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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】口腔内装着器具用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/23 20060101AFI20230928BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 11/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K8/23
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/36
A61Q11/00
A61Q11/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167912
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059973
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】千葉 厚子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126868(JP,A)
【文献】特開2010-280588(JP,A)
【文献】国際公開第2013/100089(WO,A1)
【文献】亜硫酸ナトリウムのCandida glabrata傷害作用,東北薬科大学研究誌,2009年,Vol. 56,41-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)亜硫酸塩 0.01質量%以上2.5質量%以下
(B)フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、及びエチルパラベンから選ばれる1種又は2種以上の芳香族アルコール化合物
(C)アニオン性界面活性剤 1.5質量%以上5質量%以下
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.1以上1.0以下であり、かつ25℃におけるpHが9以上12以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が、0.1以上1以下である請求項1に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(A)が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、及び二亜硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、質量平均分子量が2000以上500000以下のアニオン性ホモポリマー又はコポリマー(D)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項5】
口腔内装着器具に堅固に付着又は残存する口腔カンジダ菌を除去するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超高齢化の進展に伴い、義歯のような着脱可能な口腔内装着器具の装着を余儀なくされる人々が加速的に増加している。このような口腔内装着器具、例えば義歯や歯科矯正器具等は、特に複雑な形状を伴う口腔内装着器具の端部において、装着中に付着したデンチャープラークや食物残渣等の汚れが残存しやすく、またバイオフィルムの形成に大きく関与する口腔カンジダ菌等の病原性菌も固着しやすい。そのため、こうした口腔内装着器具を清潔に保つべく、従来より種々の洗浄組成物が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、界面活性剤、亜硫酸塩及び特定のポリリン酸塩を特定量かつ特定の質量比で含有する義歯洗浄用液体組成物が開示されており、亜硫酸塩の漂白作用によって、義歯のステイン汚れを効果的に除去する試みがなされている。また特許文献2には、塩化リゾチームを含有し、防腐剤としてフェノキシエタノール等も含有し得る口腔内装着器具用洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-126868号公報
【文献】特開2006-117600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2には、口腔内装着器具に堅固に付着又は残存する口腔カンジダ菌を除去することについて、何らの開示も示唆もされていない。また、洗浄後の口腔用装着器具を口腔内へ戻して装着した際に、組成物の含有成分が起因となってもたらされ得る不快臭に関し、上記いずれの特許文献においても何らの検討もなされておらず、依然として改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮するとともに、組成物自体に由来する不快臭の発生を効果的に抑制することのできる、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定量の亜硫酸塩とフェノキシエタノール等の芳香族アルコール化合物とを、特定の質量比にて、界面活性剤とともに含有することにより、口腔カンジダ菌の除菌効果を有する口腔内装着器具用洗浄剤組成物を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)亜硫酸塩 0.01質量%以上2.5質量%以下
(B)フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、及びエチルパラベンから選ばれる1種又は2種以上の芳香族アルコール化合物
(C)界面活性剤
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.1以上1.8以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物によれば、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮することができる。その上、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制するとともに、良好な保存安定性をも保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「口腔内装着器具」とは、全部床義歯、部分床義歯、歯列矯正器具、リテーナー、或いはマウスピース等(以下、これらを総称して「義歯等」ともいう。)の、いわゆる口腔内にて着脱を要する歯科用装着器具を意味する。具体的には、例えば、全部床義歯(総入れ歯)とは、無歯顎に装着するための義歯であって、人口歯と義歯床から構成されてなる。一方、部分床義歯(部分入れ歯)とは、部分的に歯が失われた顎に装着するための義歯であって、人口歯、義歯床、及びクラスプやレスト、アタッチメント等の支台装置から構成されてなり、歯列矯正器具やリテーナーやマウスピースもこれに類する構成を有する。義歯床の材質としては、一般的にアクリルレジン等の樹脂が挙げられ、人口歯や支台装置の材質は、かかる樹脂のほか、チタン等の金属やセラミック等が挙げられる。
なお、本明細書において、「デンチャープラーク」とは、口腔内装着器具に付着した菌と菌が生産する細胞外物質の集合体を意味する。
【0011】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、次の成分(A)~(C):
(A)亜硫酸塩 0.01質量%以上2.5質量%以下
(B)フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、及びエチルパラベンから選ばれる1種又は2種以上の芳香族アルコール化合物
(C)界面活性剤
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.1以上1.8以下である。
【0012】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)として、亜硫酸塩を0.01質量%以上2.5質量%以下含有する。かかる成分(A)を含有することにより、後述する成分(B)と相まって、口腔カンジダ菌の除菌効果を有効に図りつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制することが可能となる。
かかる成分(A)としては、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、及び二亜硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、口腔カンジダ菌に対する除菌効果を確保しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、亜硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0013】
成分(A)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.12質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、良好な保存安定性を保持する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、2.5質量%以下であって、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは0.6質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.4質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、0.01質量%以上2.5質量%以下であって、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましく0.08~1.5質量%であり、よりさらに好ましく0.12~1.5質量%である。また、成分(A)の含有量は、口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮し、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制しつつ良好な保存安定性を保持する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、0.01質量%以上2.5質量%以下であって、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましくは0.08~0.6質量%であり、よりさらに好ましくは0.08~0.4質量%である。
【0014】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(B)として、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、及びエチルパラベンから選ばれる1種又は2種以上の芳香族アルコール化合物を含有する。かかる成分(B)を含有することにより、口腔カンジダ菌に対する優れた除菌効果を発揮することができる。なかでも、成分(B)のうちフェノキシエタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルメチルフェノールを含有することにより、洗浄剤組成物に由来する不快臭が発生するおそれがあるものの、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、これをも有効に抑制することができる。
成分(B)のなかでも、口腔カンジダ菌の除菌効果を高める観点から、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、フェノキシエタノール、又はベンジルアルコールがより好ましく、フェノキシエタノールがさらに好ましい。
【0015】
成分(B)の含有量は、口腔カンジダ菌の除菌効果を有効に高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を確保しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.1~2質量%であり、より好ましくは0.3~1.8質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0016】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を高めつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、0.1以上であって、好ましくは0.12以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、良好な保存安定性を確保する観点から、1.8以下であって、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは0.75以下であり、さらに好ましくは0.6以下であり、よりさらに好ましくは0.4以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を高めつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点から、0.1以上1.8以下であって、好ましくは0.12~1.5であり、より好ましくは0.12~0.75であり、より好ましくは0.15~0.6であり、さらに好ましくは0.25~0.4である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、良好な保存安定性を確保する観点から、0.1以上1.8以下であって、好ましくは0.12~1.5であり、より好ましくは0.12~0.75であり、より好ましくは0.12~0.6であり、さらに好ましくは0.12~0.4である。
【0017】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(C)として、界面活性剤を含有する。かかる成分(C)を含有することにより、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮させることが可能となり、また洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生の効果的な抑制、及び良好な保存安定性の確保に寄与することができ、さらに優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させることが可能となる。かかる成分(C)としては、アニオン性界面活性剤(c1)、両性界面活性剤(c2)、及びノニオン性界面活性剤(c3)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
アニオン性界面活性剤(c1)としては、具体的には、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルサルコシン塩等のN-アシルアミノ酸塩;N-ラウロイルメチルタウリン等のN-アシルタウリン;オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制し、かつ良好な保存安定性及び優れたデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルタウリン、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、並びに脂肪酸又はその塩から選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0019】
N-アシルアミノ酸又はその塩のアシル基は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制し、かつ良好な保存安定性及び優れたデンチャープラーク除去効果をもたらす観点から、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸又はそれらの混合脂肪酸を由来としたものであって、直鎖脂肪酸又は直鎖脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数6~22のアシル基であるのが好ましく、炭素数10~20のアシル基であるのがより好ましく、炭素数12~18のアシル基であるのがさらに好ましい。
かかるアシル基としては、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、及びココイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイル基、ミリストイル基、及びココイル基から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ミリストイル基、及びココイル基から選ばれる1種以上がさらに好ましく、ココイル基がよりさらに好ましい。
【0020】
N-アシルアミノ酸を構成するアミノ酸部分は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンのいずれであってもよく、D体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。かかるN-アシルアミノ酸としては、具体的には、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ミリストイルアスパラギン酸、及びN-ココイルアスパラギン酸、N-ラウロイルグリシン、N-ミリストイルグリシン、N-ココイルグリシンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N-ミリストイルグルタミン酸、及びN-ココイルグルタミン酸から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0021】
これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、及びカリウム塩がより好ましい。
【0022】
α-オレフィンスルホン酸及びその塩が有するオレフィン基は、炭素数8~18であるのが好ましく、炭素数14~16であるのがより好ましく、炭素数14であるのがさらに好ましい。
【0023】
脂肪酸、及び脂肪酸塩を構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは10以上20以下であり、より好ましくは12以上20以下であり、さらに好ましくは14以上20以下であり、さらに好ましくは16以上20以下である。かかる脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものであってよく、不飽和の直鎖を有するものがより好ましい。
【0024】
脂肪酸、及び脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、イソステアリン酸、及びアラキジン酸、並びにこれらの混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、及びパーム油脂肪酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果をも確保する観点から、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
脂肪酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びアンモニウム塩から選ばれる無機塩;モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、及びトリエタノールアンモニウム塩等の有機アミン塩;アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、良好な保存安定性、及び優れたデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、ナトリウム塩、又はカリウム塩が好ましく、とりわけカリウム塩が好ましい。
【0025】
両性界面活性剤(c2)としては、具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、アルキルアミンオキシド、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン、及びアルキルスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルキルアミンオキシドがより好ましい。
【0026】
ノニオン性界面活性剤(c3)としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリド等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;モノステアリン酸デカグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリド等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;並びにポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体が好ましく、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテルがより好ましい。
【0027】
これら成分(C)としては、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、アニオン性界面活性剤(c1)が好ましく、N-アシルアミノ酸又はその塩、及び脂肪酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、N-アシルアミノ酸又はその塩がさらに好ましく、N-アシルアミノ酸又はその塩及び脂肪酸又はその塩の併用がことさらに好ましい。
【0028】
成分(C)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、同様の観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1.0~4.5質量%であり、さらに好ましくは1.5~4質量%である。
【0029】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.2以上である。また、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、同様の観点から、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.75以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、好ましくは0.1以上1以下であり、より好ましくは0.15~0.75であり、さらに好ましくは0.2~0.5である。
【0030】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、さらに質量平均分子量が2000以上500000以下のアニオン性ホモポリマー又はコポリマー(D)を含有するのが好ましい。アニオン性のホモポリマー又はコポリマーとは、アニオン性モノマー由来の構成単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。
なお、成分(D)は、アニオン性モノマー1種のみ由来の構成単位からなるホモポリマーであってもよく、2種以上のアニオン性モノマー由来の構成単位からなるコポリマーであってもよく、或いはアニオン性モノマー由来の構成単位と、アニオン性モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位とからなるコポリマーであってもよい。
【0031】
成分(D)の質量平均分子量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、2000以上であって、好ましくは5000以上であり、より好ましくは8000以上であり、さらに好ましくは10000以上である。また、成分(D)の質量平均分子量は、同様の観点から、500000以下であって、好ましくは350000以下であり、より好ましくは200000以下であり、さらに好ましくは100000以下である。そして、成分(D)の質量平均分子量は、2000以上500000以下であって、好ましくは5000~350000であり、より好ましくは8000~200000であり、さらに好ましくは10000~100000である。
【0032】
成分(D)が含むアニオン性モノマー由来の構成単位は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基を有するアニオン性モノマー(d1)由来の構成単位であると好ましい。成分(D)を構成するモノマー(d1)としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、スルホン酸、スチレンスルホン酸、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルホスフェート、及びこれらの無水物や一部がアルキル基等により置換されてなるモノマー、並びにヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基が結合してなるグリコピラノース等の糖由来のモノマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、分子構造中に芳香環又は脂環を含まないモノマーであるのが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上であるのがより好ましい。
【0033】
成分(D)の全構成単位100質量%中におけるアニオン性モノマー由来の構成単位の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0034】
成分(D)としては、具体的には、例えば、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、架橋型アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、アクリル酸/スルホン酸コポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸コポリマー、ホスフィン酸/アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、及びヒアルロン酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマー及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマーがさらに好ましい。
【0035】
なお、アクリル酸/マレイン酸コポリマーを構成するアクリル酸モノマー由来の構成単位とマレイン酸モノマー由来の構成単位との質量比(アクリル酸/マレイン酸)は、好ましくは0.01~99であり、より好ましくは0.05~50であり、さらに好ましくは0.1~10であり、よりさらに好ましくは0.1~5である。
【0036】
成分(D)の含有量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を確保しつつ、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、同様の観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1~4質量%であり、さらに好ましくは0.2~3質量%である。
【0037】
成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。また、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、同様の観点から、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、好ましくは0.25以上3.5以下であり、より好ましくは0.4~3であり、さらに好ましくは0.5~2.5である。
【0038】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、優れた保存安定性を確保する観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、炭素数2以上6以下の多価アルコール(E)を含有するのが好ましい。かかる成分(E)としては、具体的には、例えば、グリセリン、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びエチレングリコール等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0039】
成分(E)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、優れた保存安定性を確保する観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下であり、よりさらに好ましくは20質量%以下であり、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
なお、成分(E)のうち、グリセリンを含有する場合、保存安定性の観点から、その含有量を制限するのが好ましい。具体的には、グリセリンの含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0040】
成分(E)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((E)/(B))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは15以上である。また、成分(E)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((E)/(B))は、同様の観点から、好ましくは100以下であり、より好ましくは70以下であり、さらに好ましくは30以下である。そして、成分(E)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((E)/(B))は、好ましくは1以上100以下であり、より好ましくは5~70であり、さらに好ましくは15~30である。
【0041】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、フィチン酸、オルトリン酸、縮合リン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のリン酸化合物(F)を含有するのが好ましい。
フィチン酸は、別名myo-イノシトール6リン酸ともいい、その塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸が挙げられ、オルトリン酸及び縮合リン酸の塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
かかる成分(F)のなかでも、口腔カンジダ菌及びデンチャープラークを両方とも充分に除去する観点から、フィチン酸、ピロリン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0042】
成分(F)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、酸換算量で、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0043】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩,及びケイ酸塩から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物(G)を含有するのが好ましい。
炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩としては、具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
ケイ酸塩としては、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
かかる成分(G)のなかでも、口腔カンジダ菌及びデンチャープラークを双方とも充分に除去する観点から、炭酸塩、及び重炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0044】
成分(G)の含有量は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0045】
成分(G)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((G)/(B))は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、及び優れた保存安定性やデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。また、成分(G)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((G)/(B))は、同様の観点から、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1以下である。そして、成分(G)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((G)/(B))は、好ましくは0.01以上10以下であり、より好ましくは0.05~5であり、さらに好ましくは0.1~1である。
【0046】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、上記各成分を良好に分散又は溶解させつつ、口腔カンジダ菌の除菌効果、及び洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を抑制する効果を発揮させる観点、及び保存安定性を向上させつつ、優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させる観点から、さらに水を含有するのが好ましい。
【0047】
水の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは56質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。
なお、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に直接配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に含まれる全水分を意味する。また、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に予め配合されている水を意味することを含むが、そうでない場合、例えば使用前に水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりした状態である場合、その希釈や溶解に用いた水も含む意味である。
【0048】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、さらに、pH調整剤を含有することができる。これにより、口腔カンジダ菌の除菌効果や洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を抑制する効果の発揮、保存安定性の向上、及び優れたデンチャープラーク除去効果の発揮に有効なpHを維持することができる。
【0049】
pH調整剤としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸又はこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、水酸化物から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。
この場合、pH調整剤の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物のpHを安定化させ、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、優れた保存安定性を確保する観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果をも確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.01~60質量%であり、より好ましくは0.01~20質量%であり、さらに好ましくは0.015~10質量%であり、よりさらに好ましくは0.02~5質量%である。
【0050】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れたデンチャープラーク除去効果を確保する観点から、エタノールの含有を制限するのが好ましい。エタノールの含有量は、具体的には、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは8質量%未満であり、より好ましくは7質量%未満であり、さらに好ましくは6質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0051】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、上記成分以外の界面活性剤、抗炎症剤、香料、顔料、色素等を含有することができる。
【0052】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮しつつ、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制する観点、優れた保存安定性を確保する観点、及び優れたデンチャープラーク除去効果をも確保する観点から、好ましくは8以上であり、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは9以上であり、さらに好ましくは9.5以上であり、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは12以下である。
【0053】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の形態は、泡状、液状、ペースト状、ジェル状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状であってもよく、さらに液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物をシートに含浸させた形態や、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を噴霧容器に充填した形態、泡吐出容器に充填した形態、又はエアゾール容器に充填した形態であってもよい。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いて口腔内装着器具を洗浄するにあたり、粉末状、顆粒状、又は錠剤状の場合は、水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりして、口腔内装着器具用洗浄剤として使用すればよい。この場合、口腔内装着器具用洗浄剤へ適用する時点での口腔内装着器具用洗浄剤組成物が、所定の要件を満たした処方であればよい。
【0054】
なかでも、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は泡状の形態であるのが好ましく、泡で口腔内装着器具を被覆することにより、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を抑制しつつ、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を発揮させ、さらに優れたデンチャープラーク除去効果をも発揮させることができる。
とりわけ、泡状の形態とすることで、これで口腔内装着器具を被覆することにより、複雑な形状を伴う口腔内装着器具の隅々にわたり洗浄剤組成物が充分に到達することとなり、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果とデンチャープラーク除去効果とをともに発揮させることができる。その結果、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水等により漱いで洗い流すのみで、特段ブラッシング等の物理的な付加力を施すことなく、口腔カンジダ菌のみならずデンチャープラークをも有効に除去することができるとともに、洗浄剤組成物に由来する不快臭の発生を有効に抑制することも可能である。
【0055】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態とする場合、口腔内装着器具への被覆を促進し、より一層口腔カンジダ菌の除菌効果とともにデンチャープラーク除去効果をも有効に高める観点から、かかる泡状の形態が、平均泡粒径100μm以上1000μm以下の泡からなる形態であるのが好ましい。さらにかかる平均泡粒径は、より好ましくは250μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上であり、より好ましくは900μm以下であり、さらに好ましくは800μm以下である。
ここで「平均泡粒径」とは、以下の測定方法により求められる値を意味する。具体的には、まずGLASS BASE DISH(IWAKI社製)上に、泡形成機構を備えた容器に格納した洗浄剤組成物を容器内から吐出し、吐出した組成物に速やかに蓋をする。次いで、デジタルマイクロスコープ(VHX-5000、KEYENCE社製)を用いて、吐出した組成物の最表層の泡を倍率20~50倍で撮影する。なお、吐出後における泡の破泡や合一による影響を最小限にするため、ここまでの操作を30秒以内に行う。撮影した画像の気体部分を自動計測することにより、泡の平均径を測定する。
以上の操作を3回行い(n=3)、得られた平均径3点の平均値を「平均泡粒径(μm)」とする。
【0056】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いた口腔内装着器具の洗浄方法は、具体的には、まず使用後の義歯等の口腔内装着器具を口腔内装着器具用洗浄剤組成物に浸漬、或いは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具に泡吐出、塗布、滴下又は噴霧等することにより適用した後、一定時間放置する。放置時間(口腔内装着器具への適用時間)は、通常30秒~30分であればよく、40秒~15分であってもよく、さらに1~5分であっても充分な効果を発揮することができる。
次に、放置後の口腔内装着器具を水等により漱いで口腔内装着器具用洗浄剤組成物を洗い流す。本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、より好ましくは、洗い流すだけでよく、ブラッシング等の物理的な付加力を特段施す必要がない。
【0057】
なかでも、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態とする場合、口腔内装着器具の洗浄方法、義歯等の口腔内装着器具を泡状の口腔内装着器具用洗浄剤組成物で被覆した後、一定時間放置することが好ましい。
泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果を充分に享受する観点から、好ましくは30秒以上であり、より好ましくは40秒以上であり、さらに好ましくは1分以上である。また、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、泡の効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは30分以下であり、より好ましくは15分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。そして、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、好ましくは1分以上30分以下であり、より好ましくは2~15分であり、さらに好ましくは3~5分である。
【0058】
口腔内装着器具を被覆する泡量は、泡の効果を充分に発揮させて、優れた口腔カンジダ菌の除菌効果とともにデンチャープラーク除去効果をも充分に享受する観点から、口腔内装着器具の表面積1cm2あたりに、好ましくは0.05g以上であり、より好ましくは0.07g以上であり、さらに好ましくは0.1g以上であり、好ましくは3.5g以下であり、より好ましくは3.2g以下であり、さらに好ましくは3g以下である。
【0059】
形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、口腔内装着器具を水で漱ぐことにより、洗浄剤組成物を洗い流すのが好ましい。このように本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態とすると、特段物理的な付加力を要することなく口腔内装着器具を水で漱ぐのみで、被覆した泡を洗い流しながら口腔カンジダ菌の除菌効果とともにデンチャープラーク除去効果をも発揮することができ、かつ洗浄剤組成物に由来する不快臭が残留するのを回避することができるため、高齢者等の使用者にとっても負担が軽減され、容易に使用頻度を高めることができるともに、快適な使用感も享受することができる。
また、形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、物理的な付加力を施すことなく、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水により漱いで洗い流すことが好ましい。これにより、簡易的かつ効果的に口腔内装着器具を洗浄することが可能である。
【0060】
泡状の形態での適用の効果を充分に発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を、泡形成機構を備えた容器に充填し、該容器より噴射又は吐出することにより泡を形成することが好ましい。
泡形成機構を備えた容器とは、容器に充填されてなる内容物を噴射口又は吐出口から容器外部へと泡形成機構を介して噴射又は吐出することにより、泡を形成することができる容器である。かかる泡形成機構を備えた容器としては、トリガー式噴射容器、ポンプ式ディスペンサー容器が挙げられる。
【0061】
トリガー式噴射容器は、内容物を充填する容器本体と、泡形成機構であるトリガー及びスプレイヤーを具備しており、使用時にトリガーを引くことにより、内容物がスプレイヤーの噴射口から外部へと噴射され、泡が形成される。かかるトリガー式噴射容器は、直圧型であってもよく、蓄圧型であってもよい。
ポンプ式ディスペンサー容器は、内容物を充填する容器本体と、チューブやノズル、及びこれらの内部にメッシュ等の泡形成機構を具備し、使用時に容器の一部を押圧することにより、内容物がチューブやノズルの吐出口から外部へと吐出され、泡が形成される。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いて口腔内装着器具を洗浄する場合、これら容器のなかでも、泡状の形態での適用の効果を充分に発揮させる観点から、トリガー式噴射容器を用いるのが好ましい。
【0062】
トリガー式噴射容器を用いる場合、泡状の形態での適用の効果を充分に発揮させる観点から、噴射距離20cmにおける噴射径を好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下に設定するのが望ましい。
また、トリガー式噴射容器において、内容物である洗浄剤組成物の噴射力は、泡を有効に形成させる観点から、噴射距離20cmにおける噴射力を好ましくは1g・f以上、より好ましくは3g・f以上、好ましくは10g・f以下、より好ましくは8g・f以下に設定するのが望ましい。
【0063】
このように、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、特段物理的な付加力を要することなく、短時間の適用で口腔内装着器具の口腔カンジダ菌及びデンチャープラークを双方とも充分に除去でき、高齢者等の使用者にとっても負担が軽減され、容易に使用頻度を高めることもでき、使用時においても洗浄剤組成物に由来する不快臭が伴うことなく快適な使用感を得ることができる。
【実施例
【0064】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0065】
[実施例1~10、比較例1~3]
表1に記載の各成分を混合し、各口腔内装着器具用洗浄剤組成物を調製した。得られた口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1に示す。
【0066】
《口腔カンジダ菌の除菌効果の評価》
試験菌株は、Candida albicans JCM1542株を用いた。サブローデキストロース寒天プレート(BIOKAR Diagnostics社製)にCandida albicans JCM1542のグリセロールストックを画線し、37℃で24時間培養した。培養後の寒天プレートからシングルコロニーをピックアップし、YPD液体培地(Difco社製)20mLを分注した細胞培養フラスコに入れてかき混ぜた後、これをプラスチックケースに格納して30℃で18時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、0.01M リン酸塩緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、RPMI1640 with L-Glutamine液(LONZA社製)に再懸濁し、OD=0.1に合わせて試験菌液を得た。
次いで、義歯基板(杏友会社製、素材:ポリメチルメタクリレート樹脂、1cm)を24穴プレートに入れ、上記試験菌液を0.05mLずつ基板上に滴下した後、これを37℃で4時間静置して除菌試験基板を得た。かかる除菌試験基板に、調製した洗浄剤組成物を1ml滴下し、5分間静置した。また、洗浄剤組成物を泡化して評価する場合は、上記除菌試験基板をGLASS BASE DISH(IWAKI社製)に移し、泡形成機構を備えた容器を用いて泡化させた洗浄剤組成物1gを除菌試験基板に接触させ、1分間静置した。
【0067】
その後、各組成物をポンプで吸い取り、LP希釈液ダイゴ(富士フィルム和工純薬社製)2mLが入ったプラスチックチューブに義歯基板を映し、5分間超音波処理を行い、さらに30秒間ボルテックスして菌抽出液を得た。この菌抽出液をLP希釈液で適当に希釈したものをサブローデキストロース寒天培地に播種し、37℃で24時間培養した。
寒天培地に生育したコロニー数から、義歯基板単位面積当たりの残存菌数(cfu/cm2)を算出した。また、上記得られた組成物の代わりにPBSを用いた際の残存菌数(cfu/cm2)を基準とし、下記式(1)にしたがって口腔カンジダ菌の除菌効果(ΔLOG cfu/cm2)を算出した。
なお、式(1)の数値が高いほど、口腔カンジダ菌の除菌効果に優れることを示す。
・口腔カンジダ菌の除菌効果(ΔLOG cfu/cm2
=(PBS処理後の残存菌数)-(洗浄剤組成物処理後の残存菌数)・・・(1)
【0068】
《デンチャープラーク除去効果の評価》
1)デンチャープラークモデルの作製
1)-1 デンチャープラークモデル試験液の調整
寒天プレート(Anaero Columbia Agar with RSB, Nippon Becton Dickinson)にStreptococcus mutans JCM5705及びCandida albicans JCM1542のグリセロールストックを画線し、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で48時間から72時間培養した。培養後の寒天プレートからシングルコロニーをピックアップし、液体培地A(SCD培地ダイゴ(日本製薬社製)3質量%, Bacto Yeast Extract(ベクトンディッキンソン社製)0.5質量%)20mLを分注した細胞培養フラスコに入れてかき混ぜた後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で24時間培養した。
培養後、この培養液をOD=0.5となるように液体培地Aで希釈した。この希釈液を液体培地B(SCD培地ダイゴ3質量%, Bacto Yeast Extract 0.5質量%, D(+)-グルコース(富士フィルム和光純薬社製) 1質量%, スクロース(富士フィルム和光純薬社製)2wt%)でS. mutans OD=0.01、C. albicans OD=0.00001となるように希釈した。さらに滅菌した塩化カルシウム(富士フィルム和光純薬社製)水溶液をカルシウムイオン終濃度40ppmとなるように混ぜ、デンチャープラークモデル試験液を調製した。
【0069】
1)-2 デンチャープラークモデルの作製
義歯基板(杏友会社製、素材:ポリメチルメタクリレート樹脂、1cm)を24穴プレートに入れ、上記1)-1で調製したデンチャープラークモデル試験液を1mLずつ添加した後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で16時間培養した。
【0070】
2)デンチャープラーク除去効果の評価
減圧ポンプを用いてプレート中の上述のデンチャープラークモデル試験液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。次にポンプを用いてイオン交換水を吸い取り、50℃で7日間保存後の実施例及び比較例で得られた各組成物1mLを別途24穴プレートに調製した。次いで、調製した溶液にデンチャープラークモデルを形成した義歯基板を浸漬し適用させ、5分間静置した。
振盪は、振盪機(BioShake iQ(ワケンビーテック社製))を用い、室温(25℃)、550rpmの条件で行った。
その後、各組成物を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。イオン交換水1mLを添加して5分間振盪する操作を計3回繰り返した。次いで、イオン交換水を吸い取り、0.1質量%クリスタルバイオレット(CV)溶液を750μL添加して15分間振盪した。
【0071】
さらにポンプでCV染色液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪した。イオン交換水1mLを添加して5分間振盪する操作を2回繰り返した。次いで、イオン交換水をポンプで吸い取り、エタノール500μLを添加してピペッティングした後、抽出液をイオン交換水で10倍希釈し、マイクロプレートレコーダー(TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモ)で吸光度OD595nmを測定した。
また、上記得られた組成物の代わりにイオン交換水を用いた際の吸光度OD595nm(初期値)を基準とし、下記式(2)にしたがってデンチャープラーク除去率(%)を算出した。次いで、得られたデンチャープラーク除去率(%)の値を指標とし、下記基準にしたがってデンチャープラーク除去効果を評価した。なお、デンチャープラーク除去率が35%以上の評価であれば、デンチャープラーク除去効果が高いことを意味する。
・デンチャープラーク除去率(%)=
100-{上記得られた組成物を用いた際のOD595nm/上記得られた組成物の
代わりにイオン交換水を用いた際のOD595nm}×100・・・(2)
・評価基準
AA:デンチャープラーク除去率が80%以上
A :デンチャープラーク除去率が70%以上80%未満
B :デンチャープラーク除去率が60%以上70%未満
C :デンチャープラーク除去率が35%以上60%未満
D :デンチャープラーク除去率が20%以上35%未満
E :デンチャープラーク除去率が20%未満
【0072】
《保存安定性の評価》
得られた各口腔内装着器具用洗浄剤組成物をガラス瓶に充填し、-5℃で7日間保存した後、ガラス瓶の外側から内容物の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を目視により観察し、以下の基準にしたがって評価した。
A:白濁がなく透明で、析出物がなく均一であった
B:多少白濁していたものの、析出物がなく均一であった
C:白濁していたものの、析出物がなく均一であった
D:分離又は析出物が確認された
【0073】
《洗浄剤組成物に由来する不快臭の評価》
日頃から臭いの評価を行っているパネラー3人(n=3)により、各口腔内装着器具用洗浄剤組成物に鼻を近づけて臭いをかがせ、以下の基準にしたがって洗浄剤組成物に由来する不快臭の有無を評価した。
A:不快臭は確認されなかった
B:ごくわずかに不快臭が確認された
C:わずかに不快臭が確認された
D:明らかに不快臭が確認された。
【0074】
【表1】
【0075】
[実施例2-1~2-4]
実施例2で得られた口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用い、下記方法にしたがって泡状の形態にして適用した際における口腔カンジダ菌の除去効果を評価した。
・実施例2-1:口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状の形態にすることなく、そのまま直接適用した。
・実施例2-2:口腔内装着器具用洗浄剤組成物を平均泡粒径550μmの泡を生成する泡形成機構を備えたトリガー式噴射容器に充填し、吐出した。
・実施例2-3:口腔内装着器具用洗浄剤組成物を平均泡粒径390μmの泡を生成する泡形成機構を備えたポンプ式ディスペンサー容器に充填し、吐出した。
・実施例2-4:口腔内装着器具用洗浄剤組成物を平均泡粒径200μmの泡を生成する泡形成機構を備えたポンプ式ディスペンサー容器に充填し、吐出した。
なお、口腔カンジダ菌の除去効果の評価については、実施例1と同様にして行った。ただし、実施例2-2、実施例2-3、及び実施例2-4については、口腔内装着器具用洗浄剤組成物を適用する際に上記方法にしたがって泡状の形態にて適用した。
結果を表2に示す。
【0076】
【表2】