている。
【0030】
本実施形態では、位置検出部13はモータ部11の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である出力軸15や昇降作動部16に設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0031】
また重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部16との間に設けた回転軸の捻れからトルクを検出するような回転型の構造や、モータ部11が受ける反力を検出する鼓型の構造のものであっても良い。さらに歪みゲージ式に限らず静電容量式等であっても良い。
【0032】
本体装置送受信部14が、本体装置の制御部10の回路基板と並んで配置されている。本体装置送受信部14は、操作指令部9と無線にて通信するための電子回路を有している。
【0033】
操作指令部9は、本体装置2を遠隔にて操作するためのものであって、本実施形態では電波によって通信している。操作指令部9は、電池によって駆動される。操作指令部9は、操作手段として例えばバランス釦21、保持釦22、上昇釦23及び下降釦24を有している。
【0034】
図3は本発明の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置1は、本体装置2と操作指令部9とを含んで構成されている。
【0035】
本体装置の制御部10は本体装置2全体の制御を行っている。本体装置の制御部10は、モータ部11を駆動する駆動回路を含んでいる。そして本体装置の制御部10は、重量検出部12から昇降作動部16に加わる重量値を受信し、位置検出部13からモータ部11の回転角の位置値を受信し、本体装置送受信部14と信号の送受信を行う。本体装置送受信部14と本体装置の制御部10とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。
【0036】
本体装置送受信部14は、操作指令部9の操作指令送受信部25と無線にて通信を行う。本体装置送受信部14及び操作指令送受信部25は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0037】
操作指令制御部20は操作指令部9全体の制御を行っている。操作指令制御部20は操作手段による操作指令を受けて、操作の指令信号を操作指令送受信部25へ送信する。そして操作指令送受信部25は操作指令制御部20から受信した操作の指令を、本体装置送受信部14へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号は、操作指令部9と本体装置2のペアリングを行う操作指令部9の識別情報が付与されている。
【0038】
次いで操作指令部9に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばプッシュスイッチである。作業者がバランス釦21を押すと操作指令部9から重量登録指令が送信され、本体装置の制御部10はこれを受信して本体装置2をバランスモードへ移行を開始する。本体装置の制御部10は、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した重量値を登録重量として記憶し、これを基に演算を行って、昇降作動部16に加わる重量をキャンセルしてバランス状態となるようにモータ部11を制御する。
【0039】
一方で、作業者が保持釦22を押すと、本体装置の制御部10はこれを受けて演算を行って、昇降作動部16を現在位置にて保持、すなわち係止部材6及び荷役物7の昇降位置を一定に保つようにモータ部11を制御する。
【0040】
作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、本体装置の制御部10はこれを受けてモータ部11を制御して、係止部材6を上昇若しくは下降させる。作業者は上昇釦23若しくは下降釦24を連続的に押すことで、モータ部11により係止部材6及び荷役物7を連続的に上下昇降させることができる。本体装置2が保持状態及びバランス状態いずれにあっても、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、上昇若しくは下降を行い、押した上昇釦23若しくは下降釦24から手を離すとその直前の保持状態及びバランス状態いずれかに戻る。
【0041】
図4から
図10は本発明の実施形態に係る荷役助力装置1を用い、荷役物7を洗浄槽32内の洗浄液33に浸漬させる一連の作業を表した模式図である。
図11から
図13は本発明の実施形態に係る荷役助力装置1の本体装置の制御部10が実行するフローチャートである。
図4から
図13を用いて荷役物7の動きとその時の本体装置の制御部10が実行する制御方法の各ステップについて説明する。
【0042】
図4において、レール8は作業構内の天井等に水平方向に設けられた軌道レールである。移動ブロック34はレール8に沿って移動可能な部材であって、吊下げフック3に連結して、本体装置2を吊している。したがって移動ブロック34は本体装置2を水平方向に移動自在にしている。洗浄槽32が例えば床31に固定、設置されている。洗浄槽32には洗浄液33が張られている。以下説明するのは、荷役物7が洗浄槽32から離れた場所で、床31に置かれている場合であるがこれに限るものではない。
【0043】
図11において、荷役助力装置1の電源を不図示のスイッチにより入れると、本体装置の制御部10が起動して、本体装置の制御部10はステップS101を実行する。本体装置の制御部10はステップS101にて、昇降作動部16を現在位置にて保持する。作業者は操作指令部9の上昇釦23若しくは下降釦24を押して係止部材6を上昇若しくは下降させ、係止部材6が荷役物7を係止できる位置まで係止部材6を移動させる。この時、リンクチェーン4には自重と係止部材6の重量のみのテンションが加わっている。
図4は、係止部材6の略コの字型の部材を荷役物7の鍔にはめ込んだ状態である。
【0044】
次いで、作業者は操作指令部9の上昇釦23を押して係止部材6を上昇させる。本体装置の制御部10はステップS102にて、上昇釦23が押されたと判断して、ステップS103を実行する。本体装置の制御部10はステップS103にて、昇降作動部16を作動させて係止部材6及び荷役物7を上昇させてステップS101へ戻って、その位置での保持状態となる。作業者が上昇釦23を連続的に押し続けると、本体装置の制御部10はステップS101~ステップS103を繰返して係止部材6及び荷役物7を上昇させる。
【0045】
係止部材6が、昇降作動部16によるリンクチェーン4の巻き上げにより上昇して、荷役物7は床31から離れ、床31から高さh1になった位置、すなわち荷役物7が宙吊り状態となった位置で、作業者は上昇釦23を押すのを止めると本体装置の制御部10は保持状態となる。この状態を表したのが
図5である。なお荷役物7の床31からの高さh1は予め定められるものでは無く、作業者が目視にて荷役物7が宙吊りとなったことを確認できた位置であれば良い。次いで作業者がバランス釦21を押すと、本体装置の制御部10はステップS104にてバランス釦21が押されたことを検出してステップS105へ進む。
【0046】
本体装置の制御部10はステップS105にて、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した登録重量を記憶して、ステップS106へ進む。本体装置の制御部10はステップS106にて、係止部材6及び荷役物7をバランス状態に保つバランス制御を実行する。係止部材6及び荷役物7がバランス状態であっても、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、本体装置の制御部10はステップS107にて、上昇釦23若しくは下降釦24が押されたと判断して、ステップS108に進む。本体装置の制御部10はステップS108にて、係止部材6及び荷役物7を上昇若しくは下降させてステップS106へ戻って係止部材6及び荷役物7はバランス状態になる。
【0047】
本体装置の制御部10はステップS107にて、上昇釦23若しくは下降釦24が押されていないと判断すると、ステップS109ヘ進む。本体装置の制御部10は、ステップS109にて保持釦22が押されていないことを検出する限りバランス制御を実行する。本体装置の制御部10によってバランス制御が実行されていることから、作業者は係止部材6若しくは荷役物7に僅かな外力を加えることで、上下方向に荷役物7を移動させることができる。したがって作業者は
図5に示す床31より高さh1の位置から、
図6に示す床31より高さh3の位置へ荷役物7を上昇させることができる。高さh3の位置は、この後に荷役物7を洗浄槽32に投入させることから、洗浄槽32の高さh2よりも若干高い位置であれば良い。
【0048】
作業者は、
図6に示す床31より高さh3の位置へ荷役物7を上昇させ、高さh3の位置で保持釦22を押す。すると本体装置の制御部10は、ステップS109にて保持釦22が押されたと判断してステップS110へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS110にてその位置での保持状態となる。作業者は荷役物7が保持状態になっていることから、係止部材6若しくは荷役物7を水平方向に押すことで、移動ブロック34から吊下げられている本体装置2、係止部材6及び荷役物7を水平移動することができる。
【0049】
作業者は、荷役物7を洗浄槽32の上方に移動させると(
図7)、下降釦24を押して荷役物7を下降させる。この時、本体装置の制御部10はステップS111とステップS112を実行する。作業者は下降釦24を押し続けることで、荷役物7を下降させて洗浄槽32内の洗浄液33に浸漬させる(
図8)。この時、荷役物7は高さh5の位置にあって、洗浄液33は高さh4a(
図7)から高さh4cの位置に水面が上昇する。作業者は荷役物7が洗浄液33に浸漬されたことを確認して、保持釦22を長押しする。この長押し時間は例えば3秒であるがこれに限るものではない。本体装置の制御部10は、ステップS113にて保持釦22が長押しされたことで操作指令部9から往復昇降指令を受信したと判断して往復昇降の繰返しを行うステップS200若しくはS300へ進む。往復昇降繰返しを行うステップS200及びS300は予め本体装置の制御部10にて使用者や管理者等によっていずれかが選択されている。なお往復昇降指令は、本実施形態では操作指令部9の保持釦22を長押しすることで行われるがこれに限らず、別途専用の不図示の釦によって行われる等の変形であってもよい。
【0050】
本体装置の制御部10は、ステップS113にて保持釦22が長押しされていないと判断すると、ステップS114に進む。本体装置の制御部10は、ステップS114にてバランス釦21が押されていないと判断すると、ステップS110へ戻って位置保持状態となる。一方本体装置の制御部10は、ステップS114にてバランス釦21が押されたと判断すると、ステップS105へ戻って、その時の重量値を記憶する。
【0051】
図12を参照して往復昇降繰返しを行うステップS200について説明する。本体装置の制御部10は、ステップS201にて、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した重量値を取得して、ステップS202へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS202にて、ステップS201にて取得した現在の重量値とステップS105にて記憶した重量値とを比較して、現在の重量値が小さければステップS203へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS202にて、ステップS201にて取得した現在の重量値とステップS105にて記憶した重量値とを比較して、現在の重量値が同等若しくは大きい場合はステップS200を終了してステップS110へ戻る。
【0052】
本体装置の制御部10は、ステップS203にて現在の荷役物7の位置、すなわち昇降作動部16の位置を第1の位置(高さh5)として記憶して(位置記憶ステップ)、ステップS204へ進む。この第1の位置が往復昇降の下端となる。本体装置の制御部10は、ステップS204にて、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した重量値を取得して、ステップS205へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS205にて、取得した現在の重量値とステップS105にて記憶した重量値とを比較して、取得した現在の重量値が小さければステップS206へ進み、さらにステップS206にて保持釦22が押されていないと判断すれば、上昇ステップS207にて荷役物7の上昇を行い、ステップS204へ戻る。なお
図9に示すように、荷役物7の上昇によって高さh6になった時には、洗浄液33の高さは低下して高さh4bとなる。
【0053】
本体装置の制御部10は、ステップS205にて、取得した現在の重量値とステップS105にて記憶した重量値とを比較して、取得した現在の重量値がステップS105にて記憶した重量値に到達したと判断すると、ステップS208へ進む。すなわち
図10に示すように、洗浄液33から荷役物7が離れて、洗浄液33による浮力が無くなって、重量検出部12が検出する重量は、係止部材6と荷役物7の重量すなわちステップS105にて記憶した重量値に到達したところで上昇をやめて下降に転ずることになる。
【0054】
本体装置の制御部10は、ステップS208にて所定の時間待機を行い、下降ステップS209へ進む。 待機する時間は、予め本体装置の制御部10若しくは操作指令部9に設けられた不図示のスイッチなどによって設定される。本体装置の制御部10は、下降ステップS209にて荷役物7の下降を行い、ステップS210へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS210にて保持釦22が押されていないと判断すれば、ステップS211へ進む。
【0055】
本体装置の制御部10は、ステップS211にて位置検出部13からの位置信号を取得して、ステップS201で記憶した第1の位置と比較して、昇降作動部16すなわち荷役物7が第1の位置に到達したかどうかを判断する。本体装置の制御部10は、ステップS211にて荷役物7が第1の位置に到達していないと判断した時は、下降ステップS209へ戻って下降を続ける。本体装置の制御部10は、ステップS211にて荷役物7が第1の位置に到達したと判断したときは、ステップS212にて所定の時間待機した後、ステップS204に戻って再度昇降作動部16に加わる重量を重量検出部12から取得する。よって往復昇降繰返しの下端は保持釦22が長押しされた直後に検出されステップS203で記憶された位置が設定される。一方往復昇降繰返しの上端はステップS203で取得した現在の重量値がステップS105にて記憶した重量値に到達した位置であって、その都度検出及び判断され、一定の位置になるとは限らない。
【0056】
次いで
図13を参照して往復昇降繰返しを行うステップS300について説明する。ステップS301からステップS307までは、ステップS201からステップS207と同一であるので説明は省略する。
【0057】
本体装置の制御部10は、ステップS305にて、取得した現在の重量値とステップS105にて記憶した重量値とを比較して、取得した現在の重量値がステップS105にて記憶した重量値に到達したと判断するとステップS308へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS308にて、現在の重量値がステップS105にて記憶した重量値に到達したと判断した時の位置を第2の位置として記憶して、ステップS309へ進む。この第2の位置は、往復昇降繰返しの上端位置である。
【0058】
本体装置の制御部10は、ステップS309にて所定時間待機し、下降ステップS310へ進む。待機する時間は、予め本体装置の制御部10若しくは操作指令部9に設けられた不図示のスイッチなどによって設定される。本体装置の制御部10は、下降ステップS310にて荷役物7の下降を行い、ステップS311へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS311にて保持釦22が押されていないと判断すれば、ステップS312へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS312にて位置検出部13からの位置信号を取得して、ステップS303で記憶した第1の位置と比較して、昇降作動部16すなわち荷役物7が第1の位置に到達したかどうかを判断する。本体装置の制御部10は、ステップS312にて荷役物7が第1の位置に到達していないと判断した時は、下降ステップS310へ戻って下降を続ける。本体装置の制御部10は、ステップS312にて荷役物7が第1の位置に到達したと判断したときは、ステップS313へ進む。
【0059】
本体装置の制御部10は、ステップS313にて所定の時間待機を行い、上昇ステップS314へ進む。本体装置の制御部10は、上昇ステップS314にて荷役物7の上昇を行い、ステップS315へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS315にて保持釦22が押されていないと判断すれば、ステップS316へ進む。本体装置の制御部10は、ステップS316にて位置検出部13からの位置信号を取得して、ステップS308で記憶した第2の位置と比較して、昇降作動部16すなわち荷役物7が第2の位置に到達したかどうかを判断する。本体装置の制御部10は、ステップS316にて荷役物7が第2の位置に到達していないと判断した時は、上昇ステップS314へ戻って上昇を続ける。本体装置の制御部10は、ステップS316にて荷役物7が第2の位置に到達したと判断したときは、ステップS309へ戻る。
【0060】
本体装置の制御部10は、往復昇降繰返しの期間中、ステップS305、ステップS311、ステップS315のいずれかにて保持釦22が押されたと判断すれば、往復昇降繰返しのステップS300を終了し、ステップS101に戻って、荷役物7の現在位置を保持する。
【0061】
本発明の荷役助力装置によれば、荷役物に意図しない外力が働くような、例えば荷役物を液体に浸漬させて繰り返し洗浄する作業を行う場合であっても、予めの設定を不要として、操作性の改善を図った荷役助力装置及びその制御方法を提供できる。
【0062】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役助力装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :荷役助力装置
2 :本体装置
3 :吊下げフック
4 :リンクチェーン
6 :係止部材
7 :荷役物
8 :レール
9 :操作指令部
10 :制御部(本体装置制御部)
11 :モータ部
12 :重量検出部
13 :位置検出部
14 :本体装置送受信部
15 :出力軸
16 :昇降作動部
17 :チェーン収納部
20 :操作指令制御部
21 :バランス釦
22 :保持釦
23 :上昇釦
24 :下降釦
25 :操作指令送受信部
31 :床
32 :洗浄槽
33 :洗浄液
34 :移動ブロック