(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】投影装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20230928BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
G03B21/00 D
(21)【出願番号】P 2019022915
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 瞳
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-9762(JP,A)
【文献】特開2013-168922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場を移動自在な移動装置と、
前記移動装置に搭載され、前記作業現場の壁面、床面および天井面の少なくともいずれか一つを含む投影面の所定範囲に光を照射して、画像を投影させる投影機器と、
前記移動装置に搭載され、前記所定範囲を含む撮影範囲を撮影する撮影機器と、
前記移動装置、前記投影機器および前記撮影機器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記移動装置を複数の所定位置に移動させ、複数の前記所定位置ごとに、前記撮影機器により前記撮影範囲を撮影した第1画像データと、前記投影機器から前記所定範囲に光を照射させた状態で前記撮影機器により前記撮影範囲を撮影した第2画像データとを取得し、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間で、前記所定範囲におけるピクセルごとの画素値の差分の平均値を、前記第2画像データの鮮明さを評価するための特徴量として算出し、前記特徴量が最も大きくなる前記所定位置を前記投影機器から前記投影面に前記画像を投影させる最適位置として決定
し、
前記制御部は、前記特徴量が所定の基準値未満である場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定する、
ことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記投影機器から複数の単色光を照射させて、前記単色光ごとに前記第2画像データを取得し、前記単色光ごとに前記特徴量を算出することを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画素値の分散を算出し、算出した分散が所定の閾値以上である場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定することを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2画像データにおける前記所定範囲が四角形状でない場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の投影装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動装置の周囲の物体の位置を示す3次元情報を取得し、前記3次元情報に基づいて、前記壁面、前記床面および前記天井面のいずれかから平面を特定し、特定した前記平面を前記投影面とすることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の投影装置。
【請求項6】
前記移動装置は、車輪により移動する台車型の移動体であることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の投影装置。
【請求項7】
前記移動装置は、2以上の足を有する多足歩行型ロボットであることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影機器から投影面へと画像を投影するに際して、投影先や投影方向、投影する画像の輝度等を適切に選択するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、ロボットに投影機器を搭載し、投影機器から投影する画像の種類に基づいて、投影先を決定する投影制御装置が開示されている。また、特許文献2には、ロボットに投影機器を搭載し、投影機器に対するユーザーの位置を特定して、ユーザーの位置に応じて、投影機器から投影される画像の向きを調整する投影制御装置が開示されている。また、特許文献3には、プロジェクタに輝度センサを設け、プロジェクタからスクリーンに投影された映像の輝度を測定し、測定結果に応じて、適正な輝度になるようにプロジェクタの映像出力を調整するプロジェクタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/125541号
【文献】特開2017-98668号公報
【文献】特開2002-341437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設現場等の作業現場において、投影機器から図面や作業の進捗状況等を示す資料を、作業現場の壁面、床面、天井面等に投影すれば、作業に関わる複数の人員が同時に資料を閲覧することができるため、効率的に作業を進めることができる。しかしながら、作業現場は、作業の進捗状況に応じて時々刻々と状況が変化していく。例えば壁面の有無が変化したり、時間帯に応じて現場の明るさが変化したりする。そのため、時々刻々と変化する作業現場において、投影機器から画像を投影すべき投影装置の位置を適正かつ効率的に決定することが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業現場において、投影機器から画像を投影すべき投影装置の位置を適正かつ効率的に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、作業現場を移動自在な移動装置と、前記移動装置に搭載され、前記作業現場の壁面、床面および天井面の少なくともいずれか一つを含む投影面の所定範囲に光を照射して、画像を投影させる投影機器と、前記移動装置に搭載され、前記所定範囲を含む撮影範囲を撮影する撮影機器と、前記移動装置、前記投影機器および前記撮影機器を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動装置を複数の所定位置に移動させ、複数の前記所定位置ごとに、前記撮影機器により前記撮影範囲を撮影した第1画像データと、前記投影機器から前記所定範囲に光を照射させた状態で前記撮影機器により前記撮影範囲を撮影した第2画像データとを取得し、前記第1画像データと前記第2画像データとの間で、前記所定範囲におけるピクセルごとの画素値の差分の平均値を、前記第2画像データの鮮明さを評価するための特徴量として算出し、前記特徴量が最も大きくなる前記所定位置を前記投影機器から前記投影面に前記画像を投影させる最適位置として決定する、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記制御部は、前記投影機器から複数の単色光を照射させて、前記単色光ごとに前記第2画像データを取得し、前記単色光ごとに前記特徴量を算出することが好ましい。
【0008】
また、前記制御部は、前記特徴量が所定の基準値未満である場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定することが好ましい。
【0009】
また、前記制御部は、前記画素値の分散を算出し、算出した分散が所定の閾値以上である場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定することが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記第2画像データにおける前記所定範囲が四角形状でない場合、前記所定位置が前記最適位置ではないと判定することが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記移動装置の周囲の物体の位置を示す3次元情報を取得し、前記3次元情報に基づいて、前記壁面、前記床面および前記天井面のいずれかから平面を特定し、特定した前記平面を前記投影面とすることが好ましい。
【0012】
また、前記移動装置は、車輪により移動する台車型の移動体であることが好ましい。
【0013】
また、前記移動装置は、2以上の足を有する多足歩行型ロボットであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる投影装置は、作業現場において、投影機器から画像を投影すべき投影装置の位置を適正かつ効率的に決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる投影装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる投影装置により投影面に画像を投影する様子の一例を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、投影装置により実行される投影面の決定手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、移動装置を所定位置8に位置付ける様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は、第1画像データおよび第2画像データを取得する様子を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第1画像データおよび第2画像データから特徴量を算出する手順を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、画像データの画素値ヒストグラムの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、特徴量をレーダーチャートとしてプロットした一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、画像データの画素値の分布の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、所定範囲の形状が四角形状でない場合の画像データの一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態にかかる投影装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態にかかる投影装置による投影面の決定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる投影装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる投影装置の構成の一例を示す概略図であり、
図2は、第1実施形態にかかる投影装置により投影面に画像を投影する様子の一例を模式的に示す説明図である。第1実施形態にかかる投影装置100は、例えば建設現場等の作業現場において、専用のスクリーンを用いることなく、壁面、床面(地面を含む)、天井面等を投影面として、投影機器から画像(静止画または動画)を投影させるための無人移動式の投影装置である。投影装置100は、作業現場で画像を投影するに適した投影面を自動的に決定する。投影装置100は、
図1に示すように、移動装置10と、プロジェクタ(投影機器)20と、カメラ(撮影機器)30と、記憶部40と、制御部50とを備えている。
【0018】
移動装置10は、
図2に示すように、複数の車輪10aにより移動する台車型の移動体である。移動装置10は、複数の車輪10aが設けられた本体11と、本体11に設けられたアーム部12とを有している。移動装置10は、本体11の内部に収容されたアクチュエータ13(
図1参照)を介して、複数の車輪10aを個別に駆動し、作業現場を自在に移動することができる。アクチュエータ13は、移動装置10が作業現場の走行面の走行させるための動力を複数の車輪10aに伝達する。アクチュエータ13は、制御部50により駆動制御される。アーム部12は、本実施形態においては、本体11の上面に設けられる。ただし、アーム部12は、本体11のいずれかの位置に取り付けられるものであればよい。アーム部12は、プロジェクタ20とカメラ30(
図2では図示省略)とが取り付けられており、本体11に対して、プロジェクタ20およびカメラ30を壁面W、床面Dおよび天井面Uに方向付けるように回動する。
【0019】
プロジェクタ20は、投影面の所定範囲に光を照射して画像を投影させる投影機器である。プロジェクタ20は、アーム部12に取り付けられる。プロジェクタ20は、制御部50により制御され、記憶部40に記憶された画像データを投影面に投影させる。本実施形態では、投影装置100は、
図2に示すように、作業現場の壁面W、床面Dおよび天井面Uのいずれかを投影面として、プロジェクタ20から四角形状の所定範囲5に光を照射し、画像6を投影させる。プロジェクタ20は、
図2に示すように、アーム部12が本体11に対して回動することで、壁面W、床面Dおよび天井面Uへと自在に光を照射する。なお、床面Dを投影面としたときのように、プロジェクタ20が投影面に対して垂直にならず、所定範囲5が長方形状(または正方形状)とならない場合には、所定範囲5の台形補正を行ってもよい。また、プロジェクタ20が投影面(床面D)に対して垂直になるようにアーム部12を構成してもよい。
【0020】
カメラ30は、プロジェクタ20から光が照射される所定範囲5を含む撮影範囲7を撮影して画像データを得るデジタル式の撮影機器である。カメラ30は、四角形状の撮影範囲7を、画像を歪ませることなく撮影できるものであればよい。したがって、カメラ30としては、魚眼レンズを有するものや360度撮影可能なカメラは適さない。カメラ30は、アーム部12に取り付けられており(
図2においては図示省略)、プロジェクタ20の所定範囲5が撮影範囲7の中心に位置するように設けられることが好ましい。カメラ30で撮影された画像データは、記憶部40に記憶される。
【0021】
記憶部40は、制御部50により実行される各種処理を実現するためのプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部40は、プロジェクタ20から投影面に投影する画像データを記憶する。また、記憶部40は、カメラ30により撮影された画像データを記憶する。また、記憶部40は、ユーザーにより予め入力された作業現場のマップ情報と、ユーザーがマップ情報に紐付けて予め定めた所定位置を含む移動装置10の移動経路の情報を記憶している。記憶部40は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVDにより実装されてよい。
【0022】
制御部50は、記憶部40に記憶されているプログラム及びデータに基づいて、投影装置100に関する各種処理を実行する。制御部50は、移動装置10の本体11に収容されている。制御部50は、アクチュエータ13を駆動制御することで、複数の車輪10aを駆動させて、移動装置10の移動を制御する。また、制御部50は、プロジェクタ20からの光の照射および画像の投影を制御する。また、制御部50は、カメラ30による画像の撮影を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP、システムLSI(Large Scale Integration)などのプロセッサにより実装されてよい。
【0023】
ここで、作業現場(建設作業等の工事現場)において、プロジェクタ20から図面や作業の進捗状況等を示す資料を、作業現場の壁面W、床面D、天井面U等に投影すれば、作業に関わる複数の人員が同時に資料を閲覧することができるため、効率的に作業を進めることができる。しかしながら、作業現場は、作業の進捗状況に応じて時々刻々と状況が変化していく。例えば壁面Wの有無が変化したり、作業現場にさしこむ光L(
図4参照)が時間帯に応じて変わることで、作業現場の明るさが変化したりする。そのため、時々刻々と変化する作業現場において、プロジェクタ20から画像6を投影すべき投影装置の位置を適正かつ効率的に決定することが求められる。
【0024】
以下、実施形態にかかる投影装置100により、プロジェクタ20から画像6を投影すべき投影装置の位置を決定するための手順について説明する。
図3は、投影装置により実行される投影面の決定手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示す手順は、制御部50により実行される。
【0025】
制御部50は、ステップS1として、移動装置10を次の所定位置8に位置付ける。
図4は、移動装置を所定位置8に位置付ける様子を示す説明図である。制御部50は、ユーザーが予め定めた所定位置を含む移動経路に沿って、移動装置10を移動させる。本実施形態では、ユーザーが予め定めた所定位置8は、
図4に示すように、作業現場における壁面Wの近傍に複数設定される。本実施形態では、制御部50は、移動装置10を壁面Wに沿って平行させることで、移動装置10を複数の所定位置8の一つに位置付ける。なお、移動装置10を床面Dまたは天井面Uに沿って平行移動させるものとしてもよい。
【0026】
制御部50は、移動装置10を所定位置8の一つに位置付けると、ステップS2として、プロジェクタ20およびカメラ30を制御して、画像データを取得する。
図5は、第1画像データおよび第2画像データを取得する様子を示す説明図である。なお、
図5では、壁面Wを投影面とする例を記載しているが、床面Dおよび天井面Uのいずれを投影面としてもよい。制御部50は、まず、
図5の左図に示すように、移動装置10が所定位置8に位置付けられた状態で、カメラ30により撮影範囲7を撮影した第1画像データV1(
図6参照)を撮影する。このとき、制御部50は、プロジェクタ20から所定範囲5へと光を照射させない。
【0027】
次に、制御部50は、
図5の右図に示すように、移動装置10を所定位置8から移動させることなく、プロジェクタ20から所定範囲5に光を照射させた状態で、カメラ30により撮影範囲7を撮影した第2画像データV2(
図6参照)を撮影する。制御部50は、プロジェクタ20から、複数の単色光を照射させた状態で、単色光ごとに第2画像データV2を取得する。単色光は、例えば、赤色、黄色、青色、緑色等を用いる。本実施形態では、単色光として赤色(R)、黄色(Y)、青色(B)を用いるものとする。ただし、制御部50は、複数の単色光について鮮明度を評価する必要がない場合、すなわち、グレースケールで画像6を表示する場合について鮮明度を評価する場合には、プロジェクタ20から白色光を照射させる。第1画像データV1および第2画像データV2は、ステップS2の処理を行った時点での所定位置8に対応付けて、記憶部40に記憶される。
【0028】
制御部50は、一つの所定位置8について第1画像データV1および第2画像データV2を取得して記憶部40に記憶させると、ステップS3として、すべての所定位置8で第1画像データV1および第2画像データV2を取得したか否かを判定する。すべての所定位置8で画像データを取得していない場合、制御部50は、ステップS1の処理に戻る。すなわち、制御部50は、移動装置10を次の所定位置8へと移動させ、次の所定位置8で再びステップS2の処理を実行し、次の所定位置8に対応付けて第1画像データV1および第2画像データV2を取得する。したがって、ステップS3において、すべての所定位置8で第1画像データV1および第2画像データV2の取得が完了したと判定されるまで、ステップS1、S2の処理が繰り返し実行される。取得した第1画像データV1および第2画像データV2は、すべて、所定位置8に対応付けて記憶部40に記憶される。
【0029】
すべての所定位置8で第1画像データV1および第2画像データV2の取得が完了すると、制御部50は、ステップS4として、各所定位置8に対応して記憶された第1画像データV1および第2画像データV2を用いて、第2画像データV2の鮮明さを評価するための特徴量を算出する。以下、特徴量の算出方法について、
図6から
図8を参照しながら説明する。
図6は、第1画像データおよび第2画像データから特徴量を算出する手順を模式的に示す説明図であり、
図7は、画像データの画素値ヒストグラムの一例を示す説明図であり、
図8は、特徴量をレーダーチャートとしてプロットした一例を示す説明図である。
【0030】
第1画像データV1および第2画像データV2は、
図6に示すように、複数のピクセル(画素)によって格子状に区分される。各ピクセルには、明るさを所定の階調数で規定した画素値(輝度値、濃度値)が設定され、
図7に例示するように、各画像データに関して、横軸に画素値、縦軸に同じ画素値であるピクセル数をプロットした画素値ヒストグラムを描くことができる。画素値は、例えば8ビットの階調数で表す場合、値0から値255までの256段階で表される。本実施形態では、第1画像データV1と第2画像データV2とのピクセルごとに、画素値の差分を算出し、算出した画素値の差分のデータの集まりである画像データV3を生成する。そして、画像データV3において所定範囲5を抽出し、所定範囲5におけるピクセル全体の画素値の平均値を算出して、算出した平均値を特徴量とする。上述したように、第2画像データV2は、複数の単色光ごとに取得されたものであるため、特徴量も複数の単色光ごとに算出されることになる。
【0031】
次に、
図8に示すように、複数の単色光ごとに算出した特徴量、すなわち所定範囲5における画素値の平均値をレーダーチャート状にプロットする。それにより、
図8では赤色(R)、黄色(Y)、青色(B)の単色光の特徴量P1、P2、P3がプロットされ、特徴量P1、P2、P3を繋いだ三角形状のレーダーチャートLCが得られる。このレーダーチャートLCの面積が大きいほど、特徴量の値が総合的に大きく、画像データV3がより鮮明であるといえる。したがって、すべての所定位置で撮影した第1画像データV1および第2画像データV2について、同様の手順で特徴量を算出し、レーダーチャートLCの面積を算出すれば、すべての所定位置について画像データV3の鮮明さを各レーダーチャートLCの面積の比較によって総合評価することができる。なお、単色光の数が4つ以上ある場合は、4つ以上の頂点をもつ多角形状のレーダーチャートを作成し、当該レーダーチャートの面積を比較すればよい。また、プロジェクタ20から白色光を照射する場合には、画像データV3の特徴量は1つのみ算出されるため、各所定位置8に対応した画像データV3ごとに1つの特徴量の大きさを比較すればよい。
【0032】
次に、制御部50は、ステップS5として、ステップS4で算出した特徴量P1、P2、P3が所定の基準値Pref(
図8参照)以上である画像データV3に対応した所定位置8を、プロジェクタ20から投影面に画像を投影すべき最適位置ではないと判定する。所定の基準値は、プロジェクタ20から該当する単色光(または白色光)を照射したとき、投影面において単色光が十分に視認できる程度の値として、ユーザーが予め設定する。所定の基準値は、すべての単色光について同じ値に設定されてもよいし、単色光ごとに異なる値に設定されてもよい。制御部50は、各特徴量P1、P2、P3の少なくとも1つが所定の基準値未満である場合、該当する所定位置8を最適位置ではないと判定する(最適位置の候補から除外する)。
【0033】
次に、制御部50は、ステップS6として、画像データV3の所定範囲5におけるピクセル全体の画素値について分散を算出し、算出した分散が所定の閾値未満である画像データV3に対応した所定位置8を、最適位置ではないと判定する。
図9は、画像データの画素値の分布の一例を示す説明図である。
図9の横軸は、画像データV3における任意のピクセル位置を示し、縦軸は、ピクセルごとの画素値を示す。
図9において実線で示すように、画像データV3の画素値の分布が比較的にまとまっている場合、つまり画素値の分散が比較的に小さい場合、投影面が比較的に平坦であるといえる。一方、
図9において破線で示すように、画像データV3の画素値の分布が比較的にばらついている場合、つまり画素値の分散が比較的に大きい場合には、投影面が比較的に平坦でなく、凹凸がある面であるといえる。なお、ここでの凹凸は、ユーザーが視認できるような大きな段差部ではなく、微小な凹凸を示す。したがって、制御部50は、画像データV3の所定範囲5における画素値の分散が、所定の閾値以上であると判定した場合、投影面が比較的に凹凸を含むものであり、画像を鮮明に映すことができない可能性があることから、該当する所定位置を最適位置でないと判定する(最適位置の候補から除外する)。ここでの「所定の閾値」は、上述した分散がどの程度の値であれば画像が鮮明に見えるかを、ユーザーが予め作業現場において分析しておくことで、ユーザーにより設定される。
【0034】
次に、制御部50は、ステップS7として、画像データV3の所定範囲5の形状が四角形状であるか否かを判定し、所定範囲5の形状が四角形状でない画像データV3に対応した所定位置8を、最適位置ではないと判定する。
図10は、所定範囲の形状が四角形状でない場合の画像データの一例を示す説明図である。所定範囲5は、本来、四角形状に描かれるべきであるが、投影面に段差部が存在する場合、
図10に示すように、プロジェクタ20から照射された光が段差部において歪むことで、所定範囲5が四角形状ではなく、5つ以上の角部5aを有することになる。したがって、所定範囲5の形状が四角形状であるか否かは、所定範囲5が5つ以上の角部を有しているか否かによって判定することができる。制御部50は、画像データV3における所定範囲5の形状が四角形状でない場合、該当する所定位置8を最適位置でないと判定する(最適位置の候補から除外する)。なお、ステップS7の処理は、第2画像データV2の所定範囲5の形状が、四角形状であるか否かを判定することと同じ意味である。なお、ステップS5からステップS7の処理は、いずれが先に実行されてもよい。
【0035】
そして、制御部50は、ステップS8として、複数の所定位置8のうち、ステップS5からステップS7で最適位置の候補から除外された所定位置8以外から、ステップS4で算出したレーダーチャートLCの面積が最も大きくなる画像データV3に対応した所定位置8を、最適位置として決定する。これにより、プロジェクタ20から投影面に画像を投影すべき位置として、不適当なものを除外しつつ、最も鮮明に画像を投影可能な位置を、自動的に決定することができる。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態にかかる投影装置100は、作業現場を移動自在な移動装置10と、移動装置10に搭載され、作業現場の壁面W、床面Dおよび天井面Uを含む投影面の所定範囲5に光を照射して、画像を投影させるプロジェクタ20と、移動装置10に搭載され、所定範囲5を含む撮影範囲を撮影するカメラ30と、移動装置10、プロジェクタ20およびカメラ30を制御する制御部50と、を備える。制御部50は、複数の所定位置8に移動装置10を移動させ、複数の所定位置8ごとに、カメラ30により撮影範囲7を撮影した第1画像データV1と、プロジェクタ20から所定範囲5に光を照射させた状態でカメラ30により撮影範囲7を撮影した第2画像データV2とを取得する。制御部50は、第1画像データV1と第2画像データV2との間で、所定範囲5におけるピクセルごとの画素値の差分の平均値を、第2画像データV2の鮮明さを評価するための特徴量P1、P2、P3として算出し、特徴量P1、P2、P3が最も大きくなる所定位置8をプロジェクタ20から投影面に画像を投影させる最適位置として決定する。
【0037】
この構成により、作業現場において、プロジェクタ20およびカメラ30を搭載した移動装置10を自動的に複数の所定位置8に移動させ、所定位置8ごとに、プロジェクタ20から投影面へと光を照射した画像の鮮明さを特定し、最も鮮明である所定位置8を最適位置として決定することができる。したがって、第1実施形態にかかる投影装置100によれば、作業現場において、プロジェクタ20から画像を投影すべき投影装置の位置を適正かつ効率的に決定することが可能となる。
【0038】
また、制御部50は、プロジェクタ20から複数の単色光を照射させて、単色光ごとに第2画像データV2を取得し、単色光ごとに特徴量P1、P2、P3を算出する。この構成により、複数の単色光ごとの鮮明さを考慮して、最適位置を決定することが可能となる。なお、本実施形態では、単色光を赤色、黄色、青色としたが、単色光の種類はこれに限られない。
【0039】
また、制御部50は、特徴量が所定の基準値Pref未満である場合、所定位置8が最適位置ではないと判定する(ステップS5)。この構成により、十分に鮮明さを得ることができない所定位置8を最適位置の候補から除外して、投影位置をより適切に決定することができる。
【0040】
また、制御部50は、画像データV3について画素値の分散を算出し、算出した分散が所定の閾値以上である場合、所定位置8が最適位置ではないと判定する(ステップS6)。この構成により、画素値の分散が大きく、投影面に微小な凹凸が多いと推定される所定位置8を最適位置の候補から除外して、投影位置をより適切に決定することができる。
【0041】
また、制御部50は、第2画像データV2における所定範囲5が四角形状でない場合、所定位置8が最適位置ではないと判定する(ステップS7)。この構成により、投影面に比較的大きな段差部があり、プロジェクタ20から光を照射した所定範囲5が本来の四角形状でない場合に、対応する所定位置8を最適位置の候補から除外して、投影位置をより適切に決定することができる。
【0042】
また、移動装置10は、車輪により移動する台車型の移動体である。この構成により、移動装置10を比較的簡易な構成とすることが可能となる。
【0043】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態にかかる投影装置の構成の一例を示す概略図である。第2実施形態にかかる投影装置200は、第1実施形態にかかる投影装置100の構成に加えて、検出装置60を備えている。検出装置60は、移動装置10に設けられる。検出装置60は、移動装置10の走行面に平行な全方位に向かって放射状のレーザー光を照射することにより、移動装置10の周囲の物体の位置を示す3次元情報を点群のデータとして取得する。検出装置60は、検出した点群のデータである3次元情報を制御部50へと出力する。
【0044】
第2実施形態にかかる投影装置200による投影面の決定手順について説明する。
図12は、第2実施形態にかかる投影装置による投影面の決定手順の一例を示すフローチャートである。制御部50は、ステップS11として、検出装置60を用いて平面を検出する。すなわち、作業現場において移動装置10をユーザーが予め定めた経路に沿って走行させつつ、検出装置60から、移動装置10の走行面に平行な全方位に向かって放射状のレーザー光を照射することにより、移動装置10の周囲の物体の位置を示す3次元情報を点群のデータとして取得する。制御部50は、取得した点群のデータに基づいて、壁面W、床面Dおよび天井面Uのいずれかから、平面を特定する。
【0045】
次に、制御部50は、ステップS12として、ステップS1で特定した平面に基づき、移動装置10の移動計画を作成する。より詳細には、制御部50は、ステップS1で特定した平面である壁面W、床面D、天井面Uを投影面とする。そして、特定した投影面(壁面W、床面D、天井面U)の近傍に複数の所定位置8(
図4参照)を自動的に作成し、複数の所定位置を含む移動装置10の移動経路(例えば
図4に示す移動経路)を自動的に作成する。以下、制御部50は、ステップS13からステップS20として、第1実施形態で説明したステップS1からステップS8の処理を実行する。
【0046】
この構成により、3次元情報によって平面である可能性が高い投影面を選ぶことができるため、投影装置100の位置をより適正、かつ、より効率的に決定することが可能となる。また、特定した平面に沿って移動装置10の所定位置8および移動経路を自動的に作成することができるため、プロジェクタ20から画像6を投影すべき投影装置100の位置を、より効率的に決定することができる。
【0047】
なお、第2実施形態では、移動装置10に検出装置60を搭載するものとした。ただし、検出装置60は、別の装置に搭載しておき、別の装置で予め作業現場の3次元情報を点群のデータとして取得し、当該点群のデータを記憶部40に記憶させるものとしてもよい。
【0048】
第1実施形態および第2実施形態では、移動装置10を台車型の移動体とした。ただし、移動装置10は、2以上の足を有する多足歩行ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
5 所定範囲
6 画像
7 撮影範囲
8 所定位置
10 移動装置
20 プロジェクタ
30 カメラ
50 制御部
60 検出装置
100、200 投影装置
D 床面
U 天井面
V1 第1画像データ
V2 第2画像データ
V3 画像データ
W 壁面