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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】二次電池の充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230928BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230928BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230928BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20230928BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20230928BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20230928BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20230928BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20230928BHJP
   B60L 53/20 20190101ALN20230928BHJP
   B60L 58/13 20190101ALN20230928BHJP
   B60L 58/15 20190101ALN20230928BHJP
   B60L 58/16 20190101ALN20230928BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
G01R31/3828
G01R31/392
G01R31/387
G01R31/3842
B60L50/60
B60L53/20
B60L58/13
B60L58/15
B60L58/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020540181
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030201
(87)【国際公開番号】W WO2020044932
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018162827
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山上 慎平
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-327092(JP,A)
【文献】特開2016-195495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
G01R 31/3828
G01R 31/392
G01R 31/387
G01R 31/3842
B60L 50/60
B60L 53/20
B60L 58/13
B60L 58/15
B60L 58/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池を充電する充電器と、
前記二次電池の充電容量を算出する手段と、
第1電圧に到達するまで前記二次電池を充電する第1充電ステップと、前記第1電圧の定電圧で前記二次電池を充電する第2充電ステップとを行うように前記充電器を制御する充電制御手段と、を備え、
前記充電制御手段は、前記二次電池の前記第1電圧を基準とする満充電容量未満の範囲で設定された充電終止容量に前記二次電池の充電容量が到達した場合に、充電を終了し、
前記充電終止容量は、前記第1電圧より低い第2電圧を基準とする満充電容量に基づいて決定される、二次電池の充電システム。
【請求項2】
前記第2電圧は、前記第1電圧の95%以上99%以下の範囲で設定される、請求項1に記載の二次電池の充電システム。
【請求項3】
前記二次電池の劣化度合いを算出する手段を有し、
前記劣化度合いの算出結果に基づいて前記充電終止容量が変更される、請求項1または請求項2に記載の二次電池の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車に搭載された蓄電装置、太陽光発電装置、風力発電装置に併設された大型蓄電装置、家庭用発電機に併設された蓄電装置、家庭用、データサーバのバックアップ電源としての蓄電装置など、二次電池の用途が多岐にわたっている。このような蓄電装置に用いられる二次電池は、充放電サイクルに伴い劣化することで、充放電効率が低下していく。充放電効率の低下は、蓄電装置を含む電気自動車、太陽光発電装置等のシステムの運転コストに結びつくため、充放電効率の向上が望まれる。
【0003】
特許文献1には、二次電池の初期容量からの実容量の減少分の初期容量に対する割合を劣化度として求めて、その劣化度が大きくなるほど、二次電池に与える充電電圧及び充電電流の少なくとも一方を小さくする充電システムが記載されている。これにより、二次電池の劣化を抑制できるとされている。
【0004】
特許文献2には、二次電池の劣化進行度を演算し、現在の劣化進行速度が過去の劣化進行速度より所定値以上大きい場合には、充電時の上限充電電流、上限放電電流、上限充電電圧を下げる等の充放電条件を制限することが記載されている。これにより、二次電池の容量維持率等の充放電のサイクル特性を向上できるとされている。
【0005】
特許文献3には、二次電池の算出された満充電容量の変化の度合いに基づいて、第1充電電流値または第1充電電力値を設定して二次電池を充電する充電システムが記載されている。このシステムでは、二次電池が寿命末期である場合に、第1充電電流値より小さい第2充電電流値、または第1充電電力値より小さい第2充電電力値を設定して二次電池を充電する。これにより、劣化が進んだ状態でも充電を可能とし、二次電池の使用を継続できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-252960号公報
【文献】特開2013-65481号公報
【文献】国際公開第2014/147973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から知られている一般的な充電システムでは、充電電流や充電電力といった充電レート、及び充電終止電圧などが初期に設定されて充電が制御されている。二次電池のサイクル特性は充電条件に影響を受けるため、充電条件の適正化が必要である。サイクルに伴って二次電池の容量維持率が低下すると、二次電池の単セルの容量当たりの充電レートがサイクル初期に比べて相対的に大きくなってしまう。その結果、二次電池の容量維持率や充放電効率の低下が加速される。特許文献1から特許文献3に記載されているように二次電池の劣化度を求めて、それに応じて充電レートや充電終止電圧を緩和しても効果が限定的である。
【0008】
本開示の目的は、二次電池の容量維持率と充放電効率の低下を抑制できる、二次電池の充電システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る二次電池の充電システムは、二次電池と、二次電池を充電する充電器と、二次電池の充電容量を算出する手段と、第1電圧に到達するまで二次電池を充電する第1充電ステップと、第1電圧の定電圧で二次電池を充電する第2充電ステップとを行うように充電器を制御する充電制御手段と、を備え、充電制御手段は、二次電池の第1電圧を基準とする満充電容量未満の範囲で設定された充電終止容量に二次電池の充電容量が到達した場合に、充電を終了する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る二次電池の充電システムによれば、二次電池の容量維持率と充放電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の一例の二次電池の充電システムの構成図である。
図2図2は、実施形態の一例の充電システムにおける充電制御方法を説明するための充電容量、充電電圧及び充電電流の時間経過を示す図である。
図3図3は、実施形態の一例の充電システムにおける充電制御方法を示すフローチャートである。
図4図4は、実施例1及び比較例1の1サイクル目の充電容量の比較を示すグラフである。
図5図5は、実施例1の容量維持率(a)、充電容量(b)、及び充放電効率(Wh効率)(c)のサイクル数との関係を、比較例1と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な材料、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、充電システムの仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0013】
図1は、実施形態の充電システム10の構成図である。充電システム10は、電池パック12と、電池パック12に電気的に接続された充電器30とを備える。電池パック12と充電器30とは、正極側及び負極側のそれぞれの端子で接続される。また、電池パック12の後述する制御装置20は、充電器30と、コネクタを介して通信可能に接続される。
【0014】
[電池パック]
まず電池パック12を説明する。電池パック12は、二次電池14と、制御装置20とを含む。例えば、二次電池にはリチウムイオン電池などの非水電解質二次電池が用いられ、リチウムイオン二次電池は、複数のリチウムイオン電池セルが直列または並列またはこれらの組み合わせで接続される。各セルは、正極板、負極板、及びこれらの間に配置されるセパレータを有する。正極板は、リチウム含有遷移金属複合酸化物等の正極活物質を有する。負極板は、黒鉛等の炭素材料等の負極活物質を有する。セパレータには、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂が用いられる。なお、二次電池14は、リチウムイオン二次電池以外とすることもできる。
【0015】
二次電池14には、温度センサ、電圧センサ等を含む、二次電池14の状態を検出する状態検出部16が設けられる。温度センサは、各セルの温度を検出して、その検出温度を後述の制御装置20に送信する。電圧センサは、各セルの端子間電圧を検出して、その電圧データを制御装置20に送信する。
【0016】
電流センサ18は、二次電池14の負極側端子に接続され、二次電池14の通電電流を検出して、その電流データを制御装置20に送信する。
【0017】
制御装置20は、例えばICを含んで構成される。制御装置20は、A/D変換器(図示せず)、充電容量算出手段21、劣化度合い算出手段22、充電制御手段23、及び通信部(図示せず)を有する。
【0018】
A/D変換器は、電流センサ18で検出された二次電池14の電流データをデジタル値に変換する。A/D変換器は、温度センサで検出された二次電池14の温度検出値のデータ、電圧センサで検出された二次電池14の電圧データも、デジタル値に変換する。デジタル値に変換された各データは、充電容量算出手段21及び充電制御手段23に送信される。
【0019】
充電容量算出手段21は、A/D変換器から供給された、電流データ、温度データ、電圧データに基づいて、二次電池14の現時点の充電容量(充電量)を、演算により算出する。充電容量算出手段21は、電流データ及び電圧データの積算値等に基づいて、二次電池14の現時点の充電容量を演算により算出してもよい。充電容量算出手段21は、二次電池14の開放電圧(OCV)、閉回路電圧(CCV)、積算充放電容量、またはこれらの組み合わせから、二次電池14の満充電容量に対する実際の充電容量の割合である充電深度(SOC)を算出し、そのSOCから充電容量を算出してもよい。算出された充電容量は、充電時に充電終止容量に達したか否かを判断するために用いられる。詳しくは後述するが、初期に設定された充電終止容量は、充放電サイクルに伴う二次電池14の劣化度合いに応じて変更することもできる。
【0020】
劣化度合い算出手段22は、二次電池14の劣化度合いを算出する。例えば、劣化度合い算出手段22は、二次電池14の充電容量または放電容量の測定結果に基づいて初期容量に対する劣化度合いを算出することができる。二次電池14の所定のSOCにおけるOCVや放電時の直流抵抗の初期状態からの変化と劣化度合いの対応関係を予め求めておくことで、二次電池14のOCVや直流抵抗の測定結果に基づいて劣化度合い算出手段22が劣化度合いを算出することもできる。劣化度合いは、これらの算出方法のいずれか2つ以上を組み合わせて算出してもよい。劣化度合いは、後述の充電終止容量を変更するために用いられる。
【0021】
劣化度合いの算出は、所定のトリガー条件が成立したときに行うことが好ましい。例えば、二次電池14の充放電サイクルが、初期時点または前回の劣化度合いの算出時点から所定サイクル数に達したときに、トリガー条件が成立したとして、劣化度合いが算出される。トリガー条件としてサイクル数の他に、二次電池14の駆動時間、充電回数、充電容量の積算値、及び放電容量の積算値を用いることができる。トリガー条件には2つ以上の条件を用いることができ、それらはアンド条件及びオア条件のいずれにも用いることができる。
【0022】
充電制御手段23は、通信部及びコネクタを介して充電器30に充電電力値、充電電流値、または充電電圧値の制御信号を出力することで、充電器30を制御する。また、実使用を考えると、完全放電状態から充電される場合が多いため、充電指令があったときに、制御装置20が、二次電池14の充電必要分を算出してもよい。例えば、充電制御手段23が、後述の充電終止容量と、現在のSOCに基づいて算出された実際の充電容量との差分を充電するように、充電器30を制御してもよい。
【0023】
充電制御手段23は、具体的にはCPU及びメモリを備えるマイクロコンピュータで構成される。マイクロコンピュータのメモリは、プログラムメモリ及びワーキングメモリを含む。プログラムメモリは、電流データ、電圧データ、温度データに基づいて二次電池の充電容量、劣化度合いを算出するためのプログラム、その他の動作プログラムを記憶する。充電制御手段23による充電制御方法は、後で詳しく説明する。
【0024】
[充電器]
充電器30は、制御IC、充電電流供給回路等を含む。制御ICは、電池パック12の制御装置20と通信し、充電電流供給回路を制御する。充電電流供給回路は、制御ICからの信号に基づいて、二次電池14を充電する際の充電電流を増減調整する。充電器30は、定電力充電(CP充電)または定電流充電(CC充電)と、定電圧充電(CV充電)とにより、二次電池14を充電する。制御ICを省略し、電池パック12の制御装置が、充電器30の充電電流供給回路を制御して、充電電流を増減調整する構成としてもよい。
【0025】
[負荷]
二次電池14には、充電器30と並列にモータ等の負荷(図示せず)が接続される。制御装置20は、放電制御の機能も有し、放電の指示があったときには、二次電池14から負荷に電力を供給するように電気回路を制御する。
【0026】
[充電制御方法]
次に、制御装置20による充電制御方法を説明する。制御装置20の充電制御手段23は、第1充電ステップ及び第2充電ステップを行うように充電器30を制御する。
【0027】
図2は、実施形態の一例の充電システム10における充電制御方法を説明するための充電容量、充電電圧及び充電電流の時間経過を示す図である。図2では、実線αにより、実施形態を示しており、第1充電ステップの定電力充電(CP充電)を行った後、第2ステップの定電圧充電(CV充電)を行っている。なお、図2の一点鎖線β、実線γは、それぞれ後述の比較例1、2を示している。図2では、CP充電で電流が一定で維持されるように示しているが実際には、電流は電圧の上昇に応じてなだらかに低下している。
【0028】
第1充電ステップは、二次電池14の推奨充電電圧値である第1電圧V1に到達するまで二次電池14を定電力充電(CP充電)で充電する。本開示において推奨充電電圧とは、二次電池14の仕様に基づいて決定される最大充電電圧を意味する。例えば、負極活物質及び正極活物質としてそれぞれ炭素材料及びリチウム含有遷移金属複合酸化物が用いられるリチウムイオン電池では単セル当たりの推奨充電電圧値は4.2~4.3Vとされる場合が多い。第1充電ステップは、第1電圧V1に到達するまで二次電池14を定電流充電(CC充電)で充電してもよい。
【0029】
第2充電ステップは、第1電圧V1の定電圧で二次電池14を充電する定電圧充電(CV充電)を行う。
【0030】
また、充電制御手段23は、二次電池14の第1電圧V1を基準とする満充電容量S1未満の範囲で設定された充電終止容量S2に、二次電池14の充電容量が到達した場合(時間t1)に、充電を終了する。図2の実線αでは、CV充電に入った後すぐに充電終止容量S2に達した場合を示している。図2に示すように、二次電池14の充電はCV充電が開始した後に終了することが好ましい。
【0031】
「充電終止容量S2」は、例えば、第1電圧V1より低い第2電圧V2を基準とする満充電容量に基づいて決定される。第2電圧V2を基準とする満充電容量は、二次電池14の電池電圧が第2電圧V2に達するまでCP充電またはCC充電を行って、その後、電流値が十分に減衰するまで第2電圧V2でCV充電を行うことにより測定することができる。CV充電の終止条件となる電流値は0.02Cから0.05Cの間で設定することが好ましい。二次電池14が充電システム10に組み込まれる前に充電終止容量S2が予め決定されていてもよい。
【0032】
第2電圧V2は、例えば第1電圧V1の95%以上99%以下の範囲で設定される。例えば、第1電圧V1が単セル当たりで4.2Vであるときに、第2電圧V2は、単セル当たりで4.0~4.15V付近となる。このような範囲で第2電圧V2を設定することにより、第1電圧V1を基準とした充電において、CV充電が開始してから電流値が十分に減衰仕切る前に充電を終了させるための充電終止容量を設定しやすい。そのため、仕様上の推奨充電電圧である第1電圧V1を基準とする満充電容量に比べて二次電池14の実際の充電容量が大きく低下することはない。
【0033】
さらに、図1に戻って、劣化度合い算出手段22は、上記のトリガー条件が成立したときに、劣化度合いを算出する。充電制御手段23は、その算出された劣化度合いに応じて充電終止容量を低下させるように変更する。例えば、初期時点の充電容量に対する、初期時点からトリガー条件成立時点までの充電容量の低下量の比を劣化度合いとして算出することができる。そのように算出された劣化度合いをG(0≦G<1)、及び、変更前の充電終止容量S2をS2_1とすると、変更後の充電終止容量S2は式(1-G)×S2_1から算出される。上記のトリガー条件の成立後の充放電サイクルでは、この変更された充電終止容量S2で充電を終了するように、充電が制御される。
【0034】
図3は、実施形態の一例の充電システム10における充電制御方法を示すフローチャートである。図3に示す処理は、制御装置20により実行される。まず、充電が開始したときに、ステップS11において、充電制御手段23が、二次電池14の充放電サイクルが所定サイクル数に達した等のトリガー条件が成立したか否かを判定する。ステップS11の判定が肯定(YES)の場合には、ステップS12に移行する。ステップS11の判定が否定(NO)の場合には、ステップS14に移行する。
【0035】
ステップS12では、劣化度合い算出手段22が、劣化度合いを算出する。そして、ステップS13において、充電制御手段23が、劣化度合いの算出結果に応じて充電終止容量S2を変更する。
【0036】
ステップS14では、充電制御手段23が、充電終止容量S2で充電を終了するように、充電制御を実行する。トリガー条件の成立前は、初期に設定された充電終止容量S2が適用される。
【0037】
上記の充電システム10によれば、第1電圧V1で充電する際に第1電圧V1を基準とする満充電容量S1未満の充電終止容量S2で充電を終了するので、充放電サイクルに伴う容量維持率や充放電効率の低下を抑制できる。また、第1電圧V1を基準としてCP充電、CV充電等の充電を行うので第1電圧V1より低い電圧を基準として充電させる場合に比べて同じ充電容量を得るのに必要な充電時間が短縮される。劣化度合いに応じて充電終止容量S2を低下させるように変更することにより、サイクル特性がさらに向上する。
【0038】
上記では、劣化度合い算出手段22によって算出された劣化度合いに応じて充電終止容量S2を算出する例を説明した。その他に、充放電サイクル数が所定数に達する毎に、第1電圧V1より低い第2電圧V2を基準とする満充電容量を測定する充放電サイクルを行い、劣化度合い算出手段22が当該満充電容量から劣化度合いを算出してもよい。この場合、測定された満充電容量は充電終止容量S2として用いることができる。次に説明する実施例1は、このような構成に対応する。
【実施例
【0039】
[実施例1]
まず、実施例1における二次電池14の単セルの構成を説明する。二次電池14の単セルは、巻回型の非水電解質二次電池とした。
【0040】
[正極板の作製]
正極活物質として、LiNi0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を用いた。その後、100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03(正極活物質)と、1質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)とを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の溶剤中で混合して、正極合剤スラリーを調製した。次に、ペースト状の当該正極合剤スラリーをアルミニウム箔からなる長尺な正極集電体の両面に均一に塗布し乾燥機中で乾燥させてNMPを除去した後、ロールプレス機を用いて所定の厚みに圧延して長尺状の正極板を得た。さらに、圧延加工後の正極板を所定の電極サイズに裁断して、正極板を作製した。また、正極板の長さ方向中央部に活物質が形成されていない無地部を形成し、その無地部にアルミニウムの正極リードを超音波溶着により接続した。
【0041】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末を100質量部と、結着剤としてのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量部とを混合した。そして、この混合したものを水に分散させて、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを、銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥機により乾燥させた後、所定厚みとなるように圧縮ローラで圧延して長尺状の負極板を得た。そして、長尺状の負極板を所定の電極サイズに裁断して、負極板を作製した。また、負極板の無地部に、ニッケル-銅-ニッケルのクラッド材からなる負極リードを、巻回後の電極群において内周部となる位置に超音波溶着により接続した。
【0042】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、体積比でEC:DMC=1:3となるように混合した混合溶媒の100質量部に、ビニレンカーボネート(VC)を5質量部添加し、さらにLiPFを1.5モル/L溶解して非水電解液を調製した。
【0043】
[電極群の作製]
作製された正極板及び負極板を、ポリオレフィン系樹脂製のセパレータを介して渦巻状に巻回することにより、巻回型の電極群を作製した。このとき、電極群の最外周に銅箔の負極集電体が露出されるようにした。
【0044】
[二次電池の単セルの作製]
有底円筒状のケース本体の内側に円板状の絶縁板を挿入し、その上側に電極群を挿入した。このとき、電極群をケース本体に配置して負極集電体をケース本体の筒部の内面に接触させた。負極板に接続された負極リードを、ケース本体の底部の内面に溶接により接続した。次に、ケース本体の内側で電極群の上側に絶縁板を挿入し、調製した非水電解液を電極群が入れられたケース本体の内部に所定量注入した。そして、正極板に接続された正極リードを封口体に溶接により接続し、封口体をケース本体の開口部の内側にガスケットを介して挿入し、ケース本体の開口端部をかしめることで密閉型の非水電解質二次電池の単セルを作製した。また、封口体は、弁体としてアルミニウム材からなる円形の端子板に薄肉部を設けたものを用いた。端子板の薄肉部の中央部には最薄肉部を形成した。そして、所定のラプチャーディスクと絶縁板を端子板に接続し、封口体を作製した。
【0045】
このような二次電池14の単セルにおける推奨充電電圧は4.2Vである。第1電圧V1に対応する4.2Vでの初期時の満充電容量は、4400mAh(15.8Wh)であり、第2電圧V2に対応する4.1Vでの初期時の満充電容量は、4000mAh(14.4Wh)である。
【0046】
[充放電制御]
次に制御装置20による充放電制御を説明する。表1は、実施例1-5と、比較例1-3とにおける充電及び放電におけるモード、充電時の最大電圧、充電レート及び放電レートの変更の有無、並びに充電終止容量を示している。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の実施例1の欄で示すように、制御装置20に、第1パターンと第2パターンの充放電サイクルを交互に実行させた。充放電サイクルは第1パターンから開始し、第1パターンを1サイクル行い、次いで第2パターンを24サイクル行った。第1パターンと第2パターンの合計25サイクルの充放電サイクルのセットを40回繰り返して行った。第1パターンの充放電サイクルは、それに続く第2パターンの充放電サイクルでの充電終止容量S2を決定するために行うものである。第1パターン及び第2パターンの充放電条件は以下の通りである。
【0049】
第1パターンでは、二次電池14の第2電圧V2を基準とする満充電容量を測定するために充放電サイクルを行った。すなわち、二次電池14を電池電圧が第2電圧V2(単セル当たりで4.1V)に達するまで0.5E(単セル当たりで7.9W)の定電力で充電し(CP充電)、次いで電流値が0.05C(単セル当たりで220mA)に減衰するまで第1電圧V1の定電圧で充電した(CV充電)。このとき測定された充電容量が二次電池14の第2電圧V2を基準とする満充電容量である。充電後、二次電池14を電池電圧が放電終止電圧(単セル当たりで3V)になるまで0.5E(単セル当たりで7.9W)の定電力で放電した(CP放電)。
【0050】
第2パターンでは、直前の第1パターンの充放電サイクルで算出された第2電圧V2を基準とする二次電池14の満充電容量を充電終止容量S2として用いた。すなわち、二次電池14を電池電圧が第1電圧V1(単セル当たりで4.2V)になるまで0.5E(単セル当たりで7.9W)の定電力で充電し(CP充電)、次いで第1電圧V1の定電圧で充電した(CV充電)。二次電池14の充電容量が充電終止容量S2に到達した時点で充電を終了した。その後の放電条件は第1パターンの放電条件と同一である。
【0051】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の充放電サイクル条件に加えて、第2パターンの充放電サイクルが開始する毎に、劣化度合いに応じてCP充電時の充電レートを低減した。具体的には、まず、初回の第1パターンの満充電容量から第2パターンの充放電サイクル直前の第1パターンの満充電容量を差し引いて充電容量の低下量を算出した。次に、初回の第1パターンの満充電容量に対する充電容量の低下量の比を二次電池の劣化度合いとして算出した。算出した劣化度合いをG(0≦G<1)としたとき、初回の充放電サイクルの充電レートである0.5Eに(1-G)を乗じた式(1-G)×0.5Eから第2パターンの充電レートを算出した。実施例2において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0052】
[実施例3]
実施例3では、実施例2の充放電サイクル条件に加えて、第2パターンの充放電サイクルが開始する毎に、劣化度合いに応じてCP放電時の放電レートも低減した。具体的には、実施例2と同様の方法で二次電池の劣化度合いであるGを算出した。すなわち、初回の充放電サイクルの放電レートである0.5Eに(1-G)を乗じた式(1-G)×0.5Eから第2パターンの放電レートを算出した。実施例3において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0053】
[実施例4]
実施例4では、実施例1の第1パターンの充放電サイクルにおける第2電圧V2を単セル当たりで4.1Vから4.15Vに変更し、そのときに得られた満充電容量をその後の第2パターンの充電終止容量S2とした。実施例4において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0054】
[実施例5]
実施例5では、実施例1の第2パターンの充放電サイクルにおける第1電圧V1を単セル当たりで4.2Vから4.15Vに変更した。実施例5において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0055】
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同様に作製した二次電池について、第2電圧V2(単セル当たりで4.1V)を第1電圧V1(単セル当たりで4.2V)に変更したこと以外は実施例1の第1パターンの充放電サイクルと同様の条件で充放電サイクルを行った。このような充放電サイクルを1000回繰り返した。比較例1において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0056】
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同様に作製した二次電池について、実施例1の第1パターンの充放電サイクルと同様の条件で充放電サイクルを行った。このような充放電サイクルを1000回繰り返した。比較例2において、その他の構成及び制御方法は、実施例1と同様である。
【0057】
[比較例3]
比較例3では、比較例2の充放電サイクル条件に加えて、二次電池の劣化度合いに応じてCP充電時の充電レートを低減した。具体的には以下の通りである。比較例2の充放電サイクルを実施例のような1サイクルの第1パターンと24サイクルの第2パターンに分けた。実施例2と同様の方法で二次電池の劣化度合いであるGを算出した。すなわち、初回の充放電サイクルの充電レートである0.5Eに(1-G)を乗じた式(1-G)×0.5Eから第2パターンの充電レートを算出した。
【0058】
[試験結果]
表2は、上記の実施例1-5及び比較例1-3を用いた試験を行って、25℃のサイクル特性として、1000サイクル時点の容量維持率と充放電効率の結果を示している。容量維持率は2サイクル目の放電容量に対する1000サイクル目の放電容量の割合(百分率)で算出し、充放電効率は1000サイクル目の充電電力量に対する放電電力量の割合(百分率)として算出した。
【0059】
【表2】
【0060】
表1に示すように比較例2では比較例1に比べて充電における最大電圧が低いため、1サイクル目の充電容量は低下する。しかし、表2に示すように比較例2では比較例1に比べて容量維持率及び充放電効率は向上している。また、比較例3では比較例2に対し、所定サイクル毎に充電レートを劣化度合いに応じて低下させており、容量維持率及び充放電効率がわずかに向上している。
【0061】
図4は、実施例1及び比較例1の1サイクル目の充電容量の比較を示すグラフであり、図5は、実施例1の容量維持率(a)、充電容量(b)、及び充放電効率(Wh効率)(c)のサイクル数との関係を、比較例1と比較して示す図である。図4図5(b)に示すように、実施例1では、比較例1に対し、1サイクル目の充電容量は小さいが、表2、図5(a)(c)に示すように、比較例1より容量維持率及び充放電効率が向上している。図5(a)で実施例1において容量維持率が階段状となっているのは、充電終止容量を所定サイクル数毎に変更しているためである。
【0062】
表1に示すように実施例1では、ほぼ同等の充電容量を示す比較例2と比較すると、第2パターンにおいて比較例2の電圧(単セル当たりで4.1V)より高い電圧(単セル当たりで4.2V)を基準として充電が行われるため、CP充電領域が長くなり充電時間が短縮される。そして、表2に示すように実施例1では、第1パターンで二次電池の劣化度合いを把握しその後の第2パターンの充電条件が適正化されるため、比較例2より容量維持率及び1000サイクル後の充放電効率の向上を確認できた。表2には示していないが、実施例1では比較例1及び比較例2に比べてサイクル初期の段階から充放電効率が向上することが確認されている。
【0063】
実施例2、実施例3では、所定サイクル毎に充電レートを劣化度合いに応じて低下させ、実施例3ではさらに放電レートも劣化度合いに応じて低下させている。このため、実施例2、実施例3では、実施例1よりさらに容量維持率及び充放電効率の向上を確認できた。
【0064】
実施例4では、第1パターンにおける第2電圧V2を実施例1の単セル当たりの4.1Vから4.15Vに上げているため、第2パターンにおける充電終止容量が増加するが、実施例1と比較すると容量維持率及び充放電効率のいずれも低下傾向である。しかしながら、比較例1-3に比べると実施例4における容量維持率及び充放電効率のいずれも向上している。
【0065】
実施例5では、第2パターンにおける第1電圧V1を、実施例1の単セル当たりの4.2Vから4.15Vに下げることで、実施例1よりさらに容量維持率や充放電効率の向上を確認できた。実施例1に比べて実施例5では、CP充電による充電容量が減少する分、CV充電による充電容量が増加する。そのため、実施例5の第2パターンの充電時間が実施例1よりも長くなる。
【0066】
なお、上記の充電システムでは、図2に示したように、充電終止容量S2を、第2電圧V2を基準とする満充電容量に基づいて決定しているが、二次電池の第1電圧V1を基準とする満充電容量未満で設定するのであれば、これに限定せず設定することができる。
【0067】
また、上記の充電システムにおいて、制御装置の一部の機能は、状態検出部または電流センサにあってもよい。例えば、検出部で劣化度合いや、充電必要分が算出されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 充電システム、12 電池パック、14 二次電池、16 状態検出部、18 電流センサ、20 制御装置、21 充電容量算出手段、22 劣化度合い算出手段、23 充電制御手段、30 充電器。
図1
図2
図3
図4
図5