(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】保護キャップ
(51)【国際特許分類】
F16B 37/14 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F16B37/14 G
(21)【出願番号】P 2019199607
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000228981
【氏名又は名称】日本スタッドウェルディング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 仁志
(72)【発明者】
【氏名】澤井 守人
(72)【発明者】
【氏名】村本 俊教
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-089212(JP,U)
【文献】特開昭51-111555(JP,A)
【文献】中国実用新案第204805280(CN,U)
【文献】特開平08-068415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/14
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを初めとする所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成されるものであって縦方向に所定の剛性を有するとともに筒状の形態からなるボデー部と、当該ボデー部の上方部に在って、筒状の形態からなる上記ボデー部の一端を塞ぐように一体的に形成されるものであって、所定の弾発力を有するとともに、中央部に所定の凹み部を有する蓋状の形態からなる天蓋部と、上記ボデー部の下端部のところであって、その外側のところに鍔状に形成されるものであって、その下面が所定の平面幅を有するとともに、その先端部のところに下方に向かって突起状形態からなる円環状のガイドを有するフランジ部と、上記ボデー部の下端部であって上記フランジ部の設けられる方向とは反対の側である内側のところに、当該内側へ向かってフック状の断面形態を有するように形成されるとともに、これらが上記フランジ部の円周方向において4分割または5分割された形態からなる係合部と、からな
り、
前記凹み部は、前記ボデー部が設けられる下方に向かって凹んでいること、
を特徴とする保護キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の保護キャップにおいて、上記係合部を、上記ボデー部の縦方向において所定の弾性変形が可能なように一体的に形成させるようにしたことを特徴とする保護キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス、例えば自動車用エンジンルーム内におけるバッテリハーネス(アース用ハーネス)等を固定するための金具である固定ボルトの頭部を保護するキャップ(保護キャップ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、これら固定金具であるボルトの頭部あるいはナット等の取付部における防錆用の保護キャップとしては、例えば特開2013-19512号公報(特許文献1)または実用新案登録第3003307号公報(特許文献2)記載のもの等が挙げられる。ところで、これらのもの、例えば特許文献1記載のものは、円筒状で、かつ、袋状の形態からなるものを固定ボルト等の頭部を覆うように被せ、そして、その後に周りを弾発力のある環状体で保持することによって保護キャップのボルト頭部周りへの固定を図るようにしているものである。また、特許文献2記載のものは、円形断面の筒状体を基礎に一方の端部を塞いで袋状に成形したものからなるものであり、このような袋状体からなる部材を締結ナット及びボルトの先端部のところに被せることによって、ボルト・ナットからなる締結部への水滴等の進入を阻止して保護を図るようにしているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-19512号公報
【文献】実用新案登録第3003307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものは、いずれも円筒状の胴体(ボデー部)を基礎に、その一方の端部である天板側が塞がれた状態の袋状の形態からなるものである。そして、このような円筒状のボデー部を有する袋状の物体を上記ボルト頭部等を覆うように被せるようにしているものである。このように、上記ボルト頭部上に被せることによって、ボルト頭部を初めとした締結部の保護を図るようにしているものである。しかしながら、これらのものは、上記装着部における保護キャップの保持が、ボルト頭部側面との間の摩擦力または別途設けられた円環状の弾発リングによる締結力に依っているものである。これらのことから、単なる摩擦力だけでは保持力が不十分であるし、また、別部材による締付力に頼るとすると装着作業の作業効率が悪くなり、好ましくない。このような問題点を解決することとした、形状・構造が単純で、かつ、装着作業性に優れたボルト頭部等の防錆用保護キャップを提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、保護キャップに関して、ポリプロピレンを初めとする所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成されるものであって縦方向に所定の剛性を有するとともに筒状の形態からなるボデー部と、当該ボデー部の上方部に在って、筒状の形態からなる上記ボデー部の一端を塞ぐように一体的に形成されるものであって、所定の弾発力を有するとともに、中央部に所定の凹み部を有する蓋状の形態からなる天蓋部と、上記ボデー部の下端部のところであって、その外側のところに鍔状に形成されるものであって、その下面が所定の平面幅を有するとともに、その先端部のところに下方に向かって突起状形態からなる円環状のガイドを有するフランジ部と、上記ボデー部の下端部であって上記フランジ部の設けられる方向とは反対の側である内側のところに、当該内側へ向かってフック状の断面形態を有するように形成されるとともに、これらが上記フランジ部の円周方向において4分割または5分割された形態からなる係合部と、からなり、前記凹み部は、前記ボデー部が設けられる下方に向かって凹んでいるようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明においては、請求項1記載の保護キャップに関して、上記係合部を上記ボデー部の縦方向において所定の弾性変形が可能なように一体的に形成させるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明である第一の発明のものにおいては、本保護キャップのアース用ハーネスの車体取付部等に形成されるボルト頭部への装着作業に当たって、作業者は、まず、本保護キャップの筒状体からなるボデー部のところを上記ボルト頭部等へ被せるとともに、上記ボデー部の上方部に形成される天蓋部のところを作業者の指先等で押し込むことによって、容易に、本保護キャップの装着作業を行うことができることとなる。特に、本作業の場合、筒状のボデー部の下端部に設けられたフック状の係合部のところがその弾発力によってボルト頭部の下端部に形成された内側へのダレ部のところに食い込むように係合することとなり、本保護キャップの押し込み操作に節度感が生じ、作業性の向上が図られることとなる。
【0008】
また、これと同時に、上記筒状ボデー部の下端部に設けられたフランジ部のところが、ボルト頭部の下端部のところに形成された鍔状部のところに面接触をすることによって固定され、これによって本保護キャップの上記ボルト頭部等への装着作業がより節度感をもって進められることとなる。なお、このような保護キャップのボルト頭部等への装着作業に当たっては、本保護キャップの上記フランジ部の最先端のところには円環状のガイドが設けられるようになっていることより、このガイドのところが上記ボルト頭部の下端面部に形成された鍔状部の外周部の側面に沿って移動するとともに、最終的にはこの外周部のところを包み込むように保持することとなり、本保護キャップ全体のボルト頭部への装着作業がより円滑に進められることとなる。そして、更には、上記天蓋部の中央部には所定の凹み部が設けられるようになっていることより、本保護キャップを合成樹脂材のインジェクション成形手段にて形成させる場合におけるインジェクションゲート部に形成される突起状のゲート残りを上記天蓋部の面より上方に突出させることのないようにすることができる。これによって装着後における本保護キャップ周りの諸作業時において作業者の手指等が上記突起状ゲート残りのところに引っ掛る等の不都合を無くすることができるようになり、作業性の向上、更には安全性の向上等を図ることができるようになる。
【0009】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明のものにおいては、請求項1記載の保護キャップに関して、上記筒状ボデー部の下端部周辺部であって、その内側に向かって突出するように形成される係合部は、所定の弾発力を有するようになっていることより、本保護キャップを所定の合成樹脂材のインジェクション成形手段にて形成させようとした場合、インジェクション成形加工後における型抜きの際に、上記係合部のところを弾性変形させて手際良く型抜き作業を行うことができるようになり、型抜き作業等の効率化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明にかかる保護キャップがボルト頭部等に装着された状態を示す断面図である。
【
図3】本発明にかかる保護キャップのボルト頭部等への装着手順を示す図である。
【
図4】本発明にかかる保護キャップのインジェクション成形手段による成形工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について、
図1ないし
図4を基に説明する。本発明の実施の形態にかかるものは、例えば
図1または
図2に示す如く、縦方向に所定の剛性を有するとともに筒状の形態からなるボデー部1と、当該ボデー部1の一方の端部側に在って、当該ボデー部の一端部を塞ぐように一体的に形成されるものであって、所定の弾発力を有するとともに、中央部のところに所定の凹み部22を有する蓋状の形態からなる天蓋部2と、上記ボデー部1の下端部のところであって、その外側のところに鍔状に形成されるものであって、その下面が所定の平面幅を有するフランジ部3と、からなり、これらがポリプロピレン(PP)を初めとする所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に形成されるようになっていることを基本とするものである。このような基本構成からなるものにおいて、更に、上記フランジ部3の、その先端部のところには、下方に向かって突起状に形成される円環状のガイド5が設けられるようになっている。
【0012】
そして、更に、このようなボデー部1の下端部であって上記フランジ部3の設けられる側とは反対の側である内側のところに、当該内側へ向かってフック状の断面形態を有するように形成される係合部6が設けられるようになっている(
図2参照)。そして、この係合部6のところには、その円周方向において本係合部6が4分割または5分割されるように形成された切欠部66が設けられるようになっている(
図1参照)。また、このような係合部6は、上記切欠部66等の作用により、上記ボデー部1の縦方向に弾性変形が可能なように上記ボデー部1と一体的に形成されるようになっているものである。
【0013】
このような構成を採ることにより、本実施の形態に係る保護キャップの、アース用ハーネスの車体取付部等に形成されるボルト9の頭部(ボルト頭部)91への装着作業に当たっては、例えば
図3に示す如く、作業者は、まず、本保護キャップの筒状体からなるボデー部1のところを上記ボルト頭部91等へ被せるとともに、上記ボデー部1の上方部に形成される天蓋部2のところを作業者の指先等で押し込むように操作する。これによって、保護キャップは全体が下方へと押し下げられて、本保護キャップの装着作業が行なわれることとなる。特に、本作業の場合、筒状のボデー部1の下端部に設けられたフック状の係合部6のところがその弾発力によって、
図3の(イ)図示の如く、外側へ拡げられる。そして更に、このような押し下げ作業が進められると、係合部6がボルト頭部91の側面に沿って滑り落ちるとともに、最終的には、本係合部6の先端部のところが
図3の(ロ)に示す如く、ボルト頭部91の下端面部に形成された内側へのダレ部911のところに食い込むように係合することとなる。このとき、装着作業者には「パチンと言う音」あるいは指先への感触等によって、保護キャップが正常に装着された、あるいは嵌まり込んだ、と言う感覚が得られる。このようにして、本保護キャップの押し込み操作に節度感が生じ、装着作業における作業性の向上が図られることとなる。
【0014】
また、これと同時に、上記筒状ボデー部1の下端部に設けられたフランジ部3のところが、ボルト頭部91の下端部のところに形成された鍔状部95のところに面接触をすることによって固定され、これによって本保護キャップの上記ボルト頭部91等への装着作業がより節度感をもって進められることとなる(
図3(ロ)参照)。なお、このような保護キャップのボルト頭部91等への装着作業に当たっては、本保護キャップの上記フランジ部3の最先端のところには円環状のガイド5が設けられるようになっていることより、このガイド5のところが上記ボルト頭部91の下面に形成された鍔状部95の外周部955の側面に沿って移動するとともに、最終的にはこの外周部955のところを包み込むように保持することとなり、本保護キャップ全体のボルト頭部91への装着作業がより円滑に進められることとなる。そして、更には、上記天蓋部2の中央部のところに所定の凹み部22が設けられるようになっていることより、本保護キャップを、例えば
図4に示すようなインジェクション成形手段にて形成させることとした場合、このインジェクション成形工程におけるポリプロピレン等の合成樹脂材の注入口のところに形成されるゲート部72のところには突起状のゲート残り29が形成されることとなる。ところで、本実施の形態のものにおいては、このゲート残り29の高さを、上記天蓋部2の上面よりも上方に突出させないようにしている。その結果、本保護キャップが所定の場所に装着された後において、本保護キャップ装着部周りの諸作業、例えばエンジンルーム内の点検作業等において、作業者の手指等が上記突起状のゲート残り29のところに接触する(引っ掛る)等の不具合の生ずるのを避けることができるようになり、作業性の向上、更には、安全性の向上等を図ることができることとなる。
【0015】
次に、このような構成からなる本保護キャップのインジェクション成形加工時における型抜き作業、特に内型の型抜き作業の様子(工程)を、
図4を基に説明する。まず、
図4の(イ)に示す如く、雄型からなる下型8を基礎に、その上方側に雌型からなる上型7を設置する。このように型セットされた状態において、上型7に形成されたゲート72のところから所定の合成樹脂材、本実施の形態においてはポリプロピレン(PP)を注入する。このような状態において所定の時間が経過して、注入された合成樹脂が固化された後に型開きをする。
【0016】
まず、
図4の(ロ)に示す如く、上型7を上方に引き上げる。これによって、下型8上に貼り付いた状態の保護キャップ成形体と上型7とが分離される。そして、この時、上記合成樹脂材注入時に形成されたゲート72のところに残る一部の合成樹脂材が、
図4の(ロ)に示す如く、保護キャップ成形体の上面側、すなわち天蓋部2の中央部に直立した状態で残存することとなる。このようにして、保護キャップ成形体の上面側である天蓋部2の中央部のところには、突起状の形態からなるゲート残り29が一体的に形成されることとなる。ところで、このゲート残り29は、
図2、
図3に示すように、天蓋部2の中央部に形成される凹み部22内であって、その高さも、天蓋部2の上面と同じ高さか、または、それ以下となるように上型7と下型8との関係が設定されている。
【0017】
このような状態において、次に、
図4の(ハ)に示す如く、保護キャップ成形体は、下型8から取り外される。このようにして、本保護キャップについてのインジェクション成形加工が完了することとなる。なお、このようなインジェクション成形加工工程において、
図4の(ハ)に示す下型8からのプラスチック成形体の取り外し作業においては、
図4の(ロ)、(ハ)に示す如く、本保護キャップの係合部6を形成する部分が下型8の下方部に設けられた凹陥部86のところに食い込んだ状態で成形されることとなる。ところで、この係合部6は、
図1に示す如く、その円周上において数個所に切欠部66が設けられるようになっていること等、撓みやすい、すなわち弾性変形がしやすい形態となっている。これらのことより、本保護キャップ成形体の上記下型8からの取り外し(剥離)作業、特に、下型8の下方部に形成された凹陥部86からの係合部6の引きはがし作業は、上記係合部6のところを弾性変形させることによって比較的容易に行なわれることとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 ボデー部
2 天蓋部
22 凹み部
29 ゲート残り
3 フランジ部
5 ガイド
6 係合部
66 切欠部
7 上型
72 ゲート
8 下型
86 凹陥部
9 ボルト
91 ボルト頭部
911 ダレ部
95 鍔状部
955 外周部