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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】表面弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H03H9/25 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022571802
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021095543
(87)【国際公開番号】W WO2021238873
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】202010446767.2
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454932
【氏名又は名称】シャーメン サンアン インテグレーテッド サーキット カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520273108
【氏名又は名称】福建晶安光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN JING’ AN OPTOELECTRONICS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Photoelectric Industrial Park, Hengshan Village, Hutou Town, Anxi County, Quanzhou, Fujian 362411, China
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ミンフイ
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161899(JP,A)
【文献】特開2015-115870(JP,A)
【文献】特開2005-223580(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016314(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/027538(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/154950(WO,A1)
【文献】特開2018-093487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
3/007-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有し、前記上面から突出し、互いに離間する複数の突起部を有する基板と、
前記突起部の間に形成された凹部を埋めるように前記基板上に配置された中間層と、
前記基板と反対側の前記中間層上に配置された圧電層と、
前記中間層と反対側の前記圧電層上に配置された電極層と、を備え、
前記基板は、長手方向と、前記長手方向に垂直な横方向とを規定し、前記突起部は、前記長手方向と前記横方向とに配置され、
複数の前記突起部は、互いに等距離であり、 前記突起部の少なくとも1つは、これを中心として、互いに等角度に配置された6つの隣接する前記突起部によって囲まれるように配置され、
前記中間層は、前記圧電層と接する最上層と、前記基板と接する最下層と、前記最上層と前記最下層との間に介在するミドル層とを含み、
前記突起部は、前記最下層および前記ミドル層を通って延在し、前記最上層によって囲まれている弾性表面波デバイス。
【請求項2】
上面を有し、前記上面から突出し、互いに離間する複数の突起部を有する基板と、
前記突起部の間に形成された凹部を埋めるように前記基板上に配置された中間層と、
前記基板と反対側の前記中間層上に配置された圧電層と、
前記中間層と反対側の前記圧電層上に配置された電極層と、を備え、
前記基板は、長手方向と、前記長手方向に垂直な横方向とを規定し、前記突起部は、前記長手方向と前記横方向とに配置され、
複数の前記突起部は、互いに等距離であり、 前記突起部の少なくとも1つは、これを中心として、互いに等角度に配置された6つの隣接する前記突起部によって囲まれるように配置され、
前記基板は、前記上面とは反対側の底面を有し、
前記底面に接する上部層と、前記上部層と反対側の下部層と、前記上部層と前記下部層との間に介在する多層膜部中間層とを有する多層膜部をさらに備え、
前記多層膜部の前記上部層及び前記下部層のそれぞれは、窒化アルミニウムからなり、前記多層膜部中間層は、二酸化シリコンからなることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性表面波デバイスであって、 前記突起部の各々は、頂点を有し、 前記突起部のうちの少なくとも1つは、前記長手方向において前記突起部のうちの2つの隣接する突起部の間に介在され、前記横方向において前記突起部のうちの別の2つの隣接する突起部の間に介在され、 前記突起部のうちの前記少なくとも1つの頂点および前記突起部のうちの前記2つの隣接する突起部の前記頂点は、第1の線を画定するように接続され、 前記突起部のうちの前記少なくとも1つの頂点および前記突起部のうちの前記別の2つの隣接する突起部の前記頂点は、前記横方向において第2の線を画定するように接続され、 前記第1の線は、前記第2の線に垂直であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記基板の厚さは、100μm~1mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記突起部の高さは、前記基板の前記上面から0.5μm~3μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記中間層は、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコンおよび窒化アルミニウムから選択される材料からなる、請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記中間層の厚さは、1μm~20μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記中間層の厚さは、1.5μm~10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項9】
前記中間層の前記ミドル層は、前記中間層の前記最上層および前記最下層よりも低い音響伝播速度を有する、請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項10】
前記中間層の前記最上層、前記ミドル層および前記最下層のそれぞれは、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコンおよび窒化アルミニウムから独立して選択される材料からなる請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の弾性表面波デバイスにおいて、 前記中間層の前記最上層及び前記最下層は、それぞれ窒化アルミニウムからなり、 前記中間層の前記ミドル層は、二酸化シリコンからなることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項12】
前記多層膜部中間層は、前記多層膜部の前記上部層及び前記下部層よりも低い音響伝播速度を有する、請求項2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項13】
前記突起部は、円錐状またはピラミッド状であることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項14】
前記突起部は、円錐台状または角錐台状であることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料からなる装置に関し、特に弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、黎明期に開発された弾性表面波(SAW)デバイスは、圧電層11と、圧電層11上に配置された、インターデジタル電極を含む電極層12とを含む。
【0003】
圧電体11の作製に適した材質としては、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO )、ニオブ酸リチウム(LiNbO )等が挙げられる。これらは、電気機械結合係数(K )は良好であるが、耐熱性に劣る。
【0004】
すなわち、上述の材料は、温度に伴って膨張または収縮しやすい。その結果、黎明期に開発されたSAWデバイスには、弾性波の伝搬による共振周波数の変動が生じる。
【0005】
圧電体層11の温度安定性の悪さを改善するために、過渡期に開発されたSAWデバイスが提案されている。
【0006】
図2を参照すると、過渡期に開発されたSAWデバイスは、黎明期に開発されたSAWデバイスと同様である。
【0007】
しかしながら、黎明期に開発されたSAWデバイスと比較して、過渡期に開発されたSAWデバイスは、より薄い圧電層11を有し、圧電層11の電極層12とは反対側に配置された中間層14と、中間層14の圧電層11とは反対側に配置された基板13とをさらに含む。
【0008】
特に、過渡期に開発されたSAWデバイスでは、圧電層11の厚さは10μm~20μmの範囲であり、電極層12の厚さは50nm~600nmの範囲であり、基板13の厚さは100μm~800μmの範囲であり、中間層14の厚さは10nm~5000nmの範囲である。
【0009】
基材13は、サファイア(Al)からなり、圧電層11の物理的な膨張を抑制することができる。
【0010】
二酸化ケイ素からなる中間層14は、二酸化ケイ素が圧電層11の値とは反対の値の共振周波数の温度係数を有するので、過渡期に開発されたSAWデバイスの共振周波数の変動を補償することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図3及び図4を参照すると、黎明期に開発されたSAWデバイスと比較して、過渡期に開発されたSAWデバイスは圧電層11の膨張を抑制するが、過渡期に開発されたSAWデバイスの圧電層11が黎明期に開発されたSAWデバイスよりも薄いことに起因して、過渡期に開発されたSAWデバイスから作られた共振器の共振周波数の上に複数のスプリアスモードが発生する。
【0012】
したがって、過渡期に開発されたSAWデバイスは、少なくともスプリアスモードを抑制することによって、さらに改善される必要がある。
【0013】
したがって、本開示の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを軽減または排除することができる弾性表面波デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示による弾性波デバイスは、
上面を有し、前記上面から突出し、互いに離間する複数の突起部を有する基板と、
前記突起部の間に形成された凹部を埋めるように前記基板上に配置された中間層と、
前記基板と反対側の前記中間層上に配置された圧電層と、
前記中間層と反対側の前記圧電層上に配置された電極層と、を備え、
前記基板は、長手方向と、前記長手方向に垂直な横方向とを規定し、前記突起部は、前記長手方向と前記横方向とに配置され、
複数の前記突起部は、互いに等距離であり、 前記突起部の少なくとも1つは、これを中心として、互いに等角度に配置された6つの隣接する前記突起部によって囲まれるように配置され、
前記中間層は、前記圧電層と接する最上層と、前記基板と接する最下層と、前記最上層と前記最下層との間に介在するミドル層とを含み、
前記突起部は、前記最下層および前記ミドル層を通って延在し、前記最上層によって囲まれている
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して実施形態の以下の詳細な説明において明らかになるであろう。
【0016】
図1図1は、黎明期に開発された弾性表面波(SAW)装置を示す概略図である。
図2図2は、過渡期に開発されたSAWデバイスを示す概略図である。
図3図3は、図1に示される以前に開発されたSAWデバイスから作製された共振器の周波数(Frequency)に対するシミュレートされたアドミタンス(Admittance)を示すグラフである。
図4図4は、図2に示される過渡期に開発されたSAWデバイスから作製された共振器の周波数(Frequency)に対するシミュレートされたアドミタンス(Admittance)を示すグラフである。
図5図5は、本開示のSAWデバイスの第1の実施形態を示す概略図である。
図6図6は、図5に示すSAWデバイスの概略上面図である。
図7図7は、本開示のSAWデバイスの第2の実施形態を示す概略図である。
図8図8は、図7に示すSAWデバイスの概略上面図である。
図9図9は、本開示のSAWデバイスの第3の実施形態を示す概略図である。
図10図10は、本開示のSAWデバイスの第4の実施形態を示す概略図である。
図11図11は、図10に示されたSAWデバイスの第4の実施形態から作製された共振器のシミュレートされたアドミタンス(Admittance)対周波数(Frequency)を、図1に示された黎明期に開発されたSAWデバイスから作製された共振器および図2に示された過渡期に開発されたSAWデバイスから作製された共振器のものと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示をより詳細に説明する前に、適切であると考えられる場合、参照番号または参照番号の末端部分は、対応するまたは類似の要素を示すために図面間で繰り返されており、これらは、任意選択で同様の特徴を有し得ることに留意されたい。
【実施例1】
【0018】
図5および図6を参照すると、本開示による弾性表面波(SAW)デバイスの第1の実施形態が示されている。SAWデバイスは、実質的に4. 2μmの波長(λ)を有する弾性波で動作するように適合される。
【0019】
図5に示すように、SAWデバイスは、基板3と、中間層4と、圧電層2と、電極層5とを備える。基板3は、上面3aと、上面3aとは反対側の底面3bとを有し、上面3aから突出し互いに離間した複数の突起部31を有する。
【0020】
中間層4は、突起部31の間に形成された凹部を埋めるように基板3上に配置されている。
【0021】
圧電層2は、基板3とは反対側の中間層4上に配置されている。電極層5は、中間層4とは反対側の圧電層2上に配置されている。
【0022】
圧電層2は、上面2aと、上面2aとは反対側の下面2bとを有し、圧電性を示す圧電材料からなる。本実施形態において、圧電材料としては、LiTaO3が例示されるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、圧電層2は、LiNbO3から作製されてもよい。
【0023】
圧電層2は、弾性波の波長の1/4(λ/4)、すなわち約1.68μmの厚さ(T2)を有することができる。いくつかの実施形態では、圧電層2の厚さ(T2)は、0. 1μm~30μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0024】
本実施形態では、基板3は、サファイアと呼ばれることが多い単結晶Al O からなり、基板3の厚さ(T3)は200μmである。いくつかの実施形態では、基板3は、炭化ケイ素(SiC)などのダイヤモンドライク炭素系材料から作製されてもよく、基板3の厚さ(T3)は、100μm~1mmの範囲の厚さを有してもよい。
【0025】
本実施形態では、突起部31は、中間層4内に延在し、円錐形状を有するが、これに限定されない。突起部31の高さ(H31)は、1. 8μmであり、圧電層2の下面2bに接していない頂点31aを有している。すなわち、突起31の頂点31aは、圧電体層2の下面2aから離間している。
【0026】
いくつかの実施形態では、突起部31は、例えば、正方形底面とする正方形ピラミッド形状、五角形を底面とする五角形ピラミッド形状など、正方形、長方形、その他幾何学的形状を底面とするピラミッド形状であってもよい。いくつかの実施形態では、突起部31の各々の高さ(H31)は、上面3aから測定されたときに、0. 5μm~3μmの範囲の高さを有してもよい。
【0027】
図6に示すように、本実施形態では、基板3は、長手方向C1と、長手方向C1に垂直な横方向R1とを規定し、突起部31は、長手方向C1と横方向R1とに配置されている。
【0028】
本実施形態において、突起部31の少なくとも1つは、長手方向C1において隣り合う2つの突起部31の間に介在し、横方向R1において隣り合う2つの突起部31の間に介在する。
【0029】
少なくとも1つの突起部31の頂点31aと、隣接する2つの突起部31の長手方向C1の頂点31aとは、第1の線L1を画定するように接続されている。少なくとも1つの突起部31の頂点31aと、横方向R1において隣り合う2つの突起部31の頂点31aとは、第2の線L2を画定するように接続されている。第1線路L1は、第2線路L2に対して垂直である。
【0030】
図5に示すように、中間層4は、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウムから選択される材料からなる単層である。
【0031】
本実施形態では、中間層4は二酸化シリコンから作られ、厚さ(T4)は実質的に0.45λ、すなわち約1.89μmである。
【0032】
中間層4の厚さ(T4)は、突起部31の頂点3laが圧電層2の下面2bに接触しないように、突起部31の高さ(H31)よりも大きい。いくつかの実施形態では、中間層4の厚さ(T4)は、1μm~20μmの範囲であり得る。
【0033】
本実施形態では、電極層5は、300nmの厚さ(T5)を有し、複数の電極指51を含むインターデジタル電極構造として形成されている。いくつかの実施形態では、電極層5は、10nm~5000nmの範囲の厚さ(T5)を有し得る。
【0034】
また、電極指51の形状及び本数は、実際には当業者により最適化され得る。また、本発明の本質的な特徴ではないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0035】
図7および図8を参照すると、SAWデバイスの第2の実施形態は、SAWデバイスの第1の実施形態と同様の構造を有する。しかしながら、中間層4は三層構造として形成され、基板3の突起部31は異なるように配置され、SAWデバイスの第2の実施形態は、多層膜部6をさらに含む。
【0036】
中間層4は、圧電層2と接する最上層41と、基板3と接する最下層43と、最上層41と最下層43との間に介在するミドル層42とを含む。突起部31は、最下層43およびミドル層42を貫通し、最上層41に囲まれている。
【0037】
中間層4の最上層41、ミドル層42、最下層43は、それぞれ、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウムから独立して選択される材料からなる。本実施形態では、最上層41、最下層43は窒化アルミニウムからなり、ミドル層42は二酸化シリコンからなる。
【0038】
ミドル層42は、最上層41および最下層43よりも低い音響伝播速度を有する。厚さに関して、最上層41は600nmの厚さ(T41)を有し、最下層43は600nmの厚さ(T43)を有し、ミドル層42は500nmの厚さ(T42)を有する。したがって、中間層4の厚さ(T4)は、合計で1700nm (すなわち、1.7μm)である。いくつかの実施形態では、中間層4は、1. 5μm~10μmの範囲の厚さ(T4)を有してもよい。
【0039】
本実施形態では、図8に示すように、突起部31は互いに等距離に配置される。突起部31の少なくとも1つは、これを中心として、互いに等角度に配置された6つの隣接する突起部31によって囲まれるように配置されている。具体的には、これら6つの隣接する突起部31の頂点31aは、正六角形として構成されている。
【0040】
多層膜部6は、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウムから選択される材料からなる。本実施形態では、多層膜部6は、基板3の底面3bに接する上部層61と、上部層61とは反対側の下部層63と、上部層61と下部層63との間に介在する多層膜部中間層62とを含む。
【0041】
多層膜部6の上部層61、多層膜部中層62および下部層63のそれぞれは、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、および窒化アルミニウムから独立して選択される材料から作製される。本実施形態では、上部層61および下部層63が窒化アルミニウムからなり、多層膜部中層62が二酸化シリコンからなるため、多層膜部中間層62は上部層61および下部層63よりも低い音響伝播速度を有する。
【0042】
上部層61の厚さ(T61)は100nmであり、下部層63の厚さ(T63)は100nmであり、多層膜部中間層62の厚さ(T62)は200nmである。したがって、多層膜部6の厚さ(T6)は、合計で400nmである。
【実施例3】
【0043】
図9を参照すると、SAWデバイスの第3の実施形態は、各突起部31が円錐台形状であることを除いて、SAWデバイスの第1の実施形態と同様の構造を有する。いくつかの実施形態では、突起部31の各々は、上端31bを有する角錐台形状を有してもよい。
【0044】
本実施形態では、突起部31の高さ(H31)は1. 5μmであり、突起部31の上端31bは圧電層2の下面2bで終端している。すなわち、突起部31の高さ(H31)は、中間層4の厚さ(T4)と同じである。
【実施例4】
【0045】
図10を参照すると、SAWデバイスの第4の実施形態は、突起部31の各々が図8に示されるように構成されることを除いて、SAWデバイスの第1の実施形態と同様の構造を有する。具体的には、隣り合う6つの突起部31の頂点(31)は、正六角形として構成されている。
【0046】
図11において、縦軸は、インピーダンスの逆数であるアドミタンス(Admittance)(単位:ジーメンス、S)を示す。図11におけるジーメンス(S)のアドミタンス(Admittance)と、図3及び図4におけるデシベル(dB)のアドミタンス(Admittance)とは、dB=20log 10(S)の関係を有する。
【0047】
Q値は共振器の品質を示すパラメータであるところ、明らかに、過渡期に開発されたSAWデバイスは、黎明期に開発されたSAWデバイスと比較して、より高いQ値を有するが、複数のスプリアスモードを示す。
【0048】
Q値は、周波数対帯域幅比率(Q=f /Δf)によって定義され、ここで、f は、インピーダンスの実数部がその極大値に達する共振器の中心周波数であり、Δfは、中心周波数におけるピーク値から-3dBで測定される帯域幅である。
【0049】
Q値が高いほど、ピークはシャープになる。対照的に、本開示のSAWデバイスの第4の実施形態は、高いQ値を有するだけでなく、軽減されたスプリアスモードも示す。
【産業上の利用可能性】
【0050】
要するに、本開示のSAWデバイスは、基板3の上面3aから突出し、互いに離間する複数の突起部31を有することにより、スプリアスモードの形成を効果的に抑制することができる。
【0051】
上記の説明では、説明の目的のために、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、1つまたは複数の他の実施形態が、これらの具体的な詳細のうちのいくつかがなくても実施され得ることが、当業者には明らかであろう。
【0052】
また、本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、序数の表示を伴う実施形態などへの言及は、特定の特徴、構造、または特性が本開示の実施に含まれ得ることを意味することも理解されたい。
【0053】
本明細書では、開示を簡素化し、様々な発明の態様の理解を助ける目的で、様々な特徴が単一の実施形態、図、またはそれらの説明にまとめられていることがあり、1つの実施形態からの1つまたは複数の特徴または特定の詳細が、適切な場合、本開示の実施において、別の実施形態からの1つまたは複数の特徴または特定の詳細と一緒に実施され得ることをさらに理解されたい。
【0054】
例示的な実施形態と見なされるものに関連して本開示を説明してきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、すべてのそのような修正および等価な構成を包含するように、最も広い解釈の趣旨および範囲内に含まれる様々な構成を包含することが意図されることを理解されたい。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11