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特許7356938食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システム
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/60 20220101AFI20230928BHJP
   A47J 43/046 20060101ALI20230928BHJP
   B01F 35/21 20220101ALI20230928BHJP
   B01F 27/808 20220101ALI20230928BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230928BHJP
   B01F 101/06 20220101ALN20230928BHJP
【FI】
B01F35/60
A47J43/046
B01F35/21
B01F27/808
G01M99/00 A
B01F101:06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020047681
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146262
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000127237
【氏名又は名称】株式会社イズミフードマシナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】北村 久徳
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】杉舩 大亮
(72)【発明者】
【氏名】川本 裕太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-139248(JP,A)
【文献】特開2017-217577(JP,A)
【文献】特開平07-274709(JP,A)
【文献】特開昭56-054907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0242595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/60
A47J 43/04 - 43/09
B01J 19/18
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
B02C 13/00 - 13/31
B02C 23/00 - 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌対象の食品を収納する攪拌槽と、金属材料で構成され、回転することにより前記攪拌槽内の前記食品を攪拌する攪拌子とを有する食品攪拌装置を監視する装置であって、
前記攪拌子の金属疲労の程度に基づいて、前記攪拌子が破損に至る破損危険度を推定する危険度推定部を備えることを特徴とする食品撹拌装置の監視装置であって、
前記金属疲労の程度を推定する金属疲労推定部を備え、
前記金属疲労推定部は、前記攪拌子の攪拌条件に基づいて、前記金属疲労を演算し、その演算結果を前記金属疲労の程度として推定し、
前記攪拌条件には、前記攪拌子に一定の電流値または攪拌トルクの負荷のかかった回数が含まれる監視装置
【請求項2】
前記危険度推定部は、
前記金属疲労推定部での演算結果が第1閾値を越えた場合、前記破損危険度が第1破損危険度であると推定し、
前記第1破損危険度を推定した後、前記金属疲労推定部での演算結果が第2閾値を越えた場合、前記破損危険度が第2破損危険度であると推定する請求項に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項3】
前記危険度推定部は、前記金属疲労の程度と、前記攪拌子の摩耗の程度に基づいて、前記破損危険度を推定する請求項1又は2に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項4】
前記摩耗の程度を推定する摩耗推定部を備える請求項に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項5】
前記破損危険度に関する情報を報知する報知部を備える請求項1~のいずれか1項に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項6】
前記報知部は、前記破損危険度に関する情報として、前記攪拌子の交換を促す情報を報知する請求項に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記破損危険度の程度に応じて、前記破損危険度に関する情報を複数回報知する請求項に記載の食品撹拌装置の監視装置。
【請求項8】
攪拌対象の食品を収納する攪拌槽と、金属材料で構成され、回転することにより前記攪拌槽内の前記食品を攪拌する攪拌子とを有する食品攪拌装置と、
前記食品攪拌装置とともに用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の食品撹拌装置の監視装置を備えることを特徴とする食品攪拌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学薬材に対して化学反応をさせる化学反応装置と、化学反応装置での化学反応が正常な状態であるかを判定するニューロ・コントローラとを備える異常反応の制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の異常反応の制御システムは、化学反応が正常な状態であるかを判定するのに際し、例えば、化学薬材を攪拌する回転モータの電流値と、回転モータの回転数とから算定された回転トルク等を用いて、その判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-301359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の異常反応の制御システムでは、食品攪拌装置を使用し続けていくと、例えば回転モータに金属疲労や摩耗等の経時的な劣化が生じてくる。そして、そのまま食品攪拌装置を使用し続けた場合、食品攪拌装置の回転モータが破損に至り、食品攪拌装置の使用が不可となるという問題があった。また、食品攪拌装置の使用不可な状態が長期間続くと、食品攪拌装置の生産効率が低下するという問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、食品攪拌装置の攪拌子が破損に至る前に、例えば当該攪拌子の交換等のメンテナンスを促すことが可能な食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の食品撹拌装置の監視装置の一つの態様は、
攪拌対象の食品を収納する攪拌槽と、金属材料で構成され、回転することにより前記攪拌槽内の前記食品を攪拌する攪拌子とを有する食品攪拌装置を監視する装置であって、
前記攪拌子の金属疲労の程度に基づいて、前記攪拌子が破損に至る破損危険度を推定する危険度推定部を備えることを特徴とする食品撹拌装置の監視装置であって、
前記金属疲労の程度を推定する金属疲労推定部を備え、
前記金属疲労推定部は、前記攪拌子の攪拌条件に基づいて、前記金属疲労を演算し、その演算結果を前記金属疲労の程度として推定し、
前記攪拌条件には、前記攪拌子に一定の電流値または攪拌トルクの負荷のかかった回数が含まれる
【0007】
本発明の食品攪拌システムの一つの態様は、
攪拌対象の食品を収納する攪拌槽と、金属材料で構成され、回転することにより前記攪拌槽内の前記食品を攪拌する攪拌子とを有する食品攪拌装置と、
前記食品攪拌装置とともに用いられる、上記食品撹拌装置の監視装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食品撹拌装置の監視装置により、現在の攪拌子の破損危険度がどの程度であるのかを推定することができる。そして、破損危険度の程度によっては、攪拌子が破損に至る前に、例えば当該攪拌子の交換等のメンテナンスを促すことができる。これにより、メンテナンスを省略した場合に生じ得る、攪拌装置の使用不可状態や、攪拌装置の生産効率の低下等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の食品攪拌システムの第1実施形態を示す外観図である。
図2図1に示す食品攪拌システムの制御ブロック図である。
図3図1に示す食品攪拌システムの食品撹拌装置の監視装置が実行する制御プログラムを示すフローチャートである。
図4図3に示すフローチャートに含まれるサブルーチン(金属疲労対応処理)のフローチャートである。
図5】本発明の食品攪拌システムの第2実施形態を示すブロック図である。
図6図5に示す食品攪拌システムの食品撹拌装置の監視装置が実行する制御プログラムを示すフローチャートである。
図7図6示すフローチャートに含まれるサブルーチン(摩耗対応処理)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1図4を参照して、本発明の食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムの第1実施形態について説明する。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上(または上方)」、下側を「下(または下方)」と言う。
【0011】
図1図2に示すように、食品攪拌システム1は、食品攪拌装置(以下単に「攪拌装置」と言う)2と、食品撹拌装置の監視装置(以下単に「監視装置」と言う)3とを備える。攪拌装置2は、攪拌対象であり、流動性を有する食品FDを攪拌する装置である。監視装置3は、攪拌装置2を監視する装置である。
【0012】
攪拌装置2は、攪拌槽21と、攪拌子22と、モータ23と、歯車機構24と、制御部25と、入力部26とを有する。
攪拌槽21は、食品FDを収納することができる。
攪拌槽21の底部211側には、攪拌子22が回転可能に支持されている。モータ23の動力は、動力伝達シャフト231に伝わる。そして、動力伝達シャフト231から歯車機構24に伝わった動力により、攪拌子22が、シャフト221にて鉛直方向と平行な軸回りに回転する。攪拌子22は、回転することにより、攪拌槽21内の食品FDを攪拌することができる。また、攪拌子22は、ステンレス鋼やアルミニウム等の防錆性を有する金属材料で構成される。
【0013】
図1に示すように、攪拌子22は、シャフト221と、シャフト221の下部に支持されたインペラ(ロータ)222と、シャフト221の上部に支持されたカッター223とを有する。
シャフト221は、棒状をなし、上下方向に沿って配置されている。シャフト221の下方側は、歯車機構24と連結されている。
【0014】
インペラ222は、円盤状をなし、シャフト221と同士的に配置されている。インペラ222は、攪拌子22の中で、食品FDの攪拌または溶解に最も寄与する。
カッター223は、板状をなし、シャフト221に片持ち支持されている。例えば食品FDに固形物が含まれている場合、カッター223は、固形物を粉砕する機能も有する。本実施形態では、カッター223は、シャフト221の長手方向で異なる位置に2つ配置されている。なお、カッター223の配置数は、2つに限定されず、例えば、1つまたは3つ以上であってもよい。また、カッター223は、攪拌子22から省略されていてもよい。
【0015】
モータ23は、歯車機構24を介して、シャフト221と連結されている。モータ23は、攪拌子22に動力(回転力)を付与する駆動源である。
歯車機構24は、互いに噛み合う複数の歯車(図示せず)を有する。本実施形態では、モータ23の動力伝達シャフト231は、水平方向と平行な軸回りに回転し、攪拌子22は、鉛直方向と平行な軸回りに回転する。そのため、攪拌装置2では、歯車機構24により、モータ23側から攪拌子22側への動力の方向を変換することができる。
【0016】
制御部25は、モータ23および入力部26と電気的に接続されており、これらの作動を制御することができる。図2に示すように、制御部25は、CPU251と、記憶部252とを有する。CPU251は、例えば、記憶部252に予め記憶されている制御プログラムを実行することができる。制御プログラムには、例えば、モータ23の作動を制御して、食品FDの攪拌を実行するための攪拌用プログラム等が含まれる。
【0017】
攪拌装置2では、入力部26を介して、種々の情報を入力することができる。入力部26から入力される情報の1つとして、食品FDを攪拌するための攪拌条件がある。攪拌条件には、例えば、攪拌子22の回転時間、周速、モータ23の回転数、攪拌子22の径(インペラ径)、攪拌トルク、モータ23の電流値、食品FDの粘性や種類等の物性のうちの少なくとも1つが含まれる。また、その他に、攪拌条件には、例えば、モータ23への印加周波数等も含めることもできる。そして、入力部26から入力された攪拌条件は、記憶部252に記憶されて、攪拌用プログラムに反映される、すなわち、攪拌プログラムの一部として組み込まれる。なお、入力部26としては、特に限定されず、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等が挙げられる。
【0018】
食品攪拌システム1では、攪拌装置2とともに、監視装置3が用いられる。図2に示すように、監視装置3は、攪拌装置2と電気的に接続されている。監視装置3は、制御部31と、報知部34とを有する。
制御部31は、CPU32と、記憶部33とを有する。CPU32は、例えば、記憶部33に予め記憶されている制御プログラムを実行することができる。制御プログラムには、例えば、攪拌装置2を監視するための監視用プログラム等が含まれる。また、制御部31は、報知部34と電気的に接続されており、報知部34の作動を制御することができる。
【0019】
報知部34は、例えば、監視装置3による監視結果を報知することができる。報知部34での報知方法としては、特に限定されず、例えば、スピーカ等を用いた音声(振動含む)による報知方法、シグナルランプや液晶ディスプレイ等を用いた発光による報知方法、媒体への印刷による報知方法等が挙げられる。
【0020】
攪拌装置2では、攪拌装置2の長期的な使用に伴って、攪拌子22に金属疲労による経時的な劣化が生じてくる。そして、そのまま攪拌装置2の使用を継続していった場合、攪拌子22が破損に至り、攪拌装置2の使用が不可となるおそれがある。また、攪拌装置2の使用不可な状態が長期間続くと、攪拌装置2の生産効率(稼働率)が低下するおそれもある。ここで、「金属疲労」とは、金属材料で構成された攪拌子22に、食品FDからの衝撃が繰り返して加わって、はじめ小さな傷が生じ、やがて大きな破壊に至る現象のことを言う。
【0021】
そこで、食品攪拌システム1では、前記のような不具合が解消されるよう構成されている。以下、この構成および作用について説明する。
監視装置3は、攪拌装置2を監視する装置であり、攪拌装置2の中でも、特に監視対象として、攪拌装置2の攪拌子22を監視することができる。攪拌子22は、攪拌装置2を構成する部品の中で、金属疲労による経時的な劣化が最も生じ易い消耗品の1つである。
【0022】
図2に示すように、CPU32は、金属疲労の程度を推定する金属疲労推定部321としての機能を有する。また、CPU32は、金属疲労推定部321で推定された金属疲労の程度に基づいて、攪拌子22が破損に至る破損危険度、すなわち、攪拌子22の寿命を推定する危険度推定部322としての機能も果たすことができる。
【0023】
金属疲労推定部321は、攪拌子22の攪拌条件に基づいて、金属疲労の程度を演算する。前述したように、攪拌条件には、例えば、攪拌子22に一定の電流値、攪拌トルク等の負荷のかかった回数が含まれる。攪拌条件に攪拌子22の一定の電流値、攪拌トルク等の負荷のかかった回数を用いた場合、金属疲労の程度は、攪拌子22の一定の電流値、攪拌トルク等の負荷のかかった回数と任意に設定した係数を積算することから、金属疲労の程度を演算する際の演算式として、攪拌子22の一定の電流値、攪拌トルク等の負荷のかかった回数との関数とすることができる。この関数は、例えば、実験またはシミュレーション等で求められる。
【0024】
また、攪拌条件に攪拌子22の周速を用いた場合や、攪拌条件に食品FDの物性を用いた場合も同様に、演算式としての各攪拌条件の関数を、実験またはシミュレーション等で求めることができる。
そして、金属疲労推定部321は、演算式から得られた結果を、実際の金属疲労の程度として推定する。これにより、攪拌条件を反映した、攪拌条件の影響を受ける金属疲労の程度を、迅速、かつ、できる限り正確に求めることができる。
【0025】
危険度推定部322は、金属疲労推定部321での演算結果、すなわち、金属疲労推定部321で求められた金属疲労の程度α1が、第1閾値β1を越えた場合、攪拌子22の破損危険度が第1破損危険度であると推定する。第1破損危険度としては、例えば、攪拌子22が金属疲労によって破損するまでの残り時間とすることができる。
【0026】
また、危険度推定部322は、第1破損危険度を推定した後、金属疲労推定部321での演算結果、すなわち、金属疲労推定部321で求められた金属疲労の程度α2が、第2閾値β2を越えた場合、攪拌子22の破損危険度が第2破損危険度であると推定する。第2破損危険度としては、例えば、第1破損危険度を越えて、さらに、攪拌子22が金属疲労によって破損するまでの残り時間とすることができる。
第1閾値β1および第2閾値β2は、それぞれ、記憶部33に予め記憶されている。また、第1閾値β1および第2閾値β2は、それぞれ、適宜変更可能である。
【0027】
報知部34は、破損危険度が推定されるたびに、当該破損危険度に関する情報を報知する。換言すれば、報知部34は、破損危険度が第1破損危険度であると推定された場合、第1破損危険度である旨を報知し、破損危険度が第2破損危険度であると推定された場合、第2破損危険度である旨を報知する。このように、報知部34は、破損危険度の程度(レベル)に応じて、破損危険度に関する情報を段階的に報知することができる。これにより、例えば、攪拌装置2を操作するユーザ(操作者)は、現在の攪拌子22の破損危険度が、どの程度であるのかを認識することができる。
【0028】
また、報知部34は、破損危険度に関する各情報として、攪拌子22の交換を促す情報を報知する。これにより、攪拌子22が破損する前に、新たな、すなわち、交換用の攪拌子22を手配することができる。そして、新たな攪拌子22が届き次第、攪拌装置2に設置されている攪拌子22と交換することができる。これにより、攪拌装置2の使用不可状態を防止して、攪拌装置2を継続して使用することができる。また、攪拌装置2の生産効率の低下も防止することができる。
【0029】
以上のように、食品攪拌システム1では、監視装置3により、攪拌装置2の攪拌子22が破損に至る前に、例えば当該攪拌子22の交換等のメンテナンスを促すことが可能となる。これにより、攪拌装置2の使用不可状態や、攪拌装置2の生産効率の低下等の不具合を未然に防止することができる。また、攪拌装置2のMTBF(Mean Time Between Failure:稼働時間/故障回数)を上げることができ、攪拌装置2の信頼性が向上する。
【0030】
また、食品攪拌システム1では、制御部31と報知部34との配置関係については、特に限定されない。例えば、工場内で攪拌装置2が使用されている場合、制御部31が食品攪拌システム1の製造メーカのオペレータ室に配置され、報知部34が攪拌装置2と同じ工場内に配置されていてもよい。この場合、制御部31からの遠隔操作よって、報知部34を作動させることができる。また、制御部31および報知部34の双方が攪拌装置2と同じ工場内に配置されていてもよい。この場合、例えば、第1閾値β1や第2閾値β2を変更する際、攪拌装置2のユーザは、自身で、その変更作業を迅速に行うことができる。
【0031】
次に、前記不具合を解消するための制御プログラムについて、図3図4に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御プログラムは、記憶部33に予め記憶されており、CPU32で実行される。
図3に示すように、まず、攪拌装置2の作動を開始する(ステップS101)。次いで、金属疲労対応処理のサブルーチンを実行する(ステップS200)。次いで、攪拌装置2の作動を停止する(ステップS102)。なお、金属疲労対応処理の実行中に、攪拌装置2の作動停止指示があれば、金属疲労対応処理も停止する。
【0032】
金属疲労対応処理のフローチャートを図4に示す。
図4に示すように、まず、金属疲労推定部321が金属疲労の程度α1を演算する(ステップS201)。
次いで、危険度推定部322は、金属疲労の程度α1が第1閾値β1を越えたか否かを判断する(ステップS202)。
【0033】
ステップS202での判断の結果、金属疲労の程度α1が第1閾値β1を越えたと判断された場合には、危険度推定部322は、攪拌子22の破損危険度が第1破損危険度であると推定する(ステップS203)。また、ステップS202での判断の結果、金属疲労の程度α1が第1閾値β1を越えていないと判断された場合には、ステップS201に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0034】
次いで、報知部34は、第1破損危険度に関する情報、すなわち、攪拌子22の交換を促す情報を報知する(ステップS204)。この報知をユーザが確認した場合、ユーザは、例えば、交換用の攪拌子22があれば当該攪拌子22に交換したり、交換用の攪拌子22がなければ当該攪拌子22を手配したり、攪拌子22の交換を見送ったりする等の選択をすることができる。
【0035】
次いで、攪拌子22の交換がされたか否かを判断する(ステップS205)。この判断は、交換ボタン(交換完了ボタン)がユーザによって押圧されたか否かで行われる。なお、交換ボタンは、攪拌装置2の入力部26の一部として含まれている。
【0036】
ステップS205での判断の結果、交換ボタンが押圧されたと判断された場合には、金属疲労の程度α1を初期化する、すなわち、金属疲労の程度α1をクリア(ゼロ)にする(ステップS206)。ステップS206実行後、ステップS201に戻り、以降のステップを順次実行する。
また、ステップS205での判断の結果、交換ボタンが押圧されていないと判断された場合には、金属疲労推定部321が金属疲労の程度α2を演算する(ステップS207)。
【0037】
ステップS207実行後、危険度推定部322は、金属疲労の程度α2が第2閾値β2を越えたか否かを判断する(ステップS208)。
ステップS208での判断の結果、金属疲労の程度α2が第2閾値β2を越えたと判断された場合には、危険度推定部322は、攪拌子22の破損危険度が第2破損危険度であると推定する(ステップS209)。また、ステップS208での判断の結果、金属疲労の程度α2が第2閾値β2を越えていないと判断された場合には、ステップS207に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0038】
次いで、報知部34は、第2破損危険度に関する情報、すなわち、攪拌子22の交換を促す情報を報知する(ステップS210)。この報知をユーザが確認した場合、ステップS204のときと同様に、ユーザは、例えば、交換用の攪拌子22があれば当該攪拌子22に交換したり、交換用の攪拌子22がなければ当該攪拌子22を手配したり、攪拌子22の交換を見送ったりする等の選択をすることができる。
【0039】
次いで、攪拌子22の交換がされたか否かを判断する(ステップS211)。この判断は、前記交換ボタンがユーザによって押圧されたか否かで行われる。
ステップS211での判断の結果、交換ボタンが押圧されたと判断された場合には、金属疲労の程度α2を初期化する(ステップS212)。ステップS212実行後、ステップS201に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0040】
また、ステップS211での判断の結果、交換ボタンが押圧されていないと判断された場合には、攪拌装置2の作動を強制的に停止する(ステップS213)。
以上のような制御プログラムを実行することにより、前記不具合を解消することができる。
【0041】
<第2実施形態>
以下、図5図7を参照して本発明の食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、食品撹拌装置の監視装置が実行する制御プログラムが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0042】
攪拌子22の経時的な劣化には、前述した金属疲労による劣化の他に、摩耗による劣化も含めることができる。ここで、「摩耗」とは、攪拌子22と食品FDとの間で摩擦が生じて、攪拌子22が擦り減っていく現象のことを言う。そして、この擦り減りも、金属疲労の程度と合わせて、攪拌子22を破損に至らせる原因となるおそれがある。
本実施形態では、食品攪拌システム1は、摩耗による劣化も考慮して、前記不具合を解消するよう構成されている。以下、この構成および作用について説明する。
【0043】
図5に示すように、監視装置3のCPU32は、攪拌子22の摩耗の程度(以下単に「摩耗」と言う)を推定する摩耗推定部323としての機能も有する。また、危険度推定部322は、攪拌子22の金属疲労の程度と、攪拌子22の摩耗とに基づいて、攪拌子22の破損危険度を推定することができる。これにより、破損危険度の推定をより正確に行うことができる。
【0044】
摩耗推定部323は、攪拌子22の攪拌条件に基づいて、摩耗を演算する。例えば、攪拌条件に攪拌子22の回転時間や攪拌周波数、攪拌子22の径(インペラ径)、モータ23の定格回転数を用いた場合、摩耗は、攪拌子22の回転時間に攪拌周波数、攪拌子22の径、モータ23の定格回転数と任意に設定した係数を積算することから、摩耗を演算する際の演算式として、攪拌子22の回転時間と攪拌周波数、攪拌子22の径、モータの定格回転数との関数とすることができる。この関数は、例えば、実験またはシミュレーション等で求められる。そして、摩耗推定部323は、演算式から得られた結果を、実際の摩耗として推定する。
【0045】
次に、本実施形態での制御プログラムについて、図6図7に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御プログラムは、記憶部33に予め記憶されており、CPU32で実行される。
図6に示すように、本実施形態では、ステップS200とステップS102との間で、摩耗対応処理のサブルーチンを実行する(ステップS300)。なお、摩耗対応処理の実行中に、攪拌装置2の作動停止指示があれば、摩耗対応処理も停止する。
【0046】
摩耗対応処理のフローチャートを図7に示す。なお、後述する第1閾値δ1および第2閾値δ2は、それぞれ、記憶部33に予め記憶されている。また、第1閾値δ1および第2閾値δ2は、それぞれ、適宜変更可能である。
図7に示すように、まず、摩耗推定部323が摩耗γ1を演算する(ステップS301)。
次いで、危険度推定部322は、摩耗γ1が第1閾値δ1を越えたか否かを判断する(ステップS302)。
【0047】
ステップS302での判断の結果、摩耗γ1が第1閾値δ1を越えたと判断された場合には、危険度推定部322は、現在の金属疲労対応処理での結果を反映させる、すなわち、金属疲労の程度α1または金属疲労の程度α2と、摩耗γ1との総和を演算する(ステップS303)。
【0048】
そして、危険度推定部322は、ステップS303での演算結果に基づいて、攪拌子22の破損危険度が第1破損危険度であると推定可能か否かを判断する(ステップS304)。この判断についても、例えば、ステップS303での演算結果と、所定の閾値との大小関係に基づいて行うことができる。
【0049】
ステップS304での判断の結果、破損危険度が第1破損危険度であると推定可能な場合には、危険度推定部322は、攪拌子22の破損危険度が第1破損危険度であると推定する(ステップS305)。
なお、ステップS302での判断の結果、摩耗γ1が第1閾値δ1を越えていないと判断された場合と、ステップS304での判断の結果、損危険度が第1破損危険度であると推定不可となる場合には、いずれも、ステップS301に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0050】
ステップS305実行後、報知部34は、第1破損危険度に関する情報として、攪拌子22の交換を促す情報を報知する(ステップS306)。
次いで、攪拌子22の交換がされたか否かを判断する(ステップS307)。
ステップS307での判断の結果、交換ボタンが押圧されたと判断された場合には、摩耗γ1を初期化する(ステップS308)。ステップS308実行後、ステップS301に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0051】
また、ステップS307での判断の結果、交換ボタンが押圧されていないと判断された場合には、摩耗推定部323が摩耗γ2を演算する(ステップS309)。
ステップS309実行後、危険度推定部322は、摩耗γ2が第2閾値δ2を越えたか否かを判断する(ステップS310)。
【0052】
ステップS310での判断の結果、摩耗γ2が第2閾値δ2を越えたと判断された場合には、危険度推定部322は、現在の金属疲労対応処理での結果を反映させる、すなわち、金属疲労の程度α1または金属疲労の程度α2と、摩耗γ2との総和を演算する(ステップS311)。
【0053】
そして、危険度推定部322は、ステップS311での演算結果に基づいて、攪拌子22の破損危険度が第2破損危険度であると推定可能か否かを判断する(ステップS312)。この判断についても、ステップS304と同様に、例えば、ステップS311での演算結果と、所定の閾値との大小関係に基づいて行うことができる。
【0054】
ステップS312での判断の結果、破損危険度が第2破損危険度であると推定可能な場合には、危険度推定部322は、攪拌子22の破損危険度が第2破損危険度であると推定する(ステップS313)。
なお、ステップS310での判断の結果、摩耗γ2が第2閾値δ2を越えていないと判断された場合と、ステップS312での判断の結果、破損危険度が第2破損危険度であると推定不可となる場合には、いずれも、ステップS309に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0055】
ステップS313実行後、報知部34は、第2破損危険度に関する情報として、攪拌子22の交換を促す情報を報知する(ステップS314)。
次いで、攪拌子22の交換がされたか否かを判断する(ステップS315)。
ステップS315での判断の結果、交換ボタンが押圧されたと判断された場合には、摩耗γ2を初期化する(ステップS316)。ステップS316実行後、ステップS301に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0056】
また、ステップS315での判断の結果、交換ボタンが押圧されていないと判断された場合には、攪拌装置2の作動を強制的に停止する(ステップS317)。
以上のような制御プログラムを実行することにより、前記不具合を解消することができる。
【0057】
以上、本発明の食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0058】
また、本発明の食品撹拌装置の監視装置および食品攪拌システムは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、食品攪拌システム1では、監視装置3による監視範囲を、攪拌子22の他に、例えば、モータ23等にも拡大することもできる。
【0059】
また、前記第1実施形態では、金属疲労推定部321、危険度推定部322の機能を、1つのCPU32が担っているが、これに限定されない。例えば、2つの独立したCPU32がそれぞれ金属疲労推定部321、危険度推定部322の機能になっていてもよい。
【0060】
また、前記第2実施形態では、金属疲労推定部321、危険度推定部322、摩耗推定部323の機能を、1つのCPU32が担っているが、これに限定されない。例えば、3つの独立したCPU32がそれぞれ金属疲労推定部321、危険度推定部322、摩耗推定部323の機能になっていてもよい。
また、前記各実施形態では、危険度推定部322は、閾値を2段階に分けて、破損危険度を推定しているが、閾値を3段階以上に分けて、破損危険度を推定してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 食品攪拌システム
2 食品攪拌装置(攪拌装置)
21 攪拌槽
211 底部
22 攪拌子
221 シャフト
222 インペラ(ロータ)
223 カッター
23 モータ
231 動力伝達シャフト
24 歯車機構
25 制御部
251 CPU
252 記憶部
26 入力部
3 食品撹拌装置の監視装置(監視装置)
31 制御部
32 CPU
321 金属疲労推定部
322 危険度推定部
323 摩耗推定部
33 記憶部
34 報知部
FD 食品
S101、S102、S200~S213、S300~S317 ステップ
α1、α2 金属疲労
β1 第1閾値
β2 第2閾値
γ1、γ2 摩耗
δ1 第1閾値
δ2 第2閾値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7