(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】共振発振回路及び非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20230928BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230928BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230928BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/80
H02J7/10 P
(21)【出願番号】P 2019239021
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】三島 大地
(72)【発明者】
【氏名】長岡 真吾
(72)【発明者】
【氏名】上松 武
(72)【発明者】
【氏名】関屋 大雄
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/046452(WO,A1)
【文献】特表2017-521985(JP,A)
【文献】特開2018-93690(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095292(WO,A1)
【文献】特表2004-518314(JP,A)
【文献】特開平10-173437(JP,A)
【文献】特開2014-33516(JP,A)
【文献】Mohammad Mahdi Ahmadi, Maryam Salehi-Sirzar,A Self-Tuned Class-E Power Oscillator,IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,Vol.34, No.5,米国,IEEE,2019年05月,p.4434-4449
【文献】小澤 祐太, 魏 秀欽, 関屋 大雄,負荷非依存E-1級インバータの提案,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.118, No.387,一般社団法人電子情報通信学会,2019年01月16日,p.43-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H02J 50/80
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のLC共振回路と増幅素子を含み、出力電圧の位相を所定の位相差で移相して前記増幅素子に帰還することで発振する第1の発振器と、
前記増幅素子をスイッチング素子として用いかつ前記第1の発振器を帰還回路として用いて、前記出力電圧と同一の周波数でかつ前記出力電圧の位相を前記位相差で移相して前記増幅素子を駆動するゲート信号を発生して前記増幅素子の入力端子に帰還することにより発振する第2の発振器とを備え、
前記位相差は、前記出力電圧が印加される第1のLC共振回路のインダクタンス及び負荷に実質的に依存しない値である、
共振発振回路。
【請求項2】
入力電圧、回路電圧又は外部電圧に基づいて、前記増幅素子を前記ゲート信号によりスイッチング可能な、所定の電圧を発生して前記増幅素子の入力端子に印加する回路をさらに備える、
請求項1記載の共振発振回路。
【請求項3】
前記増幅素子は、スイッチング素子である、
請求項1又は2に記載の共振発振回路。
【請求項4】
前記ゲート信号は、前記スイッチング素子をオン又はオフする2値信号である、
請求項3に記載の共振発振回路。
【請求項5】
前記第1の発振器は、コルピッツ型発振器と、ハートレー型発振器と、反結合型発振器とのうちのいずれかである、
請求項1~4のうちのいずれか1つに記載の共振発振回路。
【請求項6】
前記第2の発振器は、E
-1級発振器と、E級発振器とのうちのいずれかである、
請求項1~5のうちのいずれか1つに記載の共振発振回路。
【請求項7】
前記第1のLC共振回路の前段に設けられ、前記発振されて入力される入力電圧に基づいて、前記共振発振回路の出力電流が一定の電流になるように制御する定電流出力回路をさらに備える、
請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の共振発振回路。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか1つに記載の共振発振回路を備える送電装置と、
受電装置と、
を備える非接触給電システムであって、
前記受電装置は、
前記第1のLC共振回路と結合し、前記第1のLC共振回路からの交流電力を受電する第2のLC共振回路と、
前記第2のLC共振回路で受電された交流電力を直流電圧に整流して所定の負荷に出力する第1の整流回路と、
を備え、
前記位相差は、前記出力電圧が印加される第1及び第2のLC共振回路のインダクタンス及び負荷に実質的に依存しない値である、
非接触給電システム。
【請求項9】
前記受電装置はさらに、
前記第1の整流回路と前記負荷との間に挿入され、前記第1の整流回路からの直流電圧を所定の直流電圧に変換するDC/DCコンバータを備える、
請求項8記載の非接触給電システム。
【請求項10】
前記DC/DCコンバータは、
当該DC/DCコンバータの後段に設けられ、前記変換された直流電圧に基づいて、一定の出力電流を前記負荷に出力する定電流出力回路をさらに備える、
請求項9に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
前記送電装置はさらに、
前記共振発振回路の前段に設けられ、所定の交流電圧を直流電圧に整流して前記共振発振回路に出力する第2の整流回路を備える、
請求項8~10のうちのいずれか1つに記載の非接触給電システム。
【請求項12】
前記受電装置はさらに、
前記受電装置の出力電圧と出力電流のうちの少なくとも1つを制御するために必要な制御情報を検出して無線送信する受電制御部を備え、
前記送電装置はさらに、
前記共振発振回路の前段に設けられ、所定の交流電圧に基づいて出力電圧の波形を整形することにより力率を改善する力率改善回路と、
前記無線送信された制御情報を無線受信して、前記制御情報に基づいて前記力率改善回路の動作を制御する力率改善回路制御部とを備える、請求項8に記載の非接触給電システム。
【請求項13】
前記受電装置はさらに、
前記第1の整流回路と前記負荷との間に挿入され、前記第1の整流回路からの直流電圧を所定の直流電圧に変換するDC/DCコンバータを備える、
請求項12記載の非接触給電システム。
【請求項14】
前記DC/DCコンバータは、
当該DC/DCコンバータの後段に設けられ、前記変換された直流電圧に基づいて、一定の出力電流を前記負荷に出力する定電流出力回路をさらに備える、
請求項13に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振発振回路と、前記共振発振回路を用いた非接触給電システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線搬送車(AGV(Automatic Guided Vehicle))などの移動体はリチウムイオンバッテリーなどの充電池を搭載している。この充電池を充電するときは、AGVを充電ステーションまで移動させた後、AGVに搭載された受電コイルを、充電ステーションの送電コイルに電磁的に結合させて非接触充電システムにおいて非接触充電を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Mohammad Mahdi Ahmadi, et al., "A Self-Tuned Class-E Power Oscillator," IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 34, NO. 5, MAY 2019.
【文献】小澤祐太ほか,「負荷非依存E-1級インバータの提案」,電子情報通信学会研究技術報告,EE2018-45,2019年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記非接触充電システムにおいては、
図9Aに示すように、以下の2つの課題があった。
【0005】
(課題1)送電コイルと受電コイルとの間の位置関係が変化するとインダクタンスが変化し、共振周波数frが変化しスイッチング周波数fswとfrが不一致することにより効率悪化などの悪影響を及ぼす。これにより、スイッチング周波数を共振周波数に一致させるためにはスイッチング素子の駆動回路を制御するための機構が必要となる。また、インダクタンスの変化により充電回路の出力電圧、出力電流等の出力特性が変化するため充電池の充電プロファイルを満たすための回路設計や制御が複雑になる。
(課題2)充電池の残量によって負荷が変動し、その結果、充電回路の出力電圧、出力電流等の出力特性が変動する。これにより、充電池の充電プロファイルを満たすための回路設計や制御が複雑になる。
【0006】
従って、前記2つの課題を解決するための複雑な制御及び制御に伴う機構の追加が必要になり、電力変換効率の低下、体積や重量、コストの増加という問題点があった。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、前記2つの課題を解決するための複雑な制御が不要な非接触給電を行うための共振発振回路と、前記共振発振回路を用いた非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る共振発振回路は、
第1のLC共振回路と増幅素子を含み、出力電圧の位相を所定の位相差で移相して前記増幅素子に帰還することで発振する第1の発振器と、
前記増幅素子をスイッチング素子として用いかつ前記第1の発振器を帰還回路として用いて、前記出力電圧と同一の周波数でかつ前記出力電圧の位相を前記位相差で移相して前記増幅素子を駆動するゲート信号を発生して前記増幅素子の入力端子に帰還することにより発振する第2の発振器とを備え、
前記位相差は、前記出力電圧が印加される第1のLC共振回路のインダクタンス及び負荷に実質的に依存しない値である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明に係る共振発振回路によれば、共振発振回路の出力電圧は負荷及び第1のLC共振回路のインダクタンスに対して依存しないので、前記2つの課題を解決するための複雑な制御が不要な非接触給電を行うための共振発振回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態2に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態3に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態4に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】比較例に係るE
-1級発振器90の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図5のE
-1級発振器90の動作を示す各電圧の波形図である。
【
図7A】実施例1に係る共振発振回路12-1の構成例を示す回路図である。
【
図7B】実施例1の変形例に係る共振発振回路12-1Aの構成例を示す回路図である。
【
図8】
図7Aの共振発振回路12-1の動作を示す各電圧の波形図である。
【
図9A】比較例の発振器を用いたときの動作を示す周波数に対する出力電圧特性を示すグラフである。
【
図9B】
図7Aの共振発振回路12-1を用いたときの動作を示す周波数に対する出力電圧特性を示すグラフである。
【
図10】比較例に係るE
-1級発振器91の構成例を示す回路図である。
【
図11A】
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示す出力電圧Voの波形図である。
【
図11B】
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示すソース電流Isの波形図である。
【
図11C】
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示す帰還電圧Vfの波形図である。
【
図12】実施例2に係る共振発振回路12-2の構成例を示す回路図である。
【
図13】実施例3に係る共振発振回路12-3の構成例を示す回路図である。
【
図14A】
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示す出力電圧Voの波形図である。
【
図14B】
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示すソース電流Isの波形図である。
【
図14C】
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示す帰還電圧Vfの波形図である。
【
図15】実施例4に係る共振発振回路12-4の構成例を示す回路図である。
【
図16】実施例5に係る共振発振回路12-5の構成例を示す回路図である。
【
図17】実施例6に係る共振発振回路12-6の構成例を示す回路図である。
【
図18】変形例1に係る共振発振回路12Aの構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図18の定電流出力回路16の構成例を示す回路図である。
【
図20】変形例2に係るDC/DCコンバータ23の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0012】
(比較例の問題点)
上述のように、課題1を解決するためには、例えば送電装置のスイッチング周波数fswが共振周波数frに一致するように制御し、かつ充電回路の出力電圧、出力電流等の出力特性が変動しないように制御する必要がある。また、課題2を解決するためには、充電回路の出力電圧、出力電流等の出力特性が変動しないように、例えば送電装置の電圧又はデューティ比を制御する必要がある。
【0013】
(比較例のE
-1級発振器)
図5は、非特許文献1に開示された比較例に係るE級発振器90の構成例を示す回路図であり、
図6は
図5のE級発振器90の動作を示す各電圧の波形図である。
【0014】
図5において、E級発振器90は、分圧抵抗R
d1,R
d2、帰還インダクタL
F及び分圧キャパシタC
n1,C
n2からなる直流バイアス回路31Aと、MOS電界効果トランジスタ(以下、MOSトランジスタという。)Q1と、インダクタL
1,L
2と、キャパシタC
1,C
2と、負荷抵抗R
Lとを備えて構成される。
【0015】
図5のE級発振器90において、電源電圧V
DDはインダクタL
1を介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加されるとともに、分圧抵抗R
d1,R
d2により分圧された直流バイアス電圧がMOSトランジスタQ1のゲートに印加される。負荷抵抗Roの両端の出力電圧Voは分圧キャパシタC
n1,C
n2により分圧された後、帰還インダクタL
Fを介してゲート信号としてMOSトランジスタQ1のゲートに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される出力ソース電圧VsはキャパシタC
1,C
2及びインダクタL
2を介して出力電圧Voとして負荷抵抗R
Lに出力される。ここで、MOSトランジスタQ1のゲートに印加されるゲート電圧Vfは、
図6に示すように、出力電圧Voに対して140度だけ移相された電圧となる。
【0016】
以上のように構成された非特許文献1に係るE級発振器90では、出力電圧Voの波形に対してゲート電圧Vfの位相が140度しかシフトできないため、課題2を解決することができないため、共振回路のインダクタンス及び負荷変動に対応するための制御が必要になるという問題点があった。
【0017】
そこで、本発明に係る実施形態では、課題1及び2をともに解決することができる共振発振回路及び、前記共振発振回路を用いた非接触給電システムについて以下に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
【0019】
図1において、実施形態1に係る非接触給電システムは、送電装置100と、受電装置200とを備えて構成される。ここで、送電装置100は、力率改善回路(以下、PFC回路という。)11と、PFC回路11の動作を制御するPFC制御部10と、送電LC共振回路13を有する共振発振回路12と、アンテナ15Aを有する無線通信回路15とを備えて構成される。一方、受電装置200は、受電LC共振回路21と、整流回路22と、DC/DCコンバータ23と、負荷24と、DC/DCコンバータ23等の動作を制御する受電制御部20と、アンテナ25Aを有する無線通信回路25とを備えて構成される。ここで、送電装置100と受電装置200とは例えば充電などの電源供給のために互いに近傍に位置する。これにより、送電LC共振回路13と受電LC共振回路21とは例えば電磁的に結合し、また、無線通信回路15と無線通信回路25とはそれぞれアンテナ15A,25Aを用いて無線通信を行うことで必要
な情報データを送受信する。
【0020】
図1の送電装置100において、PFC回路11は、例えば商用交流電源等の交流電源からの交流電圧である入力電圧Vinを直流電圧に変換しかつ所定の力率改善方法を用いて入力電圧に対して力率改善処理を行って出力電圧を入力電圧V
Iとして共振発振回路12に出力する。PFC制御部10は、負荷24への出力電圧及び出力電流等の負荷情報を、受電制御部20から無線通信回路25,15を介して受信して、当該負荷情報に基づいて、PFC回路11を、前記力率改善処理を行うように制御する。また、共振発振回路12は、例えば
図7Aの共振発振回路12-1であってインバータ回路として動作し、送電LC共振回路13を用いて、入力電圧V
I(もしくは、外部電圧又は電源電圧V
DDであってもよい)に基づいて所定の共振周波数f
rで共振して当該共振周波数f
rを有する交流電圧を含む交流電力を発生して、送電LC共振回路13に結合された受電LC共振回路21に送電する。
【0021】
図1の受電装置200において、受電LC共振回路21は、送電LC共振回路13からの交流電力を受電して、当該交流電力の交流電圧を整流回路22に出力する。整流回路22は入力される交流電圧を直流電圧に整流してDC/DCコンバータ23に出力する。DC/DCコンバータ23は、受電制御部20の制御のもとで、入力される直流電圧を所定電圧の直流電圧に変換した後、負荷24に出力する。受電制御部20は、負荷24への出力電圧及び出力電流を検出してそれらの情報を含む負荷情報を、無線通信回路25,15を介してPFC制御部10に送信する。受電制御部20はまた、負荷情報に基づいて、例えば所定のゲート信号を発生してDC/DCコンバータ23に含まれるインバータ回路を制御することで、所定の負荷電圧となるようにDC/DCコンバータ23を制御する。
【0022】
なお、整流回路22は、例えば、半波整流回路、両波整流回路、フルブリッジ整流回路、ハーフアクティブ整流回路、倍電圧整流回路、又は倍電流整流回路などの整流回路であってもよい。
【0023】
図7Aは実施例1に係る共振発振回路12-1の構成例を示す回路図であり、
図8は
図7Aの共振発振回路12-1の動作を示す各電圧の波形図である。
図7Aの共振発振回路12-1は例えば
図1の実施形態1に係る非接触給電システムに対して適用可能な共振発振回路である。
【0024】
図7Aにおいて、共振発振回路12-1は、
(1)送電LC共振回路13と増幅素子であるMOSトランジスタQ1を含み、出力電圧の位相を所定の位相差で移相してMOSトランジスタQ1に帰還することで発振するコルピッツ型発振器32と、
(2)MOSトランジスタQ1をスイッチング素子として用いかつ前記コルピッツ型発振器32を帰還回路として用いて、出力電圧Voと同一の周波数でかつ出力電圧Voの位相を前記位相差で移相してMOSトランジスタQ1を駆動するゲート信号Vgsのゲート電圧Vfを発生してMOSトランジスタQ1の入力端子であるゲートに帰還することにより発振するE
-1級発振器33と、
(3)入力電圧V
Iに基づいて、MOSトランジスタQ1をゲート信号Vgsによりスイッチング可能な、所定の直流バイアス電圧を発生してMOSトランジスタQ1のゲートに印加する直流バイアス回路31を備え、
(4)前記位相差は出力電圧Voが印加される負荷抵抗R
Lに実質的に依存しないように設定される値であり、
図7Aの共振発振回路12-1では180度である。なお、負荷非依存を達成するための位相差が180度以外については、詳細後述する。
(5)送電LC共振回路(以下、LC共振回路という。)13は、インダクタLo及びキャパシタC
1の直列回路と、キャパシタC
2との並列回路で構成される。なお、インダクタLoは受電装置200の受電LC共振回路21のインダクタに電磁的に結合される。
【0025】
図7Aにおいて、コルピッツ型発振器32は、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E
-1級発振器33は、MOSトランジスタQ1と、インダクタLo,L
1と、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。
【0026】
ここで、入力電圧VIは分圧抵抗Rd1,Rd2により分圧されてMOSトランジスタQ1のゲートに印加される。入力電圧VIはまた、インダクタLc,L1を介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はインダクタL1及びキャパシタCc並びにLC共振回路13を介して負荷電圧Voとして負荷抵抗RLに出力される。なお、出力電圧Voは、LC共振回路13内のインダクタLoとキャパシタC1との接続点の電圧は、帰還キャパシタCBを介してMOSトランジスタQ1のゲートにゲート信号のゲート電圧Vfとして印加される。
【0027】
ここで、
(1)C1,C2は共振キャパシタである。
(2)CBは検出電圧の直流成分をカットしてゲート電圧Vfを生成するためのカップリングキャパシタである。すなわち、分圧抵抗Rd1,Rd2以外のインピーダンスが直流バイアス回路31に見えてこないようにすることで、ゲート信号のゲート電圧Vfは入力電圧VIと抵抗分圧回路から常に一定の電圧を生成する。
(3)Loは自己インダクタ又は送受電コイル間の励磁インダクタである。
【0028】
図7Aのコルピッツ型発振器32の発振周波数(共振周波数)f
rは次式で表される。
【0029】
【0030】
前記コルピッツ型発振器32においては、キャパシタC
1,C
2の接続点を接地できるので、C
1=C
2と設定することで前記位相差を180度に設定することができる。ただし、前記位相差を180度以外に設定するときは、C
1≠C
2であってもよい。ここで、電磁結合のキャパシタC
2と、接地された共振キャパシタC
1とを含むので、例えば磁界結合方式の非接触給電システム(
図1)において使用することができる。
【0031】
以上のように構成された共振発振回路12-1においては、
図8に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180度位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0032】
これについて、非特許文献2で開示された
図10の比較例に係るE
-1級発振器91の構成例を用いて以下に説明する。
【0033】
図10は比較例に係るインバータ回路を構成するE
-1級発振器91の構成例を示す回路図である。
図10において、入力電圧V
Iは高周波除去用インダクタL
RFC及びインダクタL
1を介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はインダクタL
1、キャパシタC
1、並びに、インダクタL
2及びキャパシタC
2の並列共振フィルタ92を介して、負荷抵抗R
Lに出力される。ここで、負荷抵抗R
Lにかかる出力電圧v
oは振幅Vmとして次式で表される。
【0034】
vo(t)=Vmsin(θ+φ) (1)
【0035】
ここで、φはスイッチング素子であるMOSトランジスタQ1へのゲート電圧vgと、出力電圧voとの位相差である。
【0036】
E-1級発振器91では、並列共振フィルタ92に含まれる容量性成分Cxを考慮する。容量性成分Cxに流れる電流をICxとし、入力電流をIIとし、角周波数をωとすると、次式で表される。
【0037】
ICx=ωCxVm=kV2Vm+kI2II (2)
【0038】
ここで、kI2は次式で表される。
【0039】
【0040】
ここで、qは次式で表される。
【0041】
【0042】
入力電圧VIの電圧源と、チョークコイルのインダクタLRFCの直列接続により、直流入力電流IIが流れる。入力電流IIは負荷抵抗RLによって決まるために、負荷変動により入力電流IIは変化する。式(2)より、電圧振幅Vmと入力電流IIには以下の関係式が成り立つ。
【0043】
【0044】
ここで、出力電圧vo(t)が負荷変動によらず一定となるためには、次式が必要条件となる。
【0045】
【0046】
式(5)より、kI2=0を解くと次式を得る。
【0047】
sinφ=0 (6)
【0048】
図10の回路図では、出力電圧v
oは接地側を正とした場合の符号の定義となっているために、出力電圧v
oを反転させて接地側を負として定義している本実施形態において、180度の位相差の場合に負荷に対して依存しない電気的特性を得ることになる。
【0049】
図11Aは
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示す出力電圧Voの波形図であり、
図11Bは
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示すソース電流Isの波形図であり、
図11Cは
図7Aの共振発振回路12-1のシミュレーション結果を示す帰還電圧Vfの波形図である。
【0050】
図11A~
図11Cから明らかなように、共振発振回路12-1の出力電圧Voは負荷抵抗R
Lにかかわらず、変動がないことがわかる。すなわち、
図9Bに示すように、インダクタンス及び負荷抵抗R
Lが変動しても(軽負荷、又は重負荷にかかわらず)出力電圧Voの動作点は変動しない。
【0051】
図7Bは実施例1の変形例に係る共振発振回路12-1Aの構成例を示す回路図である。
図7Aでは、入力電圧V
Iのみを用いているが、
図7Bに示すように、電源電圧V
DDと入力電圧V
Iを用いてもよい。この変形例の要旨については、後述する実施例2~6においても適用可能である。
図7Bの共振発振回路12-1Aは、
図7Aの共振発振回路12-1に比較して以下の点が異なる。
(1)直流バイアス回路
31を備えず、電源電圧V
DD(外部電圧等であってもよい)はMOSトランジスタQ1のゲートに印加される。なお、MOSトランジスタQ1を駆動するゲート信号Vgsのゲート電圧Vfは、インダクタLoとキャパシタC
1との接続点からMOSトランジスタQ1の入力端子であるゲートに帰還される。
(2)入力電圧V
IはインダクタLc,L
1を介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。
【0052】
以上説明したように、実施形態1及び変形例によれば、共振発振回路12を、コルピッツ型発振器32と、E-1級発振器33と、直流バイアス回路31(実施形態1に限る)とを備えて構成することで、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷抵抗RLに関わらず、一定の出力電圧Voを得ることができ、インダクタンスの変化による共振周波数frの変化にスイッチング周波数fswが制御不要で各周波数fr/fsw
を一定で固定することができる。これにより、上記の課題1及び2を解決することができる。
【0053】
また、負荷抵抗RLの変動にかかわらず、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)又はゼロ電流スイッチング(ZCS)を達成でき、高効率化が可能となる。
【0054】
さらに、例えば
図7Aの共振発振回路12
-1を非接触給電システムに適用する場合、負荷電流及び負荷電圧の負荷情報を受電装置200から送電装置100に送信する必要がないため、共振周波数f
rに合わせて送電装置100のPFC回路11内のスイッチング周波数f
swを制御する必要がなくなり、制御負荷や装置回路の体積を大幅に削減できる。従って、実施形態1において、送電装置100を制御するために用いていた送受電間の無線通信回路15,25、並びに受電装置200のDC/DCコンバータ23も不要としてもよい。
【0055】
また、例えば
図7Aの共振発振回路12
-1等の共振発振回路を非接触給電システムに適用する場合、上記の負荷非依存の位相差は、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス、受電LC共振回路21のインダクタンス及び負荷抵抗R
Lに依存しない値に設定される(これについては、すべての実施形態1~4及び変形例に対して適用される
)。これにより、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス、受電LC共振回路21のインダクタンス及び負荷抵抗R
Lに関わらず、一定の出力電圧Voを得ることができ、インダクタンスの変化による共振周波数f
rの変化にスイッチング周波数fswが制御不要で各周波数f
r/f
swを一定で固定することができる。これにより、上記の課題1及び2を解決することができる。
【0056】
次いで、
図1の実施形態1に係る非接触給電システムの他の実施形態である実施形態2~4について以下に説明する。
【0057】
(実施形態2)
図2は実施形態2に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
図2の実施形態2に係る非接触給電システムは、
図1の実施形態1に係る非接触給電システムに比較して以下の点が異なる。
(1)受電装置200に代えて受電装置200Aを備える。
(2)受電装置200Aは受電装置200に比較して、DC/DCコンバータ23を備えない。従って、整流回路22からの直流電圧は負荷24に出力される。また、受電制御部20はDC/DCコンバータ23を制御する必要がなくなる。
【0058】
以上のように構成された実施形態2に係る非接触給電システムは、上記の相違点を除き、実施形態1に係る非接触給電システムと同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施形態3)
図3は実施形態3に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
図3の実施形態3に係る非接触給電システムは、
図1の実施形態1に係る非接触給電システムに比較して以下の点が異なる。
(1)送電装置100に代えて送電装置100Aを備える。
(2)送電装置100Aは送電装置100に比較して、PFC回路11に代えて整流回路14を備え、PFC制御部10及び無線通信回路15を備えない。整流回路14は交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流して共振発振回路12に出力する。
(3)受電装置200に代えて受電装置200Bを備える。
(4)受電装置200Bは受電装置200に比較して、無線通信回路25を備えない。ここで、受電制御部20は負荷24への負荷情報に基づいて、DC/DCコンバータ23の動作のみを制御する。
【0060】
以上のように構成された実施形態3に係る非接触給電システムは、上記の相違点を除き、実施形態1に係る非接触給電システムと同様の作用効果を有する。
【0061】
(実施形態4)
図4は実施形態4に係る非接触給電システムの構成例を示すブロック図である。
図4の実施形態4に係る非接触給電システムは、
図1の実施形態1に係る非接触給電システムに比較して以下の点が異なる。
(1)送電装置100に代えて実施形態3と同様の送電装置100Aを備える。
(2)受電装置200に代えて受電装置200Cを備える。
(3)受電装置200Cは受電装置200に比較して、DC/DCコンバータ23、受電制御部20及び無線通信回路25を備えない。従って、整流回路22からの直流電圧は負荷24に出力される。
【0062】
以上のように構成された実施形態4に係る非接触給電システムは、上記の相違点を除き、実施形態1に係る非接触給電システムと同様の作用効果を有する。
【0063】
次いで、実施形態1~4の共振発振回路12に適用可能な、実施例1とは別の実施例2~6に係る共振発振回路12-2~12-6について以下に説明する。
【0064】
(実施例2)
図12は実施例2に係る共振発振回路12-2の構成例を示す回路図である。
図12の実施例2に係る共振発振回路12-2は、
図7Aの実施例1に係る共振発振回路12-1に比較して以下の点が異なる。
(1)コルピッツ型発振器32に代えてハートレー型発振器32Aを備える。以下、当該相違点について詳述する。
【0065】
図12において、ハートレー型発振器32Aは、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E
-1級発振器33は、MOSトランジスタQ1と、インダクタLc,L
1aと、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。
【0066】
ここで、入力電圧VIはインダクタLc,L1aを介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。LC共振回路13は、キャパシタC1及びインダクタL1の直列回路と、インダクタLoとの並列回路で構成される。ここで、キャパシタC1及びインダクタL1の接続点はDCカット用カップリングキャパシタCBを介してMOSトランジスタQ1のゲートに接続される。
【0067】
ハートレー型発振器32Aもコルピッツ型発振器32と同様に、LC共振回路13とMOSトランジスタQ1を含み、出力電圧の位相を反転してMOSトランジスタQ1に帰還することで発振する。
図12のハートレー型発振器32Aの発振周波数(共振周波数)f
rは次式で表される。
【0068】
【0069】
前記ハートレー型発振器32Aにおいては、インダクタLo,L1の接続点を接地できるので、Lo=L1と設定することで前記位相差を180度に設定することができる。前記位相差を180度以外に設定するときは、Lo≠L1であってもよい。ここで、電界結合のキャパシタC1と、接地された共振インダクタL1とを含むので、例えば電界結合方式の非接触給電システムにおいて使用することができる。
【0070】
以上のように構成された共振発振回路12-2においては、
図12に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180度で位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0071】
(実施例3)
図13は実施例3に係る共振発振回路12-3の構成例を示す回路図である。
図13の実施例3に係る共振発振回路12-3は、
図7Aの実施例1に係る共振発振回路12-1に比較して以下の点が異なる。
(1)コルピッツ型発振器32に代えて反結合型発振器32Bを備える。以下、当該相違点について詳述する。
【0072】
図13において、共振発振回路12-3は、
(1)LC共振回路13と増幅素子であるMOSトランジスタQ1を含み、出力電圧の位相を所定の位相差で移相してMOSトランジスタQ1に帰還することで発振する反結合型発振器32Bと、
(2)MOSトランジスタQ1をスイッチング素子として用いかつ前記反結合型発振器32Bを帰還回路として用いて、出力電圧Voと同一の周波数でかつ出力電圧Voの位相を前記位相差で移相してMOSトランジスタQ1を駆動するゲート信号Vgsのゲート電圧Vfを発生してMOSトランジスタQ1の入力端子であるゲートに帰還することにより発振するE
-1級発振器33と、
(3)入力電圧V
Iに基づいて、MOSトランジスタQ1をゲート信号Vgsによりスイッチング可能な、所定の直流バイアス電圧を発生してMOSトランジスタQ1のゲートに印加する直流バイアス回路31を備え、
(4)前記位相差は出力電圧Voが印加される負荷抵抗R
Lに実質的に依存しないように設定される値であり、
図13の共振発振回路12-3では180度である。
(5)LC共振回路13は、インダクタLo及びキャパシタC
1の直列回路と、インダクタLoに反結合されたインダクタLtとを備えて構成される。ここで、インダクタLo,Ltにより反結合型トランス34を構成する。なお、インダクタLoは受電装置200の受電LC共振回路21のインダクタに電磁的に結合される。
【0073】
図13において、反結合型発振器32Bは、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E
-1級発振器33は、MOSトランジスタQ1と、インダクタLc,L
1と、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。
【0074】
ここで、入力電圧VIは分圧抵抗Rd1,Rd2により分圧されてMOSトランジスタQ1のゲートに印加される。入力電圧VIはまた、インダクタLc,L1を介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はインダクタL1及びキャパシタCc並びにLC共振回路13を介して負荷電圧Voとして負荷抵抗RLに出力される。なお、出力電圧Voは、反結合型トランス34及び帰還キャパシタCBを介してMOSトランジスタQ1のゲートにゲート信号のゲート電圧Vfとして印加される。
【0075】
図14Aは
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示す出力電圧Voの波形図であり、
図14Bは
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示すソース電流Isの波形図であり、
図14Cは
図13の共振発振回路12-3のシミュレーション結果を示す帰還電圧Vfの波形図である。
【0076】
図14A~
図14Cから明らかなように、共振発振回路12-3の出力電圧Voは負荷抵抗R
Lにかかわらず、変動がないことがわかる。すなわち、
図9Bに示すように、インダクタンス及び負荷抵抗R
Lが変動しても(軽負荷、又は重負荷にかかわらず)出力電圧Voの動作点は変動しない。
【0077】
以上のように構成された共振発振回路12-3においては、
図13に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180°位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0078】
(実施例4)
図15は実施例4に係る共振発振回路12-4の構成例を示す回路図である。実施例4に係る共振発振回路12-4は、
図7Aの実施例1に係る共振発振回路12-1に比較して以下の点が異なる。
(1)E
-1級発振器33に代えてE級発振器33Aを備える。すなわち、共振発振回路12-4は、E級発振器33Aと、コルピッツ型発振器32と、直流バイアス回路31とを備えて構成されたことを特徴とする。以下、当該相違点について説明する。
【0079】
図15において、コルピッツ型発振器32は、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E級発振器33Aは、MOSトランジスタQ1と、インダクタLcと、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。ここで、入力電圧V
IはインダクタLcを介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はキャパシタCc及びLC共振回路13を介して負荷抵抗R
Lに出力される。その他の構成は
図7Aと同様である。
【0080】
以上のように構成された共振発振回路12-4においては、
図15に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180°位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0081】
(実施例5)
図16は実施例5に係る共振発振回路12-5の構成例を示す回路図である。実施例5に係る共振発振回路12-5は、
図12の実施例2に係る共振発振回路12-2に比較して以下の点が異なる。
(1)E
-1級発振器33に代えてE級発振器33Aを備える。すなわち、共振発振回路12-5は、E級発振器33Aと、ハートレー型発振器32Aと、直流バイアス回路31とを備えて構成されたことを特徴とする。以下、当該相違点について説明する。
【0082】
図16において、ハートレー型発振器32Aは、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E級発振器33Aは、MOSトランジスタQ1と、インダクタLcと、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。ここで、入力電圧V
IはインダクタLcを介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はキャパシタCc及びLC共振回路13を介して負荷抵抗R
Lに出力される。その他の構成は
図12と同様である。
【0083】
以上のように構成された共振発振回路12-5においては、
図16に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180°位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0084】
(実施例6)
図17は実施例6に係る共振発振回路12-6の構成例を示す回路図である。実施例6に係る共振発振回路12-6は、
図13の実施例3に係る共振発振回路12-3に比較して以下の点が異なる。
(1)E
-1級発振器33に代えてE級発振器33Aを備える。すなわち、共振発振回路12-6は、E級発振器33Aと、反結合型発振器32Bと、直流バイアス回路31とを備えて構成されたことを特徴とする。以下、当該相違点について説明する。
【0085】
図17において、反結合型発振器32Bは、MOSトランジスタQ1と、分圧抵抗R
d2と、帰還キャパシタC
Bと、LC共振回路13とを備える。また、E級発振器33Aは、MOSトランジスタQ1と、インダクタLcと、キャパシタCcと、LC共振回路13とを備える。ここで、入力電圧V
IはインダクタLcを介してMOSトランジスタQ1のドレインに印加される。MOSトランジスタQ1で発生される発振電圧はキャパシタCc及びLC共振回路13を介して負荷抵抗R
Lに出力される。その他の構成は
図13と同様である。
【0086】
以上のように構成された共振発振回路12-6においては、
図17に示すように、共振波形である出力電圧Voを検出し、同一周波数のまま180°位相シフト(移相)して(すなわち反転して)ゲート信号のゲート電圧Vfを生成する。これにより、インダクタLoのインダクタンスが変化することにより共振周波数f
rが変動してもスイッチング周波数が自動的に共振周波数f
rに追従し、LC共振回路13のインダクタLoのインダクタンス及び負荷の変動に対して非依存な出力電圧特性を得ることができる。なお、前記位相差を、詳細後述するように、前記負荷非依存を達成する180度以外の位相差に設定して構成してもよい。
【0087】
(変形例1)
図18は変形例1に係る共振発振回路12Aの構成例を示すブロック図であり、
図19は
図18の定電流出力回路16の構成例を示す回路図である。
図18に示すように、上記の各実施形態に係る共振発振回路12は、送電LC共振回路13の前段に、入力電圧に基づいて、負荷抵抗R
Lの変動にかかわらず一定の出力電流で出力する定電流出力回路16を備えた共振発振回路12Aであってもよい。
【0088】
図19の構成例において、定電流出力回路16は、オペアンプ17と、MOSトランジスタQ2とを備えて構成される。
図19において、例えば共振発振回路12-1からの出力電圧はオペアンプ17の非反転出力端子及び反転入力端子に印加され、オペアンプ17からの出力電圧はMOSトランジスタQ2のゲートに出力される。ここで、オペアンプ17の正電源端子は例えば入力電圧V
Iに接続され、その負電源端子はMOSトランジスタQ2のソースと、抵抗Rgとの間の接続点に接続され、抵抗Rgの他方の端子は接地される。さらに、MOSトランジスタQ2のドレインは負荷抵抗R
Lを介して例えば入力電圧V
Iに接続される。
【0089】
以上のように構成された定電流出力回路16は、公知の定電流回路を構成しており、入力電圧に基づいて、負荷抵抗RLの変動にかかわらず一定の出力電流で出力する。従って、変形例1に係る定電流出力回路16を用いることで、送電LC共振回路13以降の負荷が変動しても、送電LC共振回路13に出力する出力電流を所定の一定値に制御することができる。
【0090】
(変形例2)
図20は変形例2に係るDC/DCコンバータ23の構成例を示すブロック図である。
図20に示すように、DC/DCコンバータ23の後段であって、負荷24との間に、
図19の定電流出力回路16を備えてもよい。従って、変形例2に係る定電流出力回路16を用いることで、負荷24が変動しても、負荷24に出力する出力電流を所定の一定値に制御することができる。
【0091】
(他の変形例1)
以上の実施形態及び変形例においては、2つの発振器を組み合わせて出力電圧Voを反転した信号をゲート信号Vgsとして用いて発振する共振発振回路12等を構成しているが、本発明はこれに限らず、2つの発振器を組み合わせて出力電圧Voを所定の位相差だけ移相した信号をゲート信号Vgsとして用いて発振する共振発振回路12,12-1,12-1A,12-2~12-6(以下、共振発振回路12等という。)を、以下のように構成してもよい。
【0092】
実施形態又は変形例でアナログ回路である共振発振回路12等を構成した後、当該位相差を所定のメモリに保存し、共振波形のゼロクロス点又はdVo/dtとなる動作点を検出することで、インダクタンス及び負荷抵抗RLに依存しないで、ゼロ電圧スイッチング又はゼロ電流スイッチングも可能となる。負荷非依存となる位相差を計算する方法は以下の通りである。
(1)共振発振回路とゲート信号Vgsのデューティ比の条件から出力電圧Vo(又は出力電流Io)の次式を求め、その式において位相差φ及び負荷抵抗RL、もしくは負荷抵抗RLを一義的に決定する項が含まれている。
【0093】
Vo=φ×RL/Cx (7)
【0094】
(2)上記の式(6)において、負荷抵抗RLの値によらず、出力電圧Voが一定となるためには、次式のように、負荷抵抗RLについて偏微分したときの解が0となることが必要条件となる。
【0095】
∂Vo/∂RL=0 (8)
【0096】
上記(7)式及び(8)式から、負荷非依存の位相差φdは次式で求めることができる。
【0097】
φ=φd (9)
【0098】
すなわち、2つの発振器を組み合わせて出力電圧Voを、負荷非依存の位相差だけ移相した信号をゲート信号Vgsとして用いて発振する共振発振回路12等を構成してもよい。
【0099】
(他の変形例2)
送電LC共振回路13及び受電LC共振回路21については、以上の例示のLC共振回路に代えて、少なくとも以下の構成であってもよい。
(1)送電装置100、100Aの送電LC共振回路13は、少なくとも1個のインダクタと、少なくとも1個のキャパシタとを備えて構成されてもよい。すなわち、送電LC共振回路13は、1個の又は複数のインダクタと、1個又は複数個のキャパシタとを備え、これらを直列、並列、直並列に接続して構成されてもよい。
(2)受電装置200、200A,200B,200Cの受電LC共振回路21は、少なくとも1個のインダクタと、少なくとも1個のキャパシタとを備えて構成されてもよい。すなわち、受電LC共振回路21は、1個の又は複数のインダクタと、1個又は複数個のキャパシタとを備え、これらを直列、並列、直並列に接続して構成されてもよい。
【0100】
なお、送電LC共振回路13と受電LC共振回路21との間の結合は、磁界結合に限定されず、電解結合、電磁界結合等の非接触の無線結合であればよい。
【0101】
(実施形態及び変形例の効果)
以上説明したように、本実施形態及び変形例によれば、送電装置のLC共振回路に本発明回路を適用することで、出力特性を制御するための一部分(例えばインバータ回路のスイッチング周波数fswを制御する部分や、受電装置のDC/DCコンバータなど)を削減することが可能であるという特有の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上の実施形態に係る非接触給電システムは、例えばAGVやEVなどの移動体に対する給電システム、並びに、生産ラインのパレットへの給電システムに適用できる。また、送受電間距離が変化しないアプリケーションにおいても本実施形態は有効であり、例えば、ロボットアーム等に使用されるスリップリング(回転体)に代替して使用される非接触給電装置の非接触スリップリングに適用できる。
【0103】
さらに、以上の実施例に係る共振発振回路は、LC共振回路を利用した電源装置等に適用可能であり、製品ばらつきなどでインダクタやコンデンサの値が設計通りになっていなくても、実機で共振周波数を、インダクタ値及び/又はキャパシタ値のばらつきに対応して所定値に合わせることができる。
【符号の説明】
【0104】
10 力率改善回路制御部(PFC制御部)
11 力率改善回路(PFC回路)
12,12A,12-1~12-6,12-1A 共振発振回路
13 送電LC共振回路(LC共振回路)
14 整流回路
15 無線通信回路
15A アンテナ
16 定電流出力回路
17 オペアンプ
20 受電制御部
21 受電LC共振回路(LC共振回路)
22 整流回路
23 DC/DCコンバータ
24 負荷
25 無線通信回路
25A アンテナ
31,31A 直流バイアス回路
32 コルピッツ型発振器
32A ハートレー型発振器
32B 反結合型発振器
33 E-1級発振器
33A E級発振器
34 反結合型トランス
90,91 E-1級発振器
92 並列共振フィルタ
100,100A 送電装置
200,200A,200B,200C 受電装置
C1~C2,Cc,CB,Cn1,Cn2 キャパシタ
L0~L2,Lc,L1a,LF インダクタ
Q1~Q2 MOSトランジスタ
Rd1,Rd2 分圧抵抗
Rg 抵抗
RL 負荷抵抗