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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】患者用手袋、患者用指サック
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20230928BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20230928BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A41D19/015 210A
A41D19/015 210Z
A41D19/015 410
A41D19/015 510A
A41D19/015 510Z
A41D13/08 107
A41D19/00 A
A41D19/00 C
A41D19/00 K
A41D19/00 N
A41D19/00 P
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017246549
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019112741
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】針山 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】平川 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭
(72)【発明者】
【氏名】奈部谷 紀穂
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】金丸 治之
【審判官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-114509(JP,U)
【文献】実開昭62-191815(JP,U)
【文献】特開2003-171815(JP,A)
【文献】特開2001-192915(JP,A)
【文献】登録実用新案第3138627(JP,U)
【文献】特表2014-501340(JP,A)
【文献】特開2010-100964(JP,A)
【文献】特開2000-345411(JP,A)
【文献】登録実用新案第3073897(JP,U)
【文献】登録実用新案第3173272(JP,U)
【文献】実開昭60-89212(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/015 210Z
A41D 19/015 410
A41D 19/015 510A
A41D 19/015 510Z
A41D 13/08 107
A41D 19/00 A
A41D 19/00 C
A41D 19/00 K
A41D 19/00 N
A41D 19/00 P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手指を保護するために前記患者の手指を少なくとも覆う患者用手袋であって、
前記手指を覆う手指部と、
前記手指の付け根である指元から手首までの掌側の面を覆う掌側部と、
前記指元から前記手首までの手の甲側の面を覆う甲側部を備え、
少なくとも一つの前記手指部は、
前記手指の前記掌側の面である手指掌面を少なくとも覆う第一面部と、
前記手指の前記手の甲側の面である手指甲面を少なくとも覆う第二面部と、
を少なくとも備え、
前記第一面部は、
前記手指掌面と前記手指甲面の間の前記手指が延びる方向に延びる前記手指の側面の、一方の指先側の部分を覆うものであり、
前記第一面部と前記第二面部が接合される部分である境界の前記指元側は、前記境界の前記指先側よりも前記手指掌面側に位置し、
前記第一面部の前記指先側は、前記第一面部によって覆われた側の前記手指の爪溝まで少なくとも延び、
前記第二面部は、前記指先側の前記手指甲面の少なくとも一部を覆い、
前記第一面部の、前記手指と向かい合う面とは反対側の表面の摩擦抵抗は、前記第二面部の前記表面の摩擦抵抗よりも大きいことを特徴とする、
患者用手袋。
【請求項2】
前記手指部の前記手指甲面側の前記指先側であって、前記手指の爪に対応する部分には、
少なくとも前記第二面部よりも曲げ剛性の高い指先部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の患者用手袋。
【請求項3】
前記指先部は、
前記手指が延びる方向と交わる方向に延び、前記爪の前記指先側の端部である爪先に対応する部分に位置する第一の線状部と、
前記第一の線状部の両端から前記爪の付け根に対応する部分まで略平行に延びる一対の第二の線状部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の患者用手袋。
【請求項4】
前記指先部は、
一方の前記第二の線状部の前記爪の付け根側の端部から、他方の前記第二の線状部の前記爪の付け根側の端部に向かい、前記爪の付け根に対応する部分に沿って伸びる第三の線状部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の患者用手袋。
【請求項5】
前記指先部は、
前記爪に対応する領域に樹脂素材が塗布された樹脂部を備えていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項6】
前記指先部は、前記爪に対応する領域に設けられた板状部材を備えていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項7】
前記手指部の前記掌側の面の前記指先側の端部の所定領域に、前記第一面部よりも曲げ剛性の高い指腹先部が備えられていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項8】
前記指腹先部と前記指先部の前記指先側のそれぞれの端部は、爪先と対応する位置において当接し、
前記指先部は、前記爪先と対応する位置から前記手指が伸びる方向に延びる爪先部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の患者用手袋。
【請求項9】
前記指腹先部と前記指先部は一体として構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の患者用手袋。
【請求項10】
前記第一面部は、前記第二面部とは異なる素材から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項11】
前記第一面部は、単繊維径が2000nm以下の第1の糸と、前記単繊維径が前記第1の糸よりも大きな第2の糸を少なくとも含む繊維素材から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項12】
前記第一面部の前記手指掌面の前記指先側を覆う部分は、
導電性を有する繊維素材を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項13】
前記手指部の前記指先側の領域に、導電性を有する素材から構成された被覆層が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項14】
前記甲側部には、前記手袋を前記使用者の手に固定する際に用いられる布状の固定部が備えられており、
前記固定部の、前記甲側部と向かい合う面には、前記甲側部の所定領域に着脱可能に貼付される第一の貼付面が備えられ、
前記甲側部の所定領域には、第二の貼付面が備えられており、
前記第二の貼付面の前記手指が延びる方向の長さは、前記手首と前記指元との間の長さと略同一であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の患者用手袋。
【請求項15】
患者の手指を保護するために前記患者の手指の指先を少なくとも覆う患者用指サックであって、
前記手指の掌側の面である手指掌面を少なくとも覆う第一面部と、
前記手指の手の甲側の面である手指甲面を少なくとも覆う第二面部と、
を少なくとも備え、
前記第一面部は、
前記手指掌面と前記手指甲面の間の前記手指が延びる方向に延びる前記手指の側面の、一方の前記指先側の部分を覆うものであり、
前記第一面部と前記第二面部が接合される部分である境界の前記手指の指元側は、前記境界の前記指先側よりも前記手指掌面側に位置し、
前記第一面部の前記指先側は、前記第一面部によって覆われた側の前記手指の爪溝まで少なくとも延び、
前記第二面部は、前記指先側の前記手指甲面の少なくとも一部を覆い、
前記第一面部の、前記手指と向かい合う面とは反対側の表面の摩擦抵抗は、前記第二面部の前記表面の摩擦抵抗よりも大きいことを特徴とする
患者用指サック。
【請求項16】
前記第一面部は、単繊維径が2000nm以下の第1の糸と、前記単繊維径が前記第1の糸よりも大きな第2の糸を少なくとも含む繊維素材から構成されている請求項15に記載の患者用指サック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着した状態で作業のしやすい手袋及び指サックに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの手指は物を掴んだり、ねじったりするなど、物との接触を介して複雑な動作を行う部分であり、生体機能が発達している部位である。この手指の皮膚は、他の皮膚と同様に薄膜の皮脂で覆われている。また、手指の指腹側(以降において「掌側」とも記載する。)の表面には指紋があり、物を掴み易くなっている。即ち、ヒトの手指には物を掴むための形と機能が備わっている。しかし、日常生活において、手指が物理的、あるいは化学的なストレスに晒されることによって、しばしば手指に変化が生じることがある。典型的には指先から皮脂が欠乏し、手湿疹を生じたりする。この結果、指腹部では指紋が失われ、物を掴む機能が損なわれ、健常人であっても日常生活に支障を来す場合がある。
【0003】
また、がん薬物療法などが行われる患者の体表には変化が現れやすいことが知られている。その様な患者では、頭皮では脱毛が生じる一方、手指では末梢神経障害が生じることもある。この様な場合、患者はしびれを感じたり、温痛覚に変化が現れて冷感を痛みに感じたりすることがあり、場合によっては爪や指紋が失われてしまうこともある。ヒトの爪や指紋は、物が手指から滑ることを防ぎ、物を掴むための機能を有するものであるため、がん薬物療法等によって手指から爪や指紋が消失してしまうと、その患者は、物を掴むことが難しくなってしまう。更には、末梢神経障害が生じることによってしびれを感じたり、温痛覚に変化が現れて冷感を痛みに感じたりする様な場合には、その患者は物を掴みにくいだけでなく、物に触るだけで苦痛を伴う場合もある。この様な場合には、患者の生活の質(QOL)が著しく低下してしまう。
【0004】
上記の様な場合には、手指に生じる掴みにくさを軽減したり、痛みを軽減したりする目的で、手袋や指サックを着用することがある。また、健常人であっても、作業等を行う際に、外部からの刺激などから手や手指を保護する目的で、手袋や指サックを着用する場合がある。
【0005】
一方、手袋や指サックを装着した状態で、例えば物を掴むなどの作業を行うと、通常の手袋や指サックの表面の摩擦抵抗は手指の表面と比較して小さいため、手袋の表面と接触する物が滑ってしまい作業が行いにくい。このような問題を解決することを目的として、滑り止めが備えられたり、物と接触する部分に摩擦抵抗の高い素材が用いられたりした手袋が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-135400号公報
【文献】特開2010-43382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の手袋は、ゴルフ用の手袋であって細かい動作が行いにくく、日常生活には使いにくいという問題があった。また、特許文献2に記載の手袋では、小片の滑り防止体が所定の間隔で設けられているため、当該防止体の間隔よりも小さな物を掴んだり、触ったりすることが難しく、指先を使うような細かな作業は行いにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、装着した状態でも作業が行い易い手袋、及び指サックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様に係る手袋は、使用者の手指を少なくとも覆う手袋であって、前記手指を覆う手指部と、前記手指の付け根である指元から手首までの掌側の面を覆う掌側部と、前記指元から手首までの手の甲側の面を覆う甲側部を備え、少なくとも一つの前記手指部は、前記手指の前記掌側の面である手指掌面を少なくとも覆う第一面部と、前記手指の前記手の甲側の面である手指甲面を少なくとも覆う第二面部とを少なくとも備え、前記第一面部は、前記手指掌面と前記手指甲面の間の前記手指が延びる方向に延びる前記手指の側面の、少なくとも一方の指先側の部分を覆うものであり、前記第一面部と前記第二面部が接合される部分である境界の前記指元側は、前記境界の前記指先側よりも前記手指掌面側に位置し、前記第一面部の、前記手指と向かい合う面とは反対側の表面の摩擦抵抗は、前記第二面部の前記表面の摩擦抵抗よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係る指サックは、使用者の手指の指先を少なくとも覆う指サックであって、前記手指の掌側の面である手指掌面の少なくとも前記指先側の一部を覆う第一面部と、前記手指の手の甲側の面である手指甲面の少なくとも前記手指の付け根側である指元側の一部を覆う第二面部とを少なくとも備え、前記第一面部は、前記手指掌面と前記手指甲面の間の前記手指が延びる方向に延びる前記手指の側面の、少なくとも一方の前記指先側を覆うものであり、前記第一面部の、前記手指と向かい合う面とは反対側の表面の摩擦抵抗は、前記第二面部の前記表面の摩擦抵抗よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の態様に係る手袋、及び本発明の第2の態様に係る指サックによれば、手指の掌側の面及び指先側の側面を覆う部分の摩擦抵抗が大きいため、手袋、及び指サックを装着した状態でも作業が行い易いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る手袋を掌側から見た正面図である。
図2図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋の手指部の一例を示す斜視図である。図2(b)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋の手指部の他の一例を示す斜視図である。図2(c)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋の手指部の異なる他の一例を示す斜視図である。
図3図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋の一つの手指部を指先側から見た図である。図3(b)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋の他の手指部を指先側から見た図である。
図4図4(a)は本発明の第1の実施形態に係る手袋を、手の甲側から見た背面図の一例である。 図4(b)は、本発明の第1の実施形態に係る手袋を、手の甲側から見た背面図の他の一例である。
図5図5(a)は、本発明の第2の実施形態に係る手袋の手指部の一例を示す斜視図である。図5(b)は、本発明の第2の実施形態に係る手袋の手指部の他の一例を示す斜視図である。
図6図6(a)は、本発明の第3の実施形態に係る手袋の、手指部の一例を示す斜視図である。図6(b)は、本発明の第3の実施形態に係る手袋の、手指部の他の一例を示す斜視図である。図6(c)は、本発明の第3の実施形態に係る手袋の、手指部の他の一例を示す斜視図である。
図7図7(a)は、本発明の第3の実施形態に係る手袋の、一つの手指部を指先側から見た図である。図7(b)は、本発明の第3の実施形態にかかる手袋の、他の手指部を指先側から見た図である。
図8図8(a)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る手袋の、手指部の一例を示す斜視図である。図8(b)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る手袋の、手指部の他の一例を示す斜視図である。図8(c)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る手袋の、手指部を掌側から見た図の一例である。図8(d)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る手袋の、手指部を掌側から見た図の他の一例である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る手袋の手指部の、掌側からみた正面図である。
図10図10(a)は、本発明の第5の実施形態に係る指サックの一例を示す斜視図である。図10(b)は、本発明の第5の実施形態の変形例に係る指サックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る手袋1について、図1から図4を参照して説明をおこなう。なお、以降の説明において、前後、左右、上下の方向は、特に断りの無い限り図中に示した方向とする。また、使用者の手、あるいは手指と向かい合い接触する側の面、即ち手袋1の内側の面を裏面と記載する。そして手袋の裏面の反対側の面、即ち手袋1の外側の面を表面と記載する。
【0014】
1.全体の構成
はじめに、主に図1を参照して本実施形態に係る手袋1の全体の構成について説明する。なお図1には、説明のために右手用の手袋1を示しているが、特に右手用に限定するものではない。左手用の手袋1の構成は、右手用の手袋1と左右が対称となっている以外は同一である。本実施形態では右手用の手袋1を例に以降の説明を行い、左手用の手袋1についてはその説明を省略する。
【0015】
手袋1は、所定の形状に裁断された複数の布材が縫製されて形成されたものであり、手指部2a~2d、親指部3、掌側部4、及び甲側部5から主に構成されている。
掌側部4は、使用者の手の掌側の面の、手首から手指の付け根(以降において「指元」とも記載する。)の間を覆う部分である。また、甲側部5は、使用者の手の甲側の面の、手首から指元の間を覆う部分である。この掌側部4と甲側部5は、それぞれの左右の辺が互いに縫製され、使用者の手の手首から指元までの部分全体を覆う様に構成されている。なお、図1において、甲側部5は図示されていない。
【0016】
掌側部4及び甲側部5の手首側(図1における後側)の端部は、使用の際に使用者の手が挿入される開口部10となっている。この開口部10は、使用者が手袋1を装着しやすいように、使用者の手の左右の幅よりもその直径(左右の横幅)が大きくなる様に形成されている。なお、更に装着を容易にするため、甲側部5の一部に、開口部10から前側(以降に於いて「指先側」とも記載する。)に向かう方向に、所定の長さの切り込みが設けられていても良い。
【0017】
掌側部4及び甲側部5の前側(以降において「指先側」とも記載する。)の部分から、手指部2a~2dが、それぞれ指先側に向かって延びている。この手指部2a~2dは、使用者の各手指がそれぞれ挿入される部分である。具体的には、手指部2aは使用者の人差し指が、手指部2bは使用者の中指が、手指部2cは使用者の薬指が、手指部2dは使用者の小指が挿入される部分である。なお、手指部2a~2dの指先側の端部は閉じられており、挿入された手指の指先の部分が露出しない様になっている。なお、以降の説明において、手指部2a~2dを総称して「手指部2」とも記載する。
【0018】
掌側部4及び甲側部5の右側の部分から、親指部3が右側に傾き指先側に向かって延びている。親指部3は、挿入された親指を覆う部分である。手指部2と同様に、親指部3の指先側の端部は閉じられて、親指の指先の部分が露出しない様になっている。
【0019】
2.手指部2aの構成
次に図2図3を主に参照し、手指部2aについて説明を行う。なお説明のために、図2(a)~(c)では、使用者の手指の爪の左右の側にある皮膚の部分(以降において「側爪郭」とも記載する。)と、その爪の左右の辺との境目にある溝(以降において「爪溝」とも記載する。)に対応する部分が破線gにて示されている。
【0020】
手指部2aは、指腹部6a、指甲部7a、及び左側面部8aから主に構成されている。指腹部6aは、使用者の人差し指の指腹の面(以降において「手指の掌側の面」とも記載する。)と、人差し指の右側の側面の指先側の部分を主に覆う部分であり、手指掌側部61aと側面部62aから構成されている。また、指甲部7aは、人差し指の手の甲側の面と、人差し指の右側の側面の指元側の一部を主に覆う部分であり、手指甲側部71aと側面部72aから構成されている。
【0021】
ここで手指の指腹の面(以降において「手指掌面」とも記載する。)とは、使用者の手指の掌側の面であって、当該手指の指元から、その手指の指先側の端部(以降において「爪先」とも記載する)までの間の面をいう。また、手指の手の甲側の面(以降において「手指甲面」とも記載する。)とは、使用者の手指の手の甲側の面であって、当該手指の指元から、その爪先までの間の面をいう。また、手指の側面とは、手指掌面と手指甲面の間にあって、当該手指が伸びる方向に延びる左右の側面のことを言う。この側面は、側中部とも呼ばれる部分である。換言すれば、手指の側面(側中部)とは、手指を伸ばした状態でその手指を右側、あるいは左側から見た際に見える手指掌面と手指甲面の間にある左右の面を言う。
【0022】
指腹部6aの手指掌側部61aは、人差し指の指腹側の面を覆う部分である。側面部62aは、人差し指の親指側の側面(以降において「右側の側面」とも記載する。)の指先側の一部を覆う部分である。換言すれば、側面部62aは、手指掌側部61aの指先側の右側の部分から、手の甲の面側に向かって延びて、人差し指の指先側の右側の側面の一部を覆う部分である。なお、本実施形態における指腹部6aが、特許請求の範囲における第一面部とされている。
【0023】
指甲部7aの手指甲側部71aは、人差し指の手の甲側の面を覆う部分である。また、側面部72aは、人差し指の指元側の右側の側面の一部を覆う部分である。換言すれば、側面部72aは、手指甲側部71aの指元側の右側の部分から、掌側に向かって延びて人差し指の指元側の右側の側面の一部を覆う部分である。なお、側面部62aと側面部72aは、それぞれが向かい合う辺の部分にて縫製され、人差し指の右側の側面全体を覆う様に形成されている。本実施形態における指甲部7aが、特許請求の範囲における第二面部とされている。
【0024】
左側面部8aは、人差し指の中指側の側面(以降において「左側の側面」とも記載する。)を主に覆う部分である。なお左側面部8aは、図2において図示されていない。左側面部8aの手の甲側の辺は、指甲部7aの手指甲側部71aの左側の辺と縫製されている。また、左側面部8aの掌側の辺は、指腹部6aの手指掌側部61aの左側の辺と縫製されている(図3(a)参照)。
【0025】
以降において、主に図2(a)及び図3を参照して、手指部2aの手指の右側の側面を覆う部分(以降において「右側面部」とも記載する。)について説明を行う。なお図2(a)~(c)では、説明のために手指部2aの使用者の人差し指の指先側の先端(爪先)に相当する部分が破線aaにて示されている。また、使用者の人差し指の第一関節に相当する部分が破線bbにて、手指の二関節に相当する部分が破線ccにて、また、使用者の人差し指の指元に相当する部分が破線ddにてそれぞれ示されている。更に、破線aa,bb,cc及び破線ddのそれぞれの間が、範囲X、範囲Y、範囲Zとして示されている。
【0026】
手指部2aの右側面部は、側面部62aと側面部72aから構成されている。具体的には、手指部2aの手指の先端に対応する部分から、その第一関節に対応する部分の間(範囲X)では、側面部62aが、人差し指の右側の側面を覆う様に構成されている(図2(a)及び図3(a)参照)。また、手指部2aの人差し指の第一関節に対応する部分から、第二関節に対応する部分の間(範囲Y)では、側面部62a及び側面部72aが、それぞれが人差し指の右側の側面を覆う様に構成されている。より詳細に説明すると、この間(範囲Y)では、側面部62aが側面を覆う部分が、指元に向かうにつれてその面積が狭くなるように形成され、側面部72aが側面を覆う部分は、指元側に向かうにつれその面積が広くなるように形成されている。換言すれば、側面部62aと側面部72aの境界が、指元に向かうに従って手の甲側から指腹側に向かって傾いてそれぞれが縫製されている(図2(a)参照)。また、手指部2aの、第二関節に相当する部分から、指元に相当する部分の間(範囲Z)では、側面部72aが、人差し指の右側の側面を覆う様に構成されている。
【0027】
なお手指部2aの右側面部は、側面部62aが人差し指の指先側の側面の一部を少なくとも覆う様にされていればよく、上記に限定される訳ではない。例えば側面部62aが、手指部2aの人差し指の先端に相当する部分から第二関節に相当する部分の間(図2(b)の範囲X及び範囲Y)を覆う様に形成されていたり、あるいは側面部62aが更に延びて、人差し指の甲側の面の一部を覆う様に形成されていたりしてもよい(図2(b)参照)。また、側面部62aが、人差し指の先端に相当する部分から第一関節に相当する部分の間(図2(c)の範囲X)において、指先側の側面の掌側の一部を覆う様に形成されていてもよい(図2(c)参照。)。
【0028】
指甲部7a及び左側面部8aは、柔軟性があって通気性の良い布材から構成されている。本実施形態では、指甲部7a及び左側面部8aが、綿繊維からなる布材(以降において「綿布材」とも記載する。)から構成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、なお指甲部7a及び左側面部8aを構成する布材は、柔軟性を有して通気性がよく、手袋の用途に適した所定の強度を有するものであれば、他の公知の布材であってもよい。
【0029】
指腹部6aは、指甲部7a及び左側面部8aに用いられる布材よりも摩擦抵抗の大きな布材から構成されている。ここで、摩擦抵抗の大きな布材とは、当該布材を介して物を掴んだり、物をめくったりする作業を行う際に、当該布材と接触した物が滑らずに無理なく作業を行うことができる程度の摩擦が、布材とその物との間で生じるものをいう。例えば使用者が、手袋1を装着した手で物を掴んで持ち上げる際に、手袋1を装着せずにその物を持ち上げる場合と同じ程度の力で持ち上げることができる摩擦力が、その物と布材との間で生じるものをいう。あるいは、手袋1を装着した状態で、使用者が紙をめくるなどの作業を行う際に、手袋1と紙が滑ることなく容易にその紙をめくることができる程度の摩擦が、紙との間に生じる布材をいう。
【0030】
本実施形態では、指腹部6aが公知のナノ繊維素材からなる布材から構成されている例に適用して以降の説明を行う。ここでナノ繊維素材とは、その繊維の直径(以降において「単位繊維径」とも記載する。)が、2000nm以下の糸Aと、単繊維径が糸Aより大きな糸Bを少なくとも含む繊維素材のことをいう。なお、ナノ繊維素材に含まれる糸Aの単位繊維径は、10~1500nmであることが好ましく、糸Bの単繊維径は1.5μmより大きいものであることが好ましい。このナノ繊維素材を用いて織り上げて束ねると、その表面積が通常の繊維を用いた場合と比べて非常に大きくなると共に、その表面に微少な凹凸が生じる。このため、このナノ繊維素材からなる布材とその布材が接触する物との間に、あたかも昆虫やヤモリの脚の裏の様な接着点が生じ、互いの接着力(表面の摩擦抵抗)が高まり、当該布材と物との間において滑りが生じにくくなる。以降において、このナノ繊維素材からなる布材を、「ナノ繊維布材」とも記載する。なおナノ繊維布材は、糸A、糸B以外の繊維素材が含まれるものであってもよい。また、糸Aはポリエステルフィラメント糸もしくはナイロンフィラメント糸であることが好ましく、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であってもよい。糸Bはポリエステルフィラメント糸もしくはナイロンフィラメント糸であることが好ましく、その製法については限定しない。なお、このナノ繊維布材は、起毛処理やバフ処理を行うことで、その表面の摩擦抵抗を更に高めることができる。このため本実施形態にて用いられるナノ繊維布材は、起毛処理やバフ処理が行われたものであることが好ましいが、そのような処理が行われていないものであってもよい。
【0031】
指腹部6aは、ナノ繊維布材の他、表面摩擦抵抗の大きな他の公知の布材や、一般的な手袋に用いられる布材に公知の滑り止め材などを塗布するなどの処理を行って表面の摩擦抵抗を大きくした布材によって構成されても構わない。あるいは他の公知の手段により摩擦抵抗を大きくした素材から構成されても構わない。
【0032】
3.手指部2b~2dの説明
続いて、図1及び図3を参照し、手指部2b~2dについて説明を行う。なお、手指部2b~2dはいずれも同一の構成をしているため、手指部2bを例に説明を行い、他の手指部の説明は省略する。
【0033】
手指部2bは、指腹部6b、指甲部7b、左側面部8b、及び右側面部9bから主に構成されている。指腹部6bは中指の指腹側の面を覆う部分であり、指甲部7bは、中指の手の甲側の面を覆う部分である。また、左側面部8bは中指の薬指に向かう側面を覆う部分であり、右側側面部9bは、中指の人差し指に向かう側面を覆う部分である。指腹部6bの左右の辺は、左側面部8b、及び右側面部9bの掌側の辺にそれぞれ縫製されている。また、指甲部7bの左右の辺は、左側面部8b、及び右側面部9bの手の甲側の辺にそれぞれ縫製されている(図3(b)参照)。
【0034】
本実施形態では、指甲部7b、左側面部8b、及び右側面部9bが、指甲部7a及び左側面部8aと同じ綿布材から構成されており、また、指腹部6bが、指腹部6aと同じナノ繊維布材から構成されている例に適用して以降の説明を行う。
【0035】
4.親指部3の説明
親指部3は、指腹部6eと指甲部7eから主に構成されている。指腹部6eは、親指の指腹側の部分を覆う部分であり、指腹部6aと同じナノ繊維布材から構成されている。指甲部7eは、親指の手の甲側の面を覆う部分であり、左側面部8aと同じ綿布材から構成されている。親指部3は、指腹部6eと指甲部7eが、それぞれが縫製されて、一方の開口を閉じた円筒形状に形成されている。なお指腹部6e、及び指甲部7eの指元側の端部は、掌側部4及び甲側部5に縫製されている。
【0036】
掌側部4は、指腹部6aと同じナノ繊維布材から構成されている。なお、本実施形態では、掌側部4と指腹部6a~6dが一枚の布材から構成されている例に適用して以降の説明を行う。即ち、掌側部4と指腹部6a~6dが、一枚のナノ繊維布材が裁断されて一体として形成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、掌側部4と指腹部6a~6dがそれぞれ個別に裁断され、指腹部6a~6dの指元側の端部が掌側部4の指先側の端部の辺にそれぞれ縫製された構成としても構わない。
【0037】
甲側部5は、指甲部7及び左側面部8aと同じ綿布材から構成されている。本実施形態では、甲側部5と指甲部7a~7dが一枚の綿布材から構成されている例に適用して以降の説明を行う。即ち、甲側部5と指甲部7a~7dが、一枚の綿布材が裁断されて一体として形成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、甲側部5と指甲部7a~7dがそれぞれ個別に裁断され、指甲部7a~7dの指元側の端部が、甲側部5の指先側の端部の辺にそれぞれ縫製された構成としても構わない。
【0038】
なお、表面摩擦抵抗が大きな布材であれば、指腹部6a~6e、及び掌側部4の一部、あるいはそれぞれが、異なる布材によって構成されていてもよい。また、柔軟性を有して通気性がよく、手袋の用途に適した所定の強度を有する等、所定の要件を満たす布材であれば、指甲部7a~7e、及び甲側部5等の一部、あるはそれぞれが、異なる布材から構成されていてもよい。
【0039】
甲側部5には、使用者の手に装着した手袋1を固定する際に用いられる固定部20が設けられている。固定部20は、矩形をした布状の部材であり、その左右方向の幅は使用者の小指から中指までの幅と略同一である。また、固定部20の手首側から指先に向かう方向の長さは、手首から指の付け根の近傍、即ち指の付け根の関節である中手指節関節の近傍までの長さと略同一となっている。
【0040】
この固定部20は、その一方の辺21が、甲側部5に縫製されて開閉自在に固定されている。即ち、固定部20は、甲側部5に固定された辺21を中心として、甲側部5に対して任意に近接、離間できる様に固定されている。本実施形態では、固定部20の辺21が、甲側部5の小指側の端部に縫製されて固定されている例に適用して以降の説明を行う(図4(a)参照。)。なお辺21が、甲側部5の親指側の部分に固定されていても良い(図4(b)参照。)。
【0041】
固定部20の甲側部5に向かう面には、固定部20と略同一の大きさの貼付部22が設けられている。また甲側部5の、貼付部22に対応する部分には、貼付部23が設けられている。なお、貼付部22、23は図4(a)、(b)において図示されていない。
【0042】
この貼付部22、23は、接触させると互いに着脱自在に貼り付く、公知の面ファスナーである。この貼付部22、23を設けることで、使用者が手袋1を装着した後に、固定部20を手首に締め付ける様に引っ張って甲側部5に固定し、手袋1を使用者の手に固定することができる。なお、本実施形態における貼付部22が、特許請求の範囲における第一の貼付面と、本実施形態における貼付部23が、特許請求の範囲における第二の貼付面とされている。
【0043】
なお、本実施形態に係る手袋1では、この貼付部22、23に、帝人フロンティア社製の面ファスナーである「ファスナーノ」(登録商標)が用いられている。この「ファスナーノ」は、ナノ繊維からなるパイル地の生地と、ポリエステルの立毛生地から構成されている。本実施形態では、貼付部22、23のいずれか一方に、ナノ繊維からなるパイル地の生地が用いられ、他方にポリエステルの立毛生地が用いられている例に適用して以降の説明を行う。
【0044】
この「ファスナーノ」は、ナノ繊維が有する摩擦力を活かし、水平方向への力(左右方向)に対しては高い貼付性を有して剥がれにくく、垂直方向(上下方向)への力に対しては簡単に剥がれやすいという特性を有している。このため、固定部20を甲側部5にしっかりと固定できる一方、固定部20を甲側部5から容易に引き剥がすことが可能である。
【0045】
また、「ファスナーノ」は、柔らかなポリエステル素材でできており、一般的な面ファスナーよりも柔軟である。このため、例えば手に障害等を有する患者が、固定部20によって手袋1をその手に固定する場合であっても、痛みや違和感を覚えにくい。
【0046】
なお、粘着部22、23に用いられる素材は、着脱自在に貼り付けられるものであれば上記に限定される訳ではなく、公知の一般的な面ファスナーや、他の公知の貼付素材を用いたものであっても構わない。
【0047】
上記の構成からなる手袋1によれば、手指の掌側の面を覆う指腹部6が、摩擦抵抗の大きな布材から構成されている。このため、手袋1を装着した状態で物を掴むなどの作業を行う場合も、接触した物が滑りにくく、作業が行い易い。また、摩擦抵抗の大きな布材から構成された指腹部6が、指先の側面部も覆う様に構成されているため、例えば人差し指を使って紙をめくる動作など、指先をねじる動作を伴う作業なども行いやすい。また、手袋1の物と主に接触する部分に、滑り止め防止体などの構成を設ける必要もないため、細かなものも掴みやすい手袋1を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る手袋1では、指腹部6や掌側部4が表面摩擦抵抗の大きなナノ繊維布材から構成されているため、接触した物が滑りにくく、作業性のよい手袋1となっている。また、指甲部7や甲側部5などの他の部分が綿布材によって構成されているため、通気性がよく安価な手袋1が提供できる。
【0049】
更に、手袋1は、固定部20の幅が広く形成され、固定部20と甲側部5を固定する貼付部22、23の面積が広く構成されている。このため、固定部20と甲側部5の固定位置を比較的広い範囲で任意に変更し、使用者の手首の大きさに合わせて手袋1を固定することができる。従って、例えば自身の手に障害や傷などを有している患者が手袋1を使用する場合には、傷などの部分に不要な圧力がかかることのないよう、固定部20と甲側部5の固定位置を調節することができる。また、貼付部22、23の面積が広いため、その引き剥がしが容易となる様に通常の面ファスナーよりも貼付力の弱い面ファスナーを用いた場合であっても、固定に必要な貼付力を得ることができる。このため、例えば障害等の理由により、固定部20を引き剥がす指先に力を入れることが難しい使用者であっても、貼付部22と貼付部23の引き剥がしが容易であるとともに、手首への固定も可能な手袋1を提供することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態では、指腹部6aが人差し指の右側の側面を覆う側面部62aを有している構成について説明を行ったが、手指部2b~2dの少なくともいずれかに手指部2aと同様の構成が設けられていてもよい。例えば手指部2bが、中指の指先側の人差し指側の側面を覆う側面部62bが設けられた指腹部6bを備えてもよい。この様にすれば、他の指の指先を用いた作業も行いやすい手袋1を提供することが可能となる。また、側面部6aが、人差し指の左側の側面(中指側の側面)も覆う様にされ、手指の指先側の両側の側面を覆う様に構成されてもよい。この様にすれば、指の両側の側面を用いた作業を行いやすい手袋1を提供することが可能となる。また、手指部2b~2dの少なくとも一部にも同様の構成が設けられてもよい。また手袋1が、所定の手指のみを覆う様に構成されていてもよい。例えば、手袋1が手指部2a、2b、及び親指部3のみを備えた構成としてもよい(図4(b)参照。)。この様にすれば、他の手指は開放されるため、圧迫感のより少ない手袋1とすることができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5図6を主に参照しながら説明を行う。
本実施形態に係る手袋1Aの基本構成は、第1の実施形態の手袋1と同様であるが、手指部2の指先側の構成が第1の実施形態と相違している。このため、以降の説明は、主に相違点について説明を行い、第1の実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、手指部2の使用者の手指の爪に相当する部分に、指先部11が設けられている。以降において、図5を参照して本実施形態に係る手袋1Aの手指部2aを例にその説明を行う。
【0053】
手指部2aの手指の爪に相当する部分には、人差し指の爪の輪郭を模した略U字状の指先部11aが設けられている。図5(a)を参照して説明すると、指先部11aは、人差し指の爪先に沿って左右方向に延びる線状部12aと、線状部12aの両端から指元側に向かって延びる一組の線状部13aから構成されている。この線状部13aは、使用者の手指の爪溝に対応する部分に設けられている。なお、図5(a)において、左側の線状部13aは図示されていない。本実施形態では、この線状部12a、13aが、指腹部6aと指甲部7aの境界部分、及び指甲部7aと左側面部8aの境界部分に設けられている例に適用して以降の説明を行う。具体的に説明すると、人差し指の爪先に対応する部分にある手指掌側部61aと手指甲側部71aとの境界部分に、線状部12aが設けられている。また、人差し指の右側の爪溝に対応する位置にある、側面部62aと、手指甲側部71aの境界部分に、一方の線状部13aが設けられている。また、人差し指の左側の爪溝に対応する位置にある、指甲部7aの手指甲側部71aと左側面部8aの境界部分に他方の線状部13aが設けられている。
【0054】
本実施形態では、指腹部6a、指甲部7a及び左側面部8aが縫製される際に、人差し指の爪先に対応する位置にある手指掌側部61aと手指甲側部71aの境界部分が繰り返し縫製されることで、線状部12aが形成されている。また、左右の爪溝に対応する位置にある側面部62aと手指甲側部71aの境界部分、及び手指甲側部71aと左側面部8aの境界部分が繰り返し縫製されることで、一対の線状部13aが形成されている。このようにすることで、指先部11aは、指腹部6aと指甲部7a及び左側面部8aなどの他の部分と比べ、硬く、その曲げ剛性が高くなっている。なお、縫製の際に棒状の芯材を入れるなどの他の公知の方法によって曲げ剛性の高い線状部11aが形成されていてもよい。
【0055】
なお指先部11aは、使用者の手指の爪先、及び爪溝に対応する手指部2aの部分に設けられていればよく、上記の境界とは異なる部分に設けられていてもよい。例えば、指腹部6a、指甲部7aあるいは左側面部8aの、使用者の手指の爪先、及び爪溝に対応する部分が、ミシン等によって縫製を繰り返される事によって指先部11aが形成されてもよい。あるいは、手指の爪先、及び爪溝に対応する部分に、爪の輪郭を模した略U字状の曲げ構成の高い素材を縫い付ける等の方法によって指先部11aが形成されてもよい。この様な指先部11aが設けられた手指部2aでは、作業の際に使用者の指先に加わった力は、指先部11aに吸収されたり、指先部11aを介して他の部分に分散されたりする。このため、外部からの力が使用者の手指の所定の箇所に集中してしまうことが防がれる。また物を掴む際に、指先部11aがあたかも使用者の爪と同じ様に機能して、掴んだ物を支持することも期待できる。具体的には、例えば線状部12に伝えられた使用者の掴む力の応力が、線状部13にも分散し、指先部11全体で、当該物を支えることが期待できる。また、紙などをめくる作業を行う際には、線状部12を紙などに引っかけてその作業を行うことも可能となる。
【0056】
なお、手指部2b~2dにも同様に、それぞれの手の甲側の爪に相当する部分に指先部11b~11dが設けられている。また、親指部3の親指の爪に相当する部分にも、指先部11eが設けられている。この指先部11b~11eは、指先部11aと同様に、線状部12b~12e及び線状部13b~13eからそれぞれ構成されている。なお、指先部11b~11d及び指先部11eの構成は、指先部11aと同一であるため、それらの説明を省略する。また、以降において、指先部11a~11eを総称して指先部11と、線状部12a~12eを総称して線状部12と、線状部13a~13eを総称して線状部13とも記載する。なお、本実施形態における線状部12が、特許請求の範囲における第一の線状部とされている。また、本実施形態における線状部13が、特許請求の範囲における第二の線状部とされている。
【0057】
この様にされた手袋1Aは、曲げ剛性の高い指先部11が設けられていることから、手袋1Aを装着した使用者の指先を保護するとともに、指先を用いた作業が行いやすくなっている。
【0058】
なお指先部11は、使用者の指の爪の付け根の部分に相当する位置に、線状部12、13と同様の曲げ剛性の高い線状の部分が更に設けられよい(図5(b)参照。)。即ち、線状部13aの指元側のそれぞれの端部をつなぎ、爪の付け根に沿うように形成された線状部14aが設けられた構成としてもよい。この様にすれば、使用者の爪に相当する部分が、線状部12a~14aによって取り囲まれる様になり、指先部11aに加わった力が線状部12a~14aの全体に分散されることになる。このため、使用者の手指の領域に力が集中することが防がれ、使用者の指先を保護することができる。なお、指先部11b~11eにも同様に、線状部14b~14eが設けられた構成としてもよい。本実施形態における線状得14a~14eが、特許請求の範囲における第三の線状部とされている。
【0059】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る手袋1Bについて説明を行う。なお、本実施形態にかかる手袋1Bの構成は、第2の実施形態に係る手袋1Aと同一であるが、手指部2の指先側の構成が相違している。よって以降において、図6及び図7を参照して相違する構成について主に説明を行い、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
本実施形態における手袋1Bの、手指部2の手指の爪に相当する部分には、使用者の手指の爪の形状を模した略平面状の指先部30が設けられている。本実施形態では、図6(a)に示す様に、指甲部7aの手指の爪に相当する部分に指先部30が設けられている例に適用して以降の説明を行う。なお、指先部30は、手指の爪に相当する場所であれば、例えば図6(b)に示すように、指腹部6a及び指甲部7aにまたがって設けられていてもよい。
【0061】
以降、指先部30aについて、手指部2aを例に、主に図6(a)を参照して具体的に説明する。本実施形態に係る手袋1Bでは、その指甲部7aの使用者の手指の爪に対応する部分に、使用者の手指の爪の形状を模した略台形形状の指先部30aが設けられている。この指先部30aは、指甲部7aの手指の爪に対応する領域にシリコーン樹脂が塗布されたものである。本実施形態では、指甲部7aの、手指の爪の輪郭に対応する部分に線状にシリコーン樹脂が塗布され、その内側に、格子状の配置パターンでシリコーン樹脂が塗布されている例に適用して以降の説明を行う。なお、シリコーン樹脂の配置パターンは、必要な曲げ剛性を確保できるのであれば、他の配置パターンであってもよく、あるいは均一に塗布されていてもよい。
【0062】
なお、本実施形態では、シリコーン樹脂は公知の塗布方法であるシリコンプリントによって塗布される例に適用して説明するが、他の公知の方法によって塗布されてもよい。あるいはシート状の樹脂を貼り付けるなど、他の公知の方法でシリコーン樹脂が所定の場所に配置されていてもよい。
【0063】
本実施形態では、指先部30aに約0.2mm程度の厚さでシリコーン樹脂が塗布されている例に適用して以降の説明を行う。なお、塗布されたシリコーン樹脂は硬化し、指腹部6aや指甲部7a、あるいは左側面部8aよりも高い曲がり剛性を有し、曲がりにくくなっている。
【0064】
手指部2b~2d及び親指部3の指先側の爪に対応する部分にも、同様に指先部30b~30eがそれぞれ設けられている。指先部30b~30eの構成は、前述の指先部30aと同一であるため、その説明を省略する。なお、以降において、指先部30a~30eを総称して指先部30とも記載する。本実施形態における指先部30が、特許請求の範囲における樹脂部とされている。
【0065】
この様に構成された手袋1Bでは、手指部2の指先側の爪に相当する部分に、所定のパターンでシリコーン樹脂が塗布された指先部30が設けられている。このため、使用者の手指の指先を保護することができる。また指先部30は使用者の手指の爪の形状を模した形状となっているため、指先部30が手指の爪と同じような機能を果たすことが期待できる。このため、例えば指先を用いて物を掴んだりする作業や、紙をめくるなどの作業が行い易くなることが期待できる。更には、指先に加わった力は指先部30によって分散されて、使用者の手指の爪に相当する部分に伝えられるため、例えば、がん薬物療法によって手指から爪が消失してしまった患者などが手袋1Bを使用した場合には、本来爪のある場所にあたかも爪があるような圧力が加えられて刺激が与えられ、指先の神経活動等を可能な限り正常な状態に保つことができることが期待できる。
【0066】
なお、シリコーン樹脂を、指腹側の指先にも塗布した構成としてもよい。図6(c)及び図7(a)を参照して具体的に説明すると、指腹部6aの指先側の領域に、略三日月形状にシリコーン樹脂が塗布された指腹先部35aを設けた構成としてもよい。本実施形態では、この指腹先部35に約0.05mm程度の厚のシリコーン樹脂が水玉模様状のパターンで塗布されている例に適用して説明を行う。なお、シリコーン樹脂は、必要な曲げ剛性が得られるのであれば、他のパターンで塗布されていたり、均一に塗布されていたりしても良い。
【0067】
この指腹先部35aは、指腹先部35aの三日月形状の凸状の部分が、指腹部6aの指先側の左側面部8aとの境目に沿うように配置され、他方の凹状の部分が指元側を向くように配置されている(図7(a)参照。)。なお、指腹先部35aの指先側の端部は、指先部30aの指先側の端部と接する様に構成されている。この様に指腹先部35aを設けることで、指腹部6aの指先側にも、他の部分よりも曲げ剛性の高い部分が設けられる。
【0068】
なお、手指部2b~2d及び親指部3の指腹側の指先にも同様に、指腹先部35b~35eが設けられている。図7(b)を参照して手指部2bを例に説明をすると、手指掌側部61bの指先側の部分に、略三日月形状をした指腹先部35bが設けられている。また、手指部2c,2d及び親指部3にも同様に指腹先部35c~35eが設けられている。以降において指腹先部35a~35eを総称して指腹先部35とも記載する。なお、図7(b)では、指腹先部35の指先側の部分と指先部30の指先側の部分が離間して配置されている様子が示されているが、指腹先部35の指先側の部分と指先部30の指先側の部分がそれぞれ当接する様に構成されてもよい。
【0069】
この様にされた手袋1Bによれば、指腹部6の指先側の掌側の面にも、他の部分よりも曲げ剛性の高い指腹先部35が設けられているため、指先に加わる力が指先部35にも分散され、使用者の指先を保護できる様になる。また、例えば使用者の手指の長さが手指部2の長さよりも僅かに短いなどの理由により、手指部2の指先側の部分と、手指部2に挿入された使用者の手指の指先との間に隙間が空いてしまう様な場合には、この指先部30及び指腹先部35が、あたかも手指の先端の部分の様に機能することが期待できる。即ち、指先部30及び指腹先部35は他の部分と比べて曲げ剛性が高いため、これらの部分でも一定程度の大きさの力を支えることができる。このため、例え手指部2の指先側の端部まで手指が挿入されていない場合であっても、例えば物を掴む際にこの指先部30及び指腹先部35が掴んだ物を支える補助となり、あるいは紙などをめくったりする際には、指先部30及び指腹先部35が当該紙を支えるため、作業が行いやすい。
【0070】
なお、指先部30及び指腹先部35に使用される樹脂としてはシリコーン樹脂に限定される訳ではなく、所定の強度及び曲がり剛性を有する他の公知の樹脂を用いることも可能である。
【0071】
本実施形態では、指先部30に配置されるシリコーン樹脂の厚さが約0.2mmであり、指先部35に配置されるシリコーン樹脂の厚さが約0.05mmである例に適用して説明を行ったが、シリコーン樹脂の厚さはこれに限定される訳ではない。指先部30及び指先部35に配置されるシリコーン樹脂の厚さとしては、それぞれの厚さの合計が0.05~2.00mmであることが好ましく、更にはその合計が0.10~1.00mmの厚さであることがより好ましい。なおそれらの厚さは、使用者の用途や状態、及び使用者の装着感等に従って変更してもよく、必要な強度、及び曲がり剛性を得られるのであれば、上記の範囲と異なる厚さであっても構わない。
【0072】
本実施形態では、手指部2a~2d及び親指部3に、指先部30が設けられている例に適用して説明を行ったが、その全てに指先部30が設けられている必要はなく、任意の手指部2、あるいは親指部3に、指先部30が設けられた構成としてもよい。
【0073】
〔第3の実施形態の変形例〕
次に図8を参照して、本実施形態の変形例に係る手袋1Cについて説明を行う。本変形例の手袋1Cの基本構成は上記の実施形態に係る手袋1Bと同一であるが、手指の爪に対応する部分の構成が相違している。このため、以降では相違する部分について手指部2aを例にその説明を行い、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
本変形例における手袋1Cの手指部2aの指先側には、使用者の人差し指の爪に対応する部分に、板状の爪部32aが設けられている。この爪部32aは、使用者の爪の形状を模して略台形状に形成されたプラスチックなどの公知の樹脂からなる板状部材である。より具体的に説明すると、爪部32aの左右方向の幅は、使用者の手指の爪の左右方向の幅と略同一であり、その長さ(手指が伸びる方向である前後方向の長さ)は、手指の爪の長さと略同一である。また爪部32aは、使用者の爪と同じ様に、その断面が略U字状に形成されている。
【0075】
爪部32aは、手指部2aの手指の爪に対応する部分に、接着剤などの公知の手段によって固定されている。また、手指部2b~2d及び親指部3にも同様に、爪部32b~32eがそれぞれ固定されている。なおこの爪部32b~32eの構成は爪部32aと同一であるためその説明を省略する。以降において爪部32a~32eを総称して爪部32とも記載する。なお、本実施形態における爪部32が、特許請求の範囲における板状部材とされている。
【0076】
このように構成された手袋1Cでは、板状の爪部32によって使用者の手の指先を保護することができる。また、爪部32は手指の爪の形状を模した形をしているため、手指の爪と同様な機能を発揮して、手指部2の指先側に加わった力を爪部32全体にて支え、物を掴むなどの作業が行いやすくなることが期待できる。
【0077】
なお、爪部32の指先側の部分は、その指先側の端部から僅かに内側の部分(僅かに指元側)にて手指部2に固定されてもよい。即ち使用者の爪と同じ様に、爪部32の指先側の端部の領域が、浮いた状態となる様に手指部2に固定されてもよい。この様にすれば、例えば、紙などをめくったりする作業の際に、その爪部32の浮いた指先側の領域を紙などに引っかけて作業を行うことができ、細かな作業も行いやすい。
【0078】
また、爪部32が、手指部2を指腹側から見た際に、その指先側の端部の所定の領域が手指部2よりも僅かに突出する様に配置されていてもよい(図8(c)参照。)。この様にすれば、例えば、紙などをめくったりする作業の際に、その爪部32の突出した領域を紙などに引っかけて作業を行うことができ、細かな作業も行いやすくなる。
【0079】
なお、手指部2aの指腹部6aの指先側に、前述の手袋1Bの指腹部35と同様の略三日月形状をした指腹先部37を設けた構成としてもよい(図8(b)、及び図8(d)参照。)。この指腹先部37は、指腹部35と同様に、指腹部6aなどよりも曲げ剛性の高い素材から構成されている。この様に指腹先部37を設ければ、爪部32とともに使用者の指先を更に保護することができる。
【0080】
また、爪部32の指先側の端部の所定の領域が、手指部2よりも僅かに突出する様に配置され、指腹先部37の爪先側の端部が、突出した爪部32の掌側の面に当接する様に配置されてもよい。この様に構成すれば、爪部32に加わった力は指腹先部37にも分散され、外部から加えられた力が爪部32の部分に集中することを防ぐことができる。
【0081】
更に、指腹先部37の爪先側の端部が、爪部32の掌側の面と接着されたり、あるいは、爪部32と指腹先部37が同一の素材から形成されるなどして、爪部32と指腹先部37が一体として構成されてもよい。この様にすれば、指腹先部37が爪部32を支えることになり、例えば、爪部32の指先側の部分に掌側から手の甲側に向かう力が加わった場合でも、爪部32が手の甲側に動いてしまうことが防がれ、爪部32が手指部2から剥がれにくくなる。このため、例えば爪部32の指先側の部分を使って物をつまむ様な作業が行いやすくなりる。更にはネックレスの口金などを外す様な、指先に一定の力を加える様な作業も行いやすくなる。なお、本実施形態における爪部32の突出した領域が特許請求の範囲における爪先部とされている。
【0082】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る手袋1Dについて、主に図9を参照して説明を行う。本実施形態にかかる手袋1Dの構成は第1の実施形態と同様であるが、手指部2の指先側に導電性を有する部分が設けられている点が相違する。従って以降では、異なる構成について主に説明を行い、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係る手袋1Dは、手指部2及び親指部3の指先側の所定の領域に、導電性を有する先部40a~40eが設けられている(以降において、先部40a~40eを総称して「先部40」とも記載する。)。本実施形態では、先部40が導電ポリマーによるコーティングがされた部分である例に適用して以降の説明を行う。具体的には、手指部2及び親指部3の指先側の掌側、手の甲側及び左右の側面に導電ポリマーによるコーティングがされて、先部40が構成されている。なお、先部40の手指部2及び親指部3の指先の掌側は、第3の実施形態における指腹先部35と同じような略三日月形状をしている。
【0084】
ここで導電ポリマーとは、導電性を有する公知の化合物であり、衣類などが帯電することを防ぐ目的で布地にコーティングされたり、あるいは繊維に練り込まれたりして用いられるものである。手袋1Dは、この導電ポリマーによるコーティングされた先部40を設けることで、手袋1Dに電荷が溜まることを防ぎ、使用者の指先を静電気による刺激から保護することができる。また、先部40は導電性を有するため、手袋1Dを装着したままであっても、先部40を使って、スマートフォンの操作パネルなどに用いられている静電容量式のタッチパネル等の操作を行うことができる。なお本実施形態における先部40の導電ポリマーのコーティングが、特許請求の範囲における被覆層とされている。
【0085】
なお先部40は、導電糸から構成された布材(ニット)によって構成されてもよい。具体的には、導電糸から構成された布材が、指腹部6や指甲部7の指先側の部分に縫製されて先部40が形成されてもよい。ここで導電糸とは、カーボンなどの導電性を有する素材が含まれた導電性を有する公知の繊維素材のことをいう。この様にされた先部40を備えれば、静電気の発生を抑え、静電容量式のタッチパネル等の操作を行うことが可能な手袋1Dを提供することができる。
【0086】
また指腹部6を、導電糸とナノ繊維素材が含まれる布材から構成してもよい。この様にすれば、表面摩擦抵抗が大きく、且つ導電性も有する指腹部6とすることができる。このため、作業が行いやすく、静電気の発生を防止できるとともに、静電容量式のタッチパネル等の操作も可能な手袋1Dを提供することができる。
【0087】
なお、掌側部4やその他の部分に、導電糸を含む布材が用いられた構成としても良い。あるいは、手指部2の指先側以外の部分も導電ポリマーにてコーティングされた構成としてもよい。この様にすれば、更に静電気の発生を防止することが可能な手袋1Dとすることができるようになる。なお、図9では、手指部2及び親指部3の指先側の全体、即ち、指先側の掌側の面、左右の側面、及び手の甲側の面に先部40が設けられている例を示しているが、少なくとも、手指部2及び親指部3の指先の掌側の面に先部40が設けられていればよいため、手指部2及び親指部3の左右の側面、及び手の甲側の面のいずれかに先部40が設けられていなくてもよい。また、先部40の手指部2及び親指部3の指先の掌側の形状は、図9に示す様な三日月形状ではなく、他の形状であってもよい。
【0088】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図10を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる指サック100は、使用者の所定の指に装着されて使用されるものであり、その基本構成は、前述の第1の実施形態の手袋1の手指部2と同一である。
【0089】
以下、図10(a)を参照しながら、指サック100の構成について説明を行う。
本実施形態では、指サック100が、右手の人差し指用の指サックである例に適用して以降の説明を行う。なお、装着される手指は、人差し指に限定されるわけではなく、他の指であって良い。また左手の任意の指であっても構わない。なお、左手側用の指サックの構成は、左右対称の形状をしている以外は、右手用の指サック100と同一である。
【0090】
本実施形態の指サック100は、所定の状に裁断された複数の布材が組み合わされ、略円筒形状に縫製されたものである。この円筒形状の一方の開口は、使用者の指が挿入される開口部200となっている。また、指サック100の指先側の部分は閉じられており、挿入された手指の指先が外部に露出しない様になっている。
【0091】
指サック100は、指腹部160、指甲部170、及び左側面部180から主に構成されている。なお図10(a)において左側面部180は図示されていない。指腹部160は、使用者の人差し指の指腹側の面と、人差し指の指先側の側面(側中部)の一部を主に覆う部分であり、手指掌側部161と側面部162から構成されている。手指掌側部161は、人差し指の指腹側の面を覆う部分である。側面部162は、手指掌側部161の指先側の右側の部分から、手の甲側に向かって延びて、人差し指の右側の側面(側中部)の指先側の一部を覆う部分である。
【0092】
指甲部170は、人差し指の手の甲側の面と人差し指の指元側の側面を主に覆う部分であり、手指甲側部171と側面部172から構成されている。手指甲側部171は、人差し指の手の甲側の面を覆う部分である。また、側面部172は、側面部172の指元側の右側の部分から、手の甲側に向かって延びて、人差し指の右側の側面の指元側の一部を覆う部分である。なお、側面部162と側面部172は、それぞれ縫製され、人差し指の右側の側面全体を覆うように一体に形成されている。なお、第1の実施形態に係る手袋1と同様に、側面部162と側面部172の指元側の境界は、指先側の境界よりも掌側に位置している。
【0093】
左側面部180は、人差し指の中指に向かう側面を覆う部分である。左側面部180の手の甲側の辺は、手指甲側部171の左側の辺と縫製され、左側面部180の手の掌側の辺は、手指掌側部161の左側の辺と縫製されている。
【0094】
指甲部170及び左側面部180は、柔軟性があって通気性の良い布材から構成されている。一方、指腹部160は、指甲部170及び左側面部180の布材よりも大きな摩擦抵抗を有する布材から構成されている。本実施形態では、指腹部160がナノ繊維布材によって構成され、指甲部170及び左側面部180が綿布材によって構成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、指腹部160を構成する布材としては、ナノ繊維布材の他、表面摩擦抵抗の大きな他の公知の布材や、綿布材などの通常の布材に滑り止め材などを塗布したり、染みこませるなどの処理を行ったりした布材などであってもよい。本実施形態における指腹部160が、特許請求の範囲における第一面部とされている。また、本実施形態における指甲部170が、特許請求の範囲における第二面部とされている。
【0095】
なお、本実施形態では、図10(a)に示すように指サック100の前後方向の長さ(指先が伸びる方向の長さ)が、人差し指の指元から指先までの長さと略同一である例に適用して説明を行ったが、指サック100の長さは、特にこれに限定される訳ではない。指サック100の長さは、側面部162が人差し指の指先側の側面を少なくとも覆う様に構成されていれば、任意の長さでよい。例えば指サック100の長さが、使用者の手指の第1関節から爪先を覆う長さであったり、他の任意の長さであったりしても構わない。
【0096】
上記の構成からなる指サック100によれば、手指の掌側を覆う部分が、摩擦抵抗の大きな布材によって構成されている。このため、指サックを装着した状態でも、接触した物が滑りにくいため、物を掴んだりあるいは紙などの部材をめくったりという作業が行い易い。また、手指の指先側の指先側の側面を覆う部分も、摩擦抵抗の大きな布材によって構成されているため、例えば紙をめくる際などに行われる、指をねじる様な作業も行い易い。また、他の部分は、通気性のよい布材を用いているため、通気性がよく安価な指サックを提供できる。また、指サック100は、必要な手指にのみ装着するものであるため、手袋と比較して圧迫感を感じることが少なく使用することができる。
【0097】
なお、本発明に係る指サックは、大きな摩擦抵抗を有する布材によって使用者の手指の掌側の面の指先側、及び手指の側面の指先側の少なくとも一部が覆われていればよく、その構成は上記に限定される訳ではない。以下、図10(b)を参照して、本実施形態の変形例に係る指サック110について具体的に説明する。本変形例に係る指サック110は、指先側部165と指元側部175から構成されている。指元側部175は、柔軟性があって通気性の良い布材から構成されており、指先側部165は指元側部175の布材よりも大きな摩擦抵抗を有する布材から構成されている。
【0098】
指先側部165は、指サック110が装着される手指の掌側の面の指先側の部分を覆う指腹部167と、手指の指先側の両側の側面を少なくとも覆う側面部169から構成されている。本実施形態では、この側面部169が手指の手の甲側まで延び、手指の手の甲側の面も覆う様に構成されている例に適用して以降の説明を行う。即ち、指先側部165は、手指の指先の全体を覆う様に形成されている例に適用して説明を行う。なお、手指の指先側の手の甲側の面が他の布材が覆う様に構成されていても構わない。また、本実施形態では、図10(b)に示す様に指先側部165が、手指の指先から、その第1関節に相当する部分までの間を覆う様に構成されている例に適用して説明を行う。なお、指先側部165が手指を覆う範囲の前後方向の長さは、使用者が作業を行いやすい長さであれば任意でよく、手指の指先から、その第1関節に相当する部分までの長さよりも短くても、長くてもよい。
【0099】
指元側部175は、指サック110が装着される手指の手の甲側の面の指先側の部分を覆う指腹部177と、手指の指先側の両側の側面を少なくとも覆う側面部179から構成されている。本実施形態では、この側面部179が、手指の指腹側まで延び、手指の指腹側の面も覆う様に構成されている例に適用して以降の説明を行う。即ち、指元側部175は、手指の指元側の部分全体を覆う様に形成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、手指の指腹側の面の指元側の部分を他の布材が覆う様に構成されていても構わない。また、本実施形態では、図10(b)に示す様に、指元側部175が、手指の指元の付近から、手指の第1関節に相当する部分までの間を覆う様に構成されている例に適用して説明を行う。
【0100】
指先側部165と指元側部175は、それぞれが接する境目にて、縫製などの公知の方法により一体に形成されている。なお、指元側部175が手指を覆う範囲の前後方向の長さは、使用者が作業を行いやすく指サック110が脱げにくい程度の長さであれば任意でよく、例えば指元側部175が、指先側部165との境目から手指の第二関節までの範囲を覆う長さであってもよく、それよりも短くても、あるいは長くてもよい。本実施形態における指先側部165が、特許請求の範囲における第1面部とされている。また、指元側部175が、特許請求の範囲における第2面部とされている。
【0101】
この様にされた指サック110であれば、手指の指先側の掌側の面、及びその側面が摩擦抵抗の大きな布材によって構成されている。このため、指サックを装着した状態でも、接触した物が滑りにくいため、物を掴んだりあるいは紙などの部材をめくったりという作業が行い易い。また、その構成は指サック100と比べて簡易なものであるため、容易な方法で安価に製造することも可能である。また、指サック110は、必要な手指にのみ装着するものであるため、手袋と比較して圧迫感を感じることなく使用することができる。
【0102】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、上記実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B,1C,1D・・・手袋 2・・・手指部 3・・・親指部
4・・・掌側部 5・・・甲側部 6・・・指腹部 7・・・指甲部
10・・・開口部 11・・・指先部 12,13,14・・・線状部
20・・・固定部 21・・・辺 22,23・・・貼付部
30・・・指先部 32・・・爪部 35,37・・・指腹先部
40・・・先部 61・・・手指掌側部 62・・・側面部
71・・・手指甲側部 72・・・側面部 100・・・指サック
110・・・指サック 160・・・指腹部 161・・・手指掌側部
162・・・側面部 165・・・指先側部 167・・・指腹部
169・・・側面部 170・・・指甲部 171・・・手指甲側部
172・・・側面部 175・・・指元側部 177・・・指腹部
179・・側面部 180・・・左側面部 200・・・開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10