(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B65D43/08 210
(21)【出願番号】P 2019065610
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】片島 真
(72)【発明者】
【氏名】大石 修嗣
(72)【発明者】
【氏名】平山 学
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼瀬 知希
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1504516(JP,S)
【文献】意匠登録第1616616(JP,S)
【文献】意匠登録第1450806(JP,S)
【文献】特開2005-289412(JP,A)
【文献】特開2014-227185(JP,A)
【文献】特開2019-048654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート成形される包装用容器の蓋体であって、
平面視多角形状の天板部と、
該天板部の外周縁
の下辺から下方に連続する周壁部
と、
該周壁部の下縁から水平方向外向きに連続するフランジ部と、
該フランジ部の外周縁から下方に連続するスカート部とを備え、
前記周壁部は、
前記天板部の辺ごとの複数の側壁部が角部を介して周方向に連続する多面形状とし、
前記複数の側壁部のうち、少なくとも一の側壁部は、
前記角部を挟んで少なくとも一方に、
頂点を前記天板部の外周縁の下辺に設けると共に、底辺を前記周壁部の下縁に設けて、当該側壁部の上下高さに見合った高さを有して、平面状に構成した三角面部と、
該三角面部と隣接して、平面状に構成した側面部とを有し、
当該三角面部と前記側面部とは
、前記三角面部の前記頂点から前記底辺側の下点までを山折り又は谷折りに屈曲した境界辺を介して隣接すると共に、
前記フランジ部と前記スカート部とは前記下点の延長線上を外側に屈曲したことを特徴とした包装用容器の蓋体。
【請求項2】
三角面部は、側壁部の左右両側に一対を形成した請求項1記載の包装用容器の蓋体。
【請求項3】
三角面部は、角部を挟んで両側に一対を形成した請求項1記載の包装用容器の蓋体。
【請求項4】
天板部は、辺の数(n)が偶数であり、
周壁部は、(n/2)組の対向する側壁部のうち、少なくとも一組の対向する前記側壁部それぞれに左右一対の三角面部を形成してなる請求項1記載の包装用容器の蓋体。
【請求項5】
周壁部の角部は、隣接する側壁部の三角面部同士を直結して山型に形成した請求項1から3のうち何れか一項記載の包装用容器の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート成形した包装用容器の蓋体について、容器外からの内容物の視認性と剛性を両立する補強構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装用容器のシート成形にあっては、近年、材料費を抑えるために、シート厚を極力薄くした肉薄化の傾向にあるが、容器本体に蓋体を嵌合する際や、内容物を収容した容器を積み重ねたときに、その荷重で蓋体が変形等しない剛性が必要とされるため、従来、補強リブを形成することが広く行われている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-141270号公報
【文献】特開2016-41599号公報
【文献】特開2016-145053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内容物を収容した容器を商品として店頭に陳列したとき、消費者は蓋体を通してしか内容物を確認することができないが、従来のように、蓋体に補強リブを形成したものは、その部分の視認性が犠牲になり、内容物全体を瞬時に確認できないという課題があった。
【0005】
また、従来の補強リブは、蓋体の側壁に凸条又は凹条を縦方向に何本か平行して設けた形態で概ね共通するが、このような形態は現在では有り触れたものであり、人目を引くような審美性を有する包装形態とは言い難いものであった。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、必要な剛性を確保しながら、内容物の視認性が良好で、従来とは異なる審美性を有する新規な補強構造を有する包装用容器の蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明では、シート成形される包装用容器の蓋体であって、平面視多角形状の天板部と、該天板部の外周縁から下方に連続する周壁部とを少なくとも備える。前記周壁部は、前記天板部の辺ごとに前記天板部と連続する複数の側壁部が角部を介して周方向に連続する多面形状とする。当該周壁部において、前記複数の側壁部のうちの少なくとも一の側面部は、前記角部を挟んで少なくとも一方に、前記天板部側を頂点とし、当該側壁部の上下高さに見合った高さを有する三角面部と、該三角面部と隣接する側面部とを有する。そして、当該三角面部と前記側面部とは、山折り又は谷折りの境界辺を介して隣接するという手段を用いた。
【0008】
上記手段によれば、三角面部がトラス構造に類似する補強性能を発揮し、周壁部全体に必要な耐荷重を与えることができる。つまり、天板部に荷重が加わったとき、当該荷重は三角面部の頂点に入力されて2本の斜辺それぞれを圧縮させ、底辺を左右に引っ張ろうとするが、これら三辺の節点は剛接合であるため、当該三角面部の圧縮変形が阻止され、当該三角面部を形成した側壁部の圧縮強度が高まることで、蓋体全体に必要な剛性を付与することができる。
【0009】
また、側壁部を構成する三角面部や側面部を凹凸がない平面状とすることで、これら部分が透明あるいは透光性を有する場合は、内容物がぼやけたりせず、原形のままを視認することができ、さらに、蓋体の外部から入射する光は、三角面部と側面部とで屈折や反射の向きが異なるため、従来とは異なった審美性をもたらせるものである。
【0010】
なお、三角面部は、側壁部の左右両側に一対が形成され、該一対の三角面部の間に側面部を形成してなることが好ましい。当該側壁部を左右均等な耐荷重とすることができるからである。また、左右一対の三角面部の間の側面部を広く確保でき、側面視からの内容物の視認性がより良好となるからである。
【0011】
これに代えて、角度を挟んで、その両側に三角面部を一対形成することも可能であり、この場合も、上記手段と同様の作用効果を得ることができる。
【0012】
一方、天板部が、辺の数(n)が偶数である場合、周壁部は、(n/2)組の対向する側壁部のうち、少なくとも一組の対向する前記側壁部それぞれに左右一対の三角面部を形成した場合でも、蓋体に必要な剛性を確保しながら、内容物の視認性及び審美性を付与することができ、本発明の目的を達成することができる。
【0013】
なお、周壁部における角部の構成として、隣接する側壁部の三角面部同士を直結して山型に形成することで、周壁部は三角面部と側面部だけで構成されることになり、上述した視認性、及び審美性がより良好となる。
【0014】
これに対して、角部を面取りしたりアール形状に形成すれば、これら角部がもたらす耐荷重と、当該角部に隣接する三角面部の耐荷重とが相俟って、蓋体の剛性をより高めることができる。
【0015】
なお、本発明の蓋体が、周壁部の下端周囲に外方に向かってフランジ部を形成したり、該フランジの周囲に容器本体と嵌合するスカート部を形成したものであってもよいことはもちろんである。この場合、フランジ部やスカート部に、三角面部と側面部との境界辺と連続する山折り部または谷折り部を設けることで、さらに蓋体の剛性を高めることができる。ただし、荷重を天板部や三角面部を含む周壁部で受けることができる場合は、当該フランジ部やスカート部にこうした山折り部又は谷折り部を設けず、全周を均一な形状とすることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周壁部の補強構造として三角面部を形成したので、当該三角面部がもたらすトラス構造に類似した耐荷重特性によって、必要な剛性が確保できると共に、当該三角面部を通じた内容物の視認性も良好であり、しかも、三角面部と側面部とが異なる方向に反射光を発することで、従来とは異なる審美性をもたらして、消費者の目を引くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓋体と容器本体の組み合わせを示す包装用容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1はシート成形される包装用容器について、本発明の一実施形態に係る蓋体Aと、該蓋体Aを適用する容器本体Bとを分離した状態を示している。蓋体Aは、天板部1と、周壁部2と、フランジ部3と、スカート部4とから構成されている。
【0019】
蓋体Aについて、
図2・3を併用しながら、各部の詳細を説明すると、まず天板部1は、平面視において略正方形を呈しているが、より正確には、四辺の長辺部1aと、四つ角を隅切りした短辺部1bとで構成される略八角形である。そして、当該天板部1の周囲にはアール形状又は面取り形状の
外周縁を形成すると共に、この
外周縁から下方に周壁部2が連続しているのであるが、当該周壁部2は、天板部1の長辺部1aごとに連続する4つの側壁部5と、短辺部1bごとに連続する4つの面取り部6とが周方向に連続する多面形状としている。つまり、当該周壁部2は、隣接する側壁部5の間の角部が面取り部6によって隅切りされた構成であり、横断面は天板部1と同様に略八角形を呈することになる。
【0020】
また、本実施形態では、周壁部2の下縁から水平方向外向きに連続するフランジ部3、及び該フランジ部3の外周縁から下方に連続するスカート部4もまた、平面視略八角形としている。そして、スカート部4の周囲の凹状部4aは、容器本体Bの口部外周に設けた環状溝B1に外嵌合する部分であり、当該スカート部4の下縁において、四隅の面取り部分には摘み部4bを形成している。
【0021】
次に、本発明の特徴的構成を説明すると、周壁部2を構成する4つの側壁部5は、さらに、三角面部7と側面部8とで構成している。この実施形態において、三角面部7は、側壁部5の左右に一対形成され、その間の側面部8は必然的に逆台形状に形成されている。
【0022】
このうち三角面部7は、その頂点7aを周壁部2が連続する天板部1の外周縁の下辺に設け、その高さを当該側壁部5の上下高さ(本実施形態では周壁部2の上下高さと同義)に見合ったものとして、底辺7bをフランジ部3が連続する側壁部5の下縁に設けている。また、当該三角面部7は、一方の斜辺7cを介して面取り部6と隣接している。
【0023】
これに対して、三角面部7の他方の斜辺7dは、側面部8との境界を形成しつつ、その下点7eは、
図4に示すように、側壁部5の下縁中、最も外側に位置するように、外側に屈曲させている。
【0024】
一方、三角面部7の頂点7aや、面取り部6側の斜辺7cの下点7fは、上記下点7eのような屈曲構成とはしていない。したがって、当該三角面部7と側面部8との境界辺となる斜辺7dは、頂点7aから下点7eに向けて徐々に山折りに形成された構造である。
【0025】
続いて、上記構成からなる蓋体Aの作用効果を説明すると、当該蓋体Aの天板部1に荷重が加わると、その下向きの力は天板部1の外周縁を介して三角面部7の頂点7aに入力され、二つの斜辺7c・7dに分散される。そして、分散された力は各斜辺7c・7dを圧縮させるように作用して、これが底辺7bを左右に引っ張る力となる。しかしながら、三角面部7は二つの斜辺7c・7dと底辺7bの節点である頂点7a・下点7c・7dの全点が剛接合であるため、三角面部7が荷重によって圧縮変形することがない。したがって、当該三角面部7を有する側壁部5の圧縮強度が高まり、引いては蓋体A全体に必要な剛性を付与することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、
図4に示したように、フランジ部3やスカート部4についても、屈曲構成とした下点7eの延長線上3a・4cを外側に屈曲することで、蓋体Aの剛性をより向上させている。
【0027】
他方、蓋体全体を透明性または透光性を有するものとしてシート成形し、周壁部2における各側壁部5の三角面部7や側面部8を凹凸がない平面状に構成した場合、容器を手に持って側面視した場合でも、これら三角面部7や側面部8を通じて内容物をほぼ原形のまま視認することができる。特に、本発明では、三角面部7を周壁部2の角部に設けているため、側壁部5中央の側面部8の面積が大きく確保され、より視認性が良好になる。
【0028】
さらに、周壁部2に入射する光は、三角面部7と側面部8とで異なる角度に屈折したり反射するため、あたかもダイアモンドカットのような輝きを放ち、従来とは異なる審美性をもたらして、消費者に新鮮みのある美感を印象づけることが可能となる。こうした審美性と上述した視認性によって、本発明の蓋体Aを適用した包装用容器は、高い顧客吸引力を期待することができる。
【0029】
なお、上記蓋体Aの剛性面について、上記実施形態では、面取り部6に補強リブ9を形成することで、上述した視認性や審美性を損なうことなく、蓋体Aの剛性をより向上させている。
【0030】
この点、面取り部6は、
図5に示すように、アール形状の角部10に変更することも可能であり、さらに、このアール形状の角部10に補強リブ(図示せず)を設けることで、やはり視認性や審美性を損なうことなく、蓋体Aの剛性を高めることができる。
【0031】
また、周壁部における側壁部同士の角部は、上述した面取り部6やアール形状の角
部10のように独立した面を構成するものだけではなく、
図6に示すように、隣接する側壁部の三角面部7の斜辺同士を直結して、一つの角からなる山型の角部11を構成することも本発明に含まれる。
【0032】
さらにまた、三角面部7の下点7eの屈曲向きは、上記実施形態の外方に限らず、
図7・8に示すように、内方に屈曲させることも可能である。この場合、三角面部7と側面部8との境界を示す斜辺7dは谷折りとなるが、上記実施形態と同様に、三角面部7がトラス構造に類似する耐圧縮性を発揮して、蓋体Aに必要な剛性を確保することができる。
【0033】
ただし、この谷折り構成の場合、フランジ部3とスカート部4については、その延長線上を内方に屈曲させると、蓋体Aの下面開口が部分的に小さくなって、容器本体Bへの閉蓋に影響することが考えられる。このため、フランジ部3やスカート部4については、谷折りの斜辺の延長線上を屈曲させずに全周を均一な形状とする。若しくは、上記実施形態のように、外方に屈曲させることが、容器本体Bへの閉蓋性に支障を来すことなく、蓋体Aの剛性を高めることができるので好ましい。ただし、このような閉蓋に支障を来す恐れがない場合は、フランジ部3やスカート部4を内方に屈曲させることも本発明から排除するものではない。
【0034】
さらなる変形例として、ここまで全ての側壁部について三角面部7を左右一対に設けた構成を説明したが、
図9に示すように、対向する一組の側壁部12のみに三角面部7を左右一対に設け、他の対向する側壁部13については三角面部7を省略することもある。この場合、蓋体Aは天板部の辺の数(n)を偶数として、対向する側壁部の組数が(n/2)組である場合に、その任意の組の対向する側壁部に当該変形例を適用することができる。
【0035】
図10は、
図9と同様、対向する一組の側壁部12のみに三角面部7を左右一対に設けた蓋体の他の変形例を示したもので、三角面部7の頂部7aに補強リブPを追加している。具体的には、この補強リブPは、三角面部7の領域と天板部1の領域にまたがり、三角面部7の頂部7aで深さが最も大きくなるように蓋体の内側に窪ませた構成である。これによって、三角面部7が対向する一組の側壁部12のみに形成されるような蓋体であっても、その剛性を維持させることができ、視認性や審美性も損なわれない。
【0036】
ただし、補強リブPを適用する蓋体は、三角面部7が対向する一組の側壁部12にのみ形成されたものに限らず、他の側壁部12にも三角面部7を設けたものや、全ての三角面部7を対象とせず、一部の三角面部7に当該補強リブ7を設けることも本発明の範囲である。
【0037】
さらには、本発明は、一の側壁部に三角面部7を左右一対設けることに限定されず、一の側壁部の左右いずれか一方に三角面部7を設けることも、その範囲から排除するものではない。本発明で必要なことは、蓋体Aの補強構造として、周壁部の角部に隣接して三角面部を設けることで、一定以上の剛性を付与しつつ、補強リブを有する従来の蓋体と比べて、良好な視認性と審美性を兼ね備えることである。
【符号の説明】
【0038】
A 蓋体
B 容器本体
1 天板部
1a 長辺部
2 周壁部
3 フランジ部
4 スカート部
5 側壁部
6 面取り部
7 三角面部
7a 頂点
7b 底辺
7c 一方の斜辺
7d 他方の斜辺(側面部との境界辺)
7e・7f 下点
8 側面部
9・P 補強リブ
10・11 角部