(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】質問信号送信システム及び質問信号送信方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/10 20060101AFI20230928BHJP
G01S 13/76 20060101ALI20230928BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20230928BHJP
G01S 13/91 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01S5/10 Z
G01S13/76
G01S7/02 212
G01S13/91 200
(21)【出願番号】P 2019171749
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 伸和
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】横山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】角張 泰之
(72)【発明者】
【氏名】古賀 禎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 松吾
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0162014(US,A1)
【文献】国際公開第2013/121694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパルスと第2のパルスで構成される質問信号について、前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信した場合に当該質問信号に対する応答信号を送信するように構成された移動体の位置を検出するための質問信号送信システムであって、
互いに離間して配置され、前記第1のパルスを送信する第1の送信機及び前記第2のパルスを送信する第2の送信機と、
互いに離間して配置され、前記応答信号を受信する複数の受信機と、
前記複数の受信機がターゲットの移動体の応答信号をそれぞれ受信した受信時刻に基づき算出される当該ターゲットの移動体の位置に基づいて、当該ターゲットの移動体が前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信可能な双曲線状の応答可能領域を形成するように、前記第1の送信機の第1のパルス及び前記第2の送信機の第2のパルスの送信を時分割制御する送信制御手段と、
を備えたことを特徴とする質問信号送信システム。
【請求項2】
前記送信制御手段は、前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔を、時間間隔=前記所定時間+第1の送信機からターゲットの移動体までの伝送時間-第2の送信機からターゲットの移動体までの伝送時間で算出することを特徴とする
請求項1に記載の質問信号送信システム。
【請求項3】
前記第1の送信機の伝送及び第2の送信機の伝送は光ファイバ無線技術(RoF)を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の質問信号送信システム。
【請求項4】
前記質問信号は、SSR(Secondary Surveillance Radar)質問信号のモードA/Cであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の質問信号送信システム。
【請求項5】
前記SSR質問信号の送信は、ウィスパーシャウト送信方式を使用することを特徴とする請求項4に記載の質問信号送信システム。
【請求項6】
第1のパルスと第2のパルスで構成される質問信号について、前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信した場合に質問信号に対する応答信号を送信するように構成された移動体の位置を検出するための質問信号送信システムの質問信号送信方法であって、
互いに離間して配置された第1の送信機及び第2の送信機において、前記第1の送信機が第1のパルスを送信し、前記第2の送信機が第2のパルスを送信する工程と、
互いに離間して配置された複数の受信機が応答信号を受信する工程と、
前記複数の受信機がターゲットの移動体の応答信号をそれぞれ受信した受信時刻に基づき算出される当該ターゲットの移動体の位置に基づいて、当該ターゲットの移動体が前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信可能な双曲線状の応答可能領域を形成するように、前記第1の送信機の第1のパルス及び前記第2の送信機の第2のパルスの送信を時分割制御する工程と、
を含むことを特徴とする質問信号送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質問信号送信システム及び質問信号送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空管制などを行うための航空機位置測定システムとして、マルチラテレーションシステム(MLAT)が構築されている。マルチラテレーションシステムでは、SSR(Secondary Surveillance Radar、二次監視レーダ)の送信局により、航空機の識別情報を要求するためのモードA(パルス間隔8μs)と航空機の高度情報を要求するためのモードC(パルス間隔21μs)とを含むSSR質問信号が送信される。モードA/Cは相手を特定しない質問である。
図1は、モードA/CのSSR質問信号を説明するための図である。
【0003】
航空機のトランスポンダはSSR質問信号を受信して、受信したパルス間隔がモードA/Cのパルス間隔である場合はSSR質問信号であると認識して応答信号を送信する。具体的には、航空機のトランスポンダは、8μs±n1(但し、n1は許容誤差)のパルス間隔の第1のパルスP1,第2のパルスP3を受信すると、モードAのSSR質問信号であると認識して、モードAの応答信号を送信する。また、航空機のトランスポンダは、21μs±n1(許容誤差)の時間間隔の第1のパルスP1,第2のパルスP3を受信すると、モードCのSSR質問信号であると認識して、モードCの応答信号を出力する。
【0004】
複数の受信局は、航空機のトランスポンダから送信される応答信号をそれぞれ受信する。そして、中央局は、各受信局の設置位置情報及び応答信号の受信時刻差情報に基づいて、双曲線測位方式により、航空機の飛行位置情報(緯度、経度及び幾何学的高度)を算出する。
【0005】
マルチラテレーションシステムでは、空中線として無指向性もしくは広指向性の空中線を使用する。そのため、受信局が同時に複数のモードA/Cの応答信号を受信した場合重畳(ガーブル・フルーツ状態)してしまい、応答信号の解読ができないという問題が発生する。
【0006】
図2は、マルチラテレーションシステムのモードA/CのSSR質問信号の送信と航空機の応答可能領域を説明するための図である。従来は、
図2(A)に示すように、1つの送信機で第1のパルスP1と第2のパルスP3を一定のパルス間隔(Aモードの場合は8μs)でSSR質問信号を無指向性の空中線で送信していた。この場合は、
図2(B)に示すように、送信機を中心として、同心円状の範囲が航空機の応答する範囲Rとなる。すなわち、この応答する範囲R内の航空機のトランスポンダが、8μs±n1(許容誤差)のパルス間隔でのパルスP1,P3を受信する。このため、この範囲R内の航空機が一斉に応答してしまい、ターゲットの航空機の識別が難しくその検出精度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、質問信号に対する移動体の応答可能領域を簡単な構成かつ高精度に制限して、ターゲットの移動体の検出精度を向上させることが可能な質問信号送信システム及び質問信号送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1のパルスと第2のパルスで構成される質問信号について、前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信した場合に質問信号に対する応答信号を送信するように構成された移動体の位置を検出するための質問信号送信システムであって、互いに離間して配置され、前記第1のパルスを送信する第1の送信機及び前記第2のパルスを送信する第2の送信機と、互いに離間して配置され、前記応答信号を受信する複数の受信機と、ターゲットの移動体について、前記複数の受信機が応答信号をそれぞれ受信した受信時刻に基づき、双曲線状の応答可能領域を形成するように、前記第1の送信機の第1のパルス及び前記第2の送信機の第2のパルスの送信を時分割制御する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記送信制御手段は、前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔を、時間間隔=前記所定時間c+第1の送信機からターゲットの移動体までの伝送時間-第2の送信機からターゲットの移動体までの伝送時間で算出してもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記第1の送信機の伝送及び第2の送信機の伝送は光ファイバ無線技術(RoF)を使用することにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記質問信号は、SSR(Secondary Surveillance Radar)質問信号のモードA/Cであることにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記SSR質問信号の送信は、ウィスパーシャウト送信方式を使用することにしてもよい。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1のパルスと第2のパルスで構成される質問信号について、前記第1のパルスと前記第2のパルスを所定時間間隔で受信した場合に質問信号に対する応答信号を送信するように構成された移動体の位置を検出するための質問信号送信システムの質問信号送信方法であって、互いに離間して配置された第1の送信機及び第2の送信機において、前記第1の送信機が第1のパルスを送信し、前記第2の送信機が第2のパルスを送信する工程と、互いに離間して配置された複数の受信機が応答信号を受信する工程と、ターゲットの移動体について、前記複数の受信機が応答信号をそれぞれ受信した受信時刻に基づき、双曲線状の応答可能領域を形成するように、前記第1の送信機の第1のパルス及び前記第2の送信機の第2のパルスの送信を時分割制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、質問信号に対する移動体の応答可能領域を簡単な構成かつ高精度に制限して、ターゲットの移動体の検出精度を向上させることが可能な質問信号送信システム、及び質問信号送信方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、モードA/CのSSR質問信号を説明するための図である。
【
図2】
図2は、マルチラテレーションシステムのモードA/CのSSR質問信号の送信と航空機の応答可能領域を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態の質問信号送信システムを適用したマルチラテレーションシステムの概略の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、航空機の応答可能領域を説明するための図である。
【
図5】
図5は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域内での受信のタイミングを説明するための図である。
【
図6】
図6は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域外での受信のタイミングを説明するための図である。
【
図7】
図7は、ウィスパーシャウト送信方式を説明するための図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係る航空機の応答可能領域を説明するための図である。
【
図9】
図9は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域内での航空機の受信のタイミングを説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施例に係るマルチラテレーションシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明にかかる質問信号送信システム及び質問信号送信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。本発明の構成要素は、本明細書の図面に一般に示してあるが、様々な構成で広く多様に配置して設計してもよいことは容易に理解できる。したがって、本発明の装置の実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の選択した実施形態の一例を示すものである。本明細書は、参照により公知技術が組み込まれる。そのため、当業者は、公知技術を援用することで、特定の細目の1つ以上が無くても、または他の方法、部品、材料でも本発明を実現できることが理解できる。
【0018】
[1.本発明の原理]
上述したように、マルチラテレーションシステムでは、送信機から一括質問(相手を特定しない質問)である、モードA/CのSSR質問信号が無指向性の空中線で送信され、周辺の航空機が一斉に応答してしまうため、ターゲットの航空機の識別が難しくその検出精度が低下してしまう。
【0019】
そこで、本実施の形態では、ターゲットの航空機のトランスポンダに対して、双曲線状の応答可能領域を形成するように、SSR質問信号を構成する第1及び第2のパルスについて、互いに離間して配置された2つの送信機の一方から第1のパルスを、他方から第2のパルスを時分割で送信する。換言すると、ターゲットの航空機のみが第1のパルスと第2のパルスを所定の時間間隔で受信して応答するように、ターゲットの航空機の位置に応じて逆算した送信タイミングで第1のパルスと第2のパルスを時分割で送信する。
【0020】
第1のパルスと第2のパルスを受信した航空機はその位置に応じて,第1のパルスと第2のパルスの時間間隔が変わるため、特定の位置(応答可能領域)にいる航空機以外はSSR質問信号と認識できず応答をしなくなる。このように、本実施の形態では、航空機の応答可能領域を低コストな構成及び高精度に抑制して、ターゲットの航空機の検出精度を向上させる。
【0021】
[2.マルチラテレーションシステムの構成例]
図3は、本実施の形態の質問信号送信システムを適用したマルチラテレーションシステム1の概略の構成例を示す図である。以下の説明では、マルチラテレーションシステムにおけるSSR質問信号のモードA/Cについて説明する。
【0022】
本実施の形態に係るマルチラテレーションシステム1は、ATCトランスポンダ41を搭載した航空機40の位置を検出するためのシステムである。
図3において、マルチラテレーションシステム1は、SSR質問信号を送信する、互いに離間して配置された2つの送信機10a、10bと、航空機40のATCトランスポンダ41がSSR質問信号を受信した場合に送信する応答信号を受信する、互いに離間して配置された3つの受信機20a、20b、20cと、受信機20a、20b、20cで受信した応答信号の受信時刻等に基づいて航空機の位置を検出し、2つの送信機10a、10bのSSR質問信号の送信タイミングを時分割制御する中央処理部30と、を備えている。
【0023】
2つの送信機10a、10b及び3つの受信機20a、20b、20cは位置が既知であり、中央処理部30は、これらの位置情報を記憶しており、ターゲットの航空機40の位置を算出する際に使用する。
【0024】
送信機10aは、中央処理部30の制御に従って、モードA/CのSSR質問信号の第1のパルスP1を送信する。送信機10aは、中央処理部30から入力される送信データ(SSR質問信号の第1のパルスP1を生成するためのデータ)を変調部で所定の変調方式で高周波信号に変調した後、アンプで増幅してSSR質問信号(例えば、1030MHz)の第1のパルスP1として無指向性アンテナから送信する。
【0025】
送信機10bは、中央処理部30の制御に従って、モードA/CのSSR質問信号の第2のパルスP3を送信する。送信機10bは、中央処理部30から入力される送信データ(SSR質問信号の第2のパルスP3を生成するためのデータ)を変調部で所定の変調方式で高周波信号に変調した後、アンプで増幅してSSR質問信号(例えば、1030MHz)の第2のパルスP3として無指向性アンテナから送信する。
【0026】
航空機40は、SSR質問信号のモードA/Cに対応したATCトランスポンダ41、アンテナ、例えば気圧に基づいて高度を測定する気圧高度情報を生成する高度計等を備えている。アンテナは、電波の取り込み及び出力をする。ATCトランスポンダ41は、アンテナから取り込んだ電波(パルス)を受信してデコードする。ATCトランスポンダ41は、パルス間隔が所定時間である場合には、SSR質問信号と認識してデコード結果に応じて応答信号(例えば、1090MHz)を生成し、アンテナを介して送信する。例えば、パルス間隔が8μs±n1(但し、n1は許容誤差)の場合は、モードAのSSR質問信号、パルス間隔が21μs±n1(但し、n1は許容誤差)の場合は、モードCのSSR質問信号と認識する。
【0027】
具体的には、ATCトランスポンダ41は、例えば、モードAのSSR質問信号を受信すると、その応答として航空機40の二次レーダ識別コードSquawkを応答信号として送信し、モードCのSSR質問信号を受信すると、その応答として航空機の気圧高度情報等を応答信号として送信する。
【0028】
受信機20a、20b、20cは、アンテナを介して応答信号を受信すると、応答信号を復調部でデコードして、デコード結果と応答信号の受信時刻を含む応答データを中央処理部30にそれぞれ出力する。
【0029】
中央処理部30は、受信機20a、20b、20cから応答データが入力され、受信機20a、20b、20cで受信した応答信号の受信時刻等に基づいてターゲットの航空機40の位置情報を算出し、2つの送信機10a、10bのSSR質問信号の送信タイミングを時分割制御する送信制御部31を備えている。送信制御部31は、ターゲットの航空機40(ATCトランスポンダ41)に対して、双曲線状の応答可能領域(
図4参照)を形成するように、送信機10aにおけるSSR質問信号を構成する第1のパルスP1の送信及び送信機10bにおけるSSR質問信号を構成する第2のパルスP3の送信を時分割制御する。また、中央処理部30は、ターゲットの航空機40の位置を不図示のディスプレイに表示する。
【0030】
具体的には、送信制御部31は、受信機20a,20b,20cがターゲットの航空機40から応答信号を受信した場合には、送信機10a、10bの配置位置と各受信時刻から算出されるターゲットの航空機40の飛行位置に基づいて、送信機10aからターゲットの航空機40までの伝送時間T1と、送信機10bからターゲットの航空機40までの伝送時間T2を算出する。そして、ターゲットの航空機40が第1のパルスP1と第2のパルスP3を所定時間間隔{モードAの場合=8μsec、モードCの場合=21μsec)で受信するように、第1のパルスP1と第2のパルスP3の時間間隔ti(モードAの場合の時間間隔ti=8μsec+(送信機10aからターゲットの航空機までの伝送時間T1)-(送信機2からターゲットの航空機までの伝送時間T2)、モードBの場合の時間間隔ti=21μsec+(送信機10aからターゲットの航空機までの伝送時間T1)-(送信機10bからターゲットの航空機までの伝送時間T2)}を算出して、算出した時間間隔で送信機10aに第1のパルスP1及び送信機10bにパルスP3を送信させるため送信データ(質問データ)をそれぞれ送信する。
【0031】
[3.SSR質問信号の時分割制御及び航空機の応答可能領域]
つぎに、
図4~
図6を参照して、SSR質問信号の時分割制御及び航空機の応答可能領域を詳細に説明する。
図4は、航空機の応答可能領域を説明するための図である。
図5は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域内での受信のタイミングを説明するための図である。
図6は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域外での受信のタイミングを説明するための図である。
【0032】
上述したように、本実施の形態では、
図4に示すように、送信機10aに加えて、送信機10aから所定距離離間させて送信機10bを配置している。送信機10a,10bは、離間して配置すればよく離間距離の上限はない。
【0033】
ターゲットの航空機40のATCトランスポンダ41に対して、
図4に示すような双曲線状の応答可能領域Rを形成させるために、
図5(A)に示すように、送信機10aがSSR質問信号の第1のパルスP1を送信し、また、
図5(B)に示すように、送信機10bからSSR質問信号の第2のパルスP3を送信する。
【0034】
第1のパルスP1と第2のパルスP3の時間間隔tiは、時間間隔ti=8μsec+(送信機10aからターゲットの航空機までの伝送時間T1)-(送信機10bからターゲットの航空機までの伝送時間T2)で算出することができる。伝送時間T1、T2は、送信機10a、10bの配置位置、ターゲットの航空機40の飛行位置から算出することができる。送信機10aにおける第1のパルスP1の送信時刻をtp1、送信機10bにおける第2のP3パルスの送信時刻をtp3とした場合、第2のP3パルスの送信時刻tp3=tp1+8us+(送信機1からターゲットまでの伝送時間T1)-(送信機2からターゲットまでの伝送時間T2)となる。
【0035】
例えば、
図4において、航空機40が応答可能領域R内のA点にいる場合は、
図5(C)に示すように、第1のパルスP1と第2のパルスP3を8μs±n1(許容誤差)の時間間隔で受信するため、モードAのSSR質問信号と認識して、応答信号を送信する。
【0036】
他方、
図4において、航空機40が応答可能領域R外のB点にいる場合は、
図6(C)に示すように、第1のパルスP1と第2のパルスP3を8μs±n1(許容誤差)の時間間隔で受信できないため、モードAのSSR質問信号と認識できず(同図に示す例では、8μs±n1より短くなる)応答信号を送信しない。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、互いに離間して配置され、SSR質問信号の第1のパルスP1を送信する第1の送信機10a及びSSR質問信号の第2のパルスP3を送信する第2の送信機10bと、互いに離間して配置され、SSR質問信号を受信する複数の受信機20a、20b、20cと、第1の送信機10a及び第2の送信機10bの第1のパルスP1及び第2のパルスP3の送信を制御するものであり、複数の受信機20a,20b,20cがターゲットの航空機40からの応答信号をそれぞれ受信した受信時刻に基づき、双曲線状の応答可能領域を形成するように、第1のパルスP1と第2のパルスP3の時間間隔を算出する中央処理部30(送信制御部31)と、を備えているので、応答可能領域外に存在する航空機からの応答信号の送信を制限して、ターゲットの航空機の検出精度を向上させることが可能となる。
【0038】
[4.変形例1]
図7~
図9を参照して、変形例1に係るマルチラテレーションシステム1を説明する。SSR質問信号の送信をウィスパーシャウト送信方式とすることで、応答可能領域を更に制限することができる。変形例1に係るマルチラテレーションシステム1では、ウィスパーシャウト送信方式を使用した場合について説明する。
【0039】
図7は、ウィスパーシャウト送信方式を説明するための図である。ウィスパーシャウト送信方式は、
図7(A)に示すように、第1のパルスP1,第2のパルスP3に加えて、抑圧パルスS1を送信する。抑圧パルスS1と第1のパルスP1,第2のパルスP3との送信電力レベル比を制御することで、
図7(B)に示すように、リング状の応答可能領域Rを設定することができる。
【0040】
ウィスパーシャウト送信方式では、(1)第1のパルスP1と第2のパルスP3が、最小トリガレベル(MTL)以上の場合は航空機のトランスポンダは応答し、(2)抑圧パルスS1と第1のパルスP1が最小トリガレベル(MTL)以上の場合は航空機のトランスポンダは応答しない。リング状の応答可能領域Rを形成するためには、例えば、抑圧パルスS1と第1パルスP1,第2パルスP3の出力(送信電力レベル)を徐々に大きくして、(1)近傍では、P1、P3をMTL以上、S1をMTL以上とすることで、航空機のトランスポンダが応答しないようにし、中間(応答可能領域R)では、P1、P3をMTL以上、S1をMTL以下とすることで、航空機のトランスポンダが応答するようにし、遠方では、P1、P3をMTL以下、抑圧パルスS1をMTL以下とすることで、航空機のトランスポンダが応答しないようにすることができる。
【0041】
変形例1では、上述の時分割制御とウィスパーシャウト方式を組み合わせることで、
応答可能領域を更に制限する。
図8は、変形例1に係る航空機の応答可能領域を説明するための図である。
図9は、SSR質問信号(モードAの場合)の送信及び応答可能領域内での航空機の受信のタイミングを説明するための図である。
【0042】
中央処理部30の送信制御部31は、時分割制御とウィスパーシャウト方式を組み合わせて、送信機10aの抑圧パルスS1及び第1のパルスP1の送信と、第2の送信機10bの第2のパルスP3の送信を制御する。具体的には、
図8に示すような応答可能領域Rとなるように抑圧パルスS1と第1パルスP1,第2パルスP3の電力レベルと、第1パルスP1と第2パルスP3の時間間隔を制御する。航空機40のATCトランスポンダ41は、ウィスパーシャウト送信方式に対応したものであるとする。
【0043】
図9(A)に示すように、送信機10aが抑圧パルスS1と第1のパルスP1を送信し、
図9(B)に示すように、第2の送信機10bが第2のパルスP3を送信する。例えば、
図8において、航空機40が応答可能領域R内のA点にいる場合は、
図9(C)に示すように、第1のパルスP1と第2のパルスP3を8μs±n1(許容誤差)の時間間隔で受信するため、モードAのSSR質問信号と認識して、応答信号を送信する。第1のパルスP1と第2のパルスP3の時間間隔は上記実施の形態と同様である。
【0044】
変形例1によれば、ウィスパーシャウト方式を組み合わせることで、航空機の応答可能領域をより制限することが可能となる。
【0045】
[5.具体的な実施例]
図10を参照して、実施例に係るマルチラテレーションシステムを説明する。実施例に係るマルチラテレーションシステム1では、送信機10a、10bの送信タイミングを時分割制御(連携制御)するために光ファイバ無線(RoF:Radio over Fiber)技術を用いた場合を説明する。
図10は、実施例に係るマルチラテレーションシステム1の構成例を示す図である。
図10において、
図3と同等の機能を有する部位には同一符号を付し、共通する部分の説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0046】
図10において、送信機10aは、中央処理部30の送信制御部31から入力される送信データを所定の変調方式で高周波信号に変調した後、EO変換器によるEO変換により電気信号から光アナログ信号に変換する変調部11aと、変調部11aとアンプ部13aを接続する光ファイバ12aと、光ファイバ12aから伝送されてくる光アナログ信号をOE変換器によるOE変換により光アナログ信号から電気信号に変換した後に増幅するアンプ部13aとを備えている。
【0047】
同様に、送信機10bは、中央処理部30の送信制御部31から入力される送信データを高周波信号に変調した後、EO変換器によるEO変換により電気信号から光アナログ信号に変換する変調部11bと、変調部11bとアンプ部13bを接続する光ファイバ12bと、光ファイバ12bから伝送されてくる光アナログ信号をOE変換器によるOE変換により光アナログ信号から電気信号に変換した後に増幅するアンプ部13bとを備えている。
【0048】
以上説明したように、実施例によれば、送信機10a、10bの伝送に光ファイバ無線技術(RoF)を使用することとしたので、高速伝送が可能となり送信機10a、10bの送信タイミングを高精度に制御することが可能となる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、本発明の質問信号送信システムをマルチラテレーションシステムに適用した場合について説明したが、移動体が質問信号に対して応答信号を送信する他のシステムにても適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 マルチラテレーションシステム
10a,10b 送信機
11a,11b 変調部
12a,12b 光ファイバ
13a,13b アンプ部
20a,20b 受信機
30 中央処理部
31 送信制御部