(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液晶表示装置用の反射フィルム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13357 20060101AFI20230928BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230928BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230928BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20230928BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230928BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G02F1/13357
B32B15/08 U
B32B27/18 Z
B32B27/42 102
F21S2/00 438
G02B5/08 A
(21)【出願番号】P 2022068353
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2019106299の分割
【原出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019086490
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保住 敏之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 那由太
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特許第7064778(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/164226(WO,A1)
【文献】特開2012-232538(JP,A)
【文献】特開2009-286100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002814(WO,A1)
【文献】特開平09-111442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
G02B 5/08
G02F 1/00 - 1/39
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、導光板と、液晶表示装置用の反射フィルムと、液晶パネルとを備える液晶表示装置に設けられる、液晶表示装置用の反射フィルムであり、
基材と、前記基材上に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層上に設けられた金属蒸着層と、前記金属蒸着層上に設けられたトップコート層とを有し、
前記金属蒸着層は、銀または銀を主成分とする銀合金を含み、
前記トップコート層は、硫黄化合物およびメラミン樹脂を含み、
前記トップコート層における前記硫黄化合物の硫黄元素濃度は、前記トップコート層の厚み方向において、前記金属蒸着層側の方が、前記金属蒸着層と反対側よりも高く、
前記トップコート層の厚みは、1μm~5000nmである、液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項2】
前記硫黄化合物は、X線光電子分光法(XPS)により前記トップコート層の前記金属蒸着層と反対側から前記金属蒸着層側に向けて、前記トップコート層の厚み方向における、前記トップコート層の硫黄元素濃度を測定する場合において、前記トップコート層の厚み方向における前記金属蒸着層側に、前記硫黄元素濃度の最大濃度ピークを示すよう、前記トップコート層に含まれる、請求項1記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項3】
前記硫黄元素濃度の最大濃度ピークは、0.5~30.0原子%である、請求項2記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項4】
前記アンダーコート層は、メラミン樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項5】
前記硫黄化合物の含有量は、前記トップコート中、樹脂固形分換算で、0.5~20質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項6】
前記トップコート層上に、接着層を介して樹脂フィルム層が設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項7】
前記樹脂フィルム層の厚みは、20~400μmである、請求項6記載の液晶表示装置用の反射フィルム。
【請求項8】
光源と、導光板と、液晶表示装置用の反射フィルムと、液晶パネルとを備える液晶表示装置に設けられる、液晶表示装置用の反射フィルムの製造方法であり、
基材上に、アンダーコート層を設けるアンダーコート層形成工程と、
前記アンダーコート層上に、金属蒸着層を設ける蒸着工程と、
前記金属蒸着層上に、トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を塗布してトップコート層を設けるトップコート層形成工程と、
80~150℃にて乾燥する低温乾燥工程と、
前記トップコート層上に、接着剤を付与した樹脂フィルム層を設ける樹脂フィルム層形成工程とを有し、
前記金属蒸着層は、銀または銀を主成分とする銀合金を含み、
前記トップコート層用樹脂組成物は、硫黄化合物およびメラミン樹脂を含み、
前記トップコート層の厚みは、1μm~5000nmであり、
前記トップコート層形成工程は、
前記トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を前記金属蒸着層に塗布することにより、前記樹脂溶液中の前記硫黄化合物と、前記金属蒸着層中の前記銀または銀を主成分とする銀合金とを反応させ、
前記トップコート層における前記硫黄化合物の硫黄元素濃度が、前記トップコート層の厚み方向において、前記金属蒸着層側の方が、前記金属蒸着層と反対側よりも高くなるよう硫黄化合物を偏在させる工程である、液晶表示装置用の反射フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射フィルム、液晶表示装置および反射フィルムの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくく、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れ、たとえばチップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す反射フィルム、液晶表示装置および反射フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライト等として反射フィルムが採用されている。反射フィルムは、高い輝度や耐久性を付与するために、金属蒸着層とトップコート層との高い密着性が求められている。特許文献1には、アンダーコート層およびトップコート層を構成する樹脂としてメラミン樹脂を配合することにより、金属蒸着層とトップコート層と密着性や、金属蒸着層の腐食を防止する積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の積層フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性に関して改善の余地があった。特に、従来の積層フィルム(反射シート、反射フィルム)は、チップカット等の後工程において加えられる衝撃により、金属蒸着層とトップコート層とが剥離したり、接着剤を硬化するために高温乾燥を行った場合や、ロール・ツー・ロールで反射フィルムを製造した場合に、熱ジワやスジなどの外観不良を生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の発明に鑑みてなされたものであり、熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくく、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れ、たとえばチップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す反射フィルム、液晶表示装置および反射フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、金属蒸着層に銀または銀を主成分とする銀合金を含ませ、かつ、トップコート層に硫黄化合物を含ませたうえで、トップコート層における硫黄化合物の硫黄元素濃度を、トップコート層の厚み方向において、金属蒸着層側の方が、金属蒸着層と反対側よりも高くなるよう構成することにより、金属蒸着層における銀または銀合金と硫黄化合物とが反応し、これにより金属蒸着層とトップコート層とを強固に密着させ得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の反射フィルム、液晶表示装置および反射フィルムの製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)基材と、前記基材上に設けられたアンダーコート層と、前記アンダーコート層上に設けられた金属蒸着層と、前記金属蒸着層上に設けられたトップコート層とを有し、前記金属蒸着層は、銀または銀を主成分とする銀合金を含み、前記トップコート層は、硫黄化合物を含み、前記トップコート層における前記硫黄化合物の硫黄元素濃度は、前記トップコート層の厚み方向において、前記金属蒸着層側の方が、前記金属蒸着層と反対側よりも高い、反射フィルム。
【0008】
このような構成によれば、反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。また、反射フィルムは、乾燥に必要な温度がたとえば80~150℃程度の低温であってもよい。そのため、反射フィルムは、製造時に熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくい。
【0009】
(2)前記硫黄化合物は、X線光電子分光法(XPS)により前記トップコート層の前記金属蒸着層と反対側から前記金属蒸着層側に向けて、前記トップコート層の厚み方向における、前記トップコート層の硫黄元素濃度を測定する場合において、前記トップコート層の厚み方向における前記金属蒸着層側に、前記硫黄元素濃度の最大濃度ピークを示すよう、前記トップコート層に含まれる、(1)記載の反射フィルム。
【0010】
このような構成によれば、反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性がより優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0011】
(3)前記硫黄元素濃度の最大濃度ピークは、0.5~30.0原子%である、(2)記載の反射フィルム。
【0012】
このような構成によれば、反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性がより優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0013】
(4)前記アンダーコート層は、メラミン樹脂を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の反射フィルム。
【0014】
このような構成によれば、反射フィルムは、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0015】
(5)前記トップコート層は、メラミン樹脂を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の反射フィルム。
【0016】
このような構成によれば、反射フィルムは、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0017】
(6)前記硫黄化合物の含有量は、前記トップコート中、樹脂固形分換算で、0.5~20質量%である、(1)~(5)のいずれかに記載の反射フィルム。
【0018】
このような構成によれば、反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性がより優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0019】
(7)前記トップコート層上に、接着層を介して樹脂フィルム層が設けられる、(1)~(6)のいずれかに記載の反射フィルム。
【0020】
このような構成によれば、反射フィルムは、優れた耐候性や耐擦性等の種々の機能が付与され得る。また、このような反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0021】
(8)光源と、導光板と、(1)~(7)のいずれかに記載の反射フィルムと、液晶パネルとを備える、液晶表示装置。
【0022】
このような構成によれば、液晶表示装置に使用されている反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。そのため、液晶表示装置は、長期にわたり、高輝度、高耐久性等の品質を保持し得る。
【0023】
(9)基材上に、アンダーコート層を設けるアンダーコート層形成工程と、前記アンダーコート層上に、金属蒸着層を設ける蒸着工程と、前記金属蒸着層上に、トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を塗布してトップコート層を設けるトップコート層形成工程と、80~150℃にて乾燥する低温乾燥工程と、前記トップコート層上に、接着剤を付与した樹脂フィルム層を設ける樹脂フィルム層形成工程とを有し、前記金属蒸着層は、銀または銀を主成分とする銀合金を含み、前記トップコート層用樹脂組成物は、硫黄化合物を含み、前記トップコート層形成工程は、前記トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を前記金属蒸着層に塗布することにより、前記樹脂溶液中の前記硫黄化合物と、前記金属蒸着層中の前記銀または銀を主成分とする銀合金とを反応させ、前記トップコート層における前記硫黄化合物の硫黄元素濃度が、前記トップコート層の厚み方向において、前記金属蒸着層側の方が、前記金属蒸着層と反対側よりも高くなるよう硫黄化合物を偏在させる工程である、反射フィルムの製造方法。
【0024】
このような構成によれば、得られる反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。また、反射フィルムは、乾燥に必要な温度がたとえば80~150℃程度の低温であってもよい。そのため、反射フィルムは、製造時に熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくく、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れ、たとえばチップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す反射フィルム、液晶表示装置および反射フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の反射フィルムの構成を説明するための模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の具体例(実施例6)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の具体例(実施例3)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態の具体例(実施例4)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の反射フィルムを備える液晶表示装置を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<反射フィルム>
図1は、本発明の一実施形態の反射フィルム1の構成を説明するための模式的な断面図である。本実施形態の反射フィルム1は、基材2と、基材2上に設けられたアンダーコート層3と、アンダーコート層3上に設けられた金属蒸着層4と、金属蒸着層4上に設けられたトップコート層5とを有する。金属蒸着層4は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む。トップコート層5は、硫黄化合物を含む。トップコート層5における硫黄化合物の硫黄元素濃度は、トップコート層5の厚み方向において、金属蒸着層4側の方が、金属蒸着層4と反対側よりも高い。このような反射フィルム1は、金属蒸着層4とトップコート層5との密着性が優れる。そのため、反射フィルム1は、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。また、反射フィルム1は、乾燥に必要な温度がたとえば80~150℃程度の低温であってもよい。そのため、反射フィルム1は、製造時に熱ジワやスジなどの外観不良を生じにくい。以下、それぞれの構成について説明する。
【0028】
(基材2)
基材2は、液晶表示装置の反射フィルム1において汎用されている樹脂フィルムが使用され得る。一例を挙げると、基材2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等である。基材2は、透明フィルムであってもよく、白色PET(発泡PET)フィルム等の白色フィルムであってもよい。
【0029】
基材2の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、基材2の厚みは、20μm以上であることが好ましい。また、基材2の厚みは、400μm以下であることが好ましい。基材2の厚みが上記範囲内であることにより、得られる反射フィルム1は、適度な剛性や強度を示し得る。
【0030】
(アンダーコート層3)
アンダーコート層3は、基材2上に設けられ、金属蒸着層4を基材2に強固に接着するために設けられる。また、アンダーコート層3は、銀または銀を含む合金を含む金属蒸着層4を、水分や酸素等による腐食から保護するために設けられる。
【0031】
アンダーコート層3の原料は特に限定されない。一例を挙げると、アンダーコート層3は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シロキサン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等である。これらの中でも、アンダーコート層3は、メラミン樹脂を含むことが好ましく、メラミン樹脂とポリエステル樹脂とを含むことがより好ましい。メラミン樹脂が含まれることにより、反射フィルム1は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層4が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0032】
アンダーコート層3に含まれるメラミン樹脂の含有量は、樹脂固形分中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、メラミン樹脂は、樹脂固形分中100質量%であってもよい。メラミン樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、反射フィルム1は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層4が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0033】
アンダーコート層3の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、アンダーコート層3の厚みは、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。また、アンダーコート層3の厚みは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。アンダーコート層3の厚みが上記範囲内であることにより、アンダーコート層3は、金属蒸着層4を基材2に強固に接着しやすい。また、アンダーコート層3は、銀または銀を含む合金を含む金属蒸着層4を、水分や酸素等による腐食から保護しやすい。
【0034】
基材2にアンダーコート層3を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、アンダーコート層3は、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法が採用され得る。
【0035】
(金属蒸着層4)
金属蒸着層4は、アンダーコート層3上に設けられる。本実施形態の金属蒸着層4は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む。
【0036】
銀合金を構成する他の金属は特に限定されない。一例を挙げると、他の金属は、銅、ビスマス、金、白金、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、マグネシウム、鉛、等である。銀合金に含まれる他の金属の割合は、0.1(単位:原子%)以上であることが好ましく、10(単位:原子%)以下であることが好ましい。
【0037】
金属蒸着層4の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、金属蒸着層4の厚みは、60nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましい。また、金属蒸着層4の厚みは、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。金属蒸着層4の厚みが上記範囲内であることにより、得られる反射フィルム1は、適切なコストで作製され、かつ、適度な反射率を示す。
【0038】
金属蒸着層4の積層方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属蒸着層4は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のいわゆるドライコーティング法により、アンダーコート層3上に設けられ得る。
【0039】
(トップコート層5)
トップコート層5は、金属蒸着層4を保護したり、金属蒸着層4に含まれる銀(銀合金を含む)を防食するために設けられる。トップコート層5は、硫黄化合物を含む。トップコート層5は、複数層が設けられてもよい。
【0040】
トップコート層5の原料は、硫黄化合物を含んでいればよく、他の原料は特に限定されない。一例を挙げると、トップコート層5は、硫黄化合物のほか、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シロキサン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等である。これらの中でも、トップコート層5は、メラミン樹脂を含むことが好ましく、メラミン樹脂とアクリル樹脂とを含むことがより好ましい。メラミン樹脂が含まれることにより、反射フィルム1は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層4が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0041】
トップコート層5に含まれるメラミン樹脂の含有量は、樹脂固形分中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、メラミン樹脂は、樹脂固形分中100質量%であってもよい。メラミン樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、反射フィルム1は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む金属蒸着層4が腐食されにくく、優れた防食性を示しやすい。
【0042】
硫黄化合物は特に限定されない。一例を挙げると、硫黄化合物は、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)等のメルカプトプロピオン酸誘導体系硫黄化合物、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)等のチオグリコール酸誘導体系硫黄化合物、チオール系シランカップリング剤等である。硫黄化合物は、併用されてもよい。
【0043】
硫黄化合物の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、硫黄化合物の含有量は、トップコート層5を構成する樹脂固形分中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、硫黄化合物の含有量は、トップコート層5を構成する樹脂固形分中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。硫黄化合物の含有量が上記範囲内であることにより、反射フィルム1は、適切なコストで作製でき、かつ、金属蒸着層4とトップコート層5との密着性が優れる。そのため、得られる反射フィルム1は、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0044】
トップコート層5の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、トップコート層5の厚みは、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。また、トップコート層5の厚みは、5000nm以下であることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましい。トップコート層5の厚みが上記範囲内であることにより、得られる反射フィルム1は、適度な剛性を示し、たわみにくい。また、トップコート層5は、銀または銀を含む合金を含む金属蒸着層4を、水分や酸素等による腐食から保護しやすい。
【0045】
金属蒸着層4にトップコート層5を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、トップコート層5は、上記した硫黄化合物や、適宜の樹脂を含むトップコート層5用樹脂組成物の樹脂溶液を調製し、樹脂溶液をグラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法により金属蒸着層4に塗布する方法が採用され得る。
【0046】
本実施形態の反射フィルム1は、ウェットコーティング法によって、金属蒸着層4上にトップコート層5が形成される。得られる反射フィルム1は、トップコート層5における硫黄化合物の硫黄元素濃度が、トップコート層5の厚み方向において、金属蒸着層4側の方が、金属蒸着層4と反対側よりも高くなる。これは、トップコート層5に含まれる硫黄化合物が、金属蒸着層4に含まれる銀または銀を主成分とする銀合金と反応して強固に結合するため、金属蒸着層4との接着面の近傍に硫黄化合物が多く偏在するためである。
図1において、参照符号51は、硫黄化合物が多く含まれる領域を示している。
【0047】
図2は、本実施形態の具体例(後述する実施例6、硫黄化合物としてチオール系シランカップリング剤を1.0質量%含む)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
図3は、
図2に示されるグラフの拡大図である。
図4は、本実施形態の具体例(後述する実施例3、硫黄化合物としてペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)を5.0質量%含む)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
図5は、
図4に示されるグラフの拡大図である。
図6は、本実施形態の具体例(後述する実施例4、硫黄化合物としてペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)を10.0質量%含む)の反射フィルムの、X線光電子分光法(XPS)による硫黄元素濃度の測定結果を示すグラフである。
図7は、
図6に示されるグラフの拡大図である。
【0048】
図2~
図7に示されるように、本実施形態の反射フィルムは、XPSによりトップコート層の金属蒸着層と反対側から金属蒸着層側に向けて、トップコート層の厚み方向における、トップコート層の硫黄元素濃度を測定する場合において、トップコート層の厚み方向における金属蒸着層側に、硫黄元素濃度の最大濃度ピークを示す。
図2に示されるように、この最大濃度ピークを示す深さは、炭素元素濃度が100原子%から減少し始め、かつ、銀元素濃度が0原子%から上昇し始める深さ(深さ約20nm)であり、最大濃度ピークは1.0原子%である。
図4に示されるように、最大濃度ピークを示す深さは、炭素元素濃度が100原子%から減少し始め、かつ、銀元素濃度が0原子%から上昇し始める深さ(深さ約25nm)であり、最大濃度ピークは3.0原子%である。
図6に示されるように、最大濃度ピークを示す深さは、炭素元素濃度が100原子%から減少し始め、かつ、銀元素濃度が0原子%から上昇し始める深さ(深さ約35nm)であり、その際の最大濃度ピークは5.0原子%である。すなわち、トップコート層に含まれる硫黄化合物は、金属蒸着層との接着面の近傍において硫黄元素濃度のピークを有していることから、金属蒸着層との接着面の近傍において高濃度となるよう偏在していることが判る。このように、硫黄化合物と銀または銀を主成分とする合金とが強固に結合した反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0049】
XPSの測定条件は特に限定されない。一例を挙げると、XPSの測定は、多機能走査型X線光電子分光分析装置(型番:PHI5000 VersaProbe2、アルバック・ファイ)を使用し、付属のArイオン銃(2kV)でサンプル表面を30秒スパッタエッチングし、AlKα線の照射によってC1s(炭素)、S2p(窒素)、Ag3d(銀)の光電子を検出し、3種類の元素比率を算出する。C1s(炭素)、S2p(窒素)、Ag3d(銀)の検出時間はそれぞれ約60秒という条件により測定することができる。
【0050】
XPSにより測定されるトップコート層における硫黄化合物の硫黄元素濃度の最大濃度ピークは、0.5原子%以上であることが好ましく、1.0原子%以上であることがより好ましい。また、最大濃度ピークは、30.0原子%以下であることが好ましく、10.0原子%以下であることがより好ましい。最大濃度ピークが上記範囲内であることにより、反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性がより優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0051】
得られた反射フィルム1は、トップコート層5上に、接着層6を介して樹脂フィルム層7が設けられることが好ましい。
【0052】
接着層6を構成する原料は特に限定されない。一例を挙げると、接着層6の原料は、液硬化型接着剤、二液溶剤型接着剤、一液無溶剤型接着剤等である。二液硬化型接着剤としてはアクリル系接着剤、二液溶剤型接着剤としては、ポリエステル系接着剤、芳香族ポリエステル系接着剤、脂肪族ポリエステル系接着剤、ポリエステル/ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル/ポリウレタン系接着剤、一液無溶剤型接着剤(湿気硬化型タイプ)としてはポリエーテル/ポリウレタン系接着剤等が使用され得る。
【0053】
樹脂フィルム層7は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂フィルム層7は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等である。樹脂フィルム7は、優れた反射性を付与するために、白色PET(発泡PET)フィルム等の白色フィルムであることが好ましい。また、樹脂フィルム層7は、金属蒸着された樹脂フィルム(たとえばAl蒸着PET)であってもよい。
【0054】
樹脂フィルム層7の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、樹脂フィルム層7の厚みは、20μm以上であることが好ましい。また、樹脂フィルム層7の厚みは、400μm以下であることが好ましい。樹脂フィルム層7の厚みが上記範囲内であることにより、得られる反射フィルム1は、適度な剛性や強度を示し得る。
【0055】
樹脂フィルム層7上に設けられる接着層6の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、接着層6の厚みは、3μm以上であることが好ましい。また、接着層6の厚みは、10μm以下であることが好ましい。接着層6の厚みが上記範囲内であることにより、得られる反射フィルム1は、樹脂フィルム層7がトップコート層5に強固に接着され得る。
【0056】
樹脂フィルム上に接着層6を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、接着層6は、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト、リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等により樹脂フィルム上に設けることができる。
【0057】
接着層6の設けられた樹脂フィルム層7は、トップコート層5上に積層され、所定の温度条件(たとえば40℃3日間)の下、圧着することにより、接着層6を介してトップコート層5上に接着される。得られる反射フィルム1は、優れた耐候性や耐擦性等の種々の機能が付与され得る。また、このような反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0058】
以上、本実施形態の反射フィルム1は、金属蒸着層4に含まれる銀または銀を主成分とする銀合金と、トップコート層5に含まれる硫黄化合物とが反応して強固に接着している。その結果、反射フィルム1は、これら金属蒸着層4とトップコート層5との密着性が優れる。そのため、反射フィルム1は、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。
【0059】
<液晶表示装置>
本発明の一実施形態の液晶表示装置は、光源と、導光板と、上記実施形態において詳述した反射フィルム1と、液晶パネルとを備える。液晶表示装置に使用されている反射フィルム1は、上記のとおり、金属蒸着層4とトップコート層5との密着性が優れる。そのため、反射フィルム1は、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。そのため、液晶表示装置は、長期にわたり、高輝度、高耐久性等の品質を保持し得る。以下、それぞれについて説明する。
【0060】
図8は、本発明の一実施形態の反射フィルム1を備える液晶表示装置8を説明するための模式的な断面図である。液晶表示装置8は、バックライトユニットと、液晶パネル9とを含む。バックライトユニットは、反射フィルム1と、導光板10と、導光板10の端面に配置された光源11と、拡散プリズム12とを含む。液晶表示装置8は、図示しない偏光板、拡散シート等の、公知の液晶表示装置が具備し得る部材を適宜具備していてもよい。
【0061】
(光源11)
光源11は特に限定されない。一例を挙げると、光源11は、白色光源が好ましい。本実施形態において、白色光は、可視光領域(波長380~780nm)の各波長成分を均一に含む光だけでなく、これら波長成分を均一には含んでいないが肉眼で白色に見える光も含む。すなわち、白色光は、基準色である赤色光、緑色光、青色光等、特定の波長帯域の光を含むものであればよい。光源11は、白色LED(W-LED)であることが好ましい。
【0062】
(導光板10)
導光板10は特に限定されない。一例を挙げると、導光板10は、横方向からの光を厚さ方向に偏向可能となるよう、背面側にレンズパターンが形成された導光板10や、背面側または視認側にプリズム形状等が形成された導光板10が用いられ得る。
【0063】
(拡散プリズム12)
拡散プリズム12は特に限定されない。一例を挙げると、拡散プリズム12は、導光板10によって偏向された光を液晶パネル9側に拡散させ得る部材であればよい。また、拡散プリズム12は、上記導光板10によって充分に液晶パネル9側への光が拡散される場合には、適宜、省略されてもよい。
【0064】
(液晶パネル9)
液晶パネル9の駆動表示モードは特に限定されない。一例を挙げると、駆動表示モードは、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードであってもよい。
【0065】
本実施形態の液晶表示装置8は、バックライトユニットとして上記した反射フィルム1を含む。反射フィルム1は、上記のとおり、金属蒸着層4とトップコート層5との密着性が優れる。そのため、反射フィルム1は、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。そのため、液晶表示装置8は、長期にわたり、高輝度、高耐久性等の品質を保持し得る。
【0066】
<反射フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態の反射フィルムの製造方法は、基材上に、アンダーコート層を設けるアンダーコート層形成工程と、アンダーコート層上に、金属蒸着層を設ける蒸着工程と、金属蒸着層上に、トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を塗布してトップコート層を設けるトップコート層形成工程と、80~150℃にて乾燥する低温乾燥工程と、トップコート層上に、接着剤を付与した樹脂フィルム層を設ける樹脂フィルム層形成工程とを有する。金属蒸着層は、銀または銀を主成分とする銀合金を含む。トップコート層用樹脂組成物は、硫黄化合物を含む。トップコート層形成工程は、トップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を金属蒸着層に塗布することにより、樹脂溶液中の硫黄化合物と、金属蒸着層中の銀または銀を主成分とする銀合金とを反応させ、トップコート層における硫黄化合物の硫黄元素濃度が、トップコート層の厚み方向において、金属蒸着層側の方が、金属蒸着層と反対側よりも高くなるよう硫黄化合物を偏在させる工程である。以下、それぞれの工程について説明する。なお、以下の説明において、反射フィルムの実施形態において上記したものは、適宜説明が省略される。
【0067】
(アンダーコート層形成工程)
アンダーコート層形成工程は、基材上に、アンダーコート層を設ける工程である。
【0068】
基材にアンダーコート層を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、アンダーコート層は、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法が採用され得る。
【0069】
(蒸着工程)
蒸着工程は、アンダーコート層上に、金属蒸着層を設ける工程である。金属蒸着層の積層方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属蒸着層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のいわゆるドライコーティング法により、アンダーコート層上に設けられ得る。
【0070】
(トップコート層形成工程)
トップコート層形成工程は、金属蒸着層上にトップコート層を設ける工程である。金属蒸着層にトップコート層を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、トップコート層は、上記した硫黄化合物や、適宜の樹脂を含むトップコート層用樹脂組成物の樹脂溶液を調製し、樹脂溶液をグラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法により金属蒸着層に塗布する方法が採用され得る。
【0071】
本実施形態の反射フィルムの製造法によれば、ウェットコーティング法によって、金属蒸着層上にトップコート層が形成される。この際、樹脂溶液中の硫黄化合物と、金属蒸着層中の銀または銀を主成分とする銀合金とが反応する。これにより、トップコート層における硫黄化合物の硫黄元素濃度が、トップコート層の厚み方向において、金属蒸着層側の方が、金属蒸着層と反対側よりも高くなるよう硫黄化合物が偏在することとなる。
【0072】
トップコート層において硫黄化合物が偏在していることは、X線光電子分光法(XPS)によって硫黄元素濃度を測定することにより確認し得る。すなわち、反射フィルムの実施形態に関連して上記したとおり、本実施形態の反射フィルムの製造方法によって製造される反射フィルムは、XPSによりトップコート層の金属蒸着層と反対側から金属蒸着層側に向けて、トップコート層の厚み方向における、トップコート層の硫黄元素濃度を測定する場合において、トップコート層の厚み方向における金属蒸着層側に、硫黄元素濃度の最大濃度ピークを示す。このように、トップコート層に含まれる硫黄化合物は、金属蒸着層との接着面の近傍において硫黄元素濃度のピークを有していることから、金属蒸着層との接着面の近傍において高濃度となるよう偏在していることが判る。これにより、硫黄化合物と銀または銀を主成分とする合金とが強固に結合した反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れる。そのため、反射フィルムは、たとえば、チップカット等の工程において衝撃が加えられる場合に剥離等の不良を生じにくく、より優れた耐久性を示す。
【0073】
(低温乾燥工程)
低温乾燥工程は、80~150℃にて乾燥する工程である。低温乾燥工程によれば、トップコート層の樹脂溶液が乾燥され、金属蒸着層とトップコート層とが接着される。本実施形態の反射フィルムの製造方法は、トップコート層を形成するための樹脂溶液中の硫黄化合物と、金属蒸着層中の銀または銀を主成分とする銀合金とが反応し、強固に結合している。そのため、低温乾燥工程における乾燥条件は、トップコート層の樹脂溶液を乾燥させ得る温度条件(80~150℃、好ましくは100~130℃)でよい。このような緩やかな乾燥条件であっても、金属蒸着層とトップコート層とを強固に密着させることができる。
【0074】
(樹脂フィルム層形成工程)
樹脂フィルム層形成工程は、トップコート層上に、接着剤を付与した樹脂フィルム層を設ける工程である。樹脂フィルム上に接着層を設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、接着層は、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト、リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等により樹脂フィルム上に設けることができる。
【0075】
接着層の設けられた樹脂フィルム層は、トップコート層上に積層され、圧着することにより、接着層を介してトップコート層上に接着される。
【0076】
本実施形態の反射フィルムは、ロール・ツー・ロール方式で作製され得る。このようなロール・ツー・ロール方式で作製される場合であっても、反射フィルムは、乾燥条件が過酷でなくてもよいため、低温乾燥工程において熱ジワやスジ等の外観不良を生じにくい。したがって、本実施形態の反射フィルムの製造方法は、製造効率が優れる。
【0077】
また、得られた長尺の反射フィルムは、所望される大きさや形状に合わせて型抜き(チップカット)される。本実施形態の反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れているため、チップカット等の工程で強い衝撃が加えられる場合であっても、型抜きされた端部で剥離が生じにくい。その結果、反射フィルムは、外観不良を生じにくく、優れた耐久性を示す。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0079】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み:25μm)を基材とし、基材上に、ポリエステル樹脂溶液(ポリエステル樹脂(詳細ポリエステルポリオール):70%)、イソシアネート:20%、メラミン樹脂:10%を含む)をバーコーターにて塗工した。この未硬化樹脂層を100℃、1分にて硬化させ、厚み100nmのアンダーコート層を形成した(アンダーコート層形成工程)。アンダーコート層上に、抵抗加熱式蒸着機を用い、銀の真空蒸着を行い、厚み100nmのAg膜(金属蒸着層)を形成した(金属蒸着層形成工程)。金属蒸着層上に、アクリル系樹脂溶液(アクリル系樹脂(詳細アクリルポリオール):69%、イソシアネート:20%、メラミン樹脂:10%、PETP:1%を含む)を、バーコーターにて塗工し、厚み1.0μmのトップコート層を形成した(トップコート層形成工程)。次いで、130℃1分間で乾燥し(低温乾燥工程)、反射フィルムを作製した。
【0080】
(実施例2~5)
表1に記載の原料および条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、反射フィルムを作製した。その際、アクリル系樹脂とイソシアネートの比率を実施例1と同じに保ったまま、これらの配合量を下げ、PETPの濃度が表1になるように調整した。メラミン樹脂の濃度は10%に固定した。
【0081】
(実施例6~13)
表1に記載の原料および条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、反射フィルムを作製した。なお、硫黄化合物はチオール系シランカップリング剤を使用した。その際、アクリル系樹脂とイソシアネートの比率を実施例1と同じに保ったまま、チオール系シランカップリング剤の濃度が表1になるように調整した。メラミン樹脂の濃度は10%に固定した。
【0082】
(比較例1)
表1に記載の原料および条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、反射フィルムを作製した。その際、アクリル系樹脂を70%、イソシアネートを20%、メラミン樹脂を10%とし、硫黄化合物は使用しなかった。
【0083】
【0084】
得られた反射フィルムの碁盤目剥離試験、初期密着性、耐熱性試験後密着性、耐湿熱試験後密着性を、以下の評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0085】
<碁盤目剥離試験>
1mm幅で100のマス目を作り(10×10)、市販のセロハンテープを100のマス目に貼着した後、これを引き剥がすことによって引き剥がされないマス目の数を調べた。
【0086】
<密着性>
調製直後の反射フィルム、温度90℃で500時間保持した後(耐熱試験後)の反射フィルム、温度60℃湿度95%で500時間保持した後(耐湿熱試験後)の反射フィルムについて、別途、接着剤(ポリエステルポリオール+イソシアネート)を付与した樹脂フィルム層(PET、詳細:東洋紡コスモシャインA4300)を準備し、トップコート層上に接着剤(厚み5μm)を介して、厚み50μmの樹脂フィルム層を形成し、乾燥させた(条件100℃×1分後、40℃×72時間エージング)(樹脂フィルム層形成工程)。その後、樹脂フィルム層と、反射フィルムとを把持し、180°方向に引っ張り、剥離する程度を1~5の5段階で確認した。「1」が最も剥離しやすく、「5」が剥離困難であることを示している。
【0087】
表1に示されるように、本発明の実施例1~13の反射フィルムは、金属蒸着層とトップコート層との密着性が優れており、剥離が困難であった。一方、硫黄化合物を含んでいない比較例1の反射フィルムは、碁盤目剥離試験では本発明の反射フィルムとの差異は見られなかったが、より過酷な試験であるドライラミネート後の剥離試験では、容易に剥離した。
【符号の説明】
【0088】
1 反射フィルム
2 基材
3 アンダーコート層
4 金属蒸着層
5 トップコート層
51 硫黄化合物が多く含まれる領域
6 接着層
7 樹脂フィルム層
8 液晶表示装置
9 液晶パネル
10 導光板
11 光源
12 拡散プリズム