(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20230928BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230928BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230928BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230928BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230928BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H01L29/78 612C
H01L29/78 617J
H01L29/78 618C
H05B33/14 A
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2019072394
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0065631
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】金 成 煥
(72)【発明者】
【氏名】郭 源 奎
(72)【発明者】
【氏名】崔 相 武
(72)【発明者】
【氏名】賈 智 鉉
(72)【発明者】
【氏名】姜 哲 圭
(72)【発明者】
【氏名】金 東 ▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】李 元 世
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0061883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358262(US,A1)
【文献】特開2014-032379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151650(US,A1)
【文献】特開2010-039229(JP,A)
【文献】特開2013-128119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/1343-1/1345
1/135-1/1368
G09F9/30-9/46
H01L21/336
29/786
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置する半導体層と、
前記半導体層を覆う第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜の上に位置する第1ゲート導電体と、
前記第1ゲート導電体を覆う第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜の上に位置する第2ゲート導電体と、
前記第2ゲート導電体を覆う層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に位置するデータ導電体とを含み、
前記半導体層のパターンはドーピング領域およびドーピングされない領域を含み、
前記第1ゲート導電体
の第1パターンと重なる箇所で、前記半導体層の一の線状パターンは、2つの前記ドーピングされない領域と、これらの間に位置する前記ドーピング領域とを含む、有機発光表示装置。
【請求項2】
前記ドーピング領域の両側に位置する前記ドーピングされない領域により、それぞれ、第4-1トランジスタのチャンネルおよび第4-2トランジスタのチャンネルが形成され、前記ドーピング領域により、前記第4-1トランジスタの一電極および前記第4-2トランジスタの一電極が形成される、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記ドーピング領域により、前記第4-2トランジスタの第1電極および前記第4-1トランジスタの第2電極が形成され、
前記ドーピング領域、および、前記ドーピング領域の両側に位置する前記ドーピングされない領域を含む前記半導体層の一の線状パターンは、一方向に延長される直線構造を有し、
前記第1ゲート導電体
の第1パターンは前段スキャン線を含み、
前記前段スキャン線は、前記ドーピング領域および前記ドーピングされない領域を含む前記半導体層の一の線状パターンを覆うように幅が拡張された拡張部を有する、請求項2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記半導体層のパターンは、第1拡張部をさらに含み、
前記第1ゲート絶縁膜は、前記第1拡張部を露出させる第1開口を含み、
前記第1ゲート導電体
の第2パターンは、前記第1開口を通じて前記第1拡張部と直接連結される、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記第1ゲート導電体
の第2パターンは、駆動トランジスタのゲート電極
を含み、
前記第2ゲート導電体は、拡張された部分を含む維持線を含み、
前記駆動トランジスタの前記ゲート電極は、これと重なる、前記維持線の前記拡張された部分と、これらの間に位置する前記第2ゲート絶縁膜と共に、ストレージキャパシタを形成し、
前記維持線には駆動電圧が印加される、請求項4に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記データ導電体は、拡張部を含む駆動電圧線を含み、
前記駆動電圧線の拡張部は、前記層間絶縁膜に形成された開口を通じて前記維持線と直接連結されており、
前記駆動電圧線の前記拡張部は、直列連結された第3-1トランジスタと第3-2トランジスタとの間の連結ノードについて少なくとも一部分を覆う、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記連結ノードは、前記半導体層の線状パターンの一部の、ドーピングされない部分により形成される、請求項6に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記第1ゲート導電体の第3パターンは、スキャン線を含み、
前記半導体層のパターンは、第1方向の一側に延長されて前記第3-2トランジスタのチャンネルを形成してから前記第1方向と交差する第2方向の一側に折り曲げられた後に前記第1方向の逆側に折り曲げられることでUターン部分を形成し、続いて前記第3-1トランジスタのチャンネルを形成する構造部分を有し、
前記スキャン線は、前記第3-2トランジスタの前記チャンネルおよび前記第3-1トランジスタの前記チャンネルと重なり、
前記半導体層のパターンにおける前記第1拡張部は、前記第3-1トランジスタの前記チャンネルから、さらに延長された部分により形成され、
前記半導体層のパターンは、前記第3-1トランジスタの前記チャンネルから、さらに延長されて
前記第2方向の一側に折り曲げられ前記第1方向の一側に折り曲げられることでさらなるUターン部分を形成し、続いてさらに延長されることで、第4-1トランジスタおよび第4-2トランジスタのチャンネルを順次形成している、請求項7に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
前記半導体層のパターンは、第2拡張部をさらに含み、
前記第1ゲート絶縁膜は、前記第2拡張部を露出させる第2開口を含み、
前記第1ゲート導電体
の第4パターンは、駆動トランジスタのゲート電極とは異なり、前記第2開口を通じて前記第2拡張部と直接連結され、
前記第1ゲート導電体
の第4パターンは初期化電圧線である、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
前記第1ゲート導電体
の第1パターンは前段スキャン線を含み,
前記第1ゲート導電体の第2パターンは駆動トランジスタのゲート電極を含み、
前記第1ゲート導電体の第3パターンはスキャン線
を含み、
前記第1ゲート導電体の第4パターンは初期化電圧線を含み、
前記第1ゲート導電体の第5パターンは発光制御線を含み、
前記データ導電体はデータ線および駆動電圧線を含み、
一つの画素は、
光を放出する有機発光素子と、
前記スキャン線および前記データ線に連結されている第2トランジスタと、
前記有機発光素子に電流を印加する
前記駆動トランジスタと
、
前記発光制御線に連結されている第5トランジスタおよび第6トランジスタ
と、
直列連結されている第3-1トランジスタおよび第3-2トランジスタ
と、
直列連結されている第4-1トランジスタおよび第4-2トランジスタと
を含む、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置はイメージを表示する装置であって、最近、有機発光表示装置(organic light emitting diode display)が注目されている。
【0003】
有機発光表示装置は、自体発光特性を有し、液晶表示装置(liquid crystal display device)とは異なって別途の光源を要しないので、厚さと重量を減らすことができる。また、有機発光表示装置は、低い消費電力、高い輝度および高い反応速度などの高品位特性を示す。
【0004】
一般に、有機発光表示装置は、液晶表示装置に比べて一つの画素に含まれる構成要素が多く、高解像度を要求する装置が多くなることによって画素の大きさが小さくなるため、当該領域内に画素のすべての構成要素を残らず形成することがますます難しくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画素が占める面積を減らして小さい画素面積内でも、すべての画素の構成要素を形成できる有機発光表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例による有機発光表示装置は、基板と、前記基板上に位置する半導体層と、前記半導体層を覆う第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜の上に位置する第1ゲート導電体と、前記第1ゲート導電体を覆う第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜の上に位置する第2ゲート導電体と、前記第2ゲート導電体を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上に位置するデータ導電体とを含み、前記半導体層のパターンはドーピング領域およびドーピングされない領域を含み、前記第1ゲート導電体と重なる箇所で、前記半導体層の一の線状パターンは、2つの前記ドーピングされない領域と、これらの間に位置する前記ドーピング領域とを含む。
【0007】
前記ドーピング領域の両側に位置する前記ドーピングされない領域には、それぞれ第4-1トランジスタおよび第4-2トランジスタのチャンネルが位置し、前記ドーピング領域には前記第4-1トランジスタの一電極および前記第4-2トランジスタの一電極が位置することができる。
【0008】
前記ドーピング領域には、前記第4-2トランジスタの第1電極および前記第4-1トランジスタの第2電極が位置することができる。
【0009】
前記ドーピング領域および前記ドーピング領域の両側に位置する前記ドーピングされない領域を含む前記半導体層の一の線状パターンは一方向に延長される直線構造を有することができる。
【0010】
前記第1ゲート導電体は前段スキャン線を含み、前記前段スキャン線は前記ドーピング領域および前記ドーピングされない領域を覆う拡張領域を有することができる。
【0011】
前記半導体層は拡張部をさらに含み、前記第1ゲート絶縁膜は前記拡張部を露出させる開口を含み、前記第1ゲート導電体は前記開口を通して前記拡張部と直接連結されてもよい。
【0012】
前記第1ゲート導電体は駆動トランジスタのゲート電極であってもよい。
【0013】
前記第2ゲート導電体は拡張された部分を含む維持線を含み、前記駆動トランジスタの前記ゲート電極は、これと重なる前記維持線の前記拡張された部分およびその間に位置する前記第2ゲート絶縁膜と共にストレージキャパシタを形成してもよい。
【0014】
前記維持線に駆動電圧を印加してもよい。
【0015】
前記データ導電体は拡張部を含む駆動電圧線を含み、前記駆動電圧線の拡張部は前記層間絶縁膜に形成された開口を通して前記維持線と直接連結されていてもよい。
【0016】
前記駆動電圧線の前記拡張部は、直列連結された第3-1トランジスタおよび第3-2トランジスタの連結ノードの少なくとも一部分を覆ってもよい。
【0017】
前記連結ノードは前記半導体層の線状パターン中に位置し、ドーピングされていなくてもよい。
【0018】
前記第1ゲート導電体はスキャン線をさらに含み、前記半導体層のパターンは上奥側に延長されて前記第3-2トランジスタのチャンネルを形成してから左側に折り曲げられた後、再び下側に折り曲げられてから、前記第3-1トランジスタのチャンネルを形成する構造部分を有し、前記スキャン線は、前記第3-2トランジスタの前記チャンネルおよび前記第3-1トランジスタの前記チャンネルと重なることができる。
【0019】
前記半導体層のパターンにおける前記拡張部は、前記第3-1トランジスタの前記チャンネルから、さらに延長された部分により形成されうる。
【0020】
前記半導体層のパターンは、前記第3-1トランジスタの前記チャンネルから、さらに延長されて左側に折り曲げられた後、再び上側に折り曲げられてから、第4-1トランジスタおよび第4-2トランジスタのチャンネルを順次に形成するのでありうる。
【0021】
前記半導体層のパターンは第2拡張部をさらに含み、前記第1ゲート絶縁膜は、前記第2拡張部を露出させる第2開口を含み、前記第1ゲート導電体は、駆動トランジスタのゲート電極とは異なり、前記第2開口を通して前記拡張部と直接連結されてもよい。
【0022】
前記第1ゲート導電体は初期化電圧線であってもよい。
【0023】
前記第1ゲート導電体は、スキャン線と前段スキャン線と初期化電圧線とを含み、前記データ導電体はデータ線と駆動電圧線とを含み、一つの画素は光を放出する有機発光素子と、前記スキャン線および前記データ線に連結されている第2トランジスタと、前記有機発光素子に電流を印加する駆動トランジスタとを含む有機発光表示装置を提供する。
【0024】
前記第1ゲート導電体は発光制御線をさらに含み、前記画素は、前記発光制御線に連結されている第5トランジスタおよび第6トランジスタをさらに含んでもよい。
【0025】
前記画素は、直列連結されている第3-1トランジスタおよび第3-2トランジスタ、直列連結されている第4-1トランジスタおよび第4-2トランジスタをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施例によれば、一つの画素に形成される接触孔(contact hole;コンタクトホール)の個数を減らして画素が占める面積を減らすことができる。また、画素内に位置する開口(opening;オープニング)の数を減らして不良率を減少させることもできる。さらに、ゲート電極と半導体層が重なる領域でもドーピングされる部分を形成して画素が占める面積を減らすことができる。また、半導体層に拡張部を追加し、拡張部を上部の導電層と重畳させて直接連結することで画素が占める面積を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施例による有機発光表示装置における一つの画素領域についてのパターン配置図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(1)である。
【
図4】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(1)である。
【
図5】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(2)である。
【
図6】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(2)である。
【
図7】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(3)である。
【
図8】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(3)である。
【
図9】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(4)である。
【
図10】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(4)である。
【
図11】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(5)である。
【
図12】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(5)である。
【
図13】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(6)である。
【
図14】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(6)である。
【
図15】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すためのパターン配置図(7)である。
【
図16】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素を製造する方法について順次示すための断面図(7)である。
【
図17】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素が有する積層構造の材料構成を簡略に示した表である。
【
図18】
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の画素中における第4トランジスタの拡大図である。
【
図19】一実施例による有機発光表示装置の一つの画素の等価回路図である。
【
図20】一実施例による有機発光表示装置の一つの画素に印加される信号のタイミング図である。
【
図21】他の実施例による有機発光表示装置の一つの画素領域の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付した図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0029】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付与する。
【0030】
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示しており、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるわけではない。図面では様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示している。そして図面において、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示している。
【0031】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるというとき、これは他の部分の“直上に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の“直上”にあるというときは、その中間に他の部分がないことを意味する。また、基準となる部分の“上に”あるというのは基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力反対方向に向かって“上に”位置することを意味するのではない。
【0032】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を“含む”というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0033】
また、明細書全体で、“平面上”というとき、これは対象部分を上方から見た場合を意味し、“断面上”というとき、これは対象部分を垂直に切断した断面を側方から見た場合を意味する。
【0034】
以下、
図1および
図2を参照して、一実施例による有機発光表示装置の一つの画素の構造について説明する。
【0035】
図1は、一実施例による有機発光表示装置の一つの画素領域の配置図であり、
図2は、
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
【0036】
一実施例による有機発光表示装置は主に第1方向に沿って延長され、スキャン信号Sn、前段スキャン信号Sn-1、発光制御信号Enおよび初期化電圧Vintをそれぞれ伝達するスキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153および初期化電圧線157を含む。
【0037】
有機発光表示装置は第1方向と交差する第2方向に沿って延長され、データ電圧Dmおよび駆動電圧ELVDDをそれぞれ伝達するデータ線171および駆動電圧線172を含む。
【0038】
有機発光表示装置の一つの画素PXは駆動トランジスタT1、第2トランジスタT2、第3トランジスタT3、第4トランジスタT4、第5トランジスタT5、第6トランジスタT6、第7トランジスタT7、ストレージキャパシタCst、および有機発光ダイオードOLEDを含む。第3トランジスタT3および第4トランジスタT4は、それぞれ、二つのトランジスタT3-1とT3-2、及び、T4-1とT4-2が連結された構造を有しており、連結された二つのトランジスタは、同じゲート信号(ゲートパルス)により同時にオンになり、一側のトランジスタに入力された信号が他側のトランジスタを通して出力される構造を有する。以下、このような連結構造を直列連結構造という。
【0039】
図1および
図2では、有機発光ダイオードOLEDについて示していないが、有機発光ダイオードOLEDは、画素電極、有機発光層および共通電極からなる。有機発光ダイオードOLEDの構造は、
図1および
図2に示されたトランジスタT1~T7の連結構造の上に形成される。有機発光ダイオードOLEDに電流を印加するトランジスタT1~T7の連結関係は、画素が占める面積に直接的な連関を有するので、
図1および
図2には、この連結関係を中心にして示している。
【0040】
有機発光表示装置にて複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7を形成するために、半導体層PSが必要であり、本実施例では多結晶半導体を形成する。また、本実施例では、多結晶半導体からなる半導体層PSのパターンについて複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7のチャンネルを除いてはP型不純物をドーピングすることで、多結晶半導体のパターンを導体化して配線の特性を有するようにする。これによって、別途の配線層を追加的に形成しなくてもよい長という所を有する。一方、実施例によっては多結晶半導体にN型不純物をドーピングすることもでき、他の実施例では多結晶半導体の代わりに酸化物半導体を使用することもできる。
【0041】
本実施例による半導体層PSのパターンの構造は
図3の配置図から容易に確認でき、半導体層PSのパターンは斜線で示した。半導体層PSのパターンは、左右に延びる、駆動トランジスタT1のチャンネルを挟む左右両側の箇所を中心にして、それぞれ奥側及び手前側(
図3の紙面に向かって上下)に延長された構造を有する。駆動トランジスタT1のチャンネルの左側には第1電極S1が位置し、第1電極S1から奥側(
図3の紙面に向かって上側)に延長された半導体層PSのパターンには第2トランジスタT2のチャンネルが位置する。一方、第1電極S1から手前側(
図3の紙面に向かって下側)に延長された半導体層PSのパターンには第5トランジスタT5のチャンネルが位置する。駆動トランジスタT1のチャンネルの右側には第2電極D1が位置し、第2電極D1から手前側(
図3の紙面に向かって下側)に延長された半導体層PSのパターンには第6トランジスタT6のチャンネルが位置する。第6トランジスタT6のチャンネルの手前側の端部は、次段の画素PXの半導体層PSのパターンと連結されている。一方、第2電極D1から奥側に延長された半導体層PSのパターンは、ほぼ直角に数回折り曲げられた構造を有しており、第2電極D1の側から順に、第3-2トランジスタT3-2、第3-1トランジスタT3-1、第4-1トランジスタT4-1、第4-2トランジスタT4-2および第7トランジスタT7のチャンネルが位置する。より具体的には、第2電極D1から奥側に延長された半導体層PSのパターンは、第3-2トランジスタT3-2のチャンネルを形成するように延びてから左側に折り曲げられた後、再び手前側に折り曲げられて第3-1トランジスタT3-1のチャンネルを形成するように延び、その後、再び左側に折り曲げられたてから再び奥側に折り曲げられて、第4-1トランジスタT4-1および第4-2トランジスタT4-2のチャンネルをこの順に形成しつつ延びる。その後、右側に折り曲げられてから、再び手前側に折り曲げられ、第7トランジスタT7のチャンネルを形成するように延びてから、再び右側に折り曲げられた後、奥側に折り曲げられて、前段の画素PXの半導体層PSのパターンと連結される。このような線状パターンの構造を有する。また、半導体層PSのパターンは、異なる層に位置する配線と連結するために、他の部分よりも幅が大きい拡張部を有することができる。図示の例で、拡張部以外は、ほぼ幅の等しい線状部分をなす。半導体層PSのパターンは、第2トランジスタT2のチャンネルから奥側に延長された箇所に、データ電圧Dmが印加されるように拡張された拡張部を有する。また、第5トランジスタT5のチャンネルから手前側に延長された後、右側に折り曲げられた箇所に、駆動電圧ELVDDが印加されるように拡張された拡張部を有する。さらに、第6トランジスタT6のチャンネルから手前側に延長された箇所には、データ連結部材73と連結されて、その上に位置する画素電極を通じて有機発光ダイオードOLEDに、駆動電流を印加できるように拡張された拡張部を有する。のみならず、本実施例の半導体層PSのパターンは、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルと、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルとの間に位置する第1拡張部PSEをさらに含む。第1拡張部PSEは、ゲート電極G1と連結される部分である。また、半導体層PSのパターンは、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルと第7トランジスタT7のチャンネルとの箇所から左側に延長された後に拡張されている第2拡張部PSE2をさらに含む。第2拡張部PES2は、初期化電圧Vintを印加するために拡張された部分である。
【0042】
以上のような半導体層PSのパターンには、P型不純物によって一部領域が高濃度にドーピングされることで、導体と同じ特性を有する部分が形成される。
【0043】
このために、半導体層PSのパターンのうち、一部は覆われてドーピングされず、残りの部分は、覆われずにP型不純物がドーピングされることで配線化される。一般には、半導体層PSの上に金属層(例えば、ゲート電極など)を形成した後、金属層をマスクにしてドーピングすることもできる。しかし、より狭い(小面積の)画素領域中にすべての構成要素を形成するためには、別途のドーピングマスクPBLKを使用することで、ゲート電極の構造とは異なるドーピング構造を有するようにすることができる。
【0044】
図1のパターン配置図において、半導体層PSのパターンには斜線を付し、半導体層PSのパターン中でドーピングされて配線化された部分は、追加の斜線をさらに付してx字斜線(斜め直交格子)で示す。ドーピングマスクPBLKの開口部分(
図6の右端に近い箇所)を
図5に、右に行くにつれて下側に向かう斜線により示しており、
図1には、
図5に示すもののうちドーピングされた後の半導体層PSだけを、他の配線パターンとともに示している。本実施例では、ドーピングマスクPBLKは、フォトレジストのような感光性物質を使用し、P型不純物が半導体層PSに接触しない程度に厚く形成した。ドーピングマスクPBLKは、ドーピング工程の後に除去される層であるので、
図1には示していない。
【0045】
本実施例で、半導体層PSのパターンにおける、P型不純物がドーピングされて配線化された部分としては、五つの部分を含む。まず、半導体層PSのパターン中にて、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルと、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルとの間、および、第1拡張部PSEを含む部分がドーピングされている。また、半導体層PSのパターン中における、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルと第4-2トランジスタT4-2のチャンネルとの間の箇所にもドーピングされている。半導体層PSのパターン中における、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルと第7トランジスタT7のチャンネルとの間、および、これから左側に延長されている線状部分、及び、第2拡張部PSE2もドーピングされている。半導体層PSのパターン中における、第7トランジスタT7のチャンネルから前段の画素PXにまで延長されている線状部分、および、第6トランジスタT6のチャンネルから次段の画素PXにまで延長されている線状部分にも、それぞれドーピングされている。
【0046】
このような半導体層PSのパターンの上には、ほぼ全面を覆う第1ゲート絶縁膜141が位置する(
図7~8及び
図2)。各画素PX中、第1ゲート絶縁膜141には、二つの開口51、54が形成されている(
図7~8及び
図2)。二つの開口51、54は、それぞれ半導体層PSの二つの拡張部PSE1、PSE2を露出させる。
【0047】
第1ゲート絶縁膜141の上には、主に第1方向(
図1などの左右方向)に沿って延長し、スキャン信号Sn、前段スキャン信号Sn-1、発光制御信号Enおよび初期化電圧Vintを、それぞれ伝達する、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153および初期化電圧線157が形成されている(
図1中、太線にて表示)。
【0048】
まず、スキャン線151(
図1の中央部)は第1方向に延長されており、各画素PX中にて、第1方向に
図1の左から右へと進むにつれて、順次、第2トランジスタT2のチャンネル、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルおよび第3-2トランジスタT3-2のチャンネルと重なる。また、スキャン線151は、半導体層PSのパターン中、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルと、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルとの間にある、ドーピングされている部分とも重なっている。本実施例では、第2トランジスタT2のチャンネルと重なる領域で幅が広く形成されている。スキャン線151と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成され、それぞれ第2トランジスタT2、第3-1トランジスタT3-1および第3-2トランジスタT3-2が形成されている。
【0049】
前段スキャン線152も第1方向に延長されており、各画素PX中にて、主に第1方向に
図1の左から右へと進むにつれて、順次、第4-1トランジスタT4-1のチャンネル、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルおよび第7トランジスタT7のチャンネルと重なる。また、前段スキャン線152は、半導体層PSのパターン中の第4-1トランジスタT4-1のチャンネルと、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルとの間にある、ドーピングされている部分とも重なっており、半導体層PSのパターン中における、第7トランジスタT7のチャンネルから前段の画素PXにまで屈曲しつつ延長されている線状部分のうちの一部とも重なる。本実施例で、前段スキャン線152は、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルの過半の領域、および、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルの過半の領域と重なるように、幅が大きく拡張されている拡張領域を有しており、
図1の左から右へと進む際、第7トランジスタT7のチャンネルの領域を通過してから、手前側へと、第1方向(
図1の左右方向)に延びる位置をずらすように直角に2回折り曲がる、クランク状の部分を有する。前段スキャン線152と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成され、それぞれ第4-1トランジスタT4-1、第4-2トランジスタT4-2および第7トランジスタT7が形成されている。
【0050】
発光制御線153(
図1の上端部)も第1方向に延長されており、各画素PX中にて、第1方向に
図1の左から右へと進むにつれて、順次、第5トランジスタT5のチャンネルおよび第6トランジスタT6のチャンネルと重なる。発光制御線153と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成され、それぞれ第5トランジスタT5および第6トランジスタT6が形成されている。
【0051】
初期化電圧線157(
図1の上端部)も第1方向に延長されており、各画素PXにて、半導体層PSのパターン中、ドーピングされた部分とのみ重なり、トランジスタを形成しない。本実施例の初期化電圧線157は、半導体層PSのパターン中の第2拡張部PSE2と重なる箇所で、幅が広く形成されており、第1ゲート絶縁膜141の開口54を通じて第2拡張部PSE2と直接連結されている。その結果、初期化電圧Vintが、第2拡張部PSE2を通じて半導体層PSに印加される。
【0052】
一方、第1ゲート絶縁膜141の上には駆動トランジスタT1のゲート電極155も形成されている。ゲート電極155は、大面積の長方形の平面構造を有し、半導体層PSのパターン中、駆動トランジスタT1のチャンネルと重なるだけでなく、第1拡張部PSEとも重なる。ゲート電極155と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成されるので、駆動トランジスタT1が形成されている。また、ゲート電極155は、半導体層PSのパターン中のドーピングされている第1拡張部PSEと、重なり、開口51を通じて直接連結されている。その結果、駆動トランジスタT1のゲート電極155に印加される電圧は、第3-1トランジスタT3-1および第4-1トランジスタT4-1の動作に影響を受ける。また、駆動トランジスタT1のゲート電極155は、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2としての役割も果たす。
【0053】
駆動トランジスタT1のゲート電極155は、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153および初期化電圧線157と同一の層に同一の物質で形成される。
【0054】
ゲート電極155、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153および初期化電圧線157は、第2ゲート絶縁膜142によって覆われている。
【0055】
第2ゲート絶縁膜142の上には維持線126が位置する。維持線126は、第1方向に延長されており、ゲート電極155と重なる部分で拡張された幅を有する。維持線126は、拡大された幅により、ゲート電極155の全体を覆うことができるように形成されている。図示の例で、維持線126は、各画素PXの左右の縁の近傍を除き、この拡大された幅を有することで、各画素PX中、大面積の長方形をなしており、その各辺が、ゲート電極155の長方形における対応する辺よりも外側にある。このようにして、維持線126の拡張された部分は、ゲート電極155と、第2ゲート絶縁膜142を間に挟んで重なり合うことで、ストレージキャパシタCstを構成する。維持線126の拡張された部分はストレージキャパシタCstの第1維持電極E1をなし、ゲート電極155は第2維持電極E2をなす。維持線126の拡張された部分は、長方形のべたのパターンであり、開口や切欠き(notch)などの抜き部(cut out)を有さず、長方形の四辺の内部がすべて金属物質で満たされた平面構造を有する。その結果、各画素PXの面積を小さくしても、ストレージキャパシタCstの容量が十分に確保される。
【0056】
維持線126の上には層間絶縁膜160が形成されている。各画素PX中、層間絶縁膜160には4つの開口62、67、68、69が形成されている(
図1~2及び13)。開口62は、各画素PX中、半導体層PSのパターン中、第2トランジスタT2のチャンネルより奥側(
図1の上側)に位置し、データ電圧Dmが印加されるように拡張された拡張部を露出させる。開口67は、各画素PXの半導体層PSのパターン中、第5トランジスタT5のチャンネルより手前(
図1の下側)に位置し、駆動電圧ELVDDが印加されるように拡張された拡張部を露出させる。開口69は、第6トランジスタT6のチャンネルより手前側(
図1の下側)に位置し、有機発光ダイオードOLEDに駆動電流を印加するように拡張された拡張部を露出させる。開口68は、維持線126の拡張された部分のうちの一部を露出させる。その結果、開口68は層間絶縁膜160にのみ形成されるが、開口62、67、69は、第1ゲート絶縁膜141、第2ゲート絶縁膜142および層間絶縁膜160を貫くように形成される。
【0057】
層間絶縁膜160の上には、データ線171、駆動電圧線172およびデータ連結部材73が形成されている。
【0058】
データ線171は、第2方向に延長されており、多少の折り曲げられた平面構造を含むことができる。データ線171は、開口62を通じて第2トランジスタT2の第1電極S2に、データ電圧Dmを伝達する。
【0059】
駆動電圧線172も第2方向に延長されており、多少の折り曲げられた構造および拡張された幅を有する、拡張部を含む。駆動電圧線172の拡張部は、駆動トランジスタT1の一部、第3トランジスタT3-1、T3-2の一部および第4トランジスタT4-1、T4-2の一部を覆うことができるように、幅(第1方向の寸法)が拡張されている。この拡張部は、維持線126の拡張された部分と重なる部分であり、開口68を通じて維持線126に駆動電圧ELVDDを印加する。その結果、ストレージキャパシタCstの第1維持電極E1に、駆動電圧ELVDDが印加される。開口68は、駆動電圧線172と維持線126の拡張された部分とが重なる位置に形成されさえすればよいので、図示された位置に限らず、その周辺の多様な位置に形成されうる。駆動電圧線172の拡張部は、直列連結された第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードの少なくとも一部分を覆う。図示の例で、左半分を覆っている。つまり、連結ノードは、半導体層PSのパターンにおける、第3-1トランジスタT3-1の第1電極S3-1と、第3-2トランジスタT3-2の第2電極D3-2とが直接に連結されて一体化している部分であり、ドーピングされないのでありうる。駆動電圧線172の拡張部が第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードを覆うことによって、連結ノードの電圧が安定化するという長所を有する。このように第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードが電圧安定化されると、画素PXの駆動トランジスタT1の特性も安定化するという長所を有する。これは、第3トランジスタT3-1、T3-2の出力端と、駆動トランジスタT1のゲート電極155とが互いに電気的に連結されており、データ電圧Dmが、第3トランジスタT3-1、T3-2を通じてストレージキャパシタCstをなす大面積のゲート電極155に保存されるためである。駆動電圧線172の拡張部のパターン配置は、第4トランジスタT4-1、T4-2および駆動トランジスタT1とも一部重なるものであるが、このような構造であると、実施例の特性に応じて、重なり合う面積を調節することができる。また、駆動電圧線172は、開口67を通じて第5トランジスタT5の第1電極S5に駆動電圧ELVDDを印加するのであり、開口67周辺で、若干の拡張された幅を有する。
【0060】
データ連結部材73は、開口69を通じて、第6トランジスタT6のチャンネルより手前側(
図1の下側)に位置する半導体層PSの拡張部と電気的に連結される。データ連結部材73は、有機発光ダイオードOLEDに駆動電流を伝達する役割を果たす。
【0061】
データ線171、駆動電圧線172およびデータ連結部材73の上には、これらを覆う保護膜180が形成されている。
【0062】
保護膜180にはデータ連結部材73を露出させる開口81が形成され、保護膜180の上には、画素PXごとに有機発光ダイオード(OLED;図示せず)が位置する。また、保護膜180の上には、隣接する画素PX同士の間で有機発光ダイオードOLEDの配置領域を区画する隔壁(図示せず)が形成されている。また、上部にさらに形成される層が、一定の間隔を維持できるようにするスペーサ(図示せず)も、さらに形成されている。
【0063】
有機発光ダイオードOLEDは、画素電極と、有機発光層と、共通電極とを含む。このうち画素電極は、データ連結部材73と開口81を通じて連結されている。
【0064】
有機発光ダイオードOLED、隔壁およびスペーサの上には、有機発光ダイオードOLEDを湿気などから保護する封止層(図示せず)が形成されている。封止層は、共通電極と接することができ、共通電極と離隔しているのでありうる。封止層は、無機膜と有機膜が積層された薄膜封止層であってもよく、無機膜と有機膜と無機膜とで構成された3層膜を含んでもよい。共通電極と封止層の間には、キャッピング層および機能層が位置することもできる。
【0065】
以上のように、半導体層PSのパターンと、ゲート電極155、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153、データ線171および駆動電圧線172とが重なることで、7個のトランジスタが形成される。これをそれぞれ見てみると以下の通りである。
【0066】
複数のトランジスタT1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7のチャンネルは、それぞれ、トランジスタT1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7のゲート電極と重なるとともに、それぞれのトランジスタT1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7の第1電極と第2電極との間に位置する。複数のトランジスタT1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7は、実質的に同一の積層構造を有することができる。すなわち、半導体層、ゲート電極、及びゲート絶縁膜の材質及び厚み、並びに、ドーピングの有無以外の第1及び第2電極の材質及び厚みは、実質的に同一でありうる。
【0067】
まず、駆動トランジスタT1は、チャンネル、ゲート電極155、第1電極S1および第2電極D1を含む。駆動トランジスタT1のチャンネルは、半導体層PSのパターンにおける、第1電極S1と第2電極D1との間の部分であり、ゲート電極155と平面図で見て重なる。チャンネルは屈曲しているが、これは、制限された領域内でチャンネルの長さを長く形成するためである。チャンネルの長さが長くなることによって駆動トランジスタT1のゲート電極155に印加されるゲート電圧Vgの駆動範囲(driving range)が広くなり、ゲート電圧Vgによって駆動電流Idが一定の割合で増加することになる。その結果、ゲート電圧Vgの大きさを変化させて有機発光ダイオードOLEDから放出される光の階調をより細密に制御でき、有機発光表示装置の表示品質も向上させることができる。また、チャンネルが一方向に延長されず、様々な方向に延長されるので、製造工程における方向性による影響が相殺されることで、工程のばらつきの影響が減るという長所もある。したがって、工程のばらつきに起因して、駆動トランジスタT1の特性が表示装置の領域により異なるということによって発生しうる、斑(まだら)模様などの表示ムラ(例えば、同一のデータ電圧Dmが印加されても画素により輝度差が発生)といった画質低下を防止することができる。このようなチャンネルの形状は、示された構造に限定されず、Ω型、S型など多様な構造を有することができる。
【0068】
ゲート電極155は、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2の役割も果たす。つまり、ストレージキャパシタCstは、第2ゲート絶縁膜142を挟んで重なり合う第1維持電極E1と第2維持電極E2とを含む。第2維持電極E2は駆動トランジスタT1のゲート電極155に相当し、第1維持電極E1は維持線126の拡張された部分である。ここで、第2ゲート絶縁膜142は誘電体となり、ストレージキャパシタCstにて蓄電された電荷と、第1および第2維持電極E1、E2の間の電圧によって静電容量(capacitance)が決定される。第1維持電極E1には駆動電圧線172が開口68を通じて連結されているので、ストレージキャパシタCstには、駆動電圧ELVDDと、ゲート電極155のゲート電圧Vgとの間の差に対応する電荷を保存する。また、ゲート電極155を第2維持電極E2として使用することによって、駆動トランジスタT1とストレージキャパシタCstが重なって位置するので、小さな画素面積の中でも十分な大きさの駆動トランジスタT1と十分なキャパシタンスを有するストレージキャパシタCstを形成することができる。
【0069】
第2トランジスタT2のゲート電極は、スキャン線151の拡張された部分である。第2トランジスタT2の第1電極S2には、データ線171が開口62を通じて連結されており、第2電極D2は、駆動トランジスタT1の第1電極S1と連結されている。第2トランジスタT2のチャンネルは、第1電極S2および第2電極D2が半導体層PS上に位置する。
【0070】
第3トランジスタT3は、互いに隣接し直列に連結された二つのトランジスタT3-1、T3-2で構成されている。第3トランジスタT3は、このように直列連結されて、漏洩電流が流れることを遮断する役割を果たすことができる。二つのトランジスタT3-1、T3-2が直列連結された構造は、二つのゲート電極に同じ信号が印加され、同じゲート信号により同時にオンになり、一側のトランジスタに入力された信号が他側のトランジスタを通して出力される構造を意味する。つまり、第3-1トランジスタT3-1および第3-2トランジスタT3-2のゲート電極は、いずれも、スキャン線151の一部であり、これと重なる、半導体層PSのパターンの線状部分はチャンネルをなす。第3-2トランジスタT3-2の第1電極S3-2は、第6トランジスタT6の第1電極S6および駆動トランジスタT1の第2電極D1と、一体に連結されており、第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1は、第4-1トランジスタT4-1の第1電極S4-1と、一体に連結されている。また、第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1は、第1ゲート電極155に開口51を通じて連結されている。第3-1トランジスタT3-1の第1電極S3-1と、第3-2トランジスタT3-2の第2電極D3-2とは、互いに一体に連結されている。
【0071】
第4トランジスタT4も、直列連結された二つの第4トランジスタT4-1、T4-2からなっていることから、二つの第4トランジスタT4-1、T4-2も直列連結されている。つまり、第4-1トランジスタT4-1および第4-2トランジスタT4-2のゲート電極は、いずれも、前段スキャン線152の拡張部の一部であり、これと重なる、半導体層PSの線状パターンがチャンネルをなす。第4-1トランジスタT4-1の第1電極S4-1が第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1と連結され、第4-2トランジスタT4-2の第2電極D4-1が第7トランジスタT7の第2電極D7と連結され、第4-1トランジスタT4-1の第2電極D4-1と第4-2トランジスタT4-2の第1電極S4-2は互いに一体に連結されている。このように直列連結された構造は、漏洩電流を遮断する役割を果たすことができる。第4トランジスタT4-2の第2電極D4-2には、初期化電圧線157が開口54を通じて直接連結されている。第4-1トランジスタT4-1の第1電極S4-1は、第1ゲート電極155と開口51を通して連結されている。
【0072】
第5トランジスタT5のゲート電極は発光制御線153の一部であり、これと交差して重なる、半導体層PSの線状パターンの部分がチャンネルをなす。第5トランジスタT5の第1電極S5には、駆動電圧線172が開口67を通じて連結されており、第2電極D5は駆動トランジスタT1の第1電極S1と、一体に連結されている。
【0073】
第6トランジスタT6のゲート電極は発光制御線153の一部であり、これと交差して重なる半導体層PSの線状パターンの部分がチャンネルをなす。第6トランジスタT6の第2電極D6には、データ連結部材73が開口69を通じて連結されており、第1電極S6は駆動トランジスタの第2電極D1と連結されている。
【0074】
第7トランジスタT7のゲート電極は前段スキャン線152の一部であり、これと交差して重なる半導体層PSの線状パターンの部分がチャンネルをなす。第7トランジスタT7の第1電極S7には、データ連結部材73が開口69を通じて連結されており、第2電極は第4-2トランジスタT4-2の第2電極D4-2と連結されている。なお、
図1中に示すように、第6トランジスタT6の第2電極D6、次段の画素PX(注目する画素PXに手前の側から隣接する画素PX)における第7トランジスタT7の第1電極S7と、半導体層PSのパターンの配線化部分を通じて、連結されている。
【0075】
以上では、複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7のそれぞれにて、第1電極と第2電極とに区分して説明したが、このうちの一つがソース領域であれば、残り一つはドレイン領域に相当する。また、実施例によっては、
図1で説明したソース領域およびドレイン領域を逆にして形成することもできる。
【0076】
本実施例の半導体層PSのパターンは、拡張部PSE、PSE2を通じて上方の第1ゲート導電体と接するように重ねられることで直接連結されるようにする構造部分を有する。これは、画素PX内で電気的に連結されるようにするための構造部分(開口を含む)の面積を減らすことができる。また、追加で連結配線を形成しないので開口の個数が減り、開口が占める面積も減る。
【0077】
本実施例の各画素PXには、画素電極と連結される開口81を除けば、トータルで6個の開口51、54、62、67、68、69だけが形成されている。6個の開口は、7個のトランジスタと一つのストレージキャパシタCstとを含む画素PXとしては最小の個数であり、それによって画素PXが占める面積を減らして、高解像度の有機発光表示装置にも適用することができる。
【0078】
一方、高解像度の画素PXを形成する場合には、開口を通して連結する構造が多ければ多いほど不良が発生する確率が高くなって収率が低下するという問題もある。つまり、一つのマザー基板にはトータルで120個の表示装置が形成され、一つの表示装置が1440x2880の画素(QHD解像度)を有する場合、一つの画素に6個の開口を有する実施例と、8個の開口または10個の開口を有する比較例とで、不良発生確率を比較すると下記表1の通りである。
【0079】
【0080】
ここで、開口不良率(各マザー基板での[不良開口の数]÷[開口の総数])は、100万分の1の確率であると仮定し、画素数を基準にした不良率(各マザー基板での[不良開口の数]÷[画素の総数])を計算した。なお、上記の開口の数には、保護膜180を貫く開口81は除外されている。保護膜180は、ポリイミドなどの樹脂材料から形成することができるので、比較的温和な条件でエッチングを行うことが可能だからである。なお、保護膜180及び開口81は、感光性の共重合ポリイミドを用いることで、別途のエッチング工程なしに形成することも可能である。
【0081】
つまり、一つの画素PXが有する開口を2個だけ減らしても25%ほど、不良率が減少することを確認できる。したがって、高解像度の画素を形成するに当たっては、開口の数が少ない画素構造を使用する方が、開口の占める面積および不良率を減少させる面で適したものでありうる。
【0082】
本実施例では、前段スキャン線152の下に、ドーピングされている半導体層PSの線状パターンを形成した。その結果、二つのトランジスタT4-1、T4-2が占める面積が減ることになる。つまり、一般に、前段スキャン線などの配線と、半導体層の線状パターンとが重なる箇所にはチャンネルが形成されるのであり、配線の幅は一定の幅以上を持たなければならない。ところが、二つのチャンネルを形成するために、配線と、半導体層の線状パターンとが、二つの、互いに別体の部分で重なるように構成すれば、このような重ね合わせのための面積が大きくなることになる。しかし、本発明では、配線の一つの箇所(拡張部)の下にて、ドーピング領域を手前側及び奥側(図の下側及び上側)から挟むように2つのチャンネルを形成することによって、すなわち、面積の小さいドーピング領域を基準にして両側にチャンネルを形成することによって、二つのトランジスタが占める面積を減少させるのである。
【0083】
のみならず、ドーピングマスクPBLKが誤整列してもトータルの第4トランジスタT4のチャンネルの大きさは変わらない。つまり、ドーピングマスクPBLKが奥側または手前側(
図1の上下)に誤整列される場合には、各第4-1トランジスタT4-1のチャンネル長さ(L of T4-1)および第4-2トランジスタT4-2のチャンネル長さ(L of T4-2)は変わるが、トータルの第4トランジスタT4のチャンネル長さは、第4-1トランジスタT4-1のチャンネル長さ(L of T4-1)と、第4-2トランジスタT4-2のチャンネル長さ(L of T4-2)との和であるので変わらない。
【0084】
また、第3トランジスタT3と第4トランジスタT4は、いずれも、二つの直列連結されたトランジスタにより形成することで、漏洩電流を減らすことができるという長所を有する。
【0085】
以下、
図3乃至
図16並びに
図1及び
図2を参照して、製造方法の工程の順序にしたがって説明することにより、有機発光表示装置の画素PX構造についても、さらに明らかにする。
【0086】
図3乃至
図16は、
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置の各画素を製造する方法について、順に示す、パターン配置図および断面図である。
【0087】
図4を参照すれば、基板110の上にバリア層111が位置し、バリア層111の上にはバッファ層112が位置している。バッファ層112の上には半導体層PSが位置する。本実施例による有機発光表示装置は、プラスチックなどのフレキシブル基板、特にはポリイミド(PI)基板を使用するフレキシブル表示装置であってもよい。実施例によっては、基板110およびバリア層111が複数層形成されてもよい。つまり、基板110の上にバリア層111が位置し、その上に再び基板110およびバリア層111が位置するのであってもよい。このような基板110およびバリア層111の単位構造が数回繰り返された後、その上にバッファ層112が位置することができる。しかし、実施例によっては、ガラス基板を使用してもよく、ガラス基板を使用する場合にはバリア層111またはバッファ層112を省略することもできる。
【0088】
バリア層111およびバッファ層112は酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機絶縁物質を含んでもよく、また、ポリイミド、ポリアクリレート(エポキシ樹脂添加)等の有機絶縁物質を含んでもよい。
【0089】
図3のパターン配置図および
図4の垂直断面図を参照すれば、バッファ層112の上には、複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7のチャンネル、第1電極および第2電極を含む半導体層PSのパターンが位置する。
【0090】
半導体層PSのパターンの配置構造は
図3から容易に確認できる。
【0091】
半導体層PSは多結晶半導体で形成されており、非晶質シリコンを形成した後、これを結晶化して形成してもよい。実施例によっては酸化物半導体で形成してもよい。
【0092】
半導体層PSのパターンは、まず、左右に長く延びる駆動トランジスタT1のチャンネルと、その両側の箇所を中心にして、それぞれ、奥側及び手前側(パターン配置図の上下)に延長された線状部分とからなる、略H字状の構造部分を有する。ここで、本実施例の駆動トランジスタT1のチャンネルは、詳しくは、左端部から右側に延長されてから手前側(パターン配置図の下側)に折り曲げられた後、再び右側に延長されて右端に達する構造を有する。しかし、駆動トランジスタT1のチャンネルは、このような構造に限定されず、Ω型、S型など多様な構造を有することができる。
【0093】
駆動トランジスタT1のチャンネルの左側には第1電極S1が位置し、第1電極S1から奥側(パターン配置図の上側)に延長された半導体層PSの線状パターンが、第2トランジスタT2のチャンネルをなす。一方、第1電極S1から手前側(パターン配置図の下側)に延長された半導体層PSの線状パターンが、第5トランジスタT5のチャンネルをなす。駆動トランジスタT1のチャンネルの右側には第2電極D1が位置し、第2電極D1から手前側(パターン配置図の下側)に延長された半導体層PSの線状パターンが、第6トランジスタT6のチャンネルをなす。第6トランジスタT6のチャンネルの手前側(パターン配置図の下側)の端部は、次段の画素PXにおける半導体層PSの線状パターンの奥側(パターン配置図の上側)の端部と連結されている。一方、半導体層PSの線状パターンは、このような略H字状の構造部分の右奥の端部、すなわち、第2電極D1から奥側(パターン配置図の上側)に延長された先の端部に続いて、数回折り曲げられて延びる構造部分を有する。詳しくは、略H字状の右奥の線状部分を含めて、左に倒れた形の角張った略Ω字状の構造部分を有する。この略Ω字状の構造部分は、第2電極D1から、順次に、第3-2トランジスタT3-2、第3-1トランジスタT3-1、第4-1トランジスタT4-1、第4-2トランジスタT4-2および第7トランジスタT7のチャンネルをなす。より具体的には、半導体層PSの線状パターンは、第2電極D1から奥側に延長された直線状の部分により第3-2トランジスタT3-2のチャンネルを形成してから、左側に折り曲げられ次いで手前側に折り曲げられることで略コの字状のUターン部分を形成した後、手前側へと延びる直線状の部分により第3-1トランジスタT3-1のチャンネルを形成し、その後、再び左側に折り曲げられてから奥側に折り曲げられることで、再度略コの字状のUターン部分を形成してから、奥側へと延びる直線状の部分により、第4-1トランジスタT4-1および第4-2トランジスタT4-2のチャンネルを、この順に形成する。その後、右側に折り曲げられた後再び手前側に折り曲げられることで、再度略コの字状のUターン部分を形成してから、手前側へと延びる直線状の部分により、第7トランジスタT7のチャンネルを形成してから、右側に折り曲げられ奥側へと折り曲げられることで、再度略コの字状のUターン部分を形成した後、奥側へと延びる直線状の部分が、前段の画素PXの半導体層PSのパターンにおける、略H字状構造部分の手前右側の端部と連結される構造を有する。また、半導体層PSのパターンは、半導体層PSとは異なる層に位置する配線と連結されるために、拡張部を含む層間連結部を有することができる。まず、半導体層PSの線状パターンは、第2トランジスタT2のチャンネル(略H字状の左奥の部分)から、さらに奥側に延長されてから、データ電圧Dmが印加されるように拡張された第3拡張部を形成する。また、第5トランジスタT5のチャンネル(略H字状の手前左側の部分)から、さらに手前側に延長された後右側に折り曲げられた後、駆動電圧ELVDDが印加されるように拡張された第4拡張部を形成する。さらに、第6トランジスタT6のチャンネル(略H字状の手前右側の部分)から、さらに手前側に延長されてから、第5拡張部を形成する。この第5拡張部は、その上方に位置するデータ連結部材73と連結されるためのものであり、データ連結部材73を通じて、その上に位置する画素電極に連結され、この画素電極を通じて有機発光ダイオードOLEDに駆動電流を印加できるようにする。のみならず、本実施例の半導体層PSのパターンは、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルと第4-1トランジスタT4-1のチャンネルとの間のUターン部分から手前側に拡張された第1拡張部PSEをさらに含む。第1拡張部PSEはゲート電極G1と連結される部分である。また、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルと、第7トランジスタT7のチャンネルとの間のUターン部分から左側に延長された後に拡張されている第2拡張部PSE2をさらに含む。第2拡張部PES2は、初期化電圧Vintを印加するために拡張された部分である。
【0094】
このようなパターン配置構造を有する半導体層PSについて、ドーピング工程によって配線化工程を行る。これを
図5および
図6に示している。
【0095】
図5には、ドーピングマスクPBLKが形成されない部分(マスク開口部)を、斜線で示したが、斜線の方向が、半導体層PSに付された右上がりの斜線とは垂直である右下がりの斜線を使用した。ドーピングマスクPBLKは、この右下がりの斜線が付されない部分に位置し、その部分に位置する半導体層PSはドーピングされない。しかし、
図5で、斜線が描かれた部分に位置する半導体層PSはドーピングされる。ドーピングされる半導体層PSと、ドーピングされない半導体層PSとを区分するために、
図5の半導体層PSでは、x字状の直交斜線で、ドーピングされた半導体層PSを示した。
【0096】
図6に示したように、半導体層PSのパターンにおけるドーピングしない部分の上にドーピングマスクPBLKを形成し、全面にP型不純物をドーピングする。本実施例では、ドーピングマスクPBLKには、フォトレジストのような感光性物質を使用し、P型不純物が半導体層PSに到達しない程度に厚く形成した。このようにドーピングすると、ドーピングマスクPBLKが形成されない領域(
図5の斜線部分)にて、露出した半導体層PSは、ドーピングされて金属などの配線と同様の特性を有する。
図5のパターン配置部および
図6の垂直断面図では、配線化された半導体層PSは、x字状の斜線で示されている。
【0097】
その後、ドーピングマスクPBLKを除去し、全面に第1ゲート絶縁膜141を形成する。その結果、半導体層PSおよびバッファ層112の上にはこれを覆う第1ゲート絶縁膜141が位置する。第1ゲート絶縁膜141は窒化ケイ素、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムなどの物質で形成されうるのであり、本実施例では酸化ケイ素で形成されている。
【0098】
図7および
図8を参照すれば、第1ゲート絶縁膜141には二つの開口51、54が形成されている。これら第1及び第2の開口51、54は、それぞれ、半導体層PSのパターンにおける第1及び第2の拡張部PSE1、PSE2を露出させる。
【0099】
その後、
図9および
図10を通じて、第1ゲート導電体を形成する段階について説明する。第1ゲート導電体は多様な金属で形成されうるのであり、本実施例ではモリブデン(Mo)を使用する。また、第1ゲート導電体は複数の金属層を有することができる。第1ゲート導電体は、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153、初期化電圧線157およびゲート電極155を含む。
【0100】
第1ゲート絶縁膜141の上には、スキャン信号Sn、前段スキャン信号Sn-1、発光制御信号Enおよび初期化電圧Vintをそれぞれ伝達する、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153および初期化電圧線157が、主に第1方向に沿って延長されて形成されている。
【0101】
まず、スキャン線151は、第1方向に延長されており、第1方向に左から右へと延びるにつれて、第2トランジスタT2のチャンネル、第3-1トランジスタT3-1のチャンネルおよび第3-2トランジスタT3-2のチャンネルと、交差するようにして重なる。また、スキャン線151は、の第3-1トランジスタT3-1のチャンネルと、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルとの間にあるドーピングされている部分(左に倒れた略Ω字状における手前左の部分)とも、重なる。本実施例では、第2トランジスタT2のチャンネルと重なる領域で、奥側に拡張されて、幅が広く形成され、スキャン線拡張部をなしている。スキャン線151と半導体層PS中のドーピングされない部分が重なる箇所にはトランジスタが形成され、それぞれ第2トランジスタT2、第3-1トランジスタT3-1および第3-2トランジスタT3-2が形成されている。
【0102】
前段スキャン線152も、第1方向に延長されており、主に第1方向に左から右へと延びるにつれて、第4-1トランジスタT4-1のチャンネル、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルおよび第7トランジスタT7のチャンネルと重なる。また、前段スキャン線152は、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルと、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルとの間にあるドーピングされている部分とも重なり、第7トランジスタT7のチャンネルから前段の画素PXにまで延長されている、半導体層PSの線状パターンのうちの一部とも重なる。本実施例で、前段スキャン線152は、第4-1トランジスタT4-1のチャンネルおよび第4-2トランジスタT4-2のチャンネルと重なる部分で手前側及び奥側に大きく拡張(拡幅)されて第2方向に長い長方形の前段スキャン線拡張部をなしている。前段スキャン線拡張部の奥の端部から右側に延びる部分が、第7トランジスタT7のチャンネルと、交差するようにして重なり、この後、手前側に折り曲げられ、さらに右側へと折り曲げられることで、L字状の構造部分をなす。前段スキャン線152と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成され、それぞれ第4-1トランジスタT4-1、第4-2トランジスタT4-2および第7トランジスタT7が形成されている。
【0103】
発光制御線153も第1方向に延長されており、第1方向に延長され第5トランジスタT5のチャンネルおよび第6トランジスタT6のチャンネルと重なる。発光制御線153と半導体層PS中のドーピングされない部分が重なる所にはトランジスタが形成され、それぞれ第5トランジスタT5および第6トランジスタT6が形成されている。
【0104】
初期化電圧線157も第1方向に延長されており、第1方向に左から右へと延びるにあたり、ドーピングされた半導体層PSの線状パターンとのみ重なるので、トランジスタを形成しない。本実施例の初期化電圧線157は、半導体層PSのパターン中の第2拡張部PSE2と重なる部分で、主として手前側に拡張されて幅が広く形成されることで初期化電圧線拡張部をなしており、第2開口54によって第2拡張部PSE2と直接連結されている。その結果、初期化電圧Vintが第2拡張部PSE2を通じて半導体層PSに印加される。
【0105】
一方、第1ゲート絶縁膜141の上には駆動トランジスタT1のゲート電極155も形成されている。ゲート電極155は大面積の長方形構造を有し、半導体層PS中の駆動トランジスタT1のチャンネルと重なるだけでなく、第1拡張部PSEとも重なる。ゲート電極155と、半導体層PSのパターン中のドーピングされない部分とが重なる箇所にはトランジスタが形成されるので、駆動トランジスタT1が形成されている。また、ゲート電極155は、半導体層PSのパターン中のドーピングされている第1拡張部PSEと、重なり、第1開口51を通じて直接連結されている。その結果、駆動トランジスタT1のゲート電極155に印加される電圧は、第3-1トランジスタT3-1および第4-1トランジスタT4-1の動作による影響を受ける。また、駆動トランジスタT1のゲート電極155はストレージキャパシタCstの第2維持電極E2としての役割も果たす。
【0106】
第1ゲート導電体の上にはこれを覆う第2ゲート絶縁膜142が位置する。第2ゲート絶縁膜142は窒化ケイ素、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムなどの物質で形成されうるのであり、本実施例では窒化ケイ素で形成されている。
【0107】
第2ゲート絶縁膜142の上には、
図11および
図12のように、第2ゲート導電体が形成される。第2ゲート導電体は多様な金属で形成されうるのであり、本実施例ではモリブデン(Mo)を使用する。また、第2ゲート導電体は複数の金属層を有することができる。第2ゲート導電体は維持線126を含み、維持線126の拡張された部分は第1維持電極E1の役割を果たす。
【0108】
維持線126は第1方向に延長されており、ゲート電極155と重なる部分及びその近傍で拡張された幅を有する。維持線126の拡大された幅及び長さ(第2方向及び第2方向の寸法)は、ゲート電極155の全体をすっぽり覆うことができるように形成されている。維持線126が、画素PXの左右端の近傍以外にて奥側及び手前側に大きく拡張されて形成された維持線拡張部は、ゲート電極155と、第2ゲート絶縁膜142を挟むようにして重なることでストレージキャパシタCstを構成する。維持線拡張部は、ストレージキャパシタCstの第1維持電極E1をなし、ゲート電極155は第2維持電極E2をなす。維持線拡張部は、図示の例で、長方形のべたのパターンであり、開口または切り欠きを有さず、長方形の四辺の内部がすべて金属物質で満たされたパターン配置構造を有する。その結果、画素PXが形成される面積を減少させた場合にも、ストレージキャパシタCstの容量が十分に確保されるようにすることができる。
【0109】
図13および
図14を参照すれば、第2ゲート導電体の上には、これを覆う層間絶縁膜160が位置する。層間絶縁膜160は窒化ケイ素、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムなどの物質で形成されることができ、有機絶縁物質で形成されることもできる。本実施例では窒化ケイ素または酸化ケイ素で形成されている。
【0110】
層間絶縁膜160には4つの開口62、67、68、69が形成されている。これらのうち、第3開口62は、半導体層PS中の第2トランジスタT2のチャンネルより奥側に位置し、データ電圧Dmが印加されるように拡張された第3拡張部を露出させる。第4開口67は、第5トランジスタT5のチャンネルより手前側に位置し、駆動電圧ELVDDが印加されるように拡張された第4拡張部を露出させる。第5開口69は、第6トランジスタT6のチャンネルより手前側に位置し、有機発光ダイオードOLEDに駆動電流を印加するように拡張された第5拡張部を露出させる。第6開口68は、維持線126の拡張された部分(維持線拡張部)のうちの一部を露出させる。その結果、第6開口68は層間絶縁膜160のみを貫くように形成されるが、第3~第5開口62、67、69は、第1ゲート絶縁膜141、第2ゲート絶縁膜142および層間絶縁膜160を貫くように形成される。
【0111】
層間絶縁膜160の上にはデータ導電体が形成されている。データ導電体は、多様な金属で形成されうるのであり、複数の金属層を含むこともできる。本実施例では、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)の三重層構造を有する。データ導電体はデータ線171、駆動電圧線172およびデータ連結部材73を含む。
【0112】
図15及び
図1に示すように、データ線171は、第2方向に延長されており、少しだけ折り曲げるか、または第1方向に中心線の位置をずらす、屈曲構造を含むことができる。データ線171は、第3開口62を通じて第2トランジスタT2の第1電極S2にデータ電圧Dmを伝達する。
【0113】
駆動電圧線172も第2方向に延長されており、少しだけ折り曲げるか、または第1方向にに中心線の位置をずらす、屈曲または湾曲した構造、および、画素PXの手前側及び奥側の端部の近傍以外にて、拡張された幅を有する拡張部を含む。駆動電圧線172の拡張部は、駆動トランジスタT1の一部(図示の例で、チャネル部の大部分)、第3トランジスタT3-1、T3-2の少なくとも一部(図示の例で、第3トランジスタT3-1の全体)および第4トランジスタT4-1、T4-2の少なくとも一部(図示の例で、これらの全体)を覆うことができるように拡張されている。この拡張部は、維持線126の拡張された部分と重なる部分であり、第6開口68を通じて維持線126に駆動電圧ELVDDを印加する。その結果、ストレージキャパシタCstの第1維持電極E1に、駆動電圧ELVDDが印加される。駆動電圧線172の拡張部は、直列連結された第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードの少なくとも一部分(図示の例で、第3トランジスタT3-1の側にある左半部)を覆う。つまり、連結ノードは、第3-1トランジスタT3-1の第1電極S3-1と、第3-2トランジスタT3-2の第2電極D3-2とが直接連結されるようにする第1方向に延びる線状部分であり、半導体層PSの線状パターンの一部により形成され、ドーピングされないのでありうる。駆動電圧線172の拡張部が、第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードを少なくとも部分的に覆うことによって、連結ノードの電圧が安定化するという長所を有する。このように第3トランジスタT3-1、T3-2の連結ノードが電圧安定化されると、画素PXの駆動トランジスタT1の特性も安定化するという長所を有する。これは、第3トランジスタT3-1、T3-2の出力端部と、駆動トランジスタT1のゲート電極155とが互いに電気的に連結されており、データ電圧Dmが第3トランジスタT3-1、T3-2を通じてストレージキャパシタCstに保存されるためである。駆動電圧線172の拡張部のパターン配置構造は、第4トランジスタT4-1、T4-2および駆動トランジスタT1とも少なくとも一部が重なるものであるが、このように重ねられる構造であると、実施例の有機発光表示装置の特性に応じて重なり合う面積を調節することができる。また、駆動電圧線172は第4開口67を通じて、第5トランジスタT5の第1電極S5に駆動電圧ELVDDを印加し、第4開口67周辺で、若干拡張された幅を有する。
【0114】
データ連結部材73は、第5開口69を通じて第6トランジスタT6のチャンネルより手前側に位置する、半導体層PSのパターンの第5拡張部と電気的に連結される。データ連結部材73は、有機発光ダイオードOLEDに駆動電流を伝達する、中継部材としての役割を果たす。
【0115】
再び
図1および
図2を参照すれば、データ導電体層の上にはこれを覆う保護膜180が形成されている。保護膜180は有機絶縁物質で形成されうるのであり、本実施例ではポリイミド(PI)で形成する。
【0116】
保護膜180の上には画素電極(図示せず)が位置する。画素電極は、保護膜180に形成された開口81を通じてデータ連結部材73と連結されている。画素電極は、透明導電物質で形成されるかまたは金属で形成されうるのであり、複数の層を含むことができる。本実施例では、ITOと銀(Ag)の二重層構造を有する。
【0117】
保護膜180および画素電極の上には隔壁(図示せず)およびスペーサ(図示せず)が位置する。
【0118】
隔壁は、画素PXごとに、画素電極と重なるオープン部分を有し、オープン部分に有機発光層が位置する。有機発光層および隔壁の上には共通電極(図示せず)が位置する。画素電極、有機発光層および共通電極は、有機発光ダイオードOLEDをなす。
【0119】
実施例によっては、画素電極が正孔注入電極のアノードであってもよく、共通電極が電子注入電極のカソードであってもよい。これとは反対に、画素電極がカソードであってもよく、共通電極がアノードであってもよい。画素電極および共通電極から、それぞれ、正孔と電子が有機発光層の内部に注入されると、注入された正孔と電子とが結合したエキシトンが励起状態から基底状態に落ちるときに発光することになる。
【0120】
隔壁およびスペーサは多様な有機物質で形成されうるのであり、本実施例ではポリイミド(PI)で形成する。隔壁およびスペーサは同一物質で形成し、一つのマスクを使用して、ともに形成することができ、この際、使用されるマスクはハーフトーンマスクを使用する。その結果、ハーフトーン領域にスペーサを形成するようにすることで、マスクの個数(枚数)を減らすことができる。しかし、高解像度の画素PXを形成する場合には、ハーフトーンマスクを使用して隔壁およびスペーサをともに形成することができない場合も発生しうる。このような場合には、隔壁およびスペーサを、互いに別途のマスクでもって形成する。
【0121】
以下、
図17を通じて、本実施例で使用されるマスクの個数について説明する。
【0122】
図17は、
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置における各画素が有する積層構造を簡略に示した表である。
【0123】
図17に示している表において、各層の英文の略語表示およびその物質を各行に表示し、表の左側にはマスクの個数を表示し、表の右側には
図1および
図2において、どの層に対応するかを表示した。
【0124】
まず、基板上に、バリア層およびバッファ層112をこの順に形成する。
図17ではバッファ層から記述したが、これは、基板をフレキシブル基板ではなく、ガラス基板を使用した際には基板上にバッファ層112のみを形成する場合や、フレキシブル基板を基板およびバリア層を含めたものとして呼ぶ場合もあるためである。本実施例で、バッファ層112は、酸化ケイ素(SiO
2)や窒化ケイ素(SiNx)で形成することができる。
【0125】
バッファ層112の上には半導体層PSが形成される。半導体層PSは、非晶質シリコン層を形成した後、これを結晶化して得られた、多結晶半導体(p-Si)で形成される。このように、半導体層PSのパターンを形成するために最初の開口81マスクが使用される。
【0126】
その後、半導体層PSにドーピングするためにドーピングマスクPBLKを形成する。ドーピングマスクPBLKはフォトレジストのような感光性物質で形成することができ、ドーピング時に不純物を防止できる厚さに形成することができる。フォトレジストを、基板の周縁を除く全面に形成した後、二番目のフォトマスクを使用して露光し、露光によって特性が変化した部分を除去したり残したりする方式でドーピングマスクPBLKを形成する。その後、P型不純物をドーピングすることで、露出した半導体層PSは、金属膜などの配線とほぼ同様の導電特性を有することになる。
【0127】
その後、ストリッパーを使用してドーピングマスクPBLKを除去する。
【0128】
その後、第1ゲート絶縁膜141を、基板の周縁を除く全面に形成する。本実施例の第1ゲート絶縁膜141は酸化ケイ素(SiO2)で形成される。その後、三番目のフォトマスクを使用して第1~第2開口51、54が形成される位置を露出させるフォトレジストパターンを形成し、露出した箇所でエッチングにより第1ゲート絶縁膜141を除去して第1~第2開口51、54を形成する。
【0129】
その後、第1ゲート導電体GAT1を形成する。本実施例の第1ゲート導電体GAT1はモリブデン(Mo)で形成され、モリブデン(Mo)を全体的に積層した後、その上に四番目のフォトマスクでフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンから露出しているモリブデン(Mo)を除去して第1ゲート導電体GAT1が完成する。その結果、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153、初期化電圧線157およびゲート電極155が形成される。
【0130】
その後、第2ゲート絶縁膜142を、基板の周縁を除く全面に形成し、本実施例の第2ゲート絶縁膜142は窒化ケイ素(SiNx)で形成される。
【0131】
その後、第2ゲート導電体GAT2を形成する。本実施例の第2ゲート導電体GAT2もモリブデン(Mo)で形成され、モリブデン(Mo)を、基板の周縁を除く全面に形成した後、その上に五番目のフォトマスクでフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンから露出している箇所でエッチングによりモリブデン(Mo)を除去して第2ゲート導電体GAT2が完成する。その結果、第1維持電極E1の役割を果たす、維持線126の拡張された部分(維持線拡張部)を含む維持線126が形成される。
【0132】
その後、層間絶縁膜160を、基板の周縁を除く全面に形成する。本実施例の層間絶縁膜160は、酸化ケイ素(SiO2)または窒化ケイ素(SiNx)で形成することができる。その後、六番目のフォトマスクを使用して第3~第6開口62、67、69、68が形成される位置を露出させるフォトレジストパターンを形成し、露出した層間絶縁膜160を除去して第3~第6開口62、67、69、68を形成する。第3~第5開口62、67、69は、層間絶縁膜160以外にも、その下に位置する第1ゲート絶縁膜141および第2ゲート絶縁膜142を除去して形成されるが、第6開口68は層間絶縁膜160のみを除去して形成される。
【0133】
その後、データ導電体DATを形成する。本実施例のデータ導電体DATはチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)の三重層で形成される。三重層の金属物質を順次積層した後、その上に七番目のフォトマスクでフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンから露出している三重層の金属物質を除去してデータ導電体DATが完成する。その結果、データ線171、駆動電圧線172およびデータ連結部材73が形成される。
【0134】
その後、全体的に保護膜180が形成され、本実施例ではポリイミド(PI)の膜を、基板の周縁を除く全面に形成する。その後、八番目のフォトマスクを使用して開口81が形成される位置の保護膜180を除去して開口81を形成し、データ連結部材73を露出させる。
【0135】
その後、画素電極PXLを形成する。本実施例で、画素電極PXLはITOおよび銀(Ag)の二重層で形成される。ITOおよび銀(Ag)の二重層を、基板の周縁を除く全面に形成した後、その上に九番目のフォトマスクを使用してフォトレジストパターンを形成する。フォトレジストパターンから露出している二重層を除去して画素電極PXLを完成する。画素電極PXLは、保護膜180で開口81を通じて露出しているデータ連結部材73と直接連結される。
【0136】
その後、隔壁PDLおよびスペーサSPCを形成する。本実施例では、隔壁PDLをまずポリイミド(PI)を使用して形成する。本実施例では、ポリイミド(PI)を全体的に積層した後、十番目のフォトマスクを使用して画素電極PXLを囲む隔壁PDLを完成する。隔壁PDLにより、有機発光層の配置領域を区画形成でき、有機発光層および隔壁PDLの上には、共通電極を形成することができる。
【0137】
その後、スペーサSPCを形成する。本実施例で、スペーサSPCは、隔壁PDLが形成された後に追加のフォトマスク(十一番目のマスク)を使用して形成し、追加的にポリイミド(PI)を積層して形成することができる。
【0138】
しかし、実施例によっては隔壁PDLおよびスペーサSPCを一つのマスクを使用して形成することもでき、この際に使用されるマスクとしてはハーフトーンマスクを使用でき、マスク中のハーフトーン領域を通じてスペーサSPCを形成することができる。
【0139】
本実施例で、隔壁PDLおよびスペーサSPCを、互いに別途のマスクを使用して形成することは、高解像度の画素PXでは画素の大きさが小さくなることから、ハーフトーンマスクを使用して一つのマスクで隔壁PDLおよびスペーサSPCをともに形成することができないためである。そこで、互いに別途の二つのマスクを使用する実施例を記述する。
【0140】
以下、
図18を通じて本実施例による画素PX中の第4トランジスタT4の構造を拡大して説明する。
【0141】
図18は、
図1および
図2の実施例による有機発光表示装置における各画素中の第4トランジスタについての拡大図である。
【0142】
図18では、
図1と異なり、ドーピングマスクPBLKを太線で追加して示した。ドーピングマスクPBLKに関する、斜線を施した部分は、P型不純物に露出する部分であり、斜線領域に位置する半導体層PSはドーピングされ、その他の部分の半導体層PSはドーピングされない。
【0143】
このように形成する構造では、第4トランジスタT4のゲート電極に相当する、前段スキャン線152の幅の全体(前段スキャン線拡張部の第2方向の寸法の全体)にわたって一つのトランジスタが形成されるのでなく、その間に位置するドーピング領域によって二つのトランジスタT4-1、T4-2に分けられる。一般に、前段スキャン線といった配線と半導体層とが重なる部分にはチャンネルが形成され、配線の幅は一定の幅以上を持たなければならないが、二つのチャンネルを形成するために、配線と半導体層が二つの部分で重なるように構成すればその面積が大きくなることになる。しかし、本発明では一つの配線の下にてドーピング領域を挟むようにして、ドーピング領域を基準にした両側にチャンネルを形成することによって、二つのトランジスタが占める面積を減少させる。また、二つの直列連結されたトランジスタT4-1、T4-2に形成することによって漏洩電流を減らすという長所を有する。
【0144】
のみならず、ドーピングマスクPBLKが誤整列しても全体第4トランジスタT4のトータルのチャンネルの大きさは変わらない。つまり、ドーピングマスクPBLKが上下に誤整列される場合には、第4-1トランジスタT4-1のチャンネル長さ(L of T4-1)および第4-2トランジスタT4-2のチャンネル長さ(L of T4-2)は、それぞれ変わるが、トータルの第4トランジスタT4のチャンネル長さは、第4-1トランジスタT4-1のチャンネル長さ(L of T4-1)と第4-2トランジスタT4-2のチャンネル長さ(L of T4-2)の和であるので変わらない。
【0145】
以下、
図19および
図20を通じて、一実施例による有機発光表示装置の回路構造および信号印加に応じた動作について説明する。
【0146】
図19は、一実施例による有機発光表示装置の一つの画素の等価回路図であり、
図20は、一実施例による有機発光表示装置の一つの画素に印加される信号のタイミング図である。
【0147】
まず、
図19を参照すれば、有機発光表示装置の画素PXは、多数の信号線127、151、152、153、158、171、172、741に連結されている複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、ストレージキャパシタCst、そして有機発光ダイオードOLEDを含む。
【0148】
また、
図19では、画素PXの各配線および素子がどんな層に形成されるかを示すために、線の形状および太さを異にして示した。
【0149】
図19では、半導体層PSのパターンは点線で示し、第1ゲート導電体GAT1のパターンは実線で示し、第2ゲート導電体GAT2のパターンは太い実線で示し、データ導電体DATのパターンは一点鎖線で示した。太い実線で示された部分、つまり、第2ゲート導電体GAT2で形成される部分はストレージキャパシタCstの第1維持電極E1部分だけであり、一点鎖線で示された部分、つまり、データ導電体DATで形成される部分はデータ線171、駆動電圧線172および有機発光ダイオードOLEDに連結される配線だけである。その他のほとんどは、半導体層PSおよび第1ゲート導電体GAT1からなるのであり、ゲート電極を含む部分は第1ゲート導電体GAT1で形成され、トランジスタのチャンネル、第1電極および第2電極に相当する部分は半導体層PSで形成されることを確認できる。
【0150】
複数のトランジスタT1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7は駆動トランジスタT1を含み、スキャン線151に連結されているスイッチングトランジスタ、つまり、第2トランジスタT2および第3トランジスタT3-1、T3-2を含み、その他のトランジスタは有機発光ダイオードOLEDを動作させるのに必要な動作をするためのトランジスタ(以下、‘補償トランジスタ’という)である。このような補償トランジスタT4-1、T4-2、T5、T6、T7は、第4トランジスタT4-1、T4-2、第5トランジスタT5、第6トランジスタT6および第7トランジスタT7を含むことができる。
【0151】
複数の信号線151、152、153、157、171、172、741は、スキャン線151、前段スキャン線152、発光制御線153、初期化電圧線157、データ線171、駆動電圧線172および共通電圧線741を含むことができる。第7トランジスタT7のゲート電極G7は、前段スキャン線152の一部であるかまたは電気的に連結されているのでありうる。
【0152】
スキャン線151はゲート駆動部(図示せず)に連結されてスキャン信号Snをスイッチングトランジスタ、つまり、第2トランジスタT2および第3トランジスタT3に伝達する。前段スキャン線152はゲート駆動部に連結されて前段に位置する画素PXに印加される前段スキャン信号Sn-1を第4トランジスタT4に伝達する。発光制御線153は発光制御部(図示せず)に連結されており、有機発光ダイオードOLEDが発光する時間を制御する発光制御信号Enを、第5トランジスタT5および第6トランジスタT6に伝達する。バイパス信号GBは、第7トランジスタT7のゲート電極G7に伝達されるのであり、実施例によっては前段スキャン信号Sn-1と同じ信号を伝達することができる。
【0153】
データ線171は、データ駆動部(図示せず)で生成されるデータ電圧Dmを伝達する配線であり、データ電圧Dmによって有機発光ダイオード(OLED、‘有機発光素子’ともいう)から発光する輝度が変わる。駆動電圧線172は駆動電圧ELVDDを印加し、初期化電圧線157は駆動トランジスタT1を初期化させる初期化電圧Vintを伝達し、共通電圧線741は共通電圧ELVSSを印加する。駆動電圧線172、初期化電圧線157および共通電圧線741には、それぞれ一定の電圧が印加されうる。
【0154】
以下、複数のトランジスタについて説明する。
【0155】
まず、駆動トランジスタT1は印加されるデータ電圧Dmによって出力される電流の大きさを調節するトランジスタであり、出力される駆動電流Idが有機発光ダイオードOLEDに印加されてデータ電圧Dmに応じて有機発光ダイオードOLEDの明るさが調節される。このために、駆動トランジスタT1の第1電極S1は、駆動電圧ELVDDが印加されるように配置されて、第5トランジスタT5を経由して駆動電圧線172と連結されている。また、駆動トランジスタT1の第1電極S1は、第2トランジスタT2の第2電極D2とも連結されて同様にデータ電圧Dmが印加される。第2電極D1(出力側電極)は有機発光ダイオードOLEDに向かって電流を出力できるように配置されており、第6トランジスタT6を経由して有機発光ダイオードOLEDのアノードと連結されている。一方、ゲート電極G1はストレージキャパシタCstの一電極(第2維持電極E2)と連結されている。したがって、ストレージキャパシタCstに保存された電圧に応じてゲート電極G1の電圧が変わり、これによって駆動トランジスタT1から出力される駆動電流Idが変わることになる。
【0156】
第2トランジスタT2はデータ電圧Dmを画素PX内に受け入れるトランジスタである。ゲート電極G2はスキャン線151と連結されており、第1電極S2はデータ線171と連結されている。第2トランジスタT2の第2電極D2は駆動トランジスタT1の第1電極S1と連結されている。スキャン線151を通して伝達されるスキャン信号Snによって第2トランジスタT2がオンされると、データ線171を通じて伝達されるデータ電圧Dmが、駆動トランジスタT1の第1電極S1に伝達される。
【0157】
第3トランジスタT3は、データ電圧Dmが駆動トランジスタT1を通ることで変化した補償電圧(Dm+Vthの電圧)が、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2に伝達されるようにするトランジスタである。第3トランジスタT3は、直列連結された第3-1トランジスタT3-1および第3-2トランジスタT3-2を含む。二つのトランジスタT3-1、T3-2のゲート電極G3-1、G3-2はすべてスキャン線151と連結されている。第3-2トランジスタT3-2の第1電極S3-2は、駆動トランジスタT1の第2電極D1と連結されており、第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1はストレージキャパシタCstの第2維持電極E2および駆動トランジスタT1のゲート電極G1と連結されている。また、第3-1トランジスタT3-1の第1電極S3-1と第3-2トランジスタT3-2の第2電極D3-2とは、連結ノードで互いに連結されている。第3トランジスタT3を一つのトランジスタとして記述する場合には、第3-2トランジスタT3-2の第1電極S3-2が第3トランジスタT3の第1電極になり、第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1が第3トランジスタT3の第2電極になる。第3トランジスタT3は、スキャン線151を通じて伝達されたスキャン信号Snによりオンして、駆動トランジスタT1のゲート電極G1と第2電極D1を連結させる。すなわち、駆動トランジスタT1の第2電極D1と、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2とを連結させるのでもある。
【0158】
第4トランジスタT4は、駆動トランジスタT1のゲート電極G1およびストレージキャパシタCstの第2維持電極E2を初期化させる役割を果たす。
【0159】
第4トランジスタT4は直列連結された第4-1トランジスタT4-1および第4-2トランジスタT4-2を含む。二つのゲート電極G4-1、G4-2は前段スキャン線152と連結されており、第4-2トランジスタT4-2の第2電極D4-2は、初期化電圧線157と連結されている。第4-1トランジスタT4-1の第1電極S4-1は、第3-1トランジスタT3-1の第2電極D3-1を経由してストレージキャパシタCstの第2維持電極E2および駆動トランジスタT1のゲート電極G1に連結されている。第4トランジスタT4は前段スキャン線152を通じて伝達された前段スキャン信号Sn-1により初期化電圧Vintを駆動トランジスタT1のゲート電極G1およびストレージキャパシタCstの第2維持電極E2に伝達する。そのために、駆動トランジスタT1のゲート電極G1のゲート電圧およびストレージキャパシタCstが初期化される。初期化電圧Vintは低電圧値を持って駆動トランジスタT1をターンオンさせる電圧でありうる。
【0160】
第5トランジスタT5は、駆動電圧ELVDDを駆動トランジスタT1に伝達させる役割を果たす。ゲート電極G5は発光制御線153と連結されており、第1電極S5は駆動電圧線172と連結されている。第5トランジスタT5の第2電極D5は駆動トランジスタT1の第1電極S1と連結されている。
【0161】
第6トランジスタT6は、駆動トランジスタT1から出力される駆動電流Idを有機発光ダイオードOLEDに伝達する役割を果たす。ゲート電極G6は発光制御線153と連結されており、第1電極S6は駆動トランジスタT1の第2電極D1と連結されている。第6トランジスタT6の第2電極D6は有機発光ダイオードOLEDのアノードと連結されている。
【0162】
第5トランジスタT5および第6トランジスタT6は、発光制御線153を通して伝達された発光制御信号Enにより同時にオンされ、第5トランジスタT5を通して駆動電圧ELVDDが駆動トランジスタT1の第1電極S1に印加されると、駆動トランジスタT1のゲート電極G1の電圧(つまり、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2の電圧)によって駆動トランジスタT1が駆動電流Idを出力する。出力された駆動電流Idは、第6トランジスタT6を通じて有機発光ダイオードOLEDに伝達される。有機発光ダイオードOLEDに電流Ioledが流れることによって有機発光ダイオードOLEDが光を放出する。
【0163】
第7トランジスタT7は、有機発光ダイオードOLEDのアノードを初期化させる役割を果たす。ゲート電極G7は前段スキャン線152と連結されており、第1電極S7は有機発光ダイオードOLEDのアノードと連結されており、第2電極D7は初期化電圧線157と連結されている。バイパス信号GBにより第7トランジスタT7がターンオンされると、初期化電圧Vintが有機発光ダイオードOLEDのアノードに印加されて初期化される。
【0164】
ストレージキャパシタCstの第1維持電極E1は駆動電圧線172と連結されており、第2維持電極E2は駆動トランジスタT1のゲート電極G1、第3トランジスタT3の第2電極D3および第4トランジスタT4の第2電極D4と連結されている。その結果、第2維持電極E2は、駆動トランジスタT1のゲート電極G1の電圧を決定し、第3トランジスタT3の第2電極D3を通してデータ電圧Dmが印加されたり、第4トランジスタT4の第2電極D4を通して初期化電圧Vintが印加される。
【0165】
また、
図19の実施例では、第3トランジスタT3内の連結ノードが駆動電圧線172の拡張部と重なっていて信号変化が減り、画素PXの出力電圧も安定化される。
【0166】
一方、有機発光ダイオードOLEDのアノードは、第6トランジスタT6の第2電極D6および第7トランジスタT7の第1電極S7と連結されており、カソードは共通電圧ELVSSを伝達する共通電圧線741と連結されている。
【0167】
図19の実施例で、画素回路は7個のトランジスタT1-T7と1個のストレージキャパシタCstとを含むが、これに限定されず、トランジスタの数とキャパシタの数、そしてこれらの連結は多様に変更可能である。実施例によっては、第7トランジスタT7を省略することもできる。
【0168】
図示していないが、有機発光表示装置は映像を表示する表示領域を含み、表示領域にはこのような画素PXが行列など多様な方式で配列されている。
【0169】
一実施例による有機発光表示装置の一つの画素の動作について
図19および
図20を参照して説明する。
【0170】
初期化区間の間にローレベルの前段スキャン信号Sn-1が前段スキャン線152を通じて画素PXに供給される。そうすると、これが印加された第4トランジスタT4がオンして、初期化電圧Vintが第4トランジスタT4を通して駆動トランジスタT1のゲート電極G1およびストレージキャパシタCstの第2維持電極E2に印加される。その結果、駆動トランジスタT1およびストレージキャパシタCstが初期化される。初期化電圧Vintの電圧が低電圧を持って駆動トランジスタT1がターンオンされる。
【0171】
一方、初期化区間の間にはローレベルのバイパス信号GBも第7トランジスタT7に印加される。これが印加された第7トランジスタT7がターンオンされて初期化電圧Vintが第7トランジスタT7を通じて有機発光ダイオードOLEDのアノードに印加される。その結果、有機発光ダイオードOLEDのアノードも初期化される。
【0172】
以降、データ記入区間の間にスキャン線151を通じてローレベルのスキャン信号Snが画素PXに供給される。ローレベルのスキャン信号Snによって第2トランジスタT2および第3トランジスタT3がオンされる。
【0173】
第2トランジスタT2がターンオンされると、データ電圧Dmが第2トランジスタT2を通して駆動トランジスタT1の第1電極S1に入力される。
【0174】
また、データ記入区間の間に第3トランジスタT3がターンオンされ、その結果、駆動トランジスタT1の第2電極D2は、ゲート電極G1およびストレージキャパシタCstの第2維持電極E2と電気的に連結される。駆動トランジスタT1のゲート電極G1と第2電極D2が連結されてダイオード連結される。また、駆動トランジスタT1は、初期化区間の間にゲート電極G1に低電圧(初期化電圧Vint)が印加されていてターンオンされた状態である。その結果、駆動トランジスタT1の第1電極S1に入力されるデータ電圧Dmは、駆動トランジスタT1のチャンネルを通して第2電極D1から出力された後、第3トランジスタT3を経てストレージキャパシタCstの第2維持電極E2に保存される。
【0175】
この際、第2維持電極E2に印加される電圧は、駆動トランジスタT1のしきい電圧(Vth)により変更され、駆動トランジスタT1の第1電極S1にデータ電圧Dmがかかり、駆動トランジスタT1のゲート電極G1に初期化電圧Vintがかかる場合、第2電極D1に出力される電圧はVgs+Vthを有することができる。ここで、Vgsは、駆動トランジスタT1のゲート電極G1と第1電極S1にかかる電圧の差であるため、Dm-Vint値を有することができる。したがって、第2電極D1から出力されて第2維持電極E2に保存される電圧は、Dm-Vint+Vth値を有することができる。
【0176】
その後、発光区間の間、発光制御線153から供給される発光制御信号Enがローレベルの値を有して、第5トランジスタT5および第6トランジスタT6がオンされる。その結果、駆動トランジスタT1の第1電極S1には駆動電圧ELVDDが印加され、駆動トランジスタT1の第2電極D1は有機発光ダイオードOLEDと連結される。駆動トランジスタT1は、ゲート電極G1の電圧と第1電極S1の電圧(つまり、駆動電圧ELVDD)の間の電圧差により駆動電流Idが発生する。駆動トランジスタT1の駆動電流Idは、Vgs-Vthの2乗に比例する値を有することができる。ここで、Vgs値は、ストレージキャパシタCstの両端にかかる電圧差と同じであり、Vgs値はVg-Vsの値であるため、Dm-Vint+Vth-ELVDD値を有する。ここで、Vth値を引いてVgs-Vthの値を求めれば、Dm-Vint-ELVDD値を有する。つまり、駆動トランジスタT1の駆動電流Idは駆動トランジスタT1のしきい電圧(Vth)に無関係な電流を出力する。
【0177】
したがって、各画素PXに位置する駆動トランジスタT1が工程のばらつきによって互いに異なるしきい電圧(Vth)を持っていても駆動トランジスタT1の出力電流を一定にすることができて、特性の不均一性を改善することができる。
【0178】
以上の計算式でVth値は多結晶半導体を使用するP型トランジスタの場合、0より若干大きい値やまたは負の値を有することができる。また、電圧を計算する方向により+および-の表現が変更されることができる。しかし、駆動トランジスタT1の出力電流である駆動電流Idがしきい電圧(Vth)に無関係な値を有するという点に変わりはない。
【0179】
以上のような発光区間が終了すると、再び初期化区間が位置して最初から再び同じ動作を繰り返すことになる。
【0180】
複数のトランジスタT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7の第1電極および第2電極は電圧または電流が印加される方向によって、一つはソース電極になり、他の一つはドレイン電極になることができる。
【0181】
一方、実施例によっては、初期化区間での第7トランジスタT7が有機発光ダイオードOLEDのアノードを初期化させながら、駆動トランジスタT1が実際にターンオンされない条件で放出する少量の電流も有機発光ダイオードOLED側に流れないようにすることができる。この際、少量の電流はバイパス電流Ibpで第7トランジスタT7を通して初期化電圧Vintに放出する。その結果、有機発光ダイオードOLEDが不必要な光を放出しなくなり、ブラック階調をさらに明確に表示し、コントラスト比(contrast ratio)も向上させることができる。このような場合、バイパス信号GBが前段スキャン信号Sn-1と異なるタイミングの信号であってもよい。実施例によっては、第7トランジスタT7を省略することもできる。
【0182】
以下、
図1および
図2の実施例と異なる構造を有する実施例について
図21を通して説明する。
【0183】
図21は、他の実施例による有機発光表示装置の一つの画素領域の配置図である。
【0184】
図21は、
図1とは異なり、第7トランジスタT7の位置が半導体層PSの他の位置に形成されている。
【0185】
このため、
図1の実施例と異なる構造を有するドーピングマスクPBLKを使用した。これを明確に示すために、
図21は、
図1とは異なり、ドーピングマスクPBLKを追加的に示した。ドーピングマスクPBLKはドーピング後に省略されるので、完成した画素PXでは確認できない層であるが、
図1との差を明確に示すために追加した。
【0186】
図21の実施例ではドーピングマスクPBLKが
図1の実施例とは異なり、半導体層PS中のドーピングされる位置が異なる。特に、第7トランジスタT7周辺のドーピング位置が異なり、その結果、
図21に示したように、第4-2トランジスタT4-2のチャンネルから第7トランジスタT7のチャンネルが、より遠くに離れて形成されている。
【0187】
つまり、半導体層PSパターン中のドーピングされている部分は前段スキャン線152と重なってもトランジスタのチャンネルを形成できず、ドーピングされない半導体層PSだけが前段スキャン線152と重畳しながら第7トランジスタT7のチャンネルを形成する。
【0188】
図21を参照すれば、トランジスタのチャンネルは、第1ゲート導電体層と半導体層PS中のドーピングされない層が重なる領域に形成されるので、
図1または
図21の実施例と異なるドーピングマスクPBLKを使用すると画素PXを構成する各トランジスタが形成される位置を変更させることができる。このような変形例は
図21に限定されず、多様な変形例を有することができる。
【0189】
図21の実施例も
図1の実施例と同様の効果を有する。つまり、一つの画素に形成される接触孔(コンタクトホール)の個数を減らすことで、画素が占める面積が少なくなっている高解像度の画素にも適用することができる。また、第4トランジスタT4周辺で、ゲート電極と半導体層パターンとが重なる領域のうちの一部領域をドーピングして直列連結された二つのトランジスタT4-1、T4-2を形成することによっても、これらのトランジスタの占める面積を小さくして画素PXの面積を減らすことができる。また、第4トランジスタT4のような構造であると、ドーピングマスクPBLKが誤整列しても、第4トランジスタT4のチャンネルのトータルの長さは変わらないという長所を有する。また、半導体層に拡張部PSE、PSE2を追加し、拡張部PSE、PSE2が上部の第1ゲート導電体と重なることで直接連結されるようにして、画素PXが占める面積を減らすことができる。
【0190】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【0191】
好ましい一実施形態においては、次のとおりである。
【0192】
図1及び19のように、各画素PXに、
ゲート電極155がストレージキャパシタCstの第1維持電極E1をなす駆動トランジスタT1と、
スキャン線151の信号にしたがって駆動トランジスタT1にデータ電圧Dmを供給する第2トランジスタT2と、
駆動トランジスタT1を通ることで変化した補償電圧(Dm+Vthの電圧)が、ストレージキャパシタCstの第2維持電極E2に伝達されるようにするために、スキャン線151の信号にしたがって作動する第3トランジスタと、
前段スキャン線152の信号に応じて、駆動トランジスタT1のゲート電極G1およびストレージキャパシタCstの第2維持電極E2を初期化させる第4トランジスタT4と、
発光制御線153の信号に応じて、駆動電圧ELVDDを駆動トランジスタT1に伝達する第5トランジスタT5と、
発光制御線153の信号に応じて、駆動トランジスタT1から出力される駆動電流Idを有機発光ダイオードOLEDに伝達する第6トランジスタT6と、
バイパス信号、または、前段スキャン線152の信号に応じて、有機発光ダイオードOLEDのアノードを初期化させる第7トランジスタT7と
を備え
各トランジスタのチャネル領域、及び、これらを連結する配線がポリシリコンにより形成される有機発光表示装置において、
各画素PXの面積を最小限にしつつ、作動の信頼性を確保し、製品不良を低減すべく、下記A1~A3などとする。
【0193】
A1 前段スキャン線152における第4トランジスタT4のチャネルと重なる箇所に拡張部を設けるとともに、第4トランジスタT4を、2個直列型とし、中央部分をドーピング領域とする。
【0194】
A2 第3トランジスタT3から延びる第1拡張部PSEと、これに重なる第1開口51を通じて、第3トランジスタT3が、ゲート電極155に連結される。
【0195】
A3 第3トランジスタT3について、スキャン線151とそれぞれ交差する2つのトランジスタの2個直列型とし、中央のノード部分が、少なくとも部分的に、駆動電圧供給線172の拡張部と重なるようにする。これにより誤作動を低減させる。
【符号の説明】
【0196】
51、54、62、67、68、69、81:開口
73:データ連結部材
110:基板
111:バリア層
112:バッファ層
126:維持線
141:第1ゲート絶縁膜
142:第2ゲート絶縁膜
151:スキャン線
152:前段スキャン線
153:発光制御線
155:ゲート電極
157:初期化電圧線
160:層間絶縁膜
171:データ線
172:駆動電圧線
180:保護膜
741:共通電圧線
T1、T2、T3-1、T3-2、T4-1、T4-2、T5、T6、T7:トランジスタ
S1、S2、S3-1、S3-2、S4-1、S4-2、S5、S6、S7:第1電極
D1、D2、D3-1、D3-2、D4-1、D4-2、D5、D6、D7:第2電極
Cst:ストレージキャパシタ
E1、E2:維持電極
PBLK:ドーピングマスク
PS:半導体層
PSE、PSE2:拡張部
PX:画素