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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】紫外線素子パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20230928BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L23/02 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020538408
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032460
(87)【国際公開番号】W WO2020040143
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018155798
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502017320
【氏名又は名称】エーディーワイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嗣
(72)【発明者】
【氏名】津守 克子
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147406(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185675(WO,A1)
【文献】特開2014-036226(JP,A)
【文献】特開2008-300664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発光する発光素子と、前記発光素子が実装される基板と、前記発光素子と対向する位置に設けられる光学部材と、を備えた紫外線素子パッケージであって、
前記光学部材は、軟化点が1000℃以下で波長250~400nmの光に対する平均透過率が80%以上であるガラスで形成されており、前記光学部材と封止接合された金属製の台座を介して前記基板と接合され、
前記台座は、前記光学部材が嵌装される平面視円形の上面開口部と、前記発光素子が収容される底面視略矩形の下面開口部と、を有し、
前記下面開口部の上面側周縁と前記上面開口部の底面側周縁との間には、前記台座の上面及び底面と平行な平面から成り、前記光学部材を保持する保持部が形成されていることを特徴とする紫外線素子パッケージ。
【請求項2】
前記台座は、前記ガラスの熱膨張係数と略等しい熱膨張係数を有する金属で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線素子パッケージ。
【請求項3】
前記台座は、その表面に形成された酸化膜により前記光学部材と封止接合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線素子パッケージ。
【請求項4】
前記基板のうち前記台座との接合部には、メタライズ処理が施されたメタライズ部が形成されており、
前記台座と前記メタライズ部とが金属プリフォームにより接合されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紫外線素子パッケージ。
【請求項5】
前記光学部材は、光出射面が突出したドームレンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の紫外線素子パッケージ。
【請求項6】
前記光学部材は、光出射面が平坦なフラットレンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の紫外線素子パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紫外線殺菌、浄水、空気浄化、又は接着剤や樹脂の硬化等に用いられる深紫外線を含む近紫外線LED等の発光素子と、この発光素子と対向する位置に設けられる光学部材とを備えた紫外線素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線殺菌に際しては、従来から広く水銀灯が使用されてきたが、「水銀に関する水俣条約」の発効により、2020年以降、水銀製品の製造や輸出入が制限される。そのため、現在使用されている水銀灯の寿命が尽きた後の代替光源として、紫外線LED(Light Emitting Diode)、特に波長280nm以下の深紫外線LEDが注目されている。
【0003】
この種のものとして、波長200nm~360nmの紫外光を出力する発光モジュールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この発光モジュールは、発光素子が実装される有底凹部を有する基板と、有底凹部の開口を覆うように取り付けられた窓部材と、を備えている。この発光モジュールは、紫外線LEDから出射された光の配光を制御するためのレンズ部を備えており、レンズ部は、窓部材のうち発光素子と対向する部分に形成され、レンズ部の周囲には、基板に接合するためのフランジ部が、レンズ部と共に一体的に形成されている。
【0004】
上記特許文献1では、窓部材は、石英ガラスのペレット等を材料とする溶融石英を金型に流し込むことで形成される(段落0034参照)。しかしながら、石英ガラスの軟化点が約1700℃と非常に高温であり、1900℃に加熱しても非常に固く、加工するのが困難である。また、石英ガラスは、気体の蒸気圧が大きいために固体から直接気体に移行するので融液状態にはならないこともあり、溶融石英から所望するレンズ形状を得ることは非常に困難である。そのため、一般的には、インゴット状で供給される石英ガラスを所定形状に切削、研削し、更に表面を鏡面研磨する、伝統的なガラスレンズの製造方法が用いられており、非常に高価なレンズとなってしまう。
【0005】
一方、波長300nm以下の深紫外線を高透過率で透過させる物質として、従来は石英ガラスが用いられていたが、波長300nm以下の深紫外線を高透過率で透過させるガラスも開発されている。この種のガラスの軟化点は、1000℃以下であり、上記のような伝統的なガラスレンズの製造方法以外の製造方法によって所望するレンズ形状が得られる可能性がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-59716号公報
【文献】特開2006-310375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1の発光モジュールでは、窓部材のうち、レンズ部やフランジ部の所定部分にマスキングが施され、マスキングされていない部分に対して、真空蒸着やスパッタリング等の方法によりチタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)を順に積層した多層膜で形成されたメタライズ処理が施されている。しかしながら、微細な立体形状のレンズ部やフランジ部をマスキングすることには容易でない。ところが、マスキングが不十分となって適切なメタライズ処理が施されなければ、基板と窓部材との接合及び封止が不完全となる虞がある。紫外線、特に波長の短い深紫外線は、樹脂材料等を著しく劣化させるので、深紫外線を取り扱う発光素子を含む光モジュールのパッケージから深紫外線の漏れを防止する必要があり、パッケージの接合及び封止は、製品の信頼性に大きく影響する。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、石英ガラスよりも軟化点が低く、波長250~400nm以下の光の平均透過率が高いガラスを用い、安価で簡易な工程で基板と光学部材とを接合させることができ、しかも封止性能が高い紫外線素子パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、紫外線を発光する発光素子と、前記発光素子が実装される基板と、前記発光素子と対向する位置に設けられる光学部材と、を備えた紫外線素子パッケージであって、前記光学部材は、軟化点が1000℃以下で波長250~400nmの光に対する平均透過率が80%以上であるガラスで形成されており、前記光学部材と封止接合された金属製の台座を介して前記基板と接合され、前記台座は、前記光学部材が嵌装される平面視円形の上面開口部と、前記発光素子が収容される底面視略矩形の下面開口部と、を有し、前記下面開口部の上面側周縁と前記上面開口部の底面側周縁との間には、前記台座の上面及び底面と平行な平面から成り、前記光学部材を保持する保持部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記紫外線素子パッケージにおいて、前記台座は、前記ガラスの熱膨張係数と略等しい熱膨張係数を有する金属で形成されていることが好ましい。
【0011】
上記紫外線素子パッケージにおいて、前記台座は、その表面に形成された酸化膜により前記光学部材と封止接合されていることが好ましい。
【0012】
上記紫外線素子パッケージにおいて、前記基板のうち前記台座との接合部には、メタライズ処理が施されたメタライズ部が形成されており、前記台座と前記メタライズ部とが金属プリフォームにより接合されることが好ましい。
【0014】
上記紫外線素子パッケージにおいて、前記光学部材は、光出射面が突出したドームレンズであることが好ましい。
【0015】
上記紫外線素子パッケージにおいて、前記光学部材は、光出射面が平坦なフラットレンズであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶融又は軟化したガラスペレットで光学部材を成形しているので、石英ガラスのインゴットを切削、研削する伝統的なガラスレンズの製造方法に比べて、製造工程を安価で、簡易化することができる。また、光学部材は、基板と対峙する面の外形形状が円形であり、光学部材が嵌装される台座の上面開口部は平面視円形なので、光学部材を構成するガラスを溶かして接合する際に、放射線状に広がるガラスを均等に引っ張り、保持する事により均一な厚みのガラスが成形され、その結果、封止性能の高い気密ガラスシール部を得ることができる。更に、光学部材の成形と同時に、金属の台座に光学部材を一体的に封止接合させるので、メタライズ処理のためのマスキングや金属蒸着工程が不要になる。また、光学部材と一体化された台座と、メタライズ処理された基板のメタライズ部を、金属プリフォームで接合することで、基板と光学部材とを気密接合させることができる。結果的に、低コストで、信頼性の高い紫外線素子パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る紫外線素子パッケージの構成を示す分解斜視図、(b)は完成斜視図。
図2】(a)は上記実施形態の変形例に係る紫外線素子パッケージの構成を示す分解斜視図、(b)は完成斜視図。
図3】上記紫外線素子パッケージに用いられる光学部材を構成するガラスの透過率分布を示すグラフ。
図4】(a)は上記紫外線素子パッケージに用いられる台座の斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のA-A線断面図。
図5】(a)~(f)は上記紫外線素子パッケージの製造方法を示す工程図であり、特に台座と一体化された光学部材の製造工程を示す図。
図6】(a)は上記紫外線素子パッケージの製造方法を示す工程図であり、(b)は特に第2段階としての基板と台座と一体化された光学部材の接合工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る紫外線素子パッケージについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線素子パッケージ1の構成を示す。図1(a)(b)に示すように、紫外線素子パッケージ1は、深紫外線を発光する発光素子2と、発光素子2が実装される基板3と、発光素子2と対向する位置に設けられる光学部材4と、を備える。光学部材4は、光学部材4と封止接合された金属製の台座5を介して基板3と接合される。
【0019】
発光素子2は、波長400nm以下の紫外線を発光する紫外線素子であり、好ましくは、紫外線殺菌に高い効果を有する波長280nm以下の深紫外線を発光する深紫外線素子である。また、発光素子2は、例えば、サファイア基板上に単一のLED構造が形成された単一のチップであってもよいし、サファイア基板上に複数のLED構造が形成された集積型のチップであってもよい(図例)。
【0020】
基板3は、平面視で略正方形であり、例えば、窒化アルミに回路を形成したサブマウント基板を母材31とし、回路は、発光素子2の形態に応じて形成されており、例えば、フリップチップ型、ワイヤボンディング型等が挙げられる。なお、図例では、母材31上にメタライズ処理が施された素子接合部32が形成されており、2つの素子接合部32を跨ぐように発光素子2が配置される構成を示している。また、基板3の周縁に台座5が接合され、この接合部には、金メッキ又は金蒸着等によるメタライズ処理が施されたメタライズ部33が形成されている。素子接合部32とメタライズ部33との間には、絶縁部分が存在する。
【0021】
光学部材4は、基板3と対峙する面の外形形状が円形であり、図1(a)(b)に示す構成では、発光素子2からの光が入射する光入射面41が平坦であり、光が出射される光出射面42が突出したドームレンズとなっている(後述する図6(a)も参照)。図例では、光出射面42を球面形状とした構成を示すが、非球面であってもよい。なお、光学部材4は、基板3と対峙する面の外形形状が円形であればよく、例えば、図2(a)(b)に示す変形例のように、光学部材4の光出射面42が平坦であるフラットレンズであってもよい。ドームレンズは、集光的に作用するので、発光素子2から出射された光(深紫外線)の配光が狭い器具等に適した紫外線素子パッケージで用いられる。一方、フラットレンズは、集光的に作用しないので、発光素子2から出射された光(深紫外線)の配光が広い器具等に適した紫外線素子パッケージで用いられる。
【0022】
光学部材4は、例えば、軟化点が1000℃以下で、図3に示すように、波長250~400nmの光に対して、厚み0.4mmの資料における平均透過率が80%以上であるガラスで形成されている。このガラスの成分としては、SiO及びBを主体とし、更に、例えば、Al、LiO、NaO、KO、CaO、BaO、ZnO、Y、ZrO、La、SbO等、を含有する。
【0023】
図4(a)乃至(c)に示すように、台座5は、その外形形状として平面視略矩形であり、所定の厚みを有する板状の金属部材であり、光学部材4が嵌装される平面視円形の上面開口部51と、基板3に実装された発光素子2が収容される底面視略矩形の下面開口部52と、を有する。台座5は、上面、底面及び4側面を有し、隣り合う側面により成される稜角部は、緩やかな丸みを帯びるように面取りされている。
【0024】
上面開口部51は、台座5の上面から円筒状に彫り込まれた穴により形成され、下面開口部52は、台座5の底面から略角筒状に彫り込まれた穴により形成される。上面開口部51と下面開口部52とは、断面視において、台座5の厚みの略中間位置よりも上面に近い位置で繋がっている。また、平面視において、上面開口部51の開口径は、下面開口部52の開口の対角線の長さと概ね等しく、下面開口部52の開口の向かい合う辺の間隔よりも短い。そのため、下面開口部52の上面側周縁と上面開口部51の底面側周縁との間には、上面及び底面と平行な平面から成り、前記光学部材を保持する保持部53が形成され、光学部材4の光入射面41側の周縁が、この保持部53によって下支えされる(図6(a)も参照)。
【0025】
台座5は、光学部材4を構成するガラスの熱膨張係数と略等しい熱膨張係数を有する金属で形成されている。ガラス及び台座5の熱膨張係数は、例えば、常温で4.5×10-6K-1程度であり、台座5の材料としては、例えば、厚さ0.1~0.2mm程度のコバール(Korver)を使用することができる。コバールは、鉄とニッケル及びコバルト等の合金であり、硬質ガラスの接着に使用される一般的な材料である。コバールの融点は1450℃程度であり、ガラスの融点よりも高い。基板3と光学部材4とは、金属の台座5と、基板3の周縁のメタライズ部33とを、金属プリフォーム6で溶接することで接合される。金属プリフォーム6は、金・スズといった貴金属を含む薄い金属(合金)を接合部分の形状に成形したものである。
【0026】
次に、紫外線素子パッケージ1の製造方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、紫外線素子パッケージ1の製造方法における第1段階として、紫外線素子パッケージ1に用いられる光学部材4の製造方法であり、台座5と一体的に封止接合された光学部材4の製造工程を示す。また、図6は、紫外線素子パッケージ1の製造方法における第2段階として、基板3と光学部材4との接合工程を示す。
【0027】
紫外線素子パッケージ1の製造方法において、光学部材4は、ガラスを加熱し、溶融又は軟化させた後、所定の型(治具)で圧縮成形される。図5(a)に示すように、固定された治具20の上面には、台座5の下面開口部52に対応する窪み21が形成されている。この窪み21は、周縁が台座5の内周面に対応するように、大きく彫り込まれ、中央部は、台座5の保持部53と同平面を成すように平坦になっており、この中央部の平坦面が、光学部材4の光入射面41の形状として転写される。
【0028】
そして、図5(b)に示すように、台座5が、この窪み21に嵌装される。ここで、台座5には酸化処理が施され、その表面には酸化膜が形成されている。治具20は、例えば、カーボンパウダーを図示したような所定形状に圧縮成形したものである。次に、棒状で供給されるガラスを、所定サイズ(所定体積又は所定重量)のガラスペレット10に切断し、図5(c)に示すように、台座5の中心とガラスペレット10の中心が一致するように、台座5の上面開口部51及び治具20上にガラスペレット10を載置する。
【0029】
次に、図5(d)に示すように、台座5及びガラスペレット10が載置された治具20と、成形すべきレンズ形状に対応する曲面を有する窪み22が形成された可動式の治具23とを、第1加熱炉40内に収納し、窒素ガス環境下においてガラスの軟化点よりも高い第1の温度(例えば1000℃)に加熱する。なお、図5(d)では、ガラスペレット10が溶融又は軟化した状態を描いている。治具23も、例えば、カーボンパウダーを図示のような所定形状に圧縮成形したものであり、治具20の窪み21の中心と治具23の窪み22の中心が一致するように、治具20及び治具23が夫々配置されている。
【0030】
ガラスペレット10が、コンプレッション成形可能な程度に溶融又は軟化されると、図5(e)に示すように、可動式の治具23を治具20に向かって徐々に下降させ、窪み22の表面によってガラスペレット10を加圧変形させる。それによって、溶融したガラスペレット10の表面に窪み22の曲面が転写され、これが光学部材4の光出射面42となる(図6(a)参照)。また、ガラスペレット10が溶融した時、台座5の表面に形成された酸化膜により、台座5とガラスとの濡れ性が良くなり、ガラス・金属界面の密着性が向上し、封止(ハーメチック)接合され、これらの境界線が、気密ガラスシール部GSとなる。なお、気密ガラスシール部GSは、それ自体には殆ど厚みが無く、図6(a)では、説明のために気密ガラスシール部GSを誇張して図示しておいる。
【0031】
次に、治具23を所定時間所定圧力で治具20に押しつけて光学部材4を圧縮成形した後、第1加熱炉40内の温度を低下させ、治具20、治具23、成形された光学部材4及び台座5が冷却される。ここで、上述したように、台座5の材料と光学部材4の熱膨張係数が略同じなので、冷却の際、光学部材4と台座5とは略同じ割合で収縮する。そのため、光学部材4と台座5とが分離することはなく、冷却後であっても光学部材4と台座5は一体的に封止接合されている。そして、常温に冷却した後、第1加熱炉40から治具20、治具23及び光学部材4及び台座5を取り出し、治具23を治具20から分離する。それによって、図5(f)に示すように、封止接合された光学部材4及び台座5が得られる。
【0032】
ここで、本実施形態の紫外線素子パッケージ1においては、光学部材4は、基板3と対峙する面の外形形状が円形であり、台座5は、光学部材4が嵌装される平面視円形の上面開口部51を有する。すなわち、台座5とガラスとの境界線である気密ガラスシール部GSが円形になる。そのため、円盤状(円柱)のガラスペレットを酸化させた台座5(治具20)に乗せて、ガラスを溶かして接合する際に、上面開口部51が円形であれば、放射線状に広がるガラスを均等に引っ張り、保持することによって、均一な厚みのガラスが成形される。これは、潜水艦や航空機では、水圧や気圧に耐えるために胴体が丸く設計されていることからも、容易に想像できよう。仮に、上面開口部51が、円形でない、例えば、四角形であれば、例え断面が四角形になるよう加工したガラスペレットを用いたとしても、ガラスが溶けた時に均一に引っ張られないので、ガラスの厚みが不均一になり、気密ガラスシール部に穴が空くこともあり得る。これに対して、本実施形態では、台座5の上面開口部51が円形なので、均一な厚みでガラスが成形され、穴が無く封止性能の高い気密ガラスシール部GSを得ることができる。
【0033】
気密ガラスシール部GSは、台座5の上面開口部51の内側面と、これと接する光学部材4の外側面との境界に形成される。また、本実施形態では、台座5は、下面開口部52の上面側周縁と上面開口部51の底面側周縁との間には保持部53が設けられているので、気密ガラスシール部GSは、この保持部53の上面と光学部材4の底面との境界にも形成される。すなわち、気密ガラスシール部GSが、上面開口部51の内側面に沿った鉛直面だけでなく、保持部53に沿った水平面にも形成されるので、封止性能を更に高めることができる。また、光学部材4が保持部53で支持されるので、光学部材4が外部から押圧されても、光学部材4が発光素子2側へ押し込まれることもなく、耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、光学部材4及び台座5は、別途の加熱炉(不図示)に収納し、酸素を含む空気環境下においてガラスの軟化点よりも高く、第1の温度(例えば、1000℃)よりも低い第2の温度(例えば、800℃)に再加熱されることが好ましい。この再加熱処理により、カーボンパウダーの転写によるシボ加工状の光学部材4の表面が、再溶融又は再軟化されると、表面張力によって溶融又は軟化したガラスが凸部から凹部に異動し、光学部材4の表面の凹凸が徐々に均され、平滑化される。すなわち、簡易な再加熱処理により、レンズの表面を熱研磨することで、レンズの表面を鏡面仕上げとすることができる。
【0035】
光学部材4及び台座5を接合させた後、台座5のうちガラスと接合していない面の酸化膜が、洗浄、除去される。また、コバールによって形成された台座5は、錆防止のために、ニッケルメッキが施され、更に、基板3との接合のために、金メッキが施される。なお、これらのメッキ処理は、台座5が光学部材4と封止接合された後に行われるが、ガラス製の光学部材4は絶縁体なので、光学部材4の表面にめっきが施されることはない。しかし、光学部材4もめっき液に浸されるので、光学部材4を構成するガラスは、耐酸性に優れたもの等の薬剤耐性の高いものであることが好ましい。台座5と接合された光学部材4は、それ自体が独立して製造及び商取引され得るものであり、以下に説明する基板3との接合工程は、光学部材4の製造者と異なる製造者によって実施されてもよい。
【0036】
次に、図6(a)に示すように、発光素子2が実装された基板3を用意し、この基板3と、上述した工程で形成された台座5と封止接合された光学部材4との間に、金・錫又は金・ゲルマニウムといった貴金属を含む合金等で形成された金属プリフォーム6を配置し、基板3側のメタライズ部33及び台座5の下面とが略密着するように、位置合わせを行う。そして、図6(b)に示すように、基板3、金属プリフォーム6及び光学部材4を、第2の加熱炉50内で、少なくとも金属プリフォーム6の溶融温度(200~400℃)以上の温度まで加熱し、それらを溶接する。そして、金属プリフォーム6の溶融温度以下の温度まで冷却することで、金属プリフォーム6が硬化して、光学部材4と一体化された台座5と、及び基板3の周壁のメタライズ部33とが無機材料(プリフォーム)により接合される。
【0037】
台座5は、光学部材4の基板3に対向する側の下面のうち、基板3のメタライズ部33に接合される部分に一体的に封止接合されている。そのため、台座5の下面と基板3のメタライズ部33とが、金属プリフォーム6により密着接合されると、基板3、台座5の下面開口部52と光学部材4の光入射面41とで形成される空間は、密閉されて外部とは遮断される。その結果、発光素子2から出力される深紫外線は、基板3と光学部材4の接合部の隙間から漏れることもなく、外部からのガス、水分等の侵入を防止でき、発光素子2を保護し、製品寿命を長くすることができる。また、紫外線素子パッケージ1の周囲に存在する樹脂製品等に悪影響を与えることもない。
【0038】
ところで、図5に示す台座5と一体的に接合された光学部材4の製造工程において、治具20及び治具23は、それぞれカーボンパウダーを圧縮して形成されたものを用いている。そのため、図5(f)において成形された光学部材4の表面には、微小なカーボンパウダーの形状が転写されてシボ加工状になっており、いわゆるつや消し処理がなされたような状態になっている。また、光学部材4の表面に、剥離したカーボンパウダーが付着している場合もあり得る。そこで、図5(f)に示す工程の後、成形された光学部材4の表面を洗浄し付着したカーボンパウダーを除去する洗浄工程を設けてもよい。具体的には、塩酸、フッ化水素水、脱イオン水等を用いて光学部材4の表面を洗浄する。洗浄後に光学部材4の表面を研磨するために再度加熱し表面を溶かして、熱研磨(サーマルポリッシュ)を行うことが望ましい(不図示)。
【0039】
なお、発光素子2から出射された深紫外線を拡散して照射したい場合、光学部材4の表面に凹凸が残っていた方がよい場合もある。その場合は、図5(f)で示した熱研磨を中止することによって表面に凹凸の残った状態になる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、軟化点が1000℃以下で、波長250~400nmの光に対する平均透過率が80%以上であるガラスを用い、溶融又は軟化したガラスペレット10に治具23を押しつけて光学部材4を加圧成形しているので、製造工程数が少なく、且つ、工程自体が簡単である。また、光学部材4の成形と同時に、台座5が光学部材4に一体的に接合されているため、メタライズ処理のためのマスキングや蒸着工程が不要になる。更に、光学部材4と一体化された台座5と、メタライズ処理された基板3の周壁のメタライズ部33とは、互いの接合面が金属となるので、金属プリフォーム6を用いることで、容易に無機材料(プリフォーム)で接合でき、製造工程を更に簡単にすることができる。結果的に、低コストで、信頼性の高い紫外線素子パッケージ1を提供することができる。また、ガラスの材料は、上記で例示したものに限定されず、更に波長の短い深紫外線(例えば265nm)等に対する透過率が80%よりも低くても、実用上十分な透過率(例えば70%以上)を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 紫外線素子パッケージ
2 発光素子
3 基板
33 メタライズ部
4 光学部材(ドームレンズ、フラットレンズ)
42 光出射面
5 台座
51 上面開口部
52 下面開口部
53 保持部
6 金属プリフォーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6