(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20230928BHJP
A61K 31/20 20060101ALI20230928BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20230928BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230928BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20230928BHJP
【FI】
A23L33/12
A61K31/20
A61K31/201
A61P21/00
C12N5/077
(21)【出願番号】P 2018226708
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】古株 彰一
(72)【発明者】
【氏名】松原 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】池口 主弥
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢章
(72)【発明者】
【氏名】粟根 聖次
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172021(JP,A)
【文献】Journals of Gerontology: BIOLOGICAL SCIENCES,2013年,Vol.68, No.12,pp.1482-1492
【文献】展望台,食品と科学 55巻8号 ,第55巻,岸 直邦 株式会社食品と科学社
【文献】展望台,食品と科学 54巻2号 ,第54巻,岸 直邦 株式会社食品と科学社
【文献】Nutrients,2018年11月12日,Vol.10, No.11,pp.1735-1~1735-12
【文献】Nutrients,2017年12月23日,Vol.10, No.1,pp.13-1~13-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/12
A61K 31/20
A61K 31/201
A61P 21/00
C12N 5/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-デセン二酸
、及びセバシン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、筋芽細胞増殖促進剤。
【請求項2】
前記2-デセン二酸がtrans-2-デセン二酸である、請求項1に記載の筋芽細胞増殖促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筋芽細胞増殖促進剤を含む、筋芽細胞を増殖促進するための食品組成物。
【請求項4】
食品、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品からなる群より選択される、請求項3に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤、並びに、筋肉を増強するための食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然のローヤルゼリーには、水、タンパク質、炭水化物、脂質、灰分、遊離アミノ酸、ビタミン、ミネラル等が含まれており、脂質としては、trans-10-ヒドロキシ-2-デセン酸、10-ヒドロキシデカン酸等が含まれている。
【0003】
ローヤルゼリーの経口摂取は、ヒトの加齢性疾患及び身体機能低下を予防できることが報告されている(特許文献1)。また、ローヤルゼリー抽出残渣を飲用することで、ヒトの筋力、全身パワー、片足パワーを向上することが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-172021号公報
【文献】特開2004-73002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、新規な筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤を提供することである。本発明の別の目的は、筋芽細胞増殖促進作用及び筋肉増強作用を有するローヤルゼリー成分を含む一群の化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ローヤルゼリーの構成成分である、trans-10-ヒドロキシ-2-デセン酸、及び10-ヒドロキシデカン酸、並びに、これらの代謝物である、trans-2-デセン酸、セバシン酸が優れた筋芽細胞増殖促進活性を有することを新たに見出した。
【0007】
本発明は、下記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を有効成分として含有する、筋芽細胞増殖促進剤を提供する。
【化1】
(式中、R
1は-CH
2OH又は-COOHであり、R
2は-CH
2-CH
2-又は-CH=CH-であり、nは4~8の整数である。)
【0008】
本発明はまた、上記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を有効成分として含有する、筋肉増強剤を提供する。
【0009】
本発明はさらに、上記筋芽細胞増殖促進剤を含む、筋芽細胞を増殖促進するための食品組成物、並びに、上記筋肉増強剤を含む、筋肉を増強するための食品組成物を提供する。
【0010】
上記化合物が、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、2-デセン二酸、10-ヒドロキシデカン酸、及びセバシン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。また、10-ヒドロキシ-2-デセン酸がtrans-10-ヒドロキシ-2-デセン酸であって、2-デセン二酸がtrans-2-デセン二酸であってよい。
【0011】
上記食品組成物は、食品、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品からなる群より選択されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、新規な筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤が提供される。また、本発明により、筋芽細胞増殖促進作用又は筋肉増強作用を有する食品組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の450nmの吸光度を測定することによる細胞数の定量化の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明の筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤は、下記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を有効成分として含有する。
【化2】
(式中、R
1は-CH
2OH又は-COOHであり、R
2は-CH
2-CH
2-又は-CH=CH-であり、nは4~8の整数である。)
【0016】
本発明の筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤は、上記化合物を有効成分とすることで、筋芽細胞増殖促進効果及び又は筋肉増強効果を奏する。また、本発明の筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤は、同等の量の例えば10-ヒドロキシ-2-デセン酸を含むローヤルゼリーに比べて、より高い筋芽細胞増殖促進作用及び筋肉増強作用を有すると推測される。これは、ローヤルゼリーには、本発明における有効成分の他に、複数の成分が含まれているためだと考えられる。また、特許文献2では、ローヤルゼリー抽出残渣によるヒトの筋力向上効果を報告しているが、この抽出残渣は、エーテル又はエタノールによって抽出した後の抽出残渣であるため、本発明における有効成分は殆ど含まれ得ない。
【0017】
本明細書において、「筋芽細胞増殖促進」とは、筋芽細胞の増殖を促進させることをいう。筋芽細胞の増殖は、例えば一定の培養時間経過後の筋芽細胞の増殖率によって評価することができる。一定の培養時間経過後の筋芽細胞の増殖率は周知な方法、例えば計数によって得られた単位体積の細胞数の増加、又は吸光度の測定によって得られた細胞濃度の増加によって計算することができる。筋芽細胞の増殖率は、培地の成分、他の増殖促進剤の有無、培養時間によって変化し得るが、例えば、筋芽細胞増殖促進剤が投与され、24時間経過後の筋芽細胞増殖率は、筋芽細胞増殖促進剤が投与直後に比べて、10%以上、20%以上、又は25%以上促進され、48時間後の筋芽細胞増殖率は、筋芽細胞増殖促進剤が投与直後に比べて、70%以上、80%以上、又は85%以上促進され、さらに72時間後の筋芽細胞増殖率は、筋芽細胞増殖促進剤が投与直後に比べて、90%以上、100%以上、又は110%以上促進される。
【0018】
筋芽細胞は特に限定されないが、例えば骨格筋細胞が挙げられ、特に横紋筋細胞であることが好ましい。また、筋芽細胞はヒト由来であってよく、ヒト以外の動物、例えば、マウス由来であってもよい。
【0019】
本明細書において、「筋肉増強」とは、筋肉を増強させることをいう。筋肉の増強は、常法によって評価することができる。
【0020】
筋肉増強の対象としては、特に限定されないが、例えばヒト、マウスの筋肉を挙げられ、ヒトの筋肉であることが好ましい。また、ヒトの場合は、健常者であってよく、筋肉(筋力)不足の対象、高齢者などであってもよい。
【0021】
一般式(I)に表される中鎖脂肪酸としては、nが6である場合、10-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、デカン二酸(セバシン酸、1,8-オクタンジカルボン酸)、及び2-デセン二酸(1,8-オクテンジカルボン酸)が挙げられ、nが4である場合、8-ヒドロキシオクタン酸(8-ヒドロキシ-カプリル酸)、8-ヒドロキシ-2-オクテン酸、オクタン二酸(スベリン酸、コルク酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸)、及び2-オクテン二酸(1,6-ヘキセンジカルボン酸)が挙げられ、nが5である場合9-ヒドロキシノナン酸(9-ヒドロキシペラルゴン酸)、9-ヒドロキシ-2-ノネン酸、ノナン二酸(アゼライン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸)、及び2-ノネン二酸(1,7-ヘプテンジカルボン酸)が挙げられ、nが7である場合、11-ヒドロキシウンデカン酸、11-ヒドロキシ-2-ウンデセン酸、ウンデカン二酸(1,9-ノナンジカルボン酸)、及び2-ウンデセン二酸(1,9-ノネンジカルボン酸)が挙げられ、nが8である場合、12-ヒドロキシドデカン酸(12-ヒドロキシラウリン酸、サビニン酸)、12-ヒドロキシ-2-ドデセン酸、ドデカン二酸(1,10-デカンジカルボン酸)、及び2-ドデセン二酸(1,10-デセンジカルボン酸)が挙げられる。これらのうち、nが6である中鎖脂肪酸が好ましく用いられる。R2が-CH=CH-である不飽和脂肪酸の場合は、cisであってもtransであってもよく、transであることが好ましい。
【0022】
これらの中鎖脂肪酸は、合成品であってもよく、例えばローヤルゼリー由来等の天然由来のものであってもよい。ローヤルゼリー由来の10-ヒドロキシ-2-デセン酸又は10-ヒドロキシデカン酸は、例えば、ローヤルゼリーから有機溶媒等により抽出精製して得ることができる。代表的な中国産のローヤルゼリーにおける固形分中の10-ヒドロキシデカン酸の含有量は、およそ0.4質量%以上、1.3質量%以下であり、10-ヒドロキシ-2-デセン酸の含有量は、3質量%以上6質量%以下である。
【0023】
中鎖脂肪酸の塩としては特に限定されないが、例えば塩酸塩、硫酸塩、金属塩であってよく、金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩であることがより好ましい。
【0024】
本発明の筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤は、上記化合物の1種を含んでよく、2種以上の混合物を含んでもよい。2種以上の混合物である場合、2種以上の化合物を単に混合してもよく、例えば上記化合物の含有濃度が高くなるように、天然ローヤルゼリーを濃縮することによって得られた混合物であってもよい。
【0025】
ヒトへの投与の場合の筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤の用量は、化合物の種類、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、適宜設定することができる。
【0026】
化合物が10-ヒドロキシ-2-デセン酸である場合、例えば、体重60kgの成人に1日当たり1mg~200mg用量で用いることができ、10mg~100mgの用量で用いることが好ましい。化合物が2-デセン二酸である場合、例えば、体重60kgの成人に1日当たり0.1mg~30mg用量で用いることができ、1mg~15mgの用量で用いることが好ましい。化合物が10-ヒドロキシデカン酸である場合、例えば、体重60kgの成人に1日当たり0.1mg~50mg用量で用いることができ、1mg~30mgの用量で用いることが好ましい。化合物がセバシン酸である場合、例えば、体重60kgの成人に1日当たり0.1mg~20mg用量で用いることができ、0.5mg~15mgの用量で用いることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤は、経口投与であってよく、非経口投与であってもよい。一日当たりの有効成分量が上述した範囲内にあれば、一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【0028】
本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤は、上記有効成分のみを含有するものであってもよく、本発明による効果を妨げない限り、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。
【0029】
本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、上記有効成分と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0030】
本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤は、医薬品、医薬部外品及び食品組成物そのものとして、並びに医薬品、医薬部外品及び食品組成物に添加して、使用することができる。食品組成物としては、食品の3次機能(体調調節機能)が強調された食品であることが好ましい。食品の3次機能が強調された食品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0031】
本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤からなる医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物、又は本実施形態に係る筋芽細胞増殖促進剤及び筋肉増強剤を含む医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物は、筋芽細胞増殖促進剤用又は筋肉増強用であってよく、例えば、「筋肉量や筋力を維持する旨」、「筋肉量及び筋力の低下を抑制する旨」、「筋肉の減少を軽減する旨」、「歩行能力の改善をサポートする旨」、「歩行能力を維持する旨」等の表示が付されていてもよい。これらの表示には、「自立した日常生活を送る上で必要な筋肉量及び筋力」、「加齢による筋肉の減少」、「日常生活をスムーズに行うために必要な筋肉量や筋力」、「中高年齢者において加齢により衰える歩行能力」等の条件を付してもよい。また、「首」、「手」、「腕」、「脚」、「臀部」、「腰」、「背中」等の特定の部位などの条件を付してもよい。
【0032】
本発明に係る筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤を含む食品組成物は、上記筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤を例えば0.005~10.0質量%含んでいてよい。化合物が10-ヒドロキシ-2-デセン酸である場合、例えば、0.5mg~100mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、5mg~50mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。化合物が2-デセン二酸である場合、0.1mg~20mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、1mg~10mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。化合物が10-ヒドロキシデカン酸である場合、例えば、0.1mg~20mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、1mg~10mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。化合物がセバシン酸である場合、例えば、0.05mg~10mg/1gの乾燥質量の食品組成物であってよく、0.5mg~5mg/1gの乾燥質量の食品組成物であることが好ましい。
【0033】
食品組成物としては以下のようなものが挙げられ、これらの製造工程中の中間製品、又は最終製品に上記筋肉増強剤を混合して、上記の目的に用いられる食品組成物を得ることができる:コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及びハチミツ酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料。
【0034】
本発明はまた、筋芽細胞増殖を促進するための、又は、筋肉を増強するための、上記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を提供する。或いは、筋芽細胞増殖を促進するための、又は、筋肉を増強するための、上記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を有効成分として含有する剤を提供する。
【0035】
本発明はまた、筋芽細胞増殖促進剤又は筋肉増強剤の製造における、上記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物の使用を提供する。
【0036】
本発明はさらに、上記一般式(I)に表される中鎖脂肪酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一つの化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、筋芽細胞増殖促進方法又は筋肉増強方法を提供する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
以下の方法にしたがって、10-ヒドロキシ-2-デセン酸(Hangzhou Eastbiopharm,Co.,Ltd.)(以下、デセン酸という)、2-デセン二酸(Sundia MediTech Co., Ltd.)(以下、デセン二酸という)、10-ヒドロキシデカン酸(Combi-Blocks Inc.)(以下、デカン酸という)、及びセバシン酸(Sigma-Aldrich Co., LLC.)の4つの化合物による骨格筋細胞増殖効果を検討した。
【0039】
<実験方法>
上記4つの化合物をそれぞれDMSOに溶解し、デセン酸及びセバシン酸が500μM、デカン酸が600μM、デセン二酸が300μMとなるように、10%仔牛血清含有DMEM培地へそれぞれ添加した。その後、各化合物を含んだ培地を用いて、マウス骨格筋幹細胞サテライト細胞由来細胞株C2C12細胞(ACTT)を3日間培養した。陰性対照としては、同容量のDMSOを用いた。培養容器として、FALCON 96ウェルプレートを用い、播種時の細胞密度が3.0×10
4cells/mLであり、37℃、5%のCO
2で培養した。培地は2日に1回交換した。培養開始後0時間(0h)、12時間後(12h)、48時間後(48h)、又は72時間後(72h)にCell counting kit-8(DOJNDO 熊本)を用い、450nmの吸光度を測定することで細胞数を定量化し、その結果を
図1に示した(n=3、*:p<0.05、**:p<0.01)。
【0040】
<結果>
図1によれば、500μMデセン酸、600μMデカン酸、300μMデセン二酸、及び500μMセバシン酸はいずれも骨格筋細胞の増殖を促進し、特にその効果はデセン二酸とセバシン酸で顕著であった。