(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20230928BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230928BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08L23/10
B32B27/32 Z
C08K5/17
(21)【出願番号】P 2019518950
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017078448
(87)【国際公開番号】W WO2018087077
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2019-04-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】バーンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】サンドホルツァー マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルストレーム シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーデルス ベルト
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】海老原 えい子
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0060543(US,A1)
【文献】特開平3-297642(JP,A)
【文献】国際公開第2013/80143号(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/154866号(WO,A1)
【文献】特表2004-515658(JP,A)
【文献】特表平8-509031(JP,A)
【文献】BASF Plastic Additives Technical Information Irgastab(R) FS 410,2010年9月,p1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン組成物であって、
前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として
(i)25重量%を超える、プロピレンのポリマー(PP)、
前記プロピレンのポリマー(PP)(i)は、
ポリプロピレンマトリックス成分(a1)および
前記ポリプロピレンマトリックス(a1)中に分散したエラストマープロピレンコポリマー成分(a2)
を含むプロピレンの異相コポリマー(A)を含むプロピレンの異相コポリマー(iPP)であり;
前記プロピレンの異相コポリマー(A)が、Mettler TA820示差走査熱量測定法(DSC)を用いて5~10mgの試料に関し、ISO 3146/3部/方法C2に従って、+23~+210℃の温度範囲で10℃/分の走査速度(加熱および冷却)で加熱/冷却/加熱サイクルにより測定して少なくとも145℃の溶融温度(Tm)(DSC)、および少なくとも90℃のVicat軟化温度(Vicat A)(ASTM D1525、方法Aに従って、50℃/h、10N)を有し、
および
(ii)0.2~5重量%の添加剤
を含み;
ここで前記添加剤(ii)
は、(iia)ヒンダードアミン化合物を含むUV安定剤(複数可)および
(iib)
式R1R2NOH(I)で表され、式中R1およびR2が独立して8~30個の炭素原子のアルキル基から選択される長鎖N,N-ジアルキル
ヒドロキシルアミン化合物を含む酸化防止剤、を含有し、
前記UV安定剤の前記ヒンダードアミン化合物は、前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として0.4~0.7重量%の量で含有され、
前記酸化防止剤は、前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として50~500ppmの量で含有されており、
前記ポリプロピレン組成物は、フェノール単位(複数可)を有する添加剤を含まず、
前記ポリプロピレン組成物は
、下記の一方または両方から選択され
る引張強度保持
%を有し:
ISO527-3に従って、200μm単層キャストフィルム試料から機械方向(MD)で測定して、
-
温度120℃で2000時間の熟成時間の後
、80%以上、および
-
温度145℃で1000時間の熟成時間の後
、65%以上;
である、前記ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、1つ以上の2,2,6,6置換ピペリジン部分を含む化合物、または1つ以上の2,2置換ピペラジン部分を含む化合物から選択される化合物である、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、少なくとも2,2,6,6位に置換基を保有する2つより多いピペリジン部分を保有する、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、2000g/mol以上の分子量Mnを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
プロピレンの異相コポリマー(A)が以下のさらなる特性:
-ISO 1133(230℃および2.16kg荷重)に従って測定して0.2~20g/10分のMFR
2、
-ISO 16152に従って測定して3~40重量%の量のキシレン低温可溶性(XCS)画分、
-定量的
13C核磁気共鳴(NMR)分光法により較正した基本帰属の後、定量的フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により測定して0.5~20重量%のコモノマー含有量、
-ISO178に従って測定して少なくとも700MPaの引張係数、および/または
-ISO 1183、圧縮成形したプラーク上で測定して900~910kg/m
3の密度
のうちの1つ以上を、有する、請求項
1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の
ポリプロピレン組成物を含む、物品。
【請求項7】
層要素を含み、ポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む物品であって、
前記
ポリプロピレン組成物は、前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として
(i)25重量%を超える、プロピレンのポリマー(PP)、
前記プロピレンのポリマー(PP)(i)は、
ポリプロピレンマトリックス成分(a1)および
前記ポリプロピレンマトリックス(a1)中に分散したエラストマープロピレンコポリマー成分(a2)
を含むプロピレンの異相コポリマー(A)を含むプロピレンの異相コポリマー(iPP)であり;
前記プロピレンの異相コポリマー(A)が、Mettler TA820示差走査熱量測定法(DSC)を用いて5~10mgの試料に関し、ISO 3146/3部/方法C2に従って、+23~+210℃の温度範囲で10℃/分の走査速度(加熱および冷却)で加熱/冷却/加熱サイクルにより測定して少なくとも145℃の溶融温度(Tm)(DSC)、および少なくとも90℃のVicat軟化温度(Vicat A)(ASTM D1525、方法Aに従って、50℃/h、10N)を有し、
および
(ii)0.2~5重量%の添加剤
を含み;
ここで前記添加剤(ii)
は、
(iia)ヒンダードアミン化合物を含むUV安定剤(複数可)および
(iib)
式R1R2NOH(I)で表され、式中R1およびR2が独立して8~30個の炭素原子のアルキル基から選択される長鎖N,N-ジアルキル
ヒドロキシルアミン化合物を含む酸化防止剤、を含有し、
前記UV安定剤の前記ヒンダードアミン化合物は、前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として0.4~0.7重量%の量で含有され、
前記酸化防止剤は、前記ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として50~500ppmの量で含有されており、
前記ポリプロピレン組成物は、フェノール単位(複数可)を有する添加剤を含まず、
前記ポリプロピレン組成物は
、下記の一方または両方から選択され
る引張強度保持
%を有し:
ISO527-3に従って、200μm単層キャストフィルム試料から機械方向(MD)で測定して、
-
温度120℃で2000時間の熟成時間の後
、80%以上、および
-
温度145℃で1000時間の熟成時間の後
、65%以上;
である、物品。
【請求項8】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、1つ以上の2,2,6,6置換ピペリジン部分を含む化合物、または1つ以上の2,2置換ピペラジン部分を含む化合物から選択される化合物である、
請求項7に記載の物品。
【請求項9】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、少なくとも2,2,6,6位に置換基を保有する2つより多いピペリジン部分を保有する、請求項
7または8に記載の物品。
【請求項10】
UV安定剤(複数可)(iia)の前記ヒンダードアミン化合物が、2000g/mol以上の分子量Mnを有する、請求項
7~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記プロピレンの異相コポリマー(A)が以下のさらなる特性:
-ISO 1133(230℃および2.16kg荷重)に従って測定して0.2~20g/10分のMFR
2、
-ISO 16152に従って測定して3~40重量%の量のキシレン低温可溶性(XCS)画分、
-定量的
13C核磁気共鳴(NMR)分光法により較正した基本帰属の後、定量的フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により測定して0.5~20重量%のコモノマー含有量、
-ISO178に従って測定して少なくとも700MPaの引張係数、および/または
-ISO 1183、圧縮成形したプラーク上で測定して900~910kg/m
3の密度
のうちの1つ以上を、有する、請求項
7~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素を含み、前記層要素が、
- 請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む単層要素、または
- 少なくとも1つの層が請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む多層要素
から選択される、請求項
7~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
- 請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む単層フィルム、または
- 少なくとも1つの層が請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む多層フィルムから選択されたフィルムである、請求項
7~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
2つ以上の層要素を含む多層アセンブリであり、少なくとも1つの要素が、請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素であり、少なくとも1つの層要素が
- 請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む単層要素、または
- 少なくとも1つの層が請求項
7~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む多層要素
から選択される、請求項
7~13のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、物品を製造するためのポリマー組成物の使用、ポリマー組成物を含む物品、好ましくはポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の最終用途、例えば屋外最終用途では、ポリマー物品の機械的特性は、特別な要件を有する。高分子材料は、例えば、いくつかの地理的地域で厳しくなり得るUV光に耐えなければならない。さらに、屋外の最終用途では、温度は、広い範囲内で変化し得る。したがってまた、特に高温での長期間の熱安定性が、しばしば要求される。
【0003】
通常、ポリマー材料、例えばポリプロピレン(PP)ポリマーを使用して製造される物品は、UV安定性および長期間の温度安定性を提供するために添加剤を必要とする。
【0004】
ヒンダードアミン光安定化化合物は、UV光耐性をポリマー材料に提供するのに極めて有効であることが知られている。長期間の温度安定性に達するための、例えば温水パイプにおける一般的なアプローチは、フェノール系酸化防止剤の特別な組み合わせを使用することである。フェノール系酸化防止剤は、非フェノール系酸化防止剤と比較して長期間の温度安定化剤として極めて有効であるが、フェノール系酸化防止剤の使用によって、物品の視覚的外観が変化し得、すなわち、フェノール系酸化防止剤は、しばしば、物品の元の色合いに対して変色効果を有し、これは、元の視覚的外観が維持されるべき特定の最終用途において望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、UV光安定性および長期間の熱安定性が最終製品の本来の視覚的外観を損なうことなく要求される要求の厳しい最終用途のためのポリマー溶液が、絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として
(i)25重量%を超える、好ましくは30~99.8重量%のプロピレンのポリマー(PP)、および
(ii)0.2~5重量%の添加剤
を含み;
ここで添加剤(ii)は、少なくとも(iia)少なくともヒンダードアミン化合物であるUV安定剤(複数可)、および(iib)少なくともジアルキルアミン化合物である酸化防止剤から選択され、添加剤(ii)は、フェノール単位(複数可)を含まない、
ポリプロピレン組成物に関する。
【0007】
「本発明のポリマー組成物の総量(100重量%)に基づいて」は、ポリマー組成物中に存在する成分の量が合計100重量%であることを意味する。
【0008】
本発明のポリプロピレン組成物は、本明細書では、例えば「PP組成物」、「組成物」または「本発明の組成物」とも呼ばれる。「(i)プロピレンのポリマー(PP)」は、本明細書では「PPポリマー」または「PPポリマー(i)」とも呼ばれる。用語「(ii)添加剤」、「(iia)少なくともヒンダードアミン化合物であるUV安定剤(複数可)」、および「(iib)少なくともジアルキルアミン化合物である酸化防止剤」は、上記および特許請求の範囲に特定されるように、本明細書ではそれぞれ、「添加剤(ii)」、「UV安定剤(複数可)(iia)」および「酸化防止剤(iib)」とも呼ばれる。
【0009】
ヒンダードアミン化合物とは、ヒンダードアミン光安定化化合物(HALS化合物)を意味し、当該用語は周知であり、一般に認められている意味を有する。
【0010】
「添加剤(ii)はフェノール単位(複数可)を含まない」という表現は、組成物中に存在するUV安定剤(複数可)(iia)および酸化防止剤(iib)を含む任意の添加化合物がフェノール単位を保有しないことを意味する。
【0011】
好ましくは、添加剤(ii)に加えて、組成物は、フェノール単位を有するいかなる他の成分も含まない。これは、フェノール単位を有する成分が組成物中に、極めて低いが500ppm未満、より好ましくは100ppm未満および最も好ましくは20ppm未満の尚検出可能な量で、汚染物質または副産物として存在し得るに過ぎないことを意味する。
【0012】
PPポリマー(i)が本発明の特定のUV安定剤(複数可)(iia)および特定の酸化防止剤(iib)と組み合わされ、添加剤(複数可)(ii)がポリプロピレン組成物に添加されたフェノール単位を含まない、本発明のポリプロピレン組成物は、驚くほど良好なUV安定性および長期間の熱安定性特性を付与する。予期されないことに、長期間の熱安定性(長期間の温度安定性とも呼ばれる)は、少なくとも、優れた長期間の熱安定性特性を提供するものとして最新技術で考えられているフェノール系酸化防止剤を使用した場合に得られるものに匹敵する。いかなる理論にも束縛されずに、本発明のUV安定剤(複数可)(iia)および特定の抗酸化剤(iib)の本組合せは、予想外に良好な熱安定性および同時にUV安定性を提供する相乗効果を有すると考えられる。長期間の熱安定性は、本明細書では、所与の温度での特定の熟成時間の後の引張強度保持の%として表される。
【0013】
さらに、添加剤の特定の組み合わせを有する本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは、元の視覚的外観に対する効果を全く有さないか、または顕著に低下した効果を有し、すなわち、フェノール系酸化防止剤と比較して、物品の元の色合いに対していかなる着色も引き起こさないか、または最小限の着色しか引き起こさない。元の視覚的外観に対する望ましい非着色効果は、好ましくは、例えば、本発明のポリプロピレン組成物が他のポリマー材料と積層されるか、または押出コーティング用途で使用される用途においても残る。
【0014】
添加剤のPPポリマー(i)との特定の組み合わせによって提供される特性均衡によって、本発明の組成物が、種々の最終用途に、特に屋外最終用途のための物品を製造するのに高度に実現可能なものになる。好ましくは、組成物は、物品が太陽光にさらされ、また高温および/もしくは低温、または顕著な温度変化にさらされ得る屋外使用のための物品において高度に有用である。
【0015】
したがって、本発明はさらに、物品を製造するための、上記または下記または特許請求の範囲に定義する本発明のポリプロピレン組成物の使用を提供する。
【0016】
本発明はさらに、上記または下記または特許請求の範囲に定義する本発明のポリマー組成物を含む物品に関する。
【0017】
好ましい物品は、上記または下記または特許請求の範囲で定義する本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層、すなわち、1つ以上の層(複数可)を含む層要素を含む。
【0018】
本明細書では、「本発明のポリマー組成物を含む(comprising)(または含む(which comprises))少なくとも1つの層を含む(comprising)(または含む(which comprises))本発明の層要素」および「本発明のポリマー組成物を含む(comprising)(または含む(which comprises))本発明の層要素の少なくとも1つの層」という定義を、本明細書では、文脈から明らかなように、本発明の層(複数可)および/または層要素を指すために互換的に使用する。
【0019】
一実施形態では、物品は、上記または下記または特許請求の範囲で定義する本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素である。この実施形態は、本明細書において、本発明の「層要素」または「ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素」とも呼ばれる。
【0020】
好ましくは、層要素は、本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む単層要素または多層要素である。
【0021】
したがって、層要素が単層要素である場合、「少なくとも1つの」層、すなわち単層要素は、本発明の組成物を含む。多層要素の場合、層要素の「少なくとも1つの層」という表現は、前記要素が2つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が本発明のポリマー組成物を含むことを意味する。他の層(複数可)は、異なる層材料(複数可)を含んでもよく、または本発明のポリマー組成物を含んでもよい。多層要素の他の層の材料を変化させてもよく、所望の最終用途に依存して当業者によって選択することができることは明らかである。
【0022】
さらに、本発明は、本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素を含む物品を提供し、好ましくは、層要素は、
- 本発明のポリプロピレン組成物を含む単層要素、または
- 少なくとも1つの層が本発明のポリプロピレン組成物を含む多層要素
から選択される。
【0023】
さらに、本発明は、
- 上記、下記または特許請求の範囲に定義するポリプロピレン組成物を含む単層フィルム、または
- 少なくとも1つの層が上記、下記または特許請求の範囲に定義するポリプロピレン組成物を含む多層フィルム
から選択されるフィルムである物品を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、2つ以上の層要素を含む多層アセンブリであり、少なくとも1つの層要素が本発明によるポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素である物品を提供する。好ましくは、層要素は、
- 上記、下記または特許請求の範囲に定義するポリプロピレン組成物を含む単層要素、または
- 少なくとも1つの層が上記、下記または特許請求の範囲に定義するポリプロピレン組成物を含む多層要素
から選択される。
【0025】
本発明の層要素は、他のポリマー、好ましくは他のポリオレフィン層要素と組み合わせるのに適している。
【0026】
好ましくは、本発明の物品の層要素の前記少なくとも1つの層は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは90~100重量%の本発明のポリマー組成物を含み、好適にはそれからなる。
【0027】
本発明の組成物、PPポリマーおよび物品を、以下に、および特許請求の範囲において、さらなる詳細、好ましい実施形態、範囲および特性と共に記載し、当該好ましい実施形態、範囲および特性は、任意の組み合わせであり得、任意の順序で組み合わせることができる。
【0028】
本発明のポリプロピレン組成物およびその成分
ポリマー組成物の成分および量を、当業者に明らかなように、最終用途に望ましい特性均衡を最適化するように選択することができる。
【0029】
本発明の組成物は、添加剤(ii)として、少なくとも1種以上のUV安定剤(複数可)(iia)および1種以上の酸化防止剤(複数可)(iib)を含む。さらに、本発明の組成物は、UV安定剤(複数可)(iia)および/または酸化防止剤(複数可)(iib)以外のさらなる添加剤(ii)も含むことができる。
【0030】
UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物は、好ましくは、ポリマー組成物の量(100重量%)を基準にして0.1~1.0、好ましくは0.2~1.0、好ましくは0.3~0.8、好ましくは0.4~0.7重量%の量で存在する。
【0031】
UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物は、好ましくは、1つ以上の2,2,6,6置換ピペリジン部分を含む化合物、または1つ以上の2,2置換ピペラジン部分を含む化合物から選択される。好ましくは、ヒンダードアミン化合物(iia)は、少なくとも2つの2,2,6,6置換ピペリジン部分を含む化合物である。好ましくは、ヒンダードアミン化合物は、2,2,6,6置換ピペリジンの2つより多い部分を含む。
【0032】
本明細書において、「2,2,6,6置換」および「2,2置換」は、ピペリジン部分またはそれぞれピペラジン部分が、置換基を少なくとも所与の位置に保有し、またヒンダードアミン光安定化添加剤の分野で周知の他の位置に置換基を含み得ることを意味する。
【0033】
UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物は、好ましくは、少なくとも2,2,6,6位に置換基を保有する1つより多いピペリジン部分を含み、置換基は、1個以上の(C1~C6)アルキル基およびC原子を有する飽和(C5~C6)環状環基から選択される環基から選択され、任意にNおよびOから選択される1個または2個のヘテロ原子を有し;および(C5~C6)芳香環基;好ましくは、置換基を少なくとも2,2,6,6位で保有する1つより多いピペリジン部分であり、ここで置換基は、1つ以上の(C1~C6)アルキル基から、好ましくは1つ以上の(C1~C3)アルキル基から選択される。
【0034】
本発明のUV安定剤(複数可)(iia)の好適な例は、例えば、CAS番号52829-07-9、CAS番号65447-77-0、CAS番号192268-64-7、CAS番号71878-19-8、CAS番号082451-48-7、CAS番号193098-40-7、CAS番号101357-36-2および85631-00-1との組み合わせ製品、CAS番号101544-99-4および84696-71-9との組み合わせ製品を有する。本発明のUV安定剤(複数可)(iia)は、例えば商業的に入手でき、例えばSigma-Aldrich、CibaおよびCytecによって供給される。
【0035】
UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物は、好ましくはポリマーヒンダードアミン化合物である。「ポリマーヒンダードアミン化合物」は、本明細書において、UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物が少なくとも2,2,6,6位に置換基を保有する繰り返し単位を含む2つより多いピペリジン部分を有することを意味する。
【0036】
好ましくは、UV安定剤(複数可)(iia)のヒンダードアミン化合物は、2000g/mol以上、好ましくは2000~7000g/mol、好ましくは2000~5000g/mol、より好ましくは2500~4500g/molの分子量Mnを有する。
【0037】
本発明のUV安定剤(複数可)(iia)の好適な例は、例えば、CAS番号52829-07-9、CAS番号65447-77-0、CAS番号192268-64-7、CAS番号082451-48-7、CAS番号193098-40-7、CAS番号101357-36-2および85631-00-1との組み合わせ製品、CAS番号101544-99-4および84696-71-9との組み合わせ製品を有する。本発明のUV安定剤(複数可)(iia)は、例えば商業的に入手でき、例えばSigma-Aldrich、CibaおよびCytecによって供給される。
【0038】
酸化防止剤(iib)は、好ましくは、ポリマー組成物の量(100重量%)を基準として20~3000、40~2000、40~1000、50~500ppmの量である。
【0039】
抗酸化剤(iib)は、好ましくはジ((C8~C30))アルキルアミン化合物であり、任意にさらなる置換基、より好ましくは式R1R2NOH(I)で表され、式中R1およびR2が独立して8~30個の炭素原子のアルキル基から選択される長鎖N,N-ジアルキルヒドロキシルアミン化合物を保有する。
【0040】
酸化防止剤(iib)は、好ましくはジ((C10~C25)アルキル)ヒドロキシルアミン化合物(I)、好ましくはジ((C15~C22)アルキル)ヒドロキシルアミン化合物(I)である。本発明の組成物はまた、上記式(I)で表される化合物と同一または異なるさらなる酸化防止剤(複数可)(iib)を含んでもよい。本発明の酸化防止剤(iib)の好適な例は、例えば、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン化合物(CAS番号143925-92-2)であるが、これらに限定されない。本発明の酸化防止剤(複数可)(iib)は、例えば商業的に入手でき、例えばSigma-Aldrichによって供給される。
【0041】
プロピレン(PP)のポリマーはまた、プロピレン(PP)の2つ以上の異なるポリマー成分の混合物であってもよい。
【0042】
PPポリマーは、プロピレンのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。
【0043】
好ましくは、PPポリマーは、プロピレンの少なくとも1つのコポリマーである。より好ましくは、プロピレンのコポリマーは、
ポリプロピレンマトリックス成分および
前記ポリプロピレンマトリックス中に分散したエラストマープロピレンコポリマー成分;または異なっているかかるプロピレンの異相コポリマー(iPP)の2つ以上の、例えば2つの混合物
を含み、好ましくはそれからなるプロピレンの異相コポリマー(iPP)から選択される。
【0044】
「プロピレンの異相コポリマー(iPP)」は、本明細書では「PPコポリマー」とも呼ばれる。
【0045】
さらに、前記PPコポリマーは、好ましくは異なっている1つ以上のPPコポリマー成分を含み、好ましくはそれからなり得る。
【0046】
この実施形態において、プロピレンの異相コポリマー(iPP)の本発明の添加剤(ii)との組み合わせは、高度に実現可能な機械的特性、例えば高い剛性にさらに寄与することによって本発明の特性均衡に寄与し、当該特性均衡は、上記または下記に述べる多くのポリプロピレン関連最終用途において極めて望ましい。さらに好ましくは、この実施形態において、本発明の前記ポリマー組成物は、以下の望ましい特性の1つ以上、または好ましくはすべてに寄与する:有利な吸水特性、必要である場合には物品を製造するとき、および最終用途における例えば積層中の機械的安定性(例えばHDTで表される)、ならびに/またはまた好ましくは、CLTE測定によって示される極めて有利な収縮挙動および寸法安定性。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、プロピレンの少なくとも1つのポリマー(PP)(i)としてのプロピレンのコポリマーは、以下
- ポリプロピレンマトリックス成分(a1)および
- 前記ポリプロピレンマトリックス(a1)中に分散したエラストマープロピレンコポリマー成分(a2)
を含み、好ましくはそれからなるプロピレンの異相コポリマー(A)を含むプロピレンの異相コポリマー(iPP)から選択され、
プロピレンの異相コポリマー(A)は、決定方法の下で明細書に記載したように測定して少なくとも145℃の溶融温度(Tm)(DSC)、および少なくとも90℃のVicat軟化温度(Vicat A)(ASTM D1525、方法Aに従って、50℃/h、10N)を有する。
【0048】
ポリマー(PP)(i)は、好ましくは、好ましくはプロピレンの異相コポリマー(A)からなる少なくとも1つのプロピレンの異相コポリマー(iPP)を含む。
【0049】
プロピレンの異相コポリマー(A)は、本明細書では「PPコポリマー(A)」とも呼ばれる。
PPコポリマーは、好ましくはPPコポリマー(A)である。組成物は、好ましくは、1つまたは2つ以上の異なるPPコポリマー(A)を含む。一実施形態では、組成物は、2つ以上のPPコポリマー(A)を含む。別の実施形態では、組成物は、1つのPPコポリマー(A)を含む。
【0050】
「ポリプロピレンマトリックス成分(a1)」は、本明細書では「マトリックス成分(a1)」とも呼ばれる。「エラストマープロピレンコポリマー成分(a2)」は、本明細書では「エラストマー成分(a2)」とも呼ばれる。
【0051】
一般に、「プロピレンの異相コポリマー」(本明細書ではPPコポリマーまたは好ましいPPコポリマー(A)に関連して使用する)は、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンランダムコポリマーマトリックス成分(1)およびプロピレンのエラストマーコポリマー成分(2)を、エチレンおよび/またはC4~C8αオレフィンコモノマーの1つ以上と共に含み、エラストマー(非晶質)コポリマー成分(2)が前記プロピレンホモまたはランダムコポリマーマトリックスポリマー(1)中に(微細に)分散しているプロピレンコポリマーである。
【0052】
周知のように、「コモノマー」は、共重合可能なコモノマー単位を指す。
【0053】
PPコポリマー(または好ましいPPコポリマー(A))のXCS画分は、マトリックス成分中のXCS画分の量が従来的に著しく少ないので、ここではエラストマー成分(または好ましいエラストマー成分(a2))とみなす。例えば、マトリックス成分(または好ましいマトリックス成分(a1))がプロピレンのホモポリマーである場合、プロピレンの異相コポリマーのキシレン低温可溶性(XCS)画分(非晶質画分)の量(重量%)は、本出願において、PPコポリマー(または好ましいPPコポリマー(A))中に存在するエラストマープロピレンコポリマー成分の量としても理解される。
【0054】
プロピレンのコポリマー、好ましくはPPコポリマーは、好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンランダムコポリマーをマトリックス成分としてのエチレンおよび/またはC4~C8アルファオレフィンコモノマーのうちの1つ以上およびプロピレンのエラストマーコポリマー成分と共に、エチレンおよび/またはC4~C8アルファオレフィンコモノマーのうちの1つ以上と共に含み、エラストマー(非晶質)コポリマー成分が前記プロピレンホモまたはランダムコポリマーマトリックスポリマーに分散した、プロピレンコポリマーである。
【0055】
プロピレンのコポリマー、好ましくはPPコポリマーの総コモノマー含有量は、決定方法の下で明細書に記載したように測定して好ましくは0.5~20重量%、好ましくは1.0~20重量%であり、好ましくはコモノマー(複数可)は、エチレンおよび/またはC4~C8アルファオレフィンコモノマー、より好ましくはエチレンから選択される。
【0056】
好ましくは、PPコポリマー、好ましくはPPコポリマー(A)のポリプロピレンマトリックス成分は、プロピレンのホモポリマーである。
【0057】
PPコポリマーは、好ましくはPPコポリマー(A)である。
【0058】
PPコポリマー(A)の溶融温度Tmは、決定方法の下で明細書に記載したように測定して好ましくは158~170℃、好ましくは160~170℃である。
【0059】
PPコポリマー(A)のVicat軟化温度(Vicat A)は、好ましくは少なくとも100、好ましくは100~165、好ましくは110~165、好ましくは110~160℃である。
【0060】
好ましくは、PPコポリマー(A)のポリプロピレンマトリックス(a1)は、プロピレンのホモポリマーである。
【0061】
さらにより好ましくは、プロピレンの異相コポリマー(A)は、以下のさらなる特性の1つ以上を、任意の順序で、好ましくはすべて有する:
- ISO 1133(230℃および2.16kg荷重)に従って測定して0.2~20、好ましくは0.2~15.0、好ましくは0.5~15g/10分のMFR2、
- 決定方法の下で明細書に記載したように測定して3~40重量%、好ましくは5~35重量%の量のキシレン低温可溶性(XCS)画分、
- 決定方法の下で明細書に記載したように測定して0.5~20、好ましくは1.0~20重量%のコモノマー含有量、好ましくはコモノマー(複数可)は、エチレンおよび/またはC4~C8アルファオレフィンコモノマー、より好ましくはエチレンから選択される、
- 決定方法の下で明細書に記載したようにISO178に従って測定して少なくとも700、好ましくは750~2500、好ましくは750~2000MPaの引張係数、および/または
- 決定方法の下で明細書に記載したように測定して900~910kg/m3の密度。
【0062】
ポリプロピレン組成物は、好ましくは、以下のものを含み、好ましくはそれからなり:
(i)25重量%を超える、好ましくは30~98.8重量%、好ましくは30~98.5重量%のプロピレンのポリマー(PP)、
(ii)0.2~5重量%、好ましくは0.5~5重量%の添加剤、
(iii)0~60重量%、好ましくは0~50重量%の、添加剤(ii)とは異なる充填剤(iiia)、顔料(iiib)および難燃剤(iiic)から選択される1種以上の成分、
(iv)0~50重量%の、プロピレン(PP)のポリマー(i)とは異なるさらなるポリマー成分(複数可)、
ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準とする。
【0063】
したがって、本明細書では、充填剤(iiia)、顔料(iiib)および難燃剤(iiic)を、添加剤(ii)として理解せず、任意の成分(iii)として別個に定義する。すなわち、任意の成分(iii)は、添加剤(ii)以外である。成分(iii)としての任意の充填剤(iiia)、顔料(iiib)および/または難燃剤(iiic)の量を、存在する場合、ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)とは独立に計算する。
【0064】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、好ましくは、成分(iii)または(iv)の少なくとも一方または両方を含む。
【0065】
任意の充填剤(iiia)は、存在する場合、好ましくは無機充填剤である。充填剤(iii)の粒径および/またはアスペクト比を、当業者に周知のように変更することができる。好ましくは、充填剤(iii)は、珪灰石、タルクまたはガラス繊維の1つ以上から選択される。かかる充填剤製品は、様々な粒径および/またはアスペクト比を有する市販の製品であり、所望の最終物品および最終用途に依存して当業者によって選択することができる。充填剤(iiia)は、例えば慣用的であり、商業的に入手可能であり得る。充填剤(iiia)の量は、存在する場合、ポリマー組成物の総量(100重量%)を基準として、好ましくは1~30重量%、好ましくは2~25重量%である。
【0066】
任意の顔料(iiib)は、存在する場合、好ましくは白色顔料である。白色顔料は、好ましくはTiO2である。かかる顔料は周知であり、例えば、本明細書ではTiO2とも呼ばれる市販のTiO2顔料として入手可能である。任意の担体媒体、例えば担体ポリマーを、顔料の量に対して計算する。顔料の量は、存在する場合、ポリマー組成物の総量(100重量%)を基準として、好ましくは2~45重量%、好ましくは5~45重量%、好ましくは10~45重量%である。
【0067】
任意の難燃剤(iiic)は、存在する場合、例えば、任意の市販の難燃剤製品、好ましくは無機蛍光体を含む難燃剤であり得る。難燃剤(iiic)の量は、存在する場合、本発明の組成物の量(100重量%)を基準として好ましくは1~20重量%、好ましくは2~15重量%、より好ましくは3~12重量%である。
【0068】
一実施形態では、組成物は、少なくとも充填剤(iiia)を含む。
【0069】
任意選択のさらなるポリマー成分(複数可)(iv)は、好ましくはプラストマー(iva)および/または官能化ポリマー(ivb)であり得、それらは共に周知の意味を有する。
【0070】
任意のプラストマー(iva)は、存在する場合、好ましくはエチレンの少なくとも1つのC3~C10アルファ-オレフィンとのコポリマーである。プラストマー(iva)は、存在する場合、好ましくは以下の特性の1つまたはすべて、好ましくはすべてを有する。
- 860~915、好ましくは860~910kg/m3の密度、
- 0.1~50、好ましくは0.2~40g/10分のMFR2(190℃、2.16kg)、および/または
- アルファ-オレフィンコモノマーは、オクテンである。
【0071】
任意のプラストマー(iva)を、存在する場合、好ましくは、メタロセン触媒を用いて製造し、当該用語は、先行技術において周知の意味を有する。好適なプラストマー(iva)は、例えば商業的に入手可能であり、例えば、Borealisによって供給される商品名QUEO(商標)、またはExxonMobilによって供給されるEngage(商標)、LGによって供給されるLucene、またはMitsuiによって供給されるTafmerの下でのプラストマー製品である。存在する場合、任意のプラストマー(v)の量は、ポリマーPP(i)の量よりも少ない。
【0072】
任意の官能化ポリマー(ivb)は、存在する場合、例えばグラフト化によって官能化されるポリマーである。例えば、極性官能基、例えば無水マレイン酸(MAH)を、ポリオレフィンにグラフトして、その官能化ポリマー(ivb)を形成することができる。接着剤としての官能化ポリマーは、接着剤の分野で周知であり、当業者によって選択することができる。PPポリマー(i)は、任意の官能化ポリマー(ivb)とは異なる。本明細書において、上記、下記または特許請求の範囲に定義する本発明のPPポリマー(i)は、グラフトされた官能性単位を含まない。すなわち、本発明の用語PPポリマー(i)は、重合反応器から得られるもの(反応器で製造したポリマー)であり、重合後に官能基でグラフトされるPPポリマーを除外する。任意の官能化ポリマー(ivb)の量は、存在する場合、本発明の組成物の量(100重量%)を基準として、好ましくは3~30、好ましくは3~20、好ましくは3~18、より好ましくは4~15重量%である。存在する場合、任意の官能化ポリマー(複数可)(ivb)の量は、PPポリマー(i)の量よりも少ない。
【0073】
一実施形態では、組成物は、成分(iii)または(iv)のうちの少なくとも1つ、好適には成分(iii)および成分(iv)の両方、好適には成分(iiia)、成分(iiib)、成分(iva)または成分(ivb)のうちの1つ、2つ以上またはすべてを含む。
【0074】
PPポリマー(i)の量は、任意のプラストマー(iva)および任意の官能化ポリマー(ivb)の量と等しいかまたはそれより高い。任意のプラストマー(iva)および任意の官能化ポリマー(ivb)の両方が存在する場合、PPポリマー(i)の量は、プラストマー(iva)および官能化ポリマー(ivb)を合わせた量よりも高い。
【0075】
本発明の組成物は、UV安定剤(複数可)(iia)および/または酸化防止剤(複数可)(iib)以外の添加剤(ii)も含むことができる。かかる添加剤(ii)は、好ましくは慣用的かつ商業的に入手可能であり、核形成剤、清澄剤、光沢剤、酸スカベンジャー、ならびにスリップ剤、加工助剤などを含むが、これらに限定されない。かかる添加剤は、一般に商業的に入手でき、例えば、Hans Zweifelの”Plastic Additives Handbook”、第5版、2001に記載されている。
【0076】
各添加剤(ii)を、例えば通常の量で使用することができる。請求項1および従属請求項、ならびに上記および下記の説明から明らかなように、UV安定剤(複数可)(iia)、酸化防止剤(iib)に加えて任意のさらなる添加剤を含む添加剤(ii)の総量は、0.2~5重量%であり、すなわち、添加剤(ii)の総量は、ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)の0.2~5重量%である。任意のさらなる添加剤(ii)を含む添加剤(ii)は、独立して定義される充填剤(iiia)、顔料(iiib)および難燃剤(iiic)から選択される1つ以上の成分(複数可)(iii)を含まない。1つ以上の成分(複数可)(iii)の量を、添加剤(ii)の量とは別個に定義し、ポリプロピレン組成物の総量に対して計算する。
【0077】
添加剤(ii)、任意の充填剤(iiia)、任意の顔料(iiib)および/または任意の難燃剤(iiic)、例えば、成分(ii)、(iiia)、(iiib)および/またはそれぞれ(iiic)の任意のマスターバッチのあらゆる任意の担体ポリマーを、担体ポリマーと共に、本発明の組成物の量(100%)に基づいて、それぞれの成分(ii)、(iiia)、(iiib)または(iiic)の量に対して計算する。
【0078】
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に記載するようにISO 1133に従って(230℃、2.16kg負荷で)測定して1.0~25.0、好ましくは2.0~20、好ましくは3~15g/10分のMFR2を有する。ポリプロピレン組成物は、より好ましくは3~10g/10分のMFR2を有する。
【0079】
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に定義するように測定して5~40%、好ましくは5~35%の量のキシレン低温可溶性(XCS)含有量を有する。ポリプロピレン組成物のXCSは、より好ましくは8~30%である。
【0080】
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に記載するように測定して100~165、より好ましくは110~160℃のVicat軟化温度(Vicat A)を有する。ポリプロピレン組成物のVicat Aは、より好ましくは120~160℃である。
【0081】
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に定義するように200μm単層キャストフィルム試料から機械方向(MD)で測定して少なくとも800MPa、好ましくは800~3000MPa、好ましくは850~2700MPaの引張係数を有する。ポリプロピレン組成物の前記引張係数は、好ましくは900~2300MPaである。
【0082】
本発明のポリマー組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に定義するように200μm単層キャストフィルム試料から機械方向(MD)で測定して20~40、好ましくは23~37、好ましくは26~33MPaの引張強度を有する。
【0083】
本発明のポリマー組成物は、好ましくは、任意の順序で一方または両方から選択される%の引張強度保持を有し:
- 2000時間の熟成時間の後、温度120℃で80%以上、および
- 1000時間の熟成時間の後、温度145℃で65%以上;
決定方法の下で以下に定義するように200μm単層キャストフィルム試料から機械方向(MD)で測定してである。
【0084】
本発明のポリマー組成物は、好ましくは、決定方法の下で以下に定義するように注入成形した試料から測定して1000~3000、好ましくは1100~2800、好ましくは1100~2500MPaの引張係数を有する。
【0085】
PPポリマーは、商業的に入手可能な等級であり得、または、例えば文献において知られている従来の触媒系を使用して、例えば従来の重合プロセスおよびプロセス条件によって製造することができる。
【0086】
条件および触媒系を含む1つの実行可能な重合プロセスは、PPコポリマーについて、すなわち、プロピレンの異相コポリマー(iPP)について一般に以下に記載され、当然ながら、ポリプロピレン組成物のプロピレン(A)の好ましい異相コポリマーにも適用される。以下の説明は、ポリプロピレンのホモポリマーまたはランダムコポリマーに同様に適用され得、それによって前記ポリマーを、例えば、第1の反応器(好ましくはループ反応器)に続いて、次いで第2の反応器(好ましくは第1の気相反応器)において、好ましくは以下に記載する条件を使用して、任意の予備重合反応器中で重合させることができることは明らかである。
【0087】
PPコポリマーのポリプロピレンマトリックス成分は、共に周知の意味を有するプロピレンの単一モードまたは多重モードのランダムコポリマーまたはホモポリマーであり得る。プロピレンの多重モードのランダムコポリマーまたはホモポリマーは、本明細書では、それが、例えば、以下の特性のうちの1つまたは2つを有する、異なる少なくとも2つのポリマー画分を有することを意味する:1)重量平均分子量または2)MFR。マトリックス成分としてのプロピレンのランダムコポリマーの場合、コポリマーはまた、3)コモノマー含有量に関して多重モードであり得、任意に上記差異1)および2)のいずれかまたは両方と組み合わせることができる。
【0088】
PPコポリマーのマトリックス成分は、プロピレンのホモポリマーまたはランダムコポリマーであり得る。PPコポリマーのマトリックス成分がプロピレンのホモポリマーであることが好ましい。
【0089】
したがって、PPコポリマー中に存在する上記で定義したすべてのコモノマーがエラストマープロピレンコポリマー成分に由来することが好ましい。
【0090】
PPコポリマーがマトリックス成分およびエラストマー成分からなることが好ましい。PPコポリマーは、任意に、ポリマー分野で周知のようにプレポリマー画分を含んでもよい。かかる場合、プレポリマーの量を、マトリックス成分の量に対して計算する。
【0091】
上記のように、iPPコポリマーは、商業的に入手できる等級であり得るか、または、例えば従来の重合プロセスによって製造することができる。
【0092】
プロピレンの異相コポリマーの重合に関しては、PPコポリマーの個々の成分(マトリックスおよびエラストマー成分)を別々に製造し、ミキサーまたは押出機中で混合することによって機械的にブレンドすることができる。しかしながら、マトリックス成分およびエラストマー成分を含むPPコポリマーを、連続配置の反応器を用い、異なる反応条件で操作して、逐次プロセスで製造することが好ましい。結果として、特定の反応器中で調製した各画分は、それ自体の分子量分布、MFRおよび/またはコモノマー含有量分布を有することができる。
【0093】
本発明によるPPコポリマーを、好ましくは、順次重合プロセスで、すなわち、当該分野で公知の多ステージプロセスで製造し、ここでマトリックス成分を、少なくとも1つのスラリー反応器で、好ましくは少なくともスラリー反応器で、および任意に、かつ好ましくはその後の気相反応器で製造し、その後エラストマー成分を、少なくとも1つ、すなわち1つまたは2つの気相反応器(複数可)(gpr)で、好ましくは1つのgprで製造する。
【0094】
したがって、PPコポリマーを以下のステップを含む逐次重合プロセスで製造することが好ましい。
(a)プロピレン、および任意に少なくとも1種のエチレンおよび/またはC4~C12α-オレフィン、好ましくは唯一のモノマーとしてのプロピレンを、第1の反応器(R1)中で触媒の存在下で重合するステップ、
(b)重合した第1のポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマー画分の反応混合物を触媒と一緒に第2の反応器(R2)中に移すステップ、
(c)第2の反応器(R2)中で、前記第1のポリプロピレンポリマー、プロピレン、および任意に少なくとも1つのエチレンおよび/またはC4~C12α-オレフィン、好ましくは唯一のモノマーとしてのプロピレンの存在下で重合し、それによって第2のポリプロピレン画分を得る際に、好ましくは前記第2のポリプロピレン画分が第2のプロピレンホモポリマーであり、それによって前記第1のポリプロピレン画分および前記第2のポリプロピレン画分がPPコポリマーのマトリックス成分を形成するステップ、
(d)ステップ(c)の重合したマトリックス成分の反応混合物を第3の反応器(R3)中に移すステップ、
(e)第3の反応器(R3)中で、ステップ(c)で得られたマトリックス成分の存在下で、プロピレン、ならびに少なくとも1つのエチレンおよび/またはC4~C12α-オレフィンを重合し、それによってPPコポリマーのエラストマー成分を得、ここでエラストマープロピレンコポリマー成分を前記マトリックス成分中に分散させるステップ。
【0095】
任意に、PPコポリマーのエラストマー成分を2つの反応器中で製造することができ、それによって上記ステップ(e)の後、
(f)ステップ(e)のPP生成物を移し、ここで第1のエラストマープロピレンコポリマー画分を第4の反応器(R4)中に分散させ、ならびに
(g)第4の反応器(R4)中で、ステップ(e)で得られた混合物の存在下で、プロピレンおよび少なくとも1つのエチレンおよび/またはC4~C12α-オレフィンを重合し、それによって第2のエラストマープロピレンコポリマー画分を得、それによって第1のエラストマープロピレンコポリマー画分および第2のエラストマープロピレンコポリマー画分に分散したステップ(c)のマトリックス成分がPPコポリマーを形成する。
【0096】
好ましくは、第2の反応器(R2)と第3の反応器(R3)との間で、モノマーをフラッシュアウトする。
【0097】
用語「逐次重合プロセス」は、PPコポリマーを、直列に連結した少なくとも2つの、例えば3つの反応器中で製造することを示す。したがって、本プロセスは、少なくとも第1の反応器(R1)および第2の反応器(R2)、より好ましくは第1の反応器(R1)、第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)および任意に第4の反応器(R4)を含む。用語「重合反応器」は、主要な重合ステップの1つを示すものとする。したがって、プロセスが4つの重合反応器からなる場合、この定義は、プロセス全体が、例えば、予備重合反応器における予備重合ステップを含むという選択肢を排除しない。用語「からなる」は、主な重合反応器を考慮しての単に閉鎖的な明確な語句である。
任意のプレポリマー画分を、第1のポリプロピレン画分の量中に計数する。
【0098】
第1の反応器(R1)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルクまたはスラリーで操作される任意の連続的な、または単純な撹拌バッチタンク反応器またはループ反応器であり得る。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0099】
第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)および任意の第4の反応器(R4)は、好ましくは気相反応器(GPR)である。かかる気相反応器(GPR)は、任意の機械的に混合された反応器または流動床反応器であり得る。好ましくは、気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/秒のガス速度を有する機械的に攪拌された流動床反応器を含む。したがって、気相反応器は、好ましくは機械的撹拌機を備えた流動床タイプの反応器であることが理解される。
【0100】
したがって、好ましい実施形態では、第1の反応器(R1)は、スラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)であり、一方第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)および任意の第4の反応器(R4)は、気相反応器(GPR)である。したがって、本プロセスのために、少なくとも3つ、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)、第1の気相反応器(GPR-1)、第2の気相反応器(GPR-2)、および任意の直列に連結された第3の気相反応器(GPR-3)を、使用する。予備重合ステップの場合、予備重合反応器を、スラリー反応器(SR)の前に配置する。
【0101】
好ましい多段階プロセスは、例えば特許文献、例えばEP 0 887 379、WO 92/12182 WO 2004/000899、WO 2004/111095、WO 99/24478、WO 99/24479またはWO 00/68315に記載されている、Borealis A/S、Denmark(BORSTAR(登録商標)技術として公知)によって開発された「ループ-気相」プロセスである。
【0102】
さらなる適切なスラリー-気相プロセスは、LyondellBasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0103】
好ましくは、上記で定義したPPコポリマーを製造するための本プロセスにおいて、ステップ(a)の第1の反応器(R1)、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)についての条件は、以下の通りであり得る:
- 温度は、50℃~110℃の範囲内、好ましくは60℃~100℃、より好ましくは68℃~95℃である、
- 圧力は、20bar~80bar、好ましくは40bar~70barの範囲内である、
- 水素を、それ自体公知の方式でモル質量を制御するために添加することができる。
【0104】
その後、ステップ(a)からの反応混合物を、第2の反応器(R2)、すなわち気相反応器(GPR-1)、すなわちステップ(c)に移し、それによってステップ(c)の条件は、好ましくは以下の通りである:
- 温度は、50℃~130℃の範囲内、好ましくは60℃~100℃である、
- 圧力は、5bar~50bar、好ましくは15bar~35barの範囲内である、
- 水素を、それ自体公知の方式でモル質量を制御するために添加することができる。
【0105】
第2の気相反応器(GPR-2)および任意の第3の気相反応器(GPR-3)における条件は、第2の反応器(R2)(=第1の気相反応器(GPR-1)と同様である。
【0106】
滞留時間を、3つの反応器帯域で変化させることができる。
【0107】
PPコポリマーのマトリックス成分の製造方法の一実施形態では、バルク反応器、例えばループ中での滞留時間は、0.1~2.5時間、例えば0.15~1.5時間の範囲であり、気相反応器中での滞留時間は、一般に0.2~6.0時間、例えば0.5~4.0時間である。
【0108】
所望であれば、重合を、公知の方式で超臨界条件下で、第1の反応器(R1)中で、すなわちスラリー反応器(SR)中で、例えばループ反応器(LR)中で、および/または気相反応器(GPR)中で凝縮モードとして行うことができる。
【0109】
好ましくは、当該方法は、チーグラー-ナッタ前駆触媒、外部供与体、および任意に共触媒を含む、以下に詳細に記載する触媒系での予備重合も含む。
【0110】
好ましい実施形態において、予備重合を、液体プロピレン中でのバルクスラリー重合として行い、すなわち、液相は、主にプロピレンを含み、少量の他の反応物および任意に不活性成分がその中に溶解している。
【0111】
予備重合反応を、典型的には、10~60℃、好ましくは15~50℃およびより好ましくは20~45℃の温度で行う。
【0112】
予備重合反応器内の圧力は臨界的ではないが、反応混合物を液相に維持するために十分に高くなければならない。したがって、圧力は、20~100bar、例えば30~70barであってよい。
【0113】
触媒成分を、好ましくはすべて予備重合ステップに導入する。しかし、固体触媒成分(i)および共触媒(ii)を別々に供給することができる場合、共触媒の一部のみを予備重合ステージに導入し、残りの部分を後続の重合ステージに導入することが可能である。また、かかる場合、十分な重合反応がそれにおいて得られる程度に多量の共触媒を予備重合ステージに導入することが必要である。
【0114】
他の成分をまた予備重合ステージに添加することが可能である。したがって、水素を、当該分野で知られているように予備重合ステージ中に添加して、プレポリマーの分子量を制御することができる。さらに、帯電防止添加剤を使用して、粒子が互いに、または反応器の壁に付着するのを防止することができる。
【0115】
予備重合条件および反応パラメーターの正確な制御は、当業者の技能内である。
【0116】
PPコポリマーを最後の重合ステージから除去した後、それを、好ましくは、残留炭化水素をポリマーから除去するためのプロセスステップに供する。かかる方法は、当該分野で周知であり、減圧ステップ、パージステップ、ストリッピングステップ、抽出ステップなどを含むことができる。また、異なるステップの組み合わせも可能である。残留炭化水素の除去の後、PPコポリマーを、好ましくは、当該分野で周知であるように添加剤と混合する。かかる添加剤を、本発明のポリマー組成物の下で以下に記載する。ポリマー粒子を、次いで、当該分野で知られているようにペレットに押し出す。好ましくは、共回転二軸押出機を、押出ステップに使用する。かかる押出機は、例えば、Coperion(Werner & Pfleiderer)およびJapan Steel Worksによって製造される。
【0117】
本発明のPPコポリマーを、好ましくは、任意の好適なチーグラー-ナッタタイプを使用する重合によって製造する。典型的な好適なチーグラー-ナッタタイプの触媒は、必須成分としてMg、TiおよびClを含む立体特異的な固体高収率チーグラー-ナッタ触媒成分である。固体触媒に加えて、共触媒(複数可)ならびに外部供与体(複数可)を、典型的に重合プロセスにおいて使用する。
【0118】
触媒の成分は、粒状担体、例えば無機酸化物、例えばシリカもしくはアルミナ上に担持され得、または通常、ハロゲン化マグネシウムは、固体担体を形成してもよい。触媒成分を外部担体上に担持させず、触媒をエマルジョン凝固法によって、または沈殿法によって調製することも可能である。
【0119】
あるいはまた、本発明のPPコポリマーを、以下に記載する修飾触媒系を用いて製造することができる。
【0120】
より好ましくは、式(I)で表されるビニル化合物を、触媒の修飾に使用する。
CH2=CH-CHR1R2 (I)
式中、R1およびR2は、一緒になって5員環または6員環の飽和、不飽和または芳香環を形成し、任意に置換基を含むか、または独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、それによってR1およびR2が芳香環を形成する場合、-CHR1R2部分の水素原子は存在しない。
【0121】
より好ましくは、ビニル化合物(I)は、以下から選択される:ビニルシクロアルカン、好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)、ビニルシクロペンタン、3-メチル-1-ブテンポリマーおよびビニル-2-メチルシクロヘキサンポリマー。最も好ましくは、ビニル化合物(I)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーである。
【0122】
固体触媒は、通常、電子供与体(内部電子供与体)および任意にアルミニウムも含む。好適な内部電子供与体は、とりわけ、カルボン酸またはジカルボン酸のエステル、例えばフタル酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、シトラコン酸エステル、およびコハク酸エステル、1,3-ジエーテル、または酸素もしくは窒素含有ケイ素化合物である。さらに、供与体の混合物を、使用することができる。
【0123】
共触媒は、典型的には、アルミニウムアルキル化合物を含む。アルミニウムアルキル化合物は、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウムまたはトリ-n-オクチルアルミニウムである。しかし、それはまた、ハロゲン化アルキルアルミニウム、例えばジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムクロリドおよびエチルアルミニウムセスキクロリドであってもよい。
【0124】
重合において使用する好適な外部電子供与体は、当該分野において周知であり、エーテル、ケトン、アミン、アルコール、フェノール、ホスフィンおよびシランを含む。シランタイプの外部供与体は、典型的には、ケイ素を中心原子として有するSi-OCOR、Si-OR、またはSi-NR2結合を含有する有機シラン化合物であり、Rは、1~20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、またはシクロアルキルであり、当該分野で知られている。
【0125】
好適な触媒および触媒中の化合物の例は、とりわけ、WO 87/07620、WO 92/21705、WO 93/11165、WO 93/11166、WO 93/19100、WO 97/36939、WO 98/12234、WO 99/33842、WO 03/000756、WO 03/000757、WO 03/000754、WO 03/000755、WO 2004/029112、EP 2610271、WO 2012/007430、WO 92/19659、WO 92/19653、WO 92/19658、US 4382019、US 4435550、US 4465782、US 4473660、US 4560671、US 5539067、US5618771、EP45975、EP45976、EP45977、WO 95/32994、US 4107414、US 4186107、US 4226963、US 4347160、US 4472524、US 4522930、US 4530912、US 4532313、US 4657882、US 4581342、US 4657882に示される。
【0126】
得られたPPコポリマーを、次いで、添加剤(ii)ならびに1つ以上の任意の成分(iii)および(iv)と一緒に、公知の方式で配合する。配合を、例えば上記のような従来の押出機で行うことができ、得られた溶融混合物を、最終用途に使用する前に製品に製造するか、または好ましくはペレット化する。添加剤または任意の成分の一部または全部を、配合ステップ中に添加してもよい。
【0127】
ポリマー組成物の最終用途
本発明はさらに、ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として
(i)25重量%より多い、好ましくは30~99.8重量%のプロピレンのポリマー(PP)、および
(ii)0.2~5重量%の添加剤
を含むポリマー組成物を含む物品を製造するための、上記または下記で定義するポリマー組成物の使用を対象とし、
ここで添加剤(ii)は、少なくとも(iia)ヒンダードアミン化合物を含むUV安定剤(複数可)、および(iib)ジアルキルアミン化合物を含む酸化防止剤から選択され、添加剤(ii)は、フェノール単位(複数可)を含まない。
【0128】
本発明はまた、ポリマー組成物を含む物品を提供し、それは、
ポリプロピレン組成物の総量(100重量%)を基準として
(i)25重量%より多い、好ましくは30~99.8重量%のプロピレンのポリマー(PP)、および
(ii)0.2~5重量%の添加剤
を含み、
ここで添加剤(ii)は、少なくとも(iia)ヒンダードアミン化合物を含むUV安定剤(複数可)、および(iib)ジアルキルアミン化合物を含む酸化防止剤から選択され、添加剤(ii)は、フェノール単位(複数可)を含まない。
【0129】
物品は、本ポリマー組成物の特性が例えば望ましいかまたは実行可能である任意の物品であり得る。かかる物品の非限定的な例として、例えば押し出した物品または成形した物品またはそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、成形した物品は、包装用(箱、ケース、容器、ビン等を含む)、家庭用途用、車両の部品用、建設用および任意のタイプの電子デバイス用であり得る。押し出した物品は、例えば、任意の目的のための種々のタイプのフィルム、例えばプラスチックバッグまたはパッケージ、例えばラッパー、収縮フィルムなど;組成物、パイプなどを含む任意のタイプの電子デバイスであり得る。成形した物品および押し出した物品の組み合わせは、例えば、押し出したラベルを含む成形した容器またはビンである。
【0130】
好ましくは、前記物品は、好適には、物品が太陽光および/または高温もしくは顕著な温度差に曝される条件中での屋外での使用のためのものである。好ましい物品の1つは、本発明のポリマー組成物を含む、好ましくはそれからなる1つ以上の層(複数可)を含む電子デバイスである。
【0131】
物品は、好ましくは、上記または下記または特許請求の範囲に定義する本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素を含む。
【0132】
層要素は、本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む単層または多層要素であり得る。単層要素を、押出、例えばキャストフィルムまたはインフレーションフィルム押出によって製造することができる。多層要素の層を、押出によって、例えば同時押出によって、積層によって、または押出および積層の組み合わせによって製造することができる。押出および積層プロセスは、当該分野で周知である。
【0133】
さらに、物品は、1つの層要素または2つ以上の層要素を含むことができる。2つ以上の層要素の場合、層要素のうちの少なくとも1つは、上記または下記または特許請求の範囲で定義する本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む。
【0134】
一実施形態では、物品は、上記または下記または特許請求の範囲で定義する本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素を含む。
【0135】
さらに、本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素は、好ましくは
- 本発明のポリプロピレン組成物を含む単層要素、または
- 少なくとも1つの層が本発明のポリプロピレン組成物を含む多層要素
から選択される。
【0136】
好ましくは、本発明の物品の層要素の前記少なくとも1つの層は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは90~100重量%の本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる。
【0137】
好ましくは、本発明の物品の単層要素は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは90~100重量%の本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる。
【0138】
また好ましくは、本発明の物品の多層要素は、少なくとも35、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも60~100重量%、好ましくは少なくとも60~100重量%、好ましくは少なくとも70~100重量%の本発明のポリマー組成物を含む。
【0139】
この実施形態では、物品の層要素は、好ましくは様々な最終用途、例えば包装用途のためのフィルムであり、これらに限定されない。本発明において、用語「フィルム」は、例えば熱成形のためのより厚いシート構造も包含する。
【0140】
この実施形態において、本発明の物品の層要素は、好ましくは、上記または下記または特許請求の範囲に定義する
-本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる単層フィルム、または
- 少なくとも1つの層が本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれから成る多層フィルム
から選択されるフィルムである。
【0141】
単層フィルムを、押出、例えばキャストまたは中空成形押出によって製造することができる。多層フィルムの場合、フィルムを、押出、例えば同時押出によって、または積層、好ましくは同時押出によって製造することができる。
【0142】
さらなる好ましい実施形態では、1つ以上の層要素を含む物品、好ましくは物品は、2つ以上の層要素を含むアセンブリであり、少なくとも1つの層要素は、以下である。
上記または下記または特許請求の範囲において定義する本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる、少なくとも1つの層を含む層要素、好ましくは、少なくとも1つの層要素は、以下から選択される。
- 上記もしくは下記もしくは特許請求の範囲に定義する本発明のポリプロピレン組成物を含み、好ましくはそれからなる単層要素;または
- 本発明の上記もしくは下記もしくは特許請求の範囲に定義する、少なくとも1つの層が本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる多層要素。
【0143】
好ましいアセンブリは、2つ以上の層要素を含む電子デバイスであり、少なくとも1つの層要素は、以下である。
上記または下記または特許請求の範囲において定義する本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる、少なくとも1つの層を含む層要素、好ましくは、少なくとも1つの層要素は、以下から選択される。
- 上記もしくは下記もしくは特許請求の範囲に定義する本発明のポリプロピレン組成物を含み、好ましくはそれからなる単層要素;または
- 本発明の上記もしくは下記もしくは特許請求の範囲に定義する、少なくとも1つの層が本発明のポリマー組成物を含み、好ましくはそれからなる、多層要素。かかる物品、好ましくはアセンブリ、より好ましくは電子デバイスは、好ましくは、それが太陽光および/または高温変化に曝される最終使用用途である。
【0144】
少なくとも1つの層要素が本発明のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む層要素である、2つ以上の層要素を有する物品の場合、任意の層要素またはその層の一部を、当該分野で周知のように、所望の最終用途に依存して、押出、例えば同時押出、または積層によって製造することができる。
【0145】
本発明はさらに、本発明のアセンブリを製造する方法を提供し、当該方法は、以下のステップを含む:
- 層要素(LE)およびさらなる層要素(複数可)をアセンブリに組み立てるステップ;
- アセンブリの要素を高温で積層して、要素を一緒に接着するステップ;および
- 得られたアセンブリを回収するステップ。
【0146】
層要素を、組み立てステップに別個に設けることができる。または、あるいはまた、層要素の一部または2つの層要素の層の一部を、組み立てステップに提供する前に既に一緒に接着し、すなわち一体化することができる。
【0147】
層要素の厚さ、および多層要素の場合において要素の個々の層の厚さを、当業者には明らかなように、最終用途に依存して変化させることができる。例としてのみ、本発明の層要素の厚さは、例えば0.02~5mm、好ましくは0.05~3mmであり得る。さらに、例としてのみ、層要素の少なくとも1つの層の厚さは、5.0~400μmであり得る。
【0148】
決定方法
メルトフローレート:メルトフローレート(MFR)を、ISO 1133に従って決定し、g/10分で示す。MFRは、ポリマーの流動性、およびしたがって加工性の指標である。メルトフローレートが高くなるに伴って、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2を、230℃の温度および2.16kgの荷重で測定する。ポリエチレンのMFR2を、190℃の温度および2.16kgの荷重で測定する。
【0149】
密度:ISO 1183、圧縮成形したプラーク上で測定した
コモノマー含有量:コモノマー含有量を、当該分野で周知の方法で定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法により較正した基本帰属の後、定量的フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により決定した。薄膜を、100~500マイクロメートルの厚さに押圧し、スペクトルを透過モードで記録する。
【0150】
特に、ポリプロピレン-コ-エチレンコポリマーのエチレン含有量を、720~722および730~733cm-1で見出される定量的バンドの基線補正ピーク面積を用いて決定する。特に、ポリプロピレンコポリマーのブテンまたはヘキセン含有量を、1377~1379cm-1で見出される定量的バンドの基線補正ピーク面積を用いて決定する。定量的な結果が、膜厚を参照することにより得られる。
【0151】
コモノマー含有量は、本明細書では、混合規則(式2)に従うと仮定される。
Cb=w1・C1+w2・C2 (式2)
式中、Cは、重量%でのコモノマーの含有量であり、wは、混合物中の成分の重量分率であり、下付き文字b、1および2は、それぞれ混合物全体、成分1および成分2を指す。
【0152】
当業者には周知のように、二元コポリマー中の重量基準でのコモノマー含有量を、以下の式を使用することによってモル基準のコモノマー含有量に換算することができる。
【数1】
式中、c
mは、コポリマー中のコモノマー単位のモル分率であり、c
wは、コポリマー中のコモノマー単位の重量分率であり、MW
cは、コモノマー(例えばエチレン)の分子量であり、MW
mは、主モノマー(すなわちプロピレン)の分子量である。
【0153】
溶融温度(T
m
)および融解の熱(H
f
):Mettler TA820示差走査熱量測定法(DSC)を用いて5~10mgの試料に関して測定した。DSCを、ISO 3146/3部/方法C2に従って、+23~+210℃の温度範囲で10℃/分の走査速度(加熱および冷却)で加熱/冷却/加熱サイクルで実施する。溶融温度および融解の熱(Hf)を、第2の加熱ステップから決定する。溶融温度を、吸熱のピークとして採用した。
【0154】
キシレン低温可溶性(XCS):キシレン低温可溶性画分の量を、ISO 16152に従って決定した。冷却後に25℃で溶解したままであるポリマーの量を、キシレン可溶性ポリマーの量として示す。
【0155】
キシレン可溶性ポリマーの含有量は、本明細書で混合規則(式4)に従うと仮定される。
XSb=w1・XS1+w2・XS2 (式4)
式中、XCSは、重量%におけるキシレン可溶性ポリマーの含有量であり、wは、混合物中の成分の重量分率であり、下付き文字b、1および2は、それぞれ混合物全体、成分1および成分2を指す。
【0156】
Vicat軟化温度:ASTM D 1525方法A(50℃/h、10N)に従って測定した。
【0157】
引張係数;降伏点引張応力および破断点引張ひずみ:
射出成形した被検査物:EN ISO 1873-2(ドッグボーン形状、4mmの厚さ)に記載されているように調製し、射出成形した試料被検査物についてISO 527-2(クロスヘッド速度=1mm/分;23℃)に従って測定する。
【0158】
単層フィルム試料:以下に特定する「フィルム調製」の下で以下で調製したように調製し、ISO 527-3に従い、以下に示す条件を使用して測定する。
【0159】
単層フィルム調製:200μmのキャストフィルムを、直径30mmのPPスクリュー、0.5mmのダイギャップを有する200mmのダイを備えた3つの加熱帯域を有するPlastic Maschinenbau押出機上で調製した。溶融温度250℃および冷却ロール温度60℃を、用いた。
【0160】
フィルム試料(200μm単層):最初の試験の前に、フィルム試料を、23℃/50% RHで96時間の期間にわたって保存しなければならない。試験片を、フィルムカッターで切断し、したがって端部が平滑であり、刻み目がなく、正確な幅を有するようにする。試験被検査物の形態は、幅15mmおよび長さ150mm以上のストリップである。被検査物を、機械方向に切断した。
【0161】
試験条件フィルム引張試験:試験を、ISO527-3に従って、以下の試験条件設定を用いて行う。
試験条件:23℃/50% RH
予荷重:約0.2N
予荷重の速度:2mm/分
E係数の速度:1mm/分
試験の速度:200mm/分
クランプ距離:100mm
E係数試験の開始:0,05%
E係数試験の終了:0,25%
【0162】
射出成形被検査物のオーブン熟成および引張強度保持の決定
長期間の熱安定性(引張強度の保持)を決定するために、射出成形した被検査物を、オーブン中で120℃の温度を用いて2000時間、および145℃で1000時間熟成し、文脈において上記または下記に示した。
【0163】
引張強度保持率(%)を、以下のように計算した:
【数2】
【実施例】
【0164】
実験の部
プロピレン(A)成分(以下、表の以下の例でiPP(A)と呼ぶ)の成分異相コポリマーの重合プロセス。
触媒の調製:
iPP(A)成分のための触媒調製:
最初に、0.1molのMgCl2×3EtOHを、不活性条件下で250mlのデカン中に、反応器中で大気圧で懸濁させた。溶液を、-15℃の温度に冷却し、300mlの冷TiCl4を、温度を上記レベルに維持しながら添加した。次に、スラリーの温度を、20℃までゆっくりと上昇させた。この温度で、0.02molのジエチルヘキシルフタレート(DOP)を、スラリーに添加した。フタレートの添加後、温度を90分間135℃に上昇させ、スラリーを60分間放置した。次に、さらに300mlのTiCl4を添加し、温度を135℃で120分間保持した。この後、触媒を液体から濾過し、80℃でヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分を濾過し、乾燥した。触媒およびその製造概念は、例えば、特許公報EP 491 566、EP 591 224およびEP 586 390に一般的に記載されている。
【0165】
次いで、トリエチルアルミニウム(TEAL)、供与体(Do)としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、上記で製造した触媒およびビニルシクロヘキサン(VCH)を、油、例えば鉱油、例えばTechnol 68(40℃での動粘性率62~74cSt)中に、Al/Tiが3~4mol/mol、Al/Doが同様に3~4mol/mol、およびVCH/固体触媒の重量比が1:1であるような量で添加した。混合物を60~65℃に加熱し、反応混合物中の未反応ビニルシクロヘキサンの含有量が1000ppm未満になるまで反応させた。最終的な油-触媒スラリー中の触媒濃度は、10~20重量%であった。
【0166】
ガラス積層体の製造
積層体を、PEnergy L036LAB真空ラミネーターを用いて製造した。下部から上部までの試料構造は、15×15cm2の前面保護ガラス要素(構造化ソーラーガラス、厚さ3.2mm、第1のEVA層要素をガラス上に配置する前にイソプロパノールで洗浄した)、前面保護ガラス要素と同じ寸法に切断したEVA(Hangzhou First EVA F806)の2つの層、前面保護ガラス要素と同じ寸法に切断したPP単層フィルム(200μm)の1つの層であった。試料を、150℃で、5分間の排気時間の積層サイクルプログラム、続いて800mbarの上部チャンバー圧力での10分間の押圧時間を用いてさらに真空積層した。
【0167】
ガラス積層板の経年劣化および変色測定
ガラス積層体を、気候室中で、85℃および85%相対湿度で2000時間熟成した。
【0168】
試料を室温で1時間放冷し、その後色測定を行った。
【0169】
色測定を、Dr.Langeからの三刺激比色計(モデル:LMC6)を用いて行った。変色指数(DI)の測定および計算を、ASTM E313-15(光源:D65、10度)に従って行った。積層体を、白色標準タイル(LZM 076、装置供給業者によって提供される)上に、ガラス側を上方に向けて配置する。変色測定を、測定ヘッドをガラスの上部上に配置することによって行う。
デルタDI(時間x時間)=DI時間x時間-DI時間0時間
【0170】
重合例
すべてのパイロットスケールポリマーを、予備重合反応器、1つのスラリーループ反応器および2つの気相反応器を用いて製造した。
【0171】
触媒供給
触媒を、油スラリー中での重合に、ピストンポンプにより連続的に供給した。
共触媒および供与体
トリエチルアルミニウム(TEAL)を、共触媒として使用し、ジシクロペンチルジメトキシシラン(供与体D)を、外部供与体として使用した。実際のTEALおよび供与体供給を、表1に示す。
【0172】
予備重合反応器
触媒を、プロピレンで予備重合反応器にフラッシュし、ここでまたTEALおよびD供与体を供給した。予備重合反応器、CSTRを、30℃および55bargの圧力で動作させた。プロピレンスラリー中の粒子の滞留時間は、約0,38時間であった。
【0173】
ループ反応器
予備重合した触媒成分を、直列に連結したループ反応器および気相反応器(GPR)中で使用した。ループ反応器についてのプロセス条件を、表1に示す。
【0174】
気相反応器1
ポリマースラリーを、ループから気相反応器(GPR1)に、フラッシュなしの直接供給として供給した。GPR動作温度および圧力を、表1に示す。
【0175】
気相反応器2
生成物を、GPR1からGPR2に、間接供給物としてフラッシュタンクを介して移した。GPR動作温度および圧力を、表1に示す。
【0176】
生成物制御
ループとGPRとの間の製造スプリットを、50/50%近くに制御した。MFR(2.16kg/230℃)を、水素供給により制御した。
【0177】
最終的なiPP(A)成分
GPR2から得られたポリマー粉末を、さらに溶融ホモジナイズし、スクリュー直径57mmおよびL/D22を有するCoperion ZSK57共回転二軸押出機を用いてペレット化した。スクリュー速度は200rpmであり、バレル温度は200~220℃であった。
【0178】
iPP(A)については、以下の添加剤を、溶融均質化ステップ中に添加した。
1500ppmのADK-STAB A-612(Adeka Corporationにより供給される)および300ppmの合成ハイドロタルサイト(ADK STAB HT、Adeka Corporationにより供給される)。
【0179】
【0180】
本発明の、および比較のPPポリマー組成物のさらなる成分:
本発明のUV安定剤(iia):STAB 1:Cas番号65447-77-0
本発明のUV安定剤(iia):STAB 2:Cas番号52829-07-9
本発明のUV安定剤(iia):STAB 3:Cas番号71878-19-8(70624-18-9(US))
本発明のUV安定剤(iia):STAB 4:Cas番号192268-64-7
本発明の酸化防止剤(iib)AO1:Cas番号143925-92-2
他の酸化防止剤(ii):AO2 Cas番号31570-04-4
比較の酸化防止剤:フェノール系抗酸化剤:PAO1 Cas番号6683-19-8
他の添加剤(ii):ステアリン酸Ca:Cas番号31570-04-4
充填剤(iiia)1:従来の市販のタルク製品。
【0181】
本発明の、および比較のPPポリマー組成物の調製。当該組成物を、ポリマーを他の成分と、共回転二軸押出機(ZSK32、Coperion)上で、スクリュー速度400rpmおよびスループット90~100kg/hを使用して配合することによって調製した。溶融温度は、190~220℃の範囲であった。成分およびその量を、下記の表2の下に示す。
【0182】
参照の比較組成物CE1~CE2を、以下の表2に示す。
【0183】
表2:本発明のPPポリマー組成物IE1~IE7および比較のPP組成物CE1~CE2
【表2】
【0184】
表3:本発明のPPポリマー組成物IE1~IE9および比較のPP組成物CE1~CE2:
変色指数=DI
【表3】
* 引張強度保持を、「決定方法」の下で上記で定義した射出成形試験被検査物から測定した。
不合格=試料はオーブン試験中に不合格となった