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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】積層型熱交換器のフランジ構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/02 20060101AFI20230928BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20230928BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230928BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F28D9/02
F28F3/08 311
F28F9/02 301J
F01M5/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019202773
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021076293
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】利田 竜二
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025908(WO,A1)
【文献】特表2017-500532(JP,A)
【文献】特開平07-286786(JP,A)
【文献】特開2011-140915(JP,A)
【文献】特開2015-004468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/02
F28F 3/08
F28F 9/02
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平坦な底面を有する皿状に形成された複数のプレート(1)の積層体からなり、積層方向の一端に皿状のボトムプレート(2)が配置されたコア(3)と、コア(3)のボトムプレート(2)に隣接して、積層方向に順に平板部(4)と、中間平板部(5)と、フランジ部(6)とが配置されて、それらが一体に形成され、フランジ部が固定部材に取付けられる積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記ボトムプレート(2)の底面と、平板部(4)の平面とが整合する外周を有し
ランジ部(6)は中間平板部(5)および平板部(4)の外周より大きな平面を有し、
平板部(4)と中間平板部(5)とフランジ部(6)との横断面外周が、中間平板部(
5)の位置で、その中間平板部(5)の平面の中心方向の内側に括れる凹部(7)を、中
間平板部(5)の位置に形成したことを特徴とする積層型熱交換器のフランジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部(4)は、その底面が矩形に形成され、中間平板部(5)は、その矩形の
四隅の角部が平面円弧状に取り除かれて、そこに前記凹部(7)を形成する積層型熱交換
器のフランジ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部(4)および中間平板部(5)は平面円形に形成され、中間平板部(5)の
外周の全周に前記凹部(7)が形成された積層型熱交換器のフランジ構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部(4)と中間平板部(5)とフランジ部(6)とが、3枚のプレートを積層
して、それらを互いに接合することにより形成され、
平板部(4)と中間平板部(5)とフランジ部(6)との積層方向の中間位置に前記凹
部(7)が形成された積層型熱交換器のフランジ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用エンジンのケーシングに取付ける積層型熱交換器に最適なオイルクーラに関し、特に耐震性に優れたものに関する。
【背景技術】
【0002】
図6(C)(D)は、従来のオイルクーラとして用いる積層型熱交換器である。
この熱交換器は、平坦な底面を有する皿状に形成された複数のプレートの積層体によりコア3を形成し、コア3の下端にそのプレートよりも厚みの厚いボトムプレート2を配置する。そして、ボトムプレート2の下端に平板部4aを介してフランジ部6を配置し、コア3の上端に一対の冷却水パイプ8を設けたものである。
この熱交換器は、フランジ部6がエンジンのケーシングの平坦面に固定され、エンジンからのオイルがコア3のオイル流路を流通し、冷却水11が冷却水パイプ8からコア3の冷却水流路に流通して、両流体間に熱交換が行われるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-45477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(C)(D)に示す、従来型オイルクーラとしての積層型熱交換器は、走行中の車両の振動に伴い、比較的板厚の薄いボトムプレート2に亀裂が生じる場合があった。これは、振動によってコア3の付根に負荷が係り、特に図6(C)のD部、(D)の丸印の位置に亀裂が発生するものである。
そこで、本発明は走行車両の振動に基づくコア3のボトムプレート2の下面側の隅に生じる亀裂を可及的に防止できる、耐振性の高い熱交換器を提供することを課題とする。
特に、図6(D)の丸印の位置から生じる亀裂を効果的に防止できる熱交換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ平坦な底面を有する皿状に形成された複数のプレート1の積層体からなり、積層方向の一端に皿状のボトムプレート2が配置されたコア3と、コア3のボトムプレート2に隣接して、積層方向に順に平板部4と、中間平板部5と、フランジ部6とが配置されて、それらが一体に形成され、フランジ部が固定部材に取付けられる積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記ボトムプレート2の底面と、平板部4の平面とが整合する外周を有し
ランジ部6は中間平板部5および平板部4の外周より大きな平面を有し、
平板部4と中間平板部5とフランジ部6との横断面外周が、中間平板部5の位置で、その中間平板部5の平面の中心方向の内側に括れる凹部7を、中間平板部5の位置で形成したことを特徴とする積層型熱交換器のフランジ構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部4は、その底面が矩形に形成され、中間平板部5は、その矩形の四隅の角部が平面円弧状に取り除かれて、そこに前記凹部7を形成する積層型熱交換器のフランジ構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部4および中間平板部5は平面円形に形成され、中間平板部5の全周に前記凹部7が形成された積層型熱交換器のフランジ構造である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載の積層型熱交換器のフランジ構造において、
前記平板部4と中間平板部5とフランジ部6とが、3枚のプレートを積層して、それらを互いに接合することにより形成され、
平板部4と中間平板部5とフランジ部6との積層方向の中間位置に前記凹部7が形成された積層型熱交換器のフランジ構造である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、前記ボトムプレート2の底面と、平板部4の平面とが整合する外周を有し、フランジ部6は中間平板部5および平板部4の外周より大きな平面を有し、それらの断面外周が中間平板部5の位置で、内側に括れる凹部7を形成したものである。
このように、フランジ部6と中間平板部5と平板部4の各断面間で、中間平板部5の断面外周が内側に括れる凹部7を形成することにより、括れ凹部7を支点としてコア3が変形することを可能とし、熱交換器コアに加わる振動外力に基づく応力を凹部7の歪みに代えて、その応力を中間平板部5全体に分散し、耐震性の高い積層型熱交換器とすることが
できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記構成において、平板部4は、その底面が矩形に形成され、中間平板部5は、その矩形の四隅の角部が平面円弧状に取り除かれて、そこに前記凹部7を形成するものである。
そのため、熱交換器に加わる振動外力を中間平板部5の凹部7を支点として、中間平板部5の全体に歪みを分散し、耐震性の高い積層型熱交換器となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記構成において、平板部4および中間平板部5が平面円形で、中間平板部5の外周の全周に前記凹部7が形成されたものである。
これにより、コア3に生じる応力を中間平板部5の全体に、均等に分散して耐震性の高い積層型熱交換器となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記構成において、平板部4と中間平板部5とフランジ部6とが、3枚のプレートを積層して、それらを互いに接合することにより形成され、 平板部4と中間平板部5とフランジ部6との積層方向の中間位置に前記凹部7が形成されたものである。
これにより、積層方向の中間位置に前記凹部7を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の積層型熱交換器の縦断面図であって図1(B)のA-A矢視断面図(A)、及びその平面図(B)。
図2】同熱交換器の要部分解斜視図。
図3】同熱交換器の要部を示すフランジ部6と平板部4と中間平板部5との重ね合わせ状態を示す平面図。
図4】本発明の第2実施例の積層型熱交換器の正面図(A)及び平面図(B)。
図5】同熱交換器の要部の断面を示し、その平板部4と中間平板部5とフランジ部6との組合せ状態を夫々示す説明図。
図6】本発明の積層型熱交換器の作用(A)(B)と、従来のそれを比較する説明図(C)(D)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0015】
図1図3は本発明の第1実施例の積層型熱交換器を示し、図1(A)はその縦断面図であって、図1(B)のA-A矢視断面図、図1(B)は同平面図、図2は同熱交換器の要部分解斜視図、図3は同熱交換器の要部を示すフランジ部6と平板部4と中間平板部5との重ね合わせ状態を示す平面図である。
【0016】
この積層型熱交換器は、図1(A)に示す如く、複数のプレート1を積層して、その積層方向の1枚毎にオイル流路15と冷却水流路16とを形成してコア3を構成し、コア3の上端にプレート1と同一形状のトッププレート10を配置すると共に、下端に同様のボトムプレート2を配置する。
このボトムプレート2及びトッププレート10は、各プレート1の板厚よりも厚い。そして、トッププレート10の冷却水の出入口には一対の冷却水パイプ8が配置され、ボトムプレート2には平板部4と中間平板部5とフランジ部6とが順に配置されている。
これらの各部品は、組み立てられた後に一体的にろう付固定される。そして、最下端のフランジ部6の四隅に設けたボルト孔14に締結具を介して、そのフランジ部6が図示しないエンジンの平坦面に接続される。
【0017】
(本発明の特徴)
ここにおいて本発明の特徴は、ボトムプレート2と平板部4と中間平板部5及びフランジ部6との相対関係である。
即ち、図2に示す如く、コア3の下端に設けたボトムプレート2の下方に平板部4,中間平板部5,フランジ部6が順に配置され、それらが一体にろう付されている。
コア3を構成するプレート1と、その下端に配置されるボトムプレート2は、平面が略方形に形成され、その方形の平面に整合する平板部4がボトムプレート2の下面に配置されている。
【0018】
次に、中間平板部5はその平面の四隅部の円弧部5aを除き、その平面が平板部4の平面に略整合する。また、フランジ部6はその平面がボトムプレート2,平板部4より大きな方形に形成され、その四隅にボルト孔14が穿設されている。
それらの各板厚は、フランジ部6が最も厚く、中間平板部5,平板部4は図1(A)に示す如く、フランジ部6に比べてその半分以下の厚みである。そして、ボトムプレート2の厚みは、平板部4の厚みのさらに半分以下である。
また、図2に示す如く、平板部4,中間平板部5,フランジ部6には、夫々オイル孔9が穿設されている。さらに、コア3の各プレート1にもオイル孔9と同一位置に図示しないオイル孔が形成されている。
【0019】
コア3の最上端には、図1(A)に示すトッププレート10が配置され、そのトッププレート10に一対の冷却水パイプ8の下端が装着され、全体が炉内で一体にろう付されて熱交換器を完成する。
そして、フランジ部6がそのボルト孔14を介して、図示しないボルトにより図示しないエンジンの平坦面に図示しないシールリングを介して固定される。そして、冷却水11が一方の冷却水パイプからコアの各冷却水流路を介して他方の冷却水パイプに導かれ、オイルが一方のオイル孔9からコアの各オイル流路を介して他方のオイル孔に導かれ、両流体間に熱交換が行なわれる。
【0020】
(作用)
図6(A)(B)において、フランジ部6が図示しないエンジンに装着されると、自動車の走行に基づいて熱交換器は、左右、上下に振動する。その振動により図6(B)の如く、熱交換器は上下方向等に振動する。すると、図6(B)においてボトムプレート2と平板部4と中間平板部5との各接続面に振動に伴う応力が発生する。
従来型熱交換器を示す、図6(C)(D)でも、ボトムプレート2の下端に平板部4aが配置され、その下端にフランジ部6が配置されており、図6(B)と同様の振動が生じる。そのため、従来の熱交換器では図6(D)に示す振動応力が上下方向に加わると、ボトムプレート2と平板部4aとの付根の丸印の位置に次第に亀裂が生じ、オイル漏れが生じることがあった。
【0021】
しかしながら、本発明では図6(B)の如く、ボトムプレート2の下面側に平板部4と中間平板部5とフランジ部6が夫々配置され、中間平板部5の各コーナー部には円弧部5aが形成されている。そして、それら平板部4と中間平板部5とフランジ部6の断面外周に凹部7が存在しているため、振動応力が生じても、その応力を中間平板部5の円弧部5aから、中間平板部5全体に分散する。
【0022】
(変形例)
図2において、平板部4と中間平板部5とフランジ部6との接続関係は、上記実施例では、図5(A)の如く、夫々3つの板材で形成していた。
これに代えて、図5(B)の如く、フランジ部6の上端面に一体に中間平板部5を形成し、その中間平板部5上に平板部4を配置してもよい。
さらには、図5(C)の如く、平板部4の下面側に中間平板部5を一体に形成し、その中間平板部5をフランジ部6に接続してもよい。
さらには、図5(D)の如く、平板部4の下面とフランジ部6の上面とに夫々中間平板部5を一体に形成し、それらを接続してもよい。
【実施例2】
【0023】
次に、図4は本発明の積層型熱交換器の第2実施例を示し、その正面図(A)及び平面図(B)である。
この例は、複数のプレートからなるコア3及びボトムプレート2並びにトッププレート10が円形に形成されると共に、そのボトムプレート2に整合して平板部4が配置される。さらに、平板部4よりも平面が小なる円形の中間平板部5が配置され、その中間平板部5の下面側に、それより大なる異形のフランジ部6が配置されている。
この例においても、平板部4とフランジ部6との間に挟持された中間平板部5は平板部4の平面よりも小さく形成され、それらの断面外周が、中間平板部5の位置で凹部7を形成する。そのため、熱交換器の振動に基づいて加わる応力を、中間平板部5の全体に分散させて、ボトムプレート2と中間平板部5間に生じる応力集中を防ぎ、振動に基づく亀裂の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0024】
1 プレート
2 ボトムプレート
3 コア
4 平板部
4a 平板部
5 中間平板部
5a 円弧部
6 フランジ部
7 凹部
8 冷却水パイプ
9 オイル孔
10 トッププレート
11 冷却水
12 オイル
13 オイルパイプ
14 ボルト孔
15 オイル流路
16 冷却水流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6