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  • 特許-農業施設および農業施設の構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】農業施設および農業施設の構築方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20230928BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20230928BHJP
   E04H 5/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G9/20 B
E04H5/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020009853
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021114927
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-04-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】吉川 優
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-125233(JP,A)
【文献】特開2018-161044(JP,A)
【文献】特開2017-166141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
A01G 7/00
A01K 1/00
E02B 3/04 - 3/14
E04H 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体と、
前記堤体により囲まれた空間に設けられた農地と、
前記空間の上面を覆う被覆体と、を備える農業施設であって、
前記農地は、地盤を掘削することにより安定勾配を確保して形成された切土法面により囲まれた窪地の底部に形成されており、
前記切土法面には法面保護工が施されていて、
前記堤体は、前記窪地の掘削により発生した掘削土により形成されており、
前記被覆体は、断面視アーチ状を呈していて、縁部が前記堤体の頂部に固定されていることを特徴とする、農業施設。
【請求項2】
前記被覆体の少なくとも一部は、透過型有機薄膜太陽電池により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の農業施設。
【請求項3】
前記空間の空気調節を行う空調手段と、
前記農地に水または肥料を供給する散布手段と、を備えており、
前記空調手段および前記散布手段は、前記被覆体の前記透過型有機薄膜太陽電池に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の農業施設。
【請求項4】
前記堤体は、前記掘削土に固化材が混合された改良土により形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の農業施設。
【請求項5】
前記農地の周囲を囲う遮水壁を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の農業施設。
【請求項6】
地盤を掘削して窪地を形成する掘削工程と、
前記窪地の周囲に堤体を形成する堤体形成工程と、
前記窪地の上面を覆う被覆体を設置する被覆工程と、を備える農業施設の構築方法であって、
前記掘削工程では、安定勾配を確保した切土法面を形成することにより前記窪地を形成するとともに、前記切土法面に法面保護工を施し、
前記堤体形成工程では、前記掘削工程で発生した掘削土を締め固めることで遮水性を有した前記堤体を形成し、
前記被覆工程では、断面視アーチ状の被覆体を形成する作業と、前記被覆体の縁部を前記堤体の頂部に固定する作業と、を行うことを特徴とする、農業施設の構築方法。
【請求項7】
前記堤体形成工程において、前記掘削土に固化材を混合することを特徴とする、請求項6に記載の農業施設の構築方法。
【請求項8】
前記窪地の周囲を遮水壁で囲う遮水工程を備えていることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の農業施設の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動植物の育成に適した農業施設および農業施設の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室栽培は、ガラスやビニールシート等により囲まれた空間内において農作物を栽培するものであり、季節を問わず所定の植物を育成することや、気温の高い地方の植物をその他の地域で育成することを可能としている。例えば、特許文献1には、ドーム型に形成されたビニールハウス内に栽培用土壌の収容部を設けたドーム型ビニールハウスが開示されている。特許文献1のドーム型ビニールハウスは、収容部をビニールハウス内において回転させることで、ビニールハウス内の植物に太陽光を均等に照射させることを可能にしている。
近年、世界各国において自然災害による被害が確認されている。わが国においても、台風や豪雨による被害が生じている。温室栽培についても、自然災害による被害を受ける場合がある。例えば、暴風によって施設(ビニールハウス等)が破壊されることや、浸水や冠水によって作物が水に浸かってしまう被害が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-291350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自然災害に強く、天候による影響を最小限に抑えた全天候型の農業施設およびこの農業施設の合理的な構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の農業施設は、堤体と、前記堤体により囲まれた空間に設けられた農地と、前記空間の上面を覆う被覆体とを備えている。前記農地は地盤を掘削することにより安定勾配を確保して形成された切土法面により囲まれた窪地の底部に形成されており、前記切土法面には法面保護工が施されていて、前記堤体は前記窪地の掘削により発生した掘削土により形成されている。さらに、前記被覆体は、断面視アーチ状を呈していて、縁部が前記堤体の頂部に固定されている。
かかる農業施設によれば、農地が地盤を掘削することにより形成された窪地の底部に設けられているため、台風などの暴風による影響を受けにくい。また、農地の周囲には、堤体が形成されているため、農地への水の浸水が抑制されている。さらに、被覆体により、暴風等の影響を最小限に抑えることができる。
なお、前記被覆体の少なくとも一部が、透過型有機薄膜太陽電池により形成されていれば、農地の管理に使用する機器設備の電力を確保することができるとともに、必要な太陽光も確保できる。また、前記空間の空気調節を行う空調手段と、前記農地に水または肥料を供給する散布手段とを備えている場合には、前記空調手段および前記散布手段を前記被覆体の前記透過型有機薄膜太陽電池に接続することで、運転に必要な電力を確保するとよい。
また、掘削土の透水係数から堤体としての遮水性が不足することが予想される場合には、前記掘削土に固化材を混合した改良土により堤体を形成するのが望ましい。
さらに、地盤に浸透した水が窪地に流入することが想定される場合には、前記農地の周囲を囲う環状の遮水壁を形成するのが望ましい。
【0006】
また、本発明の農業施設の構築方法は、地盤を掘削して窪地を形成する掘削工程と、前記窪地の周囲に堤体を形成する堤体形成工程と、前記窪地の上面を覆う被覆体を設置する被覆工程とを備えている。前記掘削工程では、安定勾配を確保した切土法面を形成することにより前記窪地を形成するとともに、前記切土法面に法面保護工を施す。また、前記堤体形成工程では、前記掘削工程で発生した掘削土を締め固めることで遮水性を有した前記堤体を形成する。また、前記被覆工程では、断面視アーチ状の被覆体を形成する作業と、前記被覆体の縁部を前記堤体の頂部に固定する作業とを行う。
かかる農業施設の構築方法によれば、窪地の掘削により発生した掘削土を利用して堤体を形成するため、掘削残土の処分費や堤体を形成するための材料費等を削減することができる。また、掘削土をそのまま施工個所に移動することができるため、施工性に優れている。また、遮水性を有した堤体を窪地の周囲に形成し、窪地の上面を被覆体で覆うことにより、自然災害に強い農業施設を形成することができる。
なお、前記堤体形成工程において、前記掘削土に固化材を混合すれば、透水係数が高くて所望の遮水性を確保できないおそれがある場合でも、掘削土を利用して遮水性を有した堤体を形成することができる。
また、前記窪地の周囲を遮水壁で囲う遮水工程を備えていれば、地盤に浸透した水が農地に浸水することを防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の農業施設によれば、自然災害に強く、天候による影響を最小限に抑えた全天候型農場を提供することが可能となり、また、本発明の農業施設の構築方法によれば、前記農業施設を合理的に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る農業施設の概略図である。
図2】農業施設の構築方法の各工程を示す断面図であって、(a)は掘削工程、(b)は遮水工程、(c)は堤体形成工程、(d)は被覆工程である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、自然災害に強く、効率的に農作物を生産することを可能とした農業施設1について説明する。図1は、農業施設1の概要を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の農業施設1は、農地2と、農地2の周囲を囲う堤体3と、農地2の上面を覆う被覆体4とを備えている。
農地2は、地盤を掘削することにより形成された窪地21の底部に形成されている。本実施形態では、逆円錐台状の窪地21を形成することで平面視円形の農地2が形成されている。窪地21により形成された切土法面22は、地質に応じた安定勾配を確保している。なお、切土法面22には、必要に応じて法面保護工を施してもよい。切土法面22の頂部には、農地2を囲う堤体3が形成されている。すなわち、農地2は、堤体3により囲まれた空間5に設けられている。また、農地2の平面形状は限定されるものではなく、例えば、矩形、楕円形、L字状等、現地(用地)の地形などに応じて適宜決定すればよい。
【0010】
堤体3は、平面視環状であり、窪地21を掘削する際に発生した掘削土を主体に形成されている。本実施形態では、掘削土に固化材を混合した改良土を窪地21の周囲に盛り立てることにより堤体3が形成されている。なお、掘削土が良質で、締め固めるだけで所定の遮水性を確保できることが見込まれる場合には、掘削土に固化材を混合する必要はない。堤体3は、農地2の周囲に形成された切土法面22の頂部(窪地21の縁部)に、掘削土(改良土)を盛り立てることにより形成されている。すなわち、堤体3は、周辺の地盤よりも高くなるように形成されていて、農業施設1の周囲が冠水した場合であっても、農地2に水が流入することを防止する。本実施形態の堤体3の農地2側の盛土法面31は、窪地21の切土法面22の延長線上に連続して形成されている。このとき、盛土法面31は、必要な安定勾配を確保している。なお、盛土法面31の勾配は、切土法面22の勾配と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、盛土法面31と切土法面22との境界部には、小段を設けてもよい。また、堤体3の盛土法面31には、法面保護工等を施してもよい。また、堤体3の平面形状は、農地2の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0011】
被覆体4は、堤体3により囲まれた空間5(農地2)の上面を覆っている。被覆体4は、ドーム状(球冠状)を呈している。被覆体4は、堤体3の上面に設けられた支持部材41と、支持部材41に固定された膜材42により構成されている。なお、被覆体の形状は限定されるものではなく、農地2や堤体3の形状に応じて適宜決定すればよく、例えば、農地が長方形状の場合にはかまぼこ状の被覆体であってもよい。
支持部材41は、複数の鋼材を格子状に組み合わせることにより形成されている。支持部材41を構成する各鋼材は弧状を呈していて、鋼材を組み合わせてなる支持部材41はドーム状を呈している。支持部材41の縁部は堤体3の頂部に固定されている。なお、支持部材41を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、パイプ材であってもよい。また、支持部材41の堤体3への固定方法は限定されるものではなく、例えば、アンカーにより固定すればよい。また、支持部材41は、堤体3の法面に固定してもよい。
膜材42は、透過型有機薄膜太陽電池により形成されている。透過型有機薄膜太陽電池は、光合成に必要な青と赤の波長の光を透過し、その他の波長の光を利用して発電を行う。なお、膜材42を構成する材料は、太陽光(少なくとも光合成に必要な光)を透過する材質であれば限定されるものではなく、必ずしも透過型有機薄膜太陽電池により形成されている必要はない。例えば、被覆体4を構成する膜材42の一部を透過性有機薄膜太陽電池により形成し、この他の部分は、他の透過性膜材により形成してもよい。また、被覆体4の北向きの部分等、場所によっては、膜材42として不透過性の材料を使用してもよい。
被覆体4には、外気を取り入れるための窓が形成されていてもよい。
【0012】
堤体3と被覆体4によって囲まれた空間(農地2を構成する空間)5には、空気調節を行う空調手段6が設けられている。本実施形態の空調手段6は、被覆体4の支持部材41に固定されている。空調手段6は、透過型有機薄膜太陽電池である被覆体4に電気的接続されていて、透過型有機薄膜太陽電池によって発電された電力により駆動させることが可能である。また、空間5には、所定の位置に温度計および湿度計が設置されており、空調手段6は、温度計および湿度計の計測結果に応じて運転が制御されている。空調手段6の設置台数および配置は、空間5の大きさや形状等に応じて決定する。
また、空間5には、所定のタイミングで農地2に水または肥料を供給する散布手段7が設けられている。本実施形態の散布手段7は、農地2の上方において被覆体4に横架されたパイプを備えており、農地2に対して上方から水や肥料を供給することが可能に構成されている。なお、散布手段7は、被覆体4に接続されていて、透過型有機薄膜太陽電池によって発電された電力により駆動させることが可能である。
【0013】
農地2の周囲は、環状の遮水壁8により囲まれている。遮水壁8は、農地2(窪地21)を囲うように鋼矢板を連設することにより形成されている。本実施形態では、堤体3の直下に遮水壁8を形成しているが、遮水壁8の形成箇所は限定されるものではなく、例えば、堤体3の外側に形成してもよい。また、遮水壁8は、鋼矢板に限定されるものではなく、鋼管杭を連設することにより形成してもよいし、地盤改良体やコンクリート等により形成してもよい。
【0014】
次に、図2を参照して本実施形態の農業施設1の構築方法について説明する。農業施設1の構築方法は、掘削工程と、遮水工程と、堤体形成工程と、被覆工程とを備えている。ここで、図2の(a)は掘削工程、(b)遮水工程、(c)は堤体形成工程、(d)は被覆工程を示す断面図である。
掘削工程では、地盤を掘削して窪地21を形成する。掘削工程では、農地2として運営する際に必要な機械や人が出入りするための通路(図示せず)も形成する。窪地21の掘削は、バックホウ等を利用して周囲(窪地21の外縁)の地盤から行う。バックホウにより掘削した掘削土23は、そのまま地上部に搬出する。なお、農地2が広く、窪地21の外周囲からでは掘削できない場所が生じる場合には、窪地21の底部に掘削機を下ろして作業を行う。この場合の掘削土23は、ベルトコンベヤ、クレーン等の搬送手段を利用して搬出する。なお、車両の通行が可能な通路を有している場合や、施工時に仮設道路を設ける場合には、トラックなどの輸送用の車両を利用して掘削土23を搬出してもよい。また、掘削土23の搬出には、ドローンを利用してもよい。掘削土23は、窪地21の外側に設けられた仮置きスペースまたは、堤体3の形成箇所に搬出する。
掘削工程では、掘削土23の透水係数を計測し、堤体3を形成した際に必要な透水係数が確保できるか否かを判定する。
掘削工程において形成された切土法面22には、必要に応じて浸食防止等を目的とした保護工を施す。また、窪地21の底部には、必要に応じて農作物の育成に適した土を搬入する。
【0015】
遮水工程では、窪地21(切土法面22)の周囲を遮水壁8で囲う。遮水壁8は、鋼矢板81の端部同士を連結させながら窪地21の周囲を囲うように地盤に複数の鋼矢板81を圧入することにより形成する。なお、遮水壁8は、掘削工程の前に、農地2の形成予定箇所の周囲に形成してもよい。また、遮水壁8を堤体3の外側に形成する場合には、遮水壁8の施工を、堤体3の施工後(堤体形成工程の後)に行ってもよい。遮水壁8の深さ(鋼矢板81の長さ)は、農地2への降雨時等の水の浸透を抑制することが可能であれば限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0016】
堤体形成工程では、窪地21の周囲に堤体3を形成する。堤体3の施工は、窪地21を形成する際に地盤を掘削することにより発生した掘削土23を利用する。まず、仮置きスペースにおいて、掘削土23に固化材を混合して改良土32を作成する。次に、改良土32を施工個所に輸送して、この改良土32を締め固めつつ盛り立てることにより遮水性を有した堤体3を形成する。なお、掘削工程において、掘削土23に必要な透水係数が確保されていると判断された場合には、掘削土23に固化材を混合する必要はなく、掘削土23により堤体3を形成すればよい。堤体3には、農地2に通じる通路の位置に対応して出入口(図示せず)を形成しておく。出入口には、開閉式の止水板を設置する。
堤体形成工程は、掘削工程と並行して行ってもよい。地盤の掘削と堤体3の施工を同時期に行う場合には、地盤の掘削により発生した掘削土23を堤体3の施工個所に直接搬送して、盛り立てを行ってもよい。
【0017】
被覆工程では、窪地21の上面を覆う被覆体4を堤体3の上面に設置する。被覆体4の施工は、まず、窪地21の近傍において組み立てられた支持部材41を、クレーン等の揚重機を利用して堤体3の上面に載置する。次に、支持部材41に膜材42を設置する。なお、被覆体4の施工は、予め膜材42が設置された支持部材41を堤体3の上面に載置することにより行ってもよいし、堤体3上において鋼材を組み立てることにより支持部材41を形成してから膜材42を設置してもよい。膜材42は、格子状の支持部材41の各開口に設置してもよいし、支持部材41の表面全体または裏面全体を覆うように設置してもよい。支持部材41の組み立てや膜材42の支持部材41への設置作業には、ドローンを利用してもよい。
【0018】
本実施形態の農業施設1によれば、農地2が地盤を掘削することにより形成された窪地21の底部に設けられているとともに、農地2の上方が被覆体4により覆われているため、台風などの暴風による影響を受けにくい。農地2は、地盤を掘り下げることにより形成されているため、暴風等の影響を抑えることができる。
また、農地2の周囲には、堤体3が形成されているため、農地2への水の浸水が抑制されている。そのため、周囲に地盤が冠水した場合であっても、農地2は冠水し難い。また、周囲が堤体3により囲まれていることで、農地2の断熱性が向上する。
また、堤体3は、掘削土23に固化材を混合した改良土32により形成されているため、降雨時や冠水時に水が浸透して農地2が冠水することはない。また、現地で発生した掘削土23を堤体3の施工に利用するため、堤体3を形成するための材料費の低減化と、材料の輸送費の低減化を図ることができる。
【0019】
また、農地2(窪地21)の周囲に遮水壁8が形成されているため、周囲の地盤に浸透した水が窪地21に流入することがなく、豪雨等の後でも、農地2の環境を維持することができる。
また、被覆体4がドーム形に形成されているため、風荷重を逃がしやすく、暴風等の影響を最小限に抑えることができる。被覆体4は、透過型有機薄膜太陽電池により構成されているため、農作物の育成に必要な太陽光を確保できるとともに、農地2の管理に使用する機器設備の電力を確保することができる。
また、空間5の空気調節を行う空調手段6と、農地2に水または肥料を供給する散布手段7とを備えているため、農地2の管理を自動的に行うことができる。そのため、農作物の育成に適した環境を自動的に保持することができるとともに、人件費の低減化を図ることができる。また、空調手段6および散布手段7の運転に必要な電力を、被覆体4の透過型有機薄膜太陽電池により確保することで、運転に必要な費用の低減化を図ることができる。
【0020】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、農業施設1を利用して農作物を生産する場合について説明したが、農業施設1の用途は植物の育成に限定されるものではなく、例えば、家畜等の動物の飼育に使用してもよい。
また、遮水壁8は必要に応じて形成すればよい。すなわち、周辺の地盤が良好で、周囲の地盤を介して農地2に雨水などが浸透するおそれがない場合には、農地2の周囲を遮水壁8で囲う必要はない。
また、空調手段6は必要時応じて設置すればよく、例えば、外気を取り入れるなどして内部の空調管理を行う場合等には、空調手段6を省略してもよい。また、散布手段7も必要に応じて設置すればよく、例えば、人力により水や肥料などを散布する場合には散布手段7は省略してもよい。
【0021】
農業施設1は、内部を飛行させたドローンにより内部を撮影し、この撮影画像に基づいて管理を行ってもよい。このようにすれば、遠隔操作により農業施設1内の環境を調整することができるとともに、撮影画像に基づいて収穫時期等の確認を行うこともできる。
農業施設1では、農作物の成育の他、苗や種子の生産に使用してもよい。
農業施設1は、農地2に対して光合成に必要は波長の光を照射する照明が設置されていてもよい。こうすることで、照明、空調手段6、散布手段7を利用して農業施設1の内部の気候を管理することで、季節や地域に限定されることなく、所望の農作物を育成することが可能となる。
農地2は、周囲が囲まれた空間5内において管理されているため、気候や周辺環境の影響を最小限に抑えることができる。そのため、農地2の土を作物に応じた土壌にカスタマイズすることができる。
農業施設1は、農地2の水はけの向上を図るための排水手段9を備えていてもよい。排水手段9としては、例えば、農地2の下方を削孔することにより形成した掘削孔に砕石等を充填したドレーンであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 農業施設
2 農地
21 窪地
23 掘削土
3 堤体
32 改良土
4 被覆体
5 空間
6 空調手段
7 散布手段
8 遮水壁
図1
図2