(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】土壌評価センサ、土壌評価システム及び土壌評価センサ用の電極及び土壌のインピーダンス特性を得る装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N27/02 A
(21)【出願番号】P 2020553358
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2019041187
(87)【国際公開番号】W WO2020085250
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018198529
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】二川 雅登
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-200193(JP,A)
【文献】特開2003-090869(JP,A)
【文献】特開2013-040878(JP,A)
【文献】特開2004-198385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110219(WO,A1)
【文献】特開2015-197363(JP,A)
【文献】特開2018-128414(JP,A)
【文献】米国特許第4654598(US,A)
【文献】特開2018-017558(JP,A)
【文献】特開2013-044722(JP,A)
【文献】小笠原慎,低水分土壌計測を可能とするシールド電極型土壌インピーダンスセンサの開発,第33回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集,2016年10月17日,24pm3-B-6, pp.1-5
【文献】長屋昇吾,土壌培地内計測を目指した土中水分量・イオン濃度センサ用インピーダンス計測回路チップの製作と評価,第34回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集,2017年10月24日,02pm1-PS-220, pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 33/24
G01R 27/00-27/32
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌の特性を評価する土壌評価センサであって、
交流の入力電気信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部に接続されると共に、前記入力電気信号を前記土壌に提供する第1電極と、
前記第1電極から離間して設置されると共に、前記入力電気信号に起因する交流の出力電気信号を受ける第2電極と、
前記第2電極に接続されると共に、前記出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、
前記信号発生部及び前記信号計測部に接続されると共に、前記入力電気信号の周波数を制御するための制御信号を前記信号発生部に提供し、前記信号計測部が得た前記出力電気信号を利用して前記土壌の特性を示す評価値を得る処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る第1演算部と、
前記第1情報を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出する第2演算部と、
前記第1情報及び前記第2情報を利用して、前記土壌の評価値を得る第3演算部と、を有し、
前記第1情報は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数である、土壌評価センサ。
【請求項2】
前記第1演算部は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数として前記第1情報を算出し、
前記第2演算部は、前記関数を前記入力電気信号の周波数について微分する演算によって、前記第2情報を算出する、請求項1に記載の土壌評価センサ。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1電極及び前記第2電極が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延びる第1突起部及び第2突起部と、
前記第1突起部に設けられると共に、前記第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記第2突起部に設けられると共に、前記第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の土壌評価センサ。
【請求項4】
土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第1電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第1電極部を有する第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第2電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第2電極部を有すると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1電極部が含む一方の前記電極端から前記入力電気信号を土壌に提供させ、前記第1電極部が含む他方の前記電極端から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第1動作と、
前記第1電極部から前記入力電気信号を前記土壌に提供させ、前記第2電極部から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第2動作と、を行い、
前記第1情報は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数である、土壌評価システム。
【請求項5】
前記第1センサ部は、前記一対の電極端の一方に接続された第1信号発生部と、前記一対の電極端の他方に接続された第1信号計測部と、を有し、
前記第2センサ部は、前記一対の電極端の一方に接続された第2信号発生部と、前記一対の電極端の他方に接続された第2信号計測部と、を有する、請求項4に記載の土壌評価システム。
【請求項6】
前記第1センサ部は、
前記第1センサ部における前記一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第1信号発生部と、
前記一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第1信号計測部と、
前記一対の電極端の一方に前記第1信号発生部を接続すると共に前記一対の電極端の他方に前記第1信号計測部を接続する状態と、前記一対の電極端の両方に前記第1信号発生部を接続する状態と、を相互に切り替える第1切替部と、を有し、
前記第2センサ部は、
前記第2センサ部における前記一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第2信号発生部と、
前記一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第2信号計測部と、
前記一対の電極端の一方に前記第2信号発生部を接続すると共に前記一対の電極端の他方に前記第2信号計測部を接続する接続状態と、前記一対の電極端の両方に前記第2信号計測部を接続する接続状態と、を相互に切り替える第2切替部と、を有する、請求項4に記載の土壌評価システム。
【請求項7】
交流の入力電気信号を発生する信号発生部と、前記信号発生部に接続されると共に、前記入力電気信号を土壌に提供する第1電極と、前記第1電極から離間して設置されると共に、前記入力電気信号に起因する出力電気信号を受ける第2電極と、前記第2電極に接続されると共に、前記出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、を備えて、前記土壌の特性を評価する土壌評価センサ用の電極であって、
前記第1電極及び前記第2電極を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1電極及び前記第2電極が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延びる第1突起部及び第2突起部と、
前記第1突起部に設けられると共に、前記第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記第2突起部に設けられると共に、前記第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、
を備える、土壌評価センサ用の電極。
【請求項8】
土壌が有する特性の評価において、測定対象物である前記土壌のインピーダンス特性を得る装置であって、
前記土壌に入力電気信号を提供すると共に前記土壌から前記入力電気信号に起因する出力電気信号を得ることにより、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る手段と、
前記第1情報を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を計算によって得る手段と、を有し、
前記第1情報は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数である、土壌のインピーダンス特性を得る装置。
【請求項9】
対象領域における土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌に交流の入力電気信号を提供可能である第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌から前記入力電気信号に起因する出力電気信号を取得可能であると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、を備え、
前記第1情報は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数である、土壌評価システム。
【請求項10】
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部及び前記第2センサ部に対して離間する第3センサ部をさらに備え、
前記第1センサ部は、さらに、前記出力電気信号を取得可能であり、
前記第2センサ部は、さらに、前記入力電気信号を提供可能であり、
前記第1センサ部、前記第2センサ部及び前記第3センサ部は、二次元状の面として規定された対象領域を囲むように配置されている、請求項9に記載の土壌評価システム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第1センサから前記入力電気信号を提供し、前記第2センサから前記出力電気信号を取得する第1動作を行い、
前記第1動作の後に、前記第1センサから前記入力電気信号を提供し、前記第3センサ部から前記出力電気信号を取得する第2動作と、
前記第2動作の後に、前記第2センサから前記入力電気信号を提供し、前記第3センサ部から前記出力電気信号を取得する第3動作と、を行う、請求項10に記載の土壌評価システム。
【請求項12】
前記対象領域は、複数の部分領域を含み、
前記複数の部分領域のそれぞれには、第1重み係数、第2重み係数及び第3重み係数が設定され、
前記制御部は、
前記第1動作の結果として得た前記評価値と前記第1重み係数とを用いて、第1演算値を得る動作と、
前記第2動作の結果として得た前記評価値と前記第2重み係数とを用いて、第2演算値を得る動作と、
前記第3動作の結果として得た前記評価値と前記第3重み係数とを用いて、第3演算値を得る動作と、
前記部分領域ごとに得られた、前記第1演算値、前記第2演算値及び前記第3演算値を用いて、前記部分領域ごとに総合演算値を得る動作と、を行う、請求項11に記載の土壌評価システム。
【請求項13】
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部及び前記第2センサ部に対して離間する第3センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部、前記第2センサ部及び前記第3センサ部に対して離間する第4センサ部と、をさらに備え、
前記第1センサ部は、さらに、前記出力電気信号を取得可能であり、
前記第2センサ部は、さらに、前記入力電気信号を提供可能であり、
前記第1センサ部、前記第2センサ部、前記第3センサ部及び前記第4センサ部は、三次元状の領域として規定された対象領域を囲むように配置されている、請求項9に記載の土壌評価システム。
【請求項14】
土壌の特性を評価する土壌評価センサであって、
交流の入力電気信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部に接続されると共に、前記入力電気信号を前記土壌に提供する第1電極と、
前記第1電極から離間して設置されると共に、前記入力電気信号に起因する交流の出力電気信号を受ける第2電極と、
前記第2電極に接続されると共に、前記出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、
前記信号発生部及び前記信号計測部に接続されると共に、前記入力電気信号の周波数を制御するための制御信号を前記信号発生部に提供し、前記信号計測部が得た前記出力電気信号を利用して前記土壌の特性を示す評価値を得る処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る第1演算部と、
前記第1情報を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出する第2演算部と、
前記第1情報及び前記第2情報を利用して、前記土壌の評価値を得る第3演算部と、を有し、
前記第2演算部は、前記第1情報である関数に従う第1周波数と第2周波数との2点間における前記周波数の変化に対する前記インピーダンスの絶対値の変化を前記第2情報として得る、土壌評価センサ。
【請求項15】
前記第1演算部は、前記入力電気信号の周波数を独立変数とし、前記土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数として前記第1情報を算出し、
前記第2演算部は、前記関数を前記入力電気信号の周波数について微分する演算によって、前記第2情報を算出する、請求項14に記載の土壌評価センサ。
【請求項16】
前記第1電極及び前記第2電極を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1電極及び前記第2電極が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延びる第1突起部及び第2突起部と、
前記第1突起部に設けられると共に、前記第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記第2突起部に設けられると共に、前記第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、
をさらに備える、請求項14又は15に記載の土壌評価センサ。
【請求項17】
土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第1電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第1電極部を有する第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第2電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第2電極部を有すると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1電極部が含む一方の前記電極端から前記入力電気信号を土壌に提供させ、前記第1電極部が含む他方の前記電極端から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第1動作と、
前記第1電極部から前記入力電気信号を前記土壌に提供させ、前記第2電極部から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第2動作と、を行い、
前記制御部は、前記第2情報を算出する動作として、前記第1情報である関数に従う第1周波数と第2周波数との2点間における前記周波数の変化に対する前記インピーダンスの絶対値の変化を前記第2情報として得る、土壌評価システム。
【請求項18】
前記第1センサ部は、前記一対の電極端の一方に接続された第1信号発生部と、前記一対の電極端の他方に接続された第1信号計測部と、を有し、
前記第2センサ部は、前記一対の電極端の一方に接続された第2信号発生部と、前記一対の電極端の他方に接続された第2信号計測部と、を有する、請求項17に記載の土壌評価システム。
【請求項19】
前記第1センサ部は、
前記第1センサ部における前記一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第1信号発生部と、
前記一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第1信号計測部と、
前記一対の電極端の一方に前記第1信号発生部を接続すると共に前記一対の電極端の他方に前記第1信号計測部を接続する状態と、前記一対の電極端の両方に前記第1信号発生部を接続する状態と、を相互に切り替える第1切替部と、を有し、
前記第2センサ部は、
前記第2センサ部における前記一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第2信号発生部と、
前記一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第2信号計測部と、
前記一対の電極端の一方に前記第2信号発生部を接続すると共に前記一対の電極端の他方に前記第2信号計測部を接続する接続状態と、前記一対の電極端の両方に前記第2信号計測部を接続する接続状態と、を相互に切り替える第2切替部と、を有する、請求項17に記載の土壌評価システム。
【請求項20】
土壌が有する特性の評価において、測定対象物である前記土壌のインピーダンス特性を得る装置であって、
前記土壌に入力電気信号を提供すると共に前記土壌から前記入力電気信号に起因する出力電気信号を得ることにより、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る手段と、
前記第1情報を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を計算によって得る手段と、を有し、
前記第2情報を計算によって得る手段は、前記第1情報である関数に従う第1周波数と第2周波数との2点間における前記周波数の変化に対する前記インピーダンスの絶対値の変化を前記第2情報として得る、土壌のインピーダンス特性を得る装置。
【請求項21】
対象領域における土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌に交流の入力電気信号を提供可能である第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌から前記入力電気信号に起因する出力電気信号を取得可能であると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2情報を算出する動作として、前記第1情報である関数に従う第1周波数と第2周波数との2点間における前記周波数の変化に対する前記インピーダンスの絶対値の変化を前記第2情報として得る、土壌評価システム。
【請求項22】
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部及び前記第2センサ部に対して離間する第3センサ部をさらに備え、
前記第1センサ部は、さらに、前記出力電気信号を取得可能であり、
前記第2センサ部は、さらに、前記入力電気信号を提供可能であり、
前記第1センサ部、前記第2センサ部及び前記第3センサ部は、二次元状の面として規定された対象領域を囲むように配置されている、請求項21に記載の土壌評価システム。
【請求項23】
前記制御部は、
前記第1センサから前記入力電気信号を提供し、前記第2センサから前記出力電気信号を取得する第1動作を行い、
前記第1動作の後に、前記第1センサから前記入力電気信号を提供し、前記第3センサ部から前記出力電気信号を取得する第2動作と、
前記第2動作の後に、前記第2センサから前記入力電気信号を提供し、前記第3センサ部から前記出力電気信号を取得する第3動作と、を行う、請求項22に記載の土壌評価システム。
【請求項24】
前記対象領域は、複数の部分領域を含み、
前記複数の部分領域のそれぞれには、第1重み係数、第2重み係数及び第3重み係数が設定され、
前記制御部は、
前記第1動作の結果として得た前記評価値と前記第1重み係数とを用いて、第1演算値を得る動作と、
前記第2動作の結果として得た前記評価値と前記第2重み係数とを用いて、第2演算値を得る動作と、
前記第3動作の結果として得た前記評価値と前記第3重み係数とを用いて、第3演算値を得る動作と、
前記部分領域ごとに得られた、前記第1演算値、前記第2演算値及び前記第3演算値を用いて、前記部分領域ごとに総合演算値を得る動作と、を行う、請求項23に記載の土壌評価システム。
【請求項25】
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部及び前記第2センサ部に対して離間する第3センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記入力電気信号を提供可能であると共に前記出力電気信号を取得可能であり、前記第1センサ部、前記第2センサ部及び前記第3センサ部に対して離間する第4センサ部と、をさらに備え、
前記第1センサ部は、さらに、前記出力電気信号を取得可能であり、
前記第2センサ部は、さらに、前記入力電気信号を提供可能であり、
前記第1センサ部、前記第2センサ部、前記第3センサ部及び前記第4センサ部は、三次元状の領域として規定された対象領域を囲むように配置されている、請求項21に記載の土壌評価システム。
【請求項26】
土壌の特性を評価する土壌評価センサであって、
交流の入力電気信号を発生する信号発生部と、
前記信号発生部に接続されると共に、前記入力電気信号を前記土壌に提供する第1電極と、
前記第1電極から離間して設置されると共に、前記入力電気信号に起因する交流の出力電気信号を受ける第2電極と、
前記第2電極に接続されると共に、前記出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、
前記信号発生部及び前記信号計測部に接続されると共に、前記入力電気信号の周波数を制御するための制御信号を前記信号発生部に提供し、前記信号計測部が得た前記出力電気信号を利用して前記土壌の特性を示す評価値を得る処理部と、
前記第1電極及び前記第2電極を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1電極及び前記第2電極が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延び、前記第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記主面の法線方向に延び、前記第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、を備え、
前記処理部は、
前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る第1演算部と、
前記第1情報を利用して、前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出する第2演算部と、
前記第1情報及び前記第2情報を利用して、前記土壌の評価値を得る第3演算部と、を有する、土壌評価センサ。
【請求項27】
土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第1電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第1電極部を有する第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含む第2電極部であって、前記土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に前記土壌から出力電気信号を受ける前記第2電極部を有すると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、
前記第1電極部及び前記第2電極部を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1電極部及び前記第2電極部が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延び、前記第1電極部に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記主面の法線方向に延び、前記第2電極部に電気的に接続された第2拡張電極と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電極部が含む一方の前記電極端から前記入力電気信号を土壌に提供させ、前記第1電極部が含む他方の前記電極端から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第1動作と、
前記第1電極部から前記入力電気信号を前記土壌に提供させ、前記第2電極部から前記入力電気信号に起因する前記出力電気信号を取得させる第2動作と、を行う、土壌評価システム。
【請求項28】
対象領域における土壌の特性を評価する土壌評価システムであって、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌に交流の入力電気信号を提供可能である第1センサ部と、
前記土壌に配置される一対の電極端を含み、前記土壌から前記入力電気信号に起因する出力電気信号を取得可能であると共に、前記第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部の動作を制御するための制御信号を前記第1センサ部及び前記第2センサ部に提供すると共に、前記入力電気信号及び前記出力電気信号を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、前記第1情報を利用して前記入力電気信号の周波数と前記土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、前記第1情報及び前記第2情報を利用して前記土壌の評価値を得る制御部と、
前記第1センサ部の前記電極端及び前記第2センサ部の前記電極端を有する基板であって、前記基板の主面に前記第1センサ部の前記電極端及び前記第2センサ部の前記電極端が設けられている前記基板と、
前記主面の法線方向に延び、前記第1センサ部の前記電極端に電気的に接続された第1拡張電極と、
前記主面の法線方向に延び、前記第2センサ部の前記電極端に電気的に接続された第2拡張電極と、を備える、土壌評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌評価センサ、土壌評価システム及び土壌評価センサ用の電極及び土壌のインピーダンス特性を得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、土壌の評価値を得る装置などを開示する。特許文献1の装置は、評価値として例示される土壌の水分量及び電気伝導度を正確かつ安価に検出する。特許文献1の装置は、土壌に配置される一方の電極に交流の入力電気信号を印加する。土壌に配置される他方の電極は、当該入力電気信号に起因する出力電気信号を捉える。出力電気信号は、電極の間に存在する土壌のインピーダンスに関する情報を含んでいる。そこで、特許文献1の装置は、インピーダンスの絶対値を検出する絶対値検出回路と、インピーダンスの位相を検出する位相検出回路と、を有する。特許文献1の装置は、これらの検出回路の出力を用いてインピーダンスに関する情報としての絶対値及び位相を得る。そして、特許文献1の装置は、絶対値及び位相を利用して、土壌の水分量及び電気伝導度を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、電極の間に存在する土壌のインピーダンスの絶対値及び位相の両方を計測によって得ている。つまり、計測値であるインピーダンスの絶対値及び位相を用いて、土壌の水分量などを算出する。この構成によれば、土壌の水分量といった評価値の精度は、インピーダンスの絶対値及び位相の計測精度の影響を受ける。
【0005】
そこで、本発明は、土壌の評価値を得るための計測値が含む計測精度の影響を受けにくい土壌評価センサ、土壌評価システム及び土壌評価センサ用の電極及び土壌のインピーダンス特性を得る装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、土壌の特性を評価する土壌評価センサである。土壌評価センサは、交流の入力電気信号を発生する信号発生部と、信号発生部に接続されると共に、入力電気信号を土壌に提供する第1電極と、第1電極から離間して設置されると共に、入力電気信号に起因する出力電気信号を受ける第2電極と、第2電極に接続されると共に、出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、信号発生部及び信号計測部に接続されると共に、入力電気信号の周波数を制御するための制御信号を信号発生部に提供し、信号計測部が得た出力電気信号を利用して土壌の特性を示す評価値を得る処理部と、を備える。処理部は、入力電気信号及び出力電気信号を利用して、入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る第1演算部と、第1情報を利用して、入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出する第2演算部と、第1情報及び第2情報を利用して、土壌の評価値を得る第3演算部と、を有する。
【0007】
土壌評価センサは、第1電極から提供する入力電気信号に起因する出力電気信号を第2電極から得る。入力電気信号及び出力電気信号は、電気抵抗と静電容量との並列回路としてモデル化が可能な土壌の特性を反映している。そこで、第1演算部は、入力電気信号及び出力電気信号を利用して、土壌の電気的特性を示すインピーダンスの絶対値を第1情報として得る。ここで、インピーダンスの絶対値は、インピーダンスの位相と所定の関係を有する。第2演算部は、インピーダンスの絶対値を計算処理することにより、インピーダンスの位相を得る。第3演算部は、インピーダンスの絶対値とインピーダンスの位相とを利用して、土壌の特性を示す評価値を得る。評価値を得るために必要な2個のパラメータのうち、インピーダンスの位相は、計測ではなく計算によって得る。従って、土壌の評価値を得るための計測値は、インピーダンスの絶対値だけである。インピーダンスの絶対値は、平均化処理が可能である。平均化処理によれば、計測精度の低下を低減することができる。その結果、土壌評価センサは、土壌の評価値を得るための計測値が含む計測精度の影響を抑制することができる。さらに、土壌評価センサは、良好な評価値を得ることができる。
【0008】
一形態において、第1演算部は、入力電気信号の周波数を独立変数とし、土壌が有するインピーダンスの絶対値を従属変数とする関数として第1情報を算出してもよい。第2演算部は、関数を入力電気信号の周波数について微分する演算によって、第2情報を算出してもよい。これらの構成によれば、インピーダンスの位相を計算処理によって好適に得ることができる。
【0009】
一形態の土壌評価センサは、第1電極及び第2電極を有する基板であって、基板の主面に第1電極及び第2電極が設けられている基板と、主面の法線方向に延びる第1突起部及び第2突起部と、第1突起部に設けられると共に、第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、第2突起部に設けられると共に、第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、をさらに備えてもよい。この構造によれば、粒状の土壌に対する拡張電極の電気的な接触状態を安定化させることができる。従って、土壌に対して入力電気信号を安定して提供できる。さらに、土壌から出力電気信号を安定して得ることができる。
【0010】
本発明の別の形態は、土壌の特性を評価する土壌評価システムである。土壌評価システムは、土壌に配置される一対の電極端を含む第1電極部であって、土壌に交流の入力電気信号を提供すると共に土壌から出力電気信号を受ける第1電極部を有する第1センサ部と、土壌に配置される一対の電極端を含む第2電極部であって、土壌に入力電気信号を提供すると共に土壌から出力電気信号を受ける第2電極部を有すると共に、第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、第1センサ部及び第2センサ部の動作を制御するための制御信号を第1センサ部及び第2センサ部に提供すると共に、入力電気信号及び出力電気信号を利用して入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、第1情報を利用して入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、第1情報及び第2情報を利用して土壌の評価値を得る制御部と、を備える。制御部は、第1電極部が含む一方の電極端から入力電気信号を土壌に提供させ、第1電極部が含む他方の電極端から入力電気信号に起因する出力電気信号を取得させる第1動作と、第1電極部から入力電気信号を土壌に提供させ、第2電極部から入力電気信号に起因する出力電気信号を取得させる第2動作と、を行う。
【0011】
土壌評価システムは、第1センサ部及び第2センサ部を単独で動作させる第1動作と、第1センサ部及び第2センサ部を連携させて動作させる第2動作と、を行う。その結果、第1動作による計測範囲と、第2動作による計測範囲と、を生じさせることが可能になる。従って、広い対象領域に対して漏れのない計測範囲を形成することができる。さらに、制御部は、インピーダンスの位相をインピーダンスの絶対値から計算によって得ている。この処理によれば、第1センサ部及び第2センサ部を連携動作させる第2動作の際に、第1センサ部から入力電気信号を提供するタイミングと、第2センサ部によって出力電気信号を得るタイミングとを時間的に同期させる必要がない。従って、位相計測に起因する計測誤差を生じさせることない。その結果、土壌評価システムは、第1センサ部及び第2センサ部を連携させて良好な評価値を得ることができる。
【0012】
別の形態において、第1センサ部は、一対の電極端の一方に接続された第1信号発生部と、一対の電極端の他方に接続された第1信号計測部と、を有してもよい。第2センサ部は、一対の電極端の一方に接続された第2信号発生部と、一対の電極端の他方に接続された第2信号計測部と、を有してもよい。これらの構成によれば、簡易な構成で広い対象領域についての評価値を得ることができる。
【0013】
別の形態において、第1センサ部は、第1センサ部における一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第1信号発生部と、一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第1信号計測部と、一対の電極端の一方に第1信号発生部を接続すると共に一対の電極端の他方に第1信号計測部を接続する状態と、一対の電極端の両方に第1信号発生部を接続する状態と、を相互に切り替える第1切替部と、を有してもよい。第2センサ部は、第2センサ部における一対の電極端の一方又は両方に接続可能な第2信号発生部と、一対の電極端の他方又は両方に接続可能な第2信号計測部と、一対の電極端の一方に第2信号発生部を接続すると共に一対の電極端の他方に第2信号計測発生部を接続する接続状態と、一対の電極端の両方に第2信号計測部を接続する接続状態と、を相互に切り替える第2切替部と、を有してもよい。これらの構成によれば、2個の電極端から入力電気信号を土壌に提供する。その結果、土壌評価システムは、土壌に対して入力電気信号を良好に提供することができる。さらに、土壌評価システムは、2個の電極端を用いて出力電気信号を土壌から得る。その結果、土壌評価システムは、出力電気信号を精度よく得ることができる。従って、土壌評価システムは、良好な評価値を得ることができる。
【0014】
本発明のさらに別の形態は、土壌の特性を評価する土壌評価センサ用の電極である。土壌評価センサは、入力電気信号を発生する信号発生部と、信号発生部に接続されると共に、入力電気信号を土壌に提供する第1電極と、第1電極から離間して設置されると共に、入力電気信号に起因する出力電気信号を受ける第2電極と、第2電極に接続されると共に、出力電気信号の大きさを計測する信号計測部と、を備える。電極は、第1電極及び第2電極を有する基板であって、当該基板の主面に第1電極及び第2電極が設けられている基板と、主面の法線方向に延びる第1突起部及び第2突起部と、第1突起部に設けられると共に、第1電極に電気的に接続された第1拡張電極と、第2突起部に設けられると共に、第2電極に電気的に接続された第2拡張電極と、を備える。この電極によれば、粒状の土壌に対する拡張電極の電気的な接触状態を安定化させることができる。従って、電極は、土壌に対して入力電気信号を安定して提供できる。さらに、電極は、土壌から出力電気信号を安定して得ることができる。
【0015】
本発明のさらに別の形態は、土壌が有する特性の評価において、測定対象物である土壌のインピーダンス特性を得る装置である。インピーダンス特性を得る装置は、土壌に入力電気信号を提供すると共に土壌から入力電気信号に起因する出力電気信号を得ることにより、入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を得る手段と、第1情報を利用して、入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を計算によって得る手段と、を有する。土壌のインピーダンス特性を得る装置は、インピーダンス特性のうち、位相について、インピーダンスの絶対値を利用して計算により得ることができる。
【0016】
本発明のさらに別の形態は、対象領域における土壌の特性を評価する土壌評価システムである。土壌評価システムは、土壌に配置される一対の電極端を含み、土壌に交流の入力電気信号を提供可能である第1センサ部と、土壌に配置される一対の電極端を含み、土壌から入力電気信号に起因する出力電気信号を取得可能であると共に、第1センサ部に対して離間する第2センサ部と、第1センサ部及び第2センサ部の動作を制御するための制御信号を第1センサ部及び第2センサ部に提供すると共に、入力電気信号及び出力電気信号を利用して入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの絶対値との関係を示す第1情報を取得し、第1情報を利用して入力電気信号の周波数と土壌が有するインピーダンスの位相との関係を示す第2情報を算出し、第1情報及び第2情報を利用して土壌の評価値を得る制御部と、を備える。
【0017】
この構成によっても、土壌評価システムは、土壌の評価値を得るための計測値が含む計測精度の影響を抑制することができる。さらに土壌評価システムは、良好な評価値を得ることができる。
【0018】
さらに別の形態において、土壌評価システムは、土壌に配置される一対の電極端を含み、入力電気信号を提供可能であると共に出力電気信号を取得可能であり、第1センサ部及び第2センサ部に対して離間する第3センサ部をさらに備え、第1センサ部は、さらに、出力電気信号を取得可能であり、第2センサ部は、さらに、入力電気信号を提供可能であり、第1センサ部、第2センサ部及び第3センサ部は、二次元状の面として規定された対象領域を囲むように配置されていてもよい。この構成によれば、二次元状の対象領域について、良好な評価値を得ることができる。
【0019】
さらに別の形態において、制御部は、第1センサから入力電気信号を提供し、第2センサから出力電気信号を取得する第1動作を行い、第1動作の後に、第1センサから入力電気信号を提供し、第3センサ部から出力電気信号を取得する第2動作と、第2動作の後に、第2センサから入力電気信号を提供し、第3センサ部から出力電気信号を取得する第3動作と、を行ってもよい。この構成によれば、いわゆる時分割処理によって評価値を得ることができる。
【0020】
さらに別の形態において、対象領域は、複数の部分領域を含み、複数の部分領域のそれぞれには、第1重み係数、第2重み係数及び第3重み係数が設定されてもよい。制御部は、第1動作の結果として得た評価値と第1重み係数とを用いて、第1演算値を得る動作と、第2動作の結果として得た評価値と第2重み係数とを用いて、第2演算値を得る動作と、第3動作の結果として得た評価値と第3重み係数とを用いて、第3演算値を得る動作と、部分領域ごとに得られた、第1演算値、第2演算値及び第3演算値を用いて、部分領域ごとに総合演算値を得る動作と、を行ってもよい。この構成によれば、視覚的にわかりやすい態様で評価値を提示することができる。
【0021】
さらに別の形態において、土壌評価システムは、土壌に配置される一対の電極端を含み、入力電気信号を提供可能であると共に出力電気信号を取得可能であり、第1センサ部及び第2センサ部に対して離間する第3センサ部と、土壌に配置される一対の電極端を含み、入力電気信号を提供可能であると共に出力電気信号を取得可能であり、第1センサ部、第2センサ部及び第3センサ部に対して離間する第4センサ部と、をさらに備え、第1センサ部は、さらに、出力電気信号を取得可能であり、第2センサ部は、さらに、入力電気信号を提供可能であり、第1センサ部、第2センサ部、第3センサ部及び第4センサ部は、三次元状の領域として規定された対象領域を囲むように配置されていてもよい。この構成によれば、三次元状の対象領域について、良好な評価値を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、土壌の評価値を得るための計測値が含む計測精度の影響を受けにくい土壌評価センサ、土壌評価システム及び土壌評価センサ用の電極及びインピーダンス特性を得る装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態の土壌評価センサの機能ブロックを示す図である。
【
図2】
図2の(a)部は交流電圧の周波数とインピーダンスの絶対値との関係を示すグラフである。
図2の(b)部は交流電圧の周波数とインピーダンスの位相との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、
図1の土壌評価センサを用いた土壌評価システムの機能ブロック図である。
【
図4】
図4の(a)部は土壌評価システムの第1の計測範囲を示す図である。
図4の(b)部は土壌評価システムの第2の計測範囲を示す図である。
図4の(c)部は土壌評価システムの第3の計測範囲を示す図である。
図4の(d)部は土壌評価システムの第4の計測範囲を示す図である。
図4の(e)部は土壌評価システムの計測範囲を示す図である。
【
図5】
図5の(a)部は、変形例1の土壌評価センサの機能ブロックを示す図である。
図5の(b)部は、土壌評価センサの第1の接続構成を示す図である。
【
図6】
図6の(a)部は、土壌評価センサの第2の接続構成を示す図である。
図6の(b)部は、土壌評価センサの第3の接続構成を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例1の土壌評価センサを用いた土壌評価システムにおいて第1の態様を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、変形例の土壌評価センサを用いた土壌評価システムにおいて第2の態様を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、変形例2の土壌評価システムの機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、変形例3の土壌評価システムの構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例3の土壌評価システムの主要部を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例4の土壌評価システムの構成を示す斜視図である。
【
図13】
図13の(a)部及び
図13の(b)部は、変形例6の土壌評価システムを示す斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例7の土壌評価システムを示す斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例8の土壌評価システムが提示するマップである。
【
図16】
図16の(a)部、(b)部、(c)部及び(d)部は、マップを得る処理を説明するための図である。
【
図17】
図17の(a)部及び(b)部は、マップを得る処理を説明するための図である。
【
図18】
図18の(a)部及び(b)部は、マップを得る処理を説明するための図である。
【
図19】
図19の(a)部及び(b)部は、マップを得る処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、土壌評価センサ1の構成を示す機能ブロック図である。土壌評価センサ1は、土壌100に配置される。土壌評価センサ1は、評価の対象となる土壌100aの一部の領域の特性を評価する評価値を得る。以下の説明において、評価の対象となる土壌100aの一部の領域は、単に「土壌100a」(測定対象物)と称する。評価値は、例えば、土壌100aに含まれる水分量及び総イオン濃度を含む。しかし、評価値は、水分量及び総イオン濃度に限定されない。
【0026】
土壌評価センサ1は、測定対象である土壌100aに関するインピーダンス特性を得る。インピーダンス特性は、インピーダンスの絶対値及びインピーダンスの位相を含む。土壌100aは、インピーダンスを構成する静電容量101と電気抵抗102とを含む電気回路としてモデル化できる。静電容量101及び電気抵抗102は、互いに並列に接続されている。例えば、土壌100aの静電容量の値は、10pF(ピコ・ファラッド)以上500pF以下である。土壌100aの電気抵抗の値は、100Ω(オーム)以上1MΩ(メガ・オーム)以下である。従って、土壌評価センサ1は、上記に例示した広範囲の静電容量の値及び電気抵抗の値を計測する。静電容量の値及び電気抵抗の値は、土壌100aの水分量及び総イオン濃度と関連がある。その結果、静電容量の値及び電気抵抗の値を得ることにより、水分量及び総イオン濃度を得ることができる。水分量とは、単位体積当たりの土壌100aにおいて水が占める体積の割合をいう。総イオン濃度は、水に含まれるいくつかのイオンの総和をいう。例えば、農業分野では、窒素イオン、リン酸イオン、カリウムイオンといった主イオンの総和を示す。
【0027】
土壌評価センサ1は、電極端2(第1電極)と、電極端3(第2電極)と、電圧発生部4(信号発生部、第1信号発生部、第2信号発生部)と、電流計測部6(信号計測部、第1信号計測部、第2信号計測部)と、処理部7と、を有する。土壌評価センサ1は、これらの機能を実現する電気回路であってもよい。土壌評価センサ1は、半導体基板に集積化されたセンサチップであってもよい。
【0028】
なお、以下に例示する形態では、入力電気信号(入力電気信号)として交流電圧を例示する。出力電気信号(出力電気信号)として交流電流を例示する。しかし、入力電気信号及び出力電気信号は、交流電圧及び交流電流に限定されない。入力電気信号としては、電圧又は電流のいずれか一方を採用してもよい。出力電気信号としては、電圧又は電流のいずれか一方を採用してもよい。これらの組み合わせは、計測対象に応じて適宜組み合わせてよい。例えば、入力電気信号として電流を選択してもよい。
【0029】
信号発生部及び信号計測部は、入力電気信号及び出力電気信号の態様に応じる。入力電気信号として電圧を採用する場合には、信号発生部は電圧発生部(電圧源)である。入力電気信号として電流を採用する場合には、信号発生部は電流発生部(電流源)である。出力電気信号として電圧を採用する場合には、信号計測部は電圧計測部(電圧計)である。出力電気信号として電流を採用する場合には、信号計測部は電流計測部(電流計)である。
【0030】
電極端2(第1電極)は、土壌100aに対して交流電圧(入力電気信号)を提供する。電極端2は、金属製の板状部材である。電極端2は、例えばセンサチップに設けられた電極パッドである。電極端3(第2電極)は、土壌100aから交流電流(出力電気信号)を受ける。交流電流は、電極端2から提供された交流電圧に起因する。電極端3は、電極端2と同様に、金属製の板状部材である。電極端3は、電極端2から離間して設置されている。測定対象である土壌101aは、電極端2、3に挟まれている。
【0031】
電圧源である電圧発生部4は、電極端2に対して電気的に接続されている。電圧発生部4は、電極端2に対して交流電圧を提供する。交流電圧は、所定の振幅(交流電圧値)と、所定の周波数と、により定義される。電圧発生部4は、振幅及び周波数を所定の範囲において変化させることができる。電圧発生部4から出力される交流電圧の態様は、後述する処理部7の電圧制御部8によって制御される。
【0032】
電流計である電流計測部6は、電極端3に対して電気的に接続されている。電流計測部6は、電極端3が受ける交流電流を計測する。電流計測部6は、交流電流における振幅(電流値)を得る。電流計測部6は、後述する処理部7の第1演算部11に接続されている。電流計測部6は、第1演算部11に対して交流電流に関する情報(電流値)を提供する。
【0033】
処理部7は、電圧発生部4の動作を制御する。処理部7は、さらに、土壌100aの評価値を算出する。処理部7は、電圧発生部4及び電流計測部6に接続される。処理部7は、交流電圧の周波数を制御するための制御信号を電圧発生部4に提供する。処理部7は、電流計測部6が得た交流電流を利用して土壌の特性を示す評価値を得る。
【0034】
処理部7は、演算機能を有するコンピュータであってよい。処理部7は、例えばパーソナルコンピュータ、専用に設計されたマイクロコンピュータ、スマートフォンなどの携帯情報端末などである。これらのコンピュータシステムにおいて、処理部7が備える各機能ブロックを実現するプログラムが実行される。その結果、処理部7が実現される。
【0035】
処理部7は、機能的な構成要素として、電圧制御部8と、評価値算出部9と、を有する。
【0036】
電圧制御部8は、電圧発生部4の動作を制御するための制御信号を生成する。電圧制御部8は、当該制御信号を電圧発生部4に提供する。例えば、電圧制御部8は、交流電圧の振幅として10mV以上500mV以下のうちから選択される値を電圧発生部4に出力させる。電圧制御部8は、交流電圧の周波数として10
2Hz以上10
8Hz以下の値を電圧発生部4に出力させる。所定の周波数は、この周波数帯域において、互いに異なる少なくとも2個の値が選択される。また、所定の周波数は、所定の周波数帯域の中から離散的に選択された複数の値であってもよい。所定の周波数は、所定の周波数帯域の中で周波数を連続的に変化させたものであってもよい。交流電圧の周波数の変化に対し、出力電気信号である交流電流の変化が大きく得やすい地点での計測が望ましい。例えば、交流電圧の周波数として2個の値を設定する場合には、
図2の(a)部において、帯域(S1)から第1の値を採用する。さらに、帯域(S3)から第2の値を採用してよい。出力電気信号の差が大きくとれる地点を探し出して、計測してもよい。例えば、第1の値の周波数で得た出力電気信号(交流電流)と、第2の値の周波数で得た出力電気信号(交流電流)と、の差が所定値よりも大きくなるように、第1の値及び第2の値を設定する。そして、その設定の基に計測してもよい。
【0037】
評価値算出部9は、第1演算部11と、第2演算部12と、第3演算部13と、を有する。
【0038】
第1演算部11は、交流電圧及び交流電流を利用して、第1情報(
図2の(a)部参照)を得る。第1情報は、交流電圧の周波数と土壌100aが有するインピーダンスの絶対値との関係を示す。第1情報は、周波数と絶対値とが関連付けられた複数のデータの集まりであってもよい。例えば、第1情報は、少なくとも〔周波数(ω1)、絶対値|Z1|〕、〔(周波数(ω2)、絶対値|Z2|〕として示されるデータセットとしてよい。第1情報は、互いに異なる2つの周波数とそれぞれの周波数におけるインピーダンスの絶対値との関係を含む。
【0039】
第1情報は、周波数を独立変数とすると共に、絶対値を従属変数とした関数であってもよい。第1演算部11は、交流電圧の周波数を電圧制御部8から得る。第1演算部11は、交流電圧の周波数を電圧発生部4から得てもよい。第1演算部11は、交流電圧の周波数を電極端2に接続された電圧計(不図示)から得てもよい。第1演算部11は、インピーダンスの絶対値を電流計測部6から提供された交流電流の振幅を利用して算出する。インピーダンスの絶対値は、第1演算部11とは別の機能的な構成要素によって算出されてもよい。
【0040】
第2演算部12は、第1情報を利用して第2情報(
図2の(b)部参照)を算出する。第2情報は、交流電圧の周波数と土壌100aが有するインピーダンスの位相との関係を示す。一般に、インピーダンスの計測を行う場合、絶対値及び位相は計測により得る。土壌評価センサ1は、インピーダンスの絶対値を計測により得る。しかし、土壌評価センサ1は、インピーダンスの位相を計算により得る。土壌評価センサ1は、インピーダンスの位相を直接に計測して得ない。第2演算部12は、第1情報として示された交流電圧の周波数とインピーダンスの絶対値との関係を利用して第2情報を算出する。
【0041】
土壌100aは、電気抵抗102と静電容量101との並列回路(
図1参照)としてモデル化できる。回路モデルは、土壌100aの性質に依存しない。換言すると、土壌100aの性質が変化したとしても、土壌100aは、電気抵抗102及び静電容量101の並列回路としてモデル化してよい。
【0042】
図2の(a)部に示すグラフG2aを参照すると、周波数の増加に対し絶対値(|Z|)が変化しない帯域(S1)では、位相は0度である(S1A)。絶対値(|Z|)の変曲点(S2)では、位相は-45度である(S2A)。絶対値(|Z|)が1/fの傾きで変化する帯域(S3)は、-90度である(S3A)。つまり、インピーダンスの位相は、インピーダンスの絶対値に対しておおむね単調に変化する。換言すると、インピーダンスの位相は、インピーダンスの絶対値の変化に対して画一的に減少する。絶対値と位相との関係は、電気抵抗の値及び静電容量の値が変化しても同じである。その結果、絶対値と位相との関係が土壌100aの種類及び水分量に依存しないので、インピーダンスの絶対値のみから位相を推定することが可能である。例えば、位相の推定には、第1の周波数に対するインピーダンスの絶対値と、第1の周波数とは異なる第2の周波数に対するインピーダンスの絶対値と、を利用してよい。式(1)は、インピーダンスの絶対値を示す。式(2)は、インピーダンスの位相を示す。式(1)において|Z|は、インピーダンスの絶対値である。Rは電気抵抗である。Cは静電容量である。ωは角周波数である。θはインピーダンスの位相である。
【数1】
【数2】
【0043】
式(1)を角周波数(ω)で微分したものをDと定義する。式(3)に対して式(1)を代入すると、式(4)を得る。
【数3】
【数4】
【0044】
式(2)及び式(4)を利用して、電気抵抗(R)、静電容量(C)及び角周波数(ω)を消去する。その結果、式(5)を得る。
【数5】
【0045】
例えば、第1情報が、〔周波数(ω1)、絶対値|Z1|)、(周波数(ω2)、絶対値|Z2|)〕として示されるデータセットであるとする。この場合には、第2演算部12は、差分演算によってインピーダンスの実数部及び虚数部を算出するものとしてもよい。なお、土壌評価センサ1における「微分演算」には、差分演算も含まれるものとする。
【0046】
式(5)より、インピーダンスの位相(θ)は、インピーダンスの絶対値の周波数微分に対して一意に決定されるものだとわかる。関数(D)は、インピーダンスの絶対値の関数である。従って、関数(D)は、時間の同期を必要とせず測定できる。その結果、上記の式を利用することにより、位相が推定できる。
【0047】
図2の(c)部は、式(5)をグラフ化したものである。横軸は、式(5)におけるDである。縦軸は式(5)における位相(θ)である。
図2の(c)部に示すグラフによれば、位相(θ)は、Dの関数であることが視覚的に確認できる。さらに、Dは、上述したようにインピーダンスの絶対値|Z|の関数である。従って、インピーダンスの絶対値|Z|を得ることにより、インピーダンスの位相(θ)を得ることができる。例えば、横軸のDは、式(4)を用いて角周波数(ω)に変換したのちに、さらに角周波数(ω)を周波数(f)に変化することにより、
図2の(b)部に示すグラフに対応するグラフが得られる。
【0048】
第3演算部13は、第1情報及び第2情報を利用して土壌100aの評価値を得る。第1情報及び第2情報は、交流電圧の周波数と、インピーダンスの絶対値及び位相との関係であってもよい。第1情報及び第2用情報は、交流電圧の周波数と、インピーダンスの絶対値及び位相との関係から導出される電気抵抗及び静電容量であってもよい。例えば、電気抵抗は、第1情報において絶対値(|Z|)が変化しない帯域(S1)から得ることができる。静電容量は、インピーダンスの位相から得ることができる。上述したように土壌100aの水分量及び総イオン濃度は、静電容量の値及び電気抵抗の値に関連がある。第3演算部13は、土壌100aの静電容量の値を比誘電率で除算する。その結果、第3演算部13は、水分量を得る。第3演算部13は、電気抵抗の値を水分量で除算する。その結果、第3演算部13は、総イオン濃度を得る。
【0049】
土壌評価センサ1は、電極端2から提供する交流電圧に起因する交流電流を電極端3から得る。交流電圧及び交流電流は、電気抵抗と静電容量との並列回路としてモデル化が可能な土壌100aの特性を反映している。第1演算部11は、交流電圧及び交流電流を利用して、土壌100aの電気的特性を示すインピーダンスの絶対値を第1情報として得る。インピーダンスの絶対値は、インピーダンスの位相と所定の関係を有する。第2演算部12は、インピーダンスの絶対値を計算処理することにより、インピーダンスの位相を得る。第3演算部13は、インピーダンスの絶対値とインピーダンスの位相とを利用して、土壌100aの特性を示す評価値を得る。評価値を得るために必要な2個のパラメータのうち、インピーダンスの位相は、計測ではなく計算によって得る。従って、土壌100aの評価値を得るための計測値は、インピーダンスの絶対値だけである。インピーダンスの絶対値は、平均化処理が可能である。平均化処理によれば、計測精度の低下を低減することができる。その結果、土壌評価センサ1は、土壌の評価値を得るための計測値が含む計測精度の影響を抑制することができる。さらに、土壌評価センサ1は、良好な評価値を得ることができる。
【0050】
<第2実施形態>
ところで、農業分野及び防災分野では、センサの計測可能な領域の拡大が望まれている。特に、水分量を計測するセンサの計測可能な範囲の拡大が望まれている。現在の水分量を計測するセンサとして、TDR方式(Time Domain Reflectometry:時間領域反射法)を採用するセンサ、テンシオメータ、静電容量型のセンサなどがある。TDR方式を採用するセンサは、電磁波の反射を利用して水分量を計測する。テンシオメータは、土の保水性に基づき水の負圧を計測する。静電容量型のセンサは、電気的なインピーダンスに基づき比誘電率の違いを検出することによって水分量を計測する。
【0051】
これらのセンサの電極形状は、所定の形状を有する。その結果、これらのセンサの計測方向及び計測可能な領域は、決まっている。例えば、計測可能な領域は、数mmから数十cmである。これらのセンサを利用して所望の計測領域をカバーするためには、複数台のセンサを配置する必要がある。例えば、このような利用形態としては、植物の根を含む領域の水分量の計測する形態が挙げられる。また、別の利用形態としては、山の斜面における水分量の分布を3次元的に計測する形態が挙げられる。
【0052】
複数台のセンサを利用する場合には、それぞれのセンサ同士の干渉を避ける必要がある。その結果、互いに隣接するセンサは、所定の間隔をもって配置される。このような配置によれば、計測対象領域において、いずれのセンサの計測領域にも含まれない未計測の領域が生じてしまう。
【0053】
そこで、
図3に示す第2実施形態の土壌評価システム10は、計測対象領域において、未計測の領域を生じさせることなく、計測対象領域を拡大することを可能にする。つまり、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを相互間に連携をさせ、隙間のない2次元平面又は3次元空間の計測を行う。具体的には、土壌評価システム10は、インピーダンス計測を行う静電容量型の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを相互に連携させている。上述したように、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、電圧印可回路(電極端2、電圧発生部4)と、電流検出回路(電極端3、電流計測部6)を備える。つまり、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、複合回路である。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを連携させるとは、ある土壌評価センサから土壌100aに交流電圧を提供し、当該交流電圧に起因する交流電流を別の土壌評価センサによって得ることを意味する。
【0054】
図3に示すように、土壌評価システム10は、4個の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dと、制御部14と、を備える。土壌評価システム10が備える土壌評価センサ1の数は、少なくとも2個以上であればよい。例えば、土壌評価センサ1の数は、2個であってもよい。さらに、土壌評価センサ1の数は、5個以上であってもよい。それぞれの土壌評価センサ1は、制御部14に対して電気的に接続されている。土壌評価センサ1と制御部14との接続は、有線でもよい。また、土壌評価センサ1と制御部14との接続は、無線でもよい。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dの単体構成は、第1実施形態の土壌評価センサ1と同じである。従って、単体構成の詳細な説明は、省略する。
【0055】
土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、その使用態様に応じて、第1センサ部又は第2センサ部として機能する。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれが備える電極端2、3は、その使用態様に応じて、第1電極部又は第2電極部として機能する。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれが備える電圧発生部4は、その使用態様に応じて、第1電圧発生部又は第2電圧発生部として機能する。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれが備える電流計測部6は、その使用態様に応じて、第1電流計測部又は第2電流計測部として機能する。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれが備えるスイッチ回路21は、その使用態様に応じて、第1切替部又は第2切替部として機能する。
【0056】
制御部14は、第1演算部11と、第2演算部12と、第3演算部13と、センサ制御部15と、表示処理部16と、を備える。
【0057】
センサ制御部15は、土壌評価センサ1に対してそれらの動作を制御する制御信号を生成する。さらに、センサ制御部15は、制御信号を各土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dに対して提供する。制御信号は、土壌100aに対して交流電流を提供する土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dと、土壌100aから交流電流を得る土壌評価センサ1と、を決定する。
【0058】
第1演算部11、第2演算部12及び第3演算部13は、第1実施形態の土壌評価センサ1が備えるものと同等である。従って、詳細な説明は省略する。
【0059】
図3に示す例では、二点鎖線で囲まれた土壌の領域100bが計測の対象(計測対象領域)である。この領域100bは、個々の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dが有する計測範囲R1よりも大きい。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、領域100bを囲むように配置される。例えば、領域100bの形状は、二次元の矩形状である。一対の土壌評価センサ1A、1Bは、領域100bの上部を挟むように配置される。別の一対の土壌評価センサ1C、1Dは、領域100bの下部を挟むように配置される。
【0060】
土壌評価センサ1は、それぞれの土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dが有する計測範囲R1が互いに重複しない位置に配置される。例えば、土壌評価センサ1Aから土壌評価センサ1Bまでの距離は、土壌評価センサ1Aの計測範囲R1を示す長さの二倍以上である。
【0061】
このような配置によれば、個々の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dによって、
図4の(a)部に示す計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dが形成される。土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを互いに連携させることにより、
図4の(b)部に示す計測範囲R2a、R2bが形成される。また、
図4の(c)部に示す計測範囲R3a、R3b、及び
図4の(d)部に示す計測範囲R4a、R4bが形成される。
図4の(e)部に示すように、これらの計測範囲R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4bは、互いに重複する。従って、領域100bにおいて、計測範囲R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4bに含まれない未計測の領域は存在しない。
【0062】
計測範囲R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4bは、制御部14から提供される制御信号に基づいて、土壌評価センサ1が動作することにより形成される。
【0063】
図4の(a)部に示す計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dは、個々の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dにより形成される。この構成では、個々の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、連携状態ではない。
【0064】
センサ制御部15は、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれに対して、交流電流を土壌100aに提供するように動作させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dのそれぞれにおいて、交流電流を計測させる。つまり、この制御態様では、個々の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dが独立して動作している状態である。
【0065】
図4の(b)部に示す計測範囲R2aは、土壌評価センサ1A、1Cが互いに連携して形成する。計測範囲R2bは、土壌評価センサ1B、1Dが互いに連携して形成する。計測範囲R2a、R2bは、鉛直方向(上下方向)に互いに隣接する土壌評価センサ1A、1C及び土壌評価センサ1B、1Dによって形成される。
【0066】
センサ制御部15は、土壌評価センサ1Aから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Cの電流計測部6から交流電圧を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R2aに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Bから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Dの電流計測部6から交流電流を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R2bに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。
【0067】
図4の(c)部に示す計測範囲R3aは、土壌評価センサ1A、1Bが互いに連携して形成する。計測範囲R3bは、土壌評価センサ1C、1Dが互いに連携して形成する。つまり、計測範囲R3a、R3bは、水平方向(左右方向)に互いに隣接する土壌評価センサ1A、1B及び土壌評価センサ1C、1Dによって形成される。
【0068】
センサ制御部15は、土壌評価センサ1Aから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Bの電流計測部6から交流電流を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R3aに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Cから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Dの電流計測部6から交流電流を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R3bに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。
【0069】
図4の(d)部に示す計測範囲R4aは、土壌評価センサ1A、1Dが互いに連携して形成する。計測範囲R4bは、土壌評価センサ1B、1Cが互いに連携して形成する。つまり、計測範囲R4a、R4bは、斜め方向に互いに隣接する土壌評価センサ1A、1D及び土壌評価センサ1B、1Cによって形成される。
【0070】
センサ制御部15は、土壌評価センサ1Aから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Dの電流計測部6から交流電流を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R4aに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Bから土壌100aに交流電圧を提供させる。センサ制御部15は、土壌評価センサ1Cの電流計測部6から交流電流を得る。制御部14は、交流電圧に関する情報を利用して、評価値を得る。この構成では、計測範囲R4bに含まれる土壌100aを対象とする評価値を得ることができる。
【0071】
計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dの計測動作、計測範囲R2a、R2bの計測動作、計測範囲R3a、R3bの計測動作、計測範囲R4a、R4bの計測動作は、時分割的に実施される。具体的には、まず、センサ制御部15は、計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dの計測動作を行う。より詳細には、センサ制御部15は、計測範囲R1aの計測動作を行い、次に、計測範囲R1bを行い、次に、計測範囲R1cを行い、最後に計測範囲R1dを行う。つまり、それぞれの計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dを対象とする動作の期間は、互いに重複しない。このような処理を、時分割処理と称する。次に、センサ制御部15は、計測範囲R2a、R2bの計測動作を時分割処理として行う。続いて、センサ制御部15は、計測範囲R3a、R3bの計測動作を時分割処理として行う。そして、センサ制御部15は、計測範囲R4a、R4bの計測動作を時分割処理として行う。なお、時分割による計測動作は、動作しているセンサ間の干渉を避けるため、同時には一対一のセンサ間での計測を行うことが望ましい。しかし、計測時間を短縮させるため、センサの干渉が問題とならない場合には、複数対のセンサ間において同時に計測を行ってもよい。例えば、計測範囲R1aの計測動作と計測範囲R1bの計測動作とを並行して行ってもよい。
【0072】
制御部14の表示処理部16は、計測範囲R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4bに対応して得た評価値を用いて、領域100bにおける評価値の分布を算出する。その結果、例えば、領域100bにおける水分量の二次元分布に関する情報を得ることができる。
【0073】
ところで、異なる土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを互いに連携動作させるとき、位相情報を利用することが考えられる。位相情報は、交流電圧に起因する交流電流の時間的なズレを示す。位相情報を利用する場合には、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dの時間的な同期を要する。例えば、土壌評価センサ1A、1Bを連携動作させて位相情報を計測する場合には、土壌評価センサ1Aから交流電圧の提供を開始した時間と、土壌評価センサ1Bにおいて交流電流の検出が開始された時間と同期させる。この場合には、例えば、交流信号の周波数が1MHz(メガ・ヘルツ)であると仮定すると、0.1nsec(ナノ秒)以下の時間分解能が必要である。しかし、GPSを利用する時間同期では精度が不足する。また、超高精度なクロックを生成する回路は、消費電力が大きく専有面積も大きい。従って、超高精度なクロックを生成する回路は、現場で用いる計測用のセンサには不向きである。そのうえ、超高精度なクロックを生成する回路は、土壌中のノイズが位相検出時にしばしば混入する。従って、超高精度なクロックを生成する回路は、安定した計測が困難である。
【0074】
そこで、第2実施形態の土壌評価システム10は、センサ間における時間の同期を不要とする構成を採用する。土壌評価システム10は、インピーダンスの位相情報を計測により取得しない。土壌評価システム10は、インピーダンスの位相情報をインピーダンスの絶対値から得る。
【0075】
土壌評価システム10は、第1動作と第2動作とを行う。第1動作では、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを単独で動作させる。第2動作では、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを連携させて動作させる。その結果、第1動作による計測範囲R1a、R1b、R1c、R1dと、第2動作による計測範囲R2a、R2b、R3a、R3bと、を生じさせることが可能になる。従って、広い領域100bに対して漏れのない計測範囲を形成することができる。制御部14は、インピーダンスの位相をインピーダンスの絶対値を利用して、計算によって得ている。この処理によれば、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを連携動作させる第2動作の際に、交流電圧を提供するタイミングと交流電流を得るタイミングとを時間的に同期させる必要がない。従って、位相計測に起因する計測誤差を生じさせることない。その結果、土壌評価システム10は、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dの連携動作において、良好な評価値を得ることができる。
【0076】
別の視点から述べると、土壌評価システム10において、インピーダンスの絶対値を検出する回路は、数ミリ秒単位での同期で問題ない。インピーダンスの絶対値の計測は、計測時に平均化処理ができる。その結果、混入するランダムノイズは、低減することが可能である。本願発明者らは、土壌100a及び水を含む電気的な等価回路が電気抵抗及び静電容量の並列回路で示されることに基づけば、インピーダンスの絶対値の周波数変化と位相には所定の対応関係が存在する。その結果、インピーダンスの位相は、インピーダンスの絶対値から算出できることに着想した。発明者らは、2種類以上の周波数に基づく2種類以上のインピーダンスの絶対値を利用して、当該複数の絶対値に基づいて位相情報を推定することにより、静電容量の値を精度よく取得する技術を完成するに至った。
【0077】
要するに、土壌評価システム10は、高い計測精度が求められる位相情報を直接計測することなく、土壌100aの水分量、水分の分布及び総イオン濃度の分布を隙間なく計測できる。つまり、土壌評価システム10は、インピーダンスの絶対値を周波数によって微分することにより、位相を算出する。その結果、複数の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dの間で、精密な時間同期を要することなく、インピーダンスの絶対値から静電容量に関する情報を得ることができる。つまり、土壌評価システム10は、独立した時間クロックを有するセンサ同士を相互連携させることにより、隙間のない広範囲の計測を可能とする。
【0078】
土壌評価システム10は、例えば、植物の根が存在する環境の精密な観測、及び斜面の崩壊につながる山の斜面における高い水分量を含む領域の検出に適用できる。また、土壌評価システム10は、設置する場所に応じて、個々のセンサを自由に配置することが可能である。従って、土壌評価システム10は、設置する場所に応じた柔軟なセンサのレイアウトを実現できる。その結果、土壌評価システム10は、上記の適用例に限定されず、土壌100aの特性の評価が必要な様々な事例に適用することができる。
【0079】
土壌評価システム10は、高精度な時間の同期が不要であり、消費電力を低減することが容易である。土壌評価システム10は、外乱ノイズの大きい土壌100aにおいて安定した計測が可能である。土壌評価システム10は、隙間のない計測領域を形成することが可能であり、小型の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dを複数利用することによって大きな計測領域を形成できる。そして、土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、計測領域の形状に応じて自由度の高い柔軟な配置が可能である。
【0080】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0081】
<変形例1>
土壌評価センサ1は、交流電圧を提供するための電極端2と、交流電流を得るための電極端3と、が固定されていた。換言すると、電極端2は交流電圧を提供する機能のみを有していた。また、電極端3は交流電流を得る機能のみを有していた。例えば、変形例1の土壌評価システムに用いる土壌評価センサ1Eは、電極端2、3の両方を用いて土壌100aに対して交流電圧を提供してもよい。また、土壌評価センサ1Eは、電極端2、3の両方を用いて土壌100aから交流電流を得てもよい。
【0082】
土壌評価センサ1を土壌評価システム10に用いる場合には、電極端2、3のいずれにも電圧発生部4及び電流計測部6を接続しない構成も有効である。例えば、土壌評価システム10において、土壌評価センサ1A、1Bの組み合わせを用いて計測を行うとき、土壌評価センサ1C、1Dは動作させない。この場合、土壌評価センサ1C、1Dは、
図5の(a)部に示すように、スイッチ回路21は、電極端2、3のいずれにも電圧発生部4及び電流計測部6を接続しない。つまり、スイッチ回路21は、スイッチ21a、21b、21c、21dのすべてを切断する。この動作によれば、土壌を流れる電流が土壌評価センサ1C、1Dに流入することがない。従って、土壌を流れる電流は、検出側の土壌評価センサ1A、1Bのいずれか一方に流入する。その結果、土壌評価センサ1A、1Bを用いた計測を良好に行うことができる。この形態において、土壌評価センサ1Aは、交流電圧の提供に電極端2のみを用いてもよい。スイッチ回路21は、スイッチ21bを接続する。また、スイッチ回路21は、スイッチ21a、21c、21dを切断する。土壌評価センサ1Bは、交流電流の取得に電極端3のみを用いてもよい。スイッチ回路21は、スイッチ21aを接続する。また、スイッチ回路21は、スイッチ21b、21c、21dを切断する。
【0083】
図5の(a)部に示すように、土壌評価センサ1Eは、電極端2、3と、スイッチ回路21と、電圧発生部4と、電流計測部6と、処理部7Aと、を備える。スイッチ回路21は、電極端2、3と電圧発生部4との間に配置されている。さらに、スイッチ回路21は、電極端2、3と電流計測部6との間にも配置されている。
【0084】
スイッチ回路21は、4個のスイッチ21a、21b、21c、21dを含む。これらのスイッチ21a、21b、21c、21dは、処理部7Aのスイッチ制御部22から提供される制御信号φ1、φ2、φ3、φ4に応じて、接続状態と非接続状態(切断状態)とを相互に切り替える。スイッチ21aは、電極端2と電流計測部6との間に配置される。スイッチ21aは、電極端2と電流計測部6との接続状態を接続又は切断に相互に切り替える。スイッチ21bは、電極端2と電圧発生部4との間に配置される。スイッチ21bは、電極端2と電圧発生部4との接続状態を、接続又は切断に相互に切り替える。スイッチ21cは、電極端3と電圧発生部4との間に配置される。スイッチ21cは、電極端3と電圧発生部4との接続状態を、接続又は切断に相互に切り替える。スイッチ21dは、電極端3と電流計測部6との間に配置される。スイッチ21dは、電極端3と電流計測部6との接続状態を、接続又は切断に相互に切り替える。
【0085】
処理部7Aは、電圧制御部8と、評価値算出部9に加えて、スイッチ制御部22をさらに含む。スイッチ制御部22は、互いに異なる3個の接続態様となるように、スイッチ回路21を制御する。スイッチ回路21は、制御部14から提供される制御信号に基づいて動作する。なお、スイッチ回路21は、制御部14から提供される制御信号により直接に制御されてもよい。
【0086】
スイッチ制御部22は、第1の態様として、
図5の(b)部に示す接続態様となるようにスイッチ回路21を制御する。第1の態様は、土壌評価センサ1Eが単体で評価値を得る。具体的には、スイッチ制御部22は、スイッチ21b、21dを接続し、スイッチ21a、21cを非接続とするように、スイッチ回路21を制御する。その結果、電極端2は、電圧発生部4に接続される。電極端3は、電流計測部6に接続される。
【0087】
スイッチ制御部22は、第2の態様として、
図6の(a)部に示す接続態様となるようにスイッチ回路21を制御する。第2の態様は、土壌評価センサ1Eが単体として交流電圧を提供する。具体的には、スイッチ制御部22は、スイッチ21b、21cを接続し、スイッチ21a、21dを非接続とするように、スイッチ回路21を制御する。その結果、電極端2、3は、両方共に電圧発生部4に接続される。つまり、電流計測部6は、いずれの電極端3にも接続されない。
【0088】
スイッチ制御部22は、第3の態様として、
図6の(b)部に示す接続態様となるようにスイッチ回路21を制御する。第3の態様は、土壌評価センサ1Eが単体として交流電流を得る。具体的には、スイッチ制御部22は、スイッチ21a、21dを接続し、スイッチ21b、21cを非接続とするように、スイッチ回路21を制御する。その結果、電極端2、3は、両方共に電流計測部6に接続される。つまり、電圧発生部4は、いずれの電極端2にも接続されない。
【0089】
図7に示すように、変形例の土壌評価システム10Aは、土壌評価センサ1Ea、1Ebと、制御部14Aと、を備える。制御部14Aは、スイッチ制御部22に制御信号を提供するセンサ制御部15Aを含む。センサ制御部15Aは、交流電圧を提供するセンサを決定すると共に、当該センサにおいて電極端2、3に電圧発生部4を接続させる制御信号を出力する。また、センサ制御部15Aは、交流電流を受けるセンサを決定すると共に、当該センサにおいて電極端2、3に電流計測部6を接続させる制御信号を出力する。
【0090】
例えば、
図7に示すように、制御部14Aは、土壌評価センサ1Ea、1Ebのスイッチ回路21をそれぞれ第1の態様とする。その結果、制御部14Aは、個々の土壌評価センサ1Ea、1Ebによって評価値を得る構成とすることができる。一方、
図8に示すように、制御部14Aは、土壌評価センサ1Eaのスイッチ回路21を第2の態様とすると共に土壌評価センサ1Ebのスイッチ回路21を第3の態様とする。その結果、土壌評価センサ1Ea、1Ebを連携させる構成とすることができる。
【0091】
変形例1の土壌評価システム10Aは、2個の電極端2、3から交流電圧を土壌100aに提供する。その結果、土壌評価システム10Aは、土壌100aに対して交流電圧を良好に提供することができる。さらに、土壌評価システム10Aは、2個の電極端2、3を用いて交流電流を土壌100aから得る。その結果、土壌評価システム10Aは、交流電流を精度よく得ることができる。従って、土壌評価システム10Aは、良好な評価値としての水分量及び総イオン濃度を得ることができる。
【0092】
<変形例2>
上記の土壌評価システム10は、水平方向に直交する仮想面である計測対象領域を設定した。そして、土壌評価システム10を構成する複数の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dは、当該仮想面に含まれるように配置されていた。例えば、計測対象領域となる仮想面は、所望の向きに設定してよい。つまり、計測対象領域は、鉛直方向に対して直交する仮想面として設定してもよい。さらに、計測対象領域は、二次元平面に限定されない。計測対象領域は、三次元的な領域としてもよい。
図9には、計測対象領域を鉛直方向に対して直交する仮想面とした場合の土壌評価システム10Bを示す。このような構成は、例えば、植物の根200を含む領域における水分量などの評価に好適に適用できる。
図9に示すように、土壌評価システム10Bは、根200を含む略三角形の領域201を設定し、当該領域201を囲むように配置された3個の土壌評価センサ1F、1G、1Hを備える。このような配置によれば、根200の中に直接に土壌評価センサ1F、1G、1Hを配置する必要がない。従って、真に計測したい領域201を乱すことなく水分量などの計測を行うことができる。
【0093】
上記の土壌評価システム10は、複数の土壌評価センサ1A、1B、1C、1Dの組み合わせとして、一対一となるように動作させた。つまり、交流電圧を提供する1個の土壌評価センサに対して、当該交流電圧に起因する交流電流を得る土壌評価センサは、1個であった。例えば、1個の土壌評価センサから交流電圧を提供し、当該交流電圧に起因する交流電流を複数の土壌評価センサによって得てもよい。例えば、土壌評価センサ1Aは交流電圧を提供し、土壌評価センサ1B、1C、1Dは、交流電流を得るものとしてよい。このような動作によれば、計測時間を短縮することができる。
【0094】
<変形例3>
上記の土壌評価センサ1は、半導体基板に集積化されたセンサチップであることを例示した。この場合、電極端2、3は、センサチップの基板の主面に設けられる。つまり、電極端2、3は、土壌100aに対して二次元的に接触している。
図10に示すように、変形例3の土壌評価システム10Sを構成する土壌評価センサ1Sは、拡張電極31、32を有する。
図10は、変形例3の土壌評価システム10Sを示す。土壌評価システム10Sの計測対象領域は、鉛直方向を軸線Aとして設定される円筒状の領域である。そこで、土壌評価システム10Sは、軸線Aの周りに土壌評価センサ1Sを2個配置する。さらに、土壌評価システム10Sは、軸線Aの周りに配置された2個の土壌評価センサ1Sのユニットを、軸線Aに沿って等間隔に4組配置する。例えば、土壌評価システム10Sは、筒状の本体33と、リッジ34、36(第1突起部、第2突起部)と、土壌評価センサ1Sと、を備える。
【0095】
本体33は、土壌評価センサ1Sが固定される基部である。本体33の先端部の形状は、円錐状である。この形状によれば、土壌評価システム10Sを土壌100aに対して容易に挿入することができる。本体33の外周面には、複数の土壌評価センサ1Sが設けられている。土壌評価センサ1Sの配置は、上述のとおりである。
【0096】
土壌評価センサ1Sは、交流電圧を提供する電極として、電極端2及び拡張電極31のいずれか一方を任意に選択してよい。同様に、土壌評価センサ1Sは、交流電流の取得する電極として、電極端3及び拡張電極32のいずれか一方を任意に選択してよい。土壌評価センサ1Sは、電極端2及び拡張電極31の両方を用いて交流電圧を提供してもよい。
【0097】
例えば、電極端2、3を用いた計測及び拡張電極31、32を用いた計測を実施する場合には、土壌評価センサ1Sは、拡張電極31、32の間に配置する(
図11の(a)部、同(b)部参照)。なお、拡張電極31、32の間とは、
図11の(a)部に示すように、拡張電極31と拡張電極32とを結ぶ仮想的な直線上に土壌評価センサ1Sが配置されている構成を含む。さらに、拡張電極31、32の間とは、
図11の(b)部に示すように、拡張電極31と拡張電極32とを結ぶ仮想的な直線上に土壌評価センサ1Sが配置されていない構成も含む。このような構成により、水平方向と垂直方向との2種類の電圧印可が可能となる。その結果、土壌との接触性をより向上させることができる。
【0098】
一方、例えば、電極端2、3を用いた計測は実施せず、拡張電極31、32を用いた計測のみを実施してもよい。この場合には、拡張電極31、32に対する土壌評価センサ1Sの位置は、特に制限されない。
【0099】
さらに、本体33の外周面には、軸線Aのまわりに等間隔にリッジ34、36が設けられている。突起部であるリッジ34、36は、本体33の外周面から突出する。リッジ34、36は、軸線Aの方向に延びている。本体33の外周面は、土壌評価センサ1Sが有する基板の主面とみなしてよい。リッジ34、36の軸線Aの方向における断面形状は、例えば三角形である。リッジ34は、絶縁部34aと、拡張電極31(第1拡張電極)と、追加電極37と、を含む。追加電極37は、所望の機能を持たせるために必要に応じて設けられる。例えば、追加電極37は、静電気を除去するために用いてよい。これらの構成要素は、軸線Aの方向に沿って交互かつ等間隔に配置されている。従って、拡張電極31は、電気的な絶縁性を有する絶縁部34aによって互いに絶縁されている。絶縁部34a、拡張電極31及び追加電極37の断面形状は、互いに同じである。従って、絶縁部34aの表面と拡張電極31の表面と追加電極37の表面との間には、実質的な段差は生じない。その結果、拡張電極31を土壌100aへ容易に挿入することができる。リッジ36は、絶縁部36aと、拡張電極32(第2拡張電極)と、を含む。絶縁部36a及び拡張電極32は、この順に等間隔に配置されている。
【0100】
拡張電極31の電極面は、電極端2に対して電気的に接続されている。拡張電極32の電極面は、電極端3に対して電気的に接続されている。それぞれの電極面の法線方向は、互いに異なっている。電極面は、互いに異なる方向を向いている。拡張電極31は、単なる二次元平面ではなく、三次元的な構成を有する。
【0101】
このような構成によれば、土壌100aに対して拡張電極31から交流電圧が提供される。拡張電極32によって交流電流が得られる。拡張電極31、32は、土壌100aに対して立体的に接触している。その結果、粒状の土壌100aに対して良好な電気的な接触性を得ることができる。従って、土壌100aに対して交流電圧を安定して提供できる。さらに、土壌100aから交流電流を安定して得ることができる。
【0102】
図11の(b)部に示すような土壌評価センサ1Sと拡張電極31、32の配置とによれば、三次元的な計測が可能である。具体的には、拡張電極31に対する電極端3の位置は、拡張電極31に対する拡張電極32の位置に対して、軸線Aの方向において異なっている。軸線Aが鉛直方向と平行である場合には、電極端3の位置は、拡張電極32の位置に対して高さが異なっている。そうすると、拡張電極31から電極端3へ向かう電流の向きは、拡張電極31から拡張電極32へ向かう電流の向きとは異なる。従って、三次元的な計測が可能である。
【0103】
<変形例4>
例えば、
図12に示す土壌評価センサ1Tは、変形例3とは異なる形状の拡張電極41、42を備えてもよい。土壌評価センサ1Tは、本体43と、電極端2、3が設けられたセンサチップ44と、拡張電極41、42(第1拡張電極、第2拡張電極)と、を有する。本体43は、土壌評価センサ1Tの基体である。本体43の主面には、センサチップ44が配置されている。センサチップ44は、電極端2、3、電圧発生部4、電流計測部6及び処理部7といった機能的な構成要素を含む。
【0104】
本体43において、センサチップ44が設けられた主面には、さらに、拡張電極41、42が立設する。拡張電極41、42は、主面の法線方向に延びる円柱状の部材である。拡張電極41、42は、金属製の導電材料により構成されている。突起部と拡張電極とは、別の部材として構成されてもよい。また、突起部と拡張電極とは、拡張電極41、42のように一体として構成されてもよい。拡張電極41は、一対の電極棒41a、41bを含む。電極棒41a、41bは、法線方向に直交する方向において互いに離間している。拡張電極41の電極棒41a、41bは、電極端2に対して電気的に接続されている。従って、交流電圧は、電極棒41a、41bから土壌100aに対して提供される。拡張電極41が含む電極棒の数は、2本に限定されない。電極棒の数は、1本であってもよい。電極棒の数は、3本以上であってもよい。拡張電極41は、円柱状の棒状部材に限定されない。例えば、拡張電極41は、本体43から起立する平板状の部材又は直方体状の部材であってもよい。また、土壌評価センサ1Tは、センサチップ44に代えて、電極端2、3の機能を有する導電材料を採用してもよい。
【0105】
拡張電極42は、一対の電極棒42a、42bを含む。電極棒42a、42bは、法線方向に直交する方向において互いに離間している。電極棒42a、42bは、電極棒41a、41bに対しても離間する。例えば、土壌評価センサ1Tを平面視すると、電極棒41a、41b、42a、42bは、センサチップ44を囲む仮想的な矩形領域の頂部のそれぞれに配置される。拡張電極41の電極棒41a、41bは、電極端2に対して電気的に接続されている。従って、交流電圧は、電極棒41a、41bから土壌100aに対して提供される。
【0106】
このような土壌評価センサ1Tによっても粒状の土壌100aに対して電気的に良好に接触させることができる。その結果、土壌評価センサ1Tは、土壌100aに対して交流電圧を安定して提供できる。土壌評価センサ1Tは、土壌100aから交流電流を安定して得ることができる。さらに、4本の電極棒41a、41b、42a、42bに囲まれた領域では、土壌100aの動きが阻害される。換言すると、電極棒41a、41b、42a、42bに囲まれた領域に存在する土壌100aは、動きにくくなっている。従って、計測対象領域の状態が安定化される。その結果、土壌評価センサ1Tは、さらに良好な評価値を得ることができる。
【0107】
<変形例5>
上記実施形態の土壌評価システム10では、例えば、
図4の(a)部に示すように、土壌評価センサ1A~1Dを連携させない動作と、
図4の(b)部、(c)部及び(d)部に示すように土壌評価センサ1A~1Dを連携させる動作と、を行っていた。例えば、変形例5の土壌評価システムでは、土壌評価センサ1A~1Dを連携させない動作を省略し、土壌評価センサ1A~1Dを連携させる動作のみを行ってもよい。
【0108】
<変形例6>
計測対象領域は、二次元の面として設定してよい。そして、計測対象領域である面の向きは、所望の向きに設定してよい。例えば、
図13の(a)部に示すように、計測対象領域200a(対象領域)の向きは、水平方向(X軸、Y軸)と並行であってもよい。つまり、計測対象領域200aは、地面110と交差してもよい。また、
図13の(b)部に示すように、計測対象領域200bの向きは、鉛直方向(Z軸)と並行であってもよい。つまり、計測対象領域200bは、地面110と並行であってもよい。さらに、得計測対象領域の向きは、X軸、Y軸又はZ軸に対して傾いていてもよい。
【0109】
<変形例7>
さらに、
図14に示すように、計測対象領域200cは、三次元の領域として設定してもよい。この場合には、直方体として規定された計測対象領域200cの角部の近傍に土壌評価センサ1A~1Hがそれぞれ配置される。例えば、土壌評価センサ1Aから交流電圧を提供し、そのほかの土壌評価センサ1B~1Hの一部または全てを用いて交流電流を得る。このような連携動作によって、土壌評価センサ1A~1Hに囲まれた領域における水分量の分布を得ることができる。
【0110】
<変形例8>
例えば、表示処理部16は、評価の結果を
図15に示すようなマップ300として提示してもよい。マップ300は、計測対象領域200eにおける水分量の分布を示す。計測対象領域200eは、複数のセグメントS1~S9(複数の部分領域)を含む。セグメントS1~S9には、それぞれ表示値(総合演算値)が与えられている。これらの表示値は、第3演算部13から出力された評価値そのものであってもよいし、当該評価値に数値的な処理を施したものであってもよい。表示処理部16は、セグメントS1~S9ごとに与えられた具体的な表示値(数値)を表示してもよい。また、表示処理部16は、表示値に関連付けた複数の色や濃淡を用いて図示するコンター図などにより視覚的に表示してもよい。
【0111】
以下、評価値から表示値を得る方法の一例について説明する。この説明では、
図4に示す動作によって得た評価値を用いるものとする。
【0112】
まず、
図16の(a)部に示すように、土壌評価センサ1Aのみによって得た評価値P
1Aを処理する。セグメントS1~S9のそれぞれには、土壌評価センサ1Aのみから得た評価値P
1Aに及ぼす影響の度合いとして重み係数S1(1
1A)~S9(1
1A)が設定されている。そこで、セグメントS1~S9のそれぞれについて、評価値P
1Aに重み係数S1(1
1A)~S9(1
1A)を乗算する。その結果、セグメントS1~S9について、表示値成分(P
1A×S1(1
1A)~P
1A×S9(1
1A))(演算値)が得られる。
【0113】
土壌評価センサ1B、1C、1Dについても、同様の計算を行う。その結果、土壌評価センサ1Bに関する表示値成分(P1B×S1(11B)~P1B×S9(11B))、土壌評価センサ1Cに関する表示値成分(P1C×S1(11C)~P1C×S9(11C))及び土壌評価センサ1Dに関する表示値成分(P1D×S1(11D)~P1D×S9(11D))を得る。
【0114】
次に、土壌評価センサ1A、1Cの連携動作によって得た評価値P
1A、1Cを処理する(
図17の(a)部参照)。また、土壌評価センサ1B、1Dの連携動作によって得た評価値P
1B、1Dを処理する(
図17の(b)部参照)。これらの計算も評価値P
1Aの処理と同様である。その結果、土壌評価センサ1A、1Cに関する表示値成分(P
1A、1C×S1(2
1A、1C)~P
1A、1C×S9(2
1A、1C))を得る。また、土壌評価センサ1B、1Dに関する表示値成分(P
1B、1D×S1(2
1B、1D)~P
1B、1D×S9(2
1B、1D))を得る。
【0115】
次に、土壌評価センサ1A、1Bの連携動作によって得た評価値P
1A、1Bを処理する(
図18の(a)部参照)。また、土壌評価センサ1C、1Dの連携動作によって得た評価値P
1C、1Dを処理する(
図18の(b)部参照)。これらの計算も評価値P
1Aの処理と同様である。その結果、土壌評価センサ1A、1Bに関する表示値成分(P
1A、1B×S1(3
1A、1B)~P
1A、1B×S9(3
1A、1B))を得る。また、土壌評価センサ1C、1Dに関する表示値成分(P
1C、1D×S1(3
1C、1D)~P
1C、1D×S9(3
1C、1D))を得る。
【0116】
次に、土壌評価センサ1A、1Dの連携動作によって得た評価値P
1A、1Dを処理する(
図19の(a)部参照)。また、土壌評価センサ1B、1Cの連携動作によって得た評価値P
1B、1Cを処理する(
図19の(b)部参照)。これらの計算も評価値P
1Aの処理と同様である。その結果、土壌評価センサ1A、1Dに関する表示値成分(P
1A、1D×S1(4
1A、1D)~P
1A、1D×S9(4
1A、1D))を得る。また、土壌評価センサ1B、1Cに関する表示値成分(P
1B、1C×S1(4
1B、1C)~P
1B、1C×S9(4
1B、1C))を得る。
【0117】
そして、セグメントS1~S9ごとに表示値成分の総和を得る。表示値成分の総和は、総合表示値である。例えば、セグメントS1については、10個の表示値成分が得られている。従ってこれらの総和を計算することにより、セグメントS1に関する表示値PS1を得ることができる。セグメントS2~S9についても、同様の計算を行う。
【0118】
以上の計算によって、セグメントS1~S9ごとに総合表示値を得ることができる。
【0119】
なお、上記の変形例8では、
図17、
図18、
図19に示す複数のセンサの組み合わせを用いて、表示値(総合演算値)を得た。表示値の算出は、上記の方法に限定されない。例えば、
図17、
図18、
図19に記載された6組のセンサの組み合わせから、少なくとも2組以上の組み合わせを選択して、選択した組み合わせに基づく評価値を用いて表示値を算出してもよい。
【0120】
また、上述したいくつかの重み係数は、電流を提供するセンサと電流を受けるセンサとの間に示される電気力線に基づいて決めてよい。例えば、
図18の(a)部を参照する。土壌センサ1Aから電流を提供し、土壌センサ1Bによって電流を受ける。この場合において、土壌センサ1A、1Bの間には、例えば、土壌センサ1A、1Bを最短距離で結ぶ直線状の電気力線が設定できる。電気力線の長さが短いほど、インピーダンスが小さくなる。つまり、影響の度合いは大きい。そこで、直線状の電気力線に交差するセグメントS1、S2、S3における重み係数S1(1
1A、1B)、S2(1
1A、1B)、S3(1
1A、1B)は相対的に大きい値を設定する。一方、土壌センサ1A、1Bの間には、例えば、計測範囲R3aの外縁により示される曲線状の電気力線も設定できる。この電気力線の長さは、直線状の電気力線の長さよりも長い。そこで、直線状の電気力線に交差するセグメントS4、S5、S6における重み係数S4(1
1A、1B)、S5(1
1A、1B)、S6(1
1A、1B)は、重み係数S1(1
1A、1B)、S2(1
1A、1B)、S3(1
1A、1B)よりも相対的に小さい値を設定する。
【0121】
なお、重み係数の設定は、上述の考え方に限定されない。
【符号の説明】
【0122】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1Ea,1Eb,1F,1G,1H…土壌評価センサ、2,3…電極端、4…電圧発生部、6…電流計測部、7,7A…処理部、8…電圧制御部、9…評価値算出部、10,10A,10B…土壌評価システム、11…第1演算部、12…第2演算部、13…第3演算部、14,14A…制御部、15,15A…センサ制御部、16…表示処理部、21…スイッチ回路、22…スイッチ制御部、31,32,41,42…拡張電極、100a…土壌、101…静電容量、102…電気抵抗。