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特許7356845水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置
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  • 特許-水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置 図1
  • 特許-水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置 図2
  • 特許-水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
E03D9/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153519
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031962
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩和
(72)【発明者】
【氏名】中川 恵子
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-278244(JP,A)
【文献】特開2002-130800(JP,A)
【文献】特開2013-169379(JP,A)
【文献】特開2004-164614(JP,A)
【文献】特開2001-297099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
A47K 3/00
F24H 15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の操作によって入力される水洗便器装置の不具合の現象に関する情報を含む診断要求信号を発する診断要求信号発信部と、
前記水洗便器装置に設けられ、前記診断要求信号を受信する診断要求信号受信部と、
前記水洗便器装置に設けられ、前記診断要求信号受信部で受信した前記診断要求信号に応じて不具合の原因を特定し、不具合の現象と具合の原因と具合の原因に応じた対処方法とが関連付けられた情報を用いて、特定した不具合の原因に応じた対処方法を抽出する診断部と、
前記診断部で抽出した対処方法を含む診断情報を使用者に報知するための処理を実行する診断情報出力部と、を備える、
水洗便器装置の不具合対応システム。
【請求項2】
前記水洗便器装置に設けられ、前記診断情報を発信する診断情報発信部と、
前記診断情報発信部から発信された前記診断情報を示する診断情報表示部と、を備える、
請求項に記載の水洗便器装置の不具合対応システム。
【請求項3】
前記診断要求信号発信部及び前記診断情報表示部は、スマートホン及びトイレ用リモコン装置の少なくとも一方に設けられており
前記診断要求信号発信部が設けられた前記スマートホン及び/又は前記トイレ用リモコン装置は、使用者が数の前記不合の現象からいずれかを選択するように構成されている、
請求項に記載の水洗便器装置の不具合対応システム。
【請求項4】
記診断情報表示部は、前記診断要求信号発信部が設けられた前記スマートホン及び/又は前記トイレ用リモコン装置に設けられている
請求項に記載の水洗便器装置の不具合対応システム。
【請求項5】
前記不具合の現象と不具合の原因と不具合の原因に応じた対処方法とが関連付けられた情報は、前記水洗便器装置の記憶部に設けられており、
前記診断部は、前記水洗便器装置の機能装置の状態を確認するとともに前記記憶部に記録された前記不具合の現象と不具合の原因と不具合の原因に応じた対処方法とが関連付けられた情報に基づいて、前記水洗便器装置の不具合の原因を特定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水洗便器装置の不具合対応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水洗便器装置は、便座を温める便座調温装置や、用便後に局部を洗浄するための局部洗浄装置、自動的に洗浄水を吐水する自動洗浄装置などの各種機能装置を備えて構成されている。
【0003】
一方、便座が温まらない、局部洗浄ノズルから吐出されるシャワーが冷たいなど、機能装置に不具合が発生した場合に、使用者が不具合の原因が故障によるものか、故障以外によるものかなどを調べることができない。このため、使用者の操作ミス、勘違いなどであるにもかかわらず、修理依頼をかけ、費用や時間が無駄になるケースがあった。
【0004】
特許文献1には、「衛生洗浄便座において、機器に備えられている動作異常診断装置が異常判定した際、機器の制御装置のメモリーから動作異常の内容を読み出し、メンテナンスに必要な情報を機器の表示部に表示したり、衛生洗浄便座と通信が可能且つ表示機能を有した外部装置を具備し、機器がメモリーから読み出した動作異常の情報を前記外部装置に送信してメンテナンスに必要な情報を前記外部装置に表示することを特徴とする衛生洗浄便座。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-278244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、使用者の意思にかかわらず、異常状態になったときに異常の内容やメンテナンスに関する情報を表示する制御がなされる。このため、使用者が違和感を覚え、不具合(使用者の困りごと)を感じた際にこれに対応することができない。これにより、使用者の操作ミス、勘違いである場合などに、やはり、修理依頼をかけてしまい、費用や時間が無駄になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の水洗便器装置の不具合対応システムの一態様は、不具合の現象と、不具合の原因と、不具合の原因に応じた対処方法とが関連付けられた情報を用いて、水洗便器装置の不具合の診断結果を取得する診断部と、前記診断部で取得した情報をユーザに報知するための処理を実行する診断情報出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一態様の水洗便器装置を示す図である。
図2】一態様の水洗便器装置の不具合対応システムを示すブロック図である。
図3】一態様の水洗便器装置の不具合対応システムの記憶部に記憶された情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、水洗便器装置が住宅等の水洗大便器装置であるものとして説明を行う。男性用の水洗小便器装置など、他の水洗便器装置であっても勿論構わない。
【0010】
本実施形態において、水洗便器装置Aは、図1に示すように、便器本体部1と、便器本体部1の後部側に設けられ、例えば使用者によるリモコン操作を検知して便器本体部1内に洗浄水を吐出させる洗浄機能部2と、便座、便蓋3と、を備えて構成されている。
【0011】
水洗便器装置Aは、便座を温める便座調温装置や、用便後に局部を洗浄するための局部洗浄装置、自動的に洗浄水を吐水する自動洗浄装置などの各種機能装置を備えている。これら各種機能装置を駆動操作するためのリモコン装置や操作ボタンなどが具備されている。
【0012】
さらに、本実施形態の水洗便器装置Aは、使用者が、水洗便器装置Aの各種機能装置などの不具合の発生の有無、不具合の原因、不具合の対処方法などを調べ、使用者に不具合に関する情報を与えるための水洗便器装置の不具合対応システムBを備えている。
【0013】
本実施形態の水洗便器装置の不具合対応システムBは、図1及び図2に示すように、不具合の現象と、不具合の原因と、不具合の原因に応じた対処方法とが関連付けられた情報を用いて、水洗便器装置Aの不具合の診断結果を取得する診断部7と、診断部7で取得した情報をユーザに報知するための処理を実行する診断情報出力部11と、を備えて構成されている。
【0014】
本実施形態の水洗便器装置の不具合対応システムBは、故障などの不具合の現象(診断内容)、原因、原因に応じた対処方法などを予め記憶する記憶部4と、使用者などの操作によって診断要求信号を発する診断要求信号発信部5と、診断要求信号発信部5からの診断要求信号を受信する診断要求信号受信部6と、診断要求信号受信部6で受信した診断要求信号に応じて水洗便器装置Aの各種機能装置などの状態を確認し、記憶部4の情報に基づいて水洗便器装置Aの各種機能装置などの状態の良否(不具合の有無)判断や不具合があった場合の原因の特定、対処方法の抽出などを行う診断部7と、診断部7の診断結果などの情報を発信する診断情報発信部8と、診断情報発信部8から発信した診断結果などの情報を受けてこれを表示する診断情報表示部9と、をさらに備えて構成されている。
【0015】
記憶部4は、例えば、図3に示すように、故障などの不具合の現象(診断内容)などの大分類項目と、各大分類項目に対して考え得る原因、原因に応じた対処方法などを示したリスト(情報)10を予め記憶して持っている。
【0016】
診断要求信号発信部5や診断情報表示部9、診断情報出力部11は、例えば、図1に示すように、スマートホンやPCなどの端末や、トイレ用リモコン装置などに具備されている。診断要求信号発信部5は、使用者が端末などを操作し、使用者が感じている不具合、困りごとなどの情報を診断要求信号として発信して診断要求信号受信部6に送り、診断部7で診断を実行させることができる。なお、診断情報出力部11は、クラウドなどであってもよい。
【0017】
本実施形態の診断要求信号発信部5は、例えば、図1に示すように、使用者に対し、便座が冷たい、シャワーが冷たい、乾燥温風が出ない、便蓋が開かないなどのリスト10に対応した不具合事項を示し、使用者が容易に不具合、困りごとを選択して診断を実行させることができるように構成されている。
【0018】
診断情報表示部9は、診断情報発信部8から発信した診断結果や対策などの情報を受け、これを表示する。
【0019】
本実施形態の診断情報表示部9は、例えば、図1に示すように、使用者に対して対話形式で不具合の解消手順を示したり、修理等の問い合わせ先など、使用者自身が不具合の解決に向けて行動をとれる指示、指標などを表示する。
【0020】
より具体的な例を以下に示す。
【0021】
図2に示すように、診断要求信号発信部5や診断情報表示部9で、大分類項目の複数の原因や小分類項目の対処方法が示される。
【0022】
例えば、局部洗浄ノズルからシャワーが出ない場合には、ある一定時間連続で火傷防止サーミスタや出湯サーミスタの短絡、断線が検出されれば、大分類項目の原因としてサーミスタ異常が特定され、これに対応した小分類項目の対処方法が示される。
なお、火傷防止サーミスタや出湯サーミスタの短絡、断線は、局部洗浄ノズルからシャワーが出ない場合の特定の閾値が予め設定され、これを指標に判断される。
【0023】
局部洗浄ノズルからシャワーが出ない場合に、水洗便器装置Aの通水経路に設けられた流量センサやフロートスイッチによって、シャワー開始時に電磁弁を開いたにもかかわらず、ある時間連続でOFF状態が続くことが検知されれば、大分類項目の原因として空焚き検知異常が特定され、これに対応した小分類項目の対処方法が示される。
【0024】
便座が冷たい場合には、例えば、便座ヒーターのOFF中とON中とにわけて異常検出のチェックが行われる。便座ヒーターのOFF中チェックは、ある一定の時間毎に便座ヒーター出力をある一定時間、強制的にOFFにし、その間のフォトカプラからの入力がパルスか非パルスかを判断する。パルスである場合には、便座ヒーターの断線、トライアックの短絡が異常の原因として特定され、非パルスの場合には、フォトカプラの短絡、開放が異常の原因として特定され、これに対応した小分類項目の対処方法が示される。
【0025】
便座ヒーターのON中チェックは、OFF中チェック終了時に便座ヒーター出力要求がONの場合に、ある一定時間、フォトカプラからの入力がHighかHighでないかを判断し、これによって異常の原因が特定され、これに対応した小分類項目の対処方法が示される。
【0026】
便座が冷たい場合には、例えば、ある一定時間連続で便座サーミスタの短絡、断線が検出されれば、大分類項目の原因として便座サーミスタ異常が特定され、これに対応した小分類項目の対処方法が示される。
なお、便座サーミスタの短絡、断線は、便座が冷たい場合の特定の閾値が予め設定され、これを指標に判断される。
【0027】
ここで、スマートホンなどの端末、備え付けのトイレ用リモコン装置で表示するだけでなく、音声を使って使用者と情報のやり取りを行うようにしてもよい。
【0028】
スマートホンのアプリやリモコン装置で問いかけたい内容を選択肢から選んだり、「便座」「冷たい」といったキーワードをスマートホンなどで入力し、選択肢を検索して選ぶようにしてもよい。さらに、「便座」「冷たい」という音声をスマートホンやリモコン装置に話し、選択肢の候補を表示させて選ぶようにしてもよい。
【0029】
そして、スマートホンのアプリやリモコン装置に原因と対応方法を表示させたり、音声で通知する。例えば、「便座ヒーター故障のため、修理依頼が必要です ○○を押してください、または○○に電話してください」、「節電が入になっています 設定変更するには○○を押してください」、「該当する原因が見つかりませんでした」、「診断できませんでした、トイレの電源が入っているか確認し、再度○○を押してください」などの情報を使用者などに表示や音声で知らせるようにする。
【0030】
したがって、上記構成からなる本実施形態の水洗便器装置の不具合対応システムB及びこれを備えた水洗便器装置Aにおいては、使用者などが水洗便器装置Aに不具合を感じたり、困ったことが生じた際に、水洗便器装置の不具合対応システムBによって、その不具合、困りごとの原因、対応方法などを使用者などが調べて知ることができる。
【0031】
よって、本実施形態の水洗便器装置の不具合対応システムB及び水洗便器装置Aによれば、不具合の発生の有無、不具合の原因、対処方法などを使用者などに知らせ、使用者などが適切な対応を効率的に行えるようにすることができる。
これにより、例えば、修理が不要な使用者側の設定ミスなどである場合に、使用者自身がこれを容易に知ることができ、使用者自身によって容易に解決することが可能になる。
【0032】
以上、水洗便器装置の不具合対応システム及び水洗便器装置の一実施形態について説明したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0033】
例えば、本開示の水洗便器装置の不具合対応システムは、必ずしも、操作によって不具合に関する診断要求信号を発する診断要求信号発信部と、診断要求信号を受信する診断要求信号受信部と、を備えていなくてもよい。
【0034】
具体的な一例として、診断情報表示部がスマートホン及び/又トイレ用リモコン装置であり、診断部が自動的に水洗便器装置の状態を確認し、診断情報表示部のスマートホン及び/又はトイレ用リモコン装置に診断結果の情報が表示されるように構成してもよい。
【0035】
この場合には、リモコンが受光してない等の不具合の原因に該当している全ての状態情報が(常に)自動的にスマートホンやトイレ用リモコン装置に発信され、操作によって信号を発信する必要を無くすことができる。
【0036】
診断要求信号発信部5及び診断情報表示部9をスマートホン及び/又はトイレ用リモコン装置とし、使用者がスマートホン及び/又はトイレ用リモコン装置で複数の不都合の現象からいずれかを選択するように構成してもよい。
【0037】
さらに、少なくとも診断情報表示部9をスマートホン及び/又はトイレ用リモコン装置とし、スマートホン及び/又はトイレ用リモコン装置の診断情報表示部9を、診断部7で抽出された原因の中から該当するものを抽出し、対処方法を表示するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 便器本体部、2 洗浄機能部、3 便蓋、4 記憶部、5 診断要求信号発信部、6 診断要求信号受信部、7 診断部、8 診断情報発信部、9 診断情報表示部、10 リスト(情報)、11 診断情報出力部、A 水洗便器装置、B 水洗便器装置の不具合対応システム
図1
図2
図3