(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】冷凍食材の解凍及び冷蔵方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/12 20060101AFI20230928BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20230928BHJP
A23L 3/365 20060101ALN20230928BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20230928BHJP
【FI】
F25D23/12 U
F25D23/00 302Z
A23L3/365 Z
A23L13/00 A
(21)【出願番号】P 2019087949
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507152202
【氏名又は名称】吉村 清己
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 清己
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-313131(JP,A)
【文献】特開2007-010188(JP,A)
【文献】特開2006-046718(JP,A)
【文献】特開2015-077265(JP,A)
【文献】特開平11-094202(JP,A)
【文献】特開平08-135903(JP,A)
【文献】特開平09-101034(JP,A)
【文献】特開2013-201941(JP,A)
【文献】特開2019-071857(JP,A)
【文献】初級標準テキスト冷凍空調技術,社団法人日本冷凍空調学会,2009年04月10日,p.334-335
【文献】古川 博一,低温高湿度解凍装置,冷凍2013年12月号,第88巻第1034号 ,公益社団法人日本冷凍空調学会,2013年12月15日,p.6-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/365
F24C 1/00
F25D 23/00
F25D 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解凍室と、前記解凍室内に300~500℃の過熱蒸気を供給するための過熱蒸気発生器とを内部に設けた解凍庫を用い、前記過熱蒸気発生器は加熱ヒーターを配置した沸騰室と、その上側に設けた過熱ヒーターを有するパイプ状の過熱室とを連結部にて連結してあり、
前記解凍室
を10~15℃の温度に温調し、前記解凍室に1分間当たり当該解凍室の容量の1~10倍のわずかの過熱蒸気を供給
することで低酸素状態で冷凍食材
が過熱蒸気で加熱
されることなく解凍し、次に前記解凍室を2~6℃に温調した冷蔵室に切り換え、前記冷蔵室に1分間当たり当該冷蔵室の容量の1~10倍のわずかの過熱蒸気を供給することで低酸素状態で冷蔵することを特徴とする冷凍食材の解凍
及び冷蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍された食材を解凍でき、冷蔵できる解凍庫及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
肉,魚,果物等の各種食材を冷凍保存し、必要になった際に解凍して調理に供することが行われている。
しかし、解凍の際にドリップ等と称される、いわゆる旨味成分が溶出したり、食材の外側と内部とで解凍にバラツキが生じ、食材本来のおいしさが保持されない問題があった。
【0003】
例えば、冷凍食材を室温等にて自然解凍すると、解凍バラツキが生じるのみならず、その後に、冷蔵保存するのが難しい。
また、冷凍食材を冷蔵室にて解凍しようとすると、その解凍時間が長くなり、場合によっては数十時間も要することになり、調理のタイミングに間に合わなくなる問題があった。
【0004】
特許文献1には、冷蔵室とは別に0℃~-5℃に保った解凍室を設ける技術を開示するが、このような解凍温度では-40℃~-60℃等にて冷凍された食材を解凍するのに長時間かかってしまうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食材の品質を保ちつつ、速く解凍及び冷蔵保存できる解凍庫及び冷蔵庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る解凍庫は、解凍室と、前記解凍室内の空気を置換するための過熱蒸気の供給手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る冷蔵庫は、冷蔵室と、前記冷蔵室内の空気を置換するための過熱蒸気の供給手段とを備えたことを特徴とする。
また、この解凍室と冷蔵室の切り換え手段を有していてもよい。
【0008】
ここで、冷凍食材(食品)は、家庭用の冷凍室(-18℃以下)に保存されていた冷凍食材のみならず、業務用の温度が-30~-80℃の超低温冷凍食材も含まれる。
例えば、マグロ等の魚類は-40℃以上になると、身が黒っぽく変色する恐れがあるので、-50℃以下にて保存されている。
【0009】
本発明者は、-40~-60℃に冷凍保存されていた食パン及び刺身用マグロを用いて、いろいろな条件にて解凍することを比較研究した。
その結果、解凍室内にドライスチームと称される乾燥した300~500℃の過熱蒸気をごく少量だけ噴き込むと、変色やドリップを生じさせることなく解凍できることが明らかになった。
これは、解凍室に過熱蒸気を供給することで、解凍室の空気が外に追い出され(置換され)、この解凍室内が低酸素状態の還元雰囲気になるためと推定された。
【0010】
これにより、解凍室を10~15℃の適度の温度に温調すると、約2~3時間程度の短時間で食材本来の鮮度,旨味等を維持しながら解凍できた。
【0011】
この解凍した食材を10℃以下、例えば2~6℃の冷蔵庫で冷蔵保存する場合にも冷蔵室に300~500℃の加熱蒸気を噴き込むだけで変色やドリップもなく、長期に保存できた。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、解凍室や冷蔵室内に過熱蒸気を噴き込み、内部の空気を過熱蒸気で置換したことにより、食材の品質を保ちながら解凍や冷蔵保存ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る解凍庫,冷蔵庫の構造例を示す。
【
図2】過熱蒸気発生器の例を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る解凍庫,冷蔵庫の構造例を
図1に示す。
解凍庫と冷蔵庫とを相互に切り換えることができるものも含む。
解凍庫や冷蔵庫10は、食材を入れておく解凍室や冷蔵室を有し、その中に必要に応じて複数段の仕切棚12を有する。
扉の構造は、スライド式でも前後方向の開閉式でもよく、その構造例に制限はない。
【0015】
本発明において特徴的なのは、過熱蒸気発生器20を備えており、その発生条件が操作パネル13にて解凍条件や冷蔵条件と一体的に制御されている点にある。
解凍室は、解凍後にそのまま冷蔵室となるように切り換え制御されていてもよく、解凍室と冷蔵室を別々に設けてもよい。
【0016】
過熱蒸気発生器20は、水を沸騰させて水蒸気を得た後にこの水蒸気が100℃を超える、例えば300~500℃に過熱することで乾燥した過熱蒸気を発生させるものであれば、その構造に制限はない。
本発明において、過熱蒸気は食材を加熱するものではなく、解凍室内や冷蔵室内の空気を外部に追い出して、低酸素状態にするのが目的である。
よって、発生量はごく僅かでよい。
例えば、
図2に示すように沸騰室21に加熱ヒーター21a,21bを配置して、この沸騰室21に注入した水を加熱し、沸騰させることで水蒸気を発生させ、これを連結部23を介して上側のパイプ状の過熱室22に誘導する。
この過熱室22は、水蒸気を300~500℃の高温に過熱するための過熱ヒーター22aを設けてある。
過熱室22にて得られた過熱蒸気は、解凍室(冷蔵室)11内に設けた供給孔14から供給される。
過熱蒸気の供給量は、解凍室等の気密度にもよるが、一旦内部の空気が過熱蒸気に置換されれば、その状態が維持できる程度の供給量でもよい。
例えば、1分当たり解凍室の室内容量と同程度~10倍程度の過熱蒸気量が供給できればよい。
【0017】
このように、解凍庫を用いて刺身用のマグロ,-60℃の冷凍食材を約15℃の室内温に温調し、過熱蒸気を供給したものとしないもので比較した。
その結果、過熱蒸気を供給しながら解凍したものは赤身のままであったのに、過熱蒸気を供給しなかったものは黒っぽく変色した。
【0018】
過熱蒸気を供給しながら解凍した上記のマグロを、次に解凍室を5℃付近の冷蔵条件に切り換え、そのまま25時間冷蔵保存したものと、過熱蒸気の供給を止めて25時間冷蔵保存したものを比較した。
なお、冷蔵保存は発泡スチロール容器にマグロを入れ、ラップ包装した。
その結果、過熱蒸気を供給したものは何ら変化が認められなかったが、過熱蒸気を供給しなかったものは、黒っぽくなるだけでなく、容器内にドリップが溶出していた。
このことから、過熱蒸気を室内に供給することで、食材の品質を保ちながら解凍したり、冷蔵保存することができることが明らかになった。
【符号の説明】
【0019】
10 解凍・冷蔵庫
11 解凍室(冷蔵室)
12 仕切棚
13 操作パネル
14 供給孔
20 過熱蒸気発生器
21 沸騰室
22 過熱室
23 連結部