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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】梁構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230928BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E04B1/58 506A
E04B1/21 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020092786
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188315
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】上田 大輔
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-241625(JP,A)
【文献】特開2009-293192(JP,A)
【文献】特開2011-252304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕口部を有するプレキャストコンクリート造の直線状の第1梁部材と、前記第1梁部材の仕口部に接合されたプレキャストコンクリート造の直線状の第2梁部材と、を備える略T字形または略L字形状の梁構造であって、
前記仕口部の内部には、雌ねじ部を有する定着板が埋設されるとともに、前記定着板の雌ねじ部から略水平に延びて外部に至る鉄筋収容穴が形成され、
前記鉄筋収容穴の一端側は、前記仕口部の内部に留まっており、
前記鉄筋収容穴には、一端側に雄ねじが形成された鉄筋が挿入され、前記鉄筋の雄ねじは、前記定着板の雌ねじ部に螺合されるとともに、前記鉄筋の他端側は、前記第2梁部材の梁主筋に機械式継手で接合され、
前記鉄筋と前記鉄筋収容穴との隙間には、グラウト材が充填されていることを特徴とする梁構造。
【請求項2】
前記第1梁部材は、前記仕口部と、前記仕口部の両側面に設けられて一対の梁部と、を備え、
前記梁部の梁主筋は、前記仕口部を貫通して上下に複数段配筋されており、
少なくとも一部の前記定着板は、前記梁部の複数段の梁主筋同士の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の梁構造。
【請求項3】
仕口部を有するプレキャストコンクリート造の直線状の第1梁部材と、前記第1梁部材の仕口部に接合されたプレキャストコンクリート造の直線状の第2梁部材と、を備える略T字形または略L字形状の梁構造の構築方法であって、
前記仕口部の内部には、雌ねじ部を有する定着板が埋設されるとともに、前記定着板の雌ねじ部から略水平に延びて外部に至る鉄筋収容穴が形成されており、
前記鉄筋収容穴の一端側は、前記仕口部の内部に留まっており、
前記第1梁部材の前記鉄筋収容穴に一端側に雄ねじが形成された鉄筋を挿入し、前記鉄筋の雄ねじを前記定着板の雌ねじ部に螺合し、前記鉄筋と前記鉄筋収容穴との隙間にグラウト材を充填する工程と、
前記第1梁部材の仕口部に前記第2梁部材を配置し、前記鉄筋の他端側を前記第2梁部材の梁主筋に機械式継手で接合する工程と、を備えることを特徴とする梁構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート造の梁部材同士を接合してなる梁構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレキャストコンクリート造(PC造)の仕口部材(柱梁接合部)にプレキャストコンクリート造(PC造)の梁部材を接合する構造が提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、PC仕口部材とPC梁部材との接合方法が示されている。PC仕口部材には、このPC仕口部材の互いに背中合わせの側面同士を貫通する鉄筋収容孔が形成されており、この鉄筋収容孔の端部には、内周面に雌ねじが形成された円筒形の定着金物が埋設されている。一方、PC梁部材の梁主筋の先端には、機械式継手が取り付けられている。まず、PC仕口部材の側面にPC梁部材を配置し、この状態で、外周面に雄ねじが形成された鉄筋を定着金物に螺合して、この鉄筋の先端がPC梁部材の機械式継手内に到達するように配筋する。そして、鉄筋の端部側からナットを締め付け、PC梁部材の機械式継手内および鉄筋収容孔内にグラウトを充填する。
【0003】
特許文献2には、PC造の柱とPC造の梁との接合構造が示されている。柱の柱梁接合部の四隅には、上方に突出する立ち上がり部が形成されている。梁を柱の側面に配置し、この梁の梁主筋の先端に定着金物である端部材を取り付ける。この状態で、柱梁接合部にコンクリートを打設して接合コンクリート部を構築する。
特許文献3には、PC梁とPC柱との接合構造が示されている。PC柱には、PC梁の梁主筋と同軸位置に貫通孔が形成されている。接合鉄筋を貫通孔に挿通して、この接合鉄筋の先端側をPC梁に機械式継手で接合する。次に、PC柱の貫通孔内に充填材を充填して、接合鉄筋の基端側を貫通孔内に定着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-293192号公報
【文献】特開2017-89111号公報
【文献】特開2018-12992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、T字形状の3方向に梁が延びる梁構造を短工期で構築する方法として、仕口部に雌ねじ部を有する定着金物を埋設したPC造の第1梁部材を製造し、次に、第1梁部材の仕口部内に鉄筋(接続鉄筋)を挿入して定着金物に螺合して、仕口部から鉄筋を突出させ、その鉄筋の先端側を第2梁部材の梁主筋に接合することで、比較的容易に短工期で梁構造を構築できる点に着目して、本発明に至った。
本発明は、プレキャストコンクリート造の梁部材同士を接合してなる梁構造について、建設現場にて、梁部材同士を比較的容易に接合して、短工期で構築可能な梁構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の梁構造(例えば、後述の梁構造1)は、仕口部(例えば、後述の仕口部21)を有するプレキャストコンクリート造の第1梁部材(例えば、後述の第1梁部材20)と、前記第1梁部材の仕口部に接合されたプレキャストコンクリート造の第2梁部材(例えば、後述の第2梁部材30)と、を備える梁構造であって、前記仕口部の内部には、雌ねじ部(例えば、後述の雌ねじ部41)を有する定着板(例えば、後述の定着板40)が埋設されるとともに、前記定着板の雌ねじ部から外部に至る鉄筋収容穴(例えば、後述の鉄筋収容穴42)が形成され、前記鉄筋収容穴には、一端側に雄ねじ(例えば、後述の雄ねじ26)が形成された鉄筋(例えば、後述の鉄筋25)が挿入され、前記鉄筋の雄ねじは、前記定着板の雌ねじ部に螺合されるとともに、前記鉄筋の他端側は、前記第2梁部材の梁主筋(例えば、後述の梁主筋33)に機械式継手(例えば、後述の機械式継手32)で接合され、前記鉄筋と前記鉄筋収容穴との隙間には、グラウト材(例えば、後述のグラウト材43)が充填されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第1梁部材の仕口部(柱梁接合部)の内部に、雌ねじ部を有する定着板を埋設するとともに、定着板の雌ねじ部から外部に至る鉄筋収容穴を形成した。よって、まず、第1梁部材の仕口部の鉄筋収容穴に鉄筋を挿入して、この鉄筋の一端側の雄ねじを定着板の雌ねじ部に螺合し、その後、鉄筋と鉄筋収容穴との隙間にグラウト材を充填することで、第1梁部材の仕口部から鉄筋を突出させて、梁構造の一部を構築する。次に、第1梁部材の仕口部の側面に第2梁部材を配置し、第1梁部材から突出させた鉄筋を第2梁部材の梁主筋に機械式継手で接合する。したがって、建設現場にて、第1梁部材の仕口部に第2梁部材を比較的容易に接合して、短工期でプレキャストコンクリート造の梁構造を構築できる。
また、第1梁部材を鉄筋が突出していない状態でPC工場から施工現場まで運搬可能となるので、トラックの荷台に第1梁部材を多数積載でき、低コストで梁構造を構築できる。
【0008】
第2の発明の梁構造は、前記第1梁部材は、前記仕口部と、前記仕口部の両側面に設けられて一対の梁部(例えば、後述の梁部22)と、を備え、前記梁部の梁主筋(例えば、後述の梁主筋24)は、前記仕口部を貫通して上下に複数段配筋されており、少なくとも一部の定着板は、前記梁部の複数段の梁主筋同士の間に配置されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、少なくとも一部の定着板を、仕口部を貫通する梁主筋同士の間に配置したので、定着板付きの鉄筋を第1梁部材の仕口部内に確実に配筋できる。
【0010】
第3の発明の梁構造の構築方法は、仕口部(柱梁接合部)を有するプレキャストコンクリート造の第1梁部材と、前記第1梁部材の仕口部に接合されたプレキャストコンクリート造の第2梁部材と、を備える梁構造の構築方法であって、前記仕口部の内部には、雌ねじ部を有する定着板が埋設されるとともに、前記定着板の雌ねじ部から外部に至る鉄筋収容穴が形成されており、前記第1梁部材の前記鉄筋収容穴に一端側に雄ねじが形成された鉄筋を挿入し、前記鉄筋の雄ねじを前記定着板の雌ねじ部に螺合し、前記鉄筋と前記鉄筋収容穴との隙間にグラウト材を充填する工程(例えば、後述のステップS1、S2)と、前記第1梁部材の仕口部に前記第2梁部材を配置し、前記鉄筋の他端側を前記第2梁部材の梁主筋に機械式継手で接合する工程(例えば、後述のステップS3、S4)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第1梁部材の鉄筋収容穴に鉄筋を挿入し、鉄筋の雄ねじを定着板の雌ねじ部に螺合して、鉄筋と鉄筋収容穴との隙間にグラウト材を充填する。これにより、第1梁部材の仕口部から鉄筋が突出することになる。次に、第1梁部材の仕口部に第2梁部材を配置し、突出した鉄筋の他端側を第2梁部材の梁主筋に機械式継手で接合する。よって、第1梁部材の仕口部に第2梁部材を比較的容易に接合して、短工期でプレキャストコンクリート造の梁構造を構築できる。
また、第1梁部材を鉄筋が突出していない状態でPC工場から施工現場まで運搬できるので、トラックの荷台に第1梁部材を多数積載でき、運搬が容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレキャストコンクリート造の梁部材同士を接合してなる梁構造について、梁部材同士を比較的容易に接合して、短工期で構築可能な梁構造およびその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る梁構造の分解斜視図である。
図2】梁構造の平断面図である。
図3図2の梁構造のA-A断面図である。
図4】梁構造を構成する第1梁部材の平面図である。
図5】第1梁部材の構築手順の説明図(その1、定着板の配置を示す図)である。
図6】第1梁部材の構築手順の説明図(その1、注入ホースの配置を示す図)である。
図7】梁構造の構築手順のフローチャートである。
図8】梁構造の構築手順の説明図(その1、鉄筋の取り付けを示す図)である。
図9】梁構造の構築手順の説明図(その2、グラウト材の注入を示す図)である。
図10】梁構造の構築手順の説明図(その3、第2梁部材の取り付けを示す図)である。
図11】本発明の第2実施形態に係る梁構造の分解斜視図である。
図12】本発明の変形例に係る第1梁部材の平面図である
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、プレキャストコンクリート造の第1梁部材と第2梁部材とを接合して構築したT字形またはL字形状の梁構造、および、その構築方法である。
具体的には、本発明は、PC造の第1梁部材の仕口部内に雌ねじ部を有する定着金物を埋設しておき、この雌ねじ部に鉄筋の一端側の雄ねじを螺合するとともに、この鉄筋の他端側をPC造の第2梁部材の梁主筋と接合させて、PC造の梁部材同士を接合させた梁構造である。
第1実施形態は、PC造の第1梁部材とPC造の第2梁部材とを、第1梁部材の定着板に螺合した鉄筋を介して接合したT字形状の梁構造である。第2実施形態は、PC造の第1梁部材とPC造の第2梁部材とを、第1梁部材の定着板に螺合した鉄筋および現場打設コンクリート部を介して接合したT字形状の梁構造である。また、変形例は、PC造の第1梁部材とPC造の第2梁部材とをL字形状に接合した梁構造である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る梁構造1の分解斜視図である。
梁構造1は、平面視で略T字形状であり、柱部材10と、この柱部材10の上に接合された仕口部(柱梁接合部)21を有するプレキャストコンクリート造の第1梁部材20と、第1梁部材20の仕口部21に接合されたプレキャストコンクリート造の第2梁部材30と、を備える。
【0015】
柱部材10の上端面には、柱主筋11が上方に突出して設けられている。
第1梁部材20は、仕口部21と、仕口部21の両側面に設けられた一対の梁部22と、を備える。一対の梁部22は、仕口部21を挟んで略直線状に配置されている。
【0016】
図2は、梁構造1の平断面図である。図3は、図2の梁構造1のA-A断面図である。
第1梁部材20の仕口部21には、上下に貫通する柱主筋貫通孔23が形成され、柱部材10の柱主筋11は、この柱主筋貫通孔23に挿通されている。
また、第1梁部材20の仕口部21の内部には、雌ねじ部41を有する定着板40が複数埋設されるとともに、定着板40の雌ねじ部41から外部に至る鉄筋収容穴42が形成されている。
【0017】
梁部22の梁主筋24は、仕口部21を貫通して上下端側に二段ずつ配筋されている。
定着板40は、上下端側に二段ずつ設けられている。このうち、下段の定着板40は、梁部22の二段の梁主筋24同士の間に配置されている。
また、鉄筋収容穴42には、一端側に雄ねじ26が形成された鉄筋25が挿入され、この鉄筋25の雄ねじ26は、定着板40の雌ねじ部41に螺合されている。鉄筋25と鉄筋収容穴42との隙間には、グラウト材43が充填されている。
【0018】
第2梁部材30の端面には、鉄筋収容穴31が形成されており、この鉄筋収容穴31の底面には、第2梁部材30の梁主筋33に接合された機械式継手32が設けられている。
第1梁部材20に取り付けられた鉄筋25の他端側は、第2梁部材30の鉄筋収容穴31に挿入されて、機械式継手32に接合されている。これにより、鉄筋25は、第2梁部材30の梁主筋33に機械式継手32を介して接合されることになる。
なお、鉄筋25と鉄筋収容穴31との隙間にも、グラウト材43が充填されている。
【0019】
以上の第1梁部材20は、工場で製造され、図4に示すように、鉄筋25が取り付けられていない状態で、工場から現場まで運搬される。このとき、第1梁部材20から鉄筋25が突出していないため、大きなスペースを占めることなく、トラックの荷台に多数積載することが可能である。
【0020】
第1梁部材20は、以下の手順で構築される。
まず、第1梁部材20を構築するための型枠内に、梁主筋24、梁主筋24を囲むあばら筋、柱主筋貫通孔23を形成するためのシース管、柱主筋貫通孔23に挿通される柱主筋11を囲む帯筋などを配筋する。また、この型枠内に定着板40を配置し、この定着板40に鉄筋収容穴42を形成するシース管44を取り付ける(図6参照)。
ここで、水平方向に並んだ定着板40同士は、図5に示すように、水平方向に延びる棒状の位置決め部材45に溶接固定されており、この位置決め部材45を仕口部21内の鉄筋に結束線などで固定することで、定着板40を位置決めする。また、図6に示すように、シース管44の内部空間同士を注入ホース46などで連通させるとともに、注入ホース46の両端は外部空間に露出させておく。
そして、型枠内にコンクリートを打設して、第1梁部材20を構築する。
【0021】
次に、梁構造1を構築する手順について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図8に示すように、第1梁部材20の鉄筋収容穴42に鉄筋25を取り付けて梁主筋とする。具体的には、第1梁部材20の鉄筋収容穴42に鉄筋25を挿入し、鉄筋25の雄ねじ26を定着板40の雌ねじ部41に螺合する。このとき、鉄筋25と仕口部21との間にマーキングして、所定のトルク(例えば、180N・m以上)で締め付ける。
ステップS2では、図9に示すように、第1梁部材20の鉄筋収容穴42にグラウト材43を充填する。具体的には、まず、鉄筋25のうち第1梁部材20の鉄筋収容穴42から露出した部分に、ワッシャー47を通して、ロックナット48を締め付ける。これにより、鉄筋収容穴42の入口を塞ぐ。この状態で、注入ホース46の一端側からグラウト材43を注入することで、鉄筋25と鉄筋収容穴42との隙間にグラウト材43を充填する。
【0022】
ステップS3では、柱部材10を建て込み、この柱部材10の上に第1梁部材20を取り付ける。具体的には、第1梁部材20を揚重機で吊り上げて、第1梁部材20の仕口部21の柱主筋貫通孔23に柱部材10の柱主筋11が挿通するように、柱部材10の上に第1梁部材20を吊り下ろす(図1参照)。
ステップS4では、図10に示すように、第1梁部材20に第2梁部材30を取り付ける。具体的には、第2梁部材30を揚重機で吊り上げて、第1梁部材20の仕口部21の側面に配置し、第1梁部材20の梁主筋である鉄筋25を第2梁部材30の鉄筋収容穴31に挿入して、機械式継手32に接合する。その後、鉄筋25と鉄筋収容穴31との隙間にグラウト材43を充填する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1梁部材20の仕口部21の内部に、雌ねじ部41を有する定着板40を埋設するとともに、定着板40の雌ねじ部41から外部に至る鉄筋収容穴42を形成した。よって、まず、第1梁部材20の仕口部21の鉄筋収容穴42に鉄筋25を挿入して、この鉄筋25の雄ねじ26を定着板40の雌ねじ部41に螺合し、鉄筋25と鉄筋収容穴42との隙間にグラウト材43を充填することで、第1梁部材20の仕口部21から鉄筋25を突出させる。次に、第1梁部材20の仕口部21の側面に第2梁部材30を配置し、第1梁部材20の鉄筋25を第2梁部材30の鉄筋収容穴31に挿入して、機械式継手32で接合する。したがって、建設現場にて、第1梁部材20の仕口部21に第2梁部材30を比較的容易に接合して、短工期でプレキャストコンクリート造の梁構造1を構築できる。
また、第1梁部材20を鉄筋25が突出していない状態でPC工場から施工現場まで運搬可能となるので、トラックの荷台に第1梁部材20を多数積載でき、低コストで梁構造1を構築できる。
【0024】
(2)一部の定着板40を、仕口部21を貫通する梁主筋24同士の間に配置したので、定着板付きの鉄筋25を第1梁部材20の仕口部21内に確実に配筋できる。
(3)第2梁部材30の梁主筋33を、第1梁部材20の仕口部21に埋設された定着板付きの鉄筋25に接合したので、梁主筋33の仕口部21内に定着する鉄筋の長さを短くしつつ、優れた定着性能を確保することができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態に係る梁構造1Aの平断面図である。
本実施形態では、第2梁部材30Aの構造が、第1実施形態と異なる。すなわち、第2梁部材30の端面から機械式継手32が外部に露出している。よって、第1梁部材20の梁主筋である鉄筋25を機械式継手32に接合した後、第2梁部材30の端面と第1梁部材20の仕口部21との間にコンクリートを打設して現場打設コンクリート部49を形成することで、第1梁部材20と第2梁部材30とを接合した梁構造1Aを実現する。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、第1梁部材20に一対の梁部22を設け、梁構造1を平面視で略T字形状としたが、これに限らず、図12に示すように、第1梁部材20Aに単一の梁部22を設け、第1梁部材20Aと第2梁部材30とを接合して、梁構造1を平面視で略L字形状としてもよい。
また、上述の各実施形態では、第1梁部材20の仕口部21から突出した鉄筋25と第2梁部材30の梁主筋33とを機械式継手32で接合したが、継手は機械式継手に限定されず、重ね継手や突合せ溶接継手であってもよい。また、継手位置も第2梁部材30内に限定されず、第2梁部材30に接して設けた現場打設コンクリート部49に設けてもよい。
また、上述の各実施形態では、鉄筋収容穴42をシース管44で形成したが、鉄筋収容穴42にグラウト材43を注入する際、このシース管44を撤去した状態でグラウト材43を注入してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1、1A…梁構造 10…柱部材 11…柱主筋
20、20A…第1梁部材 21…仕口部 22…梁部 23…柱主筋貫通孔
24…梁主筋 25…鉄筋 26…鉄筋に形成された雄ねじ
30、30A…第2梁部材 31…鉄筋収容穴 32…機械式継手 33…梁主筋
40…定着板 41…雌ねじ部 42…鉄筋収容穴 43…グラウト材
44…シース管 45…位置決め部材 46…注入ホース 47…ワッシャー
48…ロックナット 49…現場打設コンクリート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12