IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧

特許7356727アクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3モノクローナル抗体、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】アクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3モノクローナル抗体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230928BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230928BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230928BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230928BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230928BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230928BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230928BHJP
   C40B 40/08 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P17/00
A61P29/00
A61P35/00
C07K7/06
C07K16/46
G01N33/53 D
C12N15/13 ZNA
C40B40/08
【請求項の数】 48
(21)【出願番号】P 2020520664
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2018038220
(87)【国際公開番号】W WO2019074124
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2017198895
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】竹馬 真理子
(72)【発明者】
【氏名】安井 正人
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】Hiroki Satooka and Mariko Hara-Chikuma,Aquaporin-3 Controls Breast Cancer Cell Migration by Regulating Hydrogen Peroxide Transport and Its Downstream Cell Signaling,Molecular and Cellular Biology,2016年,Vol.36, No.7,pp.1206-1218
【文献】Mariko Hara-Chikuma and A.S. Verkman,Roles of Aquaporin-3 in the Epidermis,Journal of Investigative Dermatology,2008年,Vol.128,pp.2145-2151
【文献】Toshiyuki Matsuzaki et al.,Water Channel Protein AQP3 Is Present in Epithelia Exposed to the Environment of Possible Water Loss,The Journal of Histochemistry & Cytochemistry,1999年,Vol.47, No.10,pp.1275-1286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列がATYPSGHLDM(配列番号1)からなるオリゴペプチドに特異的に結合する抗AQP3抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項2】
ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体又は前記結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項3】
ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3のループCの細胞外ドメインに特異的に結合する、請求項1又は請求項2に記載の抗体又は前記結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項4】
PAM212細胞の表面、マウスマクロファージの表面、又はHEK293細胞の表面に発現するAQP3のループCの細胞外ドメインに特異的に結合する、請求項3に記載の抗体又は前記結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項5】
ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項6】
PAM212細胞、HaCaT細胞及びA431細胞の1つ又は複数の増殖を阻害する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項7】
輸送を阻害する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項8】
p65のリン酸化を阻害する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項9】
四塩化炭素により処置されたマウスにおける肝臓の炎症性応答を阻害する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項10】
重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCRD2)、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)として、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を含む、ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3のループCの細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片:
(1)配列番号28、29、30、31、32、33;
(2)配列番号34、35、36、37、38、39;
(3)配列番号40、41、42、43、44、45;
(4)配列番号52、53、54、55、56、57;
(5)配列番号58、59、60、61、62、63;
(6)配列番号64、65、66、67、68、69;
(7)配列番号70、71、72、73、74、75;
(8)配列番号82、83、84、85、86、87;
(9)配列番号88、89、90、91、92、93;
(10)配列番号94、95、96、97、98、99;
(11)配列番号100、101、102、103、104、105;
(12)配列番号111、112、113、114、115、116;
(13)配列番号117、118、119、120、121、122;
(14)配列番号123、124、125、126、127、128;
(15)配列番号129、130、131、132、133、134;
(16)配列番号141、142、143、144、145、146;
(17)配列番号147、148、149、150、151、152;
(18)配列番号153、154、155、156、157、158;
(19)配列番号159、160、161、162、163、164;
(20)配列番号171、172、173、174、175、176;
(21)配列番号10、11、12、13、14、15;
(22)配列番号207、208、209、210、211、212;
(23)配列番号213、214、215、216、217、218;
(24)配列番号225、226、227、228、229、230;
(25)配列番号177、178、179、180、181、182;
(26)配列番号183、184、185、186、187、188;
(27)配列番号189、190、191、192、193、194;
(28)配列番号201、202、203、204、205、206;
(29)配列番号16、17、18、19、20、21;
(30)配列番号231、232、233、234、235、236;
(31)配列番号237、238、239、240、241、242;
(32)配列番号249、250、251、252、253、254;
(33)配列番号22、23、24、25、26、27;
(34)配列番号255、256、257、258、259、260;
(35)配列番号261、262、263、264、265、266;
(36)配列番号273、274、275、276、277、278:
(37)配列番号279、280、281、282、283、284;
(38)配列番号285、286、287、288、289、290;
(39)配列番号291、292、293、294、295、296;又は
(40)配列番号303、304、305、306、307、308
【請求項11】
重鎖可変重鎖(VH)、及び、軽鎖可変軽鎖(VH)として、それぞれ以下に示されるアミノ酸配列を含む、ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3のループCの細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片:
(1)配列番号309、310;
(2)配列番号311、312;
(3)配列番号313、314;
(4)配列番号315、316;
(5)配列番号317、318;
(6)配列番号319、320;
(7)配列番号321、322;
(8)配列番号323、324;
(9)配列番号325、326;又は
(10)配列番号327、328
【請求項12】
ヒトAQP3及び/又はマウスAQP3への結合について請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と競合する抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項13】
AQP3以外の1つ又は複数のヒトアクアポリン(「非AQP3アクアポリン」)には特異的に結合しない、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片であって、前記抗体がIgGの免疫グロブリン分子である、抗体又はその機能的断片。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片であって、前記抗体がモノクローナル抗体である、抗体又はその機能的断片。
【請求項16】
ヒト抗体の定常領域を有するキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項17】
抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項18】
単一特異性抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
多重特異性抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
AQP3に対する結合特異性を有する抗体の機能的断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項21】
F(ab’)、Fab、Fab’及びFvから選択される機能的断片である、請求項20に記載のAQP3に対する結合特異性を有する抗体の機能的断片。
【請求項22】
レポーター物質により標識される、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項23】
固体支持体に固定化される、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片。
【請求項24】
細胞傷害性薬剤にコンジュゲート化される請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
【請求項25】
前記細胞傷害性薬剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤又は細胞傷害性抗生物質を含む、請求項24に記載のADC。
【請求項26】
請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片を含む組成物。
【請求項27】
AQP3検出用試薬である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のための試薬である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
AQP3発現量測定用試薬である、請求項27又は28に記載の組成物。
【請求項30】
請求項2729のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
【請求項31】
請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片を含む組成物であって、前記抗体又はAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片がAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、組成物。
【請求項32】
薬学的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
請求項24又は請求項25に記載のADCと、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物。
【請求項34】
ガンの処置において使用するための請求項32又は請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記ガンが、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン、舌ガン、皮膚ガン及び乳ガンからなる群から選択されるガンである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
皮膚障害の予防及び/又は処置において使用するための請求項32に記載の組成物。
【請求項37】
前記皮膚障害が、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎からなる群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
炎症性障害の予防及び/又は処置において使用するための請求項32に記載の組成物。
【請求項39】
前記炎症性障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患及び肝炎からなる群から選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
AQP3を検出するための方法であって、サンプルを請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体若しくはAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と、又は請求項26若しくは27に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項41】
AQP3発現細胞を分離及び/又は精製するための方法であって、細胞を含むサンプルを請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体若しくはAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と、又は請求項2628のいずれか一項に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項42】
AQP3を測定するための方法であって、サンプルを請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体若しくはAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と、又は請求項26、27若しくは29に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項43】
AQP3の少なくとも1つの機能を阻害するための方法であって、AQP3を含むサンプルを請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体若しくはAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と、又は請求項31に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項44】
膜を横断する低分子量物質の輸送を阻害するための方法であって、AQP3を含む膜を有するサンプルを請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体若しくはAQP3に対する結合特異性を有するその機能的断片と、又は請求項31に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項45】
AQP3のループCの細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3抗体を生成させるための方法であって、(i)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドと、(ii)AQP3過剰発現細胞との組合せにより非ヒト哺乳動物を免疫化することを含む、方法。
【請求項46】
前記非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記AQP3過剰発現細胞が、ヒトAQP3を過剰発現するCHO細胞、及び/又はマウスAQP3を過剰発現するCHO細胞を含む、請求項45又は請求項46に記載の方法。
【請求項48】
免疫細胞を前記免疫化された非ヒト哺乳動物から集めること、前記免疫細胞からのmRNAを使用して抗体ライブラリーを作製すること、及び1つ又は複数の抗AQP3抗体を前記抗体ライブラリーから同定することをさらに含む、請求項4547のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水チャネル蛋白質の一種であるアクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体に関する。さらに、本発明は、本発明の抗AQP3抗体を含む組成物、並びに本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3検出用試薬、本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3発現細胞同定・分離用試薬、及び本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3測定用試薬に関する。さらに、本発明は、AQP3の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ、AQP3のチャネル機能等に対する阻害活性を有する抗AQP3モノクローナル抗体(阻害性抗AQP3mAb)に関する。さらに、本発明は、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含むAQP3阻害剤、及び本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、本発明の抗AQP3抗体又はAQP3検出用試薬を使用することによってAQP3を検出するための方法、本発明の抗AQP3抗体又はAQP3発現細胞同定・分離用試薬を使用することによってAQP3発現細胞を分離・精製するための方法、及び本発明の抗AQP3抗体又はAQP3検出用試薬を使用することによってAQP3を測定するための方法に関する。さらに、本発明は、本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明のAQP3阻害剤を使用することによってAQP3の機能(チャネル機能等)を阻害するための方法、及び本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明のAQP3阻害剤を使用することによって、生体膜を横断する低分子量物質(水、グリセロール又は過酸化水素等)の輸送を阻害するための方法に関する。なおもさらに、本発明は、本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む医薬組成物を使用することによってAQP3関連障害を予防/処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体膜は、脂質二重層から構成されるため、水分子に対する透過性が低い。それゆえ、生体膜を横断して水分子を速やかに、かつ大量に輸送すること(透過させること)が望まれるときには、膜蛋白質から構成される水チャネルが必要である。水チャネルとしてのアクアポリン(AQP)は、水分子のみを通過させる微細な孔(ポア)を有する膜蛋白質であり、Peter Agreのグループによって1992年に赤血球膜から発見された。それ以降、アクアポリンが、様々な細菌、動物及び植物において発見されており、アクアポリンは、生物学的系に一般に存在する水チャネルであることが知られている。多数のAQP分子種(アイソフォーム)が1つの生物種においてさえ存在することもまた確認されている。例えば、AQP0からAQP12までの13種類のアクアポリン分子種がヒトにおいて確認されている。加えて、水分子を選択的に通過させる分子種(AQP1等)、また、水分子、グリセリン又は過酸化水素等の低分子量物質を通過させる分子種(AQP3等)のように、分子種の間での機能分化が認められている。これら13種類のAQP分子種は様々な発現パターンを多くの臓器において示すことが明確に示されており、水輸送が盛んに行われる腎臓のような臓器では、1つの臓器における複数分子種のアクアポリンの発現が認められる。
【0003】
アクアポリンの異常な発現及び/又は機能が、ある種の障害と関連することが徐々に明らかにされてきた。例えば、AQP0の欠損により、先天性白内障が生じることがあることが知られている。AQP2の発現/機能の低下は尿崩症に関連することが知られており、その一方で、AQP2の機能亢進は、妊娠に伴う浮腫、高血圧症及びうっ血性心不全に関連することが示唆されている。脱髄性障害としての視神経脊髄炎の場合には、抗AQP4自己抗体がその病態形成と関係することが知られている。また、AQP5の変異と掌蹠角化症との関連が報告されている(非特許文献1)。
【0004】
アクアポリンは、細胞膜を6回横切る膜蛋白質であり、6つの膜貫通ドメインと、膜貫通ドメインをつなぐ5つのループ(ループA~ループE)とを有する。細胞膜に存在するAQPにおけるAQPポリペプチドの中で、N末端領域、ループB、ループD及びC末端領域のそれぞれが細胞質側に存在する一方、ループA、ループC及びループEのそれぞれが細胞外側に存在する(図1)。この6回膜貫通構造がすべてのAQP分子種において共通して見出される。
【0005】
1分子のアクアポリンが1つの通過路を有するが、アクアポリンは生体膜において多量体(ホモ四量体)として存在する。加えて、アクアポリンは、水分子、グリセロール、過酸化水素、二酸化炭素、アンモニア及び尿素のような低分子量物質を、通過路を介して受動的に輸送する機能を担っている。
【0006】
様々な分析がアクアポリンの各分子種の発現特性又は機能に関して行われてきているが、十分な解明には未だ至っていない。十分な解明が得られていない理由の1つとして、それぞれの分子種を同定する十分な特性を有する抗アクアポリン抗体が得られていないことを挙げることができる。現在、抗AQP抗体の取得に関する報告がいくつかあり、市販されている抗AQP抗体もまた存在する。しかしながら、そのような抗体のほとんどがポリクローナル抗体であり、AQPの細胞内ドメインをエピトープとしている。ポリクローナル抗体に関しては、特異的同定性が十分でない場合が多く、精度の高い検出又は測定ができないという点で限界もまた存在する。さらには、ポリクローナル抗体に関しては、AQP発現細胞の単離及び精製を行うことが現実的に不可能であった。関連技術分野の抗AQP抗体のほとんどが、細胞内に存在するエピトープを認識する抗体であるので、免疫組織化学的分析、又は生細胞を使用する分析を行うことに関してもまた制約されていた。
アクアポリンの細胞外ドメインを特異的に認識する抗体の取得例が極めて限られていることの理由は明らかにされていないが、アクアポリンのような膜蛋白質は免疫原として取り扱いにくく、膜蛋白質を特異的に認識する抗体の取得は一般に容易でない。生物種の間では配列の保存が比較的高いため、アクアポリン蛋白質又はその断片を免疫原として使用することによって異種の動物を免疫化したときには所望の特異的抗体を産生させることが困難であることもまた考えられる。
【0007】
アクアポリン3(AQP3)は、AQPの他の分子種と同様、生体膜に局在化し、αへリックスからそれぞれが構成される6つの膜貫通領域(膜貫通領域I~VI)と、それらをつなぐ5つのループ(ループA~ループE)とから形成される水チャネル蛋白質であり、N末端及びC末端領域がともに細胞質側に存在する構造を有する。生体膜を横切るαへリックスは、水分子又は他の低分子量成分(グリセロール及び過酸化水素)の通過を可能にする微細な孔(ポア)を形成する。
AQP3は、上皮細胞、免疫細胞及びガン細胞を含めて様々な細胞で発現することが知られている。AQP3を多く発現する細胞の1つとして、ケラチノサイトが知られている。皮膚においては、AQP3は、水及びグリセロールの輸送を促進するため、皮膚の生理的保湿及び皮膚創傷の回復において重要な役割を果たしていると考えられている(特許文献1)。一方、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎のような、異常なケラチノサイト増殖を伴う皮膚障害については、ケラチノサイトの細胞増殖を調節するための因子としてのAQP3を標的とすることによるAQP3産生の抑制に基づく治療法が提案されている(特許文献2)。皮膚のガン化との関連もまた報告されている。それぞれのAQP3が、皮膚における保湿、腫瘍形成及びバリア機能回復のためのグリセロール輸送活性に基づいて、又は傷ついた皮膚の回復のための水分子輸送活性に基づいてその生理的活性を果たすメカニズムが提唱されている(非特許文献2)。
AQP3とガンとの関係性に関しては、皮膚ガンに限らず多くの事例が報告されている。結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン及び舌ガン等の組織において、それぞれのAQP3の増大した発現レベルが確認されている。さらには、それらのガンでは、AQP3の機能が、ガンの進行度、予後、腫瘍血管形成、浸潤、転移、及びガン組織のエネルギー代謝などに関連することが示唆されている。そのような理由から、AQP3(の発現レベルを低下させること)がそれらのガンのための治療標的として提案されてきているが、良好な結果が実際の治験から未だ得られていない(非特許文献1、非特許文献3及び非特許文献4)。
大腸は、AQP3が発現する他の主要な組織の1つとして知られており、腸管上皮におけるAQP3の発現レベルと生理学的状態との関係性が報告されている。この報告によると、大腸におけるAQP3の発現レベルがいくつかの緩下剤によって低下することが明白である。モルヒネによって引き起こされる重度の便秘には、大腸におけるAQP3の増大した発現レベルが伴う(非特許文献5)。
【0008】
AQP3の分析のために、水分子又はグリセロールを透過させるチャネルの活性を抑制する化合物が、AQP3阻害剤として報告されている(非特許文献6及び非特許文献7)。このAQP3阻害剤に限らず、ほとんどのAQP阻害剤が、水銀、銅又は金のような金属を含有する金属化合物である。金属化合物であることは、細胞毒性を示す可能性が高いということを意味する。そのような理由から、ある一定の有用性がこのAQP阻害剤には認められるが、このAQP阻害剤は、培養細胞を用いた機能分析、及び実験動物への投与が行われる試験の両方においてその適用の面で制約されている。さらには、金属化合物としてのこのAQP阻害剤の、AQPに対する分子種特異性が一般に高くない。例えば、AQP3に対する阻害だけでなく、AQP1及びAQP4のような他のAQP分子種の機能的阻害もまた引き起こすという問題が報告されている。そのようなものとして、このAQP3阻害剤を臨床応用としてヒトに投与することが実際には実施できない。
【0009】
AQP3の機能分析の別のアプローチとして、AQP3欠損細胞又はAQP3ノックダウン細胞を使用する事例が報告されている(非特許文献8)。AQP3欠損細胞又はAQP3ノックダウン細胞では、細胞増殖性又は細胞遊走が低下し、炎症によって引き起こされる応答(炎症性応答)が低下することが見出される。アトピー性皮膚炎、乾癬又は喘息などのような炎症性障害を惹起する処置をAQP3ノックアウトマウスについて行ったときには、それらの炎症性障害の発症が、野生型マウスを用いた対照と比較して抑制されることもまた報告されている。ヒト由来のガン細胞のマウスへの移植実験において、AQP3発現のノックダウンに応じてガン悪性化が抑制できることもまた報告されている。このノックダウンについては、SiRNA、shRNA及びmiRNAを用いた例が報告されている。しかしながら、それらの研究のすべてが基礎的段階にあるにすぎず、臨床応用可能なAQP3発現調節剤は未だ開発されていない。
【0010】
AQP3の分析を進めるためには、AQP3の発現部位又は発現レベルを精度良く検出することが、必要な手段の1つである。AQP3特異的な検出が、特異的なプローブ又はプライマーを使用することによってAQP3mRNAの蓄積レベルを検出することに基づいて広く行われている。しかしながら、核酸レベルでの分析に従えば、AQP3がどのような分布で、どのような量で実際に存在しているかを知ることができない。一方、抗AQP3抗体が確立され、また、数種類の抗体が市販されているので、AQP3の発現分析もまた行うことができる。しかしながら、市販の抗AQP3抗体のすべてがポリクローナル抗体であり、精度の高い分析のためには十分でなかった。さらには、市販の抗AQP3抗体のすべてが、AQP3のN末端部分又はC末端部分に存在する細胞内ドメインをエピトープとする抗体であるため、生細胞を用いた実験によるAQP3の検出が困難となっていた。さらには、ポリクローナル抗体であるため、抗体を用いたAQP3発現細胞の選別のために使用することが実際には不可能であった。このような事情から、AQP3に対するモノクローナル抗体、特に、AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識するモノクローナル抗体が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-32191号公報
【文献】国際公開第2014/013727A号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Verkman et al.、Nat.Rev.Drug Discov.(2014)vol.13、pp.259-277
【文献】Hara-Chikuma et al.、J.Invest.Dermatol.(2008)vol.128、pp.2145-2151
【文献】Papadopoulos and Saadoun、Biochem.Biochim.Acta(2015)vol.1848、pp.2576-2583
【文献】Wang et al.、J.Transl.Med.(2015)vol.13:96
【文献】Ikarashi et al.、Int.J.Mol.Sci.(2016)vol.17、1172
【文献】Zelenina et al.、J.Biol.Chem.(2004)vol.279、pp.51939-51943
【文献】Martins et al.、PLoS ONE(2012)7(5):e37435
【文献】Hara-Chikuma et al.、Biochem.Biophys.Res.Commun.(2016)vol.471、pp.603-609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的が、水チャネル蛋白質の一種であるアクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体を提供するために、AQP3の構造について、特に、細胞外ドメインを構成するループA、ループC及びループEの構造について鋭意研究を行い、ループC(細胞外の2番目のループ)の一部を構成する、免疫原としての断片(オリゴペプチド)をAQP3過剰発現細胞と一緒に使用することによって宿主動物を免疫化することに従って、AQP3を特異的に認識する所望の抗体を得ることができること、複数のハイブリドーマクローンに由来する複数の抗AQP3モノクローナル抗体(抗AQP3mAb)を得ることができること、抗AQP3mAbはAQP3ポリペプチド及び前記断片に特異的に結合すること、そして、抗AQP3mAbは、AQP3に基づくチャネル機能、AQP3発現細胞の増殖活性、及び/又はAQP3発現細胞の遊走活性を特異的に阻害する活性を有することを見出した。それらの発見に基づいて、本発明者らは本発明を完成させた。
【0015】
本発明によれば、AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体が提供される。さらには、本発明の抗AQP3抗体を含む組成物、本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3検出用試薬、本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3発現細胞同定・分離用試薬、及び本発明の抗AQP3抗体を含むAQP3測定用試薬が提供される。さらには、そのような試薬のいずれかを含むキットが提供される。さらには、AQP3の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ、AQP3のチャネル機能等に対する阻害活性を有する抗AQP3モノクローナル抗体(阻害性抗AQP3mAb)が提供される。さらには、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含むAQP3阻害剤、及び本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む医薬組成物が提供される。さらには、本発明の抗AQP3抗体と、細胞傷害性薬剤とを含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)、及びADCを含む医薬組成物が提供される。さらには、本発明の抗AQP3抗体又はAQP3検出用試薬を使用することによってAQP3を検出するための方法、本発明の抗AQP3抗体又はAQP3同定・分離用試薬を使用することによってAQP3発現細胞を分離・精製するための方法、及び本発明の抗AQP3抗体又はAQP3検出用試薬を使用することによってAQP3を測定するための方法が提供される。さらには、本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明のAQP3阻害剤を使用することによってAQP3の機能(チャネル機能等)を阻害するための方法、及び、本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明のAQP3阻害剤を使用することによって、生体膜を横断する低分子量物質(水、グリセロール又は過酸化水素等)の輸送を阻害するための方法が提供される。なおもさらには、本発明の阻害性抗AQP3mAb、本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む組成物、又は本発明の阻害性抗AQP3mAbを含む医薬組成物を使用することによってAQP3関連障害を予防/処置するための方法が提供される。
【0016】
1つの態様において、本発明は、アミノ酸配列がATYPSGHLDM(配列番号1)からなるオリゴペプチドに特異的に結合する抗AQP3抗体又はその機能的断片を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、表1A~表5Eに示される配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCRD2)、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗AQP3抗体又はその機能的断片を提供する。表1A~表5EにおけるCDR配列は、実施例に記載される抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体Kのアミノ酸配列に由来する。表1A~表5Eに示されるCDR配列を有する抗AQP3抗体又はその機能的断片についてのフレームワーク配列は、例えば、マウスのフレームワーク配列又はヒトのフレームワーク配列であることが可能である。
【0018】
表1A~表1Jに示されるCDR配列には、IMGT番号表記システム、Kabat番号表記システム及びChothia番号表記システムによって定義されるCDR配列が含まれる。Lefranc他、2003、Dev Comparat Immunol 27:55-77(IMGT numbering system)、Kabat他、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(Kabat numbering system)、及びAl-Lazikani他、1997、J.Mol.Biol 273:927-948(Chothia numbering system)を参照のこと。これらの表にはまた、IMGT、Kabat及びChothiaによるCDRについての重複の共通領域である配列(「IMGT・Kabat・Chothia共通配列」)と、IMGT、Kabat及びChothiaによるCDRについての重複の統合された領域である配列(「IMGT・Kabat・Chothia統合重複配列」)とが含まれる。
【0019】
表2A~表5Eにおける配列は、表1A~表1Jに示されるCDR配列に由来するコンセンサス配列である。具体的には、表2A~表2Eにおける配列は、抗体A、抗体D、抗体E及び抗体G(「I群」)についてのCDRに由来し、表3A~表3Fにおける配列は抗体B及び抗体H(「II群」)についてのCDRに由来し、表4A~表4Eにおける配列は抗体C及び抗体F(「III群」)についてのCDRに由来し、表5A~表5Eにおける配列は抗体J及び抗体K(「IV群」)についてのCDRに由来する。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
【表7】
【0027】
【表8】
【0028】
【表9】
【0029】
【表10】
【0030】
【表11】
【0031】
【表12】
【0032】
【表13】
【0033】
【表14】
【0034】
【表15】
【0035】
【表16】
【0036】
【表17】
【0037】
【表18】
【0038】
【表19】
【0039】
【表20】
【0040】
【表21】
【0041】
【表22】
【0042】
【表23】
【0043】
【表24】
【0044】
【表25】
【0045】
【表26】
【0046】
【表27】
【0047】
【表28】
【0048】
【表29】
【0049】
【表30】
【0050】
【表31】
【0051】
【表32】
【0052】
【表33】
【0053】
【表34】
【0054】
【表35】
【0055】
【表36】
いくつかの実施形態において、抗AQP3抗体又はその機能的断片は、表1A~表1Jに示される配列から選択される可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VL)配列を含む。いくつかの実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体AのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体BのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体CのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体DのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体EのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体FのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体GのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体HのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体JのVH及びVLを含む。他の実施形態において、抗AQP3抗体又は機能的断片は抗体KのVH及びVLを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、抗体又はその機能的断片は、AQP3への結合について、例えば、HEK293細胞、HaCaT細胞又はA431細胞の表面に発現するヒトAQP3、或いはHEK293細胞、PAM212細胞又はマウスマクロファージ細胞の表面に発現するマウスAQP3への結合について、本発明の別の抗AQP3抗体又はその機能的断片と競合することができる。競合を測定するために使用することができるアッセイには、ELISAアッセイ及びFACSアッセイが含まれる。
【0057】
競合アッセイの一例において、AQP3をその表面に発現する細胞(例えば、HEK293細胞)が固体表面に、例えば、マイクロウエルプレートに、プレートをAQP3発現細胞の懸濁物と(例えば、4℃で一晩)接触させることによって付着させられる。プレートを洗浄し(例えば、PBSにおける0.1%Tween20)、ブロッキング処理が(例えば、Superblock、Thermo Scientific、Rockford、IL)において行われる。亜飽和量のビオチン化一次抗体(80ng/mL)(「参照」抗体)又は競合する抗AQP3抗体(「試験」抗体)の、ELISA緩衝液(例えば、PBSにおける1%BSA及び0.1%Tween20)における連続希釈での(例えば、2.8μg/mL、8.3μg/mL又は25μg/mLの濃度での)混合物をウエルに加え、プレートを穏やかに振とうしながら1時間インキュベーションする。参照抗体は本発明の抗体が可能である(例えば、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J、又は抗体K)。プレートを洗浄し、ELISA緩衝液で希釈される1μg/mLのHRPコンジュゲート化ストレプトアビジンをそれぞれのウエル加え、プレートを1時間インキュベーションする。プレートを洗浄し、結合した抗体を基質(例えば、TMB、Biofx Laboratories Inc.、Owings Mills、MD)の添加によって検出する。反応を停止緩衝液(例えば、Bio FX Stop Reagents、Biofx Laboratories Inc.、Owings Mills、MD)の添加によって停止させ、吸光度を、マイクロプレートリーダー(例えば、VERSAmax、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して650nmで測定する。この競合アッセイでの様々な変法もまた、本発明の第1の抗AQP3抗体と、本発明の第2のAQP3抗体との間における競合を調べるために使用することができる。競合アッセイのための他の様々な形式がこの技術分野では知られており、これらを使用することができる。
【0058】
上記競合アッセイの様々な実施形態において、本発明の参照AQP3抗体と競合する本発明の試験抗AQP3抗体は、試験抗AQP3抗体が、0.08μg/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、又は前述の値のいずれかの間の範囲での濃度(例えば、2μg/mLから10μg/mLにまで及ぶ濃度)で使用されるとき、参照抗AQP3抗体の結合を、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は前述の値のいずれかの間の範囲での割合で低下させる(例えば、本発明の試験抗AQP3抗体は本発明の標識された参照AQP3抗体の結合を50%~70%低下させる)。
【0059】
上記競合アッセイの他の実施形態において、本発明の試験抗AQP3抗体は、試験抗AQP3抗体が、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、250μg/mL、又は前述の値のいずれかの間の範囲での濃度(例えば、2μg/mLから10μg/mLにまで及ぶ濃度)で使用されるとき、標識された参照抗AQP3抗体の結合を、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は前述の値のいずれかの間の範囲での割合で低下させる(例えば、本発明の試験抗AQP3抗体は本発明の標識された参照AQP3抗体の結合を50%~70%低下させる)。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は以下の(1)~(71)に関する。
(1)アクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体、又はその機能的断片。
(2)細胞外ドメインがループCである、上記(1)に記載の抗体又はその機能的断片。
(3)膜貫通領域IVとの境界に隣接するループCのC末端側の10アミノ酸残基から構成されるオリゴペプチドに特異的に結合する、上記(1)又は(2)に記載の抗体又はその機能的断片。
(4)膜貫通領域IVとの境界に隣接するループCのC末端側の10アミノ酸残基から構成されるオリゴペプチドのアミノ酸配列がATYPSGHLDM(配列番号1)である、上記(3)に記載の抗体又はその機能的断片。
(5)マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、モルモット抗体、ヒツジ抗体、ヤギ抗体、ロバ抗体、ニワトリ抗体又はラクダ抗体である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(6)マウス抗体である、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(7)レポーター物質により標識される、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(8)レポーター物質が、放射性同位体、金属微粒子、酵素、蛍光物質及び発光物質からなる群から選択される、上記(7)に記載の抗体又はその機能的断片。
(9)固体支持体に固定化される、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(10)固体支持体が、マイクロプレート、ガラスプレート、プラスチックプレート、シリンジ、バイアル、カラム、磁性粒子、樹脂製マイクロビーズ、多孔性メンブラン、多孔性担体及びマイクロチップからなる群から選択される、上記(9)に記載の抗体又はその機能的断片。
(11)ヒト及び/又はマウスに由来するAQP3に特異的に結合する、上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(12)ヒトに由来するAQP3に特異的に結合する、上記(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(13)上記(1)~(12)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がIgG又はIgMの免疫グロブリン分子である、抗体又はその機能的断片。
(14)上記(1)~(13)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がIgGの免疫グロブリン分子である、抗体又はその機能的断片。
【0061】
(15)AQP3の機能に対する阻害活性を有する、上記(1)~(14)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
(16)AQP3の機能が、低分子量物質をAQP3によって輸送する(透過させる)活性、AQP3発現細胞の細胞増殖を促進させる活性、AQP3発現細胞の細胞遊走を促進させる活性、並びに炎症性応答及びAQP3関連障害応答を誘発する活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、上記(15)に記載の抗体又はその機能的断片。
【0062】
(17)上記(1)~(16)のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がモノクローナル抗体である、抗体又はその機能的断片。
(18)重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号10、配列番号11及び配列番号12によってそれぞれ表されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号13、配列番号14及び配列番号15によってそれぞれ表されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)に記載の抗体又はその機能的断片。
(19)重鎖可変領域が、配列番号4によって表されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖可変領域が、配列番号5によって表されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)又は(18)に記載の抗体又はその機能的断片。
(20)重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号16、配列番号17及び配列番号18によってそれぞれ示されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号19、配列番号20及び配列番号21によってそれぞれ示されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)に記載の抗体又はその機能的断片。
(21)重鎖可変領域が、配列番号6によって表されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖可変領域が、配列番号7によって表されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)又は(20)に記載の抗体又はその機能的断片。
(22)重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号22、配列番号23及び配列番号24によってそれぞれ示されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3が、配列番号25、配列番号26及び配列番号27によってそれぞれ示されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)に記載の抗体又はその機能的断片。
(23)重鎖可変領域が、配列番号8によって表されるアミノ酸配列から構成され、軽鎖可変領域が、配列番号9によって表されるアミノ酸配列から構成される、上記(17)又は(22)に記載の抗体又はその機能的断片。
(24)ヒト抗体の定常領域を有するキメラ抗体又はヒト化抗体である、上記(1)、(7)、(18)、(20)及び(22)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0063】
(25)上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体又はその断片を含む組成物。
(26)AQP3検出用試薬である、上記(25)に記載の組成物。
(27)AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のための試薬である、上記(25)に記載の組成物。
(28)AQP3発現量測定用試薬である、上記(25)又は(26)に記載の組成物。
(29)上記(25)~(28)のいずれか1つに記載の組成物を含むキット。
【0064】
(30)上記9又は10に記載のモノクローナル抗体又はその断片を含む組成物であって、前記モノクローナル抗体又はその機能的断片がAQP3の機能に対する阻害活性を有する、組成物。
(31)AQP3の機能が、低分子量物質をAQP3によって輸送する活性、AQP3発現細胞の細胞増殖を促進させる活性、及びAQP3発現細胞の細胞遊走を促進させる活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、上記(30)に組成物。
(32)薬学的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物である、上記(30)又は(31)に記載の組成物。
(33)ガンの処置において使用するための上記(31)又は(32)に記載の組成物。
(34)ガンが、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン、舌ガン、皮膚ガン及び乳ガンからなる群から選択されるガンである、上記(33)に記載の組成物。
(35)処置が、ガンの進行(増殖)の抑制、腫瘍血管形成の抑制、浸潤の抑制、転移の抑制、ガン組織におけるエネルギー代謝の抑制、及び患者の予後の改善からなる群から選択される、上記(33)又は(34)に記載の組成物。
(36)皮膚障害の予防及び/又は処置において使用するための上記(31)又は(32)に記載の組成物。
(37)皮膚障害が、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎からなる群から選択される、上記(36)に記載の組成物。
(38)炎症性障害の予防及び/又は処置において使用するための上記(31)又は(32)に記載の組成物。
(39)炎症性障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患及び肝炎(例えば、急性肝炎又は急性肝障害)からなる群から選択される、上記(38)に記載の組成物。
(40)便通異常の処置において使用するための上記(31)又は(32)に記載の組成物。
(41)便通異常が便秘である、上記(40)に記載の組成物。
【0065】
(42)サンプルを上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体若しくはその断片と、又は上記(25)若しくは(26)に記載の組成物と接触させる工程を含む、AQP3を検出するための方法。
(43)上記(29)に記載のキットを使用することによって行われる、上記(42)に記載の方法。
(44)サンプルが、細胞、生体組織、臓器又は個体対象を含む、上記(42)又は(43)に記載の方法。
(45)サンプルが、細胞、生体組織又は臓器を含み、インビトロで行われる、上記(44)に記載の方法。
(46)インビボで行われる(但し、ヒト個体又は動物個体をサンプルとする場合を除く)、上記(44)に記載の方法。
(47)AQP3発現細胞を、AQP3発現細胞を含むサンプルから分離及び/又は精製するための方法であって、サンプルを上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(25)若しくは(27)に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
(48)上記(29)に記載のキットを使用することによって行われる、上記(47)に記載の方法。
(49)サンプルが、生細胞を含むサンプルである、上記(47)又は(48)に記載の方法。
(50)サンプルを上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(25)、(26)若しくは(28)に記載の組成物と接触させる工程を含む、AQP3を測定するための方法。
(51)上記(29)に記載のキットを使用することによって行われる、上記(46)に記載の方法。
(52)サンプルが細胞又は細胞抽出物を含む、上記(50)又は(51)に記載の方法。
(53)AQP3の少なくとも1つの機能の阻害するための方法であって、AQP3を含むサンプルを上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(25)に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
(54)AQP3を含むサンプルが、組換え体AQP3を含む再構成膜、又はAQP3発現細胞を含む細胞群、生体組織、臓器若しくは個体である、上記(53)に記載の方法。
(55)接触させる工程が、サンプルを上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む組成物と接触させる工程である、上記(53)又は(54)に記載の方法。
(56)上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその機能的断片が、AQP3の少なくとも1つの機能を阻害する活性を有する、上記(55)に記載の方法。
(57)AQP3の機能が、低分子量物質をAQP3によって輸送する活性、AQP3発現細胞の細胞増殖を促進させる活性、AQP3発現細胞の細胞遊走を促進させる活性、並びに炎症性応答及びAQP3関連障害応答を誘発する活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、上記(56)に記載の方法。
(58)膜を横断する低分子量物質の輸送を阻害するための方法であって、AQP3を含む膜を有するサンプルを上記(1)~(24)のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(25)に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
(59)AQP3を含む膜が、組換え体AQP3を含む再構成膜、又はAQP3発現細胞の生体膜である、上記(58)に記載の方法。
(60)接触させる工程が、上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体若しくはその機能的断片と、又は上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む組成物と接触させる工程である、上記(58)又は(59)に記載の方法。
(61)上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその機能的断片が、AQP3の機能を阻害する活性を有する、上記(60)に記載の方法。
(62)AQP3の機能が、低分子量物質をAQP3によって輸送する活性である、上記(61)に記載の方法。
(63)低分子量物質が、水分子、グリセロール及び過酸化水素からなる群から選択される、上記(58)~(62)のいずれか1つに記載の方法。
(64)AQP3関連障害の予防及び/又は処置のための方法であって、処置を必要としている対象に対して上記(30)~(39)のいずれか1つに記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
(65)AQP3関連障害には、AQP3の増大した発現レベルが伴う、上記(64)に記載の方法。
(66)AQP3関連障害が、ガン、皮膚障害及び炎症性障害からなる群から選択される、上記(65)に記載の方法。
(67)便通異常を改善する方法であって、便通異常を有し、便通異常が便秘である対象に対して、上記(30)~(32)、(40)又は(41)に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
(68)AQP3関連障害を処置する方法において使用するためのものである、上記(31)又は(32)に記載の組成物。
(69)AQP3関連障害を処置する方法において使用するためのものである、上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその機能的断片。
(70)AQP3関連障害の予防及び/又は処置のための医薬組成物を製造するための、上記(31)又は(32)に記載の組成物の使用。
(71)AQP3関連障害の予防及び/又は処置のための医薬組成物を製造するための、上記(17)~(24)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその機能的断片の使用。
【発明の効果】
【0066】
AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片により、AQP3発現細胞の検出又はAQP3発現レベルの測定を行うことができる。さらには、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、生細胞の細胞膜に存在するAQP3に特異的に結合することができるので、AQP3発現細胞を含む組織又は臓器の染色、或いはAQP3発現細胞の分離及び精製を行うことができる。さらには、いくつかの実施形態において、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、AQP3のループCに含まれるペプチドを特異的に認識することができるだけでなく、AQP3に特異的に結合することができるので、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3の1つ又は複数の機能を阻害することもできる。AQP3の1つ又は複数の機能を阻害することによって、AQP3発現レベルの上昇が伴うAQP3関連障害を予防及び/又は処置することが可能である。AQP3関連障害がガンである場合には、ガンの進行(増殖)の抑制、腫瘍血管形成の抑制、浸潤の抑制、転移の抑制、ガン組織におけるエネルギー代謝の抑制、ガン患者の予後改善、又は前記の組合せを行うことが可能である。AQP3発現レベルの上昇が伴う便通異常を緩和することもまた可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、アクアポリンの分子構造を例示する図である。アクアポリンは、N末端からC末端まで膜を6回横切る膜貫通構造を有しており、膜貫通ドメインIから膜貫通ドメインVIまでの6つの膜貫通ドメインの間でつながれる5つの領域において、5つのループ(ループA~ループE)が含まれる。それらのループの中で、ループA、ループC及びループEがそれぞれ細胞外側に存在し、一方、ループB及びループDが細胞内側にそれぞれ存在する。N末端領域及びC末端領域がすべて、細胞内ドメインに含まれる。図に示される2つのNPAは、アスパラギン-プロリン-アラニンの3アミノ酸残基からなるNPAボックスを示している。NPAボックスはアクアポリン分子の内部に存在しており、生物種の間で広く保存されていることが知られている。
図2図2は、配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドに対する本発明の抗AQP3抗体の結合性を試験した結果を示す図である。左側パネルは、抗体C、抗体E、抗体H、抗体J、及び陰性対照のIgG抗体(IgG)についての結果を示す。右側パネルは、抗体B、抗体G、抗体K、抗体A、抗体D及び抗体Fについての結果を示す。
図3図3は、AQP3を過剰発現しているHEK293T細胞(AQP3)の細胞溶解物に対する本発明の抗AQP3抗体の結合性を試験した結果を示す図である。AQP3を過剰発現していないHEK293T細胞からの細胞溶解物を対照として使用した(N.C.)。
図4図4は、マウスマクロファージ細胞に対する本発明の抗AQP3抗体の結合性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体の1つである抗体Jが使用される。
図5A図5Aは、マウス上皮細胞(PAM212細胞)に対する本発明の抗AQP3抗体の結合性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体の1つである抗体Jが使用される。
図5B図5Bは、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H及び抗体Jの、マウス上皮細胞(PAM212細胞)に対する結合性を試験した結果を示す図である。
図5C図5Cは、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H及び抗体Jの、ヒト上皮細胞(HaCaT細胞)に対する結合性を試験した結果を示す図である。
図6A図6Aは、本発明の抗AQP3抗体の1つである抗体Gの、ヒト上皮細胞(HaCaT細胞)に対する結合性を試験した結果を示す図である。
図6B図6Bは、本発明の抗AQP3抗体の1つである抗体Hの、ヒト上皮細胞(HaCaT細胞)に対する結合性を試験した結果を示す図である。
図6C図6Cは、本発明の抗AQP3抗体の1つである抗体Jの、ヒト上皮細胞(HaCaT細胞)に対する結合能を試験した結果を示す図である。
図6D図6Dは、マウスAQP3を過剰発現するHEK293細胞に対する抗体Eの結合性を試験した結果を示す図である。
図6E図6Eは、マウスAQP3を過剰発現するHEK293細胞に対する抗体Hの結合性を試験した結果を示す図である。
図6F図6Fは、マウスAQP3を過剰発現するHEK293細胞に対する抗体Jの結合性を試験した結果を示す図である。
図6G図6Gは、マウスAQP3を過剰発現するHEK293細胞に対する抗体Eの結合性を試験した結果を示す図である。
図6H図6Hは、ヒトAQP3を過剰発現するHEK293細胞に対する抗体Eの結合性を試験した結果を示す図である。
図7A図7Aは、本発明の抗AQP3抗体を使用することによってAQP3発現細胞(マウスマクロファージ)についての免疫染色を行った結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体H及び抗体Jを使用した。
図7B図7Bは、本発明の抗AQP3抗体を使用することによってAQP3発現細胞(マウスマクロファージ)(上段パネル)及びAQP3ノックアウト細胞についての免疫染色を行った結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図8A図8Aは、マウス上皮細胞(PAM212細胞)を使用することによって本発明の抗AQP3抗体の細胞増殖に対する活性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体G及び抗体Jを使用した。
図8B図8Bは、マウス上皮細胞(PAM212細胞)を使用することによって本発明の抗AQP3抗体の細胞増殖に対する活性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図8C図8Cは、マウス上皮細胞(PAM212細胞)を使用することによって本発明の抗AQP3抗体の細胞増殖に対する活性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H及び抗体Jを使用した。
図9図9は、ヒト上皮細胞(HaCaT細胞)を使用することによって本発明の抗AQP3抗体の細胞増殖に対する活性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体G、抗体H及び抗体Jを使用した。
図10図10は、ヒト類上皮ガン細胞(A431細胞)を使用することによって本発明の抗AQP3抗体の細胞増殖に対する活性を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体G、抗体H及び抗体Jを使用した。
図11図11は、AQP3発現細胞としてのマウスマクロファージ細胞における過酸化水素透過機能に対する本発明の抗AQP3抗体の機能的阻害作用を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図12図12は、AQP3発現細胞としてのマウスマクロファージ細胞における過酸化水素透過機能に対する本発明の抗AQP3抗体の機能的阻害作用を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H及び抗体Jを使用した。
図13図13は、AQP3発現細胞としてのマウスマクロファージ細胞におけるLPS応答性のp65活性化(p65リン酸化)に対する本発明の抗AQP3抗体の機能的阻害作用を試験した結果を示す図である。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図14A図14Aは、四塩化炭素処置によってマウスにおいて引き起こされた急性肝障害(炎症性応答及び障害応答)に対する本発明の抗AQP3抗体の抑制作用を試験した結果を示す図である。試験を、血清中のASTレベルを指標とすることによって行った。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図14B図14Bは、四塩化炭素処置によってマウスにおいて引き起こされた急性肝障害(炎症性応答及び障害応答)に対する本発明の抗AQP3抗体の抑制作用を試験した結果を示す図である。試験を、血清中のALTレベルを指標とすることによって行った。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図15A図15Aは、四塩化炭素処置によってマウスにおいて引き起こされた急性肝障害(炎症性応答及び障害応答)に対する本発明の抗AQP3抗体の抑制作用を試験した結果を示す図である。試験を、肝臓に由来するRNAサンプルにおけるTNF-αのmRNA発現レベルを指標とすることによって行った。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
図15B図15Bは、四塩化炭素処置によってマウスにおいて引き起こされた急性肝障害(炎症性応答及び障害応答)に対する本発明の抗AQP3抗体の抑制作用を試験した結果を示す図である。試験を、肝臓に由来するRNAサンプルにおけるIL-6のmRNA発現レベルを指標とすることによって行った。本発明の抗AQP3抗体として、抗体Jを使用した。
【発明を実施するための形態】
【0068】
(1)AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体の調製
3つの細胞外ドメインがAQP3には存在するので(例えば、ループA、ループC及びループEなど)、それらの少なくとも1つのAQP3断片を免疫原とすることによって宿主動物を免疫化することができる。ヒトAQP3の場合、全長292アミノ酸残基からなるポリペプチド(UniProtアクセッション:Q92482)において、50位~53位(ループA)、131位~157位(ループC)及び210位~244位(ループE)(すべての位置がN末端側からの位置を表す)が細胞外ドメインのそれぞれを形成する。免疫原は好ましくはループCのAQP3断片である。特に好ましくは、ループCのC末端部分であり、かつ、膜貫通ドメインIVとの境界に隣接する10アミノ酸残基から構成されるポリペプチドが免疫原として使用される。膜貫通ドメインIVの境界に隣接するループCのC末端部分はヒト及びマウスの両方においてアミノ酸配列ATYPSGHLDM(配列番号1)を有する。
様々なオリゴペプチドを周知の標準的な方法によって化学合成することができる。さらには、様々なオリゴペプチドを、商業的に利用可能である受託合成サービスを利用することによって簡単に得ることができる。
免疫原に関しては、オリゴペプチドそのものを免疫化のために使用することができ、又は、免疫化が、当該オリゴペプチドを含むポリペプチドを膜に与える再構成膜又は組換え体細胞を使用することによって行われ得ることもまた可能である。免疫原が、当該オリゴペプチド部分を含む膜貫通蛋白質の形態で調製されるときには、当該調製は好ましくは、バキュロウイルスディスプレイ法を使用することによって行われる。その場合、当該オリゴペプチドを含むポリペプチドをバキュロウイルスの膜表面に発現させることができ、宿主動物の免疫化を、このバキュロウイルスそのものを抗体誘発のための免疫原として使用することによって行うことができる。それらの免疫原は単独で免疫化のために使用してもよいし、又はそれらの組合せを同時に使用してもよい。
いくつかの実施形態において、宿主動物は、アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをAQP3過剰発現細胞との組合せで用いて免疫化される。例えば、AQP3過剰発現細胞は、AQP3を過剰発現するHaCaT細胞、PAM212細胞、マウスマクロファージ又はHEK293細胞、或いはそれらの組合せが可能である。別の実施形態において、AQP3過剰発現細胞はAQP3過剰発現のCHO細胞であり、例えば、マウス又はヒトのAQP3をCMVプロモーターの制御下で発現するCHO細胞である。使用することができる例示的なベクターには、pCMV6-AC(Origene sc322406)(ヒトAQP3)及びpCMV6-Entry-Myc-DDK(Origene MR203989)(マウスAQP3)が含まれる。いくつかの実施形態において、AQP3過剰発現細胞は、マウスAQP3を過剰発現するCHO細胞と、ヒトAQP3を過剰発現するCHO細胞との組合せを含む。
免疫化されることになる宿主動物の好ましい例には、特に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ニワトリ及びラクダのような動物が挙げられる。より好ましくは、宿主動物はマウス又はラットであり、特に好ましくはマウスである。例えば、国際公開第2015/179360A号に記載される方法を参照することができる。抗AQP3抗体を含む抗血清を周知の標準的な方法によって産生させることができる。抗AQP3抗体は、5種類の免疫グロブリン分子(IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE)のどのクラスであっても可能である。抗AQP3抗体は好ましくはIgG又はIgMであり、より好ましくはIgGである。IgGサブクラスの中で、IgG2はADCC活性がより低く、IgG4はCDC活性がより低い。そのようなものとして、細胞損傷性が低い抗体を使用したいときには、IgGの中でも、IgG2又はIgG4のサブクラスの抗体を使用することが好ましい。
【0069】
(2)抗AQP3モノクローナル抗体(抗AQP3mAb)の調製
抗AQP3mAbを、上記(1)で記載されるような調製プロセスの期間中に得られる抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させた後でのクローン化によってモノクローナル抗体として作製することができる。代替では、遺伝子工学的方法に従って、抗AQP3mAbを、化学合成した抗体遺伝子を大腸菌などにおいて発現させることによって作製することができる。抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合するための方法、融合細胞を含む細胞群から所望の細胞をスクリーニングするための方法、スクリーニングによって選抜される細胞を単クローン化するための方法、及びmAbをクローンから作製するための方法はすべて、周知の標準的な方法に従って行うことができる。配列情報に基づく所望のmAbの合成もまた、周知の標準的な方法に従って行うことができる。後述の実施例において詳述されるように、本発明の抗AQP3mAbの代表的な例であるモノクローナル抗体は、具体的に開示される重鎖CDR及び軽鎖CDRのアミノ酸配列、又は具体的に開示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する。mAbはまた、シグナル配列を重鎖及び軽鎖のそれぞれの可変領域から除くことによって得られるアミノ酸配列からなる非分泌型の組換えmAbとして調製することができる。シグナル配列が除かれた組換えmAbは、当該組換えmAbを発現する宿主細胞から培養上清に分泌されることなく当該宿主細胞内に蓄積することができる。シグナル配列はアミノ酸配列情報から予測することができ、例えば、シグナル配列予測ソフトウェアを使用することによって予測することができる。例示的なシグナル配列予測ソフトウェアには、Signal P、及びPRORT IIなどが含まれる。
【0070】
(3)阻害性抗AQP3mAbの調製
抗AQP3抗体の中で、AQP3の機能についての阻害活性を有する抗体が本明細書中では阻害性抗AQP3抗体として示される。モノクローナル抗体の場合には、そのような抗体は、特に阻害性抗AQP3mAbとして示される。本明細書中において、AQP3の機能は、低分子量物質をAQP3によって輸送する(透過させる)活性、AQP3発現細胞の細胞増殖を促進させる活性、及びAQP3発現細胞の細胞遊走を促進させる活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を示している。本明細書中において、低分子量物質は、水分子、グリセロール及び過酸化水素からなる群から選択される少なくとも1つの物質を示している。抗AQP3抗体の所望の阻害活性の有無を、AQP3を構成的に発現する細胞(PAM212細胞、HaCaT細胞又はA431細胞等)に十分量の抗AQP3抗体を細胞外に添加することに従って、非添加対照と比較して、細胞遊走活性及び/又は細胞増殖活性の少なくとも一方が10%以上、20%以上、又は30%以上低下することを指標とすることによって判定することができる。代替では、この判定を、AQP3を構成的に発現する細胞(マウスマクロファージ細胞等)に十分量の抗AQP3抗体を細胞外に添加することに従って、非添加対照と比較して、細胞の過酸化水素透過活性が10%以上、20%以上、又は30%以上低下することを指標とすることによって行うことができる。
【0071】
(4)抗体の機能的断片
AQP3についての十分な特異性及び親和性を示す限り、本発明の抗体は、免疫グロブリン分子の完全な構造を維持することが必ずしも要求されず、当該抗体の機能的断片(抗原結合性断片)であることが可能である。抗体の抗原結合性が抗体の可変部分によって決定されるので、免疫グロブリン分子の定常領域部分は必ずしも存在していなくてもよい。そのようなものとして、本発明の抗体の機能的断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)(これらは、免疫グロブリン分子の可変部分からなる断片である)、VLをFabから除くことによって得られるFd、単鎖Fv断片(scFv)及びその二量体(すなわち、ダイアボディ)が含まれる。代替では、VLをscFvから除くことによって得られる単一ドメイン抗体(sdAb)などもまた使用することができ、しかし、抗体の機能的断片はそれらに限定されない。
抗体の機能的断片を公知の技術によって調製することができる。例えば、断片化を免疫グロブリン分子の酵素処理によって行うことができる。パパインを用いた免疫グロブリン分子の分解に従って、Fabが得られる。ペプシンを用いた分解に従って、F(ab’)が得られ、F(ab’)の還元処理に従って、Fab’が得られる。さらには、遺伝子工学技術に従って、十分な可動性を有するリンカーペプチドを介して抗体の重鎖可変部分(VH)を軽鎖可変部分(VL)に連結することによってscFvを作製することもまた可能である。
【0072】
(5)レポーター物質により標識される抗体
所与の場合に応じて、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、レポーター物質により標識される状態で使用される。レポーター物質は、抗AQP3抗体又はその機能的断片を標識することができ、一方で、所望の機能が維持される限り、どのような種類であっても可能である。AQP3の存在を定量的に測定するためのシグナルを生じさせることができる物質がより好ましい。その例には、放射性同位体、金属微粒子、酵素、蛍光物質及び発光物質が含まれる。放射性同位体、蛍光物質又は発光物質がレポーター物質として使用されるときには、それらから生じる放射能、蛍光又は発光をシグナルとして定量的に測定することができる。レポーター物質が酵素であるときには、好適な基質に加えた後で、最終的に生じる色素、蛍光物質又は発光物質に由来する色、蛍光又は発光をシグナルとして測定することができる。放射性同位体の例には、H及び125Iが含まれる。蛍光物質の例には、フルオレセイン及びその誘導体(例えば、FITC)、テトラメチルローダミン(TAMRA)及びその誘導体(例えば、TRITC)、Cy3、Cy5、Texas Red、フィコエリトリン(PE)、並びに量子ドットが含まれる。発光物質の例には、ルミノール誘導体、アクリジニウム誘導体、エクオリン及びルテニウム錯体が含まれる。金属微粒子の例には、金ナノ粒子、並びに金及び白金の合金から構成されるナノ粒子が含まれる。レポーター酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、β-ガラクトシダーゼ(β-GAL)、アルカリホスファターゼ(ALP)、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ルシフェラーゼ及びエクオリンが含まれる。それぞれの酵素を好適な基質との組合せで使用することによって、発光法、比色法又は蛍光法に基づく分析を行うことができる。定量的分析のためには、レポーター物質により標識される本発明の抗体又はその機能的断片が好ましくは使用される。
【0073】
(6)固体支持体に固定化される抗体
所与の場合に応じて、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、固体支持体に固定化される状態で使用することができる。固体支持体は、抗体又はその機能的断片を固定化することができ、一方で、所望の活性を維持する状態のままである限り、どのような物質であっても可能である。固体支持体は、抗体を用いた生物学的分析に対する影響を何ら有しない不活性な材質から構成される物質であることが好ましい。固体支持体の例には、マイクロプレート、ガラスプレート、プラスチックプレート、シリンジ、バイアル、カラム、磁性粒子、樹脂製マイクロビーズ、多孔性メンブラン、多孔性担体及びマイクロチップが含まれる。マイクロプレート、シリンジ、バイアル、カラム及びマイクロチップはすべてが好ましくは、不活性な樹脂から作製される。固体支持体はまた、ガラス製であることが可能である。
【0074】
(7)ヒト及び/又はマウスに由来するAQP3に特異的に結合する抗体
本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3の細胞外ドメインに結合し、いくつかの実施形態においては特にループC(2番目の細胞外ドメイン)に結合する。ループCのアミノ酸配列は生物種の間での高い保存を示す。ヒトのループCのアミノ酸配列と、マウスのループCのアミノ酸配列との両方(ヒト及びマウスの両方についてN末端側から131位~157位)が、下記に記載されるように高い相同性を有する。
ヒト:ADNQLFVSGPNGTAGIFATYPSGHLDM(配列番号2)
マウス:ANNELFVSGPNGTAGIFATYPSGHLDM(配列番号3)
上記理由により、細胞外ドメインとしてのループCに結合する本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、ヒトAQP3に対して、また、マウスAQP3に対しても特異的に結合する可能性が高い。いくつかの態様において、本発明は、ループCのC末端側の10アミノ酸残基から構成されるポリペプチド(オリゴペプチド)を免疫原として使用することによって得ることができる抗体に関する。10アミノ酸残基から構成されるこのオリゴペプチドは、ATYPSGHLDM(配列番号1)からなるアミノ酸配列を有しており、ヒト配列及びマウス配列はその部分において完全に一致している。このため、本発明の実施例に従って得られる抗AQP3抗体又はその機能的断片はヒトAQP3を特異的に認識するだけでなく、マウスAQP3を特異的に認識する可能性が高い。実際、実施例に記載される個々のmAbに関して実施される試験によれば、本開示のmAbは一般にはそれらの両方を認識することができるようである。さらには、本発明の阻害性抗AQPmAb及びその機能的断片はいくつかの態様においては、ヒトAQP3及びマウスAQP3の両方についてAQP3の機能を阻害する。
いくつかの実施形態において、抗AQP3抗体及びその機能的断片は、AQP3以外の1つ又は複数のヒトアクアポリンに対しては、例えば、AQP0(アクセッション番号NP_036196.1)、APQ1(アクセッション番号NP_932766.1)、AQP2(アクセッション番号NP_000477.1)、AQP4(アクセッション番号NP_001641.1)、AQP5(アクセッション番号NP_001642.1)、AQP6(アクセッション番号NP_001643.2)、AQP7(アクセッション番号NP_001161.1)、AQP8(アクセッション番号NP_001160.2)、AQP9(アクセッション番号NP_066190.2)、AQP10(アクセッション番号NP_536354.2)、AQP11(アクセッション番号NP_766627.1)及びAQP12(アクセッション番号NP_945349.1)の1つ又は複数に対しては特異的に結合しない。
【0075】
(8)抗体分子の可変領域、及び可変領域における相補性決定領域
免疫グロブリン分子は、2つの重鎖ポリペプチドと、2つの軽鎖ポリペプチドとから基本的には構成されるヘテロ四量体分子である。重鎖及び軽鎖のそれぞれが、可変領域と、定常領域とを含む。抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、3つのCDR(相補性決定領域)と、4つのFR(フレームワーク領域)とからなり、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4が、アミノ末端からカルボキシ末端にこの順で配置される。抗体分子のアミノ酸配列情報が公知の技術によって決定されるとき、可変領域又は定常領域の所在を当該配列情報に基づいて推定することができる。さらには、可変領域におけるCDR1、CDR2及びCDR3の配列を推定することもまた、公知の方法によって同様に行うことができる。
【0076】
(9)抗体分子の調製
本発明の代表的な抗AQP3mAbは、重鎖可変領域が配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域が配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなるmAb、重鎖可変領域が配列番号6によって表されるアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域が配列番号7によって表されるアミノ酸配列からなるmAb、又は重鎖可変領域が配列番号8によって表されるアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域が配列番号9によって表されるアミノ酸配列からなるmAbである。
本発明の抗AQP3抗体は、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングした後、又は抗体遺伝子を抗体ポリペプチドのアミノ酸配列情報に基づいて人工合成した後、抗体遺伝子を好適な発現ベクターに導入し、発現ベクターを、遺伝子組換え技術を使用して宿主に導入することによってモノクローナル抗体として産生させることができる。
その場合には、プロモーター、エンハンサー又はポリアデニル化シグナル等をベクターにおいて適宜配置することができる。ベクターに関しては、細菌、酵母及び動物細胞のような複製可能な宿主細胞が使用される限り、どのようなベクターであっても使用することができ、また、市販のベクターを、宿主に応じて適宜使用することができる。発現ベクターは、宿主細胞を形質転換するための公知の方法によって宿主細胞に導入することができる。当該方法の例には、エレクトロポレーション法、DEAE-デキストラン法及びリン酸カルシウム法が含まれる。
宿主細胞は特に限定されず、しかし、真核生物細胞を使用することが好ましい。その例には、酵母、及び動物由来の培養細胞(HEK293細胞、CHO細胞、COS細胞及びMEF等)が含まれる。
産生された抗体の精製を、蛋白質のために一般に用いられる分離及び精製のための方法を使用することによって行うことができる。例えば、産生された抗体の精製を、アフィニティークロマトグラフィー、他のクロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析及び透析等を適宜組み合わせることによって適宜行うことができる。
【0077】
(10)抗体の改変産物
本発明の抗AQP3mAbは、上記節又は表1若しくは表6に記載されるアミノ酸配列を有する抗体の配列改変された産物である場合がある。例えば、重鎖可変領域が配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなり、かつ、軽鎖可変領域が配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなる抗体を改変のための出発点とすることによって、また、AQP3の細胞外ドメインに対する特異的結合性が実質的に維持される範囲(元の抗体の特異的結合性と実質的に同等である特異的結合性が維持される範囲)の範囲内で、改変が重鎖及び軽鎖のそれぞれの可変領域に存在する場合がある。上記のアミノ酸配列のそれぞれにおいて、1つ若しくは数個のアミノ酸残基が、例えば、1個~10個、好ましくは1個~5個、より好ましくは1個又は2個、一層より好ましくは1個のアミノ酸残基が欠失され、置換され、挿入され、又は付加されることもまた可能である。さらには、計算が、BLASTのようなツールを使用することによって行われるとき、改変が、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列相同性が存在する範囲の範囲内で存在する場合がある。しかしながら、どのような改変産物についても、CDRのアミノ酸配列の改変は、(それぞれのCDRが、改変前の抗体のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するように)存在しないことが好ましい。すなわち、いくつかの実施形態において、配列番号4によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の改変ポリペプチドに関して、配列に対する改変が、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR3については存在しない。同様に、いくつかの実施形態において、配列番号5によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の改変ポリペプチドに関して、配列に対する改変が、配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号15のアミノ酸配列からなるCDR3については存在しない。同じことが、配列番号6によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の改変ポリペプチド、配列番号7によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の改変ポリペプチド、配列番号8によって表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の改変ポリペプチド、及び配列番号9によって表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の改変ポリペプチドに対して当てはまり得る。
CDRの配列が、抗体のエピトープを決定するための主要な要因であることが広く知られている。本発明の抗AQP3mAbは好ましくは、上記の配列改変された産物についてでさえ、完全に保存されたCDRが、重鎖及び軽鎖に含まれるように総数6で存在する。そのようなものとして、配列改変された産物は、改変前の抗AQP3mAbと同じエピトープについての特異的結合性を有することが無理なく予想される。さらには、同じエピトープに結合する限り、抗AQP3mAbが上記の配列改変された産物であるときでさえ、配列改変された産物は、改変前の抗体のようなAQP3の機能を阻害する活性を有することもまた、無理なく予想される。
【0078】
(11)キメラ抗体及びヒト化抗体
本発明の抗AQP3mAbは、ヒトなどに対する異種抗原性を低下させるという目的のための人為的に改変された遺伝子組換え型の抗体であることが可能である。そのような抗体の例には、キメラ抗体及びヒト化抗体が含まれる。これらの改変された抗体は公知の方法によって作製することができる。
キメラ抗体は、本発明の抗AQP3mAbの可変領域(V)をコードするDNAを、ヒト抗体の定常(C)領域をコードするDNAに連結し、得られた構築物を発現ベクターに導入し、このベクターを宿主に導入することによって調製することができる。
ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物の抗体のCDR(例えば、マウス抗体のCDRなど)をヒトのアクセプター抗体に接ぐこと(CDRグラフティング)によって得ることができる。その作製を、遺伝子組換えのための一般的な技術を適用することによって適宜実施することができる。例えば、マウス抗AQP3mAbのそれぞれのCDRと、ヒト抗体のフレームワーク領域とを連結するためのアミノ酸配列をコードするように設計されるDNA配列を、CDR及びFRの両方の末端領域における重複領域を有するように調製されているいくつかのオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用することによってPCR法により合成することが可能である。例えば、これを国際公開第98/13388A号に記載される方法によって行うことができる。ヒト抗体の可変領域のFRは、公開されているDNAデータベースなどから得ることができる。
キメラ抗体及びヒト化抗体の定常領域に関しては、ヒト抗体の定常領域を使用することができる。例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3及びCγ4が重鎖のために使用されることが好ましく、一方、Cκ及びCλが軽鎖のために使用されることが好ましい。
キメラ抗体及びヒト化抗体は、ヒト体内における異種抗原性が低下しているため、ヒトの生体における半減期が長く、本発明の医薬組成物の有効成分(予防及び/又は処置のための作用因)として有用である。抗体をヒト化する様々な方法がこの技術分野では知られている。例えば、Riechmann他、1988、Nature 332:323-7;米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号及び同第6,180,370号(Queen他);EP239400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;EP592106;EP519596;Padlan、1991、Mol.Immunol.、28:489-498;Studnicka他、1994、Prot.Eng.7:805-814;Roguska他、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.91:969-973;並びに米国特許第5,565,332号を参照のこと。
いくつかの実施形態において、抗AQP3抗体又はその機能的断片は、対応する野生型配列と比較して、少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を変化させるために配列が改変されている抗体又は抗体断片であることが可能である。
例えば、いくつかの実施形態において、本発明の抗AQP3抗体は、非改変の抗体と比較して、少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を低下させるために改変することができる(例えば、Fc受容体(FcγR)に対する低下した結合)。FcγR結合を、FcγR相互作用のために必要である特定の領域で抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを変異させることによって低下させることができる(例えば、Canffeld及びMorrison、1991、J.Exp.Med.173:1483-1491;及びLund他、1991、J.Immunol.147:2657-2662を参照のこと)。抗体のFcγR結合能における低下はまた、FcγR相互作用に依拠する他のエフェクター機能、例えば、オプソニン作用、食作用及び抗原依存性細胞傷害性(「ADCC」)などを低下させることができる。
他の実施形態において、本発明の抗AQP3抗体は、非改変の抗体と比較して、少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能を獲得するために、又は改善するために、例えば、FcγR相互作用を強化するために改変することができる(例えば、米国特許出願公開第2006/0134709号を参照のこと)。例えば、本発明の抗AQP3抗体は、対応する野生型定常領域よりも大きい親和性で、FcγRIIA、FcγRJIB及び/又はFcγRIIIAと結合する定常領域を有することができる。
したがって、本発明の抗体は、オプソニン作用、食作用又はADCCの増大又は低下をもたらす生物学的活性における変化を有することができる。そのような様々な変化がこの技術分野では知られている。例えば、ADCC活性を低下させる抗体における様々な改変が米国特許第5,834,597号に記載される。ADCCを低下させる例示的な変異体の1つが、米国特許第5,834,597号の図4に示される「変異体3」に対応しており、この場合、「変異体3」は、残基236が欠失され、かつ、残基234、残基235及び残基237(これらはEU番号表記を使用する)がアラニンにより置換される。
【0079】
(12)AQP3検出用試薬
本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3特異的結合能を有するという観点から、当該抗体又はその機能的断片を含む組成物が提供され得る。この組成物はAQP3検出用試薬として提供され得る。本明細書中において、試薬に含まれることになる抗AQP3抗体又はその機能的断片はまた、上記(5)で記載されたようなレポーター物質により標識される場合がある。試薬に含まれることになる抗AQP3抗体又はその機能的断片がレポーター物質により標識されるときには、検出を、二次抗体を使用することなく行うことができる。別の実施形態として、試薬に含まれることになる抗体又はその機能的断片は固体支持体(例えば、磁性微粒子など)に結合又は吸着させられる場合がある。本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片が試薬における溶液として含有される場合、その濃度を試薬の目的又は使用様式に応じて適宜設定することができる。例えば、その濃度を、1ng/mL~10mg/mL、100ng/mL~1mg/mL、又は1μg/mL~300μg/mLの範囲で設定することができる。さらには、試薬がストック溶液としてそのまま使用される場合があるが、ストック溶液はまた、目的に応じて、希釈された状態(10倍~10,000倍)で使用することができる。溶媒に関しては、水又は緩衝剤溶液を適宜使用することができる。
【0080】
(13)AQP3発現細胞の同定、分離及び精製のための試薬
本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、AQP3の細胞外ドメイン、より具体的には、いくつかの態様においてはループCの内部のエピトープを特異的に認識し、これに結合する。本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3分子の細胞外ドメインに結合することができるという観点から、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はまた、生細胞がサンプルとして用いられるシステムのために使用することができる。免疫組織化学的染色を行う場合についてさえ、組織又は細胞の固定化又は透析を行うことは必要ない。それによれば、サンプルとなる細胞の状態に関わらず、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3発現細胞の同定のために使用することができる。特に、血球細胞のような単離された生細胞がサンプルとして用いられるときには、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、フローサイトメーターのような好適な機器との組合せに従ってAQP3発現細胞の分離又は精製のために使用することができる。本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片がAQP3発現細胞の分離又は精製のために使用されるときには、上記(5)で記載されるようなレポーター物質により標識される抗AQP3抗体又はその機能的断片が適宜使用される。レポーター物質に関しては、蛍光性色素が好ましい。その例には、FITC、PE/RD1、ECD、PC5、PC7及びAPC/Cy3が含まれる。代替において、AQP3発現細胞の分離又は精製のために、固相(例えば、磁性微粒子など)に固定化される抗AQP3抗体又はその機能的断片もまた使用することができる。固相に固定化される抗AQP3抗体又はその機能的断片に結合した後で、AQP3発現細胞を、磁力等を利用することによって特異的に分離することができる。分離後、抗体又はその機能的断片を塩強度の調節などに基づいて細胞から解離させることができる。そのようなものとして、この順序に従って、AQP3発現細胞の分離又は精製を完了させることができる。AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のために、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片を含む組成物が、AQP3検出用試薬として提供される。試薬は、上記(12)で記載されるように作製され、使用される場合がある。
【0081】
(14)AQP3発現量測定用試薬
本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片は、上記(12)で記載されるようなAQP3検出用試薬の成分として使用することができる。本明細書中において、抗AQP3抗体又はその機能的断片が上記(5)に記載されるようなレポーター物質により標識され、レポーター物質が、定量的測定を可能にするシグナルを生じさせるならば、標的としてのAQP3の存在の有無だけでなく、AQP3の発現量もまた定量的に測定することができる。さらには、レポーター物質により標識される抗AQP3抗体、又はその機能的断片が使用されない場合でさえ、定量的測定を可能にするシグナルを生じさせるレポーター物質により標識される二次抗体を併用することによって、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片はAQP3発現量の測定のために使用することができる。この目的のために、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片を含む組成物がAQP3発現量測定用試薬として提供される。試薬は、上記(12)の例で記載されるように適宜作製され、使用される場合がある。
【0082】
(15)抗体薬物コンジュゲート
本発明は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲート化される本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。ADCを作製するための様々なリンカー及びプロセスがこの技術分野では知られており、これらを、本発明のADCを作製するために使用することができる。例えば、Tsuchikama及びAn、2018、Protein&Cell、9(1):33-46;Deonarain他、2015、Expert Opin Drug Discov.10(5):463-81;Singh他、2015、Pharm Res.2015 Nov;32(11):3541-71を参照のこと。本開示のADCは、ガンの処置において使用するための医薬組成物に含めることができる。
例示的な細胞傷害性薬剤には、例えば、アウリスタチン類、カンプトテシン類、カリケアミシン類、デュオカルマイシン類、エトポシド類、メイタンシノイド類(例えば、DM1、DM2、DM3、DM4)、タキサン類、ベンゾジアゼピン類(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン類、インドリノベンゾジアゼピン類及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン類、並びにピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン二量体)、及びビンカアルカロイドが含まれる。
治療剤を蛋白質にコンジュゲート化するための、特に抗体にコンジュゲート化するための様々な技術が周知である。(例えば、Alley他、2010、Current Opinion in Chemical Biology、14:1-9;Senter、2008、Cancer J.、14(3):154-169を参照のこと。)典型的には、治療剤はリンカーユニットを介して抗体にコンジュゲート化される。リンカーユニットは切断可能又は非切断性であることが可能である。例えば、治療剤を、AQP3発現ガン細胞の細胞内環境における切断に対して感受性があり、しかし、細胞外環境に対しては実質的に感受性がない切断可能なリンカーを用いて抗体に取り付け、その結果、(例えば、エンドソーム環境、リソソーム環境において、又はカベオラ環境において)AQP3発現ガン細胞によって内在化されたときにコンジュゲートが抗体から切断されるようにすることができる。別の例において、治療剤は非切断性のリンカーを介して抗体にコンジュゲート化することができ、薬物放出が、AQP3発現ガン細胞による内在化の後での完全な抗体分解によってもたらされる。
典型的には、ADCはリンカー領域を細胞傷害性薬剤と抗AQP3抗体との間に含むであろう。上記のように、典型的には、リンカーは、リンカーの切断により、治療剤が細胞内環境において(例えば、リソソーム又はエンドソーム又はカベオラの内部で)抗体から放出されるように、細胞内条件のもとで切断可能であることが可能である。リンカーは、例えば、リソソーム又はエンドソームのプロテアーゼを含めて細胞内のペプチダーゼ酵素又はプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであることが可能である。切断作用因として、カテプシンB及びカテプシンD、並びにプラスミンを挙げることができる(例えば、Dubowchik及びWalker、1999、Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照のこと)。最も典型的なものが、AQP3発現細胞に存在する酵素によって切断可能であるペプチジルリンカーである。例えば、ガン性組織において高発現するチオール依存性プロテアーゼのカテプシン-Bによって切断可能であるペプチジルリンカーを使用することができる(例えば、Phe-Leuペプチド又はVal-Citペプチドを含むリンカー)。リンカーはまた、細胞内のグリコシダーゼによって切断される糖リンカー(例えば、グルクロニダーゼによって切断可能であるグルクロニドリンカー)を含めて炭水化物リンカーであることが可能である。
リンカーはまた、非切断性リンカーであることが可能であり、例えば、治療剤に直接に取り付けられ、抗体の蛋白質分解によって放出されるマレイミド-アルキレン-リンカー又はマレイミド-アリールリンカーなどであることが可能である。
抗AQP3抗体は抗体のヘテロ原子を介してリンカーにコンジュゲート化することができる。これらのヘテロ原子はその自然の状態で抗体に存在し得るか、又は抗体に導入することができる。いくつかの態様において、抗AQP3抗体はリジン残基の窒素原子を介してリンカーにコンジュゲート化されるであろう。他の態様において、抗AQP3抗体はシステイン残基のイオウ原子を介してリンカーにコンジュゲート化されるであろう。システイン残基は、天然に存在するもの、又は操作によって抗体に導入されるものが可能である。リンカー及び薬物-リンカーを、リジン残基及びシステイン残基を介して抗体にコンジュゲート化する様々な方法が、この技術分野において知られている。
例示的な抗体-薬物コンジュゲートには、アウリスタチンに基づく抗体-薬物コンジュゲートが含まれる(すなわち、薬物成分がアウリスタチン薬物である)。アウリスタチンはチューブリンと結合し、微小管の動力学、並びに核及び細胞の分裂を妨害することが示されており、抗ガン活性を有する。典型的には、アウリスタチンに基づく抗体-薬物コンジュゲートはリンカーをアウリスタチン薬物と抗AQP3抗体との間に含む。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー、炭水化物リンカー)又は非切断性のリンカー(例えば、抗体の分解によって放出されるリンカー)であることが可能である。アウリスタチンとして、MMAF及びMMAEが挙げられる。例示的なアウリスタチンの合成及び構造が、米国特許第7,659,241号、同第7,498,298号、米国特許出願公開第2009-0111756号、同第2009-0018086号及び米国特許第7,968,687号に記載される。
他の例示的な抗体-薬物コンジュゲートには、メイタンシノイド抗体-薬物コンジュゲート(すなわち、薬物成分がメイタンシノイド薬物である)、及びベンゾジアゼピン抗体薬物コンジュゲート(すなわち、薬物成分がベンゾジアゼピン系化合物(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン二量体(PBD二量体)、インドリノベンゾジアゼピン二量体及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン二量体)である)が含まれる。
【0083】
(16)抗AQP3抗体又はその機能的断片を含む組成物を含むことによって得られるキット
上記(12)~(14)で記載されるように、本発明の抗AQP3抗体又はその機能的断片を使用することによって、AQP3検出用試薬、AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のための試薬、及びAQP3発現量測定用試薬を調製することができる。それぞれの目的に従って、それらの試薬は、キットを形成するために、さらなる成分と一緒に使用することができる。キットは、陽性対照としてのAQP3又はその断片、標準物質としての既知濃度のAQP3、二次抗体、酵素基質、補因子、補助成分、陰性対照としての非特異的な蛋白質サンプル、緩衝剤溶液、保存剤、希釈剤、或いは使用者説明書等の構成要素と適宜組み合わされる。ブロッキング処理又は洗浄のための緩衝剤溶液もまた、キットの好適な構成要素として加えることができる。
【0084】
(17)阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片を含む組成物、及びAQP3阻害剤としての組成物
本発明の抗AQP3抗体、その機能的断片、又はADCは、AQP3の細胞外ドメイン、特に、いくつかの実施形態においてはループCにおけるエピトープを特異的に認識し、これに結合する。下記で示される実施例において具体的に記載されるように、当該エピトープに結合する本発明の抗AQP3mAbは、AQP3の少なくとも1つの機能、例えば、AQP3のチャネル機能(例えば、過酸化水素透過性)、又はAQP3発現細胞におけるAQP3の細胞増殖促進機能などを阻害することができる。すなわち、本発明の抗AQP3抗体は阻害性抗AQP3抗体と見なすことができる。そのようなものとして、本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片を含む組成物を提供することが可能である。さらには、この組成物はAQP3阻害剤として使用することができる。
【0085】
(18)ガン処置用組成物
AQP3の増大した発現レベルが、皮膚ガン、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン及び舌ガン等のそれぞれで確認されている。さらには、下記で示される実施例において記載されるように、AQP3を発現するヒトガン細胞株の増殖を阻害することができる。それに従えば、本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片、本発明のADC、或いはAQP3阻害剤を含む組成物を、上記ガンのいずれか1つを処置するための組成物として使用することができる。さらには、AQP3の機能が、ガンの進行度、腫瘍の血管形成、浸潤性、転移、及びガン組織のエネルギー代謝などに関連することが示唆されてきたように、ガン処置用組成物はまた、ガン増殖抑制用組成物、ガンにおける血管形成の抑制用組成物、ガン浸潤抑制用組成物、及び/又はガン転移抑制/防止用組成物と見なすことができる。
本発明のガン処置用組成物は注射用溶液などの配合物で調製することができる。基本的には、そのようなガン処置用組成物は注射又は点滴によって全身投与することができる。しかしながら、ガン処置用組成物が、ガンの処置又は転移の防止などを目的として使用される場合には、局所投与もまた行うことができる。それらの製剤は公知の方法によって調製することができる。例えば、製剤が注射用製剤で調製されるときには、製造を、無菌的に保存されている本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片或いは本発明のADCを注射用の水、生理食塩水又は緩衝剤溶液に溶解し、又は希釈することによって行うことができる。
本発明の処置用組成物の有効成分となる本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片或いは本発明のADCの効果的な用量が好適には、患者の状態又は症状などを含めて様々な事情に依存して変化する。一般には、単回用量が、1kgの体重あたり0.1mg~10mgの抗AQP3mAbの範囲内で決定され、皮下注射、静脈内注射又は腹腔内注射等によって投与される。投与間隔もまた好適には、患者の状態又は症状などを含めて様々な事情に依存して変化する。一般には、投与は1週間~4週間にわたって1回行われる。しかし、数回の毎週の投与を行った後で、ある一定の期間にわたって投与が行われないこと、又は、1回~数回の最初の投与の後で、投与が、用量を半減するなどしながら、同じペースで継続され得ることもまた可能である。
【0086】
(19)皮膚障害の予防及び/又は処置のための組成物
本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片或いはAQP3阻害剤を含む組成物は、ケラチノサイトのような皮膚組織の細胞におけるAQP3の機能を阻害するメカニズムに基づいて、皮膚障害の予防及び/又は処置のための組成物として使用することができる。皮膚障害の具体的な例には、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎が含まれる。それ以外に、ケラチノサイト増殖性の皮膚異常を治癒させるために、又は改善するために、本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片を含む組成物、或いはAQP3阻害剤を含むことによって得られる本発明の処置用組成物を使用することができる。
【0087】
(20)炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物
本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片、或いはAQP3阻害剤を含む組成物は、AQP3の機能を阻害することに従って炎症性応答を軽減するメカニズムに基づいて、炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物として使用することができる。炎症性障害の具体的な例には、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息及び慢性閉塞性肺疾患、並びに肝炎が含まれる。肝炎の例には、急性肝炎及び急性肝障害が含まれる。それ以外に、AQP3の増大した発現を伴う炎症性障害を防止するために、治癒させるために、又は改善するために、本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片を含む組成物、或いは本発明のAQP3阻害剤を含むことによって得られる炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物を使用することができる。
【0088】
(21)便通異常の緩和のための組成物
AQP3が腸管の上皮細胞で発現していることが広く知られており、AQP3の発現レベルが腸管の内外における水分の移動量に影響していることが示唆されている。具体的には、AQP3の発現レベルの低下が、腸管内の水分を増大させることによって下痢を引き起こすことがあり、一方、AQP3の発現レベルの増大が、腸管内の水分を低下させることによって便秘を引き起こすことがあることが示唆されている。そのようなものとして、本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片、或いはAQP3阻害剤を含む組成物は、AQP3の機能を阻害するメカニズムに基づいて、便通異常を緩和するための組成物として、特に便秘を緩和するための組成物として使用することができる。当該組成物は、例えば、腸溶性錠剤又は座剤の形態で調製され、使用される場合がある。腸溶性錠剤又は座剤は公知の技術によって適宜調製することができる。投与を継続的又は定期的に行うことは必要でなく、投与は、症状における変化などに応じて適した間隔により行うことができる。
【0089】
(22)本発明の皮膚障害又は炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物の調製
本発明の阻害性抗AQPmAb又はその機能的断片は、薬学的に許容されるキャリアなどと一緒に、予防及び/又は処置のための組成物として提供することができる。皮膚障害又は炎症性障害が対象となっている場合についてもまた、当該組成物は基本的には、また、好適には、上記(18)で記載されるガン処置用組成物のような医薬組成物(予防及び/又は処置のための組成物)として調製することができる。医薬組成物は、注射液などのような配合物とすることができる。医薬組成物はまた、水溶液、懸濁物又はエマルションのような形態を有する場合がある。医薬組成物は、塩、緩衝剤又は補助剤等を含めて、薬学的に許容される希釈剤、助剤又はキャリア等を含む場合がある。それらの製剤は公知の方法によって調製することができる。医薬組成物が注射用製剤の形態で調製されるとき、その製造を、無菌的に保存されている阻害性抗AQPmAb又はその機能的断片の乾燥製造物又は保存溶液を、皮下注射又は静脈内注射のための生理食塩水又は緩衝剤溶液を用いて溶解又は希釈することによって行うことができる。代替として、阻害性抗AQPmAb又はその機能的断片をシクロデキストリン類によって封入することにより水溶性を高めることもまた可能である。
【0090】
(23)本発明の皮膚障害又は炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物のための補助成分
本発明の阻害性抗AQP3mAb又はその機能的断片を含む組成物、或いは阻害性AQP3mAbを含む予防及び/又は処置のための組成物は、他の抗体製剤が開発され、同時に、製剤が液体製剤であり、有効成分の濃度が高いときなどにおいては問題として現れることが多いように、抗AQP3mAb又はその機能的断片の凝集又は沈殿を起こす可能性があるかもしれない。凝集又は沈殿を防止するという目的のために、1つ又は2つ以上の補助成分が組成物に含まれる場合がある。補助成分の例には、糖類(例えば、単糖、二糖又はオリゴ糖など)、糖アルコール、塩及び界面活性剤が含まれる。そのより具体的な例には、スクロース、塩化ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートが含まれる。
【0091】
(24)本発明の皮膚障害又は炎症性障害の予防及び/又は処置のための組成物の投与形態
本発明の予防及び/又は処置のための組成物の有効成分となる阻害性抗AQPmAb又はその機能的断片の効果的な用量が好適には、患者の状態又は症状などを含めて様々な事情に依存して変化する。投与用量が好適には、患者の状態又は症状などを含めて様々な事情に依存して変化する。しかしながら、例えば、上記(18)で例示されるような用量を設定することができる。投与間隔もまた、上記(18)の例と同様に設定することができ、しかし、投与を継続的又は定期的に行うことは必要でなく、投与は、症状における変化などに応じて適した間隔により行うことができる。治癒又は寛解が1回だけの投与によって達成されるならば、複数回の投与は必要でないであろうことは、言うまでもないことである。症状の再発又は悪化が認められるときには、投与を再開することができる。
投与期間を患者の疾患状態に応じて適宜調節することができる。投与期間中の投与用量が適宜調節され得るが、一定量が継続的に投与されることが好ましく、又は、比較的大きい用量を初期の投与段階でのみ投与した後で、維持のためのより少ない量の絶え間ない投与に移行する投与形態とすることが好ましい。
【実施例
【0092】
以下、本発明が実施例によってより具体的に説明されるが、本発明はそれらの実施例によって何ら限定されない。
【0093】
[実施例1]
免疫原として使用されるオリゴペプチドの配列決定
AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体を得るために、本発明者らは、AQP3の構造に関して、特に、細胞外ドメインを構成するループA、ループC及びループEの構造に関して多数回のコンピューターモデリング研究を行い、結果として、ループC(細胞外の2番目のループ)の一部を構成する配列番号1のアミノ酸配列から構成される断片(オリゴペプチド)を免疫原として選択した。配列番号1のアミノ酸配列は、ヒトAQP3ポリペプチドの148位~157位に対応する配列であり、膜貫通ドメインIVとの境界に隣接するループCのC末端側の10アミノ酸残基から構成される。
【0094】
[実施例2]
免疫化及び抗体選抜
配列番号1のアミノ酸配列から構成されるオリゴペプチドを合成ペプチドとして作製した。さらには、そのアミノ酸配列を含むAQP3ポリペプチドを過剰発現する細胞(AQP3過剰発現細胞)を別途作製した。その後、合成ペプチドをAQP3過剰発現細胞と一緒にし、免疫原として使用した。
上記免疫原の懸濁物による免疫化をC57BL/6系統のマウスの腹腔内にアジュバンドと一緒に行った。その後、免疫細胞を免疫されたマウスから集め、抗体遺伝子ファージライブラリーを構築した。このファージライブラリーをCHO-K1細胞に導入し、組換え体抗体を形質転換されたCHO-K1細胞の細胞膜に呈示させた。最初のパターン化もまた、形質転換細胞及び合成ペプチドを使用することによって行い、AQP3可溶性蛋白質を使用するパターン化を続いて行った。数回のスクリーニングを使用して、AQP3結合コロニーを選択した。最後に、AQP3特異的結合活性を有するクローンを免疫グロブリン化(IgG)して、10個のクローンと、それら10個のクローンに由来する10個の抗AQP3mAb(抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体K)とを得た。
一方、ループEに由来するオリゴペプチドを免疫原として使用したときには、AQP3についての有意な結合活性を示すクローンは得られなかった。
【0095】
[実施例3]
AQP3に対する抗AQP3抗体の結合性
A.免疫原ペプチドに対する抗体結合
免疫化のために使用されるペプチド(配列番号1)に対する抗体(A、B、C、D、E、F、G、H、J及びK)の結合をELISAアッセイで調べた。結果を図2に示す。抗体B、抗体C、抗体E、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体Kがペプチドと結合することが認められた。抗体A、抗体D及び抗体Fは、それら以外の抗体とは対照的に、このアッセイでは当該ペプチドと強く結合しなかった。このように、したがって、抗体A、抗体D及び抗体Fは、異なるエピトープでAQP3に結合するかもしれない。
B.ELISAによって測定されるAQP3含有細胞溶解物に対する抗体結合
マウスAQP3及びmycビオチン化タグを過剰発現するHEK293T細胞からの細胞溶解物をELISAアッセイで使用して、AQP3に対する抗体(A、B、C、D、E、F、G、H、J及びK)の結合を測定した。AQP3ではなくmyc-ビオチン化タグを過剰発現するHEK293T細胞からの細胞溶解物を対照として使用した。結果を図3に示す。抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体Kのそれぞれが、AQP3に対する結合を示した。
C.AQP3発現細胞に対する抗体結合
マウス上皮細胞(PAM212)、マウスマクロファージ細胞、ヒト上皮細胞(HaCaT)及びHEK293細胞をAQP3発現細胞として使用することによって、細胞に対する抗AQP3抗体(A、B、C、D、E、F、G、H、J、及びK)の結合性を測定した。
PAM212細胞及びマクロファージ細胞を4℃で1時間、それぞれの抗AQP3抗体(0.1μg/mL、1μg/mL又は10μg/mL)と反応させた。細胞を洗浄した後、蛍光標識された抗マウス二次抗体を加え、反応をさらに1時間行わせた(4℃)。蛍光強度を測定することによって、細胞に対するそれぞれの抗AQP3抗体の結合性を得た。
マウスマクロファージ細胞と抗体Jとを使用することによって得られた結果を図4に示す。
試験をまた、溶媒(Veh)又は非特異的IgG(IgG)対照を使用して行った。図4において、縦軸は蛍光強度を表し、それぞれのサンプルの平均蛍光強度が標準誤差と一緒に棒の高さによって表される。抗体Jが、0.1μg/mL、1μg/mL及び10μg/mLのどのような濃度でも使用されたすべての場合から、有意に増大した蛍光強度が、対照(Veh及びIgG)と比較して認められた(図において、**は、P<0.01の有意差が存在することを表す)。抗体Jが細胞表面のマウスAQP3を特異的に認識し、その結果、抗体Jとマウスマクロファージ細胞とが相互に結合することが見出された。
PAM212細胞(これはマウス上皮細胞である)と抗体Jとを使用することによって得られた結果を図5Aに示す。
試験をまた、溶媒(Veh)又は非特異的IgG(IgG)対照を使用して行った。図5Aにおいて、縦軸は蛍光強度を表し、それぞれのサンプルの平均蛍光強度が標準誤差と一緒に棒の高さによって表される。抗体Jが、0.1μg/mL、1μg/mL及び10μg/mLのどのような濃度でも使用されたすべての場合から、有意に増大した蛍光強度が、対照(Veh及びIgG)と比較して認められた(図において、**は、P<0.01の有意差が存在することを表す)。抗体Jが細胞表面のマウスAQP3を特異的に認識し、その結果、抗体JとPAM212細胞とが相互に結合することが見出された。
アッセイをまた、PAM212細胞と、10μg/mLの濃度での抗体(A、B、C、D、E、F、G、H及びJ)とを使用して行った。結果を図5Bに示す。抗体C、抗体D、抗体E、抗体G及び抗体JのPAM212細胞に対する結合は統計学的に有意であった。
アッセイをまた、HaCaT細胞と、10μg/mLの濃度での抗体(A、B、C、D、E、F、G、H及びJ)とを使用して行った。結果を図5Cに示す。抗体C、抗体D、抗体E、抗体H及び抗体JのHaCaT細胞に対する結合は統計学的に有意であった。HaCaT(これはヒト上皮細胞である)と、抗体G、抗体H又は抗体Jとを使用してFACSアッセイを行うことによって得られた結果を図6A図6Cにそれぞれ示す。
HaCaT細胞を37℃で30分間、細胞解離緩衝液で処理し、その後、取り出し、集めた。その後、細胞を4℃で1時間、10μg/mLの抗AQP3抗体と反応させた。細胞を洗浄した後、蛍光標識された抗マウス二次抗体を加え、反応をさらに1時間行わせた(4℃)。その後、フローサイトメーターを使用することによって、蛍光強度を測定した(図6A図6C)。図6Aは、抗体Gが使用された場合の結果を表す。図6Bは、抗体Hが使用された場合の結果を表す。図6Cは、抗体Jが使用された場合の結果を表す。それぞれのパネルが、横軸が蛍光強度を表し、縦軸が、最頻値を100とするときの細胞数分布を表すヒストグラムを示す。濃い線により表されるヒストグラムは、抗AQP3抗体が使用された場合を表し、一方、薄い灰色の線により表されるヒストグラムは、抗AQP3抗体が使用されなかった対照としての場合(非特異的IgGの添加)を表す。図において、水平の棒によって表される範囲は、AQP3抗体陽性細胞群によって示される蛍光強度を示している。この範囲に含まれる細胞(=抗AQP3抗体による陽性染色を示す細胞)の割合(%)もまた、図に示される。
抗体G、抗体H及び抗体Jのいずれかが使用されたすべての場合から、蛍光強度における明らかな増大が、対照と比較して認められ、したがって、これらの抗AQP3抗体が細胞表面のヒトAQP3について結合活性を有することが見出された。
FACSアッセイもまた、マウスAQP3を安定的に過剰発現するHEK293細胞を使用して行った。細胞を、10μg/mLの濃度での抗体E、抗体H、抗体J又は陰性対照IgGと1時間インキュベーションし、その後、FACSによって選別した。別に、ヒトAQP3を安定的に過剰発現するHEK293細胞を10μg/mLの濃度での抗体Eと1時間インキュベーションし、その後、FACSによって選別した。結果を図6D図6Hに示す。抗体E、抗体H及び抗体Jのそれぞれが、HEK293細胞の表面に過剰発現するAQP3に結合することが見出された。
上記から、本発明のいくつかの抗AQP3抗体は、マウスマクロファージ細胞、マウス上皮細胞(PAM212細胞)及びヒト上皮細胞(HaCaT細胞)に結合することが見出された。
【0096】
[実施例4]
免疫染色
マウスマクロファージ細胞をAQP3発現細胞として使用することによって、免疫組織化学分析を行って、抗AQP3抗体が免疫染色のために使用できるか否かを調べた。
ブロッキング処理を、マウスマクロファージ細胞が付着したプレートについて行い、その後、10μg/mLの抗AQP3抗体との反応を4℃で1時間行った。細胞を洗浄した後、蛍光標識された抗マウス二次抗体を加え、反応をさらに1時間行わせた(4℃)。対照として、抗AQP3抗体を使用しない試験もまた行った。さらには、細胞核の場所を明確にするために、DAPIを使用する染色もまた行った。蛍光染色の観察を共焦点蛍光顕微鏡によって行った。抗体H及び抗体Jを使用することによって得られた結果を、抗体を有しない対照の結果と一緒に図7Aに示す。図7Aにおいて、左側パネルは、抗体が存在しなかった場合(抗AQP3抗体が存在せず、二次抗体のみが存在した場合)の観察像を示し、中央パネルは、抗体Hが使用された場合の観察像を示し、右側パネルは、抗体Jが使用された場合の観察像を示す。すべてのパネルから、ドット様形状が細胞核の場所を示すDAPI由来のシグナルが認められた。一方、抗体H又は抗体Jが使用されたときには、DAPI染色に起因するドット様形状のシグナルを囲むことによって細胞形状の縁に巻きつくように見えるシグナルもまた認められた。しかしながら、抗体が存在しなかったときには、DAPI染色に起因するドット様形状のシグナルを囲むように見えるシグナルが全く認められなかった。
かすかなシグナルのみが、抗体Jと、AQP3ノックアウトマウス(Ma他、2000、PNAS、97(8):4386-4391)からのマウスマクロファージ細胞とを使用して免疫染色を行ったときには認められ、このことは、抗体JがAQP3発現マクロファージ細胞に特異的に結合することを示した(図7B)。
上記から、本発明の試験された抗AQP3抗体は、免疫組織化学分析のために使用することができる抗体であることが示された。
【0097】
[実施例5]
細胞増殖阻害活性
マウス上皮細胞(PAM212)、マウスAQP3発現細胞としてのマウスマクロファージ、ヒト上皮細胞(HaCaT)、又はヒト上皮様ガン細胞(A431)を使用することによって、抗AQP3抗体による細胞増殖阻害活性を測定した。
PAM212、HaCaT及びA431のそれぞれを、1%のFBSを含有するDMEM培地に懸濁し、96ウエルプレートに播種した(5,000細胞/ウエル)。播種の翌日に、抗AQP3抗体(0.1μg/ml、1μg/ml又は10μg/ml)を含有するDMEM培地を加え、培養をさらに2日間続けた。細胞数を、生細胞測定用試薬(ナカライテスク株式会社)を使用し、吸光度を450nmで測定することによって比較した。
図8A及び図8Bは、PAM212 AQP3発現細胞が使用された場合から得られる結果を表す。抗体G又は抗体Jを使用することによって得られた結果を、非特異的IgGを対照として試験した結果(非特異的IgGを10μg/mLで加えた;対照)と一緒に図8Aに示す。図8Aにおいて、縦軸は450nmでの吸光度を示し、吸光度レベルを標準誤差と一緒に棒の高さによって表した(図8B図9及び図10についても同じ)。図におけるアスタリスク()は、対照と比較して、P<0.01の有意差が認められることを示している。抗体G又は抗体J(10μg/mL)が使用されたとき、PAM212細胞増殖についての有意な阻害活性が認められた。
PAM212細胞増殖についての阻害活性に対する抗AQP3抗体Jの濃度依存的影響を分析し、図8Bに示す。抗体Jが、0.1μg/mL、1μg/mL又は10μg/mLで使用されたときの生細胞の数を、対照としての非特異的IgGの結果(非特異的IgGを10μg/mLで加えた;Ct)と一緒に図8Bに示す。細胞増殖についての阻害活性が濃度依存的様式で抗体Jによって増大した。図8Bにおいて、抗体Jが1μg/mL及び10μg/mLで使用された場合について記載されるアスタリスク()は、対照と比較して、P<0.01の有意差が認められることを示している。
図8Cは、PAM212細胞成長に対する10μg/mLの濃度での抗体(A、B、C、D、E、F、G、H、J)及び陰性対照IgG抗体の影響を示す。試験濃度において、抗体B、抗体C、抗体E及び抗体Jが細胞成長を有意に抑制した。
図9は、HaCaT細胞がヒトAQP3発現細胞の材料として使用された場合から得られる結果を表す。抗体G、抗体H又は抗体Jを使用することによって得られた結果を、非特異的IgGを対照として試験した結果(非特異的IgGを10μg/mLで加えた;対照)と一緒に図9に示す。図9において、アスタリスク()及び(**)は、対照と比較して、P<0.05又はP<0.01の有意差が認められることをそれぞれ示している。抗体G、抗体H又は抗体Jが使用されたとき(10μg/mL)、HaCaT細胞増殖についての有意な阻害活性が示された。
図10は、A431細胞がヒトAQP3発現細胞の材料として使用された場合から得られる結果を表す。抗体G、抗体H又は抗体Jを使用することによって得られた結果を、非特異的IgGを対照として試験した結果(非特異的IgGを10μg/mLで加えた;対照)と一緒に図10に示す。図10において、アスタリスク()は、対照と比較して、P<0.05の有意差が認められることを示している。抗体G、抗体H又は抗体Jが使用されたとき(10μg/mL)、A431細胞増殖についての有意な阻害活性が認められた。A431細胞はヒト扁平上皮ガン細胞株であるので、これらの抗AQP3抗体によるAQP3発現ガン細胞の増殖抑制効果が示された。
上記から、本発明の抗AQP3抗体の中でも、少なくとも抗体G、抗体H及び抗体Jに関しては、ガン細胞を含むAQP3発現細胞における細胞増殖に対する有意な阻害活性が、抗AQP3抗体とAQP3発現細胞との共培養が行われるときに示されることが明確に示された。
【0098】
[実施例6]
過酸化水素透過阻害活性
マウスマクロファージをマウスAQP3発現細胞として使用することによって、過酸化水素透過性(取り込み性)の抗AQP3抗体による阻害活性を測定した。
マウスマクロファージを、1%のFBSを含有するDMEM培地に懸濁し、96ウエルプレートに播種した(10,000細胞/ウエル)。播種の翌日に、抗AQP3抗体としての抗体J(10μg/mL)、又は10μg/mLの対照IgG抗体(Ct-IgG:AQP3に対する特異的結合性を有しないIgG抗体)を含有するDMEM培地を加え、共培養をさらに一晩行った。培養物に対して、過酸化水素(100μM)又はリポ多糖(LPS)(300ng/mL)を加え、細胞内の活性酸素種(ROS)の量を測定した。細胞内のROS量を、CM-HDCFDA試薬(Invitrogen、50μM、20分間)加えることによって細胞を染色した後、CM2DCF由来の蛍光強度を添加の前後で測定することによって評価した。ROSの一種としての過酸化水素が細胞内へ透過するならば、増大した蛍光強度が細胞内の増大したROS量の指標として解釈される測定を行うことが可能である。LPSの添加は、細胞内のROS量を人為的に増大させる機能を有する。
図11は、過酸化水素が共培養系に加えられた場合(H)、リポ多糖が共培養系に加えられた場合(LPS)、又は、H及びLPSの両方が共培養系に加えられなかった場合(Ct)について、抗体Jが共培養系に加えられたとき(Ab)、又は溶媒が共培養系に加えられたとき(Veh)のCM2DCF由来の蛍光強度を示す。縦軸は蛍光強度の相対的値を表す。溶媒を、Ct-IgG抗体が加えられている細胞に加えた場合(図における左側の棒)を100%で設定し、それぞれの条件における相対的蛍光強度が標準誤差と一緒に棒の高さによって表される。図において、アスタリスク(**)は、P<0.01の有意差が比較物の間で認められることを示しており、過酸化水素添加時又はLPS添加時には、細胞内のROS量が、溶媒が添加されたVeh群と比較して有意に増大したこと、そして、過酸化水素を加える、又はLPSを加えるどのような条件においてでも、抗体Jが共培養時に存在するならば、細胞内のROS量が、抗体Jが存在しない場合と比較して有意に低下したことが明確に示される。
図12は、抗体(A、B、C、D、E、F、G、H及びJ)を使用して行われたH輸送アッセイの結果を示す。
抗体C、抗体D、抗体E、抗体H及び抗体Jが、AQP3発現細胞の内部への過酸化水素の取り込みを著しく抑制する活性を有する。
【0099】
[実施例7]
細胞シグナル阻害活性
マウスマクロファージでは、p65/NFκBがLPSによる刺激に応じてリン酸化され、活性化されることが知られている。LPSに応答する細胞シグナルが、マウスAQP3発現細胞であるマウスマクロファージにおいて抗AQP3抗体によって阻害されるか否かを明らかにするために、試験を行った。
マウスマクロファージを、1%のFBSを含有するDMEM培地に懸濁し、60mmディッシュに播種した(2x10細胞/ディッシュ)。播種の翌日に、抗AQP3抗体としての抗体J(10μg/mL)、又は10μg/mLの対照IgG抗体(非特異的IgG抗体)を含有するDMEM培地を加え、共培養をさらに一晩続けた(結果を示す図13において、前者の条件を「抗AQP3 +」として記載し、後者の条件を「抗AQP3 -」として記載した)。両方の条件のもとでのそれぞれの培養産物をLPS処理(100ng/mL、1時間)又はLPS非処理に供した(結果を示す図13において、前者の条件を「LPS +」として記載し、一方、後者の条件を「LPS -」として記載した)。抗AQP3抗体の添加の有無及びLPS処理の有無に従って、4つの処理群を、マウスマクロファージをサンプルとして設けた。これら4つの処理群のそれぞれの細胞から蛋白質を抽出し、p65/NFκBのリン酸化状態をそれぞれの群について免疫ブロッティングによって求めた。
図13は、非リン酸化p65(p65)及びリン酸化p65(P-p65)のそれぞれに対して特異的である抗体を使用することによって免疫ブロッティングを行った結果を示す。
リン酸化p65が、「抗AQP3 -」の条件でのLPS処理によって強く誘導された(最も左側のカラムの上段パネルのシグナルを右側から2番目のカラムの上段パネルのシグナルと比較のこと)。その一方で、抗AQP3抗体が存在する「抗AQP3 +」の条件では、LPS処理によるリン酸化p65(P-p65)の誘導が阻害された(左側から2番目のカラムの上段パネルのシグナルを最も右側のカラムの上段パネルのシグナルと比較のこと、また、LPS添加に関する条件の間での比較については、右側の2つのカラムの上段パネルのシグナルを比較のこと)。
LPS誘導のp65/NFκBがAQP3発現細胞におけるリン酸化及び活性化に関わる細胞内シグナルについて、抗体Jは阻害活性を有している。
【0100】
[実施例8]
肝障害(急性肝炎及び急性肝障害)に対する阻害活性
試験を、本発明の抗AQP3抗体の抗炎症活性(炎症阻害活性及び障害阻害活性)を動物対象において明らかにするために行った。
マウスを試験材料として使用した。マウスに抗AQP3抗体(抗体J)(5μg/g体重)を静脈内投与した。投与の翌日に、肝障害(急性肝炎及び急性肝障害)を誘発させるための化学物質である四塩化炭素(CCl)を投与した(0.5μL/g体重)。四塩化炭素を投与した24時間後に、血清と、肝臓のRNAサンプルとを採取した。肝障害の程度の指標として、血清AST値、血清ALT値、肝臓TNF-α mRNAの蓄積レベル、及び肝臓IL-6 mRNAの蓄積レベルを評価した。血液サンプルを使用する分析結果、及び肝臓RNAサンプルを使用する分析を図14及び図15にそれぞれ示す。
図14Aは血清ASTレベルの分析結果を示す。図において、縦軸はASTレベル[IU/L]を表し、「〇」によって表されるそれぞれの点が個々の測定値を示し、水平の棒が中央値を示している。Ctは、四塩化炭素処置を受けなかった対照を意味する。四塩化炭素処置群(CCl)において、Abは、事前に抗AQP3抗体(抗体J)により処理されている群を表し、Vehは、抗AQP3抗体により処理されなかった群を表す。図において、アスタリスク()は、p<0.01の有意差が四塩化炭素処置群(Veh群及びAb群の両方)と対照群(Ct)との間で認められること、また、同様に、p<0.01の有意差が四塩化炭素処置群の中においてVeh群とAb群との間で認められることを示している。
図14Bは血清ALTレベルの分析結果を示す。図において、縦軸はALTレベル[IU/L]を表し、「〇」によって表されるそれぞれの点が個々の測定値を示し、水平の棒が中央値を示している。Ctは、四塩化炭素処置を受けなかった対照を意味する。四塩化炭素処置群(CCl)において、Abは、事前に抗AQP3抗体(抗体J)により処理されている群を表し、Vehは、抗AQP3抗体により処理されなかった群を表す。図において、アスタリスク()は、p<0.01の有意差が四塩化炭素処置群(Veh群及びAb群の両方)と対照群(Ct)との間で認められること、また、同様に、p<0.01の有意差が四塩化炭素処置群の中においてVeh群とAb群との間で認められることを示している。
血清AST値及び血清ALT値の両方が肝障害(急性肝炎及び急性肝障害)の指標となり得ることが広く知られている。上記の試験結果から、本発明の抗AQP3抗体により事前に処理されているマウスでは、四塩化炭素によって後で引き起こされる肝障害及び/又は肝臓炎症反応が防止され得る又は抑制され得ることが理解される。
図15Aは、肝臓ホモジネートにおけるTNF-α mRNAの蓄積レベルの分析結果を示す。図において、縦軸は、TNF-α mRNAの蓄積レベルを、対照としての18s rRNAレベルによって除することによって得られたTNF-α発現レベルを表す。図において、TNF-α発現レベルが標準誤差と一緒に棒の高さによって示される。Ctは、四塩化炭素処置を受けなかった対照を意味する。四塩化炭素処置群(CCl)において、Abは、事前に抗AQP3抗体(抗体J)により処理されている群を表し、Vehは、抗AQP3抗体により処理されなかった群を表す。図において、アスタリスク()は、p<0.01の有意差がVeh群と対照(Ct)群との間で、また、同様に、Veh群とAb群との間で認められることを示している。
図15Bは、肝臓ホモジネートにおけるIL-6 mRNAの蓄積レベルの分析結果を示す。図において、縦軸は、IL-6 mRNAの蓄積レベルを、対照としての18s rRNAレベルによって除することによって得られたIL-6発現レベルを表す。図において、IL-6発現レベルが標準誤差と一緒に棒の高さによって示される。Ctは、四塩化炭素処置を受けなかった対照を意味する。四塩化炭素処置群(CCl)において、Abは、事前に抗AQP3抗体(抗体J)により処理されている群を表し、Vehは、抗AQP3抗体により処理されなかった群を表す。図において、アスタリスク()は、p<0.01の有意差がVeh群と対照(Ct)群との間で、また、同様に、Veh群とAb群との間で認められることを示している。
肝臓におけるTNF-α又はIL-6の発現が肝障害(急性肝炎及び急性肝障害)の指標であることが広く知られている。上記の試験結果から、本発明の抗AQP3抗体により事前に処理されているマウスでは、四塩化炭素によって後で引き起こされる肝障害及び/又は肝臓炎症反応が防止され得る又は抑制され得ることが理解される。
肝障害(急性肝炎及び急性肝障害)を有し得る動物個体の場合について、肝障害又は炎症応答の発生を本発明の抗AQP3抗体によって防止することができ、又は抑制することができる。
【0101】
[実施例9]
抗AQP3抗体の配列分析
本発明の実施例で得られた10個のクローンに由来する10個の抗AQP3抗体(抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体K)の中で、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をそれぞれの抗体について決定した。重鎖及び軽鎖の配列(予測されたシグナル配列を有しない配列;尚、予測されたシグナル配列は、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体Kについては同じであり、抗体F、抗体H及び抗体Jに関しては下記で議論される)を表6に示す。
【0102】
【表37】
【0103】
【表38】
【0104】
【表39】
【0105】
【表40】
【0106】
【表41】
さらには、決定されたアミノ酸配列情報を既知の分析技術と組み合わせることによって、免疫グロブリン分子のそれぞれの鎖に含まれる可変領域、CDR及びシグナルペプチドの配列を決定した。
(1)抗体F
抗体Fの重鎖可変領域は、配列番号4によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、24位のセリン残基までの19アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この重鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はGYTFTDYY(配列番号10)のアミノ酸配列、CDR2(IMGT定義)はIFPGSGST(配列番号11)のアミノ酸配列、CDR3(IMGT定義)はADYGSSYRYFDV(配列番号12)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
抗体Fの軽鎖可変領域は、配列番号5によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、25位のグリシン残基までの20アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この軽鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はSSVSY(配列番号13)のアミノ酸配列、CDR2(IMGT定義)はATS(配列番号14)のアミノ酸配列、CDR3(IMGT定義)はQQWSSNPLT(配列番号15)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
(2)抗体H
抗体Hの重鎖可変領域は、配列番号6によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、24位のセリン残基までの19アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この重鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はGFTYSSYG(配列番号16)のアミノ酸配列、CDR2(IMGT定義)はISRRSIYT(配列番号17)のアミノ酸配列、CDR3(IMGT定義)はARLSLYDYDGARYTMDYのアミノ酸配列(配列番号18)をそれぞれ有する。
抗体Hの軽鎖可変領域は、配列番号7によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、25位のグリシン残基までの20アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この軽鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はQDVGTA(配列番号19)のアミノ酸配列、CDR2(IMGT定義)はWAS(配列番号20)のアミノ酸配列、CDR3(IMGT定義)はQQYSSYHT(配列番号21)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
(3)抗体J
抗体Jの重鎖可変領域は、配列番号8によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、24位のセリン残基までの19アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この重鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はアミノ酸配列GYTFTSYW(配列番号22)を有する。CDR2(IMGT定義)はアミノ酸配列INPSNGGT(配列番号23)、CDR3(IMGT定義)はARGGIYYGNYDYYAMDY(配列番号24)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
抗体Jの軽鎖可変領域は、配列番号9によって表されるアミノ酸配列を有する。
N末端側から数えたとき、当該アミノ酸配列において6位のメチオニン残基から始まって、25位のグリシン残基までの20アミノ酸残基から構成される領域が、シグナルペプチドであると思われる。
この軽鎖可変領域において、CDR1(IMGT定義)はKSLLHSNGNTY(配列番号25)のアミノ酸配列、CDR2(IMGT定義)はRVS(配列番号26)のアミノ酸配列、CDR3(IMGT定義)はMQHLEYPFT(配列番号27)のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
(4)結果の概要、及び考察
抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J及び抗体Kは、独立したクローンにそれぞれが由来する異なる抗体であることが配列情報から明白である。
これらの抗体のいくつかが、抗原としてのマウスAQP3及びヒトAQP3の両方に特異的に結合することが示された(具体的には、それらは、ループCに含まれる配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペプチド断片に結合することができる)。加えて、これらの抗体のいくつかは、阻害性抗AQP3mAbであることが示された。本発明の阻害性抗AQP3抗体は、AQP3が担う低分子量分子透過機能(例えば、過酸化水素透過機能)を抑制すること、AQP3発現細胞の細胞機能(例えば、細胞増殖機能)を抑制すること、及び炎症性応答又はAQP3関連障害応答を抑制することから選択される少なくとも1つの阻害活性を有する。
独立したクローンに由来する多数の阻害性抗体が首尾よく得られたことは、AQP3の細胞外ドメインの1つとしてのループCに含まれる、配列番号1のアミノ酸配列から構成される領域により構成されるエピトープが重要であり、そして、当該エピトープを特異的に認識することができる抗AQP3抗体を選択することによって、一層より多くの独立した阻害性抗AQP3抗体が選択され得ることを意味する。本発明は、AQP3の細胞外ドメインを認識し、細胞の外側からAQP3に直接に結合することができる抗体を提供する。本発明はまた、関連技術分野においてこれまで知られていなかった抗AQP3mAbを提供することができる。加えて、それらに限定されることはないが、本発明は複数分子の阻害性抗AQP3抗体を提供し、また、AQP3の細胞外ドメインに含まれるエピトープに関する明確な情報を与えており、したがって、阻害性抗AQP3抗体を新たに得ることを可能にしている。
【産業上の利用可能性】
【0107】
AQP3の細胞外ドメインを特異的に認識する本発明の抗AQP3モノクローナル抗体はAQP3の高感度検出を可能にしており、また、AQP3を発現する生細胞の同定、分離及び精製のためにもまた使用することができるという観点から、AQP3に関連する様々な分析を可能にしており、したがって、産業上の利用可能性を有する。さらには、本発明の抗AQP3モノクローナル抗体は、AQP3が担う低分子量分子透過機能を阻害すること、AQP3発現細胞の細胞機能(細胞増殖等)を阻害すること、及び肝臓等における炎症性応答の発生を阻害することのようなAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有し得るので、様々な障害の予防又は処置のために使用することができ、したがって、産業上の利用可能性を有する。
【0108】
具体的な実施形態
様々な具体的な実施形態が説明され、記載されているが、様々な変化が、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。本開示は、以下に示される番号つき実施形態によって例示される。
1.アミノ酸配列がATYPSGHLDM(配列番号1)からなるオリゴペプチドに特異的に結合する抗AQP3抗体又はその機能的断片。
2.ヒトAQP3に特異的に結合する、実施形態1に記載の抗体又はその機能的断片。
3.マウスAQP3に特異的に結合する、実施形態1又は実施形態2に記載の抗体又はその機能的断片。
4.ヒトAQP3の細胞外ドメイン及び/又はマウスAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する抗AQP3抗体又はその機能的断片。
5.ヒトAQP3の細胞外ドメイン及び/又はマウスAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
6.ヒトAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態4又は実施形態5に記載の抗体又はその機能的断片。
7.マウスAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態4~6のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
8.PAM212細胞の表面に発現するAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態4~7のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
9.マウスマクロファージの表面に発現するAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態4~8のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
10.HEK293細胞の表面に発現するAQP3の細胞外ドメインに特異的に結合する、実施形態3~9のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
11.ヒトAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
12.マウスAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
13.PAM212細胞、HaCaT細胞及びA431細胞の1つ又は複数の増殖を阻害する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
14.PAM212細胞の増殖を阻害する、実施形態13に記載の抗体又はその機能的断片。
15.HaCaT細胞の増殖を阻害する、実施形態13又は実施形態14に記載の抗体又はその機能的断片。
16.A431細胞の増殖を阻害する、実施形態13~15のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
17.増殖が、実施例5に記載されるアッセイに従って測定される、実施形態13~16のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
18.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較して増殖を少なくとも10%阻害する、実施形態13~17のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
19.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較して増殖を少なくとも20%阻害する、実施形態18に記載の抗体又はその機能的断片。
20.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較して増殖を少なくとも30%阻害する、実施形態19に記載の抗体又はその機能的断片。
21.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較して増殖を約10%~約30%阻害する、実施形態18に記載の抗体又はその機能的断片。
22.H輸送を阻害する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
23.H輸送の阻害が、実施例6に記載されるアッセイに従って測定される、実施形態22に記載の抗体又はその機能的断片。
24.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較してH輸送を少なくとも10%阻害する、実施形態22又は実施形態23に記載の抗体又はその機能的断片。
25.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較してH輸送を少なくとも20%阻害する、実施形態24に記載の抗体又はその機能的断片。
26.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較してH輸送を少なくとも30%阻害する、実施形態24に記載の抗体又はその機能的断片。
27.AQP3とは特異的に結合しないIgG対照抗体と比較してH輸送を約10%~約30%阻害する、実施形態24に記載の抗体又はその機能的断片。
28.p65のリン酸化を阻害する、実施形態1~27のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
29.p65のリン酸化の阻害が、実施例7に記載されるアッセイに従って測定される、実施形態28に記載の抗体又はその機能的断片。
30.四塩化炭素により処置されたマウスにおける肝臓の炎症性応答を阻害する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
31.四塩化炭素により処置されたマウスにおける肝臓の炎症性応答が、実施例8に記載されるアッセイに従って測定される、実施形態30に記載の抗体又はその機能断片。
32.表2A~表5Eの1つに示される配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCRD2)、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗AQP3抗体又はその機能的断片。
33.表2Aに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
34.表2Bに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
35.表2Cに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
36.表2Dに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
37.表2Eに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
38.表3Aに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
39.表3Bに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
40.表3Cに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
41.表3Dに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
42.表3Eに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
43.表4Aに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
44.表4Bに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
45.表4Cに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
46.表4Dに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
47.表4Eに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
48.表5Aに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
49.表5Bに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
50.表5Cに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
51.表5Dに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
52.表5Eに示されるようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
53.抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J又は抗体Kの相補性決定領域(CDR)配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
54.抗体AのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
55.抗体BのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
56.抗体CのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
57.抗体DのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
58.抗体EのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
59.抗体FのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
60.抗体GのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
61.抗体HのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
62.抗体JのCDR配列を含む、実施形態53に記載の抗体又はその機能的断片。
63.抗体KのCDR配列を含む、実施形態53による抗体又はその機能的断片。
64.CDR配列が、表1A~表1Jに示されるIMGT番号表記によって定義される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
65.CDR配列が、表1A~表1Jに示されるKabat番号表記によって定義される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
66.CDR配列が、表1A~表1Jに示されるChothia番号表記によって定義される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
67.CDR配列が、表1A~表1Jに示されるIMGT・Kabat・Chothia共通配列によって定義される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
68.CDR配列が、表1A~表1Jに示されるIMGT・Kabat・Chothia統合重複配列によって定義される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
69.抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、抗体F、抗体G、抗体H、抗体J又は抗体Kの可変重鎖(VH)配列及び可変軽鎖(VH)配列を含む、実施形態32に記載の抗体又はその機能的断片。
70.表1Aに示される抗体AのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
71.表1Bに示される抗体BのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
72.表1Cに示される抗体CのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
73.表1Dに示される抗体DのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
74.表1Eに示される抗体EのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
75.表1Fに示される抗体FのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
76.表1Gに示される抗体GのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
77.表1Hに示される抗体HのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
78.表1Iに示される抗体JのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
79.表1Jに示される抗体KのVH配列及びVL配列を含む、実施形態69による抗体又はその機能的断片。
80.ヒトAQP3への結合について実施形態1~79のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片と競合する抗体又はその機能的断片。
81.競合が、細胞表面に発現するヒトAQP3への結合についてである、実施形態80に記載の抗体又はその機能的断片。
82.競合が、HEK293細胞の表面に発現するヒトAQP3への結合についてである、実施形態80に記載の抗体又はその機能的断片。
83.マウスAQP3への結合について実施形態1~79のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片と競合する抗体又はその機能的断片。
84.競合が、細胞表面に発現するマウスAQP3への結合についてである、実施形態83に記載の抗体又はその機能的断片。
85.競合が、HEK293細胞の表面に発現するマウスAQP3への結合についてである、実施形態84に記載の抗体又はその機能的断片。
86.競合が、PAM212細胞の表面に発現するマウスAQP3への結合についてである、実施形態84に記載の抗体又はその機能的断片。
87.競合が、マウスマクロファージ細胞の表面に発現するマウスAQP3への結合についてである、実施形態84に記載の抗体又はその機能的断片。
88.AQP3以外の1つ又は複数のヒトアクアポリン(「非AQP3アクアポリン」)には特異的に結合しない、実施形態1~87のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
89.非AQP3アクアポリンが、AQP0、APQ1、AQP2、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、AQP8、AQP9、AQP10、AQP11及びAQP12から選択される、実施形態88に記載の抗体又はその機能的断片。
90.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP0を含む、実施形態89に記載の抗体又はその機能的断片。
91.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP1を含む、実施形態88~90のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
92.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP2を含む、実施形態88~91のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
93.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP4を含む、実施形態88~92のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
94.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP5を含む、実施形態88~93のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
95.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP6を含む、実施形態88~94のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
96.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP7を含む、実施形態88~95のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
97.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP8を含む、実施形態88~96のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
98.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP9を含む、実施形態88~97のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
99.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP10を含む、実施形態88~98のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
100.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP11を含む、実施形態88~99のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
101.1つ又は複数の非AQP3アクアポリンがAQP12を含む、実施形態88~100のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
102.実施形態1~101のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がIgGの免疫グロブリン分子である、抗体又はその機能的断片。
103.実施形態1~102のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がモノクローナル抗体である、抗体又はその機能的断片。
104.ヒト抗体の定常領域を有するキメラ抗体又はヒト化抗体である、実施形態1~103のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
105.キメラ抗体である、実施形態104に記載の抗体又はその機能的断片。
106.ヒト抗体の定常領域を有するヒト化抗体である、実施形態104に記載の抗体又はその機能的断片。
107.抗体である、実施形態1~106のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
108.単一特異性抗体である、実施形態107に記載の抗体又はその機能的断片。
109.多重特異性抗体である、実施形態107に記載の抗体又はその機能的断片。
110.抗体の機能的断片である、実施形態1~106のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
111.F(ab’)2、Fab、Fab’及びFvから選択される機能的断片である、実施形態110に記載の抗体又はその機能的断片。
112.レポーター物質により標識される、実施形態1~111のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
113.固体支持体に固定化される、実施形態1~112のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
114.細胞傷害性薬剤にコンジュゲート化される実施形態1~111のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
115.細胞傷害性薬剤がアルキル化剤を含む、実施形態114に記載のADC。
116.アルキル化剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチルウレア(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、ホテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、マイトマイシン、ジアジクオン(AZQ)、プロカルバジン又はヘキサメチルメラミンを含む、実施形態115に記載のADC。
117.細胞傷害性薬剤が代謝拮抗剤を含む、実施形態114に記載のADC。
118.代謝拮抗剤が、メトトレキサート、ペメトレキセド、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン又はペントスタチンを含む、実施形態117に記載のADC。
119.細胞傷害性薬剤が抗微小管剤を含む、実施形態114に記載のADC。
120.抗微小管剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンフルニン、モノメチルアウリスタチンE又はモノメチルアウリスタチンFを含む、実施形態119に記載のADC。
121.細胞傷害性薬剤がトポイソメラーゼ阻害剤を含む、実施形態114に記載のADC。
122.トポイソメラーゼ阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン又はアクラルビシンを含む、実施形態121に記載のADC。
123.細胞傷害性薬剤が細胞傷害性抗生物質を含む、実施形態114に記載のADC。
124.細胞傷害性抗生物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン又はブレオマイシンを含む、実施形態123に記載のADC。
125.実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体又はその断片を含む組成物。
126.AQP3検出用試薬である、実施形態125に記載の組成物。
127.AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のための試薬である、実施形態125に記載の組成物。
128.AQP3発現量測定用試薬である、実施形態125又は126に記載の組成物。
129.実施形態126~128のいずれか1つに記載の組成物を含むキット。
130.実施形態1~112のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその断片を含む組成物であって、モノクローナル抗体又はその機能的断片がAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、組成物。
131.薬学的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物である、実施形態130に記載の組成物。
132.実施形態114~124のいずれか1つに記載のADCと、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物。
133.ガンの処置において使用するための実施形態131又は実施形態132に記載の組成物。
134.ガンが、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン、舌ガン、皮膚ガン及び乳ガンからなる群から選択されるガンである、実施形態133に記載の組成物。
135.皮膚障害の予防及び/又は処置において使用するための実施形態131に記載の組成物。
136.皮膚障害が、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎からなる群から選択される、実施形態135に記載の組成物。
137.炎症性障害の予防及び/又は処置において使用するための実施形態131に記載の組成物。
138.炎症性障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患及び肝炎からなる群から選択される、実施形態137に記載の組成物。
139.AQP3を検出するための方法であって、サンプルを実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体若しくはその断片と、又は実施形態125若しくは126に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
140.AQP3発現細胞を分離及び/又は精製するための方法であって、細胞を含むサンプルを実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態125~127のいずれか1つに記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
141.AQP3を測定するための方法であって、サンプルを実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態125、126若しくは128に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
142.AQP3の少なくとも1つの機能を阻害するための方法であって、AQP3を含むサンプルを実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態130に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
143.膜を横断する低分子量物質の輸送を阻害するための方法であって、AQP3を含む膜を有するサンプルを実施形態1~113のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態130に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
144.ガンを有する対象を処置する方法であって、実施形態1~112のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片、実施形態114~124のいずれか1つに記載のADC、又は実施形態131若しくは実施形態132に記載の組成物の治療効果的な量を対象に投与することを含む、方法。
145.ガンが、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン、舌ガン、皮膚ガン及び乳ガンからなる群から選択されるガンである、実施形態144に記載の方法。
146.対象における皮膚障害を予防及び/又は処置する方法であって、実施形態1~112のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片、又は実施形態131に記載の組成物の治療効果的な量を対象に投与することを含む、方法。
147.皮膚障害が、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎からなる群から選択される、実施形態146に記載の方法。
148.皮膚障害を処置する方法である、実施形態146又は実施形態147に記載の方法。
149.対象における炎症性障害を予防及び/又は処置する方法であって、実施形態1~112のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片、又は実施形態131に記載の組成物の治療効果的な量を対象に投与することを含む、方法。
150.炎症性障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患及び肝炎からなる群から選択される、実施形態149に記載の方法。
151.炎症性障害を処置する方法である、実施形態149又は実施形態150に記載の方法。
152.抗AQP3抗体を生成させるための方法であって、(i)アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドと、(ii)AQP3過剰発現細胞との組合せにより非ヒト哺乳動物を免疫化することを含む、方法。
153.哺乳動物がマウスである、実施形態152に記載の方法。
154.AQP3過剰発現細胞が、AQP3を過剰発現するHaCaT細胞、PAM212細胞、マウスマクロファージ若しくはHEK293細胞、又はそれらの組合せを含む、実施形態152又は実施形態153に記載の方法。
155.AQP3過剰発現細胞が、AQP3を過剰発現するCHO細胞を含む、実施形態152又は実施形態153に記載の方法。
156.AQP3を過剰発現するCHO細胞が、マウスAQP3を過剰発現するCHO細胞を含む、実施形態155に記載の方法。
157.マウスAQP3が、CMVプロモーターを使用してCHO細胞において発現させられる、実施形態156に記載の方法。
158.AQP3を過剰発現するCHO細胞が、ヒトAQP3を過剰発現するCHO細胞を含む、実施形態155~157のいずれか1つに記載の方法。
159.ヒトAQP3が、CMVプロモーターを使用してCHO細胞において発現させられる、実施形態158に記載の方法。
160.免疫細胞を免疫化された哺乳動物から集めること、免疫細胞からのmRNAを使用して抗体ライブラリーを作製すること、及び1つ又は複数の抗AQP3抗体を抗体ライブラリーから同定することをさらに含む、実施形態152~159のいずれか1つに記載の方法。
本開示はさらに、以下に示されるさらなる番号つき実施形態によって例示される。
1’.アクアポリン3(AQP3)の細胞外ドメインを特異的に認識する抗AQP3抗体、又はその機能的断片。
2’.細胞外ドメインがループCである、実施形態1’に記載の抗体又はその機能的断片。
3’.膜貫通領域IVとの境界に隣接するループCのC末端側の10アミノ酸残基から構成されるオリゴペプチドに特異的に結合する、実施形態1’又は2’に記載の抗体又はその機能的断片。
4’.レポーター物質により標識される、実施形態1’~3’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
5’.固体支持体に固定化される、実施形態1’~4’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
6’.ヒト及び/又はマウスに由来するAQP3に特異的に結合する、実施形態1’~5’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
7’.実施形態1’~6’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がIgGの免疫グロブリン分子である、抗体又はその機能的断片。
8’.AQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、実施形態1’~7’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片。
9’.実施形態1’~8’のいずれか1つに記載の抗体又はその機能的断片であって、抗体がモノクローナル抗体である、抗体又はその機能的断片。
10’.抗体又はその機能的断片が、ヒト抗体の定常領域を有するキメラ抗体又はヒト化抗体である、実施形態9’に記載のモノクローナル抗体。
11’.実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体又はその断片を含む組成物。
12’.AQP3検出用試薬である、実施形態11’に記載の組成物。
13’.AQP3発現細胞の同定、分離又は精製のための試薬である、実施形態11’に記載の組成物。
14’.AQP3発現量測定用試薬である、実施形態11’又は12’に記載の組成物。
15’.実施形態12’~14’のいずれか1つに記載の組成物を含むキット。
16’.実施形態9’又は10’に記載のモノクローナル抗体又はその断片を含む組成物であって、モノクローナル抗体又はその機能的断片がAQP3の少なくとも1つの機能に対する阻害活性を有する、組成物。
17’.薬学的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物である、実施形態16’に記載の組成物。
18’.ガンの処置において使用するための実施形態17’に記載の組成物。
19’.ガンが、結腸直腸ガン、子宮頸ガン、肝ガン、肺ガン、食道ガン、腎臓ガン、胃ガン、舌ガン、皮膚ガン及び乳ガンからなる群から選択されるガンである、実施形態18’に記載の組成物。
20’.皮膚障害の予防及び/又は処置のために使用される、実施形態16’に記載の組成物。
21’.皮膚障害が、乾癬、光線性角化症、魚鱗癬及び脂漏性皮膚炎からなる群から選択される、実施形態20’に記載の組成物。
22’.炎症性障害の予防及び/又は処置において使用するための実施形態16’に記載の組成物。
23’.炎症性障害が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患及び肝炎からなる群から選択される、実施形態22’に記載の組成物。
24’.AQP3を検出するための方法であって、サンプルを実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体若しくはその断片と、又は実施形態11’若しくは12’に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
25’.AQP3発現細胞を分離及び/又は精製するための方法であって、細胞を含むサンプルを実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態11’若しくは12’に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
26’.AQP3を測定するための方法であって、サンプルを実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態11’、12’若しくは14’に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
27’.AQP3の少なくとも1つの機能を阻害するための方法であって、AQP3を含むサンプルを実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態16’に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
28’.膜を横断する低分子量物質の輸送を阻害するための方法であって、AQP3を含む膜を有するサンプルを実施形態1’~10’のいずれか1つに記載の抗体若しくはその機能的断片と、又は実施形態16’に記載の組成物と接触させる工程を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【配列表】
0007356727000001.app