(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/497 20060101AFI20230928BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230928BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230928BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230928BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230928BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K31/497 ZNA
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
C07K16/30
C07K7/64
(21)【出願番号】P 2019096155
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-05-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「ヒトIgG特異的修飾技術による多様な機能性抗体医薬の創出」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 良雄
(72)【発明者】
【氏名】六車 共平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大和
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐二
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/035436(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217347(WO,A1)
【文献】Kyohei Muguruma et al.,"Novel Hybrid Compound of a Plinabulin Prodrug with an IgG Binding Peptide for Generating a Tumor Selective Noncovalent-Type Antibody-Drug Conjugate",Bioconjugate Chemistry,2016年,Vol.27,p.1606-1613
【文献】Kyohei Muguruma et al.,"An Efficient Method for the Conjugation of Hydrophilic and Hydrophobic Components by Solid-Phase-Assisted Disulfide Ligation",Angewandte Chemie International Edition,2018年,Vol.57,p.2170-2173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
39/395
A61P 1/00-43/00
C07K 16/30
7/64
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される複合体:
【化1】
式1中、
PDは、下記式2-1または2-2:
【化2】
[式2-1および2-2中、
Ar
1は、下記式3-1~3-3で表される基からなる群から選択され(ただし4-イミダゾリル基、4-オキサゾリル基および4-チアゾリル基を除く)、
【化3】
(式3-1
および3-2中、
Wは、他の環員原子と一緒になって、環員原子数5または6の含窒素複素環を形成し、
R
2は、前記含窒素複素環上に存在する、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~6のアルキル基、炭素数
2~6のアルケニル基、炭素数
2~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択される基を表
す;ならびに
式3-3中、
Y
1
は、酸素原子または硫黄原子であり、
Z
1
~Z
3
は、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子であり、
R
2
は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択される基を表す、ただしZ
1
~Z
3
のすべてが窒素原子である場合、R
2
は存在しない)
Ar
2は、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリール基および下記式4-1で表される基からなる群から選択され、
【化4】
(式4-1中、Y
2は、-(C=O)-、-(C
H-OR
5)-、-(C=NR
5)-、-(C=N-OR
5)-、-O-、-NR
6-、-(C=S)-または-S-であり、この際、R
5は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアシル基を表し、R
6は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基または炭素数1~4のアシル基を表し;R
3およびR
4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数
2~6のアルケニル基、炭素数
2~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択され;lは、0~4の整数であり;mは、0~5の整数である)
R
1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数
2~6のアルケニル基、炭素数
2~4のアルキニル基および炭素数6~12のアリール基からなる群から選択され、
nは、0~10の整数を表し、
*は、Lとの結合部位である]
で表されるプリナブリン誘導体ユニットであり;
Lは、PDおよびPU間のリンカーユニットを表し;
PUは、下記式5:
【化5】
[式5中、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、Cysを除く任意のアミノ酸残基または欠損であり、
X
3は、Asp、Asn、Glu、Ser、2-アミノブタン酸および2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
4およびX
14は、それぞれ独立して、Cys、2-アミノブタン酸およびS-メチルシステインからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、ただしX
4およびX
14の少なくとも一方は、Cys残基であり、
X
5は、Ala残基であり、
X
6は、任意の芳香族アミノ酸残基であり、
X
7は、His残基であり、
X
8は、Lys、Val、Leu、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、N6-アセチルリジン、N5-アセチルオルニチン、2-アミノ-4-アセチルアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ-3,3-ジメチルブタン酸、2-アミノ-4,4-ジメチルペンタン酸、3-シクロヘキシルアラニンおよび下記式5-1で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【化6】
(上記式5-1中、K
1は、炭素数1~4の
アルキレン基、-(NH)-、-(C=O)-、-O-およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)
X
9は、Gly
残基、またはD-Cys
残基を除く任意のD-アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
10は、Glu、GlnおよびAsnからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
11は、Leu残基であり、
X
12は、Val残基であり、
X
13は、Trp残基であり、
X
15は、Thr、Ser、Valおよび2-アミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
16は、Phe、His、3-シクロヘキシルアラニンおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、
X
17は、His、Ala、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損である]
で表され、アミノ酸残基数13~17のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むペプチドユニットであり;
ABは、抗体ユニットを表す。
【請求項2】
前記Ar
1が下記式3-4~3-22で表される基からなる群から選択される、請求項1に記載の複合体:
【化7】
式3-4~3-22中、R
2は、請求項1において定義した通りである。
【請求項3】
前記Ar
2が置換または非置換の炭素数6~14のアリール基および下記式4-2で表される基からなる群から選択される、請求項1または2に記載の複合体:
【化8】
式4-2中、R
3、R
4、lおよびmは、請求項1において定義した通りである。
【請求項4】
前記リンカーユニットLが下記式6で表される構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体:
【化9】
式6中、
L
1は、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基、-NH-、-O-、-S-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-
、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-
、-C(=O)-、ポリオキシアルキレン基、アミノ酸残基、ペプチド鎖、ポリエチレングリコール鎖およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
RGは、マレイミド基、ハロゲン化アセチル基、アクリロイル基またはS-Npys(S-3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル)由来の反応性官能基であり、
*1は、前記PDとの連結部位であり、
*2は、前記PUとの連結部位である。
【請求項5】
前記L
1が下記式7で表される構造を有する、請求項4に記載の複合体:
【化10】
式7中、L
2およびL
3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基および置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基からなる群から選択される。
【請求項6】
前記式5中、
X
6がTyr、Trp、2-アミノ-3-(1-ナフチル)プロピオン酸、2-アミノ-3-(2-ナフチル)プロピオン酸、2-メチルアミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロピオン酸および下記式5-2で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【化11】
X
9がGly、D-Ile、D-Pro、D-Arg、D-SerおよびD-Lysからなる群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記式5中、
X
3がAsp、Gluおよび2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
4およびX
14がCys残基であり、
X
16がPhe、Hisおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X
17がHis、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基である、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記式5で表されるポリペプチドが配列番号1~7のアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
前記式5で表されるポリペプチドにおいて、X
4のCys残基およびX
14のCys残基間でジスルフィド結合を形成している、またはX
4およびX
14のCys残基中のスルフィド基が下記式8で表される2価の基により連結されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合体。
【化12】
【請求項10】
前記ペプチドユニットPUにおいて、
前記ポリペプチドのX
8が前記抗体ユニットと結合するための架橋性基を有し、
前記ポリペプチドのN末端またはC末端が前記リンカーユニットLと連結するための連結基を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項11】
前記架橋性基がDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、DMA(アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMS(スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DTBP(3,3’-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)およびDSP(ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)からなる群から選択される化合物由来の基である、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
前記架橋性基がDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)またはDSS(ジスクシンイミジルスベレート)由来の基である、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記抗体ユニットABが抗HER2抗体および抗CD239抗体から選択される抗体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の複合体の製造方法であって、
(I)前記抗体ユニットABが由来する抗体と前記抗体のFc部位に結合する化合物とを混合して、第1の架橋体を形成することと、
(II)前記第1の架橋体と、前記ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体とを混合して、第2の架橋体を形成することと、
を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
プリナブリン(Plinabulin)は、アスペルギルス・ウスタス(Aspergillus ustus)から単離・構造決定されたチューブリン阻害物質S-(-)-フェニラヒスチンをリード化合物として構造活性相関研究を展開することで創製された、チューブリン重合阻害作用を有する化合物である(特許文献1)。プリナブリンは、チューブリン重合阻害作用に加え、腫瘍部に誘導される新生血管内皮細胞への傷害作用を示す。現在、プリナブリンは、抗癌剤候補化合物として治験が始まり、第III相臨床試験に供されている。また一方で、プリナブリン誘導体として、より活性の高い誘導体も報告されている(非特許文献1~3)。
【0003】
プリナブリンは、有望な医薬候補化合物であるが、溶解性が悪い性質を有しており、これまでに水溶性プロドラッグの創薬研究が実施されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2004/0102454号明細書
【文献】国際公開第2012/035436号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yamazaki Y., Hayashi, Y. et al., J. Med. Chem., 2012, 55, 1056-1071
【文献】Yamazaki Y., Hayashi, Y. et al., Bioorg. Med. Chem., 2012, 20, 4279-4289
【文献】Hayashi Y., Hayashi, Y. et al., ACS Med. Chem. Lett., 2014, 5, 1094-1098
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されているように、プリナブリンを水溶性プロドラッグ化することにより、溶解性の問題を解決することができる。一方で、溶解性の向上に加えて、腫瘍指向性の向上が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、抗癌作用を有し、改善した腫瘍指向性を有する複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、下記式1で表される複合体によって上記課題を解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
【0010】
式1中、
PDは、下記式2-1または2-2:
【0011】
【0012】
[式2-1および2-2中、
Ar1は、下記式3-1~3-3で表される基からなる群から選択され(ただし4-イミダゾリル基、4-オキサゾリル基および4-チアゾリル基を除く)、
【0013】
【0014】
(式3-1~3-3中、
Wは、他の環員原子と一緒になって、環員原子数5または6の含窒素複素環を形成し、
R2は、前記含窒素複素環上に存在する、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択される基を表し、
Y1は、酸素原子または硫黄原子であり、
Z1~Z3は、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される)
Ar2は、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリール基および下記式4-1で表される基からなる群から選択され、
【0015】
【0016】
(式4-1中、Y2は、-(C=O)-、-(C-OR5)-、-(C=NR5)-、-(C=N-OR5)-、-O-、-NR6-、-(C=S)-または-S-であり、この際、R5は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアシル基を表し、R6は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基または炭素数1~4のアシル基を表し;R3およびR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択され;lは、0~4の整数であり;mは、0~5の整数である)
R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルキニル基および炭素数6~12のアリール基からなる群から選択され、
nは、0~10の整数を表し、
*は、Lとの結合部位である]
で表されるプリナブリン誘導体ユニットであり;
Lは、PDおよびPU間のリンカーユニットを表し;
PUは、下記式5:
【0017】
【0018】
[式5中、
X1およびX2は、それぞれ独立して、Cysを除く任意のアミノ酸残基または欠損であり、
X3は、Asp、Asn、Glu、Ser、2-アミノブタン酸および2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X4およびX14は、それぞれ独立して、Cys、2-アミノブタン酸およびS-メチルシステインからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、ただしX4およびX14の少なくとも一方は、Cys残基であり、
X5は、Ala残基であり、
X6は、任意の芳香族アミノ酸残基であり、
X7は、His残基であり、
X8は、Lys、Val、Leu、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、N6-アセチルリジン、N5-アセチルオルニチン、2-アミノ-4-アセチルアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ-3,3-ジメチルブタン酸、2-アミノ-4,4-ジメチルペンタン酸、3-シクロヘキシルアラニンおよび下記式5-1で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【0019】
【0020】
(上記式5-1中、K1は、炭素数1~4のアルキル基、-(NH)-、-(C=O)-、-O-およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)
X9は、GlyおよびCysを除く任意のD-アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X10は、Glu、GlnおよびAsnからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X11は、Leu残基であり、
X12は、Val残基であり、
X13は、Trp残基であり、
X15は、Thr、Ser、Valおよび2-アミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X16は、Phe、His、3-シクロヘキシルアラニンおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、
X17は、His、Ala、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損である]
で表され、アミノ酸残基数13~17のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むペプチドユニットであり;
ABは、抗体ユニットを表す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、抗癌作用を有し、改善した腫瘍指向性を有する複合体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例における殺細胞活性評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0024】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0025】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0026】
本明細書において、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基などが挙げられる。
【0027】
本明細書において、アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基などが挙げられる。
【0028】
本明細書において、アルキニル基の例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-メチル-1-プロピニル基、2-メチル-3-プロピニル基、ペンチニル基、1-ヘキシニル基、3-メチル-1-ブチニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基などが挙げられる。
【0029】
本明細書において、シクロアルキル基の例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0030】
本明細書において、シクロアルケニル基の例としては、シクロブテニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基などが挙げられる。
【0031】
本明細書において、アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基などが挙げられる。
【0032】
本明細書において、アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基などが挙げられる。
【0033】
本明細書において、ヘテロアリール基の例としては、2-チエニル基、4-ピリジル基、3-ピリジル基、2-ピリジル基、1-ピリジル基、2-フリル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール-1-イル基、7-アザベンゾトリアゾール-1-イル基などが挙げられる。
【0034】
本明細書において、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基およびヘテロアリーレン基の例としては、それぞれ上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基およびシクロアリール基の例を2価とした基が挙げられる。
【0035】
本明細書において、アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基などが挙げられる。
【0036】
本明細書において、ある基が「置換されている」という場合、当該基を置換しうる置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、スルフィン酸基、グアニジノ基、カルバモイル基、チオール基、チオエーテル基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。これらの置換基もまた、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基などによってさらに置換されていてもよい。ただし、置換された後の基が置換される前の基と同じ定義に含まれるような置換は考えないものとする。
【0037】
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、ペプチドまたはタンパク質分子上で、ペプチドまたはタンパク質を構成しているアミノ酸の一単位に当たる部分を意味する。より具体的には、以下の式のように表される、α-アミノ酸から誘導される2価の基を意味する:
【0038】
【0039】
上記式中、R0はアミノ酸の側鎖であり、例えばGlyであれば水素原子、Alaであればメチル基である。
【0040】
「アミノ酸残基」は、天然もしくは非天然のα-アミノ酸に由来し、光学活性体があり得る場合、L体、D体の何れであってもよいが、L体が好ましい。より具体的には、「アミノ酸残基」は、Arg、Lys、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Pro、Tyr、Trp、Ser、Thr、Gly、Ala、Met、Cys、Phe、Leu、Val、およびIle、ならびにこれらの類縁体が例示できる。上記の類縁体としては、例えば上記20種のアミノ酸残基の側鎖が任意の置換基で置換された誘導体等であってもよく、例えば、上記20種のアミノ酸残基のハロゲン化誘導体(例えば、3-クロロアラニン)、2-アミノ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、イソバリン、2-アミノイソ酪酸、ホモフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ヒドロキシグリシン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、3,4-ジデヒドロプロリン、ホモプロリン、ホモシステイン、ホモメチオニン、アスパラギン酸エステル(例えば、アスパラギン酸-メチルエステル、アスパラギン酸-エチルエステル、アスパラギン酸-プロピルエステル、アスパラギン酸-シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸-ベンジルエステルなど)、グルタミン酸エステル(グルタミン酸-シクロヘキシルエステル、グルタミン酸-エチルエステル、グルタミン酸-プロピルエステル、グルタミン酸-メチルエステル、グルタミン酸-ベンジルエステルなど)、ホルミルトリプトファン、2-シクロペンチルグリシン、2-シクロヘキシルグリシン、2-フェニルグリシン、2-ピリジルアラニン、3-シクロペンチルアラニン、3-シクロヘキシルアラニン、3-ピリジルアラニン、3-ピラゾリルアラニン、3-フラニルアラニン、3-チエニルアラニン、メトキシフェニルアラニン、3-ナフチルアラニン、および4-ピリジルアラニン等のアミノ酸に由来するアミノ酸残基が例示できるが、これらに制限されない。また、IleやThrのように、側鎖に不斉炭素を有するジアステレオマーが存在するものについては、天然型(例えば、(2R*,3R*)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R*,3S*)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)および非天然型(例えば、(2R*,3S*)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R*,3R*)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が特に区別なく使用され得る。すなわち、「Ile」は(2R*,3R*)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸および(2R*,3S*)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸の両方を含む意味として使用され、「Thr」は(2R*,3S*)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸および(2R*,3R*)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸の両方を含む意味として使用される。好ましくは、天然型ジアステレオマー(すなわち、Ileであれば(2R*,3R*)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、Thrであれば(2R*,3S*)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が使用される。
【0041】
本明細書に記載のアミノ酸配列は、特に言及がない限り、慣例に従ってN末端(アミノ末端)側からC末端(カルボキシル末端)側への方向に表記される。
【0042】
各アミノ酸残基は、その側鎖の相違に基づいて、類似の性質を有するアミノ酸残基と置換し得ることが本技術分野において知られている(保存的置換)。例えば、脂肪族疎水性アミノ酸であるVal、Leu、Ile、2-アミノ酪酸(Abu)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、およびイソバリン(Iva)は相互に置換し得る。側鎖が水素原子またはメチル基であるGly、Alaおよび2-アミノイソ酪酸(Aib)は相互に置換し得る。中性極性アミノ酸であるAsnおよびGlnは相互に置換し得る。2,4-ジアミノブタン酸(Dbu)、およびオルニチン(Orn)は相互に置換し得る。Proと、ホモプロリン(homoPro)とは、相互に置換し得る。
【0043】
<複合体>
本発明の一形態は、以下の式1で表される複合体を提供する。
【0044】
【0045】
式1中、
PDは、下記式2-1または2-2:
【0046】
【0047】
[式2-1および2-2中、
Ar1は、下記式3-1~3-3で表される基からなる群から選択され(ただし4-イミダゾリル基、4-オキサゾリル基および4-チアゾリル基を除く)、
【0048】
【0049】
(式3-1~3-3中、
Wは、他の環員原子と一緒になって、環員原子数5または6の含窒素複素環を形成し、
R2は、前記含窒素複素環上に存在する、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択される基を表し、
Y1は、酸素原子または硫黄原子であり、
Z1~Z3は、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される)
Ar2は、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリール基および下記式4-1で表される基からなる群から選択され、
【0050】
【0051】
(式4-1中、Y2は、-(C=O)-、-(C-OR5)-、-(C=NR5)-、-(C=N-OR5)-、-O-、-NR6-、-(C=S)-または-S-であり、この際、R5は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアシル基を表し、R6は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基または炭素数1~4のアシル基を表し;R3およびR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択され;lは、0~4の整数であり;mは、0~5の整数である)
R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルキニル基および炭素数6~12のアリール基からなる群から選択され、
nは、0~10の整数を表し、
*は、Lとの結合部位である]
で表されるプリナブリン誘導体ユニットであり;
Lは、PDおよびPU間のリンカーユニットを表し;
PUは、下記式5:
【0052】
【0053】
[式5中、
X1およびX2は、それぞれ独立して、Cysを除く任意のアミノ酸残基または欠損であり、
X3は、Asp、Asn、Glu、Ser、2-アミノブタン酸および2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X4およびX14は、それぞれ独立して、Cys、2-アミノブタン酸およびS-メチルシステインからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、ただしX4およびX14の少なくとも一方は、Cys残基であり、
X5は、Ala残基であり、
X6は、任意の芳香族アミノ酸残基であり、
X7は、His残基であり、
X8は、Lys、Val、Leu、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、N6-アセチルリジン、N5-アセチルオルニチン、2-アミノ-4-アセチルアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ-3,3-ジメチルブタン酸、2-アミノ-4,4-ジメチルペンタン酸、3-シクロヘキシルアラニンおよび下記式5-1で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【0054】
【0055】
(上記式5-1中、K1は、炭素数1~4のアルキル基、-(NH)-、-(C=O)-、-O-およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)
X9は、GlyおよびCysを除く任意のD-アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X10は、Glu、GlnおよびAsnからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X11は、Leu残基であり、
X12は、Val残基であり、
X13は、Trp残基であり、
X15は、Thr、Ser、Valおよび2-アミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
X16は、Phe、His、3-シクロヘキシルアラニンおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、
X17は、His、Ala、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損である]
で表され、アミノ酸残基数13~17のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むペプチドユニットであり;
ABは、抗体ユニットを表す。
【0056】
本発明に係る複合体(抗体薬物複合体)は、各ユニットが共有結合により連結されていることで、非共有結合型の抗体薬物複合体と比べて、血液中での複合体の解離を抑制でき、よって抗癌作用と腫瘍指向性の向上とを両立させることができる。
【0057】
(プリナブリン誘導体ユニット(PD))
式1において、PDは、下記式2-1または2-2で表されるプリナブリン誘導体ユニットである。プリナブリン誘導体は、薬剤としての役割を有し、上述のとおり、チューブリン重合阻害作用に加え、腫瘍部に誘導される新生血管内皮細胞への傷害作用を示すことができる。
【0058】
【0059】
式2-1および2-2において、Ar1は、下記式3-1~3-3で表される基からなる群から選択される(ただし4-イミダゾリル基、4-オキサゾリル基および4-チアゾリル基を除く)。
【0060】
【0061】
式3-1~3-2において、Wは、他の環員原子と一緒になって、環員原子数5または6の含窒素複素環を形成する。
【0062】
環員原子数5または6の含窒素複素環の例としては、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イソキサゾリン環、イソチアゾール環、トリアゾール環などが挙げられる。環員原子数5または6の含窒素複素環は、好ましくはピリジン環またはイミダゾール環である。
【0063】
式3-1~3-3において、R2は、前記含窒素複素環上に存在する置換基を表し、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択される。R2は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~6のアルキル基から選択され、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基から選択される。R2で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。
【0064】
式3-3において、Y1は、酸素原子または硫黄原子である。
【0065】
式3-3において、Z1~Z3は、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択され、好ましくは炭素原子および窒素原子から選択される。
【0066】
Ar1は、好ましくは下記式3-4~3-22で表される基からなる群から選択される。
【0067】
【0068】
式3-4~3-22中、R2は、上記で定義した通りである。
【0069】
Ar1は、より好ましくは式3-4または式3-18で表される基である。
【0070】
式2-1および2-2において、Ar2は、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリール基および下記式4-1で表される基からなる群から選択される。
【0071】
【0072】
式4-1において、Y2は、-(C=O)-、-(C-OR5)-、-(C=NR5)-、-(C=N-OR5)-、-O-、-NR6-、-(C=S)-または-S-であり、この際、R5は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアシル基を表し、R6は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基または炭素数1~4のアシル基を表す。
【0073】
式4-1において、R3およびR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アシル基、ホルミル基、チオール基、スルホキシド基およびスルホン基からなる群から選択され、好ましくはハロゲン原子および炭素数1~6のアルキル基からなる群から選択され、より好ましくはハロゲン原子である。
【0074】
式4-1において、lは、0~4の整数であり、mは、0~5の整数である。好ましくは、lは、0であり、mは、1である。
【0075】
式2-1および2-2において、Ar2は、好ましくは置換または非置換の炭素数6~20のアリール基および上記式4-1で表される基からなる群から選択される。
【0076】
Ar2が置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である場合、Ar2は、より好ましくはフェニル基である。
【0077】
Ar2が上記式4-1で表される基である場合、Ar2は、より好ましくは下記式4-2で表される基である。
【0078】
【0079】
式2-1および2-2において、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルキニル基および炭素数6~12のアリール基からなる群から選択される。R1は、好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基から選択され、特に好ましくはエチル基である。
【0080】
式2-1において、nは、0~10の整数を表す。nは、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは、1~4の整数であり、さらに好ましくは2または3であり、特に好ましくは3である。
【0081】
式2-1および2-2において、*は、Lとの結合部位である。
【0082】
式2-1および2-2で表される化合物は、好ましくは下記式2-1-1~2-1-3および式2-2-1~2-2-3から選択される化合物である。
【0083】
【0084】
上記式2-1-1~2-1-3および式2-2-1~2-2-3において、R1およびnは、上記で定義した通りである。
【0085】
以下、式2-1および2-2で表される化合物を具体的に例示する。ただし、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0086】
【0087】
上記PD-1~PD-6の中でも、PD-1およびPD-4から選択されることが特に好ましい。
【0088】
(リンカーユニット(L))
式1において、Lは、PDおよびPU間のリンカーユニットを表す。リンカーユニットは、血液中では非特異的な解離をすることなく、標的となる細胞に取り込まれた後で薬剤を外す特性を有している。
【0089】
このようなリンカーユニットの具体的な構造について特に制限はないが、例えば、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基、-NH-、-O-、-S-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-S-、-C(=O)-、ポリオキシアルキレン基、アミノ酸残基、ペプチド鎖、ポリエチレングリコールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
一実施形態では、Lは、下記式6で表される構造を有する。
【0091】
【0092】
式6において、L1は、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基、-NH-、-O-、-S-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-S-、-C(=O)-、ポリオキシアルキレン基、アミノ酸残基、ペプチド鎖、ポリエチレングリコール鎖およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0093】
L1は、好ましくは下記式7で表される構造を有する。
【0094】
【0095】
式7において、L2およびL3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基および置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基からなる群から選択される。
【0096】
式6において、RGは、マレイミド基、ハロゲン化アセチル基、アクリロイル基またはS-Npys(S-3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル)由来の反応性官能基である。
【0097】
式6において、*1は、プリナブリン誘導体ユニットPDとの連結部位であり、*2は、ペプチドユニットPUとの連結部位である。
【0098】
以下、Lの具体的な構造を例示する。ただし、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0099】
【0100】
L-1およびL-2において、*1は、プリナブリン誘導体ユニットPDとの連結部位であり、*2は、ペプチドユニットPUとの連結部位である。
【0101】
(ペプチドユニット(PU))
式1において、PUは、下記式5で表され、アミノ酸残基数13~17のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むペプチドユニットである。
【0102】
【0103】
式5において、X1およびX2は、それぞれ独立して、Cysを除く任意のアミノ酸残基または欠損である。
【0104】
X1は、好ましくはGly、Alaおよび2-アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、より好ましくはGlyである。
【0105】
X2は、好ましくはPro残基またはホモプロリン残基から選択される、または欠損であり、より好ましくはPro残基である。
【0106】
式5において、X3は、Asp、Asn、Glu、Ser、2-アミノブタン酸および2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、好ましくはAsp、Gluおよび2-アミノ-3-スルホプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、より好ましくはAsp残基である。
【0107】
式5において、X4およびX14は、それぞれ独立して、Cys、2-アミノブタン酸およびS-メチルシステインからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、ただしX4およびX14の少なくとも一方は、Cys残基である。X4およびX14は、好ましくはCys残基である。
【0108】
式5において、X5は、Ala残基である。
【0109】
式5において、X6は、任意の芳香族アミノ酸残基である。X6は、好ましくはTyr、Trp、2-アミノ-3-(1-ナフチル)プロピオン酸、2-アミノ-3-(2-ナフチル)プロピオン酸、2-メチルアミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロピオン酸および下記式5-2で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0110】
【0111】
X6は、より好ましくはTyr残基である。
【0112】
式5において、X7は、His残基である。
【0113】
式5において、X8は、Lys、Val、Leu、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、N6-アセチルリジン、N5-アセチルオルニチン、2-アミノ-4-アセチルアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2-アミノ-3,3-ジメチルブタン酸、2-アミノ-4,4-ジメチルペンタン酸、3-シクロヘキシルアラニンおよび下記式5-1で表されるアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基である。
【0114】
【0115】
上記式5-1中、K1は、炭素数1~4のアルキル基、-(NH)-、-(C=O)-、-O-およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0116】
X8は、好ましくはLys残基である。
【0117】
式5において、X9は、GlyおよびCysを除く任意のD-アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、好ましくはGly、D-Ile、D-Pro、D-Arg、D-SerおよびD-Lysからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、より好ましくは、Gly残基である。
【0118】
式5において、X10は、Glu、GlnおよびAsnからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、好ましくはGlu残基である。
【0119】
式5において、X11は、Leu残基である。
【0120】
式5において、X12は、Val残基である。
【0121】
式5において、X13は、Trp残基である。
【0122】
式5において、X15は、Thr、Ser、Valおよび2-アミノブタン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、好ましくはThr残基である。
【0123】
式5において、X16は、Phe、His、3-シクロヘキシルアラニンおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、好ましくはPhe、Hisおよびホモフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、より好ましくはPhe残基である。
【0124】
式5において、X17は、His、Ala、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基または欠損であり、好ましくはHis、Phe、Trp、3-(2-ピリジル)アラニン、3-(3-ピリジル)アラニンおよび3-(4-ピリジル)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、より好ましくはHis残基である。
【0125】
式5で表されるポリペプチドは、好ましくはポリペプチドが配列番号1~7のアミノ酸配列からなる群から選択され、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列である。
【0126】
一実施形態では、式5で表されるポリペプチドにおいて、X4のCys残基およびX14のCys残基間でジスルフィド結合を形成している、またはX4およびX14のCys残基中のスルフィド基が下記式8で表される2価の基により連結されている。
【0127】
【0128】
一実施形態では、ペプチドユニットPUにおいて、前記ポリペプチドのX8が前記抗体と結合するための架橋性基を有し、前記ポリペプチドのN末端またはC末端が前記リンカーユニットLと連結するための連結基を有する。好ましくは前記ポリペプチドのN末端が前記リンカーユニットLと連結するための連結基を有する。
【0129】
前記架橋性基は、特に制限されないが、好ましくはDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、DMA(アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMS(スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DTBP(3,3’-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)およびDSP(ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)からなる群から選択される化合物由来の基であり、より好ましくはDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)またはDSS(ジスクシンイミジルスベレート)由来の基である。
【0130】
ペプチドユニットPUは、架橋性基を介して、抗体Fc部位に結合することができる。具体的には、ヒトIgG FcにおけるEu numberingに従うLys248残基に選択的に結合することができる。そのため、ペプチドユニットPUは、抗体の抗原結合部分への修飾などによる抗体の活性低下を抑制することができる。
【0131】
好ましい実施形態では、血中半減期を長くできるとの観点から、ペプチドユニットPUは、抗体のFc部位の片側のみに結合している。
【0132】
前記連結基は、特に制限されない。連結基としては、例えば置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素数3~20のヘテロアリーレン基、-NH-、-O-、-S-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-S-、-C(=O)-、ポリオキシアルキレン基、アミノ酸残基、ペプチド鎖、ポリエチレングリコールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。連結基は、好ましくはペプチド鎖である。
【0133】
ペプチド鎖としては、本技術分野で一般的に使用されるペプチド鎖を使用することができる。ペプチド鎖は、例えば1~100個、好ましくは2~50個、より好ましくは5~20個のアミノ酸からなるペプチドである。アミノ酸としては、特に制限されないが、Gly、Ser、Asn、Thr、Alaなどが挙げられる、一実施形態では、ペプチド鎖は、(GGGGC)qまたは(CGGGG)qで表される。qは、整数を表し、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
【0134】
(抗体ユニット(AB))
式1において、ABは、抗体ユニットを表す。
【0135】
抗体ユニットに含まれる抗体は、ヒトまたはヒト化免疫グロブリンG(IgG)である。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれでもよく、好ましくはIgG1、IgG2またはIgG4である。
【0136】
抗体ユニットに含まれる抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれでもよく、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0137】
抗体ユニットに含まれる抗体は、本発明の効果をより発揮するとの観点から、好ましくは抗HER2抗体または抗CD239抗体である。
【0138】
抗HER2抗体としては、例えばトラスツズマブ、ペルツズマブなどが挙げられる。
【0139】
本発明に係る複合体は、抗体ユニットを有することにより、腫瘍指向性を向上させることができる。また、本発明に係る複合体は、プリナブリンの水溶性プロドラッグおよび抗体を単独で使用するより優れた抗癌作用(相乗効果)を発揮することができる。
【0140】
<複合体の製造方法>
本発明に係る複合体の製造方法について特に制限はない。当業者であれば、後述する実施例の欄の記載に基づき、本願の出願時における技術常識を参酌して、本発明に係る複合体を製造することが可能である。
【0141】
各ユニットを構成する材料は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0142】
プリナブリン誘導体ユニットPDが由来するプリナブリン誘導体およびリンカーユニットLが由来するリンカー化合物ならびにこれらの架橋体(プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体)は、例えば国際公開第2012/035436号、特表2007-520565号公報、Yamazaki Y., Hayashi, Y. et al., J. Med. Chem., 2012, 55, 1056-1071、Yamazaki Y., Hayashi, Y. et al., Bioorg. Med. Chem., 2012, 20, 4279-4289、Hayashi Y., Hayashi, Y. et al., ACS Med. Chem. Lett., 2014, 5, 1094-1098などの記載を適宜参照して合成することができる。
【0143】
ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体は、例えば国際公開第2017/217347号、国際公開第2016/186206号、国際公開第2013/027796号などの記載を適宜参照して合成することができる。
【0144】
抗体ユニットABが由来する抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0145】
抗HER2抗体は、例えば米国特許第5821337号明細書、米国特許第5725856号明細書などの記載を適宜参照して得ることができる。
【0146】
抗CD239抗体は、例えば特開2017-095417号公報などの記載を適宜参照して得ることができる。
【0147】
本発明に係る複合体の製造方法のいくつかの実施形態を説明する。本発明に係る複合体の製造方法は、以下の実施形態に限定されない。
【0148】
好ましい実施形態では、本発明に係る複合体の製造方法であって、
(I)抗体ユニットABが由来する抗体と前記抗体のFc部位に結合する化合物とを混合して、第1の架橋体を形成することと、
(II)前記第1の架橋体と、ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体とを混合して、第2の架橋体を形成することと、
を有する、製造方法が提供される。当該構成によって、抗体Fc部位の両側が修飾された二修飾体の形成を抑制でき、抗体Fc部位の片側を選択的に修飾することができる。本発明に係る抗体ユニットは、抗体がFcRn(胎児性Fc受容体)と相互作用することで、血中半減期を長くすることができる。しかし、二修飾体の場合、FcRnとの相互作用が阻害されうるため、血中半減期が短くなる恐れがある。
【0149】
本実施形態の製造方法では、抗体ユニットABが由来する抗体と前記抗体のFc部位に結合する化合物とを混合して、第1の架橋体を形成する(工程(I))。本明細書中、抗体のFc部位に結合する化合物を単に「Fc部位結合化合物」とも称する。
【0150】
Fc部位結合化合物としては、プロテインA、プロテインG、上記ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体、WO2017/217347号に記載のIgG結合ペプチドなどが挙げられる。
【0151】
Fc部位結合化合物は、好ましくはプロテインAおよびプロテインGから選択され、より好ましくはプロテインAである。
【0152】
プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁由来のタンパク質であり、IgGのFc領域と特異的に結合することが知られている。
【0153】
プロテインGは、G群溶血性レンサ球菌の細胞壁に存在するタンパク質であり、IgGのFc領域と特異的に結合することが知られている。
【0154】
抗体ユニットABが由来する抗体とFc部位結合化合物とを混合する方法は、Fc部位結合化合物が抗体Fc部位の片側にのみ結合できれば、特に制限されないが、好ましく抗体ユニットABが由来する抗体と担体に固定化されたFc結合化合物とを混合する方法が挙げられる。
【0155】
担体としては、例えばアガロースゲル、アクリルアミドゲル、シリカゲル、ガラスビーズなどを使用できる。
【0156】
Fc部位結合化合物を担体に固定化する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開2005-112827号公報、特開2011-1336号公報などに記載の方法を用いて、Fc部位結合化合物を担体に固定化することができる。
【0157】
具体的には、Fc部位結合化合物が固定化された担体を充填したカラムに抗体ユニットが由来する抗体を添加することで、当該抗体のFc部位の片側とFc部位結合化合物とを結合して、第1の架橋体(Fc部位結合化合物-抗体架橋体)を形成することができる。
【0158】
Fc部位結合化合物が固定化された担体を充填したカラムとしては、例えばHiTrap Protein A HP、HiTrap Protein G HP(GE healthcare製)などが挙げられる。
【0159】
次に、前記第1の架橋体と、ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体とを混合して、第2の架橋体(Fc部位結合化合物-抗体-ポリペプチド誘導体架橋体)を形成する(工程(II))。
【0160】
ペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体は、上記式5で表され、アミノ酸残基数13~17のアミノ酸配列からなるポリペプチドのX8に位置するアミノ酸残基が架橋剤により修飾されていることが好ましい。
【0161】
架橋剤とは、ポリペプチド誘導体と抗体とを共有結合により連結させるための化学物質である。架橋剤としては、特に制限されないが、例えばDSG(ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、DMA(アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMS(スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DTBP(3,3’-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DSP(ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸)などが挙げられる。
【0162】
第1の架橋体とペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体とを混合する方法は、第1の架橋体中の抗体のFc部位とペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体との間で架橋反応が生じる条件で行われれば、特に制限されない。
【0163】
例えば、第1の架橋体とペプチドユニットPUが由来するポリペプチド誘導体とを、適当なバッファー(例えばリン酸緩衝液など)中において、室温(例えば、15~30℃)で混合することにより、第2の架橋体を形成することができる。
【0164】
本実施形態の製造方法は、工程(I)および(II)に加えて、
(III)第2の架橋体から抗体-ポリペプチド誘導体架橋体を脱離させること、
(IV)抗体-ポリペプチド誘導体架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを接触させることと、
をさらに有することができる。
【0165】
または、本実施形態の製造方法は、工程(I)および(II)に加えて、
(V)第2の架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを接触させて、第3の架橋体を形成することと、
(VI)第3の架橋体からプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体架橋体を脱離させることと、
をさらに有することができる。
【0166】
工程(III)において、第2の架橋体から抗体-ポリペプチド誘導体架橋体を得る方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、Fc部位結合化合物としてプロテインAまたはプロテインGを用いる場合、第2の架橋体と適当な溶出バッファー(例えば酢酸水溶液など)とを混合することにより、抗体-ポリペプチド誘導体架橋体を溶出させることができる。
【0167】
得られた抗体-ポリペプチド誘導体架橋体は、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。
【0168】
工程(IV)において、抗体-ポリペプチド誘導体架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを連結させることで、本発明に係る複合体を形成することができる。例えば、抗体-ポリペプチド架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを接触させ、ポリペプチド誘導体が有する連結基とリンカー化合物が有する反応性官能基とを架橋反応させることにより、本発明に係る複合体を形成することができる。
【0169】
抗体-ポリペプチド誘導体架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを接触させる方法は、ポリペプチド誘導体が有する連結基とリンカー化合物が有する反応性官能基との間で架橋反応が生じる条件で行われれば、特に制限されない。例えば、抗体-ポリペプチド誘導体架橋体を含む緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)とプリナブリン誘導体-リンカー化合物複合体を含む水溶液(例えば、アセトニトリル水溶液)とを、室温(例えば、15~30℃)で混合することにより反応を行うことができる。
【0170】
工程(V)において、第2の架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体とを接触させて、第3の架橋体(プリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体-Fc部位結合化合物架橋体)を形成する方法は、上記工程(IV)と同様の方法を適宜修正して使用することができる。
【0171】
工程(VI)において、第3の架橋体からプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体架橋体(本発明に係る複合体)を脱離させる方法は、上記工程(III)と同様の方法を適宜修正して使用することができる。
【0172】
別の実施形態では、本発明に係る複合体の製造方法であって、
(I)抗体ユニットABが由来する抗体と前記抗体のFc部位に結合する化合物とを混合して、第1の架橋体を形成することと、
(VII)第1の架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体架橋体とを混合して、第4の架橋体(プリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体-Fc部位結合化合物架橋体)を形成することと、
(VIII)第4の架橋体からプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体架橋体を脱離させることと、
を有する、製造方法が提供される。
【0173】
工程(VII)において、第1の架橋体とプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体架橋体とを混合する方法は、上記工程(II)と同様の方法を使用することができる。
【0174】
プリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体架橋体は、以下の文献に記載された方法を適宜参照して合成することができる:
Kyohei Muguruma, Takuya Shirasaka, Daichi Akiyama, Kentarou Fukumoto, Akihiro Taguchi, Kentaro Takayama, Atsuhiko Taniguchi, Yoshio Hayashi, An efficient method for the conjugation of hydrophilic and hydrophobic components by solid-phase-assisted disulfide ligation, Angew. Chem. Int. Ed. (2018) 57, 2170-2173。
【0175】
工程(VIII)において、第4の架橋体からプリナブリン誘導体-リンカー化合物-ポリペプチド誘導体-抗体架橋体を脱離させる上記工程(III)と同様の方法を適宜修正して使用することができる。
【0176】
以上より、本発明に係る複合体の製造方法は、以下の実施形態を有することができる。
【0177】
(1)工程(I)-工程(II);
(2)工程(I)-工程(II)-工程(III)-工程(IV);
(3)工程(I)-工程(II)-工程(V)-工程(VI);
(4)工程(I)-工程(VII)-工程(VIII)。
【0178】
<抗癌剤、癌の治療方法>
本発明の一実施形態では、本発明に係る複合体を含む抗癌剤が提供される。抗癌剤は、保管およびその後の投与用に調製される医薬的に許容可能な担体を含むことができる。
【0179】
本発明の一実施形態では、本発明に係る複合体の有効量を対象に投与することを含む、癌の治療方法が提供される。
【0180】
治療用途のための許容可能な担体または希釈剤は、薬学の技術分野で既知であり、例えば、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」,Mack Publishing Co.(A.R.ゲナーロ(A.R.Gennaro)編.1985)に記載されている。防腐剤、安定剤、色素、さらには香味剤を薬学的組成物に供給してもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸のエステルなどを防腐剤として添加してもよい。さらに、酸化防止剤、懸濁化剤などを使用してもよい。
【0181】
本発明に係る抗癌剤は、経口投与用の錠剤、カプセルまたはエリキシル剤、直腸投与用の坐剤、注射可能な投与のための滅菌溶液または懸濁液、経皮投与用のパッチ、および皮下沈積物等として処方および使用されてもよい。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、注射若しくは注入の前に液体中の溶液若しくは懸濁液として適切な固体形態として、またはエマルジョンとして、従来の形態で調製することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインおよびヒト血清アルブミン等である。さらに、所望される場合には、注射可能な抗癌剤は、少量の無毒性の補助物質、例えば湿潤剤およびpH緩衝剤等を含有してもよい。所望される場合には、吸収を増強する調製物(例えば、リポソーム)を利用してもよい。
【0182】
非経口投与用の医薬処方物としては、水溶性の形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液が、適切な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒または媒質としては、ゴマ油のような脂肪油、またはダイズ油、グレープフルーツ油若しくはアーモンド油のような他の有機油、またはオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有してもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の製造を可能にするために、適切な安定剤、または化合物の溶解度を増大させる作用物質を含有してもよい。
【0183】
経口投与用の医薬調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせること、得られた混合物を任意に粉砕すること、および所望される場合には、錠剤またはドラジェコアを得るために適切な助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工処理することにより得てもよい。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖等の充填剤、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物である。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム等のその塩のような崩壊剤を添加してもよい。ドラジェコアには、適切なコーティングが施される。この目的で、濃縮糖溶液を使用してもよく、それは任意に、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。活性化合物の用量の識別のために、または活性化合物の用量の種々の組合せを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加してもよい。この目的で、濃縮糖溶液を使用してもよく、それは任意に、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。活性化合物の用量の識別のために、または活性化合物の用量の種々の組合せを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤またはドラジェコーティングに添加してもよい。このような処方物は、当該技術分野で公知の方法を用いて製造することができる(例えば、米国特許第5,733,888号明細書、同第5,726,181号明細書、同第5,707,641号明細書、同第5,667,809号明細書、同第5,576,012号明細書、同第5,707,615号明細書、同第5,683,676号明細書、同第5,654,286号明細書、同第5,688,529号明細書、同第5,445,829号明細書、同第5,653,987号明細書、同第5,641,515号明細書および同第5,601,845号明細書を参照)。
【0184】
さらに、眼内、鼻内および耳介内の送達を含む用途のための薬学技術分野で公知の様々な抗癌剤を本明細書中に開示する。医薬処方物としては、点眼薬のような水溶性形態での、またはゲランガム(Shedden et al.,2001, Clin Ther,23(3): 440-50)若しくはヒドロゲル(Mayer et al., 1996, Ophthalmologica 210: 101-3)中の、活性化合物の水性眼用溶液、眼用軟膏、眼用懸濁液(例えば、微粒子、液体担体媒質中に懸濁される薬物含有高分子小粒子(Joshi, A., 1994 J Ocul Pharmacol 10: 29-45)、脂質溶解性処方物(Alm et al., 1989 Prog Clin Biol Res 312: 447-58)、およびミクロスフェア(Mordenti, 1999 Toxicol Sci 52: 101-6)、および眼挿入物が挙げられる。このような適切な医薬処方物は、ほとんどの場合、および好ましくは、安定性および快適さのために滅菌され、等張性であり、且つ緩衝化されるように処方される。抗癌剤はまた、正常な繊毛作用の維持を確実にするために、多くの場合、多くの点で鼻分泌を刺激するように製造されるドロップおよびスプレーを包含してもよい。「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Mack Publishing、第18版)に開示されるように、また当業者に公知であるように、適切な処方物は、ほとんどの場合、および好ましくは、等張性であり、pH5.5~6.5を維持するようにわずかに緩衝化され、またほとんどの場合、および好ましくは、抗菌防腐剤および適切な薬物安定剤を含む。耳介内送達用の医薬処方物としては、耳の中での局所塗布のための懸濁液および軟膏が挙げられる。このような耳用処方物のための通常の溶媒としては、グリセリンおよび水が挙げられる。
【0185】
本発明に係る複合体の投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによって適宜選択することができる。前記投与量は、1回量として、通常5μg~100mg/単位体重、好ましくは500μg~50mg/単位体重であり、より好ましくは1~10mg/単位体重である。また、製剤化の工夫により、前記投与量を低減することが可能である。1日あたりの投与回数も特に制限されず、例えば1日あたり1回~3回投与することができる。
【0186】
本発明に係る複合体の対象となる癌の種類は、特に限定されない。例えば、神経系の癌(例えば、脳腫瘍、頚癌);消化器系の癌(例えば、口腔癌、咽頭癌、食道癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、胆道癌、脾臓癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、結腸癌、結腸腺癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌);筋骨格系の癌(例えば、肉腫、骨肉種、骨髄腫);泌尿器系の癌(例えば、膀胱癌、腎癌);生殖器系の癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、前立腺癌);呼吸器系の癌(例えば、肺癌);造血器系の癌(例えば、急性または慢性骨髄性白血病、急性前骨髄性白血病、急性または慢性リンパ性白血病等の白血病、悪性リンパ腫(リンパ肉腫)、血管肉腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、原発性骨髄線維症、血管外膜細胞腫);甲状腺癌、副甲状腺癌、舌癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、肥満細胞腫、皮膚組織球腫、脂肪腫、毛包腫瘍、皮膚乳頭腫、皮脂腺腫、基底細胞癌などが挙げられる。これらのうち、本発明に係る複合体の対象となる癌としては、好ましくは生殖器系の癌または呼吸器系の癌であり、より好ましくは生殖器系の癌であり、さらに好ましくは卵巣癌である。
【実施例】
【0187】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0188】
<ポリペプチド誘導体の合成>
以下の方法により、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むポリペプチド誘導体を合成した。
【0189】
(ペプチド1の合成)
ペプチド1:
Ac-C(StBu)GGGGGPDCAYHKGELVWCTFH
(C(StBu):S-(t-ブチルチオ)システイン)
ペプチドは、Prelude(登録商標)6チャンネルペプチド合成装置を用いて合成した。Fmoc-NH-SAL樹脂(0.45mmol/g,88.9mg,0.04mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)溶液中室温で30分間膨潤させた。膨潤後、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液中、室温で20分間反応させることで樹脂上の保護基Fmoc(9-フルオレニルメトシキカルボニル)基を除去した。DMFで洗浄し、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt,0.2mmol,5eq.)、O-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホルファート(HATU,0.2mmol,5eq.)、N,N-ジイソプロピルアミン(DIPEA,0.4mmol,10eq.)存在下で、Fmoc-His(Trt)-OH(0.2mmol,5eq.)を室温で30分間DMF中にて反応させ、樹脂上にアミノ酸を導入した。次のアミノ酸を縮合させるために、DMFで洗浄し、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液中、室温で20分間反応させることで樹脂上の保護基Fmoc基を除去した。以下、同様にして順次C末端からFmoc-Phe-OH,Fmoc-Thr(tBu)-OH,Fmoc-Cys(Trt)-OH,Fmoc-Trp(Boc)-OH,Fmoc-Val-OH,Fmoc-Leu-OH,Fmoc-Glu(OtBu)-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Lys(Boc)-OH,Fmoc-His(Trt)-OH,Fmoc-Tyr(tBu)-OH,Fmoc-Ala-OH,Fmoc-Cys(Trt)-OH,Fmoc-Asp(OtBu)-OH,Fmoc-Pro-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Cys(StBu)-OHを導入し、ペプチド鎖を伸長した。N末端のFmoc基を20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液中、室温で20分間反応させることで除去した後、無水酢酸(3eq.)、DIEA(5eq.)にてアミノ基をアセチル化した。DMFで5回洗浄、メタノールで5回洗浄、ジエチルエーテルで5回洗浄後、樹脂を乾燥させた。乾燥樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA):トリイソプロピルシラン(TIPS):1,3-ジメトキシベンゼン(5mL:125μL:250μL)溶液にて3時間処理することで、各種側鎖保護基の除去および脱樹脂した。反応液を濾過し、濾液を集め、窒素気流下でTFAを揮発させることにより留去し、ジエチルエーテルで洗浄し、デカンテーションにより溶液を除去した。得られた残渣を減圧下で乾燥し、高速液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより、白色粉末(ペプチド1)を得た(16.8mg,収率16.7%)。
【0190】
(ペプチド2の合成)
ペプチド2:
【0191】
【0192】
ペプチド1(16.8mg)のDMF(6.6mL)溶液に対して、1,3-ジクロロプロパノン(1.3mg)とN-メチルモルフォリン(21.8μL)とを加え、1時間室温で撹拌した。その後、氷冷下で2.5% NaHCO3水溶液とDTT(50.9mg)とを加え、1時間室温で撹拌した。反応液を濃縮した後に高速液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより、白色粉末(ペプチド2)を得た(9.4mg,収率55.2%)。HRMS(ES+) calcd for C105H146N29O30S3 [M+H]+ 2388.9953 found 2388.9937。
【0193】
(ポリペプチド誘導体の合成)
ポリペプチド誘導体:
【0194】
【0195】
ペプチド2(1mg)のpH4.5 酢酸緩衝液(2μL)/DMF(198μL)溶液に対して、チオ酢酸(0.44μL)を添加し、60分間室温で反応させた。その後、ジエチルエーテルで洗浄し、デカンテーションにより溶液を除去した。残渣をDMF(41.8μL)に再度溶解し、ジスクシンイミジルグルタレート(3.4mg)とN-メチルモルホリン(0.46μL)とを添加し、10分間室温に静置した。反応後、ジエチルエーテル:クロロホルム=1:1の溶液でペプチドを3回洗浄し、風乾した。得られた残渣をDMFに再度溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより精製することで、ポリペプチド誘導体を白色粉末として得た(0.3mg,収率28.4%)。
【0196】
<プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体1および2の合成>
(化合物1aの合成)
化合物1a:
(((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル 4-(1-(3-アミノプロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ブタノエート
【0197】
【0198】
(((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル ヘクス-5-イノエート(10mg)のDMF(0.13mL)/tert-ブチルアルコール(0.13mL)溶液に3-アジド-1-プロパンアミン(4.3mg)の水溶液(0.13mL)、硫酸銅五水和物(0.5mg)、アスコルビン酸ナトリウム(1.2mg)を加え、マイクロ波照射下、50℃にて20分間撹拌した。その後、反応溶液を室温に戻し、溶媒を減圧留去した。この溶液を酢酸エチルにより抽出した後、抽出液を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液をろ過し、溶媒を留去した。その残留物を高速液体クロマトグラフィーにより精製し、化合物1aを黄色固体として得た(2.6mg,収率17.7%)。HRMS(ES+) calcd for C29H37N8O4 [M+H]+ 561.2938 found 561.2943。
【0199】
(プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体1の合成)
化合物1:
(((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル 4-(1-(3-(4-((2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ブタノエート
【0200】
【0201】
化合物1a(2.6mg)のジメチルスルホキシド(38.5μL)溶液にスクシンイミジル trans-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(1.5mg)とN-メチルモルフォリン(2μL)を加え、一時間反応させた。その後、高速液体クロマトグラフィーにて精製することで、プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体1を黄色固体として得た(0.8mg,収率26.6%)。HRMS(ES+) calcd for C41H49N9O7 [M+H]+ 780.3833 found 780.3837。
【0202】
(化合物2aの合成)
化合物2a:
(2-(tert-ブチルチオ)エチル)エチルカルバメート
【0203】
【0204】
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウムのDMF溶液に対し、2-メチルプロパン-2-チオールを滴下し、10分間撹拌した。その後、2-ブロモエタン-1-オール(698μL,8mmol)を反応液に滴下し、さらに3時間室温で撹拌した。反応後、1N HCl水溶液により反応液をpH2とし、ジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この溶液をろ過し、溶媒を留去し、2-(tert-ブチルチオ)エタン-1-オールを得た。この化合物をジクロロメタン(40mL)に溶解し、ジ(N-スクシンイミジル)カルボネート(4.1 g, 16 mmol)とトリエチルアミン(1.12 mL, 8 mmol)を加え、五時間室温で撹拌した。その後、エチルアミン塩酸塩(1.3 g, 16 mmol)を添加し、室温でさらに一昼夜撹拌した。反応の終了後、反応液を水で希釈し、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この溶液をろ過し、溶媒を留去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)にて精製することで、目的物を得た(1.34 g, 収率81%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.66 (s, 1H), 4.18 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.22 (quint., J = 6.6 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 1.34 (s, 9H), 1.14 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0205】
(化合物2bの合成)
化合物2b:
2-(tert-ブチルチオ)エチル (クロロメチル)(エチル)カルバメート
【0206】
【0207】
化合物2a(61mg)のジクロロメタン(1.5mL)溶液に対して、パラホルムアルデヒド(12.5mg)とクロロトリメチルシラン(94.9μL)とを加え、室温で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、精製せずに次の反応に用いた。
【0208】
(化合物2cの合成)
化合物2c:
2-(tert-ブチルチオ)エチル ((((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル)(エチル)カルバメート
【0209】
【0210】
プリナブリン(Plinabulin)(50mg)に対して、炭酸セシウムを加え、10分間室温で撹拌した。その後、化合物2bのDMF溶液を加え、マイクロ波の照射下、15分撹拌した。反応液を水で希釈したのち、酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過および濃縮を行った。得られた粗生成物は高速液体クロマトグラフィーにて精製することで、化合物2cの黄色固体を得た(26.4mg,収率32.0%)。
【0211】
(化合物2dの合成)
化合物2d:
S-((2-((((((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-oxo-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル)(エチル)カルバモイル)オキシ)エチル)チオ)-L-システイン
【0212】
【0213】
化合物2c(26.4mg)のジクロロメタン(0.5mL)溶液に対して、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニルクロリド(18.2mg)を加え、室温で4時間撹拌した。濃縮した後、残渣を水:アセトニトリル:=1:1(1mL)に再度溶解し、L-システインを添加し、室温で撹拌した。その後、高速液体クロマトグラフィーにて精製することで、化合物2dを黄色固体として得た(5.5mg,収率18.7%)。HRMS (ESI) m /z calcd for C28H37N6O6S2 [M+H]+ 617.2216, found 617.2215。
【0214】
(プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体2の合成)
化合物2:
S-((2-((((((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル)(エチル)カルバモイル)オキシ)エチル)チオ)-N-(3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)プロパノイル)-L-システイン
【0215】
【0216】
化合物2d(1.2mg)のDMF溶液に対して、3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジル(0.6mg)とN-メチルモルホリン(0.9μL)とを添加し、2時間室温で撹拌した。0.1%TFA/アセトニトリル溶液により希釈した後、高速液体クロマトグラフィーにより精製し、プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体2を黄色固体として得た(0.6mg,収率40%)。HRMS (ESI) m /z calcd for C28H37N6O6S2 [M+H]+ 768.2485, found 768.2484。
【0217】
<Protein Aカラムを用いた抗体Fc部位片側修飾>
Protein A HP Spin Trap(GE healthcare)を用いて、使用ガイドに従いトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン(登録商標))を固相担体上に担持した。すなわち、200×gで1分間遠心することで保存液を除去し、50mMリン酸緩衝液(pH7.4)により、樹脂を三回洗浄した。その後、1mg/mLの濃度に調製したトラスツズマブを200μL添加し、30分間転倒混和することで、トラスツズマブをProtein Aに結合させて、プロテインA-抗体架橋体を形成した。リン酸緩衝液で樹脂を再度洗浄した。次に、上記で得られたポリペプチド誘導体(35μM,200μL)の0.4%DMSO/リン酸緩衝液(pH7.4,50mM)を添加し、一時間転倒混和することで、トラスツズマブ-ポリペプチド誘導体間の架橋反応を行い、プロテインA-抗体-ポリペプチド架橋体を形成した。その後、トリス緩衝生理食塩水(pH7.5)により洗浄した。2.5%酢酸水溶液で樹脂を洗浄することで、抗体-ポリペプチド誘導体架橋体(Fc片側修飾体)をHPLC収率58%で得た(未修飾体:29%,二修飾体:1%)。
【0218】
<複合体の作製>
疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて精製した抗体-ポリペプチド誘導体架橋体(0.5mg/mL)のリン酸緩衝液(pH7.0,25mM,252μL)に対し、プリナブリン誘導体-リンカー化合物架橋体1の50%アセトニトリル水溶液(10mM)を28μL添加した。反応1時間後、過剰のマレイミド体を除去するために、30%アセトニトリル/リン酸緩衝液で希釈および限外濾過の作業を5回繰り返した。その後、同様に限外濾過により、緩衝液交換を行うことで、25mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した複合体を得た。
【0219】
得られた複合体について、MALDI TOF-MS測定による質量分析(装置:AXIMA(登録商標) Assurance、株式会社島津製作所製)を行い、プリナブリン誘導体ユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット-抗体ユニット複合体が形成されたことを確認した。マトリックスとしては、シナピン酸を用いた。
【0220】
<プリナブリンユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット架橋体の作製(比較例)>
(プリナブリン-SPMBの合成)
プリナブリン-SPMB:
(((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル 4-(1-(2-((4-メトキシベンジル)チオ)エチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ブタノエート
【0221】
【0222】
(((Z)-6-((Z)-ベンジリデン)-3-((5-(tert-ブチル)-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン)-5-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピラジン-2-イル)オキシ)メチル hex-5-イノエート(24.5mg,0.05mmol)のDMF(0.50mL)/tert-ブチルアルコール(0.50mL)溶液に(2-アジドエチル)(4-メトキシベンジル)スルファン(22.3mg,0.11mmol)の水溶液(0.50mL)、硫酸銅五水和物(1.2mg)およびアスコルビン酸ナトリウム(2.8mg)を加え、50℃でマイクロ波照射下10分間撹拌した。その後、反応溶液を室温に戻し、溶媒を留去した後、酢酸エチルを用いて抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液をろ過した後、溶媒を留去した。得られた残留物を高速液体クロマトグラフィーを用いて精製し、化合物3を黄色固体としてを得た(28mg,収率76%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 12.38 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), 8.01 (d, J = 7.28 Hz, 2H), 7.36-7.30 (m, 2H), 7.23 (s, 1H), 7.18 (s, 2H), 7.16 (s, 1H), 6.83 (d, J = 8.68 Hz, 2H), 6.52 (s, 1H), 6.05 (s, 2H), 4.30 (t, J = 6.84 Hz, 2H), 3.77 (s, 3H), 3.56 (s, 2H), 2.80 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.73 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.45 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.01 (quint, J = 7.3 Hz, 2H), 1.41 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 172.27, 159.68, 158.84, 152.65, 146.71, 135.28, 132.30, 131.89, 131.61, 129.99, 129.48, 128.77, 128.35, 127.91, 121.92, 121.52, 114.06, 102.13, 81.73, 55.29, 49.69, 35.75, 33.31, 31.79, 31.05, 30.65, 29.71, 24.63, 24.42; HRMS (ESI) m/z calcd for C36H42N7O5S [M+H]+ 684.2968, found 684.2961。
【0223】
(架橋体の作製)
【0224】
【0225】
プリナブリンユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット架橋体は、以前の報告と同様の手法により合成した(Kyohei Muguruma, Takuya Shirasaka, Daichi Akiyama, Kentarou Fukumoto, Akihiro Taguchi, Kentaro Takayama, Atsuhiko Taniguchi, Yoshio Hayashi, An efficient method for the conjugation of hydrophilic and hydrophobic components by solid-phase-assisted disulfide ligation, Angew. Chem. Int. Ed. (2018) 57, 2170-2173.)。Npys-Bn樹脂(10.4mg)に対し、塩化スルフリル(20μL)、1,2-ジクロロエタン(DCE)(1mL)およびピリジン(3.8μL)の混合溶液を加え、氷冷下穏やかに20分程撹拌した後、溶液を除去し、これを2回繰り返して、Npys-Cl樹脂とした。得られた樹脂に対して、アセトニトリル(0.4mL)に溶解したプリナブリン-SPMB(0.82mg)を加え、室温で1時間撹拌することで、プリナブリンを樹脂上に担持した。樹脂をアセトニトリル(2mL)および水(2mL)で洗浄した後、システイン含有抗体結合ペプチド(2.0mg)のH2O/DMF=1/1(0.2mL)溶液を加え、18時間撹拌した。この反応液をろ過後、高速液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより、架橋体を黄色粉末として得た(0.25mg,収率10%)。HRMS (ESI) m/z calcd for C122H161N32O29S4 [M+H]+ 2666.1047, found 2666.0990。
【0226】
<殺細胞活性評価>
HER2を過剰発現しているヒト卵巣腺腫細胞(SKOV-3細胞)を96wellプレートに播種し、50nMの各化合物(トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン(登録商標)),プリナブリン誘導体ユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット-抗体ユニット複合体,プリナブリンユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット架橋体,トラスツズマブエムタンシン(商品名:カドサイラ(登録商標)))を添加した。37℃、5%CO
2条件下でインキュベートし、96時間後にMTT assayを行うことで細胞生存率(cell viability)を評価した(n=4)。評価結果を
図1に示す。
【0227】
図1において、Her、Her-Pli1およびPBNは、それぞれトラスツズマブ、プリナブリン誘導体ユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット-抗体ユニット複合体およびプリナブリンユニット-リンカーユニット-ペプチドユニット架橋体を示す。
【0228】
図1に示すように、本発明に係る複合体は、優れた殺細胞活性を有するため、優れた抗癌作用を発揮できることが分かる。
【配列表】