(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】流体圧回転装置および建設機械
(51)【国際特許分類】
F03C 1/253 20060101AFI20230928BHJP
F04B 1/22 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F03C1/253
F04B1/22
(21)【出願番号】P 2019023863
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】狩野 拓広
(72)【発明者】
【氏名】小島 健太郎
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-045929(JP,A)
【文献】特開2012-036873(JP,A)
【文献】実開平04-082377(JP,U)
【文献】英国特許出願公告第01368531(GB,A)
【文献】実開昭58-169172(JP,U)
【文献】特開平09-287552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/253
F04B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に回転可能に収容されたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの一側に開口したシリンダ室内に移動可能に支持されたピストンと、
前記ケースによって回転可能に保持され、前記シリンダブロックを貫通し、前記シリンダブロックと同期して回転する軸部材と、
前記ケースと前記シリンダブロックとの間に配置され
た弁板と、
を備え、
前記弁板には、前記ピストンの少なくとも一方の死点に対して、前記ケース側に
単一の流体室及び前記ケース側
の前記流体室に通じる
単一の流路
が設けられ、
前記流路は
、前記シリンダブロックの他側に開口して前記シリンダ室に通じる通路に対面する位置に開口
し、
前記流路は
、前記ピストンが
前記少なくとも一方の死点に位置するようになるシリンダ室に前記通路を介して通じ、
前記軸部材の回転軸線に平行な方向を軸方向とし、当該軸方向に直交する方向を径方向とした場合、前記流体室の中心が、前記軸方向に見て、前記流路の中心よりも前記径方向内側に位置し、
前記弁板には、前記弁板を貫通し、前記シリンダブロックの回転軸線を中心とした円弧に沿って延びる流体ポートが形成されており、
前記弁板の前記シリンダブロック側の面には、前記円弧に沿って延びる前記流体ポートの両端部のうちの一方及び/または他方に接続する切欠溝が形成されている流体圧回転装置。
【請求項2】
前記流体室に配置された補助ピストンを備える請求項1に記載の流体圧回転装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の流体圧回転装置を備えた建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧回転装置および流体圧回転装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、流体を供給されることで回転を出力する流体モータ等の流体圧回転装置が知られている。特許文献1に開示された流体モータは、アキシャルピストン型の機器として構成されている。アキシャルピストン型流体モータは、ケースと、ケース内に収納された回転可能なシリンダブロックと、シリンダブロックに形成されたシリンダ室に摺動可能に挿入されたピストンと、ケースとシリンダブロックとの間に介装された状態でケースに取付けられる弁板(タイミングプレート)と、を有している。弁板は、一対の流体ポートを有している。一方の流体ポートが流体圧源に接続し、他方の流体ポートがタンクに接続する。シリンダブロックには、弁板に向けて開口し且つシリンダ室に接続した接続ポートが形成されている。接続ポートは、シリンダブロックの回転にともなって、流体ポートに接続し、流体圧源またはタンクとシリンダ室との間の流路を形成する。
【0003】
シリンダ室が流体圧源に通じることで、シリンダ室内へ流体が供給されて、ピストンがシリンダブロックから軸方向に前進する。また、シリンダ室がタンクに通じることで、シリンダ室内から流体が排出可能となり、ピストンが軸方向に後退することができる。一方、ピストンのシリンダブロックからの突出量は、シリンダブロックの回転位置に応じて制御される。特許文献1に開示された流体モータは、斜板式として構成されている。すなわち、軸方向に対して傾斜した傾斜面を有する斜板が、軸方向にピストンと対向して配置されている。したがって、流体圧によって駆動されるピストンが斜板の斜面に作用して、シリンダブロックの回転を引き起こす。シリンダブロックの回転にともない、ピストンは、シリンダブロックの回転中、その頭部が斜面に沿って移動するよう、軸方向に前進または後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような流体モータを使用した場合、シリンダブロックの回転軸が撓む等してシリンダブロックが傾倒し、流体モータの性能が低下してしまうことがあった。すなわち、シリンダブロックと弁板との隙間から流体が漏れて、流体モータの容積効率が低下したり、シリンダブロックと弁板との間の流体膜が切れてシリンダブロックと弁板との間に働く摩擦力が増大し、流体モータの機械効率が低下することがあった。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであって、シリンダブロックの傾倒による流体圧回転装置の性能の低下を効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による流体圧回転装置は、
ケースと、
前記ケース内に回転可能に収容されたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの一側に開口したシリンダ室内に移動可能に支持されたピストンと、
前記ケースと前記シリンダブロックとの間に配置されて、前記ケース側に設けられた流体室及び前記ケース側に設けられた前記流体室に通じる流路を設けられ、前記流路は前記シリンダブロックの他側に開口して前記シリンダ室に通じる通路に対面する位置に開口している、弁板と、を備える。
【0008】
本発明による流体圧回転装置において、
前記流路は前記ピストンが死点に位置するようになるシリンダ室に前記通路を介して通じていてもよい。
【0009】
本発明による流体圧回転装置は、
前記流体室に配置された補助ピストンを備えていてもよい。
【0010】
本発明による流体圧回転装置において、
前記流体室は前記弁板に形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明による建設機械は、上述した流体圧回転装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリンダブロックの傾倒による流体圧回転装置の性能の低下を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、油圧ショベルの構成例の概略を示す外観図である。
【
図5】
図5は、軸方向における一側からケース蓋体を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す流体モータの部分拡大断面図であって、流体室および流路を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に対応する図であって、弁板の動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図7に対応する図であって、流体室の位置の違いによる弁板の傾倒角度の違いを説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図7に対応する図であって、流体室の位置の違いによる弁板の傾倒角度の違いを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面に示される要素には、理解を容易にするために、サイズ及び縮尺等が実際のそれらと異なって示されている要素が含まれうる。
【0015】
以下に説明する流体圧回転装置10は、アキシャルピストン型の機器として機能する。図示された例では、流体圧回転装置10は、流体モータとして構成され、流体を供給されることで回転を出力する。より具体的には、図示された流体モータ10は、斜板式の流体モータとして構成されている。
【0016】
また、以下では、流体モータ10を、油圧ショベル1の旋回装置10aあるいは走行装置10b,10c用のモータとして用いる場合について説明する。
【0017】
まず、油圧ショベル1について説明する。
図1は、油圧ショベル1の構成例の概略を示す外観図である。油圧ショベル1は、一般に、クローラを具備する下部フレーム2と、下部フレーム2に対して旋回可能に設けられる上部フレーム3と、上部フレーム3に取り付けられるブーム4と、ブーム4に取り付けられるアーム5と、アーム5に取り付けられるバケット6とを備える。油圧シリンダ4a,5a,6aは、ブーム用、アーム用及びバケット用のアクチュエータであり、それぞれブーム4、アーム5及びバケット6を駆動する。また、上部フレーム3を旋回させる場合、旋回装置10aからの回転駆動力が上部フレーム3に伝達される。そして、油圧ショベル1を走行させる場合、走行装置10b,10cからの回転駆動力が下部フレーム2のクローラに伝達される。
【0018】
次に、流体モータ10について説明する。
図2は、流体モータ10の縦断面図である。
図2に示すように、斜板式として図示された流体モータ10は、主たる構成要素として、ケース20、軸部材30、シリンダブロック40、ピストン50、弁板(タイミングプレート)60及び斜板70を有している。以下、各構成要素について説明していく。
【0019】
ケース20は、ケース本体21と、ケース本体21に固定されたケース蓋体22とを有している。ケース本体21は、概ね、一端を閉鎖され他端で開口した筒状に形成されている。ケース蓋体22は、ケース本体21の開口を塞ぐよう、ボルト等の締結具を用いてケース本体21に固定されている。ケース20は、その内部に収容空間Sを形成している。収容空間S内に、シリンダブロック40、ピストン50、弁板60、斜板70が配置されている。
【0020】
軸部材30は、ケース20によって回転可能に保持されている。ケース20内には、一対の軸受31が設けられている。軸部材30は、軸受31によって、その中心軸線を回転軸線RAとして回転することができる。軸部材30の一方の端部30aは、ケース20に設けられた貫通孔を通過してケース20外へ延び出している。軸部材30がケース20を貫通する部分において、ケース20と軸部材30との間にはシール部材32が設けられ、流体、例えば潤滑油のケース20外への流出を防止している。軸部材30のケース20から延び出した部分30aは、例えば減速機等の外部の機器に接続される。すなわち、軸部材30は、回転を出力する出力要素として機能する。
【0021】
なお、以下において、この回転軸線RAと平行な方向を軸方向ADと呼び、回転軸線RAを中心とした円周方向を周方向CDと呼び、回転軸線RAに直交する方向を径方向RDと呼ぶ。また、軸部材30のケース20外に位置する端部30aの側を、軸方向ADにおける一側と呼び、軸部材30のケース20内に位置する端部の側を、軸方向ADにおける他側と呼ぶ。
【0022】
次に、シリンダブロック40について説明する。シリンダブロック40は、回転軸線RAを中心として配置された円柱状または円筒状の形状を有している。シリンダブロック40は、軸部材30によって貫通されている。シリンダブロック40は、軸部材30に対して固定されている。したがって、シリンダブロック40は、軸部材30と同期して、回転軸線RAを中心として回転することができる。
【0023】
シリンダブロック40には、複数のシリンダ室41が形成されている。複数のシリンダ室41は、回転軸線RAを中心とした周方向CDに沿って等間隔で配列されている。また、各シリンダ室41は回転軸線RAに沿って設けられ、ここでは、回転軸線RAと平行の軸方向ADに設けられている。各シリンダ室41は、軸方向ADにおける一側に開口している。また、各シリンダ室41に対応して通路(接続ポート)42が形成されている。接続ポート42は、シリンダ室41を軸方向ADにおける他側に開放している。
【0024】
各シリンダ室41に対応して、ピストン50が設けられている。各ピストン50の一部分が、シリンダ室41内に配置されている。各ピストン50は、対応するシリンダ室41から軸方向ADにおける一側に延び出している。ピストン50は、シリンダブロック40に対して軸方向ADに移動することができる。すなわち、ピストン50は、軸方向ADにおける一側に前進して、シリンダ室41の容積を拡大することができる。また、ピストン50は、軸方向ADにおける他側に後退して、シリンダ室41の容積を縮小することができる。
【0025】
斜板70は、ケース20によって保持されている。斜板70は、シリンダブロック40及びピストン50に軸方向ADにおける一側から対向して配置されている。軸部材30は、斜板70を貫通している。斜板70は、軸方向ADに垂直な面に対して傾斜した斜面71を有している。斜面71は、シリンダブロック40及びピストン50に向かい合っている。斜板70の斜面71上に、シュー73が設けられている。シュー73は、ピストン50の頭部を保持している。具体的な構成として、ピストン50の一側端となる頭部は球状に形成されている。シュー73は、球状の頭部の略半分を収容可能な穴を有している。
【0026】
ピストン50の頭部を保持したシュー73は、斜板70の斜面71上を摺動可能となっている。シリンダ室41内に流体が供給されると、ピストン50は、シリンダブロック40から斜板70側へ前進する。このとき、ピストン50を保持するシリンダブロック40が回転して、当該ピストン50は斜板70の厚肉部70a上から薄肉部70b上へと移動する。シリンダ室41内から流体が排出されると、ピストン50は、シリンダブロック40内へと後退する。このとき、ピストン50を保持するシリンダブロック40が回転して、当該ピストン50は斜板70の薄肉部70b上から厚肉部70a上へと移動する。
【0027】
流体モータ10は、ケース20内に配置されたリテーナプレート34をさらに有している。リテーナプレート34は、リング状かつプレート状の部材である。リテーナプレート34は、軸部材30によって貫通され、軸部材30上に支持されている。軸部材30のリテーナプレート34を支持する部分30bは、曲面状に形成されている。このため、リテーナプレート34は、軸部材30上に支持された状態で、向きを変えることができる。
図1に示すように、プレート状のリテーナプレート34は、斜板70の斜面71に沿うように傾斜している。そして、リテーナプレート34は、軸方向ADにおける他側からすべてのシュー73に接触している。
【0028】
また、軸部材30とリテーナプレート34との間には、スプリング等からなる付勢部材35が設けられている。付勢部材35によって、リテーナプレート34は、軸方向ADにおける一側に付勢される。この結果、リテーナプレート34は、シュー73及びピストン50を斜板70の斜面71に向けて押圧することができる。また、付勢部材35によって、軸部材30は、シリンダブロック40とともに、軸方向ADにおける他側に付勢される。この結果、シリンダブロック40は、弁板60に向けて押圧されるようになる。上述したように、シリンダブロック40は軸部材30と共に回転するので、シリンダブロック40の弁板60に対面する面は、摺動面40aをなす。
【0029】
弁板60は、シリンダブロック40よりも軸方向ADにおける他側において、シリンダブロック40とケース20との間に位置している。弁板60は、ピン等の固定具を介して、回転不可能にケース蓋体22に保持されている。弁板60は、リング状かつプレート状に形成されている。弁板60は、その中央に貫通孔を有している。軸部材30は、この貫通孔を通過して、弁板60を貫通している。上述したように、付勢部材35によって、シリンダブロック40が、弁板60に当接している。また、弁板60は、ケース20のケース蓋体22に当接している。つまり、弁板60の一側を向く一側面60aは、シリンダブロック40と接触し、弁板60の他側を向く他側面60bは、ケース20のケース蓋体22と接触している。
【0030】
ここで、
図3は、一側面60aの側から、弁板60を示している。また、
図4は、他側面60bの側から、弁板60を示している。
図3および
図4において、第1基準位置p1は、シリンダ室41内に最も入り込んだピストン50と軸方向ADに重なる位置である。言い換えると、第1基準位置p1は、上死点に位置するピストン50の中心位置を軸方向ADに投影した位置である。一方、
図2において、第2基準位置p2は、シリンダ室41内から最も突出したピストン50(下死点に位置するピストン50)と軸方向ADに重なる位置である。
【0031】
図3および
図4に示すように、弁板60には、第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bが形成されている。第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bは、弁板60を貫通している。第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bは、回転軸線RAを中心とした円弧に沿って延びている。第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bは、一側面60aおよび他側面60bにおいて、周方向CDに延びる開口を形成している。
【0032】
第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bは、第1基準位置p1及び第2基準位置p2を結ぶ直線vlを挟んで互いから反対側となる領域に設けられている。第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bは、
図3および
図4に示された例において、回転軸線RAを中心として点対称な構成(配置および形状)を有している。シリンダブロック40の接続ポート42は、シリンダブロック40の回転にともなって、第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bに軸方向ADから対面する位置を移動する。これにより、第1流体ポート61aまたは第2流体ポート61bを介して、シリンダ室41と後述する第1流体流路fp1または第2流体流路fp2との間に、流体の流路が形成される。
【0033】
図5は、軸方向ADにおける一側からケース蓋体22を示している。すなわち、ケース蓋体22の弁板60に対面する面24を示している。ケース20には、第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2が形成されている。第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2は、
図5に示された例において、ケース蓋体22に開口している。そして、ケース20の第1流体流路fp1は、弁板60の第1流体ポート61aと常時接続している。ケース20の第2流体流路fp2は、弁板60の第2流体ポート61bと常時接続している。第1流体流路fp1は、流体ポンプ等の流体圧源及びタンクの一方に接続し、第2流体流路fp2は、流体ポンプ等の流体圧源及びタンクの他方に接続する。第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2と、流体圧源及びタンクとの接続は、図示しない切換弁を介して、切り換え可能となっている。すなわち、第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2の一方が、流体圧源に接続されて、高圧(供給)側となる。また、第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2の他方が、タンクに接続されて、低圧(排出)側となる。さらに、切換弁は、第1流体流路fp1及び第2流体流路fp2を、流体圧源及びタンクの両方から遮断して、中立とすることも可能である。
【0034】
第1流体流路fp1が流体圧源に接続されて高圧側になり、第2流体流路fp2がタンクに接続されて低圧側になると、直線vlの一方の側(
図3の右側)に位置するシリンダ室41は、接続ポート42及び第1流体ポート61aを介して第1流体流路fp1に接続し、流体を供給される。したがって、
図3の直線vlの一方の側に位置するピストン50は、シリンダブロック40から軸方向ADにおける一側に前進する。このとき、前進するピストン50が、周方向CDにおいて、シリンダブロック40から最も突出し得る第2基準位置p2に向かうよう、シリンダブロック40が
図3における矢印Arの向きに回転する。一方、直線vlの他方の側(
図3の左側)に位置するピストン50は、シリンダブロック40の矢印Arの向きへの回転にともなって、周方向CDにおいて第1基準位置p1に向かう。このとき、ピストン50はシリンダブロック40側に後退し、したがって、シリンダ室41内の流体は、接続ポート42及び第2流体ポート61bを介して第2流体流路fp2に排出される。
【0035】
一方、第1流体流路fp1がタンクに接続されて低圧側になり、第2流体流路fp2が流体圧源に接続されて高圧側になると、直線vlの他方の側(
図3の左側)に位置するシリンダ室41に流体が供給される。この結果、直線vlの他方の側に位置するピストン50は、シリンダブロック40から軸方向ADにおける一側に前進し、シリンダブロック40が
図3における矢印Arの逆向きに回転する。
【0036】
なお、流体圧源及びタンクと流体モータ10との間で給排される流体は、特に限定されないが、典型的には油とすることができる。油は、ピストン50を駆動する作動油として機能するとともに、シリンダブロック40やピストン50の動作を円滑化するための潤滑油としても機能する。
【0037】
第1流体流路fp1に高圧流体が供給されると、第1流体ポート61aが高圧側流体ポートになり、シリンダブロック40が矢印Arの向きに回転する。
図3に示すように、弁板60の一側面60aには、高圧側となった場合の第1流体ポート61aの回転方向前側端部hf1に接続する第1切欠溝62aが形成されている。一方、第2流体流路fp2に高圧流体が供給されると、第2流体ポート61bが高圧側流体ポートになり、シリンダブロック40が矢印Arの逆向きに回転する。
図3に示すように、弁板60の一側面60aには、高圧側となった場合の第2流体ポート61bの回転方向前側端部hf2に接続する第2切欠溝62bが形成されている。
【0038】
ここで、流体ポート61a,61bの回転方向前側端部とは、シリンダブロック40の回転にともなって、長手方向を有する流体ポート61a,61bの両端部のうちの、各シリンダ室41の接続ポート42に先に対面して接続するようになる側の端部を意味している。すなわち、第1切欠溝62aは、第1基準位置p1に近接する側となる第1流体ポート61aの端部に接続し、第2切欠溝62bは、第1基準位置p1に近接する側となる第2流体ポート61bの端部に接続している。
【0039】
第1切欠溝62a及び第2切欠溝62bは、第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bと同一の円周上に配置され、周方向CDに延びている。このため、シリンダブロック40の回転にともなって、接続ポート42は、第1切欠溝62a及び第2切欠溝62bに対面する位置を移動する。第1切欠溝62a及び第2切欠溝62bによれば、シリンダ室41の接続ポート42がシリンダブロック40の回転により高圧側の流体ポート61a,61bに重なり合って高圧側の流体ポート61a,61bからシリンダ室41に高圧流体が大量に流入するようになる直前に、切欠溝62a,62bを通じて高圧流体がシリンダ室41に徐々に流量を増加させながら流入する。これにより、高圧流体の流入にともなった、シリンダ室41内での急激で大幅な圧力変化が緩和されて騒音を低減させることができる。
【0040】
また
図3に示された例において、弁板60の一側面60aには、低圧側となった場合の第2流体ポート61bの回転方向前側端部lf4に接続する第4切欠溝62dおよび低圧側となった場合の第1流体ポート61aの回転方向前側端部lf3に接続する第3切欠溝62cが、形成されている。第3切欠溝62cは、第2基準位置p2に近接する側となる第1流体ポート61aの端部lf3に接続し、第4切欠溝62dは、第2基準位置p2に近接する側となる第2流体ポート61bの端部lf4に接続している。これらの第3切欠溝62c及び第4切欠溝62dも、第1流体ポート61a及び第2流体ポート61bと同一の円周上に配置され、周方向CDに延びている。したがって、接続ポート42は、第3切欠溝62c及び第4切欠溝62dに対面する位置を移動する。
【0041】
第3切欠溝62c及び第4切欠溝62dによれば、シリンダ室41の接続ポート42がシリンダブロック40の回転により低圧側の流体ポート61a,61bに重なり合って低圧側の流体ポート61a,61bへシリンダ室41から流体が大量に排出されるようになる直前に、切欠溝62c,62dを通じてシリンダ室41から徐々に流量を増加させながら流体を排出させることができ、これにより、騒音を低減させることが可能となる。
【0042】
次に、以上のような構成からなる流体モータ10の動作について説明する。
【0043】
図示しない切換弁の操作により、第1流体流路fp1及び第1流体ポート61aを流体圧源に接続して高圧側とし、第2流体流路fp2及び第2流体ポート61bをタンクに接続して低圧側とすると、上述したように、シリンダブロック40が
図3における矢印Arの向きに回転する。このとき、直線vlの一方の側(
図3の右側)に位置するシリンダ室41には、流体が供給されて、当該シリンダ室41からピストン50が軸方向ADにおける一側に前進する。このピストン50の頭部を保持したシュー73は、シリンダブロック40の回転にともなって斜面71に摺接し、周方向CDに移動して第2基準位置p2に向かう。直線vlの他方の側(
図3の左側)に位置するシリンダ室41からは、流体が排出され、当該シリンダ室41内へピストン50が軸方向ADにおける他側に後退する。このピストン50の頭部を保持するシュー73は、シリンダブロック40の回転にともなって、斜面71に摺接し、周方向CDに移動して第1基準位置p1に向かう。以上のようにして、シリンダブロック40が軸部材30とともに回転して、流体モータ10から正回転が出力される。
【0044】
次に、図示しない切換弁の操作により、第1流体流路fp1及び第1流体ポート61aを流体圧源への接続から解除し、第2流体流路fp2及び第2流体ポート61bをタンクへの接続から解除する。すなわち、流体モータ10は、中立状態となり、各シリンダ室41への流体の流出入が停止する。これにより、シリンダブロック40及び軸部材30の回転が停止し、流体モータ10からの回転出力が停止する。
【0045】
さらに、図示しない切換弁の操作により、第1流体流路fp1及び第1流体ポート61aをタンクに接続して低圧側とし、第2流体流路fp2及び第2流体ポート61bを流体圧源に接続して高圧側とすると、シリンダブロック40が
図3における矢印Arの逆向きに回転する。これにより、シリンダブロック40が軸部材30とともに回転して、流体モータ10から逆回転が出力される。
【0046】
ところで、流体モータ10の使用中、シリンダブロック40が傾倒して、シリンダブロック40の摺動面40aと弁板60との間にくさび状の隙間が形成されることがある。この場合、シリンダブロック40および弁板60が、軸方向ADに局所的に押圧されながら相対回転するようになる。これにより、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力が増大して、流体モータ10の機械効率が低下する。また、シリンダブロック40と弁板60との隙間が局所的に拡大して、シリンダブロック40の回転中に、当該拡大した隙間から流体が漏れ出す。この結果、流体モータ10の容積効率が低下する。
【0047】
このような不具合に対し、本実施の形態では、傾倒したシリンダブロック40の摺動面40aに沿うように弁板60を傾倒させるための工夫がなされている。具体的には、
図6に示すように、弁板60とケース20との間に流体室65が設けられている。また、弁板60には、流体室65に通じる流路66が設けられている。この流路66は、流体室65を軸方向ADにおける一側に開放している。また、流路66は、弁板60の一側面60aにおいて、シリンダ室41に通じる接続ポート42に対面することとなる位置に開口している。すなわち、流路66は、接続ポート42の移動軌跡上に開口している。これにより、シリンダ室41の流体を、接続ポート42および流路66を通じて流体室65に流入させることができる。そして、
図7に示すように、流体室65内の流体の圧力によって、弁板60をシリンダブロック40の摺動面40aに沿うように傾倒させることができる。
【0048】
図7に示すように弁板60を傾倒させることで、シリンダブロック40と弁板60との局部当たりを緩和して、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力を軽減させることができる。そして、流体モータ10の機械効率を改善することができる。また、シリンダブロック40と弁板60との間に流体が漏れ出す隙間が形成されることを抑制することができ、流体モータ10の容積効率の低下を抑制することができる。
【0049】
なお、図示された例では、流体室65は、弁板60に形成されている。より具体的には、弁板60の他側面60bには凹部が形成されており、この凹部が流体室65として機能する。弁板60に流体室65を形成することで、弁板60とケース蓋体22との間に流体室65を設けることが容易である。また、流体室65と流体室65に通じる流路66との位置合わせを、容易に行うことができる。もちろん、流体室65は弁板60以外に形成されてもよい。例えば、流体室65は、ケース20に形成されてもよい。具体的には、ケース蓋体22の弁板60に対面する面24に凹部を形成し、この凹部が流体室として機能してもよい。また、流体室は、弁板60およびケース蓋体22に互いに対面して形成された凹部により構成されてもよい。
【0050】
なお、シリンダブロック40が傾倒する原因について鋭意検討を行ったところ、以下の原因によりシリンダブロック40が傾倒することが推測された。
【0051】
まず、軸部材30が撓むことが、シリンダブロック40が傾倒する原因と考えられる。例えば、シリンダ室41に高圧流体が流入したシリンダブロック40と共に軸部材30を回転させると、軸部材30の軸方向ADにおける中央部分に加わる負荷が増大する。これにより、軸部材30は、上記中央部分が下方に(第1基準位置p1から第2基準位置p2に向かう方向に)変位するように撓む。この結果、シリンダブロック40は、その第1基準位置p1の近傍となる部分が軸方向ADにおける一側に変位し、その第2基準位置p2の近傍となる部分が軸方向ADにおける他側に変位するように傾倒する。
【0052】
あるいは、ピストン50とシリンダブロック40との間で流体による潤滑膜が消滅してしまうことが、シリンダブロック40が傾倒する原因と考えられる。ピストン50は、周方向CDにおいて第1基準位置p1に位置する際に、シリンダ室41内に最も引き込まれる。そして、ピストン50は、第1基準位置p1から高圧側となる流体ポート61a,61bに向けて周方向CDに移動する間にもリテーナプレート34によって軸方向ADにおける一側にシリンダ室41から引き出される。ただし、ピストン50が切欠溝62a,62bに対面する位置に移動するまで、当該ピストン50に対応するシリンダ室41には流体が供給されない。したがって、ピストン50とシリンダ室41との間において、流体による潤滑膜が切れてしまう。この結果、ピストン50とシリンダ室41との摩擦力が急激に増大し、シリンダブロック40のうちの第1基準位置p1の近傍となる部分が、ピストン50の動作によって、軸方向ADにおける一側に引っ張られる。この結果、シリンダブロック40は、その第1基準位置p1の近傍となる部分が軸方向ADの一側に変位し、その第2基準位置p2の近傍となる部分が軸方向ADにおける他側に変位するように傾倒する。
【0053】
図示された例では、上述したシリンダブロック40が傾倒する原因を考慮して、流体室65は、第1基準位置p1の近傍に設けられている。そして、流体室65に通じる流路66は、弁板60の一側面60aにおいて、第1基準位置p1に位置するようになるシリンダ室41(したがって、ピストン50が上死点に位置するようになるシリンダ室41)の接続ポート42に対面する位置に開口している。これにより、弁板60の第1基準位置p1の近傍となる部分が、流体室65に収容された流体の圧力によって、軸方向ADにおける一側に変位するように押され、同時に、弁板60の第2基準位置p2の近傍となる部分が、軸方向ADにおける他側に変位する。すなわち、弁板60を、上述のように傾倒したシリンダブロック40の摺動面40aに沿うように、傾倒させることができる。これにより、シリンダブロック40と弁板60との局部当たりを緩和させて、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力を軽減させることができる。この結果、流体モータ10の機械効率を改善することができる。また、シリンダブロック40のうちの第1基準位置p1の近傍となる部分と弁板60との間に流体が漏れ出す隙間が形成されることを抑制することができる。この結果、流体モータ10の容積効率の低下を抑制することができる。
【0054】
なお、シリンダブロック40は、その第1基準位置p1の近傍となる部分が軸方向ADの一側に変位し、その第2基準位置p2の近傍となる部分が軸方向ADにおける他側に変位するように傾倒するとは限らない。例えば、軸部材30の軸方向ADにおける中央部分が上方に(第2基準位置p2から第1基準位置p1に向かう方向に)変位するように軸部材30が撓んだ場合は、シリンダブロック40は、その第2基準位置p2の近傍となる部分が軸方向ADの一側に変位し、その第1基準位置p1の近傍となる部分が軸方向ADにおける他側に変位するように傾倒する。この場合、流体室65を第2基準位置p2の近傍に設ける。そして、流体室65に通じる流路66を、弁板60の一側面60aにおいて、第2基準位置p2に位置するようになるシリンダ室41(したがって、ピストン50が下死点に位置するようになるシリンダ室41)の接続ポート42に対面する位置に開口するように設ける。これにより、弁板60の第2基準位置p2の近傍となる部分が、流体室65に収容された流体の圧力によって、軸方向ADにおける一側に変位するように押され、同時に、弁板60の第1基準位置p1の近傍となる部分が、軸方向ADにおける他側に変位する。すなわち、弁板60を、上述のように傾倒したシリンダブロック40の摺動面40aに沿うように、傾倒させることができる。
【0055】
もちろん、流体室65は、第1基準位置p1の近傍および第2基準位置p2の近傍の両方に設けられてよい。この場合、第1基準位置p1の近傍に位置する流体室65に通じる流路66は、弁板60の一側面60aにおいて、第1基準位置p1に位置するようになるシリンダ室41の接続ポート42に対面する位置に開口するように設けられてよい。また、第2基準位置p2の近傍に位置する流体室65に通じる流路66は、弁板60の一側面60aにおいて、第2基準位置p2に位置するようになるシリンダ室41の接続ポート42に対面する位置に開口するように設けられてもよい。
【0056】
図示された例では、流体室65に補助ピストン67が配置されている。補助ピストン67は、流体室65と、ケース蓋体22と弁板60との間の隙間と、を遮断する。したがって、流体室65から流体が抜け出ることを効果的に防止することができる。この結果、流体室65に流入した流体の圧力を効果的に上昇させることができ、弁板60を効果的に押すことができる。
【0057】
図示された例では、補助ピストン67の一部分が流体室65内に配置されている。補助ピストン67は、流体室65に対して軸方向ADに移動することができる。このため、流体室65に流体が流入すると補助ピストン67が流体室65に対して軸方向ADに移動して流体室65の容積が拡大される。このとき補助ピストン67の他側端部がケース蓋体22に当接し、弁板60は、流体室65の近傍となる部分が軸方向ADの一側に移動するように傾倒する。
【0058】
なお、
図4、
図6および
図7に示す例では、
図4によく示されているように、軸方向ADに見て流体室65の中心と流体室65に通じる流路66の中心とが一致しているが、これに限られない。流体室65の中心を流路66の中心からずらすことで、弁板60の傾倒角度を調節することができる。すなわち、
図8に示すように、流体室65の中心を流路66の中心よりも上下方向(第1基準位置p1及び第2基準位置p2を結ぶ直線vlに沿った方向)における径方向RD内側に配置することで、
図7に示す場合と比較して弁板60の傾倒角度を大きくすることができる。また、
図9に示すように、流体室65の中心を流路66の中心よりも上下方向における径方向RD外側に配置することで、
図7に示す場合と比較して弁板60の傾倒角度を小さくすることができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態においては、流体圧回転装置10が流体モータとして構成される例について説明してきたが、これに限られない。流体圧回転装置10は、流体ポンプとして構成されてもよい。この場合、エンジン等の動力源からの動力によって軸部材30を回転させることにより、シリンダブロック40を回転させてピストン50を往復動作させる。このピストン50の往復動作に応じて、一部のシリンダ室41からは流体が吐き出されるとともに他のシリンダ室41には流体が吸い込まれ、流体ポンプが実現される。このような流体ポンプは、油圧シリンダ4a,5a,6aや旋回装置10a用のモータ、走行装置10b,10c用のモータ等に流体を供給するための流体圧源として用いられ得る。もちろん、流体圧回転装置10は、建設機械のモータやポンプ以外の用途に適用されてもよく、その用途は特に限定されない。また、流体圧回転装置10を適用可能な建設機械は油圧ショベルに限定されない。流体圧回転装置10は、油圧ショベル以外の建設機械に対しても適用可能である。
【0060】
以上に説明した本実施の形態による流体圧回転装置10は、ケース20と、ケース20内に回転可能に収容されたシリンダブロック40と、シリンダブロック40の一側に開口したシリンダ室41内に移動可能に支持されたピストン50と、を備えている。また、流体圧回転装置10は、ケース20とシリンダブロック40との間に配置され、ケース20側に設けられた流体室65及びケース20側に設けられた流体室65に通じる流路66を設けられた弁板60を備えている。そして、流路66は、シリンダブロック40の他側に開口してシリンダ室41に通じる通路に対面する位置に開口している。
【0061】
このような流体圧回転装置10によれば、シリンダブロック40が傾倒した際、弁板60を流体室65内の流体の圧力によって傾倒させることができる。これにより、シリンダブロック40と弁板60との局部当たりを緩和して、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力を軽減することができる。この結果、流体圧回転装置10の機械効率を改善することができる。また、シリンダブロック40と弁板60との間に流体が漏れ出る隙間が形成されることを抑制することができる。この結果、流体圧回転装置10の容積効率の低下を抑制することができる。
【0062】
具体的には、流路66は、ピストン50が死点に位置するようになるシリンダ室41に通路42を介して通じている。これにより、シリンダブロック40と弁板60との局部当たりをより緩和して、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力を、より効果的に軽減することができる。
【0063】
また、本実施の形態による流体圧回転装置10は、流体室65に配置された補助ピストン67を備えている。これにより、補助ピストン67が、ケース20と傾倒した弁板60との隙間と、流体室65と、を遮断する。したがって、流体室65から流体が抜けることを効果的に防止することができる。これにより、弁板60を流体室65内の流体の圧力を効果的に上昇させることができ、弁板60を効果的に押すことができる。
【0064】
また、本実施の形態による流体圧回転装置10において、流体室65は、弁板60に形成されている。これにより、流体室65を容易に作製することができる。また、流体室65と流体室65に通じる流路66との位置合わせを、容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態による建設機械1は、上述した流体圧回転装置10を備える。このような建設機械1によれば、流体圧回転装置10のシリンダブロック40が傾倒した際、弁板60を流体室65内の流体の圧力によって傾倒させることができる。これにより、シリンダブロック40と弁板60との局部当たりを緩和して、シリンダブロック40と弁板60との間に働く摩擦力を軽減することができる。この結果、流体圧回転装置10の機械効率を改善することができる。また、シリンダブロック40と弁板60との間に流体が漏れ出る隙間が形成されることを抑制することができる。この結果、流体圧回転装置10の容積効率の低下を抑制することができる。
【0066】
本発明は、上述の実施形態には限定されない。例えば、上述の実施形態の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素及び/又は方法以外の構成要素及び/又は方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素及び/又は方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。
【符号の説明】
【0067】
1 建設機械
10 流体圧回転装置
20 ケース
30 軸部材
40 シリンダブロック
41 シリンダ室
42 通路、接続ポート
50 ピストン
60 弁板
65 流体室
66 流路
67 補助ピストン
70 斜板