(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】部品洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/04 20060101AFI20230928BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20230928BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230928BHJP
C11D 1/83 20060101ALI20230928BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20230928BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20230928BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
B01D29/04 510Z
C11D17/08
C11D1/83
C11D1/72
B08B3/08 Z
B08B3/12 A
(21)【出願番号】P 2020531534
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 GB2018053519
(87)【国際公開番号】W WO2019110987
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520184723
【氏名又は名称】テラフェンド・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TERRAFEND LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】トム・サンズ
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301529(JP,A)
【文献】特表平11-513731(JP,A)
【文献】特開平07-195044(JP,A)
【文献】特表2006-511671(JP,A)
【文献】特表2002-530480(JP,A)
【文献】特開2001-087723(JP,A)
【文献】特開昭57-165079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0040456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00~ 3/14
B01D 24/00~37/04
C11D 1/00~19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)接触区域で45℃未満の温度で水性液体洗浄剤組成物と部品を接触させるステップであって、前記水性液体洗浄剤組成物は、少なくとも一つのアルコキシレート界面活性剤を含む、接触させるステップと、
b)前記水性液体洗浄剤組成物の少なくとも一部を前記接触区域から分離ハウジングへと流すステップと、
c)上側油性相、中間水性相および下側粒子相を形成するように、前記分離ハウジングで前記水性液体洗浄剤組成物を分離させるステップと、
d)前記接触区域で前記水性液体洗浄剤組成物として使用するために前記中間水性相の少なくとも一部を取り出すステップと、
を含む、部品洗浄方法。
【請求項2】
前記分離ハウジングは、基部および排出口を備え、前記基部は、前記排出口を通じて前記下側粒子相を容易に取り出すことができるように構成されている、請求項1に記載の部品洗浄方法。
【請求項3】
廃棄するために前記下側粒子相を取り出すステップをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の部品洗浄方法。
【請求項4】
前記中間水性相の一部は、前記接触区域で前記水性液体洗浄剤組成物として使用する前に濾過される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項5】
前記分離ハウジングは、前記接触区域で前記水性液体洗浄剤組成物として使用するために前記中間水性相を取り出すことができるように配置された追加排出口を備える、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項6】
フィルタが前記追加排出口内に又は前記追加排出口に隣接して配置されている、請求項
5に記載の部品洗浄方法。
【請求項7】
ステップa)において、前記水性液体洗浄剤組成物は、ノズルを用いて前記部品に送られる、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項8】
前記水性液体洗浄剤組成物は、泡として送られる、請求項
7に記載の部品洗浄方法。
【請求項9】
前記接触区域は、浸漬槽を備える、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項10】
前記部品および前記水性液体洗浄剤組成物は、前記浸漬槽に入れられ、超音波が前記浸漬槽内で前記水性液体洗浄剤組成物を通じて伝搬される、請求項
9に記載の部品洗浄方法。
【請求項11】
前記水性液体洗浄剤組成物内のアルコキシレート界面活性剤の総量は、1~20wt%である、請求項1に記載の部品洗浄方法。
【請求項12】
少なくとも一つのアルコキシレート界面活性剤は、
(A)モノヒドロキシアルカノールまたはアルキルフェノールと炭素原子2~20個とが反応することで作成されるエトキシル化非イオン界面活性剤と、
(B)1モルのアルコールに対して少なくとも12モルのエチレンオキシド、および炭素原子16~20個を有する直鎖脂肪アルコールと、
(C)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体ユニットを含む、エトキシル化モノヒドロキシアルカノールまたはアルキルフェノール界面活性剤と、
(D)化学式R
1
O[CH
2
CH(CH
3
)O]
X
[CH
2
CH
2
O]
Y
[CH
2
CH(OH)R
2
]の界面活性剤であって、R
1
は炭素原子4~18個を有する直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基またはそれらの混合物を表し、R
2
は炭素原子2~26個を有する直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基またはそれらの混合物を表し、xは0.5から1.5の間の値であり、yは少なくとも15の値である、界面活性剤と、
から選択される、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項13】
前記水性液体洗浄剤組成物は、少なくとも二つのエトキシル化界面活性剤を含む、請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項14】
前記水性液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤をさらに含む、請求項
13に記載の部品洗浄方法。
【請求項15】
(i)前記部品は、前記接触区域で10℃から35℃の温度で前記水性液体洗浄剤組成物と接触
し、および/または、
(ii)前記分離
させるステップは、10℃から35℃の温度で実行される、
請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項16】
ステップa)からステップd)が複数サイクル繰り返される、請求項1から請求項
15のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【請求項17】
前記水性液体洗浄剤組成物は、前記接触区域で前記部品と接触する前に、加熱されない、請求項1から請求項
16のいずれか一項に記載の部品洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品洗浄器は、例えば、泥、すす、炭素堆積物、油、潤滑油、インク、塗料、および腐食などの汚染物質を加工対象物から取り除くために使用される装置である。部品洗浄器は、製造、メンテナンス、修理工程で使用される。部品洗浄器は、例えば、ガレージ、作業場および工場で、例えば、組み立て、検査、表面処理、梱包、再利用および/または販売のために、部品を洗浄するために使用されてもよい。
【0003】
様々な類いの部品洗浄器が存在している。例えば、いくつかの部品洗浄器は、有機溶媒を採用する。有機溶媒は、洗浄工程中、油、潤滑油および泥を除去するのに有効な場合がある。しかしながら、これらは、揮発しやすく、特に密閉空間で使用されるとき、安全性に対する懸念が存在する場合がある。さらに、使用済み有機溶媒の廃棄により、環境への懸念を生じさせる可能性がある。
【0004】
近年、部品洗浄器が開発されてきており、これは水性洗浄剤組成物を利用している。このような部品洗浄器では、部品は、少なくとも65℃の温度に上昇した水性洗浄剤組成物と接触する。温度の上昇は、効果的な洗浄のために必須と考えられる。部品からの油性成分は、水中油型乳剤を形成する水性洗浄剤組成物によって乳化される。水中油型乳剤は、再循環され、廃棄までに複数回再利用される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
発明の実施形態は、添付図面を参照して以下でさらに記載される。
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による方法で使用される部品洗浄器の3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の第1態様において、
a)接触区域で45℃未満の温度で水性液体洗浄剤組成物と部品を接触させるステップであって、水性液体洗浄剤組成物は、少なくとも一つのアルコキシレート界面活性剤を含む、接触させるステップと、
b)水性液体洗浄剤組成物の少なくとも一部を接触区域から分離ハウジングへと流すステップと、
c)上側油性相、中間水性相および下側粒子相を形成するように、分離ハウジングで水性液体洗浄剤組成物を分離させるステップと、
d)接触区域で水性液体洗浄剤組成物として使用するために中間水性相の少なくとも一部を取り出すステップと、
を含む、部品洗浄方法を提供する。
【0008】
本開示の部品洗浄方法において、部品は、45℃未満の温度の水性液体洗浄剤組成物と接触する。これは、従来技術の部品洗浄方法と対照的であり、従来の部品洗浄方法では、水性液体洗浄剤組成物は、使用前に少なくとも65℃の温度まで加熱される。
【0009】
水性液体洗浄剤組成物は、洗浄される部品から汚染物質を除去するために使用される。例えば、可溶性の汚染物質は、水性液体洗浄剤組成物に溶け得る一方、他の汚染物質は、水性液体洗浄剤組成物中に乳化され、分散され、または懸濁される場合がある。
【0010】
使用済み水性液体洗浄剤組成物は、接触区域から取り出され、分離ハウジングへと流される。分離ハウジングにおいて、水性液体洗浄剤組成物を、重力にしたがって、沈殿させることができる。当該分離により、水性液体洗浄剤組成物は、上側油性相、中間水性相、および下側粒子相を形成するように分けられる。
【0011】
分離ステップは、45℃未満の温度で発生すると好ましい。したがって、分離は、例えば、周囲の気温で、および/または加熱することなく、実行され得る。分離は、例えば45℃未満の温度条件下で促進されると好適である。そのような温度条件が、上側油性相を形成するために、水性液体洗浄剤組成物中に分散された油滴を合体しやすくしてもよい。これは、従来技術の方法と対照的であり、従来の方法では、油は、分散または乳剤として洗浄剤組成物中に保持される。いくつかの実施形態において、接触ステップおよび分離ステップは、10℃以内で発生し、5℃以内で発生すると好ましく、2℃以内で発生するとより好ましい。いくつかの実施形態において、接触ステップおよび分離ステップは、実質的に同じ温度で発生する。
【0012】
本開示の方法において、分離ハウジング内の中間水性相の少なくとも一部は、接触区域において水性液体洗浄剤組成物として使用するために取り出される。分離ハウジングにおいて水性相から油と粒子を分離することで、中間水性相中の汚染物質レベルは、比較的低く保つことができる。これにより、組成物の寿命を延ばすことができ、水性液体洗浄剤組成物がその有効性を長く維持できる。したがって、組成物は、交換が必要となる前に複数回再循環および再利用され得る。
【0013】
(接触区域)
上記のように、本開示の方法のステップa)は、接触区域で水性液体洗浄剤組成物と洗浄される部品を接触させることを含む。接触ステップは、45℃未満の温度で発生する。部品は、接触区域で10~35℃の温度で水性液体洗浄剤組成物と接触すると好ましい。例えば、部品は、15~30℃の温度で、例えば20~25℃の温度で、水性液体洗浄剤組成物と接触してもよい。水性洗浄剤組成物は、周囲の気温で部品と接触してもよい。水性洗浄剤組成物は、接触区域で部品と接触する前に加熱されないと好ましい。本開示の実施形態の利点は、比較的優しい温度条件下で効果的な洗浄が達成され得ることである。
【0014】
任意の適切な接触区域が採用され得る。例えば、接触区域は、接触リザーバを備えてもよい。洗浄される部品は、リザーバ内に配置されてもよく、一方、水性液体洗浄剤組成物が、例えば栓またはノズルを使用して、部品に向けられてもよい。ノズルが採用されている場合、水性液体洗浄剤組成物は、例えば圧縮ガス(例えば、空気)とともに圧力で送られてもよい。ノズルは、最大2000psi、例えば500~1800psi、の圧力で水性液体洗浄剤組成物を送るように使用されてもよい。いくつかの実施形態において、圧力は、組成物を泡として送るように使用されてもよい。
【0015】
接触ステップの間、部品は、洗浄を容易にするために、例えば、手動でこすられてもよい。接触リザーバは、使用済みの水性液体洗浄剤組成物が取り出され、分離ハウジングへと伝達される排出口を備えてもよい。
【0016】
代替的な実施形態において、接触リザーバは、浸漬槽またはタンクを備えてもよい。例えば、浸漬槽は、水性液体洗浄剤組成物で少なくとも部分的に満たされてもよい。洗浄される部品は、水性液体洗浄剤組成物に浸されても、または部分的に浸されてもよく、例えば、一定期間浸すようにされてもよい。浸漬ステップの間、部品は、例えば、手動でこすられてもよい。代替的に、または付加的に、洗浄される部品の周りにせん断力を誘導するように、例えば、機械的に水性液体洗浄剤組成物を攪拌してもよい。別の実施形態では、水性液体洗浄剤組成物を通じて超音波が伝搬され、洗浄効果を向上させる。
【0017】
超音波が使用される場合、超音波は、20~60Hz、例えば28~40Hz、の周波数で伝搬されてもよい。超音波は、1000~10,000W、例えば2000~6000W、の出力で伝搬されてもよい。
【0018】
別の実施形態において、接触リザーバは、接触チャンバの形態をとってもよい。ノズルは、接触チャンバ内に配置され得る。一実施形態において、ノズルは、洗浄される部品の開口内に合うように構成される。例えば、部品が、例えばスプレー塗料用の、吹きつけ器を備える場合、ノズルは、吹きつけ器の内部へ水性液体洗浄剤組成物を導くように、吹きつけ器の排出口内に合うように構成されてもよい。
【0019】
さらに別の実施形態において、接触チャンバは、ジェットウォッシュチャンバであってもよく、液体水性洗浄剤組成物が圧力をかけられてスプレーノズルを通じて送られる。液体水性洗浄剤組成物は、泡として送られると好ましい。泡は、洗浄効果の向上をもたらすように、必要な剛性および機械的完全性を有してもよい。泡は、圧力をかけられた組成物を送ることで、生成されてもよい。泡を使用すると、接触チャンバの基部に集まることができ、液体としてチャンバの基部で排出口を通じてつぶれ、流れ出ると好ましい。
【0020】
(分離)
上記のように、水性液体洗浄剤組成物の少なくとも一部は、接触区域から分離ハウジングへとステップb)で流れる。水性液体洗浄剤組成物は、例えば重力にしたがって、接触区域内の排出口を通じて取り出され得る。水性液体洗浄剤組成物は、ステップc)で分離ハウジング内で分けられ、上側油性相、中間水性相および下側粒子相を形成する。水性液体洗浄剤組成物は、重力にしたがっておよび/またはポンプを使用して接触区域から分離ハウジングへと伝達されてもよい。
【0021】
分離ハウジングにおいて、水性液体洗浄剤組成物を、重力にしたがって沈殿させることができてもよい。当該分離により、水性液体洗浄剤組成物は、上側油性相、中間水性相および下側粒子相を形成するように分かれる。
【0022】
分離ステップは、45℃未満の温度で発生すると好ましい。したがって、分離は、例えば周囲の気温でおよび/または加熱することなく実行され得る。分離は、10~35℃の温度で、より好ましくは15~30℃の温度で、例えば20~25℃の温度で、実行されると好ましい。いくつかの実施形態において、接触ステップおよび分離ステップは、10℃以内で、好ましくは5℃以内で、より好ましくは2℃以内で発生する。いくつかの実施形態において、接触ステップおよび分離ステップは、実質的に同じ温度で発生する。
【0023】
(再利用)
水性液体洗浄剤組成物が上側油性相、中間水性相および下側粒子相に分離されると、中間水性相は、取り出され、接触ステップで再利用されてもよい。中間水性相は、再利用される前に濾過されると好ましい。
【0024】
一実施形態において、分離ハウジングは、中間水性相の取り出し用排出口を設けられてもよい。排出口は、分離ハウジングの壁に配置されてもよい。排出口は、例えば、油性相または下側粒子相による汚染物質のリスクを減らして中間水性相を取り出すことができる高さに配置されてもよい。
【0025】
一実施形態において、ハウジングの排出口内にまたは隣接してフィルタが配置されてもよい。例えば、分離ハウジングは、フィルタを包含するフィルタハウジングを備えてもよい。中間水性相は、分離ハウジングの排出口を通じて取り出され、接触区域で再利用される前にフィルタハウジング内のフィルタを通ってもよい。
【0026】
中間水性相は、例えばポンプを用いて、接触区域に伝達されてもよい。
【0027】
フィルタが使用されている場合、フィルタは、多孔質基材(例えば、多孔質発泡基材)を備えてもよい。多孔質基材は、15~45個の細孔/インチ(ppi)を、例えば30個の細孔/インチを備えてもよい。多孔質基材は、例えばステンレス鋼のメッシュの、穴あきシートの間に配置されてもよい。中間水性相は、再利用前にあらゆる懸濁粒子が除去されるようにフィルタを通って流れてもよい。懸濁粒子がポンプの機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、これは、中間水性相が分離ハウジングから接触区域へとポンプで送られる実施形態において重要な場合がある。
【0028】
下側粒子相は、分離ハウジングから除去されてもよい。一実施形態において、分離ハウジングは、基礎部および排出口を備え、基礎部は、排出口を通じて下側粒子相を容易に取り出すことができるように構成されている。一実施形態において、基礎部は、例えば下側粒子相を排出口へと向かわせるように、角度を付けられている。廃棄物収集ユニットが、排出口と流体連結するように配置されてもよく、下側粒子相を収集することができる。収集された下側粒子相は、必要に応じて、処分されてもよい。
【0029】
長期間使用すると、水性液体洗浄剤組成物を、新しい組成物と交換することが必要になる場合がある。そうするために、分離ハウジングの内容物を取り除くことが必要になる場合がある。上側油性相は、例えば、上澄みをすくい取ることで除去され得る。廃棄物収集ユニットに分けられた任意の下側粒子相は、処分され得る。残っている中間水性相は、同様に、処分され得、または代替的に、代替的な利用のための洗浄液として使用され得る。そして、新しい水性液体洗浄剤組成物を分離ハウジングへと入れることができる。
【0030】
各一群の新しい水性液体組成物は、例えば1~30週間、好ましくは2~20週間、より好ましくは4~12週間といった、長期間にわたって再利用することができる。
【0031】
(部品)
あらゆる適切な部品が、本開示の方法によって洗浄され得る。誤解を避けるために、一つ以上の部品は、所定の時間、接触区域で水性液体洗浄剤組成物と接触され得る。適切な部品の例は、加工対象物を含む。適切な部品は、少なくとも一部が金属で形成されていてもよい。適切な部品の例は、機械部品、自動車および他の車両の部品、吹きつけ器並びにエンジンブロックを含む。特定の例は、ギアボックス、ベアリング、駆動チェーン、キャリパ、ドラムディスク、歯車の歯、ナット、ボルトおよびワッシャを含む。
【0032】
(洗浄剤組成物)
本開示の方法で採用されている洗浄剤組成物は、少なくとも一つのアルコキシレート界面活性剤を含む。組成物は、アルコキシレート界面活性剤の混合物を含むと好ましい。いくつかの実施例において、組成物は、少なくとも二つのアルコキシレート界面活性剤を含む。組成物中のアルコキシレート界面活性剤の総量は、組成物の総重量の1~20重量パーセント、例えば2~10重量パーセント、好ましくは3~8重量パーセントであってもよい。
【0033】
あらゆる適切なアルコキシレート界面活性剤が採用され得る。非イオン界面活性剤の種類の例は、モノヒドロキシアルカノールまたはアルキルフェノールと炭素原子2~20個の反応によって作成されるエトキシル化非イオン界面活性剤である。界面活性剤は、1モルのアルコールまたはアルキルフェノールに対して少なくとも1モルのエチレンオキシドを有すると好ましい。
【0034】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、1モルのアルコールに対して、少なくとも12モルの、特に好ましくは少なくとも16モルの、さらにより好ましくは少なくとも20モルのエチレンオキシドと、炭素原子16~20個を有する直鎖脂肪アルコールであってもよい。界面活性剤は、さらに、分子中に酸化プロピレンユニットを含んでもよい。これらの酸化プロピレン(PO)ユニットは、非イオン界面活性剤の全分子重量の最大25重量パーセント、好ましくは最大20重量パーセント、さらに好ましくは最大15重量パーセントを構成すると好ましい。
【0035】
エトキシル化モノヒドロキシアルカノールまたはアルキルフェノールであり、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体ユニットをさらに含む、界面活性剤が使用されてもよい。当該界面活性剤のアルコールまたはアルキルフェノール部分は、非イオン界面活性剤の全分子重量の30重量パーセントを超えて、好ましくは50重量パーセントを超えて、より好ましくは70重量パーセントを超えて構成し得る。適切な界面活性剤の別の種類は、トリメチロールプロパンで開始されたポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック重合体およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのリバースブロック共重合体を含む。
【0036】
界面活性剤の別の適切な種類は、R1O[CH2CH(CH3)O]X[CH2CH2O]Y[CH2CH(OH)R2]という化学式で記載できる。R1は、4~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基またはそれらの混合物を表す。R2は、2~26個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基またはそれらの混合物を表す。xは、0.5から1.5の間の値であり、yは、少なくとも15の値である。
【0037】
アルコキシレートは、エトキシル化界面活性剤であると好ましい。適切な例は、アルコールのアルコキシル化(例えば、エトキシル化)によって作成されるアルコキシレート界面活性剤を含む。適切なアルコールの例は、R-OHという化学式のアルコールを含む。Rは、1~30個の炭素原子、好ましくは2~20個の炭素原子、より好ましくは5~15個の炭素原子、または9~11個の炭素原子、を有するアルキル基である。アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよい。
【0038】
アルコールは、アルコール1モルあたり1~15モルのアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド)、例えば、アルコール1モルあたり2~10モルのアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド)、好ましくはアルコール1モルあたり2~8モルのアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド)、でアルコキシル化(例えばエトキシル化)されてもよい。
【0039】
一実施形態において、洗浄剤組成物は、少なくとも二つのエトキシル化アルコール界面活性剤を含む。エトキシル化アルコール界面活性剤はそれぞれ、エトキシル化C6~C20アルコール、好ましくはC8~C15アルコールであってもよい。エトキシル化アルコール界面活性剤のそれぞれでのアルコール1モルあたりのエチレンオキシドのモル量は、異なっていてもよい。しかしながら、各アルコールは、アルコール1モルあたり2~8モルのエチレンオキシドでエトキシル化されてもよい。
【0040】
洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤をさらに含んでもよい。あらゆる適切なアニオン界面活性剤が採用され得る。例は、直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルコールエーテル硫酸塩、二級アルカン硫酸塩およびアルコール硫酸塩を含む。他の例は、スルホコハク酸塩、例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムを含む。他の例は、サルコシン酸塩、例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを含む。アニオン界面活性剤は、存在するとき、組成物の0.1~5重量パーセント、好ましくは1~3重量パーセント、の量で使用されてもよい。
【0041】
アニオン界面活性剤が存在する場合、アルコキシレートの総量に対するアニオン界面活性剤の総量の重量比は、1未満であってもよい。例えば、アニオン界面活性剤の総量とアルコキシレートの総量との重量比は、1:1から1:10、好ましくは1:2から1:8であってもよい。
【0042】
洗浄剤組成物は、水を含む。水は、組成物の少なくとも50重量パーセント、好ましくは少なくとも60重量パーセント、より好ましくは少なくとも70重量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも75重量パーセント、または80重量パーセント、の量で存在してもよい。
【0043】
洗浄剤組成物は、有機共溶媒、例えばグリコールエーテルまたはアルコール共溶媒、をさらに含んでもよい。しかしながら、有機共溶媒が使用される場合、有機共溶媒は、15重量パーセント未満、好ましくは10重量パーセント未満の量で使用される。一実施形態では、洗浄剤組成物は、0~10重量パーセントのグリコールエーテル溶媒を含む。
【0044】
洗浄剤組成物の他の選択的な成分は、キレート剤、殺生物剤および/または可溶化剤を含んでもよい。
【0045】
図面の
図1、
図2および
図3を参照する。
図1、
図2および
図3は、本開示の方法の実施形態において使用する部品洗浄器の異なる図を示す。
【0046】
まず
図1を参照すると、本図面は、部品洗浄器10の3次元図を提供する。部品洗浄器10は、接触リザーバ30の形をした接触区域を備える。リザーバ30の基部40は、排水チャネル25を設けられ、これは、接触リザーバの下方に位置された分離ハウジングとの流体連結を提供する。部品洗浄器10は、ノズル50を備える。
【0047】
図2および
図3を参照する。
図2は、
図1の部品洗浄器10の概略断面図であり、接触リザーバ30および分離ハウジング20をさらに詳細に示す。
図3は、
図2に描かれている接触リザーバ30および分離ハウジング20の3次元図である。
図2から分かるように、接触リザーバ30の基部40は、水平に対して角度をつけて配置されている。これにより、リザーバ30に収容されている液体を排水チャネル25を通じて容易に排水できる。上述しているように、分離ハウジング20は、排水チャネル25と流体連結し、リザーバ30の下方に位置されている。
【0048】
分離ハウジング20の側壁に排出口70が設けられている。排出口70は、フィルタハウジング80と流体連結している。フィルタ90は、排出口70内に配置され、フィルタハウジング80へと延びている。フィルタハウジング80は、コネクタを介してポンプ100と結合されてもよい。ポンプ100は、液体を分離ハウジング20からフィルタ90を通じて、フィルタハウジング80へと注入し、ノズル50を通じて排出するように動作可能であってもよい。
【0049】
分離ハウジング20の基部は、廃棄物収集ユニット110と流体連結してもよい。また、ポンプ120が設けられてもよく、これは分離ユニット20に収容されている液体を流し出して廃棄するように動作可能であってもよい。
【0050】
動作中、分離ハウジング20は、導管130を介して少なくとも一つのアルコキシレート界面活性剤を含む水性液体洗浄剤組成物の新しい供給源で満たされてもよい。ポンプ100は、フィルタ90を通じて液体洗浄剤組成物を、フィルタハウジング80へと引き入れ、ノズル50を通じて排出するように動作されてもよい。ノズル50は、洗浄される部品、例えば自動車部品、に向けられてもよい。液体組成物と部品との接触は、接触リザーバ30内で生じる。液体洗浄剤組成物は、部品と接触する前に加熱されない。したがって、接触ステップは、周囲温度で発生する。液体組成物中のアルコキシレート界面活性剤は、部品の表面から汚染物質を分離させるのに役立つ。必要に応じて、部品は、部品の表面からの、例えば潤滑油および他の汚染物質の除去に役立つように、こすられてもよい。
【0051】
部品からの油性および粒子の汚染物質を包含する使用された液体組成物は、排水チャネル25を通じて流れ、分離ハウジング20へと戻る。分離ハウジング20は、周囲温度であってもよい。分離ハウジング20において、液体組成物は分かれ、分離ハウジング20内で上側油性相、中間水性相および下側粒子相を形成する。下側粒子相は、排水チャネル140を介して廃棄物収集ユニット110にたまってもよい。
【0052】
排出口70は、分離ハウジング20から中間水性相を取り出すように配置されている。したがって、ポンプ100を作動することで、中間水性相は、接触リザーバ30内でさらなる金属部品を洗浄するように再利用され得る。水性液体洗浄剤組成物を調整することで、および/または分離ステップの温度を制御することで、液体中の最初に溶解または分散された油性成分が、上側油性相として分離する一方、粒子成分が下側粒子相として分離する。このようにして中間水性相からそのような油性成分と粒子成分とを分離させることで、中間水性相の寿命を向上でき、より多くの回数のサイクルで組成物を再利用することができる。
【0053】
しかしながら、最終的には、液体組成物は、交換が必要になり得る。これは、例えば、上澄みをすくい取ることで分離ハウジング20から上側油性相を除去することで、行われてもよい。また、廃棄物収集ユニット110の内容物は、除去され、廃棄されてもよい。ポンプ120は、廃棄または他で利用する洗剤の処方として再利用するために、分離ハウジング20の内容物を取り除くように動作されてもよい。
【0054】
本願の明細書および特許請求の範囲を通して、用語「備える、含む(comprise)」および「含む、包含する(contain)」ならびにこれらの変形は、「含むが限定するものではない」ことを意味し、他の構成部品、数値、またはステップを排除することを意図しない(および排除しない)。本願の明細書および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上他の意味に解するべきときを除き、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上他の意味に解するべきときを除き、単数と同様に複数を考慮しているとして理解すべきである。
【0055】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例とともに記載されている特徴、数値、特性またはグループは、矛盾しない限り、本明細書に記載されている任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解される。本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴の全て、および/または開示されたあらゆる方法または工程のステップの全ては、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である場合の組み合わせを除くあらゆる組み合わせで結び付けられてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に制限されるものではない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴のあらゆる新規なもの、若しくはあらゆる新規な組み合わせ、または開示されたあらゆる方法または工程のステップのあらゆる新規なもの、若しくは新規な組み合わせにも及ぶ。