(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】乗物用内装品であるアームレスト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20230928BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20230928BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08J5/00 CFD
B32B33/00
B60N3/00 C
(21)【出願番号】P 2020208806
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】大沼 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 研一
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162982(WO,A1)
【文献】特開2016-168892(JP,A)
【文献】特開2001-279067(JP,A)
【文献】特開2012-081930(JP,A)
【文献】特開2003-342467(JP,A)
【文献】特開平05-025314(JP,A)
【文献】特開2001-234006(JP,A)
【文献】特開2009-269190(JP,A)
【文献】特開平08-113664(JP,A)
【文献】特表2018-519381(JP,A)
【文献】特開2004-148905(JP,A)
【文献】特開2018-058490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B32B 1/00 - 43/00
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
B60N 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、板状部及びその裏面から突出して突端が第1部材に当接する複数の突起を含む第2部材とを含み構成され、第2部材の弾性変形によりクッション性が付与される
乗物用内装品であるアームレストにおいて、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が
56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の
ポリエステル系熱可塑性エラストマーにより、板状部と複数の突起とが一体に形成されており、
複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が
20%以下であることを特徴とする
乗物用内装品であるアームレスト。
【請求項2】
先端の球面半径が10mmである圧子による前記圧縮の際、変位1mmのときの荷重が
7.8~12Nである請求項1記載の
乗物用内装品であるアームレスト。
【請求項3】
第1部材と、板状部及びその裏面から突出して突端が第1部材に当接する複数の突起を含む第2部材とを含み構成され、第2部材の弾性変形によりクッション性が付与される
乗物用内装品であるアームレストの製造方法において、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が
56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の
ポリエステル系熱可塑性エラストマーを型内に射出して、板状部と複数の突起とを一体成形し、
複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が
20%以下であることを特徴とする
乗物用内装品であるアームレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション性を有する乗物用内装品であるアームレスト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の肘、肩、腕、脚等がよく当接する製品に、当該製品の外表部をクッション性を有する構造として、ソフト感を付与することが広く行われている。例えば、乗員の肘が当接する車両内装品であるドアトリムのアームレストは、製品形状を維持する第1部材と、ソフト感を付与する第2部材とを組み合わせた、複合品として構成されたものが多い。
【0003】
特許文献1には、このような複合品の例として、第2部材にソフト感を付与する形態が相異なる、次の(1)~(4)のアームレストが記載されている。
【0004】
(1)ポリプロピレン(PP)製の第1部材(成形基材)の外表面に、ポリウレタン製の発泡体をオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)製の薄肉の表皮で包んだ第2部材を被着したタイプのアームレスト(同文献の
図14)。ポリウレタン製の発泡体が弾力性に富んでいるので、外表部にソフト感を適切に付与すると説明されている。
【0005】
(2)PP製の第1部材の外表面に、TPO製の比較的厚肉の第2部材を被着したタイプのアームレスト(同文献の
図12)。TPOはPP等に対してゴム分(EPDM)や油分(流動パラフィン等)の配合比率を高くした樹脂材料であり、これにより第2部材で構成される外表部にソフト感を付与すると説明されている。
【0006】
(3)PP製の第1部材の外表面に、TPO製の内部発泡層及び外部スキン層からなる第2部材を被着したタイプのアームレスト(同文献の
図2)。内部発泡層が有する弾力性により均一的なソフト感を得る一方、外部スキン層により耐油性や耐スクラッチ性の向上を図ると説明されている。
【0007】
(4)PP製の第1部材の外表面に、TPO製の表皮及びその裏面から突出する多数個のピン状またはリブ状の突起からなる第2部材を一体に設けてなる表皮を係止被着したタイプのアームレスト(同文献の
図13)。突部の撓み変形により弾力性をもたせ、これにより表皮で構成される部材外表部にソフト感を付与すると説明されている。
【0008】
上記(1)のタイプは、第2部材にポリウレタン製の発泡体を用いるため、材料コストが高い、熱や加水分解により劣化しやすい等の問題がある。そのため、第2部材にこれらの問題が少ない熱可塑性エラストマーを用いる上記(2)~(4)のタイプが好まれるようになり、特に(4)のタイプが増えてきた。
【0009】
特許文献2には、上記(4)のタイプにおいて、第2部材をTPO、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)等で形成することが記載されている。
【0010】
特許文献3には、上記(4)のタイプにおいて、第2部材を軟質PVC、TPO、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)で形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-103676号公報
【文献】特許第5299055号公報
【文献】特許第5651806号公報
【文献】特許第6380638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
第2部材に熱可塑性エラストマーを用いる上記(2)~(4)のタイプは、ソフト感をばらつきなく安定して得ることを主な課題として開発が進められ、当該課題は相当程度解決されたといえる。
【0013】
しかし、本発明者らが同タイプの触感を総合的に検討していくと、ポリウレタン製の発泡体を用いる上記(1)のタイプの触感には及ばないところがあった。それは、ポリウレタン製の発泡体は比較的に高反発性であり、その高反発性の触感が使用者に馴染んでいるのに対して、熱可塑性エラストマーを用いたものは、比較的に低反発性であるため、張りのない触感となるところである。
【0014】
ところで、近年、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物からなる、密度が0.01~0.40g/cm3であり、ヒステリシスロス率が20%以下であり、硬度が10~60Cである発泡成形体が開発されている(特許文献4)。しかし、この発泡成形体で上記(3)のような第2部材を形成したとしても、十分な反発弾性率は得られないものと考えられる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、熱可塑性エラストマーを用いて、高反発性の好触感を得ることができる乗物用内装品であるアームレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[1]高分子品(参考手段)
高分子品の弾性変形によりクッション性が付与される高分子品において、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が30~90%であり、ソリッド(非発泡)又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の熱可塑性エラストマーにより、高分子品が形成されており、
高分子品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が28%以下であることを特徴とする。
【0017】
[2]乗物用内装品であるアームレスト
第1部材と、板状部及びその裏面から突出して突端が第1部材に当接する複数の突起を含む第2部材とを含み構成され、第2部材の弾性変形によりクッション性が付与される乗物用内装品であるアームレストにおいて、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡のポリエステル系熱可塑性エラストマーにより、板状部と複数の突起とが一体に形成されており、
複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする。
【0018】
ここで、先端の球面半径が10mmである圧子による前記圧縮の際、変位1mmのときの荷重が6.5~12Nであることが好ましい。適度なソフト感が得られるからである。
【0019】
[3]高分子品の製造方法(参考手段)
高分子品の弾性変形によりクッション性が付与される高分子品の製造方法において、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が30~90%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の熱可塑性エラストマーを型内に射出して、速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が28%以下である高分子品を成形することを特徴とする。
【0020】
[4]乗物用内装品であるアームレストの製造方法
第1部材と、板状部及びその裏面から突出して突端が第1部材に当接する複数の突起を含む第2部材とを含み構成され、第2部材の弾性変形によりクッション性が付与される乗物用内装品であるアームレストの製造方法において、
JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡のポリエステル系熱可塑性エラストマーを型内に射出して、板状部と複数の突起とを一体成形し、
複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする。
【0021】
[作用]
第2部材の板状部と複数の突起は、反発弾性率が56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡のポリエステル系熱可塑性エラストマーにより形成されており、高分子品又は複合品のヒステリシスロス率が20%以下であるため、高反発の好触感となる。
ヒステリシスロス率が28%を越えると、熱によるクリープ変形により突起が潰れたままとなり、触感が張りのないものに劣化し、安っぽく感じられる。
ヒステリシスロス率の下限は、特に限定されず、材料の限界値で決まるが、敢えていえば1%である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱可塑性エラストマーを用いて、高反発性の好触感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の実施例を示し、(a)はドアトリムを車内側から見た概略図、(b)は実施例のアームレストのIb-Ib線断面図、(c)は実施例のオーナメントのIc-Ic線断面図である。
【
図2】
図2は実施例のアームレストの一部を示し、(a)は裏面図、(b)はIIb-IIb線断面図である。
【
図3】
図3は荷重-変位曲線とヒステリシスロス率の測定方法等を示し、(a)は実施例1-1~1-4及び比較例3,4の測定時の概略図、(b)は実施例2の測定時(左側)とアームレスト時(右側)の概略図、(c)は比較例1,2の測定時(左側)とアームレスト時(右側)の概略図である。
【
図4】
図4は実施例1-1~1-4の荷重-変位曲線を示すグラフ図である。
【
図5】
図5は比較例1,2の荷重-変位曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.高分子品又は複合品
本発明の高分子品又は複合品を適用する製品としては、特に限定されないが、人(特に肘、肩、腕、脚等)が意図して又は不意に当接する製品が好適であり、次のものを例示できる。
(ア)乗物用内装品
・ドアトリム、リアサイドトリム、ラゲッジサイドトリム、センターコンソール又はそれらに設けられるアームレストやオーナメント
・座席のアームレストやレッグレスト
・インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ、ルーフパネル等
(イ)乗物用以外の椅子のアームレストやレッグレスト
(ウ)家具又は建具の正面部位や上面部位や角部位
(エ)事務用品
マウスパッド、リストレスト等
【0025】
2.第1部材
第1部材としては、特に限定されないが、複合品における表層部直下の部材、基材等を例示できる。
【0026】
第1部材の材料は、特に限定されないが、製品の形状を維持するために第2部材の材料よりも硬度の高いものが好ましく、各種樹脂、金属、木、セラミック等を例示できる。
第1部材の形状は、特に限定されないが、板状、環状、塊状等を例示できる。
【0027】
3.第2部材
第2部材としては、特に限定されないが、複合品における表層部を構成する表層部材を例示できる。
【0028】
3-1.板状部と突起
板状部の厚さは、特に限定されないが、1~2.5mmであることが好ましい。
突起の基端断面積は、特に限定されないが、1.5~15mm2であることが好ましい。
突起の面直高さは、特に限定されないが、1.5~5mmであることが好ましい。
突起のピッチP(基端中心間距離)は、特に限定されないが、1.5~16mmであることが好ましく、2~11mmであることがより好ましい。
突起の傾斜角度(板状部垂直方向に対する傾斜角度)は、特に限定されないが、2~40°であることが好ましい。
【0029】
3-2.熱可塑性エラストマー(TPE:ThermoplasticElastomer)
熱可塑性エラストマーの種類は、反発弾性率が56~80であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の熱可塑性エラストマーであって、乗物用内装品であるアームレストのヒステリシスロス率が20%以下となる条件を満たすTPEEとする。ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の熱可塑性エラストマーとするのは、発泡倍率が1.1倍を越える高発泡のものと比べて十分な反発弾性率を得やすいからである。
【0030】
乗物用内装品であるアームレストのヒステリシスロス率は3~20%であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0032】
[実施例1]
図1(a)は車両用内装品であるドアトリムを車内側から見た概略図であり、ドアトリムに取り付けられた実施例1のアームレスト1と、ドアトリムに取り付けられた実施例のオーナメント10とを含んでいる。
【0033】
実施例1のアームレスト1は、
図1(b)に断面を示すように、第1部材としての基材2と、板状部4及びその裏面から突出して突端が基材2に当接する複数の突起5を含む第2部材としての表層部材3を含み構成された複合品である。突起5により板状部4と基材2との間に空間が形成されるとともに、突起5の先端が基材2に当接する(接合されていない)状態で、板状部4の外周端末部が基材2の外周縁部に巻き付けられて固定されている。表層部材3の弾性変形によりクッション性が付与され、複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が28%以下である。
【0034】
実施例のオーナメント11は、
図1(c)に断面を示すように、第1部材としての基材12と、板状部14及びその裏面から突出して突端が基材12に当接する複数の突起15を含む第2部材としての表層部材13を含み構成された複合品である。突起15により板状部14と基材12との間に空間が形成されるとともに、突起15の先端が基材12に当接する状態で、板状部14の外周端末部が基材12の外周縁部に巻き付けられて固定されている。表層部材13の弾性変形によりクッション性が付与され、複合品を速度60mm/分で圧縮及び除圧して測定した23℃におけるヒステリシスロス率が28%以下である。
【0035】
以下、実施例1のアームレスト1の各部について説明するが、実施例のオーナメント11の各部も基本的にはアームレスト1の各部と同様に構成されている。
【0036】
基材2は、PPにて板状に形成されている。基材2の厚さは1~3mmである。PPの硬度(ロックウェル)はR70~100である。
【0037】
表層部材3(板状部4と複数の突起5)は、JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が56~80%であり、ソリッド又は発泡倍率が1.1倍以下である微発泡の熱可塑性エラストマーにより一体に形成されている。その形成方法は、加熱した同熱可塑性エラストマーを型内に射出する、射出成形である。
【0038】
複数の突起5の配置は、ソフト感がばらつきなく安定して得られるように、適宜決めることができる。本実施例では、
図2に示すように、複数の突起5は、板状部4に対して垂直視において、多数の多角形(図示例では、二点鎖線で示すように正六角形)の各辺がそれぞれ隣接する多角形の辺と重なる格子模様を形成するように、その多角形の各辺を構成する位置に設けられている。突起5は、前記垂直視において長手形状(四隅が丸められた長方形)を成しており、その長手方向が多角形の各辺と一致する姿勢で配置されている。また、突起5は、先端側へ向かうに従って断面積が小さくなる緩やかな先細形状を成している。
【0039】
板状部4の厚さT、突起5の基端断面積、突起5の面直高さH、突起5の傾斜角度D、突起5のピッチP等は、ヒステリシスロス率が28%以下となる範囲で任意に決めることができる。
【0040】
実施例のアームレスト1について、より具体的には、次の表1に示す実施例1-1~1-4を実施した。これら各例は、表層部材3のみが互いに異なるものであり、基材2は同一である。
【0041】
【0042】
実施例1-1~1-4は、JIS K6255に準拠して測定した23℃における反発弾性率が56~80%であり、硬度(ショアA)が70~90であるソリッドのTPEEにより板状部4と複数の突起5が一体に形成されたものである。各例とも、板状部4の厚さTは2mmである。各例間で、突起5の面直高さH、突起5のピッチP(但し、格子模様の正六角形の互いに平行な2辺に設けられる突起5のピッチである。)が表1のとおり異なる。
【0043】
[実施例2]
次に、実施例2のアームレストは、その一部を
図3(b)の右側に示すとともに、表1に並記するように、表層部材6が実施例1-1と同一のTPEEにより形成された厚さ4mmの板状部のみからなり、突起は無いものである点において、実施例1-1と相違するものである。
実施例2のアームレストは、高分子品としての表層部材6が基材2に重ねられたものである。表層部材6は、基材2に接合されていないが、基材2に接合されていてもよい。
表層部材6の形成方法は射出成形である。
【0044】
[比較例]
さらに、次の表2に示す比較例1~4を行った。これら各例は、表層部材3のみが互いに異なるものであり、基材2は同一である。
【0045】
【0046】
比較例1,2のアームレストは、その一部を
図3(c)の右側に示すように、表層部材7がポリウレタンにより形成された発泡体(表面のスキン層と内部の高発泡層を含むインテグラルスキンフォーム)のみからなり、突起は無いものである点において、実施例と相違するものである。
比較例1,2のアームレストは、表層部材7が基材2に重ねられたものであり、表層部材7は基材2に接合されていない。
発泡体の形成方法は、比較例1がモールドウレタン発泡成形、比較例2がスラブウレタン発泡成形である。
【0047】
比較例3,4のアームレストは、実施例1-1~1-4と同様にソリッドの熱可塑性エラストマーにより板状部と複数の突起が一体に形成されたものであるが、熱可塑性エラストマーの材料と特性において、実施例と相違するものである。
【0048】
[荷重-変位曲線とヒステリシスロス率の測定]
以上の実施例及び比較例の各アームレストについて、次のように荷重-変位曲線とヒステリシスロス率を測定した。
実施例1-1~1-4は、
図3(a)に示すように、複合品であるアームレストの一部(60mm×60mm)を切り出し、基材2が下で表層部材3が上になるようにしてオートグラフの土台の上に載せ、上方から先端の球面半径が10mmの圧子により速度60mm/分で圧縮(下降で1.5mm押込む)及び除圧(上昇)して、荷重-変位曲線を3回記録し、ヒステリシスロス率(=1-(リリース時の荷重)/(プッシュ時の荷重)
)を求めた。
実施例2は、
図3(b)の左側に示すように、高分子品である表層部材6のみについて、実施例1-1等と同様に測定した。
比較例1,2は、
図3(c)の左側に示すように、表層部材7のみについて、実施例1-1等と同様に測定した。
比較例3,4は、
図3(a)に示すように、表層部材と基材について、実施例1-1等と同様に測定した。
【0049】
図4に実施例1-1~1-4の荷重-変位曲線を示す。各曲線の小変位側で、上に現れる方が圧縮の過程、下に現れる方が除圧の過程である。各実施例は、圧縮・除圧間での曲線の開きが比較的小さく、表1に示すとおり、ヒステリシスロス率が28%以下であるため、高反発の好触感となった。特に、実施例1-1~1-3は、ヒステリシスロス率が20%以下であるため、より好触感となった。
そこで、実施例1-4は参考例とする。また、
実施例1-1~1-3は、前記圧縮の過程で、変位1mmのときの荷重が
6.5~12Nであるため、適度なソフト感が得られた。
【0050】
実施例2は、ヒステリシスロス率が1%であり、特に高反発の触感となった。
【0051】
これに対し、比較例1,2は、
図5に荷重-変位曲線を示すとおり、圧縮・除圧間での曲線の開きが比較的小さく、表2に示すとおり、ヒステリシスロス率も20%以下であったが、前述のとおり、ポリウレタン材料コストが高い、熱や加水分解により劣化しやすい等の問題がある。
【0052】
また、比較例3,4は、表2に示すとおり、ヒステリシスロス率が30%以上であったため、従前どおりの熱可塑性エラストマー製が呈する低反発の触感となった。
【0053】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
実施例のTPEEに微量の発泡剤を添加して射出発泡成形を行い、反発弾性率が56~80%であり発泡倍率が1.1倍である微発泡の熱可塑性エラストマーとした以外は、実施例と同様である変更例を実施したところ、ヒステリシスロス率はいずれも28%以下であった。
【符号の説明】
【0054】
1 アームレスト
2 基材
3 表層部材
4 板状部
5 突起
6 表層部材
11 オーナメント
12 基材
13 表層部材
14 板状部
15 突起