(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】タンパク性ヘテロ二量体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230928BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230928BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230928BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230928BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230928BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230928BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230928BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230928BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230928BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230928BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230928BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230928BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230928BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/24
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/54
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 K
C12P21/02 C
A61P35/00
A61K38/20
A61K47/68
A61K39/395 W
(21)【出願番号】P 2020516876
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2018107099
(87)【国際公開番号】W WO2019057180
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/103199
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517179262
【氏名又は名称】ディンフー バイオターゲット カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュ ティン
(72)【発明者】
【氏名】ルアン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ペン ジェンジェン
(72)【発明者】
【氏名】フー シーロン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/100788(WO,A1)
【文献】特表2017-503498(JP,A)
【文献】特表2015-531591(JP,A)
【文献】国際公開第2017/101828(WO,A1)
【文献】特表2015-530983(JP,A)
【文献】特開2015-180226(JP,A)
【文献】国際公開第2012/045334(WO,A1)
【文献】特開2012-250944(JP,A)
【文献】特開2017-052780(JP,A)
【文献】Davis J. H. et al.,SEEDbodies: fusion proteins based on strand-exchange engineered domain (SEED) CH3 heterodimers in an Fc analogue platform for asymmetric binders or immunofusions and bispecific antibodies.,Protein Engineering, Design & Selection,2010年,vol. 23, no. 4,195-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の単量体成員と、該第1の単量体成員とは異なる第2の単量体成員とを含むタンパク性ヘテロ二量体であって、
前記第1の単量体成員が第1のFcサブユニット
からなり、
前記第2の単量体成員が第2のFcサブユニットを含み、
前記第1の単量体成員が前記第2の単量体成員と会合して、前記第1のFcサブユニットと前記第2のFcサブユニットとの複合体形成により前記ヘテロ二量体を形成し、
前記第1のFcサブユニット及び第2のFcサブユニットは、IgG分子に由来し、
前記第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み、
前記第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み、
前記第1の修飾及び前記第2の修飾は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される下記位置のアミノ酸置換であることを特徴とし、
前記第1の修飾は、T366W及びK409Aであり、及び
前記第2の修飾は、T366S、L368G、Y407A及びF405Kであり、
前記タンパク性ヘテロ二量体は
、前記第2のFcサブユニットに融合した1個のみのインターロイキンを更に含み、
前記インターロイキンは、IL10二量体であり、
前記IL10二量体は、2個のIL10を含み、
前記タンパク性ヘテロ二量体は、腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの抗体重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域も含ま
ず、
前記第2の単量体成員において、前記IL10二量体は前記第2のFcサブユニットのカルボキシ末端のアミノ酸に融合している、
タンパク性ヘテロ二量体。
【請求項2】
前記IgGがヒトIgG1である、請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【請求項3】
前記第1の単量体成員のアミノ酸配列は配列番号17に示されるものであり、前記第2の単量体成員のアミノ酸配列は配列番号55に示されるものである、請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【請求項4】
請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体をコードする単離された核酸。
【請求項5】
請求項
4に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項6】
請求項
4に記載の単離された核酸又は請求項
5に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項7】
タンパク質混合物であって、
1)請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体と、
2)請求項1に記載の前記第1の単量体成員の2個の同一のコピーによって形成される第1のホモ二量体と、
3)請求項1に記載の前記第2の単量体成員の2個の同一のコピーによって形成される第2のホモ二量体と、
を含み、
前記タンパク質混合物中の前記タンパク性ヘテロ二量体のパーセンテージが少なくとも50%である、タンパク質混合物。
【請求項8】
請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体又は請求項
7に記載のタンパク質混合物と、任意に薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍若しくは腫瘍細胞の成長を阻害するための及び/又は治療を必要とする被験体において癌を治療するための薬剤及び/又はキットの製造における、請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体又は請求項
7に記載のタンパク質混合物の使用。
【請求項10】
(i)タンパク性ヘテロ二量体の発現を達成する条件下で請求項
6に記載の宿主細胞を培養することと、
(ii)発現されたタンパク性ヘテロ二量体又は該タンパク性ヘテロ二量体を含むタンパク質混合物を採取すること
とを含む、請求項1に記載のタンパク性ヘテロ二量体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
腫瘍抗原に対する免疫応答は、検出することができるが(非特許文献1)、疾患を引き起こす悪性細胞は、多くの場合、拒絶をもたらす免疫応答を誘発することができない。研究により、サイトカイン及び共刺激分子等の免疫調節分子を導入することによって腫瘍細胞の免疫原性を高めることが可能であることが実証されている。しかしながら、導入した免疫調節分子の発現及び安定性は、十分というには程遠いものであることが多い。免疫系の細胞によって産生されるサイトカイン等の免疫調節物質は、適応免疫応答の細胞を直接的又は間接的に活性化し、防御抗腫瘍免疫の誘発において重要な役割を果たすことができる。自然免疫系は、細菌産物、又はIFN-α、TNF-α、及びインターロイキン等の炎症性サイトカインの放出をもたらす「危険」シグナルによって引き起こされ得る。
【0002】
多数の研究から、免疫調節物質(例えば、インターロイキン)が動物モデル及び癌患者の両方において抗腫瘍効果の発揮に有用であり得ることが示されている。しかしながら、インターロイキンの体内での血清半減期は、比較的短い。例えば、in vitroバイオアッセイ又は敗血症性ショックモデル系における有効性(非特許文献2を参照されたい)によって測定されたマウスにおけるIL10の半減期は、約2時間~6時間である。インターロイキン活性の喪失は、腎クリアランス、タンパク質分解、血流中での単量体化を含む、幾つか要因による可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Disis et al.(1997)J.Clin.Oncol.15:3363-3367
【文献】Smith et al.,Cellular Immunology173:207-214(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、工業規模で比較的高い収率で産生され、細胞及び/又は組織の過剰増殖と関連した障害又は疾患、例えば、様々な新生物、種々のタイプの癌及び/又は腫瘍の治療に有用となるような比較的長い半減期をin vivoで有し得る、長期間作用する免疫調節物質が相当に必要とされている。さらに、斯かる生成物の収率は、複雑な精製プロセスを回避するため、及び/又は望ましくない不純物に関連するリスクを減らすために十分に高くなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、このような必要性に対応するものであり、関連した利点ももたらす。本開示は、腫瘍成長の阻害に有用なタンパク性ヘテロ二量体、並びにタンパク性ヘテロ二量体を含む組成物、薬剤及び/又はキットを包含する。さらに、本開示は、上記タンパク性ヘテロ二量体を含み、望ましくない不純物(望ましくないタンパク質ホモ二量体又はタンパク質凝集体等)を、(仮にあったとしても)ほとんど含まないタンパク質混合物を提供する。また、本開示は、タンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物を作製する方法と並んで、癌の治療を含むがこれに限定されない腫瘍成長の阻害におけるタンパク性ヘテロ二量体及び/又はタンパク質混合物の薬学的使用も提供する。
【0006】
1つの態様において、本開示は、
第1の単量体成員と、該第1の単量体成員とは異なる第2の単量体成員とを含むタンパク性ヘテロ二量体であって、
前記第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットを含み、
前記第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットを含み、
前記第1の単量体成員は、前記第2の単量体成員と会合して、前記第1のFcサブユニットと前記第2のFcサブユニットとの複合体形成により前記ヘテロ二量体を形成し、
前記タンパク性ヘテロ二量体は、前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキンを更に含み、
前記タンパク性ヘテロ二量体は、腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの抗体重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域も含まない、
タンパク性ヘテロ二量体を提供する。
【0007】
本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキンは、前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に融合している。
【0008】
本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、2個以上のインターロイキンを含み、該2個以上のインターロイキンは、1個以上のインターロイキン二量体を形成し、各インターロイキン二量体は、互いに融合した2個のインターロイキンを含む。
【0009】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、IL10である。
【0010】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキン二量体は、少なくとも1個のIL10二量体を含み、該IL10二量体は、2個のIL10を含む。
【0011】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットは、IgG分子に由来し、前記IgGは、ヒトIgG1である。
【0012】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1のFcサブユニットは、前記第2のFcサブユニットと異なり、前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットは、前記第1のFcサブユニットと前記第2のFcサブユニットとの間のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む。
【0013】
本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み、前記第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み、前記第1の修飾及び前記第2の修飾は、
1)第1の修飾:Y349及びT366、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
2)第1の修飾:Y349、T366、及びF405、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、及びY407;
3)第1の修飾:Y349、T366、及びK409、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
4)第1の修飾:Y349、T366、F405、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びQ347;
5)第1の修飾:Y349、T366、F405、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、K360、及びQ347;
6)第1の修飾:Y349、T366、K409、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、及びQ347;
7)第1の修飾:Y349、T366、K409、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、K360、及びQ347;
8)第1の修飾:T366、K409、及びK392、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、D399、及びF405;
9)第1の修飾:T366及びK409、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びF405;
10)第1の修飾:T366、K409、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
11)第1の修飾:T366、K409、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
12)第1の修飾:T366及びF405、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びK409;
13)第1の修飾:T366、F405、及びD399、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びK392;
14)第1の修飾:T366、F405、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357;
15)第1の修飾:T366、F405、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357;
の群のいずれかから選択される位置群にアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0014】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に融合している。
【0015】
本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも2個は、互いに融合してインターロイキン二量体を形成し、該インターロイキン二量体は、前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に、更に融合している。
【0016】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第2の単量体成員における、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも2個は、互いに融合してインターロイキン二量体を形成し、該インターロイキン二量体は、前記第2のFcサブユニットのカルボキシル末端アミノ酸に更に融合している。
【0017】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まない。
【0018】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1の単量体成員は、前記第1のFcサブユニットからなる。
【0019】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、前記第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に融合している。
【0020】
本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第1の単量体成員における、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも2個は、互いに融合してインターロイキン二量体を形成し、該インターロイキン二量体は、前記第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に融合している。
【0021】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第2の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まない。
【0022】
本開示によるいずれか一つのタンパク性ヘテロ二量体の幾つかの実施の形態において、前記第2の単量体成員は、前記第2のFcサブユニットからなる。
【0023】
別の態様において、本開示は、本開示のいずれか1つによるタンパク性ヘテロ二量体をコードする単離された核酸を提供する。
【0024】
別の態様において、本開示は、本開示による単離された核酸を含むベクターを提供する。
【0025】
別の態様において、本開示は、本開示による単離された核酸又は本開示によるベクターを含む、単離された宿主細胞を提供する。
【0026】
別の態様において、本開示は、タンパク質混合物であって、
1)本開示のいずれか1つによるタンパク性ヘテロ二量体と、
2)本開示のいずれか1つによる前記第1の単量体成員の2個の同一のコピーによって形成される第1のホモ二量体と、
3)本開示のいずれか1つによる前記第2の単量体成員の2個の同一のコピーによって形成される第2のホモ二量体と、
を含み、
前記タンパク質混合物中の前記タンパク性ヘテロ二量体のパーセンテージが、少なくとも50%である、タンパク質混合物を提供する。
【0027】
別の態様において、本開示は、本開示のいずれか1つによるタンパク性ヘテロ二量体又は本開示によるタンパク質混合物と、任意に薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
別の態様において、本開示は、腫瘍若しくは腫瘍細胞の成長を阻害するための及び/又は治療を必要とする被験体において癌を治療するための薬剤及び/又はキットの製造における、本開示のいずれか1つによるタンパク性ヘテロ二量体又は本開示によるタンパク質混合物の使用を提供する。
【0029】
別の態様において、本開示は、
(i)タンパク性ヘテロ二量体の発現を達成する条件下で本開示の宿主細胞を培養することと、
(ii)発現されたタンパク性ヘテロ二量体又は該タンパク性ヘテロ二量体を含むタンパク質混合物を採取すること
とを含む、本開示のいずれか1つによるタンパク性ヘテロ二量体の作製方法を提供する。
【0030】
本開示の付加的な態様及び利点は、本開示の例示的な実施の形態のみを示し、説明する以下の発明を実施するための形態から当業者に容易に明らかとなる。認識されるように、本開示において、他の種々の実施の形態が可能であり、その幾つかの細部を全て本開示から逸脱することのない様々な明白な点で変更することが可能である。したがって、図面及び本明細書は、限定的なものではなく、本質的に例示的なものであるとみなされる。
【0031】
参照による援用
本明細書に記載の全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的に及び個々に引用することにより本明細書の一部をなすことが示された場合と同じ程度において引用することにより本明細書の一部をなす。
【0032】
本開示の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本開示の特徴及び利点は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態及び添付の図面を参照することによってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】本出願によるタンパク性ヘテロ二量体の例を示す図である。
【
図1B】本出願によるタンパク性ヘテロ二量体の例を示す図である。
【
図1C】本出願によるタンパク性ヘテロ二量体の例を示す図である。
【
図1D】本出願によるタンパク性ヘテロ二量体の例を示す図である。
【
図2A】SDS-PAGE分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図2B】SDS-PAGE分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図2C】SDS-PAGE分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図2D】SEC-HPLC分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図2E】SEC-HPLC分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図2F】SEC-HPLC分析によって示される本開示のタンパク性ヘテロ二量体の精製結果を示す図である。
【
図3】ヒトIL10R1タンパク質に対する結合親和性を示す図である(ELISA)。
【
図5A】本開示のタンパク性ヘテロ二量体の腫瘍制御の効果を示す図である。
【
図5B】本開示のタンパク性ヘテロ二量体の腫瘍制御の効果を示す図である。
【
図6A】腫瘍制御における高濃度のタンパク性ヘテロ二量体と低濃度のタンパク性ヘテロ二量体との比較を示す図である。
【
図6B】腫瘍制御における高濃度のタンパク性ヘテロ二量体と低濃度のタンパク性ヘテロ二量体との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施形態を説明する前に、斯かる実施形態が例示としてのみ提示され、本明細書に記載される本開示の実施形態の様々な代替形態を本開示の実施において用いることができることを理解されたい。ここで、本開示から逸脱することなく多数の変更、変化、及び置換が当業者に想起される。
【0035】
他に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができ、好適な方法、及び材料を下記に説明する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は、一例にすぎず、限定を意図するものではない。ここで、本開示から逸脱することなく多数の変更、変化、及び置換が当業者に想起される。
【0036】
本明細書で使用される場合、文脈上他に明らかに指示されない限り、数量を特定していない単数形(The singular form”a,””an”and”the,”)は、概して、複数の指示対象を含む。
【0037】
「タンパク性」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ポリペプチド若しくはタンパク質の、それらに関連する、それらに類似した、又はそれらである物質若しくは分子を指す。例えば、本開示のタンパク性ヘテロ二量体は、2個以上のポリペプチドを含むヘテロ二量体タンパク質又はヘテロ二量体であり得る。
【0038】
「ヘテロ二量体」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、2個の異なる成員から構成される分子(例えば、タンパク性分子)を指す。ヘテロ二量体の2個の成員は、構造、機能、活性、及び/又は組成が異なっていてもよい。例えば、2個の異なる成員は、これらのポリペプチドを形成するアミノ酸残基の順序、数、又は種類が異なるポリペプチドを含み得る。ヘテロ二量体の2個の異なる成員は、各々独立して1個、2個、又はそれ以上の単位、ポリペプチド鎖、若しくは部分を含み得る。
【0039】
「標的化部分」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、標的分子、細胞、粒子、組織、又は凝集体に特異的、選択的、又は優先的に結合する分子、複合体、又は凝集体を指す。例えば、標的化部分は、抗体、抗原結合抗体フラグメント、二重特異性抗体、又は他の抗体ベースの分子若しくは化合物であり得る。標的化部分の他の例として、アプタマー、アビマー(avimers)、受容体結合リガンド、核酸、ビオチン-アビジン結合対、結合ペプチド、又はタンパク質等を挙げることができるが、これらに限定されない。「標的化部分」及び「結合部分」との用語は、本明細書で区別なく使用される。
【0040】
「腫瘍抗原」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、宿主において免疫応答を引き起こす能力を有し得る、腫瘍細胞において又は腫瘍細胞によって産生される抗原性物質を指す。例えば、腫瘍抗原は、腫瘍細胞の一部を構成し、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を誘導することが可能なタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又はそのフラグメントであり得る。腫瘍抗原ペプチドは、腫瘍細胞において腫瘍抗原の分解の結果として生成するペプチドである場合もあり、HLA分子との結合によって細胞表面上で発現される際に腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を誘導又は活性化することができる。幾つかの実施形態において、「腫瘍抗原」との用語は、癌細胞上で排他的若しくは優先的若しくは差次的に発現され及び/又は癌細胞と会合して見られ、それにより、癌に優先的若しくは特異的な標的をもたらす生体分子(例えば、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質等)を指す場合もある。例えば、優先的発現は、生物内の任意の他の細胞と比較した優先的発現又は生物の特定の領域内での(例えば、特定の器官内又は組織内での)優先的発現であり得る。
【0041】
「腫瘍抗原エピトープ」及び「腫瘍抗原決定基」との用語は、本明細書で区別なく使用され、概して、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を誘導する腫瘍抗原中に存在するアミノ酸配列の部位を指す。
【0042】
「発現収率」との用語は、本明細書でタンパク性ヘテロ二量体との関連で使用される場合、概して、発現時に、例えば、宿主細胞によって発現される場合に機能的形態で産生されるタンパク性ヘテロ二量体の量を指す。
【0043】
「二量体化配列」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、二量体を形成するか又は二量体化を受けることが可能なアミノ酸配列を指す。幾つかの実施形態において、二量体は、2個の異なる成員によって形成されるヘテロ二量体である。場合によっては、ヘテロ二量体の2個の異なる成員は、異なる二量体化配列を含み得る。
【0044】
「ヘテロ二量体化」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、複合体形成、会合、又は凝集等によって、異なる2個の成員間の共有結合の形成を伴い又は伴わず、異なる2個の成員(例えば、2個の異なるポリペプチド)間でヘテロ二量体を形成するプロセスを指す。
【0045】
「共有結合」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、電子の共有によって原子間に形成される化学結合を指す。例えば、共有結合は、極性であっても又は無極性であってもよい。幾つかの実施形態において、共有結合は、ジスルフィド結合である。
【0046】
「非共有対親和性」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、非共有相互作用、例えば、イオン対、水素結合、双極子間相互作用、電荷移動相互作用、π-π相互作用、カチオン-π電子相互作用、ファンデルワールス相互作用、及び分散相互作用、疎水性(親油性)相互作用、複合体形成(例えば、遷移金属カチオンの複合体形成)、又はこれらの相互作用の組合せによって互いに結合することが可能な二量体化配列又はヘテロ二量体化配列を指す。
【0047】
「リンカー」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、2個のポリペプチド配列を接続又は連結する、例えば、2個のポリペプチドのドメインを連結する合成アミノ酸配列を指す。リンカーは、2個のアミノ酸配列をペプチド結合によって接続することができる。幾つかの実施形態において、本開示のリンカーは、生物活性部分を線状配列中の第2の部分に接続する。
【0048】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」との用語は、任意の長さのアミノ酸の重合体を指すように、本明細書で区別なく使用される。重合体は、線状であっても又は分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。この用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識化構成要素とのコンジュゲーション等の任意の他の操作によって修飾されたアミノ酸重合体も包含する。この用語は、1個以上のアミノ酸残基が対応する自然発生アミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸重合体、及び自然発生アミノ酸重合体に当てはまる場合もある。この用語は、ポリペプチドを構成するアミノ酸を接合する従来のペプチド結合の変形を含む場合もある。例えば、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、α炭素がペプチド結合によって連結したアミノ酸の鎖であり得る。したがって、鎖の一方の末端(アミノ末端)の末端アミノ酸は、遊離アミノ基を有し、鎖の他方の末端(カルボキシ末端)の末端アミノ酸は、遊離カルボキシル基を有し得る。本明細書で使用される場合、「アミノ末端」との用語(N末端と略される)は、概して、ペプチドのアミノ末端のアミノ酸上の遊離αアミノ基又はペプチド内の任意の他の位置のアミノ酸のαアミノ基(ペプチド結合に関与する場合は、アミノ基)を指す。同様に、「カルボキシ末端」との用語は、概して、ペプチドのカルボキシ末端上の遊離カルボキシル基又はペプチド内の任意の他の位置のアミノ酸のカルボキシル基を指す。ペプチドは、アミド結合とは対照的に、エーテルによって接合したアミノ酸等のペプチド模倣物を含むが、これに限定されない本質的に任意のポリアミノ酸を含む場合もある。
【0049】
「アミノ酸」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、D若しくはL光学異性体又はその両方、アミノ酸類似体、及びペプチド模倣物を含むが、これらに限定されない天然及び/若しくは非天然、又は合成アミノ酸を指す。標準的な1文字コード又は3文字コードがアミノ酸を指定するために使用される。
【0050】
「天然Lアミノ酸」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、グリシン(G)、プロリン(P)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、システイン(C)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、セリン(S)、及びトレオニン(T)のL光学異性体形態を指す。
【0051】
「非自然発生」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、野生型又は自然発生配列(例えば、被験体内に見られるもの)に対応するものがない、それと相補的でない、又はそれと高度の相同性を有しないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を指す。例えば、非自然発生ポリペプチド又はフラグメントは、適切にアラインメントした場合に天然の配列と比較して、99%、98%、95%、90%、80%、70%、60%、50%未満の、又は更に低いアミノ酸配列の同一性を有し得る。代替的に、非自然発生ポリペプチド又はフラグメントは、適切にアラインメントした場合に天然の配列と比較して、99%、98%、95%、90%、80%、70%、60%、50%超の、又は更に高いアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0052】
「親水性」及び「疎水性」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、物質が水に対して有する親和性の程度を指す。親水性物質は、水に対して強い親和性を有し、水に溶解する、水と混ざる又は水にぬれる傾向があるが、疎水性物質は、水に対する親和性を実質的に欠き、水をはじき、水を吸収しない傾向があり、水に溶解しない又は水と混ざらない又は水にぬれない傾向がある。アミノ酸は、それらの疎水性に基づいて特性化することができる。多数の尺度が開発されている。一例は、Levitt,M,et al.,J Mol Biol(1976)104:59によって開発された尺度であり、Hopp,TP,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A (1981)78:3824に挙げられている。「親水性アミノ酸」の例は、アルギニン、リシン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、及びグルタミンである。親水性アミノ酸アスパラギン酸、グルタミン酸、及びセリン、及びグリシンが特に興味を持たれている。「疎水性アミノ酸」の例は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、及びバリンである。
【0053】
「フラグメント」との用語は、タンパク性分子(例えば、ポリペプチド又はタンパク質)との関連で使用される場合、概して、治療活性及び/又は生物活性の一部を保持していても、又は保持していなくてもよい未変性生物活性タンパク質の切断型を指す。
【0054】
「変異体」との用語は、タンパク性分子(例えば、ポリペプチド又はタンパク質)との関連で使用される場合、概して、生物活性タンパク質の治療活性及び/又は生物活性の少なくともの一部を保持する、未変性生物活性タンパク質に対して配列相同性を有するタンパク性分子を指す。例えば、変異体タンパク質は、参照生物活性タンパク質と比較して少なくとも、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有し得る。幾つかの実施形態において、「変異体」は、例えば、部位特異的突然変異誘発、コード遺伝子の合成、挿入によって意図的に修飾されたタンパク質、又は突然変異によって偶発的に修飾されたタンパク質を含み得る。
【0055】
「コンジュゲートした」、「連結した」、「融合した」、及び「融合」との用語は、本明細書で区別なく使用され、概して、例えば、化学的結合又は組み換え手段を含む手段による2個以上の化学元素、配列又は構成要素の接合を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写が達成される場合にコード配列に操作可能に連結する。概して、「操作可能に連結する」は、連結しているDNA配列が近接し、リーディングフェーズ(reading phase)内又はインフレームであることを意味する。「インフレーム融合」は、元のORFの正しいリーディングフレームを維持するような、連続したより長いORFを形成する2個以上のオープンリーディングフレーム(ORF)の接合を指す。このため、得られる「融合ポリペプチド」は、元のORFによってコードされるポリペプチドに相当する2個以上のフラグメント(このセグメントは、通常は、本質的にそのように接合しない)を含有する単一タンパク質である。「融合部位」は、2個以上のフラグメントが互いに接合した配列を指す。場合によっては、融合部位は、接合している2個以上のフラグメント中の配列と同一の配列であり得る。場合によっては、融合部位は、接合している2個以上のフラグメントのいずれの配列とも同一でないギャップセグメントを更に含み得る。
【0056】
ポリペプチドとの関連で、「線状配列」又は「配列」は、配列中の互いに隣り合う残基がポリペプチドの一次構造において近接するアミノ末端からカルボキシル末端の方向でのポリペプチド中のアミノ酸の順序である。「部分配列」は、一方又は両方の方向に付加的な残基を含むことが知られるポリペプチドの一部を形成する線状配列である。
【0057】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」との用語は、本明細書で区別なく使用され、概して、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はその類似体の任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し、既知又は未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子フラグメントのコード又は非コード領域、連鎖分析によって規定される遺伝子座(単数又は複数)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体等の修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、重合体の会合の前に行われてもよく又はその後に行われてもよい。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド構成要素が割り込んでいてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に標識化構成要素とのコンジュゲーション等によって更に修飾することができる。
【0058】
「遺伝子」及び「遺伝子フラグメント」との用語は、本明細書で区別なく使用され、概して、転写及び翻訳された後に特定のタンパク質をコードすることが可能な少なくとも1個のオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。遺伝子又は遺伝子フラグメントは、ポリヌクレオチドがコード領域全体又はそのセグメントに広がり得る少なくとも1個のオープンリーディングフレームを含有する限りにおいて、ゲノムDNAであっても又はcDNAであってもよい。「融合遺伝子」は、互いに連結した少なくとも2個の異種ポリヌクレオチドから構成される遺伝子である。
【0059】
「抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされる1個以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子として、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を挙げることができる。本明細書で使用される場合、軽鎖は、κ又はλのいずれかに分類することができる。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεに分類することができ、これは、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ規定する。抗体は、本開示で使用される場合、四量体を含む構造単位を有し得る。各々の四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一の対から構成され、各々の対は、1個の「軽」鎖(約25kD)及び1個の「重」鎖(約50kD~70kD)を有し得る。各々の鎖のN末端は、主として抗原認識に関与する約100~110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定し得る。「軽鎖可変領域」(VL)及び「重鎖可変領域」(VH)との用語は、本明細書で使用される場合、概して、軽鎖及び重鎖のそれぞれのこれらの領域を指す。抗体は、無処置の免疫グロブリン、又は様々なペプチダーゼでの消化によって産生される若しくはデノボ発現される多数のよく特性化されたフラグメントとして存在することができる。このため、例えば、ペプシンによって抗体をヒンジ領域中のジスルフィド連結の下で消化し、F(ab)’2(それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に接合した軽鎖であるFabの二量体)を作製することができる。F(ab)’2は、ヒンジ領域中のジスルフィド連結を切断する穏和な条件化で還元され、それにより(Fab’)2の二量体がFab’単量体に変換され得る。Fab’単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な説明については、Fundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照されたい)。様々な抗体フラグメントが無傷抗体の消化に関して規定されているが、このようなFab’フラグメントが化学的に、又は組み換えDNA法を利用することによってデノボ合成され得ることが当業者に理解される。このため、抗体との用語は、本明細書で使用される場合、Fab’2、IgG、IgM、IgA、IgE、scFv、dAb、ナノボディ、ユニボディ、及びダイアボディを含むが、これらに限定されない、全抗体の修飾によって作製されるか、又は組み換えDNA法を用いてデノボ合成される抗体フラグメントも含み得る。幾つかの実施形態において、抗体として、Fab’2、IgG、IgM、IgA、IgE、及び一本鎖抗体、例えば、連続したポリペプチドを形成するように可変重鎖及び可変軽鎖が(直接的に又はペプチドリンカーを介して)互いに接合した一本鎖Fv(scFv)抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
「抗原結合部位」又は「結合部分」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、抗原結合に関与する抗体の一部を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖及び/又は軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成され得る。重鎖及び軽鎖のV領域内の3個の高い多様性を有するストレッチは、「フレームワーク領域」すなわち「FR」として知られるより保存された隣接ストレッチ間に介在する「超可変領域」と称される。このため、「FR」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、免疫グロブリンの超可変領域間に隣接して自然に見られるアミノ酸配列を指す。抗体分子には、軽鎖の3個の超可変領域及び重鎖の3個の超可変領域が互いに関連して3次元空間に配置され、抗原結合「表面」を形成する。この表面は、標的抗原の認識及び結合を媒介し得る。重鎖及び軽鎖の各々の3個の超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」と称され、例えば、Kabat et al.Sequences of proteins of immunological interest,4th ed.U.S.Dept.Health and Human Services,Public Health Services,Bethesda,Md.(1987)によって特性化される。
【0061】
「宿主細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、対象のプラスミド若しくはベクターのレシピエントである可能性があるか、又はそれらのレシピエントとされていた、本開示のポリヌクレオチドを含むか、又は本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)を発現する個々の細胞、細胞株、又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫を含み得る。子孫は、天然の、偶発的な、又は意図的な突然変異のために(形態又はDNA相補体全体のゲノムが)元の親細胞に対して必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本開示のベクターをin vitroでトランスフェクトした細胞が含まれ得る。宿主細胞は、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli))、酵母細胞、又は他の真核細胞、例えば、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞、若しくは骨髄腫細胞であり得る。幾つかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。幾つかの実施形態において、哺乳動物細胞は、HEK293細胞である。
【0062】
「ベクター」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、挿入された核酸分子を宿主細胞内及び/又は宿主細胞間に移入する、適切な宿主において自己複製することが可能な核酸分子を指す。この用語は、主として細胞へのDNA又はRNAの挿入のために機能するベクター、主としてDNA又はRNAの複製のために機能するベクターの複製物、及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを含み得る。2個以上の上記の機能をもたらすベクターも含まれる。「発現ベクター」は、適切な宿主細胞に導入した場合に、ポリペプチド(複数の場合もある)へと転写及び翻訳することができるポリヌクレオチドである。「発現系」は、通常、所望の発現産物をもたらすように機能することができる発現ベクターを含む好適な宿主細胞を含意する。
【0063】
「有効量」又は「治療有効量」との用語は、疾患の治療を含むが、これに限定されない、意図する用途を達成するのに十分な組成物(例えば、本明細書に記載のタンパク性ヘテロ二量体)の量を指す。治療有効量は、意図する用途(例えば、in vitro又はin vivo)、又は治療される被験体及び病状、例えば、被験体の体重、及び年齢、病状の重症度、投与様式等によって異なり、当業者は、これを容易に決定することができる。この用語は、標的細胞における特定の応答、例えば、標的遺伝子導入、増殖及び/又はアポトーシスを誘導する用量に当てはまる場合がある。具体的な用量は、選ばれる特定の化合物、採用される投与計画、他の化合物と組み合わせて投与されるか否か、投与時期、投与対象の組織、及び行われる物理的送達システムに応じて異なる。
【0064】
「治療」又は「治療する」又は「緩和する」又は「改善する」との用語は、本明細書で区別なく使用され、治療的利益及び/又は予防的利益を含むが、これらに限定されない有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを指す。本明細書で使用される場合、治療的利益は、概して、治療される基礎障害の根絶又はその重症度の低減を指す。また、治療的利益は、被験体において改善が観察されるような基礎障害と関連する1つ以上の生理的症状の根絶、重症度の低減、又は発生率の低減によって達成されるが、被験体が依然として基礎障害に苦しむこともある。予防的利益のために、組成物は、特定の疾患を発症するリスクのある被験体又はこの疾患の診断が下すことができない場合であっても、疾患の1つ以上の生理的症状が報告されている被験体に投与することができる。
【0065】
「治療効果」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、上記のような治療的利益及び/又は予防的利益を包含する。予防的効果は、疾患若しくは病態の出現を遅らせる若しくは解消すること、疾患若しくは病態の症状の発現を遅らせる若しくは解消すること、疾患若しくは病態の進行を減速する、食い止める若しくは逆行させること、又はこれらの任意の組合せを含む。
【0066】
「作用物質」又は「生物活性物質」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、生物学的、薬学的若しくは化学的な化合物又は他の部分を指す。非限定的な例として、単純若しくは複雑な有機若しくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、又は化学療法化合物が挙げられる。様々な化合物、例えば、小分子及びオリゴマー(例えば、オリゴペプチド及びオリゴヌクレオチド)、並びに様々なコア構造をベースとする合成有機化合物を合成することができる。加えて、植物抽出物又は動物抽出物等の様々な天然源からスクリーニング用の化合物を得ることができる。
【0067】
「細胞増殖」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、細胞数が分裂の結果として変化する現象を指す。例えば、細胞増殖は、細胞数の増大をもたらし得る。この用語は、増殖シグナルと一致して細胞形態が変化する(例えば、サイズが増大する)細胞成長も包含する。
【0068】
「in vivoで」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、被験体の身体内で起こる事象を指す。
【0069】
「in vitroで」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、被験体の身体外で起こる事象を指す。例えば、in vitroアッセイは、被験体の外で行われる任意のアッセイを包含する。in vitroアッセイは、死細胞又は生細胞を用いる細胞ベースのアッセイを包含する。in vitroアッセイは、無傷細胞を用いない無細胞アッセイも包含する。
【0070】
「インターロイキン」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、Tリンパ球及び/又はBリンパ球及び/又は造血細胞の発生及び分化を促進することが可能な、分泌タンパク質又はシグナル伝達分子を指す。インターロイキンは、ヘルパーCD4 Tリンパ球、並びに単球、マクロファージ、及び内皮細胞によって合成され得る。本明細書で使用される場合、インターロイキン(IL)として、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、及び/又はIL-36を挙げることができる。本明細書で使用される場合、「インターロイキン」との用語は、完全長インターロイキン、又は対応する野生型インターロイキンの生物活性を実質的に維持する(例えば、対応する野生型インターロイキンの生物活性の少なくとも、80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は、更には、少なくとも100%の生物活性を有する)そのフラグメント(例えば、切断型)若しくは変異体を含み得る。インターロイキンは、本明細書で使用される場合、任意の哺乳動物種に由来し得る。幾つかの実施形態において、インターロイキンは、ヒト、ウマ、ウシ、ネズミ、ブタ、ウサギ、ネコ、イヌ、ラット、ヤギ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される種に由来する。幾つかの実施形態において、インターロイキンは、例えば、その受容体に対する親和性が増大又は減少した突然変異型であってもよい。特定の実施形態において、インターロイキンは、IL-2Rβに対するその結合親和性を増大するようにIL-2を改変することによって得ることができるスーパーIL-2(sIL2としても知られる;Nature 484,529-533,26 April 2012を参照されたい)であってもよい。sIL-2における突然変異は、主にサイトカインのコア中に存在し、分子動力学シミュレーションから、発生した突然変異によりIL-2が安定化し、IL-2Rβ結合部位におけるヘリックスの柔軟性が低減して、CD25に結合した場合と類似した最適化受容体結合配座へとなることが示されている。IL-2と比較すると、sIL-2は、細胞傷害性T細胞の優れた増加を誘導し、in vivoでの抗腫瘍応答の改善をもたらし、発現が比例的に低い制御性T細胞の増加を誘発し、肺水腫を低減した。
【0071】
「被験体」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ヒト、又はネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、又はサルを含むが、これらに限定されない非ヒト動物を指す。
【0072】
「成長及び/又は増殖の阻害」との用語は、癌細胞とともに使用される場合、概して、癌細胞の成長速度及び/又は増殖速度の減少を指す。例えば、これには、(例えば、アポトーシスによる)癌細胞の死が含まれ得る。幾つかの実施形態において、この用語は、充実性腫瘍の成長及び/又は増殖の阻害、及び/又は腫瘍サイズの低減若しくは腫瘍の消失の誘導を指す場合もある。
【0073】
「癌細胞表面マーカー」又は「癌細胞関連マーカー」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、癌細胞上に排他的若しくは優先的若しくは差次的に発現され、及び/又は癌細胞と関連して見られ、それにより癌に優先的若しくは特異的な標的をもたらすタンパク質、炭水化物、糖タンパク質等の生体分子を指す。幾つかの実施形態において、優先的発現は、生物内の任意の他の細胞と比較した優先的発現、又は生物の特定の領域内(例えば、特定の器官内又は組織内)での優先的発現であり得る。
【0074】
「単量体成員」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、単量体として存在する、タンパク性ヘテロ二量体の成分/サブユニットであるポリペプチド、サブユニット、又は部分を指す。
【0075】
「Fcサブユニット」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、免疫グロブリン重鎖定常領域のカルボキシル末端部分、又はFc受容体に結合することができるその類似体若しくは一部を指す場合がある。知られているように、各免疫グロブリン重鎖定常領域は、4つ又は5つのドメインを含む。ドメインには、次のように順番に名前が付けられている:CH1-ヒンジ-CH2-CH3(-CH4)。CH4は、IgMに存在し、ヒンジ領域を持たない。本開示において有用な免疫グロブリン重鎖定常領域は、免疫グロブリンヒンジ領域を含み得て、またCH3ドメインも含み得る。例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域は、免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み得る。幾つかの実施形態において、本開示によるFcサブユニットは、ヒンジ-CH2-CH3ドメインからなる。
【0076】
「と複合体を形成する」又は「複合体形成」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、或る成員/サブユニットと分子(例えば、タンパク質性ヘテロ二量体)の別の成員/サブユニットとの会合(例えば、結合)を指す。例えば、第1のFcサブユニットは、第2のサブユニットと複合体を形成して二量体を形成し得る。
【0077】
「結合特異性」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、所与の標的に特異的に結合する(例えば、免疫反応する)能力を指す(ただし、非標的には、結合しない、又は実質的に結合しない)。本開示の標的化部分は、単一特異性であって、標的に特異的に結合する1個以上の結合部位を含み得るか、又は多重特異性(例えば、二重特異性又は三重特異性)であって、同一の若しくは異なる標的に特異的に結合する2個以上の結合部位を含み得る。
【0078】
「と会合する」又は「と会合した」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、或る一つの実体が別の実体と物理的に会合又は接触していることを指す。例えば、タンパク性ヘテロ二量体の第1の単量体成員は、共有結合的又は非共有結合的に第2の単量体成員「と会合し」得る。幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体の第1の単量体成員は、界面を介して第2の単量体成員と会合し、界面は、第1の単量体成員及び第2の単量体成員それぞれからのアミノ酸残基(すなわち、界面残基)によって形成される。
【0079】
「修飾」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ペプチド骨格(例えば、アミノ酸配列)の任意の操作又はポリペプチドの任意の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を指す。例えば、修飾は、対応する野生型ポリペプチドの配列と比較されるものである。修飾は、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上)のアミノ酸の置換、付加、及び/又は欠失であり得る。
【0080】
「ノブアンドホール(knob-and-hole)修飾」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ポリペプチドの界面に修飾を導入してバルジを形成すること(ノブ修飾)、及び別のポリペプチドの対応する位置に修飾を導入してキャビティを形成すること(ホール修飾)を指し、バルジのサイズは、キャビティのサイズと同じであるか又はそれに類似する。例えば、ノブアンドホール修飾により、ホモ二量体の形成を阻害しながら、ヘテロ二量体の形成が可能になる。米国特許第5,731,168号、同第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)、及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)の参考文献を参照されたい。したがって、「ノブ修飾」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、より小さな側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン又はトレオニン)をより大きな側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン又はトリプトファン)に置き換えてバルジを形成する、ポリペプチドの界面における修飾を指す。「ホール修飾」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、より大きな側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン又はトリプトファン)をより小さな側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン又はトレオニン)に置き換えてキャビティを形成する、別のポリペプチドの対応する位置における修飾を指す。ノブ修飾及びホール修飾は、ポリペプチドをコードする核酸を変更することにより、例えば、部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により行われ得る。特定の実施形態において、ノブ修飾は、Fc領域の2個のサブユニットの1個にアミノ酸置換Y349C及びT366Wを含み、ホール修飾は、Fc領域の2個のサブユニットの他方にアミノ酸置換D356C、T366S、L368A、及びY407Vを含む。
【0081】
「HEK293細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、形質転換されたヒト胎児腎臓(HEK)細胞に由来するクローン分離株を指す。HEK293株は、単層培養で接着性がより良好であり、プラークアッセイ及び他の足場依存性の適用における使いやすさが実証されている293細胞株の変種である。それらの細胞は、無血清培地、例えば、293 SFM IIでの浮遊培養に適応されている。
【0082】
「CHO細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、非分泌性不死線維芽細胞であるチャイニーズハムスター卵巣細胞を指す。CHO細胞は、CHO内因性タンパク質をほとんど分泌しないため、標的タンパク質の分離及び精製に適している。
【0083】
「COS-1細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、サル腎組織に由来する線維芽細胞様細胞株を指す。COS細胞は、大きなT抗原を産生できるがゲノム複製に欠陥があるSV40ウイルスのバージョンでCV-1細胞を不死化することにより得られる。一般的に使用されるCOS細胞株の一形態は、COS-1である。
【0084】
「NS0細胞」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、非分泌性マウス骨髄腫に由来するモデル細胞株を指す。上記細胞株は、NSI/1の亜株から作製されたコレステロール依存性細胞株である。
【0085】
「融合タンパク質」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、異種ポリペプチド(すなわち、該異種ポリペプチドが融合されるポリペプチド又はそのドメインとは無関係のポリペプチド)のアミノ酸配列に直接若しくは間接的に(例えば、リンカーを介して)融合されたポリペプチドのアミノ酸配列を含む、又はそれからなるポリペプチドを指す。
【0086】
「C末端」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ポリペプチドのカルボキシ末端を指す。
【0087】
「N末端」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ポリペプチドのアミノ末端を指す。
【0088】
「免疫グロブリン」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1個以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子として、κ、λ、α、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、及びμの定常領域遺伝子と並んで、種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。免疫グロブリンの一形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は、四量体であり、免疫グロブリン鎖の2個の同一のペアからなり、各ペアは、1個の軽鎖及び1個の重鎖を持つ。各ペアにおいて、軽鎖及び重鎖の可変領域が共に抗原への結合を担い、定常領域が抗体エフェクター機能を担う。抗体に加えて、免疫グロブリンは、例えば、Fv、Fab、Fab’、及び(Fab’)2を含む様々な他の形態で存在し得る。
【0089】
「フレーム内融合」又は「インフレーム融合」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、元のORFの正しいリーディングフレームを維持するように、2個以上のオープンリーディングフレーム(ORF)を接合して連続したより長いORFを形成することを指す。
【0090】
「リンカー」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、2個のポリペプチド配列を接続又は連結する、例えば、2個のポリペプチドドメインを連結する合成アミノ酸配列を指す。リンカーは、ペプチド結合を介して2個のアミノ酸配列を接続し得る。幾つかの実施形態において、本開示のリンカーは、免疫調節物質を線形配列の第2のFc領域に接続する。
【0091】
「N末端に位置する」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、別の分子(例えば、別のポリペプチド)のN末端の位置にあることを指す。例えば、本開示によれば、2個以上の免疫調節物質は、第2のFc領域に対してN末端に位置し得る。
【0092】
「アミノ酸置換」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、ポリペプチドの特定の位置の1個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置き換えられることを指す。
【0093】
「KABAT番号のEUインデックス」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、Kabat et al.(1971)Ann.NY Acad,Sci.190:382-391及びKabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242に従う、アミノ酸配列に対応するEU番号のインデックスを指す。
【0094】
「単離されたポリヌクレオチド」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、その自然環境から単離された、又は人工的に合成された、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はその類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を指す。
【0095】
「タンパク質混合物」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、2種類以上のタンパク質の混合物を指す。
【0096】
「ホモ二量体」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、2個の同一の単量体(例えば、2個の同一の成員又はサブユニット)によって形成される分子を指す。2個の単量体は、共有結合及び/又は非共有結合の相互作用を介して互いに凝集、複合体形成、又は会合し得る。例えば、タンパク性ホモ二量体の2個の単量体は、上記2個の単量体のそれぞれからの界面アミノ酸残基間の相互作用を介して互いに会合し得る。
【0097】
「実質的に含まない」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、組成物(例えば、混合物)が或る物質をほとんど又はほぼ全く含まないことを指す。例えば、該物質は、例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満のパーセンテージで存在する。
【0098】
「薬学的に許容可能な添加剤」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、薬学的投与に適合した任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、等張剤、及び吸収遅延剤等を指す。
【0099】
「濃縮」との用語は、本明細書で使用される場合、概して、混合物又は集団中の標的成分の数、及び/又は濃度の増加を指す。
【0100】
タンパク性ヘテロ二量体、タンパク質混合物、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞
一態様において、本開示は、タンパク性ヘテロ二量体を提供する。タンパク性ヘテロ二量体は、第1の単量体成員と、第1の単量体成員とは異なる第2の単量体成員とを含み得る。第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットを含み得る。第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットを含み得る。第1の単量体成員は、第2の単量体成員と会合し、第1のFcサブユニットと第2のFcサブユニットとの複合体形成を介してヘテロ二量体を形成し得る。
【0101】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員のアミノ酸配列は、第2の単量体成員のアミノ酸配列とは異なる。
【0102】
タンパク性ヘテロ二量体は、1個以上のインターロイキンを更に含み得る。1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに融合(例えば、インフレームで融合)され得る。例えば、1個以上のインターロイキンは、インフレームで第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに独立して融合(例えば、インフレームで融合)され得る。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニットのみに融合(例えば、インフレームで融合)している。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第2のFcサブユニットのみに融合(例えば、インフレームで融合)している。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第1と第2の両方のFcサブユニットに融合(例えば、インフレームで融合)している。
【0103】
1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に融合(例えば、インフレームで融合)され得る。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に(例えば、インフレームで)融合している。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に(例えば、インフレームで)融合している。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸と第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸の両方に(例えば、インフレームで)融合している。
【0104】
タンパク性ヘテロ二量体において、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個がインターロイキン10であり得る。
【0105】
1個以上のインターロイキンは、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに直接的又は間接的に(例えば、インフレームで)融合していてもよい。例えば、1個以上のインターロイキンは、ペプチドリンカー等のリンカーを介して、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに(例えば、インフレームで)融合していてもよい。リンカーは、例えば、ペプチド結合を介して2個のポリペプチド配列を接続又は連結する合成アミノ酸配列であり得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、又はそれ以上のアミノ酸を含むペプチドである。例えば、リンカーは、1個~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上のアミノ酸)、1個~15個アミノ酸(例えば、1個~11個、12個、13個、14個、15個のアミノ酸)、1個~20個のアミノ酸、1個~30個のアミノ酸、又はそれ以上を含み得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、配列番号37に規定されるアミノ酸配列を含む。
【0106】
幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体は、2個以上のインターロイキンを含む。2個以上のインターロイキンは、同一でもよく、又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態において、2個以上のインターロイキンは、同一である。幾つかの実施形態において、2個以上のインターロイキンは、インターロイキン10である。
【0107】
2つ以上のインターロイキンは、1個以上のインターロイキン二量体を形成することができ、各インターロイキン二量体は、互いに(例えば、インフレームで)融合した2つのインターロイキンを含む。各インターロイキン二量体は、2つの同一又は2つの異なるインターロイキンを含み得る。インターロイキンは、直接的又は間接的に共に(例えば、インフレームで)融合していてもよい。幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキン二量体は、少なくとも1個のインターロイキン10二量体を含み、インターロイキン10二量体は、2つのインターロイキン10を含む。
【0108】
2つ以上のインターロイキン(例えば、各インターロイキン二量体の2つのインターロイキン)は、リンカー(ペプチドリンカー等)によって共に(例えば、インフレームで)融合していてもよい。リンカーは、例えば、ペプチド結合を介して2つのポリペプチド配列を接続又は連結する合成アミノ酸配列であり得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、又はそれ以上のアミノ酸を含むペプチドである。例えば、リンカーは、1個~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上のアミノ酸)、1個~15個アミノ酸(例えば、1~11個、12個、13個、14個、15個のアミノ酸)、1個~20個アミノ酸、1個~30個のアミノ酸、又はそれ以上を含み得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、配列番号37に規定されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは、タンパク質分解に耐性であるか、又はタンパク質分解に実質的に耐性である。
【0109】
場合によっては、タンパク性ヘテロ二量体によって3個以上のインターロイキンが含まれ得る。3個以上のインターロイキンは、2個以上のインターロイキン二量体を形成し得る。例えば、2個以上のインターロイキン二量体は、少なくとも1個のインターロイキン10二量体を含み得て、インターロイキン10二量体は、2つのインターロイキン10を含む。幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体は、2つ以上のインターロイキン10の二量体を含む。
【0110】
融合した2個以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に更に(例えば、インフレームで)融合していてもよい。幾つかの実施形態において、融合した2個以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に融合している。幾つかの実施形態において、融合した2つ以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第1のFcサブユニットのみのアミノ末端アミノ酸に更に融合している。幾つかの実施形態において、融合した2つ以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第2のFcサブユニットのみのアミノ末端アミノ酸に更に融合している。幾つかの実施形態において、融合した2つ以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸と第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸の両方に更に融合している。
【0111】
2つ以上のインターロイキン二量体がある場合、各インターロイキン二量体は、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に独立して融合していてもよい。例えば、2個以上の融合インターロイキン(例えば、インターロイキン10)は、第1のFcサブユニット(例えば、そのアミノ末端アミノ酸)に更に(例えば、インフレームで)融合していてもよく、2個以上の融合インターロイキン(例えば、インターロイキン10)は、第2のFcサブユニット(例えば、そのアミノ末端アミノ酸)に更に(例えば、インフレームで)融合していてもよい。
【0112】
融合した2つ以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに直接的又は間接的に融合していてもよい。例えば、融合した2つ以上のインターロイキン(例えば、インターロイキン二量体)は、リンカー(ペプチドリンカー等)を介して第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットに融合していてもよい。リンカーは、例えば、ペプチド結合を介して2つのポリペプチド配列を接続又は連結する合成アミノ酸配列であり得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、又はそれ以上のアミノ酸を含むペプチドである。例えば、リンカーは、1個~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上のアミノ酸)、1個~15個のアミノ酸(例えば、1個~11個、12個、13個、14個、15個のアミノ酸)、1個~20個のアミノ酸、1個~30個のアミノ酸、又はそれ以上を含み得る。幾つかの実施形態において、リンカーは、配列番号37に規定されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、リンカーは、タンパク質分解に耐性であるか、又はタンパク質分解に実質的に耐性である。
【0113】
幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、第2のFcサブユニットに(例えば、インフレームで)融合している。例えば、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に融合していてもよい。
【0114】
幾つかの実施形態において、第2の単量体成員において、1個以上のインターロイキンの少なくとも2個が互いに(例えば、インフレームで)融合してインターロイキン二量体を形成し、インターロイキン二量体が第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に(インフレームで)融合している。
【0115】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まない。
【0116】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットからなる。
【0117】
幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、第1のFcサブユニットに(例えば、インフレームで)融合している。
【0118】
幾つかの実施形態において、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個は、第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に(例えば、インフレームで)融合している。
【0119】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員において、1個以上のインターロイキンの少なくとも2個が互いに(例えば、インフレームで)融合してインターロイキン二量体を形成し、インターロイキン二量体が第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に(例えば、インフレームで)融合している。
【0120】
幾つかの実施形態において、第2の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まない。
【0121】
幾つかの実施形態において、第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットからなる。
【0122】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まないか、又は第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットからなり、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が第2のFcサブユニットに(例えば、インフレームで)融合している。場合によっては、第2の単量体成員において、1個以上のインターロイキンの少なくとも2個が互いに(例えば、インフレームで)融合してインターロイキン二量体を形成し、インターロイキン二量体が第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に(インフレームで)融合している。
【0123】
幾つかの実施形態において、第2の単量体成員は、いずれのインターロイキンも含まないか、又は第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットからなり、1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が第1のFcサブユニットに(例えば、インフレームで)融合している。場合によっては、第1の単量体成員において、1個以上のインターロイキンの少なくとも2つが互いに(例えば、インフレームで)融合してインターロイキン二量体を形成し、インターロイキン二量体が第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に(インフレームで)融合している。
【0124】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキンを含み、第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキンを含む。
【0125】
幾つかの実施形態において、第1の単量体成員は、第1のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキン二量体を含み、第2の単量体成員は、第2のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキン二量体を含む。各インターロイキン二量体は、直接的又は間接的に(例えば、ペプチドリンカー等のリンカーを介して)互いに(例えば、インフレームで)融合した2つの同一のインターロイキンを含み得る。
【0126】
本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの抗体重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域も含まない。幾つかの実施形態において、本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの抗体又はその部分(例えば、抗原結合フラグメント)も含まない。
【0127】
幾つかの実施形態において、本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、いずれの抗体重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域も含まない。
【0128】
幾つかの実施形態において、本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、いずれの抗体又はその抗原結合フラグメントも含まない。
【0129】
幾つかの実施形態において、本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、任意の腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの標的化部分も含まない。例えば、場合によっては、本出願のタンパク性ヘテロ二量体は、腫瘍抗原に特異的に結合することができるいずれの抗体又はその抗原結合フラグメントも含まない。
【0130】
幾つかの実施形態において、第1のFcサブユニット及び/又は第2のFcサブユニットは、IgG分子から独立している。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択され得る。例えば、IgGは、ヒトIgG1であり得る。
【0131】
幾つかの実施形態において、第1のFcサブユニットは、第2のFcサブユニットとは異なり、第1及び/又は第2のFcサブユニットは、第1のFcサブユニットと第2のFcサブユニットとの間のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む。
【0132】
第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み得て、第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み得る。
【0133】
幾つかの実施形態において、第1の修飾は、T366位でのアミノ酸置換と、Y349、F405、K409、D399、K360、Q347、K392、及びS354からなる群から選択される1個以上の位置のアミノ酸置換とを含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。例えば、第1の修飾に含まれるアミノ酸置換は、Y349C、Y349D、D399S、F405K、K360E、K409A、K409E、Q347E、Q347R、S354D、K392D、及びT366Wからなる群から選択され得る。
【0134】
幾つかの実施形態において、第1の修飾は、2個~5個のアミノ酸置換を含む。
【0135】
幾つかの実施形態において、第1の修飾は、
1)Y349及びT366;
2)Y349、T366、及びF405;
3)Y349、T366、及びK409;
4)Y349、T366、F405、K360、及びQ347;
5)Y349、T366、F405、及びQ347;
6)Y349、T366、K409、K360、及びQ347;
7)Y349、T366、K409、及びQ347;
8)T366、K409、及びK392;
9)T366及びK409;
10)T366、K409、Y349、及びS354;
11)T366及びF405;
12)T366、F405、及びD399;並びに
13)T366、F405、Y349、及びS354
の群のいずれかから選択される位置群のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0136】
幾つかの実施形態において、第1の修飾は、
1)Y349C及びT366W;
2)Y349C、T366W、及びF405K;
3)Y349C、T366W、及びK409E;
4)Y349C、T366W、及びK409A;
5)Y349C、T366W、F405K、K360E、及びQ347E;
6)Y349C、T366W、F405K、及びQ347R;
7)Y349C、T366W、K409A、K360E、及びQ347E;
8)Y349C、T366W、K409A、及びQ347R;
9)T366W、K409A、及びK392D;
10)T366W及びK409A;
11)T366W、K409A、及びY349D;
12)T366W、K409A、Y349D、及びS354D;
13)T366W及びF405K;
14)T366W、F405K、及びD399S;
15)T366W、F405K、及びY349D;並びに
16)T366W、F405K、Y349D、及びS354D
の群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0137】
幾つかの実施形態において、第2の修飾は、T366位、L368位、及びY407位のアミノ酸置換と、D356、D399、E357、F405、K360、K392、K409、及びQ347からなる群から選択される1個以上の位置のアミノ酸置換とを含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0138】
幾つかの実施形態において、第2の修飾に含まれるアミノ酸置換は、D356C、D399S、E357A、F405K、K360E、K392D、K409A、L368A、L368G、Q347E、Q347R、T366S、Y407A、及びY407Vからなる群から選択される。
【0139】
幾つかの実施形態において、第2の修飾は、4位~6位にアミノ酸置換を含む。
【0140】
幾つかの実施形態において、第2の修飾は、
1)D356、T366、L368、Y407、及びF405;
2)D356、T366、L368、及びY407;
3)D356、T366、L368、Y407、及びQ347;
4)D356、T366、L368、Y407、K360、及びQ347;
5)D356、T366、L368、Y407、F405、及びQ347;
6)D356、T366、L368、Y407、F405、K360、及びQ347;
7)T366、L368、Y407、D399、及びF405;
8)T366、L368、Y407、及びF405;
9)T366、L368、Y407、F405、及びE357;
10)T366、L368、Y407、及びK409;
11)T366、L368、Y407、K409、及びK392;並びに
12)T366、L368、Y407、K409、及びE357
の群のいずれかから選択される位置群のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0141】
幾つかの実施形態において、第2の修飾は、
1)D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
2)D356C、T366S、L368A、及びY407V;
3)D356C、T366S、L368A、Y407V、及びQ347R;
4)D356C、T366S、L368A、Y407V、K360E、及びQ347E;
5)D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、及びQ347R;
6)D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、K360E、及びQ347E;
7)T366S、L368A、Y407V、D399S、及びF405K;
8)T366S、L368G、Y407A、及びF405K;
9)T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
10)T366S、L368A、Y407V、及びK409A;
11)T366S、L368A、Y407V、K409A、及びK392D;
12)T366S、L368G、Y407A、及びK409A;
13)T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357Aの群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0142】
幾つかの実施形態において、
第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み、
第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み、
第1の修飾及び第2の修飾は、
1)第1の修飾:Y349及びT366、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
2)第1の修飾:Y349、T366、及びF405、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、及びY407;
3)第1の修飾:Y349、T366、及びK409、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
4)第1の修飾:Y349、T366、F405、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びQ347;
5)第1の修飾:Y349、T366、F405、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、K360、及びQ347;
6)第1の修飾:Y349、T366、K409、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、及びQ347;
7)第1の修飾:Y349、T366、K409、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、K360、及びQ347;
8)第1の修飾:T366、K409、及びK392、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、D399、及びF405;
9)第1の修飾:T366及びK409、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びF405;
10)第1の修飾:T366、K409、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
11)第1の修飾:T366、K409、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
12)第1の修飾:T366及びF405並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びK409;
13)第1の修飾:T366、F405、及びD399、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びK392;
14)第1の修飾:T366、F405、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357;
15)第1の修飾:T366、F405、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357
の群のいずれかから選択される位置群のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0143】
幾つかの実施形態において、
第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み、
第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み、
第1の修飾及び第2の修飾は、
1)第1の修飾:Y349C及びT366W、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
2)第1の修飾:Y349C、T366W、及びF405K、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、及びY407V;
3)第1の修飾:Y349C、T366W、及びK409E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
4)第1の修飾:Y349C、T366W、及びK409A、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
5)第1の修飾:Y349C、T366W、F405K、K360E、及びQ347E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びQ347R;
6)第1の修飾:Y349C、T366W、F405K、及びQ347R、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、K360E、及びQ347E;
7)第1の修飾:Y349C、T366W、K409A、K360E、及びQ347E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、及びQ347R;
8)第1の修飾:Y349C、T366W、K409A、及びQ347R、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、K360E、及びQ347E;
9)第1の修飾:T366W、K409A、及びK392D、並びに、
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、D399S、及びF405K;
10)第1の修飾:T366W及びK409A、並びに
第2の修飾:T366S、L368G、Y407A、及びF405K;
11)第1の修飾:T366W、K409A、及びY349D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
12)第1の修飾:T366W、K409A、Y349D、及びS354D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
13)第1の修飾:T366W及びF405K、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、及びK409A;
14)第1の修飾:T366W、F405K、及びD399S、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びK392D;
15)第1の修飾:T366W及びF405K、並びに
第2の修飾:T366S、L368G、Y407A、及びK409A;
16)第1の修飾:T366W、F405K、及びY349D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357A;
17)第1の修飾:T366W、F405K、Y349D、及びS354D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357A
の群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0144】
幾つかの実施形態において、第1のFcサブユニットは、第1の修飾を含み、第2のFcサブユニットは、第2の修飾を含み、第1の修飾は、アミノ酸置換T366W及びK409Aを含み、第2の修飾は、アミノ酸置換T366S、L368G、Y407A、及びF405Kを含み、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0145】
幾つかの実施形態において、第1及び第2のFcサブユニットは、ノブアンドホール修飾等の第1のFcサブユニットと第2のFcサブユニットとの間のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む。例えば、第1のFcサブユニットは、ノブ修飾を含み得て、第2のFcサブユニットは、ホール修飾を含み得る。場合によっては、第1のFcサブユニットは、ホール修飾を含み得て、第2のFcサブユニットは、ノブ修飾を含み得る。
【0146】
ノブ修飾は、アミノ酸置換Y349C及びT366Wを含み得て、ホール修飾は、アミノ酸置換D356C、T366S、L368A、及びY407Vを含み得て、該アミノ酸の位置は、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される。
【0147】
幾つかの実施形態において、第1のFcサブユニットのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号27、配列番号29、及び配列番号30からなる群から選択される。
【0148】
幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体によって含まれるインターロイキンのアミノ酸配列は、配列番号49及び配列番号51からなる群から選択される。
【0149】
幾つかの実施形態において、第2のFcサブユニットのアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28、及び配列番号30からなる群から選択される。
【0150】
一態様では、本開示は、本開示によるタンパク性ヘテロ二量体をコードする単離された核酸を提供する。幾つかの実施形態において、単離された核酸は、本開示による単量体成員(例えば、第一の単量体成員又は第二の単量体成員)又はタンパク性ヘテロ二量体のフラグメントをコードする。
【0151】
核酸は、当該技術分野で既知の組み換え法を用いて合成することができる。例えば、核酸は、自動DNA合成装置を使用することによって合成することができる。
【0152】
標準的な組み換えDNA法及び分子クローニング法として、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,(1989)(Maniatis)、T.J.Silhavy,M.L.Bennan,andL.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1984)、及びAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,pub.by Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience(1987)によって記載されるものが挙げられる。簡潔に述べると、対象の核酸をゲノムDNAフラグメント、cDNA及びRNAから調製することができ、これら全てを細胞から直接的に抽出するか、又はPCR及びRT-PCRを含むが、これらに限定されない様々な増幅プロセスにより組換えによって作製することができる。
【0153】
核酸の直接化学合成は、典型的に、成長ヌクレオチド重合体鎖の末端5’-ヒドロキシル基への3’ブロック及び5’ブロックヌクレオチド単量体の逐次付加を伴い、各々の付加は、付加される単量体の3’位の成長鎖の末端5’-ヒドロキシル基の求核攻撃(典型的に、ホスホトリエステル、ホスホラミダイト等のリン誘導体である)によって達成される。例えば、Matteuci et al.,Tet.Lett.521:719(1980)、Caruthers et al.に対する米国特許第4,500,707号、並びにSouthern et al.に対する米国特許第5,436,327号及び同第5,700,637号を参照されたい。
【0154】
一態様では、本開示は、本開示による単離された核酸を含むベクターを提供する。
【0155】
ベクターは、任意の線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター等であり得る。ウイルスベクターの非限定的な例として、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスを挙げることができる。幾つかの実施形態において、ベクターは、発現ベクター、例えば、ファージ提示ベクターである。
【0156】
発現ベクターは、他でもない特定のタイプの宿主細胞における使用に好適であり得る。例えば、発現ベクターは、宿主生物に導入することができ、これを次いで生存能力及びベクター中に含有される任意の遺伝子/ポリヌクレオチドの発現についてモニタリングする。
【0157】
発現ベクターは、発現時に発現ベクターを保有する宿主細胞の選択又はさもなければ同定に有用な1つ以上の表現型形質をもたらす1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含有していてもよい。真核細胞に好適な選択可能マーカーの非限定的な例として、ジヒドロ葉酸還元酵素、及びネオマイシン耐性が挙げられる。
【0158】
対象のベクターは、確立されている様々な技法によって宿主細胞に安定に又は一過性に導入することができる。例えば、一つの方法は、発現ベクターをカルシウム沈殿によって導入する塩化カルシウム処理を伴うものである。他の塩、例えば、リン酸カルシウムを同様の手順に従って使用してもよい。加えて、エレクトロポレーション(すなわち、核酸に対する細胞の透過性を増大するための電流の印加)を用いることができる。形質転換法の他の例として、マイクロインジェクション、DEAEデキストラン媒介形質転換、及び酢酸リチウムの存在下での熱ショックが挙げられる。脂質複合体、リポソーム、及びデンドリマーを用いて宿主細胞をトランスフェクトすることもできる。
【0159】
異種配列を宿主細胞に導入する際に、対象のベクターが導入された宿主細胞を同定するために様々な方法を実施することができる。例示的な選択法の一つは、個々の細胞を継代培養して個々のコロニーを形成し、続いて所望のタンパク質産物の発現を試験することを伴う。別の方法は、発現ベクター内に含有される選択可能なマーカー遺伝子の発現によってもたらされた表現型形質に基づいて異種配列を含有する宿主細胞を選択することを伴う。
【0160】
例えば、宿主細胞への本開示の様々な異種配列の導入は、PCR、サザンブロット、又はノーザンブロットハイブリダイゼーション等の方法によって確認することができる。例えば、核酸を得られる宿主細胞から調製し、対象の特異的な配列を対象の配列に特異的なプライマーを用いるPCRによって増幅することができる。増幅産物をアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はキャピラリー電気泳動に供し、続いてエチジウムブロマイド、SYBR Green溶液等によって染色するか、又はDNAをUV検出によって検出する。代替的には、対象の配列に特異的な核酸プローブをハイブリダイゼーション反応に用いてもよい。特異的な遺伝子配列の発現は、PCR、ノーザンブロットハイブリダイゼーションと組み合わせた逆転写によって、又はコードされる遺伝子産物と反応性の抗体を用いた免疫測定法によって、対応するmRNAを検出することで確認することができる。例示的な免疫測定法として、ELISA、ラジオイムノアッセイ、及びサンドイッチ免疫測定法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
さらに、宿主細胞への本開示の様々な異種配列の導入は、異種配列がコードする酵素(例えば、酵素マーカー)の酵素活性によって確認することができる。酵素は、当該技術分野で既知の様々な方法によってアッセイすることができる。概して、酵素活性は、調査中の酵素反応の産物の形成又は基質の変換によって確認することができる。反応は、in vitro又はin vivoで行われ得る。
【0162】
一態様では、本開示は、本開示による単離された核酸又はベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。
【0163】
宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞であり得る。適切な宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、ヘテロ二量体タンパク質及び/又はタンパク質混合物の発現及び/又は分泌に利用され得る。例えば、細胞は、E.コリ(E.coli)細胞、他の細菌宿主細胞、酵母細胞、又は様々な高等真核細胞(例えば、不死化ハイブリドーマ細胞、NS0骨髄腫細胞、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、COS細胞等)であり得る。幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)をコードする核酸は、特定の宿主細胞での発現に適した発現制御配列に操作可能に接続される。
【0164】
一態様では、本開示は、タンパク質混合物を提供する。タンパク質混合物は、
1)本開示によるタンパク性ヘテロ二量体、
2)本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の第1の単量体成員の2つの同一のコピーにより形成される第1のホモ二量体、及び
3)本開示によるタンパク性ヘテロ二量体の第2の単量体成員の2つの同一コピーにより形成される第2のホモ二量体を含み得る。
タンパク質混合物中のタンパク性ヘテロ二量体のパーセンテージは、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%であり得る。
【0165】
タンパク質混合物において、第2のホモ二量体のパーセンテージは、第1のホモ二量体のパーセンテージよりも少ない場合がある。例えば、第2のホモ二量体のパーセンテージは、最大約10%、最大約9%、最大約8%、最大約7%、最大約6%、最大約5%、最大約4%、最大約3%、最大約2%、最大約1%、又は最大約0.5%であり得る。例えば、タンパク質混合物は、実質的に第2のホモ二量体を全く含まない場合もある。
【0166】
タンパク質混合物は、例えば、タンパク性ヘテロ二量体の濃縮/精製及び/又は第1若しくは第2のホモ二量体の除去を行わずに、本開示の宿主細胞によって直接産生されてもよい。
【0167】
医薬組成物
一態様では、本開示は、本開示によるタンパク性ヘテロ二量体又は本開示によるタンパク質混合物と、任意に薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0168】
薬学的に許容可能な添加剤の例として、不活性固体希釈剤及び賦形剤、希釈剤、滅菌水溶液及び様々な有機溶媒、透過促進剤、可溶化剤、及びアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのin-situ投与、吸入、直腸投与、膣投与、経皮投与、又は皮下レポジトリ(subcutaneous repository)による投与用に製剤化される。
【0170】
医薬組成物は、腫瘍成長を阻害するために使用することができる。例えば、医薬組成物によって疾患の発症又は進行を阻害するか又は遅らせ、腫瘍サイズを低減し(更には、腫瘍を実質的に排除する)、病状を緩和する及び/又は安定させることができる。
【0171】
非限定的な例示的な医薬組成物及びこれを調製する方法を下記に説明する。
【0172】
対象の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、持続放出配合物、溶液、懸濁液のような経口投与に好適な形態、滅菌溶液、懸濁液若しくはエマルションのような非経口注射に好適な形態、軟膏若しくはクリームのような局所投与に好適な形態、又は坐剤のような直腸投与に好適な形態であり得る。医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に好適な単位剤形であってもよい。医薬組成物は、活性成分として本開示によるタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)又はタンパク質混合物を更に含み、従来の医薬担体又は添加剤を含み得る。さらに、医薬組成物は、他の薬剤又は医薬品、担体、アジュバント等を含んでいてもよい。
【0173】
例示的な非経口投与形態として、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコール又はデキストロース水溶液中の活性タンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)の溶液、又は懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。斯かる剤形は、必要に応じてヒスチジン及び/又はリン酸塩等の塩を用いて適切に緩衝化することができる。
【0174】
幾つかの実施形態において、本開示は、本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)又はタンパク質混合物と注射に好適な医薬添加剤とを含有する注射用の医薬組成物を提供する。
【0175】
本開示の医薬組成物を注射による投与のために組み込むことができる形態として、水性若しくは油性懸濁液、又はゴマ油、トウモロコシ油、綿実油若しくはラッカセイ油を用いたエマルション、及びエリキシル、マンニトール、デキストロース、又は滅菌水溶液、並びに同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0176】
幾つかの実施形態において、本開示は、本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)又はタンパク質混合物と経口投与に好適な医薬添加剤とを含有する経口投与用の医薬組成物を提供する。
【0177】
幾つかの実施形態において、本開示は、
(i)或る量の本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)又はタンパク質混合物と、任意に
(ii)或る量の第2の作用物質と、
(iii)経口投与に好適な医薬添加剤とを含有する経口投与用の固体医薬組成物を提供する。
幾つかの実施形態において、組成物は、
(iv)或る量の第3の作用物質を更に含有する。幾つかの実施形態において、タンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物、第2の作用物質及び任意の第3の作用物質の量は、単独又は組合せで被験体の病態の治療に効果的な量である。
【0178】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、経口摂取に好適な液体医薬組成物であり得る。経口投与に好適な本開示の医薬組成物は、各々が所定量の活性成分を粉末として、又は顆粒、溶液、若しくは水性若しくは非水性液体中の懸濁液、水中油型エマルション若しくは油中水型液体エマルションで含有するカプセル、カシェ剤若しくは錠剤、又は液体若しくはエアゾールスプレー等の別個の剤形で与えることができる。このような剤形は、薬学の任意の方法によって調製することができるが、全ての方法が典型的には、活性成分を1つ以上の他の成分を構成する担体と会合させる工程を含む。概して、組成物は、活性成分と液体担体若しくは微粉固体担体又はその両方とを均一かつ密接に混和させた後、必要に応じて生成物を所望の形態(presentation)に成形することによって調製される。
【0179】
本開示は、水によって幾らかのポリペプチドの分解が促進され得るために、活性成分(例えば、本開示のタンパク性ヘテロ二量体又はヘテロ二量体タンパク質)を含む無水医薬組成物及び剤形を更に包含する。例えば、製剤技術分野において、配合物の保存期間又は経時的な安定性等の特徴を決定するために長期貯蔵をシミュレーションする手段として水を添加する場合がある(例えば、5%)。本開示の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿度条件を用いて調製することができる。
【0180】
本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)又はタンパク質混合物は、従来の薬学配合法に従って医薬担体との密接混和物で組み合わせることができる。担体は、投与に所望される調製物の形態に応じて広範な形態をとることができる。経口剤形用の組成物の調製においては、例えば、経口液体調製物(懸濁液、溶液及びエリキシル等)若しくはエアロゾルの場合に、水、グリコール、油、アルコール、着香料、保存料、着色料等の通常の医薬媒体のいずれを担体として用いてもよく、又はラクトースを用いない幾つかの実施形態において、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤等の担体を経口固体調製物の場合に使用することができる。所望される場合、錠剤を標準的な湿式又は乾式技法(aqueous or nonaqueous techniques)によってコーティングしてもよい。
【0181】
水性懸濁液及び/又はエリキシルが経口投与に所望される場合、その活性成分は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、及びそれらの様々な組合せ等の希釈剤とともに、様々な甘味料又は着香料、着色料、又は染料、また、そのように所望される場合、乳化剤及び/又は懸濁化剤と組み合わせることができる。
【0182】
本開示の医薬組成物は、治療有効量の活性物質(例えば、本開示のタンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物)を含み得る。治療有効量は、病態若しくは障害(例えば、癌)及び/又は任意のその合併症を、該病態若しくは障害を患う又はそれを発症するリスクを有する被験体において(少なくとも部分的に)予防及び/又は治癒することが可能な対象の医薬組成物の量である。含まれる活性物質の具体的な量/濃度は、投与方法及び患者の必要性によって異なる場合があり、例えば、容量、粘度及び/又は、患者の体重等に基づいて決定することができる。例えば、適切な投与量は、約0.1mg/kg/日又は1mg/kg/日~約50mg/kg/日であり得る。場合により、投与量は、更に高くてもよい。これらの具体的な用量を、当業者(例えば、医師又は薬剤師)が特定の患者の病態、配合物及び/又は疾患に基づいて都合よく調整することができることを理解されたい。
【0183】
医学的使用及び治療方法
一態様では、本開示は、腫瘍又は腫瘍細胞の成長を阻害するための薬剤及び/又はキットの製造における、本開示によるタンパク性ヘテロ二量体、又は本開示によるタンパク質混合物の使用を提する。幾つかの実施形態において、薬剤及び/又はキットは、標的細胞(例えば、癌細胞)の成長若しくは分化を特異的及び/又は優先的に阻害するか、又は標的細胞(例えば、癌細胞)を死滅させるために使用される。
【0184】
一態様では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療するための薬剤の製造における、本開示によるタンパク性ヘテロ二量体、又は本開示によるタンパク質混合物の使用を提供する。
【0185】
一態様では、本開示は、治療を必要とする被験体において癌を治療する方法を提供する。この方法は、有効量の本開示によるタンパク性ヘテロ二量体、又は本開示によるタンパク質混合物を被験体に投与することを含み得る。
【0186】
一態様では、本開示は、腫瘍又は腫瘍細胞を、有効量の本開示によるタンパク性ヘテロ二量体又は本開示によるタンパク質混合物と接触させることを含む、腫瘍又は腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供する。接触は、in vitro又はin vivoで起こり得る。
【0187】
幾つかの実施形態において、上記接触は、本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)、タンパク質混合物、医薬組成物、又は薬剤を被験体(例えば、哺乳動物)に全身的又は局所的に投与することを含む。幾つかの実施形態において、上記接触は、本開示のタンパク性ヘテロ二量体(例えば、ヘテロ二量体タンパク質)、タンパク質混合物、医薬組成物、又は薬剤を、腫瘍部位に直接投与することを含む。幾つかの実施形態において、投与は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのin-situ投与、吸入、直腸投与、膣投与、経皮投与、又は皮下リポジトリによる投与によって行われる。
【0188】
幾つかの実施形態において、腫瘍(例えば、癌)又は腫瘍細胞(例えば、癌細胞)は、固形腫瘍であるか、又は固形腫瘍由来である。例えば、癌は、B細胞リンパ腫、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳、又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、黒色腫、子宮、又は子宮内膜の癌、口腔、又は咽頭の癌、肝臓癌、腎臓癌、胆道癌、小腸、又は虫垂の癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、精巣癌、及び悪性線維性組織球腫からなる群から選択され得る。
【0189】
幾つかの実施形態において、癌又は癌細胞は、被験体の体内にあり、例えば、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物)内の癌又は癌細胞である。
【0190】
幾つかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。幾つかの実施形態において、哺乳動物は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、サル、又は任意の他の哺乳動物である。このような多くの哺乳動物は、固形腫瘍及び/又は他の癌を含む特定の疾患又は障害の前臨床モデルとして当技術分野で知られている被験体であってもよい(例えば、Talmadge et al.,2007Am.J. Pathol.170:793、Kerbel,2003Canc.Biol.Therap.2(4 Suppl 1):S134、Man et al.,2007Canc.Met.Rev.26:737、Cespedes et al.,2006Clin.TransL Oncol.8:318)。
【0191】
タンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物の調製方法
一態様では、本開示は、本開示によるタンパク性ヘテロ二量体又は本開示によるタンパク質混合物を作製する方法を提供する。この方法は、
(i)タンパク性ヘテロ二量体の発現を達成する条件下で本開示の宿主細胞を培養することと、
(ii)発現されたタンパク性ヘテロ二量体又は該タンパク性ヘテロ二量体を含むタンパク質混合物を採取すること
とを含み得る。
【0192】
幾つかの実施形態において、この方法は、本開示による宿主細胞によって発現される生成物中のタンパク性ヘテロ二量体を濃縮することを含まない。
【0193】
幾つかの実施形態において、この方法は、本開示による宿主細胞によって作製されたタンパク質混合物から第1又は第2のホモ二量体を除去することを含まない。
【0194】
幾つかの実施形態において、この方法は、タンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物を単離及び/又は精製する工程を更に含む。
【0195】
幾つかの実施形態において、この方法は、宿主細胞に本開示のヘテロ二量体、その1個以上の成員、又はそのフラグメントをコード/発現するポリヌクレオチド/ベクターをトランスフェクト/形質転換する工程を更に含む。
【0196】
幾つかの実施形態において、本開示のタンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物は、細胞内でタンパク質発現に好適な条件下でベクターを発現させることによって作製される。幾つかの実施形態において、本開示のタンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物は、単一細胞クローンによって作製される。
【0197】
タンパク質発現に好適な条件によって異なり得る因子として、インキュベーション時間、温度、及び培地等の因子が挙げられ、細胞型によって決まり、当業者によって容易に決定される。
【0198】
幾つかの実施形態において、本開示のタンパク性ヘテロ二量体又はタンパク質混合物を作製するプロセスにおいて、発酵槽を含む培養物を成長させるために使用することができる任意の装置において培養物中で宿主細胞を成長させる。細胞は、単層として、すなわち表面に付着させて成長させてもよい。代替的に、宿主細胞は、懸濁状態で成長させてもよい。細胞は、無血清である培地で成長させることができる。培地は、8mM L-グルタミン等のグルタミンを添加したOpti-CHO(Invitrogen、カタログ#12681)、10%仔ウシ血清、10.5ng/mlのmIL-3及びL-グルタミンを添加したRPMI 1640培地、又は5%FCS培地等であるが、これらに限定されない市販の培地であり得る。
【0199】
本開示は、以下の実施形態も含む。
【0200】
1.第1の単量体成員と、該第1の単量体成員とは異なる第2の単量体成員とを含むタンパク性ヘテロ二量体であって、
前記第1の単量体成員が第1のFcサブユニットを含み、
前記第2の単量体成員が第2のFcサブユニットを含み、
前記第1の単量体成員が前記第2の単量体成員と会合して、前記第1のFcサブユニットと前記第2のFcサブユニットとの複合体形成により前記ヘテロ二量体を形成し、
前記タンパク性ヘテロ二量体が前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットに融合した1個以上のインターロイキンを更に含み、
前記タンパク性ヘテロ二量体が腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの抗体重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域も含まない、
タンパク性ヘテロ二量体。
【0201】
2.前記1個以上のインターロイキンが前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に融合している、実施形態1に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0202】
3.2つ以上のインターロイキンを含む実施形態1又は2に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0203】
4.前記2つ以上のインターロイキンが1個以上のインターロイキン二量体を形成し、各インターロイキン二量体が互いに融合した2つのインターロイキンを含む、実施形態3に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0204】
5.各インターロイキン二量体の前記2つのインターロイキンがペプチドリンカーによって互いに融合している、実施形態4に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0205】
6.前記インターロイキン二量体が前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸及び/又はカルボキシ末端アミノ酸に融合している、実施形態4又は5に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0206】
7.前記インターロイキンの1個以上がペプチドリンカーを介して前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットに融合している、実施形態1~6のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0207】
8.前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個がIL10である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0208】
9.前記1個以上のインターロイキン二量体が少なくとも1個のIL10二量体を含み、該IL10二量体が、2つのIL10を含む、実施形態4~8のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0209】
10.前記第1のFcサブユニット及び/又は前記第2のFcサブユニットがIgG分子に由来する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0210】
11.前記IgGがIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される、実施形態10に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0211】
12.前記IgGがヒトIgG1である、実施形態11に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0212】
13.前記タンパク性ヘテロ二量体任意の腫瘍抗原に対して結合特異性を示すいずれの標的化部分も含まない、実施形態1~12のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0213】
14.前記第1のFcサブユニットが前記第2のFcサブユニットとは異なり、前記第1及び/又は第2のFcサブユニットが前記第1のFcサブユニットと前記第2のFcサブユニットとの間のヘテロ二量体化を促進する修飾を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0214】
15.前記第1のFcサブユニットが第1の修飾を含み、前記第2のFcサブユニットが第2の修飾を含む、実施形態14に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0215】
16.上記第1の修飾がT366位のアミノ酸置換と、Y349、F405、K409、D399、K360、Q347、K392、及びS354からなる群から選択される1個以上の位置のアミノ酸置換とを含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0216】
17.第1の修飾に含まれるアミノ酸置換がY349C、Y349D、D399S、F405K、K360E、K409A、K409E、Q347E、Q347R、S354D、K392D、及びT366Wからなる群から選択される、実施形態16に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0217】
18.上記第1の修飾が2個~5個のアミノ酸置換を含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0218】
19.上記第1の修飾が
1)Y349及びT366;
2)Y349、T366、及びF405;
3)Y349、T366、及びK409;
4)Y349、T366、F405、K360、及びQ347;
5)Y349、T366、F405、及びQ347;
6)Y349、T366、K409、K360、及びQ347;
7)Y349、T366、K409、及びQ347;
8)T366、K409、及びK392;
9)T366及びK409;
10)T366、K409、Y349、及びS354;
11)T366及びF405;
12)T366、F405、及びD399;並びに
13)T366、F405、Y349、及びS354
の群のいずれかから選択される位置群のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~18のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0219】
20.上記第1の修飾が
1)Y349C及びT366W;
2)Y349C、T366W、及びF405K;
3)Y349C、T366W、及びK409E;
4)Y349C、T366W、及びK409A;
5)Y349C、T366W、F405K、K360E、及びQ347E;
6)Y349C、T366W、F405K、及びQ347R;
7)Y349C、T366W、K409A、K360E、及びQ347E;
8)Y349C、T366W、K409A、及びQ347R;
9)T366W、K409A、及びK392D;
10)T366W及びK409A;
11)T366W、K409A、及びY349D;
12)T366W、K409A、Y349D、及びS354D;
13)T366W及びF405K;
14)T366W、F405K、及びD399S;
15)T366W、F405K、及びY349D;並びに
16)T366W、F405K、Y349D、及びS354D
の群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~19のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0220】
21.上記第2の修飾がT366位、L368位、及びY407位のアミノ酸置換と、D356、D399、E357、F405、K360、K392、K409、及びQ347からなる群から選択される1個以上の位置のアミノ酸置換とを含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~20のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0221】
22.上記第2の修飾に含まれるアミノ酸置換がD356C、D399S、E357A、F405K、K360E、K392D、K409A、L368A、L368G、Q347E、Q347R、T366S、Y407A、及びY407Vからなる群から選択される、実施形態21に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0222】
23.上記第2の修飾が4位~6位のアミノ酸置換を含む、実施形態15~22のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0223】
24.上記第2の修飾が
1)D356、T366、L368、Y407及びF405;
2)D356、T366、L368、及びY407;
3)D356、T366、L368、Y407、及びQ347;
4)D356、T366、L368、Y407、K360、及びQ347;
5)D356、T366、L368、Y407、F405、及びQ347;
6)D356、T366、L368、Y407、F405、K360、及びQ347;
7)T366、L368、Y407、D399、及びF405;
8)T366、L368、Y407、及びF405;
9)T366、L368、Y407、F405、及びE357;
10)T366、L368、Y407、及びK409;
11)T366、L368、Y407、K409、及びK392;並びに
12)T366、L368、Y407、K409、及びE357
の群のいずれかから選択される位置群のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~23のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0224】
25.上記第2の修飾が
1)D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
2)D356C、T366S、L368A、及びY407V;
3)D356C、T366S、L368A、Y407V、及びQ347R;
4)D356C、T366S、L368A、Y407V、K360E、及びQ347E;
5)D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、及びQ347R;
6)D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、K360E、及びQ347E;
7)T366S、L368A、Y407V、D399S、及びF405K;
8)T366S、L368G、Y407A、及びF405K;
9)T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
10)T366S、L368A、Y407V、及びK409A;
11)T366S、L368A、Y407V、K409A、及びK392D;
12)T366S、L368G、Y407A、及びK409A;
13)T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357A
の群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~24のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0225】
26.前記第1のFcサブユニットが第1の修飾を含み、
前記第2のFcサブユニットが第2の修飾を含み、
前記第1の修飾及び前記第2の修飾が
1)第1の修飾:Y349及びT366、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
2)第1の修飾:Y349、T366、及びF405、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、及びY407;
3)第1の修飾:Y349、T366、及びK409、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びF405;
4)第1の修飾:Y349、T366、F405、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、及びQ347;
5)第1の修飾:Y349、T366、F405、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、K360、及びQ347;
6)第1の修飾:Y349、T366、K409、K360、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、及びQ347;
7)第1の修飾:Y349、T366、K409、及びQ347、並びに
第2の修飾:D356、T366、L368、Y407、F405、K360、及びQ347;
8)第1の修飾:T366、K409、及びK392、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、D399、及びF405;
9)第1の修飾:T366及びK409、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びF405;
10)第1の修飾:T366、K409、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
11)第1の修飾:T366、K409、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、F405、及びE357;
12)第1の修飾:T366及びF405、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、及びK409;
13)第1の修飾:T366、F405、及びD399、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びK392;
14)第1の修飾:T366、F405、及びY349、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357;
15)第1の修飾:T366、F405、Y349、及びS354、並びに
第2の修飾:T366、L368、Y407、K409、及びE357;
の群のいずれかから選択される位置群にアミノ酸置換を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~25のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0226】
27.上記第1のFcサブユニットが第1の修飾を含み、
上記第2のFcサブユニットが第2の修飾を含み、
該第1の修飾及び第2の修飾が
1)第1の修飾:Y349C及びT366W、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
2)第1の修飾:Y349C、T366W、及びF405K、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、及びY407V;
3)第1の修飾:Y349C、T366W、及びK409E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y40V、及びF405K;
4)第1の修飾:Y349C、T366W、及びK409A、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びF405K;
5)第1の修飾:Y349C、T366W、F405K、K360E、及びQ347E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、及びQ347R;
6)第1の修飾:Y349C、T366W、F405K、及びQ347R、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、K360E、及びQ347E;
7)第1の修飾:Y349C、T366W、K409A、K360E、及びQ347E、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、F405、K及びQ347R;
8)第1の修飾:Y349C、T366W、K409A、及びQ347R、並びに
第2の修飾:D356C、T366S、L368A、Y407V、F405K、K360E、及びQ347E;
9)第1の修飾:T366W、K409A、及びK392D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、D399S、及びF405K;
10)第1の修飾:T366W及びK409A、並びに
第2の修飾:T366S、L368G、Y407A、及びF405K;
11)第1の修飾:T366W、K409A、及びY349D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
12)第1の修飾:T366W、K409A、Y349D、及びS354D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、F405K、及びE357A;
13)第1の修飾:T366W及びF405K、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、及びK409A;
14)第1の修飾:T366W、F405K、及びD399S、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びK392D;
15)第1の修飾:T366W及びF405K、並びに
第2の修飾:T366S、L368G、Y407A、及びK409A;
16)第1の修飾:T366W、F405K、及びY349D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357A;
17)第1の修飾:T366W、F405K、Y349D、及びS354D、並びに
第2の修飾:T366S、L368A、Y407V、K409A、及びE357A
の群のいずれかから選択されるアミノ酸置換の群を含み、該アミノ酸の位置がKABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態15~26のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0227】
28.上記第1のFcサブユニットが第1の修飾を含み、
上記第2のFcサブユニットが第2の修飾を含み、
該第1の修飾がアミノ酸置換T366W及びK409Aを含み、該第2の修飾がアミノ酸置換T366S、L368G、Y407A、及びF405Kを含み、該アミノ酸の位置が、KABAT番号のEUインデックスに従って決定される、実施形態27に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0228】
29.前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が前記第2のFcサブユニットに融合している、実施形態1~28のいずれか1個に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0229】
30.前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に融合している、実施形態29に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0230】
31.前記第2の単量体成員において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも2つが互いに融合してインターロイキン二量体を形成し、該インターロイキン二量体が、前記第2のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に融合している、実施形態30に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0231】
32.前記第1の単量体成員がいずれのインターロイキンも含まない、実施形態1~31のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0232】
33.前記第1の単量体成員が前記第1のFcサブユニットからなる、実施形態1~32のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0233】
34.前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が前記第1のFcサブユニットに融合している、実施形態1~31のいずれか1個に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0234】
35.前記1個以上のインターロイキンの少なくとも1個が前記第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に融合している、実施形態34に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0235】
36.前記第1の単量体成員において、前記1個以上のインターロイキンの少なくとも2つが互いに融合してインターロイキン二量体を形成し、該インターロイキン二量体が、前記第1のFcサブユニットのアミノ末端アミノ酸に更に融合している、実施形態35に記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0236】
37.前記第2の単量体成員がいずれのインターロイキンも含まない、実施形態34~36のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0237】
38.前記第2の単量体成員が、前記第2のFcサブユニットからなる、実施形態34~37のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体。
【0238】
39.実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体をコードする単離された核酸。
【0239】
40.実施形態39に記載の単離された核酸を含むベクター。
【0240】
41.実施形態39に記載の単離された核酸又は実施形態40に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【0241】
42.タンパク質混合物であって、
1)実施形態1~38のいずれか1個に記載のタンパク性ヘテロ二量体と、
2)実施形態1~38のいずれか1個に記載の前記第1の単量体成員の2つの同一のコピーによって形成される第1のホモ二量体と、
3)実施形態1~38のいずれか1個に記載の前記第2の単量体成員の2つの同一のコピーによって形成される第2のホモ二量体と、
を含み、前記タンパク質混合物中の前記タンパク性ヘテロ二量体のパーセンテージが、少なくとも50%である、タンパク質混合物。
【0242】
43.前記第2のホモ二量体のパーセンテージが第1のホモ二量体のパーセンテージよりも少ない、実施形態42に記載のタンパク質混合物。
【0243】
44.前記第2のホモ二量体のパーセンテージが最大で10%である、実施形態42又は43に記載のタンパク質混合物。
【0244】
45.前記タンパク質混合物が実質的に前記第2のホモ二量体を全く含まない、実施形態42~44のいずれか1つに記載のタンパク質混合物。
【0245】
46.前記タンパク質混合物が前記タンパク性ヘテロ二量体の濃縮及び/又は前記第1若しくは第2のホモ二量体の除去を伴わずに、宿主細胞によって直接作製される、実施形態42~45のいずれか1つに記載のタンパク質混合物。
【0246】
47.実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物と、任意に薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物。
【0247】
48.前記タンパク性二量体が経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのin-situ投与、吸入、直腸投与、膣投与、経皮投与、又は皮下リポジトリによる投与のために配合される、実施形態47に記載の医薬組成物。
【0248】
49.腫瘍又は腫瘍細胞の成長を阻害するための薬剤及び/又はキットの製造における、実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物の使用。
【0249】
50.治療を必要とする被験体において癌を治療するための薬剤の製造における、実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物の使用。
【0250】
51.腫瘍又は腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、前記腫瘍又は腫瘍細胞を、有効量の実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物と接触させることを含む、方法。
【0251】
52.前記接触が、in vitro又はin vivoで起こる、実施形態51に記載の方法。
【0252】
53.治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、有効量の実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物を前記被験体に投与することを含む、方法。
【0253】
54.(i)タンパク性ヘテロ二量体の発現を達成する条件下で実施形態41に記載の宿主細胞を培養することと、
(ii)発現されたタンパク性ヘテロ二量体又は該タンパク性ヘテロ二量体を含むタンパク質混合物を採取すること
とを含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載のタンパク性ヘテロ二量体又は実施形態42~46のいずれか1つに記載のタンパク質混合物を作製する方法。
【0254】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明したが、斯かる実施形態が例示としてのみ提示されることが当業者に明白である。ここで、本開示から逸脱することなく多数の変更、変化及び置換が当業者に想起される。本明細書に記載される本開示の実施形態の様々な代替形態を本開示の実施において用いることができることを理解されたい。添付の特許請求の範囲により本開示の範囲が規定され、これらの特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の方法及び構造がそれにより包含されることが意図される。
【実施例】
【0255】
下記に提示する実施例及び調製物により、本開示のタンパク性ヘテロ二量体並びにそれを使用及び調製する方法が更に説明及び例示される。本開示の範囲は、以下の実施例及び調製物の範囲によって。何ら限定されないことが理解される。
【0256】
実施例1 核酸の修飾及び調製
1.1 Fcの修飾
ヒトIgG1 Fcドメインの界面残基にアミノ酸修飾(アミノ酸置換等)を行い、以下の群の修飾(以下の表1に示す)を得て、本開示において、鎖Aは、Fc9又は第1のFcサブユニットとも称され、鎖Bは、Fc6又は第2のFcサブユニットとも称される:
【0257】
【0258】
続いて、上記の表1に収載された群の修飾を含むヘテロ二量体タンパク質の形成を、以下で詳細に説明するように、ScFv-Fc/Fcシステムを使用して検査した。
【0259】
まず、ヒト免疫グロブリンガンマ1(IgG1)定常領域のアミノ酸配列をデータベースUniprot(P01857)から取得し、野生型ヒトIgG1-Fc領域アミノ酸配列(配列番号30)を得た。野生型ヒトIgG1-Fcをコードするポリヌクレオチド断片を、ヒトPBMC全RNAからのRT-PCRによって得た(配列番号31、Fc遺伝子フラグメントと命名した)。マウスカッパIIIシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド断片(配列番号32)を、重複PCRによりFc遺伝子の5’末端に付加し、次いでベクターpcDNA4(Invitrogen、カタログV86220)にサブクローニングして、哺乳動物細胞でヒトIgG1-Fcを発現させるための組換え発現ベクターを得た。
【0260】
ScFv-Fc融合タンパク質をコードする核酸分子(配列番号33)を合成し、ここでScFvは、抗HER2単鎖抗体を指し、ScFv-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号34に規定される。次いで、ScFv-Fc遺伝子断片をベクターpcDNA4(Invitrogen、カタログV86220)にサブクローニングして、哺乳動物細胞でScFv-Fc融合タンパク質を発現させるための組換え発現ベクターを得た。
【0261】
場合によっては、ラクダ単一ドメイン抗体(VhH)の可変領域をコードするポリペプチドをFc遺伝子断片のN末端に融合させて、融合タンパク質VhH-Fc(配列番号36に規定される)をコードする融合遺伝子断片(配列番号35に規定される)を得た。次いで、ベクターpcDNA4(Invitrogen、カタログV86220)にサブクローニングして、哺乳動物細胞で融合タンパク質VhH-Fcを発現させるための組換え発現ベクターを得た。
【0262】
次いで、上記の表1に収載されているアミノ酸修飾を、それぞれScFv-Fc(群1~群17)、VhH-Fc(群9~群12、群14、群15及び群17)、及びFc遺伝子断片(群1~群8)に重複PCRによって導入し、ここで、鎖Aは、ScFv-FcのFcサブユニットを指し、鎖Bは、独立したFcサブユニット又はVhH-FcのFcサブユニットを指す。アミノ酸修飾された遺伝子断片をそれぞれベクターpcDNA4(Invitrogen、カタログV86220)にサブクローニングし、哺乳動物細胞において修飾ScFv-Fc融合タンパク質、修飾Fcタンパク質、及び修飾VhH-Fc融合タンパク質を発現するための組換え発現ベクターを得た。
【0263】
次いで、懸濁培養したHEK293細胞(ATCC CRL-1573(商標))に、PEIで構築した発現ベクターをトランスフェクトした。各群について、A鎖(ScFv-Fc融合タンパク質)を発現する発現ベクター及びB鎖(Fcタンパク質又はVhH-Fc融合タンパク質)を発現する発現ベクターを、1:1の比率で同時トランスフェクトした。5日~6日間培養した後、一過性発現産物の上清を収集し、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーを使用して対応するタンパク質ヘテロ二量体を含む発現産物を予備精製した。予備精製された発現産物は、それぞれ、ScFv-Fc/ScFv-Fcホモ二量体タンパク質、Fc/Fcホモ二量体タンパク質(又はVhH-Fc/VhH-Fcホモ二量体タンパク質)及びScFv-Fc/Fcヘテロ二量体タンパク質(又はScFv-Fc/VhH-Fcヘテロ二量体タンパク質)を含み、それらは、それぞれ様々な割合で存在する。これらのタンパク質(すなわち、ホモ二量体及びヘテロ二量体)の分子量が異なるため、非還元SDS-PAGEゲルに反映される対応するバンド強度に従って、対応する割合を決定することができた。強度を定量化し、結果を以下の表2~表5に要約する。
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
上記の表2~表5からわかるように、全ての修飾群がヘテロ二量体形成を非常に効果的に促進した。説明のため、群10の修飾(鎖Aの修飾:T366W+K409A;鎖Bの修飾:T366S+L368G+Y407A+F405K)を以下の実施例で使用して、本開示のイムノコンジュゲート又はタンパク質混合物を生成した。
【0269】
1.2 (IL10)
2
-Fc6の調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手し、それをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を入手した。次いで、ヒトIgG1-Fcのアミノ酸配列(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。その後、点突然変異(T366S、L368G、Y407A、及びF405K)をIgG1-Fcフラグメントに導入した。それにより得られたポリペプチドは、Fc6と称される。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をFc6のN末端に付加して、リンカー-Fc6を得た。次いで、それをコードする対応するDNA配列を、オンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をIL10の2つのコピーの間に付加し、(IL10)2を得た。次いで、(IL10)2をコードするポリヌクレオチド配列を、リンカー-Fc6をコードするポリヌクレオチド配列の5’末端に付加し、それにより融合タンパク質(IL10)2-Fc6をコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。(IL10)2-Fc6のアミノ酸配列は、配列番号38に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号39に規定される。
【0270】
1.3 IL10-Fcの調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手し、それをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を入手した。次いで、ヒトIgG1-Fcのアミノ酸配列(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をIgG1-FcのN末端に付加し、リンカー-Fcを得た。次いで、それをコードする対応するDNA配列を、オンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。IL10をコードするポリヌクレオチド配列を、リンカー-Fcをコードするポリヌクレオチド配列の5’末端に付加し、それにより融合タンパク質IL10-Fcをコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。IL10-Fcのアミノ酸配列は、配列番号40に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号41に規定される。
【0271】
1.4 Fc9の調製
ヒトIgG1-Fcのアミノ酸配列(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。その後、点突然変異(T366W及びK409A)をIgG1Fcフラグメントに導入した。それにより得られるポリペプチドは、Fc9と称される。Fc9のアミノ酸配列は、配列番号17に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号42に規定される。
【0272】
1.5 抗EGFR(セツキシマブ)の調製
セツキシマブの重鎖及び軽鎖の完全長アミノ酸配列(上皮増殖因子受容体EGFRに対する抗体である、アービタックス(Erbitux)すなわちErb)を得て、これらのアミノ酸配列をコードする対応するDNA配列をオンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて得た。次いで、セツキシマブの軽鎖(Erb-LC)をコードする核酸分子を合成した。Erb-LCのアミノ酸配列は、配列番号43に規定され、それをコードする対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号44に規定される。次いで、点突然変異(T366W及びK409A)をセツキシマブ重鎖遺伝子のFc領域をコードするポリヌクレオチド配列に導入し、修飾セツキシマブ重鎖をコードする核酸分子を合成し(本明細書において、erb-Fc9と称する)、それをコードする対応するペプチドをErb-Fc9と命名した。Erb-Fc9のアミノ酸配列は、配列番号45に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号46に規定される。
【0273】
1.6 (IL10)
2
-Fcの調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手した。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」を2つのIL10の間に付加して、(IL10)2及びそれをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を得た。次いで、ヒトIgG1-Fcのアミノ酸配列(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をIgG1-FcのN末端に付加し、リンカー-Fcを得た。次いで、それをコードする対応するDNA配列を、オンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。(IL10)2をコードするポリヌクレオチド配列を、リンカー-Fcをコードするポリヌクレオチド配列の5’末端に付加することにより、融合タンパク質(IL10)2-Fcをコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。(IL10)2-Fcのアミノ酸配列は、配列番号47に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号48に規定される。
【0274】
1.7 Fc6-(IL10)
2
の調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手し、それをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を得た。次いで、ヒトIgG1-Fc(すなわち、P01857の残基104~残基330)のアミノ酸配列を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。その後、点突然変異(T366S、L368G、Y407A、及びF405K)をIgG1-Fcフラグメントに導入した。それにより得られるポリペプチドは、Fc6と称される。
【0275】
次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をFc6のC末端に付加し、Fc6-リンカーを得た。次いで、それをコードする対応するDNA配列をオンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をIL10の2つのコピー間に付加し、(IL10)2を得た。(IL10)2をコードするポリヌクレオチド配列をFc6-リンカーをコードするポリヌクレオチド配列の3’末端に付加し、それにより融合タンパク質Fc6-(IL10)2をコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。Fc6-(IL10)2のアミノ酸配列は、配列番号55に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号56に規定される。
【0276】
1.8 IL10-Fc6の調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手し、それをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を得た。次いで、ヒトIgG1-Fc(すなわち、P01857の残基104~残基330)のアミノ酸配列を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。その後、点突然変異(T366S、L368G、Y407A、及びF405K)をIgG1-Fcフラグメントに導入し、それにより得られたポリペプチドをFc6と称する。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をFc6のN末端に付加し、リンカー-Fc6を得た。次いで、それをコードする対応するDNA配列を、オンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。IL10をコードするポリヌクレオチド配列を、リンカー-Fc6をコードするポリヌクレオチド配列の5’末端に付加し、それにより融合タンパク質IL10-Fc6をコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。IL10-Fc6のアミノ酸配列は、配列番号53に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号54に規定される。
【0277】
1.9 (IL10)
2
-Fc9の調製
まず、ヒトインターロイキン10(IL10)(P22301)の配列情報を国立生物工学情報センター(NCBI)から入手し、それをコードする完全長ポリヌクレオチド配列を得た。次いで、(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotによるヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って得た。その後、点突然変異(T366W及びK409A)をIgG1Fcフラグメントに導入した。それにより得られたポリペプチドをFc9と称する。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をFc9のN末端に付加し、リンカー-Fc9を得た。次いで、それコードする対応するDNA配列を、オンラインツールDNAworks(helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて設計した。次いで、リンカー配列「(GGGGS)3」(配列番号37)をIL10の2つのコピーの間に付加し、(IL10)2を得た。次いで、(IL10)2をコードするポリヌクレオチド配列をリンカー-Fc9をコードするポリヌクレオチド配列の5’末端に付加し、それにより融合タンパク質(IL10)2-Fc9をコードするポリヌクレオチド配列を得て、合成した。(IL10)2-Fc9のアミノ酸配列は、配列番号57に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号58に規定される。
【0278】
1.10 Fc6の調製
ヒトIgG1-Fcのアミノ酸配列(すなわち、P01857の残基104~残基330)を、タンパク質データベースUniprotからのヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)定常領域(P01857)のアミノ酸配列に従って取得した。その後、点突然変異(T366S、L368G、Y407A、及びF405K)をIgG1Fcフラグメントに導入し、それにより得られたポリペプチドをFc6と呼ぶ。Fc6のアミノ酸配列は、配列番号18に規定され、それをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号59に規定される。
【0279】
実施例2 組換えプラスミドの構築
実施例1に従って得られた核酸分子((IL10)2-Fc6、IL10-Fc、Fc9、Erb-Fc9、Erb-LC、(IL10)2-Fc、Fc6-(IL10)2、IL10-Fc6、(IL10)2-Fc9、及びFc6をコードする)をHindIII及びEcoRI(Takara)で消化し、次いでベクターpcDNA4/myc-HisA(Invitrogen、V863-20)にそれぞれサブクローニングした。得られたプラスミドを配列決定によって検証し、正しい組換えプラスミドをそれぞれ、次のように命名した:pcDNA4-(IL10)2-Fc6、pcDNA4-IL10-Fc、pcDNA4-Fc9、pcDNA4-Erb-Fc9、pcDNA4-Erb-LC、pcDNA4-(IL10)2-Fc、pcDNA4-Fc6-(IL10)2、pcDNA4-IL10-Fc6、pcDNA4-(IL10)2-Fc9、及びpcDNA4-Fc6。
【0280】
実施例3 タンパク性ヘテロ二量体の発現及び精製
トランスフェクションの2日前に、12×600mLの順化(domesticated)HEK293(ATCC、CRL-1573(商標))細胞の懸濁液を一過性トランスフェクションのために調製し、細胞を0.8×106細胞/mlの密度で播種した。2日後に、3つの細胞懸濁液のアリコートを遠心分離した後、600mLのFreestyle293培養培地に再懸濁した。
【0281】
実施例2により得られた組み換え発現ベクターを以下の群に分けた:
群A:pcDNA4-IL10-Fc6(200μg)+pcDNA4-Fc9(200μg);
群B:pcDNA4-(IL10)2-Fc6(200μg)+pcDNA4-Fc9(200μg);
群C:pcDNA4-FC6-(IL10)2(200μg)+pcDNA4-Fc9(200μg);
群D:pcDNA4-(IL10)2-Fc9(200μg)+pcDNA4-Fc6(200μg);
群E:pcDNA4-Erb-Fc9(200μg)+pcDNA4-Erb-LC(200μg)+pcDNA4-(IL10)2-Fc6(200μg);
群F:pcDNA4-IL10-Fc(200μg);
群G:pcDNA4-(IL10)2-Fc(200μg)。
【0282】
全てのタンパク質を、一過性にトランスフェクトした293F細胞で作製した。簡潔に述べると、FreeStyle 293F細胞(Invitrogen)を293F培地(Invitrogen)で増殖させ、非線状化プラスミドDNA及び293Fectin試薬(Invitrogen)でトランスフェクトし、37℃、5%CO2で6日間、80mL/フラスコ~100mL/フラスコの容量のシェーカーフラスコバッチで増殖させた。全てのタンパク質をワンステッププロテインAクロマトグラフィーにより精製した。各タンパク質の品質をSDS-PAGE及びSEC-HPLCによって判定した。同様に、本出願の他のタンパク性ヘテロ二量体の発現及び精製結果をSDS-PAGEで検証し、確認した。
【0283】
このようにして得られたタンパク性ヘテロ二量体を、(それぞれ群A~群Eに由来する)IL10-Fc9、(IL10)
2-Fc9、リバース-(IL10)
2-Fc9、(IL10)
2-Fc6(それぞれ
図1A~
図1Dに示される)及びErb-(IL10)
2と命名し、群F及び群Gから得られたタンパク性ホモ二量体を(IL10-Fc)
2及び(IL10)
2-Fcと命名する。
【0284】
図2A~
図2Fは、例として、(IL10)
2-Fc9及びErb-(IL10)
2のタンパク性ヘテロ二量体の発現及び精製に成功したことを示している。他の全てのタンパク質も同様に得られた。
【0285】
図2Aでは、レーン1にErb-(IL10)
2(還元)をロードし、レーン2にマーカーをロードし、レーン3にErb-(IL10)
2(非還元)をロードした。
【0286】
図2Bでは、レーン1に(IL10-Fc)
2(元のサンプル)をロードし、レーン2に(IL10-Fc)
2(フロースルー)をロードし、レーン3に(IL10-Fc)
2(溶出)をロードし、レーン4にマーカーをロードし、レーン5に(IL10)
2-Fc(溶出)をロードし、レーン6に(IL10)
2-Fc(元のサンプル)をロードし、レーン7に(IL10)
2-Fc(フロースルー)をロードし、レーン8にBSAをロードし、レーン9にブランクバッファーをロードし、レーン10は、ブランクであり、レーン11に(IL10)
2-Fc(溶出、非還元)をロードし、そしてレーン12に(IL10)
2-Fc(溶出、非還元)をロードした。
【0287】
図2Cでは、レーン1に(IL10)
2-Fc9(元のサンプル)をロードし、レーン2に(IL10)
2-Fc9(フロースルー)をロードし、レーン3に(IL10)
2-Fc9(溶出)をロードし、レーン4にマーカーをロードし、レーン5にBSAをロードし、レーン6にブランクバッファーをロードし、レーン7は、ブランクであり、レーン8に(IL10)
2-Fc9(溶出、非還元)をロードした。
【0288】
図2Dは、SEC-HPLCの結果を示し、(IL10-Fc)
2の発現産物中の望ましくないオリゴマーの割合は、約27%であったことがわかる。
【0289】
図2Eは、SEC-HPLCの結果を示し、(IL10)
2-Fc9の発現産物中の望ましくないオリゴマーの割合は、約3.3%であったことがわかる。
【0290】
図2Fは、SEC-HPLCの結果を示し、(IL10)
2-Fcの発現産物中の望ましくないオリゴマーの割合は、約26%であったことがわかる。
【0291】
これらの結果から、本開示のタンパク性ヘテロ二量体の作製に成功したことがわかる。興味深いことに、(IL10)2-Fc9の発現産物は、ホモ二量体対照(IL10-Fc)2及び(IL10)2-Fcよりも望ましくないオリゴマーがはるかに少なかった。
【0292】
実施例4 ヘテロ二量体タンパク質の特徴の同定
4.1 ヒトIL10R1タンパク質への結合能の検出(ELISA)
ヒトIL10R1(R&D、9100-R1-050)をコーティングバッファー(50mM Na
2CO
3、NaHCO
3 pH9.6)で5μg/mLに希釈し、100μL/ウェルで4℃にて一晩インキュベートした。洗浄後、3%BSA-PBSを用いて37℃にて1時間プレートを密封した。次いで、全てのサンプルをそれぞれ10000ng/mLから希釈して、対照としての希釈液(1%BSA-PBS)で3倍希釈して合計11の濃度にし、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、ヤギ抗hIgG-HRP(Sigma、A0170)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。可溶性一成分TMB基質発色液を添加し、室温で5分間~10分間暗所で発色を行った。50μL/ウェルで2N H
2SO
4を添加して、発色反応を停止した。OD450nm値をMD SpectraMax Plus 384マイクロプレートリーダーで読み取り、SoftMax Pro v5.4を使用してデータ処理及びダイアグラフ(diagraph)分析を行った。結果を
図3及び表6に示す。
【0293】
【0294】
図3に示すように、Erb-(IL10)
2とhIL10R1との間の親和性が最も高かった。リバース-(IL10)
2-Fc9、(IL10)
2-Fc6及び(IL10)
2-Fc9のhIL10R1との結合親和性は、互いに類似していた。
【0295】
4.2 MC/9細胞の成長の強化
MC/9(ATCC CRL-8306)細胞を100μL/ウェルで96ウェルプレートに蒔いた。MC/9の量は、5×10
4/ウェルであった。全てのサンプルを最大濃度2×10
4pMに希釈した。次いで、サンプルを4倍に希釈して、100μL/ウェルで合計9つの濃度にした。対照群として、100μLのDMEM培地を添加した。各サンプルは、二連で行った。次いで、5%CO
2にて37℃で2日間インキュベートする。次いで、上清の140μL/ウェルを捨て、60μL/ウェルのCellTiter-Glo Cell Activity Assay Agent(Promega G7571)を添加する。暗所にてオービタルシェーカーで15分間(100rpm)インキュベートする。次いで、上清の100μL/ウェルを新たな96ウェルの白色プレートに移し、MD Spectra Max Plus 384マイクロプレートリーダーで全波長の発光を測定し、結果を
図4に示す。
【0296】
図4に示すように、(IL10)
2-Fc9及び(IL10)
2-Fc6は、MC/9細胞株においてin vitroでほぼ同じレベルで増殖した。リバース-(IL10)
2-Fc9は、(IL10)
2-Fc9よりも良好な増殖効果を有する。MC/9細胞を使用するin vitro機能研究は、(IL10)
2-Fc9と(IL10)
2-Fc6との間で同様の生物活性が示されたが、リバース-(IL10)
2-Fc9は、より高い生物活性を示した。
【0297】
実施例5 腫瘍制御
5.1 動物及び細胞培養
雌性C57BL/6マウスを、8週齢で中国科学院の実験動物センター(中国、上海)から入手し、特定の病原体を含まない条件下で飼育した。全ての動物を地元の倫理委員会に従って使用した。この研究は、医療実験動物の管理及び使用のためのガイド(1998年、中華人民共和国衛生部)の推奨事項によって承認された。B16F10黒色腫細胞株を社内で作製し、10%(体積/体積)ウシ胎児血清(FBS)、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(Gibco Invitrogen)を添加したDMEM培地で成長させた。
【0298】
5.2 腫瘍の成長
B16F10細胞(5×106)をマウスの脇腹に皮下(s.c.)接種し、約7日間成長させた。腫瘍体積を2つの垂直直径(長さ及び幅)で記録し、V=ab2/2として計算し、式中、a及びbは、それぞれ最長及び最短の直径である。7日後、腫瘍体積は、およそ70mm3と測定された。
【0299】
5.3 治療
B16F10細胞の移植の7日後、(IL10)
2-Fc9又はアイソタイプ(hIgG)をそれぞれ0.5mg/kg及び2.5mg/kgの投与量で腹腔内(i.p.)又は腫瘍内(i.t.)に注射した。投薬を週に2回、合計3回行った。腫瘍サイズを週に2回測定し、腫瘍体積を計算して腫瘍成長の曲線を得た。結果を
図5A及び
図5Bに示す。
図5Aでは、水平軸は、B16F10細胞の移植後の日数であり、垂直軸は、腫瘍の平均体積であり、(IL10)
2-Fc9は、i.p.又はi.t.投与した場合にin vivoで腫瘍体積を効果的に減少させたのに対し、対照アイソタイプは、減少できなかったことがわかる。
図5Bは、異なる投与量での(IL10)
2-Fc9(i.p.及びi.t.)の治療による22日目の腫瘍体積を示す。腫瘍サイズの測定を5回繰り返した。(IL10)
2-Fc9は、種々の用量のi.p.及びi.t.投与を行った場合、in vivoでの腫瘍体積を減少させたことがわかる。
【0300】
実施例6 腫瘍制御におけるタンパク性ヘテロ二量体の効果
6.1 本開示による(IL10)
2
-Fc9の効果(高濃度)
C57BL/6腫瘍制御モデルを実施例5で上述した通りに得た。マウスを1群当たり5匹のマウスを含む2群に分けた:アイソタイプ対照群、0.65mg/kgのヒトIgG1で治療;(IL10)2-Fc9群、0.65mg/kg(IL10)2-Fc9で治療。0日目に、C57BL/6マウスにB16F10-EGFR5細胞をs.c.接種し、7日目、10日目、14日目に(IL10)2-Fc9又はヒトIgG1をそれぞれi.p.注射した。
【0301】
図6Aは、アイソタイプ対照及び本開示の(IL10)
2-Fc9の腫瘍成長に対する効果を示す。(IL10)
2-Fc9は、in vivoで腫瘍体積を効果的に減少させたのに対し、アイソタイプ対照は、減少できなかったことがわかる。
【0302】
6.2 本開示による(IL10)
2
-Fc9の効果(低濃度)
C57BL/6腫瘍制御モデルを実施例5で上述した通りに得た。マウスを、1群当たり5匹のマウスを含む2群に分けた:アイソタイプ対照群、0.5mg/kgのヒトIgG1で治療;(IL10)2-Fc9群、0.13mg/kgの(IL10)2-Fc9で治療。0日目に、C57BL/6マウスにB16F10-EGFR5細胞をs.c.接種し、7日目、10日目、14日目に(IL10)2-Fc9又はヒトIgG1をそれぞれi.p.注射した。
【0303】
図6Bは、アイソタイプ対照及び本開示の(IL10)
2-Fc9の腫瘍成長に対する効果を示す。(IL10)
2-Fc9は、in vivoで腫瘍体積を効果的に減少させたのに対し、アイソタイプ対照は、減少できなかったことがわかる。実施例6.1の結果と比較すると、低濃度の(IL10)
2-Fc9は、腫瘍制御効果の結果に影響を及ぼさなかった。
【0304】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、説明されたが、斯かる実施形態は、例としてのみ提供されることは、当業者に明らかであろう。本発明が本明細書内で提供される具体的な例によって限定されることを意図するものではない。上記の明細書を参照して本発明を説明したが、本明細書の実施形態の記載及び実例は、限定的な意味で解釈されることを意図していない。ここで、当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を想到するであろう。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する本明細書に規定される具体的な描写、構成又は相対的割合に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明を実施する際に利用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、任意の斯かる代替、修正、変形又は均等物も網羅することが企図される。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造がそれによって網羅されることが意図される。
【配列表】