(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】昇圧回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H02M3/155 F
(21)【出願番号】P 2020032055
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】丹沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】野村 達也
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144414(JP,A)
【文献】特開平08-162914(JP,A)
【文献】特開2017-192168(JP,A)
【文献】特開2019-022411(JP,A)
【文献】特開2019-075977(JP,A)
【文献】特許第5921447(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流成分を含む入力電圧を出力電圧に変換する昇圧回路であって、
前記入力電圧を受け、前記入力電圧を含む変調電圧を出力する変調回路と、
前記変調回路から前記変調電圧を受け、前記変調電圧が整流された前記出力電圧を出力する整流回路と、を備え、
前記変調回路は、自励発振回路と、重畳成分付与回路と、を有し、
前記変調回路は、前記入力電圧の前記直流成分と、前記自励発振回路に起因する自励発振成分と、前記重畳成分付与回路に起因する重畳成分と、を含む前記変調電圧を前記整流回路に出力する、昇圧回路。
【請求項2】
前記自励発振成分の周波数は、前記重畳成分の周波数より高い、請求項1に記載の昇圧回路。
【請求項3】
前記自励発振回路は、前記整流回路に接続され、
前記重畳成分付与回路は、前記自励発振回路に接続され、
ている、請求項1又は2に記載の昇圧回路。
【請求項4】
前記変調回路は、第1変調電圧と前記第1変調電圧に対して位相がずれた第2変調電圧とを出力し、
前記整流回路は、前記第1変調電圧を受ける第1整流部と、前記第2変調電圧を受ける第2整流部と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の昇圧回路。
【請求項5】
前記重畳成分付与回路は、前記自励発振回路の前記自励発振成分によって所定の共振周波数をもって励振される共振回路である、請求項1~4の何れか一項に記載の昇圧回路。
【請求項6】
外部エネルギを受け、直流成分を含む入力電圧を発生する発電素子と、
前記入力電圧を出力電圧に変換する昇圧回路と、を備え、
前記昇圧回路は、
前記入力電圧を受け、前記入力電圧を含む変調電圧を出力する変調回路と、
前記変調回路から前記変調電圧を受け、前記変調電圧が整流された前記出力電圧を出力する整流回路と、を有し、
前記変調回路は、自励発振回路と、重畳成分付与回路と、を含み、
前記変調回路は、前記入力電圧の前記直流成分と、前記自励発振回路に起因する自励発振成分と、前記重畳成分付与回路に起因する重畳成分と、を含む前記変調電圧を前記整流回路に出力する、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧回路及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業、工業、商業のいっそうの効率化、高齢化及び人口減少などの社会の変動に対応するために、あらゆるモノにセンサと情報通信回路とを搭載し、自律的に情報収集を行ういわゆるIoT(Internet of Things)に注目が集まっている。IoTは、室内及び室外を問わず、温度、圧力、振動、化学物質、交通量などの環境変数を自律的にセンサでモニタリングし、インターネットを介してそれらの測定データをクラウドに転送する。収集されたデータは、ビッグデータとして解析がなされ、異常が検出された場合、あるいは、対応が必要となった場合には、モニタされた対象にフィードバックを返す。
【0003】
このように、IoTでは、モノ同士が基本的には人間を介さずに情報を収集し、収集した情報を伝達し、伝達された情報に基づいてフィードバックを行う。このうち、IoT用集積回路システムは、環境変数を測定し、情報をインターネットに送信する端末におけるキーデバイスである。このような回路システムとして、電力が供給されない場所でも自律的にIoT端末機能を発揮できるデバイスの開発が進められている。例えば、環境エネルギを電力に変換することにより、集積回路システムの電源として用いるいわゆるエネルギハーベスティング技術が検討されている。特に、太陽光、熱、振動、電波などから電力を取り出す個別の回路システムの研究が盛んである。
【0004】
例えば、特許文献1~3は、エネルギハーベスティングに関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-22411号公報
【文献】特開2019-75977号公報
【文献】特許第5921447号
【非特許文献】
【0006】
【文献】ヒロシ フケタ (Hiroshi Fuketa)他、「85mV入力、50μs起動、完全集積型電圧乗算器、エネルギーハーベスト用のオンチップトランスを使用したパッシブクロックブースト」(An 85-mVINPUT 50-μs Startup Fully Integrated VoltageMultiplier with Passive Clock Boost Using On-Chip Transformers for EnergyHarvesting)、アイ・トリプル・イー(IEEE)、2014年、pp. 263-266。
【文献】タマラ・アイ・アーレンス (Tamara I. Ahrens)他、「タップ付きボンドワイヤインダクタンスを使用した1.4 GHz 3 mW CMOS LC低位相ノイズ電圧制御発振器」(A 1.4-GHz 3-mW CMOS LC Low Phase Noise VCO Using Tapped Bond WireInductances)、インターナショナル・シンポジウム・オン・ローパワー・エレクトロニクス・アンド・デザイン(International Symposium on Low Power Electronics and Design (ISLPED))、1998年、pp. 16-19。
【文献】ショウゴ・トクダ及び丹沢 徹(Shugo Tokuda, andToru Tanzawa)、「環境発電用のDC-DCチャージポンプ回路の最小動作電圧設計に向けて」(Toward a Minimum-Operating-Voltage Design of DC-DC Charge PumpCircuits for Energy Harvesting)、アイ・トリプル・イー(IEEE)、2019年、DOI:10.1109/ISCAS.2019.8702677。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、太陽光、熱、振動、電波などから電力を発生させる発電素子は、出力可能な電圧が低い。そこで、発電素子が出力する電圧は、電源集積回路を動作させるために要する電圧まで昇圧される。従って、回路システムは、発電素子に加えて、昇圧回路を有する。従来の昇圧回路の一例として、CMOSリングオシレータが挙げられる。このオシレータによって発電素子の出力電圧は昇圧される。そして、オシレータが要求する入力電圧の下限は、0.3V程度である。しかし、発電素子の出力電圧は、オシレータが要求する電圧より低い場合もあり得る。
【0008】
例えば、非特許文献1は、低電圧動作を可能とする昇圧回路を提案する。非特許文献1の昇圧回路は、NMOSトランジスタとインダクタとキャパシタとを備えたいわゆるLC発振器である。この昇圧回路は、0.1V程度の電圧でも昇圧動作が可能である。非特許文献2は、Q値の高い発振回路を提案する。集積回路で製造可能なインダクタは、直列抵抗が高いので、高いQ値を実現するインダクタを得ることは困難である。非特許文献2では、このような問題を解決し得る発振回路を提案する。非特許文献3も、低電圧動作を可能とする昇圧回路を提案する。しかし、非特許文献3の昇圧回路は、要求される出力電圧を得るためには、回路の規模が大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、入力電圧が低い場合であっても、良好な電力効率を実現可能な昇圧回路及び電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態は、直流成分を含む入力電圧を出力電圧に変換する昇圧回路であって、入力電圧を受け、入力電圧を含む変調電圧を出力する変調回路と、変調回路から変調電圧を受け、変調電圧が整流された出力電圧を出力する整流回路と、を備え、変調回路は、自励発振回路と、重畳成分付与回路と、を有し、変調回路は、入力電圧の直流成分と、自励発振回路に起因する自励発振成分と、重畳成分付与回路に起因する重畳成分と、を含む変調電圧を整流回路に出力する。
【0011】
この昇圧回路では、変調回路が入力電圧に対して変調成分が重畳された変調電圧を出力する。この変調成分は、自励発振回路が発生する自励発振成分に加えて、重畳成分付与回路に起因する重畳成分を含む。この重畳成分によれば、自励発振成分に振幅変調を生じさせることが可能である。変調の結果、振幅が大きくなる期間では、より高い電圧が整流回路に提供される。その結果、整流回路は、より多くの電流を出力する。従って、全体としてみた場合に、昇圧回路から出力可能な電力が増加するので、入力電圧が低い場合であっても、良好な電力効率を実現できる。
【0012】
一形態において、自励発振成分の周波数は、重畳成分の周波数より高くてもよい。この構成によれば、入力電圧が低い場合であっても、良好な電力効率を確実に得ることができる。
【0013】
一形態において、自励発振回路は、整流回路に接続され、重畳成分付与回路は、自励発振回路に接続されてもよい。この構成によれば、回路構成を簡易にすることができる。
【0014】
一形態において、変調回路は、第1変調電圧と第1変調電圧に対して位相がずれた第2変調電圧とを出力し、整流回路は、第1変調電圧を受ける第1整流部と、第2変調電圧を受ける第2整流部と、を含んでもよい。この構成によれば、電力効率をさらに高めることができる。
【0015】
一形態において、重畳成分付与回路は、自励発振回路の自励発振成分によって所定の共振周波数をもって励振される共振回路であってもよい。共振回路は、トランジスタを必要としないので、回路構成を簡単にできる。その結果、チップサイズを小型化することができる。
【0016】
本発明の別の形態である電源装置は、外部エネルギを受け、直流成分を含む入力電圧を発生する発電素子と、入力電圧を出力電圧に変換する昇圧回路と、を備え、昇圧回路は、入力電圧を受け、入力電圧を含む変調電圧を出力する変調回路と、変調回路から変調電圧を受け、変調電圧が整流された出力電圧を出力する整流回路と、を有し、変調回路は、自励発振回路と、重畳成分付与回路と、を含み、変調回路は、入力電圧の直流成分と、自励発振回路に起因する自励発振成分と、重畳成分付与回路に起因する重畳成分と、を含む変調電圧を整流回路に出力する。この電源装置は、上記の昇圧回路を備える。従って、発電素子が発生する電圧が低い場合であっても、良好な電力効率を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入力電圧が低い場合であっても、良好な電力効率を実現可能な昇圧回路及び電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源装置を備えたセンサ装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す昇圧回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す昇圧回路の具体的な回路構成の例示である。
【
図4】
図4(a)は、比較例の発振回路から出力される電圧の例示である。
図4(b)は、整流回路から出力される電流の例示である。
【
図5】
図5(a)は、
図2に示す共振回路及び発振回路を介して出力される電圧の例示である。
図5(b)は、
図2に示す整流回路から出力される電圧の例示である。
図5(c)は、整流回路から出力される電流の例示である。
【
図6】
図6は、変形例1の昇圧回路の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6に示す昇圧回路が有する発振回路の具体的な回路構成の例示である。
図7(b)は、
図6に示す昇圧回路が有する第1整流回路の具体的な回路構成の例示である。
図7(c)は、
図6に示す昇圧回路が有する第2整流回路の具体的な回路構成の例示である。
【
図8】
図8(a)は発振回路が出力する第1変調電圧の例示である。
図8(b)は発振回路が出力する第2変調電圧の例示である。
【
図9】
図9(a)は昇圧回路から出力される電圧波形の例示である。
図9(b)は昇圧回路から出力される電流波形の例示である。
【
図10】
図10は、変形例2の昇圧回路の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、変形例3の昇圧回路の動作を説明するグラフである。
【
図12】
図12(a)は、実施例の昇圧回路の出力電圧と出力電流との関係を示すグラフ、及び、比較例の昇圧回路の出力電圧と出力電流との関係を示すグラフである。
図12(b)は、実施例の昇圧回路の出力電圧と電力効率との関係を示すグラフ、及び、比較例の昇圧回路の出力電圧と電力効率との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、比較例の昇圧回路の具体的な回路構成の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に示すように、実施形態に係る電源装置1は、センサ装置100に用いられる。センサ装置100は、IoTを構成する。
【0021】
センサ装置100は、アンテナ103を介してインターネット300と接続されている。センサ装置100は、インターネット300を介して収集したデータをクラウドサーバ301といった別のシステムへ送信する。また、センサ装置100は、インターネット300を介して計測用プログラムといった種々のデータを受信する。
【0022】
センサ装置100は、電源装置1と、測定装置102と、を有する。測定装置102は、対象物200の温度、湿度あるいは振動の周波数といった種々のデータを収集する。そして、測定装置102は、当該データを外部へ送信すると共に外部からデータを受信する。例えば、測定装置102は、センサ102aと、デジタル回路102bと、メモリ回路102cと、通信回路102dと、を有する。
【0023】
電源装置1は、測定装置102を駆動する電力を測定装置102に供給する。つまり、電源装置1は、測定装置102を構成するセンサ102a、デジタル回路102b、メモリ回路102c及び通信回路102dの動作に要する電力を供給する。ここで、電源装置1は、いわゆるバッテリといった予め電力を蓄えた装置ではなく、外部から供給されるエネルギ(例えば、熱エネルギ)を変換して電力を得る。従って、電源装置1は、対象物200からエネルギが供給されている限り、測定装置102へ電力を供給し続ける。そうすると、センサ装置100を対象物200に設置した後、センサ装置100は、対象物200が放出するエネルギを利用して駆動し続ける。すなわち、センサ装置100は、バッテリ交換を必要としない。なお、センサ装置100は、補助的な電源としてバッテリを備えてもよい。
【0024】
電源装置1は、発電素子10と、昇圧回路20と、を有する。発電素子10は、対象物200が放出するエネルギを電力に変換する。この電力は、直流成分と交流成分とを含む。発電素子10は、太陽光発電素子や熱発電素子といった直流電力を出力するものを採用してよい。また、発電素子10は、振動発電素子といった交流電力を出力するものを採用してもよい。この場合には、電源装置1は、発電素子10から出力された交流電力を直流電力に変換する回路を備えてよい。そして、昇圧回路20は、発電素子10が出力した電力を測定装置102の駆動に利用可能な直流電流に変換する。
【0025】
昇圧回路20は、発電素子10に対して電気的に接続される。また、昇圧回路20は、測定装置102に対して電気的に接続される。昇圧回路20は、上述したように、発電素子10から出力される電力を、測定装置102の仕様に応じた電力に変換する。
【0026】
<昇圧回路>
以下、昇圧回路20について詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、昇圧回路20は、発電素子10から入力電圧(V
IN)を受ける。この入力電圧(V
IN)の直流成分は電圧(V
DD)である。そして、昇圧回路20は、測定装置102へ出力電圧(V
OUT)を提供する。昇圧回路20は、共振回路30(重畳成分付与回路)と、発振回路40(自励発振回路)と、整流回路50と、を有する。発振回路40は、高発振コルピッツオシレータ(ESCO: Enhanced swing Colpitts Oscillator)である。発振回路40は、後述する第1MOSトランジスタ45のドレインの電圧(V
DD)を中心とした交流電圧波形を出力する。発振回路40の出力に整流回路50を接続すると、整流回路50の出力に電圧(V
DD)より高い電圧(V
OUT)が発生する。つまり、発振回路40及び整流回路50は、昇圧回路を構成するものとみなせる。さらに、発振回路40の入力側にインダクタとキャパシタとにより構成される共振回路30を接続する。そうすると、発振回路40の実効的な電源の電圧(V
DD_INT-V
SS_INT)は、共振回路30の共振動作によって電圧(V
DD)を中心とした交流信号となる。
【0028】
共振回路30は、発振回路40が自励発振する電圧成分によって励振される。その結果、共振回路30は、発振回路40と協働して変調電圧(VMOD)を出力する。つまり、共振回路30は、それ自体では交流の電圧成分を出力しない。共振回路30は、外部からの励振エネルギを受け、当該励振エネルギに応じて交流の電圧成分を励振エネルギに付与する。そうすると、共振回路30は、受動的に動作する素子であると言える。換言すると、共振回路30は、発振回路40のように能動的に動作する素子ではない。
【0029】
共振回路30の入力は、発電素子10の出力に接続され、発電素子10から電圧(VIN)を受ける。共振回路30の出力は、発振回路40の入力に接続されている。発振回路40の入力は、共振回路30の出力に接続されている。発振回路40の出力は、整流回路50の入力に接続されている。整流回路50の入力は、整流回路50の出力に接続されている。整流回路50の出力は、測定装置102の入力に接続され、測定装置102に電圧(VOUT)を提供する。
【0030】
図3は、昇圧回路20を構成する具体的な回路構成の一例である。
【0031】
<共振回路>
共振回路30は、第1共振入力30IN_1と、第2共振入力30IN_2と、第1共振出力OUT_1と、第2共振出力30OUT_2と、第3共振出力30OUT_3と、を有する。第1共振入力30IN_1は、入力20INを介して発電素子10に接続されている。第2共振入力30IN_2は、基準電位20Gに接続されている。第1共振出力OUT_1、第2共振出力30OUT_2及び第3共振出力30OUT_3は、発振回路40に接続されている。
【0032】
共振回路30は、第1インダクタ31と、第2インダクタ32と、第1キャパシタ33と、を有する。第1インダクタ31の一方の端部は、第1共振入力30IN_1を介して発電素子10に接続されている。さらに、第1インダクタ31の一方の端部は、第2共振出力30OUT_2を介して発振回路40に接続されている。第1インダクタ31の別の端部は、第1接続点34及び第1共振出力OUT_1を介して発振回路40に接続されている。さらに、第1インダクタ31の別の端部は、第1接続点34を介して第1キャパシタ33に接続されている。
【0033】
第2インダクタ32の一方の端部は、第2共振入力30IN_2を介して基準電位20Gに接続されている。第2インダクタ32の他方の端部は、第2接続点35及び第3共振出力30OUT_3を介して発振回路40に接続されている。さらに、第2インダクタ32の他方の端部は、第2接続点35を介して第1キャパシタ33に接続されている。
【0034】
なお、第1インダクタ31及び第2インダクタ32は、実際の電気部品として備えてもよいし、既に備えている付加的な部品が有するインダクタンスとしてもよい。例えば、第1インダクタ31及び第2インダクタ32は、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスを利用してもよい。
【0035】
第1キャパシタ33の一方の端部は、第1接続点34を介して第1インダクタ31に接続されている。さらに、第1キャパシタ33の一方の端部は、第1接続点34及び第1共振出力OUT_1を介して発振回路40に接続されている。第1キャパシタ33の他方の端部は、第2接続点35を介して第2インダクタ32に接続されている。さらに、第1キャパシタ33の他方の端部は、第2接続点35及び第3共振出力30OUT_3を介して発振回路40に接続されている。
【0036】
発振回路40は、第1発振入力40IN_1と、第2発振入力40IN_2と、第3発振入力40IN_3と、第1発振出力40OUT_1と、第2発振出力40OUT_2と、第3発振出力40OUT_3と、を有する。第1発振入力40IN_1は、第1共振出力OUT_1に接続されている。第2発振入力40IN_2は、第2共振出力30OUT_2に接続されている。第3発振入力40IN_3は、第3共振出力30OUT_3に接続されている。第1発振出力40OUT_1、第2発振出力40OUT_2及び第3発振出力40OUT_3は、整流回路50に接続されている。
【0037】
発振回路40は、第3インダクタ41と、第4インダクタ42と、第2キャパシタ43と、第3キャパシタ44と、第1MOSトランジスタ45と、を有する。
【0038】
第3インダクタ41の一方の端部は、第1発振入力40IN_1を介して第1共振出力OUT_1に接続されている。つまり、第3インダクタ41は、第1インダクタ31及び第1キャパシタ33に接続されている。第3インダクタ41の他方の端部は、第1MOSトランジスタ45のドレインに接続されている。また、第3インダクタ41の他方の端部は、第2キャパシタ43に接続されている。さらに、第3インダクタ41の他方の端部は、第1発振出力40OUT_1及び第2発振出力40OUT_2を介して整流回路50に接続されている。
【0039】
第4インダクタ42の一方の端部は、第3発振入力40IN_3を介して第3共振出力30OUT_3に接続されている。また、第4インダクタ42の一方の端部は、第3キャパシタ44にも接続されている。第4インダクタ42の他方の端部は、第1MOSトランジスタ45のソースに接続されている。また、第4インダクタ42の他方の端部は、第2キャパシタ43に接続されている。さらに、第4インダクタ42の他方の端部は、第3キャパシタ44にも接続されている。さらに、第4インダクタ42の他方の端部は、第3発振出力40OUT_3を介して整流回路50にも接続されている。
【0040】
第2キャパシタ43の一方の端部は、第3インダクタ41に接続されている。また、第2キャパシタ43の一方の端部は、第1MOSトランジスタ45のドレインにも接続されている。さらに、第2キャパシタ43の一方の端部は、第1発振出力40OUT_1を介して整流回路50にも接続されている。さらに、第2キャパシタ43の一方の端部は、第2発振出力40OUT_2を介して整流回路50にも接続されている。第2キャパシタ43の他方の端部は、第1MOSトランジスタ45のソースに接続されている。つまり、第2キャパシタ43は、第1MOSトランジスタ45のソース及びドレインに対して並行に接続されている。また、第2キャパシタ43の他方の端部は、第4インダクタ42にも接続されている。さらに、第2キャパシタ43の他方の端部は、第3キャパシタ44にも接続されている。さらに、第2キャパシタ43の他方の端部は、第3発振出力40OUT_3を介して整流回路50にも接続されている。
【0041】
第3キャパシタ44の一方の端部は、第3発振入力40IN_3を介して第3共振出力30OUT_3に接続されている。つまり、第3キャパシタ44は、第1キャパシタ33に接続されている。さらに、第3キャパシタ44は、第2インダクタ32にも接続されている。また、第3キャパシタ44の一方の端部は、第4インダクタ42にも接続されている。第3キャパシタ44の他方の端部は、第1MOSトランジスタ45のソースに接続されている。第3キャパシタ44の他方の端部は、第4インダクタ42にも接続されている。つまり、第3キャパシタ44は、第4インダクタ42に対して並行に接続されている。第3キャパシタ44の他方の端部は、第2キャパシタ43に接続されている。つまり、第3キャパシタ44は、第2キャパシタ43に対して直列に接続されている。第3キャパシタ44の他方の端部は、第3発振出力40OUT_3を介して整流回路50に接続されている。
【0042】
第1MOSトランジスタ45のドレインは、第3インダクタ41に接続されている。また、第1MOSトランジスタ45のドレインは、第1発振出力40OUT_1を介して整流回路50に接続されている。さらに、第1MOSトランジスタ45のドレインは、第2発振出力40OUT_2を介して整流回路50に接続されている。さらに、第1MOSトランジスタ45のドレインは、第2キャパシタ43にも接続されている。第1MOSトランジスタ45のソースは、第4インダクタ42に接続されている。また、第1MOSトランジスタ45のソースは、第2キャパシタ43にも接続されている。さらに、第1MOSトランジスタ45のソースは、第3キャパシタ44にも接続されている。さらに、第1MOSトランジスタ45のソースは、第3発振出力40OUT_3を介して整流回路50にも接続されている。第1MOSトランジスタ45のゲートは、第2発振入力40IN_2を介して第2共振出力30OUT_2に接続されている。つまり、第1MOSトランジスタ45のゲートは、第1インダクタ31に接続されている。
【0043】
整流回路50は、第1整流入力50IN_1と、第2整流入力50IN_2と、第3整流入力50IN_3と、第1整流出力50OUT_1と、を有する。第1整流入力50IN_1は、第1発振出力40OUT_1に接続されている。第2整流入力50IN_2は、第2発振出力40OUT_2に接続されている。第3整流入力50IN_3は、第3発振出力40OUT_3に接続されている。第1整流出力50OUT_1は、出力20OUTを介して測定装置102に接続されている。
【0044】
整流回路50は、第2MOSトランジスタ51を有する。第2MOSトランジスタ51のソースは、第2整流入力50IN_2を介して第2発振出力40OUT_2に接続されている。つまり、第2MOSトランジスタ51のソースは、第3インダクタ41、第2キャパシタ43及び第1MOSトランジスタ45のドレインに接続されている。第2MOSトランジスタ51のベースは、第3整流入力50IN_3に接続されている。つまり、第2MOSトランジスタ51のベースは、第2キャパシタ43、第3キャパシタ44、第4インダクタ、第1MOSトランジスタ45のソース及び第1MOSトランジスタ45のベースに接続されている。第2MOSトランジスタ51のドレインは、第1整流出力50OUT_1を介して測定装置102に接続されている。第2MOSトランジスタ51のゲートは、第1整流入力50IN_1を介して第1発振出力40OUT_1に接続されている。つまり、第2MOSトランジスタ51のゲートは、第3インダクタ41、第2キャパシタ43及び第1MOSトランジスタ45のドレインに接続されている。
【0045】
<動作>
以下、実施形態の昇圧回路20の動作について、比較例の昇圧回路120と比較しながら説明する。
【0046】
図13に示すように、比較例の昇圧回路120は、発振回路40及び整流回路50を有する。これらは、実施形態の昇圧回路20の発振回路40及び整流回路50と同じである。一方、比較例の昇圧回路120は、共振回路30を有しない。具体的には、共振回路30を構成する第1インダクタ31、第2インダクタ32及び第1キャパシタ33を有しない。
【0047】
昇圧回路120は、発電素子10から直流成分である電圧(V
DD)を含む入力電圧(V
IN)を受ける。そして、発振回路40は、
図4(a)に示す自励発振成分(V
OSC)を発生する。この自励発振成分(V
OSC)は、直流成分(V
DD)と発振回路40が発する交流成分とを含む。発振回路40が発する交流成分の振幅が一定であるとすれば、出力される自励発振成分(V
OSC)の振幅も一定である。そして、比較例の整流回路50は、当該自励発振成分(V
OSC)を受ける。その結果、整流回路50は、閾値電圧(V
TH)を超えるときに、
図4(b)に示すような電流(I
OUT)を出力する。入力される自励発振成分(V
OSC)の振幅が一定であるので、電流(I
OUT)は、自励発振成分(V
OSC)の正のピーク近傍のタイミングで定期的に出力される。
【0048】
一方、実施形態の昇圧回路20は、発電素子10から入力電圧(V
IN)を受ける。この入力電圧(V
IN)は、直流成分(V
DD)を含む。なお、入力電圧(V
IN)は、直流成分(V
DD)に加えて交流成分を含んでもよい。変調回路21は、変調電圧(V
MOD:
図5(a))を整流回路50に出力する。そして、整流回路50は、変調電圧(V
MOD)において閾値電圧(V
TH)よりも大きい電圧成分(V
OUT:
図5(b))を測定装置102に出力する。換言すると、昇圧回路20は、所定の電流(I
OUT:
図5(c))を出力する。
【0049】
ここで、発振回路40は、自励発振成分(VOSC)を発生する。共振回路30は、それ単体では交流成分を出力することがないが、自励発振成分(VOSC)によって励振される。つまり、自励発振成分(VOSC)によって、共振回路30及び発振回路40が一体の回路(変調回路21)として動作するようになり、その結果、変調回路21は変調電圧(VMOD)を出力する。この変調電圧(VMOD)は、結果的に少なくとも3つの成分を含む。つまり、変調電圧(VMOD)は、入力電圧(VIN)に起因する直流成分と、発振回路40が発する交流成分と、共振回路30の共振周波数に起因する成分と、を含む。
【0050】
そして、自励発振成分(V
OSC)の周波数(f
OSC)が共振回路30の共振周波数(f
RES)に比較的近い場合には、変調電圧(V
MOD)は、周波数の差分(|f
OSC-f
RES|)として示される周波数をもったうねりを生じる(
図5(a))。
【0051】
図5(a)に示すように、このうねり成分を伴う変調電圧(V
MOD)の振幅は、時間の経過と共に増減する。例えば、
図5(b)に示すように、所定の閾値電圧(V
TH)を設定したとき、変調電圧(V
MOD)の振幅が閾値電圧(V
TH)を超える期間T1と、変調電圧(V
MOD)の振幅が閾値電圧(V
TH)を超えない期間T2と、が生じる。閾値電圧(V
TH)を超える期間T1において、整流回路50は電圧(V
OUT)を出力する。さらに、
図5(c)に示すように、整流回路50は、電流(I
OUT)を出力する。
【0052】
上述のように、実施形態の整流回路50に提供される変調電圧(VMOD)は、整流回路50に提供される電圧の振幅が比較例のように一定ではなく、うねりに伴う振幅のゆらぎを含む。整流回路50へ提供される電圧の振幅に偏りを持たせることによって、閾値電圧(VTH)を超えるタイミングにおいてより高い電圧を整流回路50に入力する。そうすると、整流回路50は、より多くの電流(IOUT)を出力することができる。その結果、整流回路50から電流(IOUT)が出力される期間T1と出力されない期間T2が生じたとしても、全体として昇圧回路20の出力を電力として評価すると、実施形態の整流回路50に提供される変調電圧(VMOD)は、比較例の整流回路50に提供される自励発振成分(VOSC)よりもより多くの電力を出力することができる。
【0053】
なお、本実施形態では期間T2では電流が出力されないとしたが、閾値(VTH)を調整することにより、この期間T2において、電流が出力されるようにしてもよい。
【0054】
<作用効果>
この昇圧回路20では、変調回路21が入力電圧(VIN)に対して変調成分が重畳された変調電圧(VMOD)を出力する。この変調成分は、発振回路40が発生する自励発振成分(VOSC)に加えて、共振回路30に起因する共振成分(VRES)を含む。この共振成分(VRES)によれば、自励発振成分(VOSC)に振幅を増大させることができ、振幅変調と類似の効果を生じさせることが可能である。変調の結果、振幅が大きくなる期間T1では、より高い電圧が整流回路50に提供される。その結果、整流回路50は、より多くの電流(IOUT)を出力する。従って、全体としてみた場合に、昇圧回路20から出力可能な電力が増加するので、入力電圧(VIN)が低い場合であっても、良好な電力効率を実現できる。
【0055】
また、本実施形態の昇圧回路20は、整流回路50を備えている。整流回路50は、閾値電圧(VTH)を超えた場合に出力を発生する。つまり、整流回路50は、非線形性を有する。この非線形性とは、整流回路50に入力される電圧がゼロから閾値電圧(VTH)を超えるまでは、なんらの出力がなされず、閾値電圧(VTH)を超えた後に入力電圧の大きさに応じて出力が増えることを意味する。そうすると、整流回路50には、閾値電圧(VTH)をわずかに超える一定振幅の電圧を入力するよりも、ある期間は閾値電圧(VTH)を下回ったとしても、別の期間において閾値電圧(VTH)を大きく超えるような電圧を与えるほうが、効率がよい。本実施形態の昇圧回路20は、整流回路50に入力する電圧の振幅を一定とせず、むしろ、整流回路50に入力する電圧の振幅にゆらぎを持たせる。その結果、整流回路50への入力電圧が閾値電圧(VTH)を下回り、出力が得られない期間T2があったとしても、整流回路50への入力電圧が閾値電圧(VTH)を上回り、より大きな出力を得られる期間T1が存在する。その結果、全体として得られる出力電力は、増加する。
【0056】
さらに、
図13に示す比較例のように、昇圧回路120が共振回路30に相当する構成を有しておらず、発電素子10の出力が直接に発振回路40に入力された場合には、発振回路40から出力される電圧の振幅は一定である。発振回路40の出力電圧の振幅が、整流回路50が有する素子の閾値電圧(V
TH)よりも小さい場合には、整流回路50から何らの出力も得られない。しかし、このような回路構成に対して、共振回路30を付加すると、発振回路40から出力される電圧の振幅は、共振回路30と発振回路40との相互作用によって発生する電圧のうねりによって、出力電圧の振幅が大きく増減する。振幅が減少するタイミングでは、閾値電圧(V
TH)によっては整流回路50の閾値電圧(V
TH)を超えることがないので、出力は得られないこともある。その一方、振幅が増加するタイミングでは整流回路50の閾値電圧(V
TH)を超えるので、出力が得られる。つまり、発電素子10、発振回路40、整流回路50だけを備える比較例の構成では、何らの出力が得られない場合でも、発電素子10と発振回路40との間に共振回路30を挟むことにより、限定された期間であったとしても、出力を得ることができる。
【0057】
具体的には、入力電圧が0.3Vに達しない電圧であって、例えば発電回路の出力が0.1V程度の場合であっても出力電流を取り出せる。そのため、LC共振器である共振回路30を備えない昇圧回路120においては、入力電圧が閾値電圧(VTH)に達しない場合は、整流回路50がONとなる期間が存在しないので、整流回路50からの出力は得られない。しかし、本実施形態の回路構成では、発電素子10が発生する電圧が低い場合であっても、ピーク電圧を増大することにより閾値電圧(VTH)を超える期間もある程度確保することができる。この閾値電圧(VTH)を超える期間において、整流器がONとなるので、整流出力が発生する。その結果、出力電流を取り出すことができる。
【0058】
<変形例1>
なお、本発明は、上述した実施形態の態様に限定されない。
【0059】
図6に示すように、変形例1の昇圧回路20Aは、実施形態とは異なる発振回路60を有してもよい。発振回路60は、複数の発振信号を出力する。このような発振回路60として、相補型オシレータや多相出力オシレータを採用してよい。さらに、昇圧回路20Aは、第1整流回路70A(第1整流部)及び第2整流回路70B(第2整流部)を有する。整流回路の数(M)は、発振回路60が出力する信号の数(N)と同じである。なお、整流回路の数(M)は、発振回路60が出力する信号の数(N)より少なくてもよい(M≦N)。
【0060】
図7(a)は、発振回路60の具体的な回路構成の一例である。
図7(b)は、第1整流回路70Aの具体的な回路構成の一例である。
図7(c)は、第2整流回路70Bの具体的な回路構成の一例である。
【0061】
<発振回路>
発振回路60は、入力端として、第1発振入力60IN_1と、第2発振入力60IN_2と、を有する。第1発振入力60IN_1は、電圧(VDD)を受ける。電圧(VDD)は、共振回路30から提供される。第2発振入力60IN_2は、基準電圧(VGND)を受ける。基準電圧(VGND)は、基準電位20Gから提供される。また、発振回路60は、出力端として、第1発振出力60OUT_1と、第2発振出力60OUT_2と、第3発振出力60OUT_3と、第4発振出力60OUT_4と、第5発振出力60OUT_5と、第6発振出力60OUT_6と、を有する。第1発振出力60OUT_1は、第1整流回路70Aに接続されている。第1発振出力60OUT_1は、第1電圧(φ1)を出力する。第2発振出力60OUT_2は、第2整流回路70Bに接続されている。第2発振出力60OUT_2は、第2電圧(φ2)を出力する。第3発振出力60OUT_3は、第2整流回路70Bに接続されている。第3発振出力60OUT_3は、第3電圧(φ3)を出力する。第4発振出力60OUT_4は、第1整流回路70Aに接続されている。第4発振出力60OUT_4は、第4電圧(φ4)を出力する。
【0062】
発振回路60は、第1インダクタ61と、第2インダクタ62と、第3インダクタ63と、第4インダクタ64と、第1MOSトランジスタ65と、第2MOSトランジスタ66と、を有する。
【0063】
第1インダクタ61の一方の端部は、第2インダクタ62と、第1発振入力60IN_1と、第5発振出力60OUT_5と、に接続されている。第1インダクタ61の他方の端部は、第1MOSトランジスタ65のドレインと、第2MOSトランジスタ66のゲートと、第1発振出力60OUT_1と、に接続されている。第2インダクタ62の一方の端部は、第1インダクタ61と、第1発振入力60IN_1と、第5発振出力60OUT_5と、に接続されている。第2インダクタ62の他方の端部は、第1MOSトランジスタ65のゲートと、第2MOSトランジスタ66のドレインと、第2発振出力60OUT_2と、に接続されている。第3インダクタ63の一方の端部は、第1MOSトランジスタ65のソースと、第3発振出力60OUT_3と、に接続されている。第3インダクタ63の他方の端部は、第4インダクタ64と、第2発振入力60IN_2と、第6発振出力60OUT_6と、に接続されている。第4インダクタ64の一方の端部は、第2MOSトランジスタ66のソースと、第4発振出力60OUT_4と、に接続されている。第4インダクタ64の他方の端部は、第3インダクタ63と、第6発振出力60OUT_6と、に接続されている。
【0064】
第1MOSトランジスタ65のドレインは、第1インダクタ61と、第2MOSトランジスタ66のゲートと、第1発振出力60OUT_1と、に接続されている。第1MOSトランジスタ65のソースは、第3インダクタ63と、第3発振出力60OUT_3と、に接続されている。第1MOSトランジスタ65のゲートは、第2インダクタ62と、第2MOSトランジスタ66のドレインと、第2発振出力60OUT_2と、に接続されている。第2MOSトランジスタ66のドレインは、第2インダクタ62と、第1MOSトランジスタ65のゲートと、第2発振出力60OUT_2と、に接続されている。第2MOSトランジスタ66のソースは、第4インダクタ64と、第4発振出力60OUT_4と、に接続されている。第2MOSトランジスタ66のゲートは、第1インダクタ61と、第1MOSトランジスタ65のドレインと、第1発振出力60OUT_1と、に接続されている。
【0065】
<第1整流回路>
第1整流回路70Aは、第1整流入力70AIN_1と、第2整流入力70AIN_2と、第1整流出力70AOUT_1と、を有する。第1整流入力70AIN_1は、発振回路60の第1発振出力60OUT_1に接続されている。第1整流入力70AIN_1は、第1変調電圧(φ1:VMOD_1)を受ける。第2整流入力70AIN_2は、発振回路60の第4発振出力60OUT_4に接続されている。第2整流入力70AIN_2は、電圧(φ4)を受ける。第1整流出力70AOUT_1は、昇圧回路20Aの出力20OUTに接続されている。出力70AOUTは、整流された電圧を出力する。
【0066】
第1整流回路70Aは、MOSトランジスタ71を有する。MOSトランジスタ71のソースは、第1整流入力70AIN_1を介して発振回路60の第1発振出力60OUT_1に接続されている。つまり、MOSトランジスタ71のソースは、第1変調電圧電圧(φ1:VMOD_1)を受ける。MOSトランジスタ71のソースは、さらにMOSトランジスタ71のベースに接続されている。MOSトランジスタ71のゲートは、第2整流入力70AIN_2を介して発振回路60の第4発振出力60OUT_4に接続されている。つまり、MOSトランジスタ71のゲートは、電圧(φ4)を受ける。MOSトランジスタ71のドレインは、出力70AOUTに接続されている。
【0067】
<第2整流回路>
第2整流回路70Bも、第1整流入力70BIN_1と、第2整流入力70BIN_2と、出力70BOUTと、を有する。第1整流入力70BIN_1は、発振回路60の第2発振出力60OUT_2に接続されている。第1整流入力70BIN_1は、第2変調電圧(φ2:VMOD_2)を受ける。第2整流入力70BIN_2は、発振回路60の第3発振出力60OUT_3に接続されている。第2整流入力70BIN_2は、電圧(φ3)を受ける。出力70BOUTは、昇圧回路20Aの出力20OUTに接続されている。出力70BOUTは、整流された電圧を出力する。
【0068】
第2整流回路70Bも、MOSトランジスタ72を有する。MOSトランジスタ72のソースは、第1整流入力70BIN_1を介して発振回路60の第2発振出力60OUT_2に接続されている。つまり、MOSトランジスタ72のソースは、電圧(φ2)を受ける。MOSトランジスタ72のソースは、さらにMOSトランジスタ72のベースに接続されている。MOSトランジスタ72のゲートは、第2整流入力70BIN_2を介して発振回路60の第3発振出力60OUT_3に接続されている。つまり、MOSトランジスタ72のゲートは、電圧(φ3)を受ける。MOSトランジスタ72のドレインは、出力70BOUTに接続されている。
【0069】
<動作>
例えば、発振回路60の第1発振出力60
OUT_1は、
図8(a)に示す第1変調電圧電圧(V
MOD_1)を出力する。さらに、発振回路60の第2発振出力60
OUT_2は、
図8(b)に示す第2変調電圧電圧(V
MOD_2)を出力する。第1変調電圧電圧(V
MOD_1)及び第2変調電圧電圧(V
MOD_2)を参照すると、第1発振出力60
OUT_1から提供される第1変調電圧電圧(V
MOD_1)の位相は、第2発振出力60
OUT_2から提供される第2変調電圧電圧(V
MOD_2)の位相に対して180度だけずれている。第1整流回路70Aは、第1発振出力60
OUT_1から電圧を受ける。そして、整流した電圧を昇圧回路20Aの出力に提供する。同様に、第2整流回路70Bは、第2発振出力60
OUT_2から電圧を受ける。そして、昇圧回路20Aは、
図9(a)に示す電圧(V
OUT)を出力する。そうすると、昇圧回路20Aは、
図9(b)に示すように、実施形態の昇圧回路20に比べて2倍の電流(I
OUT)を出力することができる。
【0070】
なお、発振回路の出力は、1つ又は2つに限定されず、複数出力型の発振回路を採用してもよい。例えば、発振回路は、4つの変調電圧を出力してもよい。この場合には、変調電圧の位相は互いに90度ずれている。
【0071】
<変形例2>
図10に示すように、変形例2の電源装置1Bにおいて、昇圧回路20Bは、チャージポンプ80をさらに備えてもよい。チャージポンプ80は、整流回路50及び出力20
OUTに接続されている。さらに、昇圧回路20は、キャパシタ81を備えてもよい。キャパシタ81の一方の端部は、チャージポンプ80と出力20
OUTとを接続する線路に接続されている。キャパシタ81の他方の端部は、基準電位20Gに接続されている。
【0072】
<変形例3>
なお、
図4(a)に示す変調電圧の例示は、発振周波数(f
OSC)と共振周波数(f
RES)との周波数差が小さい場合であった。発振周波数(f
OSC)と共振周波数(f
RES)との周波数差は、実質的にうねり成分を生じないような比較的大きい差分であってもよい。例えば、変調電圧(V
MOD)は、
図11に示すような波形であってもよい。
【0073】
上述した昇圧回路20は、発電素子10からの入力電圧を整流回路50に入力する際に、その振幅を、一定期間であっても増大させることができればよい。このような機能を奏する回路構成を、発振回路40と組み合わせて適宜採用してよい。例えば、共振回路30の代わりに別の発振回路の出力を用いて、発振回路40の出力を変調してもよい。さらに、変調方式は、振幅変調や他の変調方式を採用してもよい。また、変調方式として、加算、減算、乗算、除算などの各種演算動作を行う素子を採用してもよいし、これらを組み合わせたものを採用してもよい。
【0074】
<実施例>
昇圧回路の出力特性を回路シミュレーションによって確認した。実施例の昇圧回路は、
図3に示す実施形態の昇圧回路20と同じ回路構成とした。一方、
図13に示す比較例の昇圧回路120は、発振回路40及び整流回路50を有する。これらは、実施形態の昇圧回路20の発振回路40及び整流回路50と同じである。一方、比較例の昇圧回路120は、共振回路30を有しない。具体的には、共振回路30を構成する第1インダクタ31、第2インダクタ32及び第1キャパシタ33を有しない。
【0075】
図12(a)は、出力電圧(V
OUT)と、出力電流(I
OUT)と、の関係を示す。横軸は、出力電圧(V
OUT)を示す。縦軸は、出力電流(I
OUT)を示す。グラフG12aは、実施例の昇圧回路の特性を示す。グラフG12bは、比較例の昇圧回路120の特性を示す。
【0076】
例えば、
図12(a)によれば、出力電圧(V
OUT)が0.8Vであるとき、比較例の昇圧回路120の出力電流(I
OUT)は、0.37mAであった。これに対して、実施例の昇圧回路の出力電流(I
OUT)は、1.5mAであった。つまり、実施例の昇圧回路20の出力電流(I
OUT)は、比較例における昇圧回路120の出力電流(I
OUT)のおよそ4倍に増加することが確認できた。また、別の見方をすると、
図12(a)によれば、1mAの出力電流(I
OUT)を得る場合、比較例における昇圧回路120の出力電圧(V
OUT)は、0.5Vであった。これに対して、実施例の昇圧回路の出力電圧(V
OUT)は、1.0Vであった。つまり、実施例の昇圧回路の出力電圧(V
OUT)は、比較例における昇圧回路120の出力電圧(V
OUT)のおよそ2倍に増加することが確認できた。
【0077】
図12(b)は、出力電圧(V
OUT)と、電力効率(η)と、の関係を示す。横軸は、出力電圧(V
OUT)を示す。縦軸は、電力効率(η)を示す。電力効率(η)の定義は、式(1)のとおりである。
η[%]=P
OUT/P
IN=(V
OUT×I
OUT)/(V
IN×I
IN)…(1)
グラフG12cは、実施例の昇圧回路の特性を示す。グラフG12dは、比較例の昇圧回路120の特性を示す。実施例の昇圧回路の電力効率(η)も比較例の昇圧回路120の電力効率(η)から増加する。
図12(b)によれば、出力電圧(V
OUT)が0.8Vであるとき、比較例の昇圧回路120の電力効率(η)は、5%程度であった。これに対して、実施例の昇圧回路の電力効率(η)は、26%程度であった。つまり、実施例の昇圧回路20の電力効率(η)は、比較例の昇圧回路120の電力効率(η)のおよそ4倍以上に増加することが確認できた。
【0078】
なお、上述した共振回路30を構成する第1インダクタ31及び第2インダクタ32は、ボンディングワイヤや回路素子の寄生インダクタンスであってもよい。また、共振回路30を構成する第1キャパシタ33は、ボンディングワイヤや回路素子の寄生容量であってもよい。
【0079】
また、発電素子10は、直流電圧を出力するものに限定されない。例えば、発電素子として、振動発電素子のように交流電圧を出力するものを採用してよい。このような発電素子を採用する場合には、発電素子から出力された交流電圧を直流電圧に変換する素子を利用することとしてよい。つまり、発電素子から出力された交流電圧を直流電圧に変換した後に、上記の昇圧回路に入力させる。
【符号の説明】
【0080】
1…電源装置、10…発電素子、20,20A,20B…昇圧回路、20G…基準電位、21…変調回路、30…共振回路(重畳成分付与回路)、40,60…発振回路(自励発振回路)、50…整流回路、70A…第1整流回路(第1整流部)、70B…第2整流回路(第2整流部)、80…チャージポンプ、100…センサ装置、102…測定装置、200…対象物。