(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光送信機
(51)【国際特許分類】
H04N 5/00 20110101AFI20230928BHJP
H04N 21/222 20110101ALI20230928BHJP
H04N 21/647 20110101ALI20230928BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20230928BHJP
【FI】
H04N5/00 101
H04N21/222
H04N21/647
H04B10/516
(21)【出願番号】P 2019139038
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】517123173
【氏名又は名称】KAIフォトニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 康博
(72)【発明者】
【氏名】井上 梓
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 佑一
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072745(JP,A)
【文献】特開2006-115014(JP,A)
【文献】特開2018-191092(JP,A)
【文献】特開2006-060495(JP,A)
【文献】特開2005-203536(JP,A)
【文献】特開2001-156719(JP,A)
【文献】特開2009-081568(JP,A)
【文献】特開2002-359654(JP,A)
【文献】特開2017-108452(JP,A)
【文献】特開平07-131386(JP,A)
【文献】特開昭60-186138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/00
H04N 21/00-21/858
H04B 10/516
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星アンテナからの受信信号である衛星信号を取得する第1取得部と、
UHFアンテナからの受信信号であるUHF信号またはCATVシステムからの放送信号であるCATV信号を非衛星信号として取得する第2取得部と、
前記第2取得部にて取得された前記非衛星信号から、指定された周波数帯の信号を抽出する信号抽出部と、
前記第1取得部にて取得された信号のゲインを調整する第1調整部と、
前記信号抽出部で抽出された信号のゲインを調整する第2調整部と、
前記第1調整部および前記第2調整部の出力信号を混合した混合信号によって強度変調された光信号を生成して出力する出力部と、
前記第2取得部に取得させる信号がUHF信号であるかCATV信号であるかによって、運用モードをUHFモードおよびCATVモードのいずれかに切り替えるための切替スイッチと、
を備え、
前記信号抽出部は、前記切替スイッチの設定に応じて、抽出する周波数帯が切り替わるように構成され、
前記第1調整部および前記第2調整部のうち少なくとも一方は、前記切替スイッチの設定に応じて、ゲインが切り替わるように構成された
光送信機。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信機であって、
前記第2取得部は、前記UHF信号または前記CATV信号を、単一の端子を介して取得するように構成された
光送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合された複数のテレビ信号を光信号に変換して送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集合住宅において共同で受信した地上デジタル放送、衛星放送、およびCATV等の各種テレビ信号を光信号に変換し、光ケーブルを用いて各住戸に設けられたTV端子に配信するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上デジタル放送の受信信号(以下、UHF信号)と、CATVからの受信信号(以下、CATV信号)とは、使用する周波数帯が重複する。このため、このようなシステムでは、UHF信号と衛星放送の受信信号(以下、衛星信号)とを混合したテレビ信号を伝送する場合と、CATV信号と衛星信号とを混合したテレビ信号を伝送する場合とがある。以下、UHF信号およびCATV信号を総称して非衛星信号ともいう。
【0005】
衛星信号と非衛星信号とを混合した信号によって強度変調された光信号を生成する場合、両信号の信号レベル差が大きすぎると、光信号に歪みが生じて信号品質が劣化する。このため、両信号を混合する前に、両信号の振幅のバランスを調整する必要がある。
【0006】
また、UHF信号とCATV信号とでは、信号レベルが異なるだけでなく、信号に含まれるチャンネル数も異なる。チャンネル数の多いCATV信号では、使用する帯域が広いため、増幅器等での消費電力が増大する。このため、非衛星信号として、UHF信号およびCATV信号のいずれを使用するかによって、上述した衛星信号と非衛星信号との振幅のバランスを保持したまま、消費電力を一定範囲内に抑えるために全体的な信号レベルを調整する必要がある。
【0007】
つまり、非衛星信号としてUHF信号およびCATV信号のいずれを使用するかによって、衛星信号の振幅および非衛星信号の振幅(ひいては、光信号の変調度)をいずれも調整する必要があるため、調整に手間を要するという課題があった。
【0008】
本開示の一局面は、衛星信号と非衛星信号とを混合し光信号に変換して送信する光送信機において、光信号の変調度の調整を簡略化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、光送信機であって、第1取得部と、第2取得部と、信号抽出部と、第1調整部と、第2調整部と、出力部と、切替スイッチと、を備える。第1取得部は、衛星アンテナからの受信信号である衛星信号を取得する。第2取得部は、UHFアンテナからの受信信号であるUHF信号またはCATVシステムからの放送信号であるCATV信号を非衛星信号として取得する。信号抽出部は、第2取得部にて取得された非衛星信号から、指定された周波数帯の信号を抽出する。第1調整部は、第1取得部にて取得された信号のゲインを調整する。第2調整部は、信号抽出部で抽出された信号のゲインを調整する。出力部は、第1調整部および第2調整部の出力信号を混合した混合信号によって強度変
調された光信号を生成して出力する。切替スイッチは、第2取得部に取得させる信号がUHF信号であるかCATV信号であるかによって、運用モードをUHFモードおよびCATVモードのいずれかに切り替える。信号抽出部は、切替スイッチの設定に応じて、抽出する周波数帯が切り替わるように構成される。第1調整部および前記第2調整部のうち少なくとも一方は、切替スイッチの設定に応じて、ゲインが切り替わるように構成される。
【0010】
このような構成によれば、光信号の変調率を調整する作業では、衛星信号および非衛星信号のうち少なくとも一方のゲインは運用モードに応じて自動設定されるため、自動設定される一方の信号を基準として他方の信号のゲインだけを調整すればよい。従って、光送信機によれば、設置時の調整作業を簡易化できる。
【0011】
本開示の一態様では、出力部は、混合信号から光信号に変換する変換素子の周囲温度の変化に応じて生じる変換素子の発光強度の変化が抑制されるように、変換素子の駆動電流を制御する温度補償回路を備えてもよい。
【0012】
このような構成によれば、出力部における変換素子を制御するための構成が簡略化されるため、光送信機を安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】衛星信号および非衛星信号の推奨変調率を、運用モード毎に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.構成]
本実施形態の光送信機1は、衛星信号、UHF信号、およびCATV信号を入力し、8個の光信号に分配して出力する装置である。なお、光信号の分配数は8分配に限定されるものではなく、2~7分配であってもよいし、9分配以上であってもよい。
【0015】
衛星信号とは、衛星放送を受信するアンテナからの受信信号であり、ここでは、BS放送波の受信信号を中間周波数帯の信号に変換したBS-IF信号と、CS放送波の受信信号を中間周波数帯の信号に変換したCS-IF信号とを混合した信号をいう。衛星信号には、BS-IF信号およびCS-IF信号のいずれか一方だけが含まれてもよい。UHF信号とは、地上波デジタル放送を受信するアンテナからの受信信号をいう。CATV信号は、CATVシステムから取得する放送信号をいう。以下では、UHF信号とCATV信号とを総称して非衛星信号ともいう。
【0016】
図1に示すように、光送信機1は、第1入力端子2と、第2入力端子3と、測定端子4と、光出力端子群5とを備える。第1入力端子2には、衛星信号または衛星信号と非衛星信号とを混合した混合信号のいずれかが入力され、第2入力端子3には、非衛星信号が入力される。
【0017】
光出力端子群5は、光ケーブルに接続されたプラグ型の光コネクタを着脱自在に構成された8個のレセクタプル形の光コネクタC1~C8を備える。光コネクタCi(但し、i=1~8)に接続された光ケーブルは、例えば、集合住宅の各住戸に設けられたTV端子との間の配線に用いられる。
【0018】
光送信機1は、
図2に示すように、入力部10と、第1処理部20と、第2処理部30と、出力部40とを備える。
[1-1.入力部]
入力部10は、第1入力回路11と、ローパスフィルタ(以下、LPF)12と、ハイパスフィルタ(以下、HPF)13と、給電スイッチ14と、第2入力回路15と、入力切替スイッチ(以下、セレクタ)16と、運用対応フィルタ17と、運用切替スイッチ18とを備える。
【0019】
第1入力回路11は、サージ防護部品と、電源分離フィルタとを備える。サージ防護部品は、第1入力端子2に異常電圧が印加された場合に、その異常電圧から後段の電子機器を保護する部品である。電源分離フィルタは、第1入力端子2に接続された信号線を介して、信号線の接続先となる衛星アンテナ等に電力を供給すると共に、第1入力端子2からの入力信号から給電用の直流成分を除去して、信号成分を後段に通過させるフィルタである。第1入力回路11は、給電スイッチ14の設定に従って、第1入力端子2の接続先に対する給電および非給電が切り替わるように構成される。
【0020】
LPF12は、非衛星信号、すなわちUHF信号およびCATV信号で使用される周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。LPF12で抽出された信号はセレクタ16に供給される。
【0021】
HPF13は、衛星信号で使用される周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。HPF13で抽出された信号は、第1処理部20に供給される。
第2入力回路15は、サージ保護部品を備える。サージ保護部品は、第1入力回路11で説明したものと同様である。
【0022】
セレクタ16は、第2入力回路15を介して供給される第2入力端子3からの入力信号と、LPF12で抽出された信号のうち、いずれか一方を運用対応フィルタ17に供給する。具体的には、第1入力端子2に衛星信号が入力され、第2入力端子3に非衛星信号が入力される場合、セレクタ16では、第2入力端子3からの入力信号が選択されるように設定される。また、第1入力端子2に混合信号が入力され、第2入力端子3が不使用とされる場合、セレクタ16では、LPF12で抽出された信号が選択されるように設定される。
【0023】
運用切替スイッチ18は、光送信機1の運用モードに応じて設定される。運用モードには、非衛星信号としてCATVを使用するCATVモードと、非衛星信号としてUHF信号を使用するUHFモードとが存在する。
【0024】
運用対応フィルタ17は、CATV信号で使用される周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタ(以下、BPF)と、UHF信号で使用される周波数帯域の信号を通過させるBPFとを備える。運用対応フィルタ17は、運用切替スイッチ18の設定に従って、使用するBPFが切り替わるように構成される。
【0025】
[1-2.第1処理部]
第1処理部20は、入力減衰器(以下、ATT)21と、増幅器(以下、AMP)22と、チルト回路23と、変調ゲイン制御器(以下、変調GC)24と、HPF25と、ATTスイッチ26と、チルトボリューム27と、変調ボリューム28とを備える。
【0026】
ATT21は、ATTスイッチ26の設定に従ってHPF13で抽出された衛星信号の信号レベルを減衰させる。AMP22は、ATT21の出力を、予め設定された増幅率で
増幅する。チルト回路23は、衛星信号で使用される周波数帯域において平坦な周波数特性が実現されるように、AMP22で増幅された衛星信号の特性を調整する回路である。具体的には、チルト回路23は、周波数が高いほどゲインが増大するように調整し、チルトボリューム27の設定に応じて、周波数に対するゲインの増加率が変化するように構成される。
【0027】
変調GC24は、光出力端子群5から出力される光信号の変調度を調整するために、衛星信号の信号レベルを調整する回路である。変調GC24でのゲインは、変調ボリューム28の設定に応じて調整される。また、変調GC24は、運用切替スイッチ18の設定に応じて、二つの運用モードのそれぞれに応じたゲインに切り替わるように構成される。例えば、変調GC24のゲインは、CATVモードでは、UHFモードと比較して1/2となるように設定される。
【0028】
HPF25は、HPF13と同様に、衛星信号で使用する周波数帯の信号を通過させる。
[1-3.第2処理部]
第2処理部30は、ATT31と、AMP32と、チルト回路33と、変調GC34と、LPF35と、ATTスイッチ36と、チルトボリューム37と、変調ボリューム38とを備える。
【0029】
第2処理部30を構成する各部は、処理対象となる信号が運用対応フィルタ17を介して供給される非衛星信号である点、HPF25の代わりにLPF35が設けられている点以外は、第1処理部20と同様である。
【0030】
LPF35は、LPF12と同様に、非衛星信号で使用する周波数帯の信号を通過させる。
【0031】
第1処理部20から出力される衛星信号と、第2処理部30から出力される非衛星信号は混合されて出力部40に供給されると共に、測定端子4にも供給される。
[1-4.出力部]
出力部40は、分配増幅部50と、8個のE/O変換部60とを備える。
【0032】
分配増幅部50は、
図3に示すように、3段にカスケード接続された複数のAMP511,521~522,531~534を備える。1段目のAMP511は、分配増幅部50への入力信号、すなわち衛星信号と非衛星信号とを混合した電気信号(以下、混合信号)を増幅する。AMP511の出力は2分配され、その2つの分配経路のそれぞれに、2段目のAMP521,522が設けられる。
【0033】
2段目のAMP521,522の出力は、それぞれ2分配され、各2つの分配経路のそれぞれに、3段目のAMP531~534が設けられる。
3段目のAMP531~534の出力には、それぞれ補償GC541~544が設けられる。補償GC541~544は、AMP531~534からの出力信号のゲインを微調整する回路である。
【0034】
補償GC541~544の各出力は、それぞれ2分配されて、8個のE/O変換部60のいずれかに供給される。
なお、1段目のAMP511のゲインは、当該AMP511による挿入損失と、出力が2分配されることによる損失を補償する大きさ、すなわち、1段目のAMP511の入力レベルと、2段目の各AMP521,522の入力レベルとが同じ大きさとなるように設定される。
【0035】
2段目のAMP521,522のゲインは、当該AMP521,522による挿入損失と、出力が2分配されることによる損失を補償する大きさ、すなわち、1段目のAMP511の入力レベルと、3段目の各AMP531~534の入力レベルとが同じ大きさとなるように設定される。
【0036】
3段目のAMP531~534のゲインは、当該AMP531~534による挿入損失と、補償GC541~544による挿入損失と、出力が2分配されることによる損失とを補償する大きさに設定される。すなわち、1段目のAMP511の入力レベルと、8個の各E/O変換部60の入力レベルとが同じ大きさとなるように設定される。
【0037】
補償GC541~544のゲインは、8個のE/O変換部60のそれぞれが有する発光素子の特性のばらつきが抑制されるように調整される。つまり、一つの補償GCに接続される二つのE/O変換部60を変換グループとして、各変換グループが有する発光素子の平均的な特性が、変換グループ間で、略同一となるように調整される。
【0038】
8個のE/O変換部60は、いずれも同様に構成される。E/O変換部60は、分配増幅部50で8分配された混合信号を入力とし、その混合信号の信号レベルに従って強度変調された光信号を生成し、光出力端子群5を構成する光コネクタCiに装着される光ケーブルに光信号を入射する。
【0039】
E/O変換部60は、
図4に示すように、発光素子61と、AMP62と、コンデンサ63と、コイル64と、駆動IC65と、抵抗66と、サーミスタ67とを備える。
発光素子61は、例えば、レーザダイオードであり、コイル64を介して供給される直流成分に応じた強度で発光し、コンデンサ63を介して供給される混合信号の交流成分に応じて強度が変化する光信号を発生させる。発光素子が変換素子に相当する。
【0040】
AMP62は、E/O変換部60に入力される混合信号を増幅する。コンデンサ63は、AMP62の出力に含まれる直流成分を除去し、交流成分のみを発光素子61に供給する。
抵抗66とサーミスタ67は並列接続される。サーミスタ67は、周囲の温度が高いほど抵抗値が低下する。
【0041】
駆動IC65は、抵抗66とサーミスタ67の並列回路の一端に、一定電圧を印加し、この並列回路に流れる電流の大きさに応じて、発光素子61に供給する駆動電流の大きさを変化させる。周囲の温度が高くなって、発光素子61の発光効率が低下すると、サーミスタ67の抵抗値も低下することにより、並列回路に流れる電流、ひいては、発光素子61の駆動電流が大きくなる。このような作用により、温度変化によらず、発光素子61を一定の強度で発光させることができる。
【0042】
なお、光送信機1において、第1入力端子2、第1入力回路11、およびHPF13が第1取得部に相当する。第1入力端子2、第2入力端子3、第1入力回路11、LPF12、第2入力回路15、セレクタ16が第2取得部に相当する。運用対応フィルタ17が信号抽出部、運用切替スイッチ18が切替スイッチに相当する。第1処理部20が第1調整部、第2処理部が第2調整部、出力部40および光出力端子群5が出力部に相当する。駆動IC65、抵抗66、およびサーミスタ67が温度補償回路に相当する。
【0043】
[2.動作]
第1処理部20は、第1入力端子2に衛星信号および混合信号のいずれが入力された場合でも、第1入力端子2からの入力信号からHPF13によって抽出される衛星信号を処
理する。
【0044】
第2処理部30は、第1入力端子2に混合信号が入力され、第2入力端子3が不使用とされた場合は、第1入力端子2からの入力信号からLPF12によって抽出される非衛星信号を処理する。また、第2処理部30は、第2入力端子3に非衛星信号が入力された場合は、第2入力端子3からの入力信号から抽出される非衛星信号を処理する。
【0045】
運用モードがUHFモードである場合、運用対応フィルタ17では、UHF信号を通過させるBPFが選択されると共に、変調GC24,34は高ゲインに設定される。
運用モードがCATVモードである場合、運用対応フィルタ17では、CATV信号を通過させるBPFが選択されると共に、変調GC24、34は低ゲインに設定される。ここでは、高ゲインは低ゲインの2倍となるように設定される。
【0046】
第1処理部20および第2処理部30から出力される信号レベル(ひいては光信号の変調率)が調整された衛星信号および非衛星信号は混合され、混合信号として出力部40および測定端子4に供給される。
【0047】
出力部40に供給された混合信号は、分配増幅部50にて8分配されて、それぞれE/O変換部60にて光信号に変換される。
[3.変調率の調整作業]
光送信機1は、設置時に運用モードを設定して、衛星信号および非衛星信号のそれぞれについて光信号の変調率を調整する必要がある。
図5は、運用モードに応じた衛星信号および非衛星信号の変調率の推奨設定を示す。
【0048】
運用モードによらず、衛星信号の変調率に対する非衛星信号の変調率は、1.4倍となるように設定する必要がある。また、UHFモードと比較してCATVモードでは、非衛星信号に含まれるチャンネル数が多いため、使用する周波数帯域も広がり、振幅を一定に制限したとしてもチャネル数に応じて信号の電力が増大する。しかし、大電力の信号を歪みなく処理可能な部品は高価であるため、運用モードによらず消費電力を一定以下に抑えることが望ましい。つまり、CATVモードでは、UHFモードと比較して、衛星信号および非衛星信号の変調率を、両信号のバランスを保持したまま、同じ割合で低下させる必要がある。
【0049】
光送信機1では、運用切替スイッチ18の設定に従って、運用対応フィルタ17が各運用モードに適したBPFに設定されると共に、CATVモードではUHFモードと比較して光信号の変調率が半分となるように、変調GC24、34のゲインが自動設定される。
【0050】
このため、衛星信号と非衛星信号との変調率の調整を行う場合、いずれの運用モードに設定した場合でも、衛星信号および非衛星信号の概略の変調率については自動的に調整される。このため、衛星信号および非衛星信号のうち一方の信号を基準として、他方の信号の変調率のみを、変調ボリューム28、38のいずれか一方を操作して調整すればよい。
【0051】
また、変調率の調整は、光コネクタC1~C8から出力されるすべての光信号について実施する必要がある。但し、光送信機1では、分配増幅部50に、8個のE/O変換部60における発光素子61の特性のばらつきを補償する補償GC541~544が設けられている。このため、分配増幅部50への入力信号を、測定端子4を介して確認することで、すべての光信号の変調率を一括して確認できる。
【0052】
[4.効果]
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(4a)光送信機1では、運用切替スイッチ18を介して運用モードを設定すると、その設定に応じて、運用対応フィルタ17の帯域および第1処理部20の変調GC24,34のゲインが自動的に切り替わる。しかも、変調GC24,34の設定は、各運用モードでの推奨設定に合わせて高ゲイン設定または低ゲイン設定のいずれかに設定される。このため、光信号の変調率を調整する作業では、衛星信号および非衛星信号のいずれか一方の信号を基準とし、他方の信号についてだけゲインを手動調整すればよい。従って、光送信機1を設置した時の調整作業を簡易化できる。
【0053】
(4b)光送信機1では、分配増幅部50にて混合信号を8分配する際に、2段に分けて分配し、各分配点の上流側にAMP511,521,522,531~534を設け、各AMP511,521,522,531~534のゲインは、自身の挿入損失と、下流側の分配損失とを補償するように設定される。このため、AMPをカスケード接続せず、一度に分配する場合と比較して、各AMPのゲインを抑えることができる。その結果、安価な部品を用いて光送信機1を構成できる。
【0054】
(4c)光送信機1では、分配増幅部50において、3段目のAMP531~534の出力側に、発光素子61の特性のばらつきを吸収する補償GC541~544が設けられ測定端子4から光コネクタC1~C8に到る各経路の特性がいずれも略均一となるようにされている。このため、一つの測定端子4によって、各光コネクタC1~C8から出力されるすべての光信号の変調率を、一括して調整できる。
【0055】
(4d)光送信機1のE/O変換部60では、オートパワーコントロール(すなわち、APC)が省略され、サーミスタ67を用いた温度補償制御を実行する。したがって、E/O変換部60の構成を簡略化でき、光送信機1を安価に構成できる。
【0056】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
【0057】
(5a)上記実施形態では、分配増幅部50を構成するAMP511,521,522,531~534が3段にカスケード接続され、各段において信号を2分配するように構成されるが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、AMPを2段または4段以上のカスケード接続にしてもよい。また、各段での分配数も、分配による信号レベルの低下を補償するゲインが過大にならない範囲で任意に設定すればよい。
【0058】
(5b)上記実施形態では、E/O変換部60は、APCを省略して、温度補償制御のみを行っているが、温度補償制御に加えてAPCを行うように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…光送信機、2…第1入力端子、3…第2入力端子、4…測定端子、5…光出力端子群、10…入力部、11…第1入力回路、12…ローパスフィルタ(LPF)、13,25…ハイパスフィルタ(HPF)、14…給電スイッチ、15…第2入力回路、16…入力切替スイッチ(セレクタ)、17…運用対応フィルタ、18…運用切替スイッチ、20…第1処理部、21,31…減衰器(ATT)、22,32,511,521,522,531~534,62…増幅器(AMP)、23,33…チルト回路、24,34…変調ゲイン制御器(変調GC)、26,36…ATTスイッチ、27,37…チルトボリューム、28,38…変調ボリューム、30…第2処理部、40…出力部、50…分配増幅部、541~544…補償GC、60…E/O変換部、61…発光素子、63…コンデンサ、64…コイル、65…駆動IC、66…抵抗、67…サーミスタ、C1~C8…光コネクタ。