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特許7356987ポリ乳酸の新規なエステル及びその組成物
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  • 特許-ポリ乳酸の新規なエステル及びその組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ポリ乳酸の新規なエステル及びその組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20230928BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08G63/06
C08L101/16
D06M15/507
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540685
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018054327
(87)【国際公開番号】W WO2019070950
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】62/568,246
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515191431
【氏名又は名称】ファッション ケミカルズ、 ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】FASHION CHEMICALS, GMBH & CO KG
(73)【特許権者】
【識別番号】520118681
【氏名又は名称】ラングレー、ジェフリー、ティー.
(73)【特許権者】
【識別番号】520118692
【氏名又は名称】マッコイ、ケイ、エム.
(73)【特許権者】
【識別番号】520118706
【氏名又は名称】メレディス、ポール、シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】ラングレー、ジェフリー、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ、ケイ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】メレディス、ポール、シー.
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02917410(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0052633(US,A1)
【文献】特開平09-157368(JP,A)
【文献】特表2014-521762(JP,A)
【文献】特開2002-265580(JP,A)
【文献】特表2022-528112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 63/91
C08L 101/00 - 101/16
D06M 15/00 - 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイルの親水性を高めるためのテキスタイルに対する仕上げ剤としてのポリ乳酸のエステルの使用であって、
前記ポリ乳酸のエステルを前記テキスタイルに塗布する工程を含み、
前記ポリ乳酸のエステルは、下記式(I)及び/又は下記式(II)を有し、
前記ポリ乳酸のエステルは、4000ダルトン以下の重量平均分子量を有し、
前記テキスタイルは、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド、アセテート、リヨセル、竹、綿、亜麻、麻及び羊毛からなる群から選択される1種以上から作製されてなる、使用。
【化1】
(mは、1超かつ10未満の整数であり、
nは、1超かつ90未満の整数である)
【化2】
(m1及びm2は、1超かつ10未満の整数であり、m1及びm2は、等しくても又は等しくなくてもよく、
nは、1超かつ90未満の整数である)
【請求項2】
前記テキスタイルの布地が不織布、織布又は編地である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記テキスタイルの布地が65%のポリエステルと35%の綿との混紡を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリ乳酸のエステルの重量平均分子量が200ダルトン~4000ダルトンである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリ乳酸のエステルは、ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルを含み、
前記ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルは、ポリエチレングリコール(PEG)とポリ乳酸(PLA)との重量パーセントの比率(PEG:PLA)が45:55~55:45である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記ポリ乳酸のエステルは、ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルを含み、
前記ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステル中のポリエチレングリコール(PEG)単位の重量平均分子量は、100ダルトン~2000ダルトンである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
テキスタイルの親水性を高める方法であって、
前記方法は、ポリ乳酸のエステルを前記テキスタイルに塗布する工程を含み、
前記ポリ乳酸のエステルは、下記式(I)及び/又は下記式(II)を有し、
前記ポリ乳酸のエステルは、4000ダルトン以下の重量平均分子量を有し、
前記テキスタイルは、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド、アセテート、リヨセル、竹、綿、亜麻、麻及び羊毛からなる群から選択される1種以上から作製されてなる、方法。
【化3】
(mは、1超かつ10未満の整数であり、
nは、1超かつ90未満の整数である)
【化4】
(m1及びm2は、1超かつ10未満の整数であり、m1及びm2は、等しくても又は等しくなくてもよく、
nは、1超かつ90未満の整数である)
【請求項8】
前記テキスタイルの布地が不織布、織布又は編地である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記テキスタイルの布地が65%のポリエステルと35%の綿との混紡を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリ乳酸のエステルの重量平均分子量が200ダルトン~4000ダルトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリ乳酸のエステルは、ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルを含み、
前記ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルは、ポリエチレングリコール(PEG)とポリ乳酸(PLA)との重量パーセントの比率(PEG:PLA)が45:55~55:45である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリ乳酸のエステルは、ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステルを含み、
前記ポリ乳酸のポリエチレングリコールエステル中のポリエチレングリコール(PEG)単位の重量平均分子量は、100ダルトン~2000ダルトンである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸の新規なエステル及び該新規なエステルを作製する方法に関する。本発明は、上記新規なエステルを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル及びポリオレフィン等の高分子量ポリマーは、一般に糸、織布及び編地、並びに不織布等の繊維及び繊維物品を作製するために使用される。ポリエステル及びポリオレフィンから製作された品物の表面は、それらの化学的性質のために疎水性である。多くの用途で、物品の表面が親水特性を有することが望ましい。局所コーティング剤又は仕上げ剤が、ポリエステル及びポリオレフィンの物品に対して、それらの疎水性に対抗し、親水性を与えるために使用されることが多い。ポリ乳酸(「PLA」)等のポリエステル及びポリオレフィンは、おむつ等の吸収性製品を含む多くの製品に使用することができる。ポリ乳酸を石油の代わりにトウモロコシのような再生可能資源から得ることができるため、ポリ乳酸は、堆肥化可能及び生分解性であり得る。ポリ乳酸は、ポリプロピレン(「PP」)と同様の特性を有する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、ポリ乳酸(又は「PLA」)のエステルに関する。別の態様では、本発明は、テキスタイル(例えば、ポリエステル及びポリ乳酸で作製されたテキスタイル)に対する仕上げ剤として使用することができるポリ乳酸のエステルと、ポリプロピレン等のポリオレフィンとを含む組成物に関する。ポリ乳酸のエステルは、ポリ乳酸のジオール(例えば、ポリエチレングリコール(又は「PEG」)及び1,3-プロパンジオール)エステル及びポリ乳酸のポリオール(例えば、ポリグリセロール、糖及び糖アルコール)エステル、及び/又はそれらの組合せを含み得る。
【0004】
別の態様では、本発明は、ポリ乳酸のエステルを製造する方法に関する。かかるポリ乳酸のエステルは、(i)ジオール及び/又はポリオールと(ii)ポリ乳酸、ラクチド又は乳酸とを反応させることによって作製することができる。ジオール及び/又はポリオールの混合物又は組合せをポリ乳酸、ラクチド又は乳酸と反応させ、本発明のエステルを形成することもできる。
【0005】
別の態様では、本発明は、ポリ乳酸のエステルを含有する組成物で処理されたテキスタイルに関する。ポリ乳酸のエステルは、堆肥化可能及び/又は生分解性の場合があり、したがって、ポリ乳酸ポリマーと共に、堆肥化可能及び/又は生分解性であり得る製品を作製するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】PEG GPC標準についての保持時間に対する分子量を示す典型的な標準曲線及び較正式の決定である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様では、本発明は、PLAのエステルに関する。別の態様では、本発明は、PLAのエステルを含む組成物に関する。これらの組成物は、PLA等のポリエステル及びポリオレフィンから作製されたテキスタイルに対する仕上げ剤として使用することができる。PLAのエステルは、他の合成ポリマー(例えば、ポリアミド、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン及びアラミド)及び人造繊維(例えば、アセテート、リヨセル及びレーヨン)に対する仕上げ剤としても有用であり得る。PLAのエステルは、天然繊維(例えば、竹、綿、亜麻、麻及び羊毛)に対しても有用であり得る。PLAのエステル及びPLAのエステルを含む組成物は、PLA及び/又はポリプロピレンで作製されたテキスタイル等の疎水性材料の表面をコーティングすることが可能であり、材料の表面を疎水性から親水性に変化させるか、又は材料が既に親水性である場合に、材料の親水性を高めることが可能である。このため、本発明の別の態様は、1つ以上のPLAのエステルを塗布した材料である。
【0008】
一実施形態では、材料はスパンボンド、メルトブロー、カード、エアレイド、ウェットレイド(wet laid)又はそれらの組合せ等の不織テキスタイルであり得る。不織テキスタイルの例としては、おむつのポリエステル表面シートが挙げられる。別の実施形態では、テキスタイルは、織り又は編みテキスタイル(例えば、スポーツ衣料を含む衣料)であり得る。テキスタイルとしては、繊維、フィラメント、糸、織布、不織布及び編地が挙げられる。
【0009】
一実施形態では、PLAのエステルは、PLAのPEGエステルを含む。別の実施形態では、PLAのエステルは、PLAの1,3-プロパンジオールエステルを含む。また別の実施形態では、PLAのエステルは、PLAのポリオール、例えばポリグリセロール、糖及び/又は糖アルコールのエステルを含む。更なる実施形態では、PLAのエステルは、以下のPLAのエステルの2つ以上を含み得る:PLAのPEGエステル、PLAの1,3-プロパンジオールエステル、PLAのポリオールエステル及び/又はそれらの組合せ。PLAのエステルは、(i)ジオール(例えば、PEG又は1,3-プロパンジオール)及び/又はポリオール(例えば、トリグリセロール、ペンタグリセロール又はデカグリセロール等のグリセロール)、又は糖、又は糖アルコールと(ii)PLA、ラクチド又は乳酸とを反応させることによって作製されるエステルを含み得る。ラクチドはD-ラクチド、L-ラクチド又はDL-ラクチドであり得る。このため、PLAのエステルは、PLAのPEGエステル、PLAのグリセロールエステル、PLAの1,3-プロパンジオールエステル、PLAの糖エステル及びPLAの糖アルコールエステルを含むことができる。別の実施形態では、PLAのエステルは、PLAのPEGエステルを含む。別の実施形態では、組成物は、PLAのグリセロールエステルを含む。別の実施形態では、組成物は、PLAの1,3-プロパンジオールエステルを含む。別の実施形態では、組成物は、PLAの糖エステルを含む。別の実施形態では、組成物は、PLAの糖アルコールエステルを含む。別の実施形態では、PLAのエステルは、2つ以上のPLAのPEGエステル、PLAのグリセロールエステル、PLAの1,3-プロパンジオールエステル、PLAの糖エステル及びPLAの糖アルコールエステルの組合せを含むことができる。組成物は、テキスタイルの仕上げ剤を得るために、1つ以上のPLAのエステルを含む水及び/又は別の溶媒を含み得る。
【0010】
別の態様では、本発明は、PLAのエステルを作製する方法に関する。一実施形態では、本発明のエステルは、(i)ジオール(例えば、PEG又は1,3-プロパンジオール)及び/又はポリオール(例えば、ポリグリコール、トリグリセロール、ペンタグリセロール又はデカグリセロールを含むポリグリセロール)、又は糖、又は糖アルコールと(ii)PLAとを反応させることによって作製することができる。反応は、反応物を触媒と共に加熱することによって行うことができる。触媒は、塩基性触媒(例えば、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カルシウム)であり得る。触媒は、第一スズオクトエート等のルイス酸触媒であってもよい。反応は、触媒を用いずに行うことができる。反応は、PLAを融解させ、PLAのエステルを形成する反応を開始するのに十分な温度で行われる。PEGとPLAとの反応を開始するための温度は、140℃~160℃であり得るが、PLAを融解させるのに必要とされる温度は、少なくとも約160℃である。このため、PEG及びPLAの反応は、160℃~200℃又は170℃~190℃で行うことができる。ジオール及び/又はポリオール、又はジオールとポリオールとの組合せを溶解し、PLAとの反応を促進するために溶媒を使用することができる。
【0011】
反応物の最初のPLAとジオール及び/又はポリオールとの重量百分率は、25%~75%のPLA及び75%~25%のジオール及び/又はポリオール、30%~70%のPLA及び70%~30%のジオール及び/又はポリオール、35%~65%のPLA及び65%~35%のジオール及び/又はポリオール、40%~60%のPLA及び60%~40%のジオール及び/又はポリオール、並びに45%~55%のPLA及び55%~45%のジオール及び/又はポリオールであり得る。一実施形態では、最初のPLAの重量パーセントは、反応物の50%超であり、したがって、最初のジオール及び/又はポリオールの重量パーセントは、反応物の50%未満である。最初のPEGとPLAとの重量パーセントの比率(PEG:PLA)は、75:25~25:75、70:30~30:70、65:35~35:65、60:40~40:60であり得る。反応温度は通例、160℃~200℃又は170℃~190℃である。
【0012】
十分な収率のPLAのエステルを得るのに必要とされる反応時間は、PLA、ジオール及び/又はポリオールの分子量、反応の温度及び圧力、触媒の使用、並びに直接エステル化の場合の反応時の水の除去速度によって異なり得る。反応時間は、PLAからPLAのエステルへの適切な変換が達成され、水により透明な安定したエマルションが得られるのに十分であるものとする。反応時間は、温度がPLAの融点温度に達した後、1時間~10時間、2時間~6時間及び3時間~5時間であり得る。通例、反応は、ポリ乳酸のエステルの形成が実質的に完了したこと(すなわち、75%、80%、85%、90%又は95%を超える、PLAからPLAのエステルへの変換)を示す透明~濁った塊が形成されるまで継続される。
【0013】
ジオールをPLAと反応させる場合、ジオール-PLA及び/又はジオール-PLA-ジオールエステルが形成される。ポリオールをPLAと反応させる場合、ポリオール-PLA及び/又はポリオール-PLA-ポリオールエステルが形成される。乳酸又はラクチドをPLAの代わりに使用する場合、反応時間は、2時間~8時間であり得る。ポリエチレン(PEG)及びPLA(PLA)の反応によって形成されるエステルは、以下の式:式(I)及び/又は式(II)によって表されるPLA-PEGエステル及びPLA-PEGエステルを形成し得る。
【化1】
【化2】
(式中、m1及びm2は、1を超える整数であり、m1及びm2は、等しくても又は等しくなくてもよい)
前記式(I)のエステルの別の実施形態では、nは、1超かつ90、80、70、60、50、40、30、20又は10未満の整数とすることができ、mは、1超かつ10未満の整数とすることができる。
前記式(II)のエステルの別の実施形態では、nは、1超かつ90、80、70、60、50、40、30、20又は10未満の整数とすることができ、m1及びm2は、1超かつ10未満の整数とすることができ、m1及びm2は、等しくても又は等しくなくてもよい。
【0014】
以下の非限定的な実施例は、PLAのPEGエステルを作製する方法を説明するために提示される。実施例の各々に使用されるPLAは、NatureWorksによってINGEO(登録商標)6302Dの商品名で製造及び販売されているPLAである。INGEO(登録商標)6302Dは、約125℃~135℃の結晶融解温度を有する非晶質熱可塑性繊維グレード樹脂である。同様にNatureWorks(登録商標)によって製造及び販売されており、約165℃の融点を有するINGEO(登録商標)6202D等の結晶性PLAを、本発明のエステルの作製に使用することもできる。より低分子量及び高分子量のPEGを下記の実施例に記載のプロセスに使用してもよい。PEGの分子量は、重量平均分子量である。
【実施例1】
【0015】
PEG 400M(129g)、PLA(100g)及び0.41gの炭酸ナトリウムをフラスコ内で240分間、撹拌しながら160℃まで加熱した。PLAのPEGエステルのサンプルを採取した。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることで、PLAのPEGエステルの重量平均分子量は、約600g/mol~650g/molであることが決定された。
【実施例2】
【0016】
PEG 400M(129g)、PLA(100g)及び0.40gの炭酸ナトリウムをフラスコ内で200分間、撹拌しながら180℃まで加熱した。PLAのPEGエステルのサンプルを採取した。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることで、PLAのPEGエステルの重量平均分子量は、約600g/mol~650g/molであることが決定された。
【実施例3】
【0017】
PEG 600M(129g)、PLA(100g)及び0.40gの炭酸ナトリウムをフラスコ内で200分間、撹拌しながら180℃まで加熱した。PLAのPEGエステルのサンプルを採取した。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることで、PLAのPEGエステルの重量平均分子量は、約900g/mol~950g/molであることが決定された。
【0018】
例えば200ダルトン、800ダルトン、1000ダルトン、1200ダルトン、1400ダルトン、すなわち200ダルトン超の他の重量平均分子量を有するPEGを、上記の手順を用いてPLAと反応させ、他の重量平均分子量を有するPLAのPEGエステルを作製することができる。PEG:PLAは、本明細書に記載される様々な重量比で反応させることができる。
【0019】
PLAはトウモロコシ、サトウキビ、テンサイ及びキャッサバ等の再生可能原料から作製される。使用することができるPLAは、分子量によって制限されず、例えば10,000ダルトン~150,000ダルトン(g/mol)の重量平均分子量(M)を有し得る。PEGは通例、石油から作製されるが、トウモロコシ、サトウキビ、テンサイ及びキャッサバ等の完全天然再生可能原料から作製することもできる。このため、PLAのエステルは、完全天然再生可能原料から作製することができ、堆肥化可能及び/又は生分解性であり得る。PLAのエステル中のPEG単位の重量平均分子量は、100ダルトン~5000ダルトン、100ダルトン~4000ダルトン、100ダルトン~2000ダルトン、100ダルトン~1000ダルトン、100ダルトン~800ダルトン及び100ダルトン~600ダルトンであり得る。一実施形態では、重量平均分子量は、約400ダルトンである。PLAのPEGエステルの重量平均分子量は、5000ダルトン未満、4000ダルトン未満、3000ダルトン未満、2000ダルトン未満、1000ダルトン未満、975ダルトン未満、950ダルトン未満、900ダルトン未満、800ダルトン未満、700ダルトン未満、600ダルトン未満、500ダルトン未満又は400ダルトン未満であり得る。ジオール又はポリオールとPLAとを反応させることによって作製されるPLAのエステルの重量平均分子量は、5000ダルトン未満、4000ダルトン未満、3500ダルトン未満、3000ダルトン未満、2500ダルトン未満、2000ダルトン未満、1500ダルトン未満、1000ダルトン未満、975ダルトン未満、950ダルトン未満、900ダルトン未満、800ダルトン未満、700ダルトン未満、600ダルトン未満、500ダルトン未満又は400ダルトン未満であり得る。
【0020】
PLAのPEGエステルの重量平均分子量は、GPCカラム及び蒸発光散乱検出(「ELSD」)を用いる標準高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)システムを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって決定することができる。以下の手順を用いて、PLAのPEGエステルの重量平均分子量を決定した。標準の保持時間を較正式に当てはめ、この式を用いて、未知のポリマーの重量平均分子量を決定した。未知のポリマーのサンプルは、0.02gのサンプルを1.5mLのHPLCグレードのイソプロピルアルコール(「IPA」)に対して使用することで調製した。サンプルの分子量の計算に用いられる指数関数的増加率の式/曲線を定式化するために、様々な平均分子量のPEGポリマーも調製し、「標準」として使用した。決定の結果が重量平均分子量の結果となるように、標準PEGをそれらの重量平均分子量によって分類した。典型的なPEG標準セットの例を下記の表1に記載する。
【0021】
【表1】
【0022】
使用したカラムは、Jordi Gel DVB 500A(300×7.8mm、カタログ番号15071)であった。方法は、テトラヒドロフラン(「THF」)を1ml/分で用いる定組成とした。標準実行時間は30分間であるが、殆どの成分が15分以内に溶出した)。検出は、蒸発光散乱検出器(「ELSD」)を用いて達成した。用いたELSDユニットは、ELSD LTAアクセサリを備えるAlltech 500 ELSDであった。LTAユニットは、41℃で動作するように設定した。ELSDユニットのドリフト管を70℃に設定し、窒素ガス流量を1.84SLPMに設定した。分析されるPLA:PEGサンプルの分子量を計算するために、各PEG標準の結果についての平均保持時間を計算した。これは、ピークを(面積%=50/50により)半分にすることによって行った。次いで、保持時間を、例えば200、400、600、800、1000、1200、1400、1450の対応するPEG重量平均分子量に沿ってプロットした。全てのPEG標準をプロットした後、散布図を作成し、指数傾向線をExcelのスプレッドシート内で当てはめた。図1は、PEG GPC標準についての保持時間に対する分子量を示す典型的な標準曲線及び較正式の決定である。次いで、指数方程式を用いて重量平均分子量を計算した。標準と同様、平均保持時間は、面積の50%が決定される時間の両側にある時間を決定することによって計算した。
【0023】
別の実施形態では、本発明のエステルは、(i)ジオール(例えば、PEG又は1,3-プロパンジオール)及び/又はポリオール(例えば、トリグリセロール、ペンタグリセロール又はデカグリセロール等のグリセロール)、又は糖、又は糖アルコールと(ii)ラクチド、ラクチド中間体又は乳酸とを反応させることによる直接エステル化によって作製することができる。ラクチドはD-ラクチド、L-ラクチド及び/又はDL-ラクチドであり得る。ジオール若しくはポリオール、又はジオール及び/又はポリオールの組合せを溶解し、ラクチド、ラクチド中間体又は乳酸との反応を促進するために溶媒を使用することができる。反応は、反応を加速し、水を除去する触媒として作用する無機酸(例えば、硫酸又は乾燥塩化水素)の存在下で行うことができる。水の除去は、反応混合物と、反応混合物の反応を妨げない不活性ガス若しくは乾性ガス、例えば窒素とを接触、例えばスパージング(sparging)させるか、及び/又は反応生成物を蒸留することによっても達成することができる。
【0024】
本発明の別の態様では、PLAのエステルを、PLAのエステルを含まない他の化合物又は組成物と組み合わせて、仕上げ剤(すなわち、「仕上げ組成物」)を形成することができる。仕上げ剤中のPLAのエステル(単数又は複数)の重量パーセントは、PLAのエステルの重量の0.1%~99.9%又は5%~95%であり得る。他の化合物及び/又は組成物の例としては、水、滑沢剤、乳化剤、静電気防止剤、凝集剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度調整剤、湿潤剤、殺生物剤、pH調整剤、防汚剤及び着色防止剤が挙げられる。例示的な滑沢剤としては、PLAのエステル以外のPEG脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化トリグリセリド、グリセロールエステル、ソルビタンエステル及びアルキルエステル、及び/又は鉱油、植物油及び/又は動物油から得られるそれらの組合せが挙げられる。例示的な乳化剤としては、非イオン性物質(例えば、アルキルアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート及び脂肪酸エトキシレート、及び/又はそれらの組合せ)、カチオン性物質(例えば、第四級脂肪族アミン、第四級脂肪族アミンエトキシレート、第四級イミダゾリン及び/又はそれらの組合せ)、及びアニオン性物質(例えば、エトキシ化アルキルアルコールのスルフェート及びホスフェート、脂肪酸石鹸、及び/又はスルホコハク酸アルキルエステル、及び/又はそれらの組合せ)が挙げられる。例示的な静電気防止剤としては、非イオン性物質(例えば、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、ポリオキシアルキレングリコール、エーテル及び/又はエステル、及び/又はそれらの組合せ)、カチオン性物質(例えば、第四級アミン、第四級イミダゾリン及び/又はそれらの組合せ)、及びアニオン性物質(例えば、アルキルアルコールのスルフェート及び/又はホスフェート、及び/又はアルキルアルコールエトキシレートのスルフェート及び/又はホスフェート、及び/又はそれらの組合せ)が挙げられる。
【0025】
典型的な防汚配合物としては、パーマネントプレス樹脂、パーマネントプレス樹脂の触媒、湿潤剤、高密度ポリエチレン樹脂、フッ素系防汚化学物質及び酢酸が挙げられる。化合物の典型的な重量百分率は、パーマネントプレス樹脂4.0~10.0、パーマネントプレス樹脂の触媒5.0~10.0、湿潤剤0.25~1.0、高密度ポリエチレン樹脂3.0~6.0、フッ素系防汚化学物質5.0~10.0、及び酢酸0.0~0.25である。布地に1滴塗布することによって決定されるように、防汚剤が布地により急速に(例えば、10秒、5秒、4秒、3秒又は2秒未満)吸収されることで、布地を防汚剤で処理する時間を短縮することができるよう、PLAのPEGエステルを、防汚剤に対するフッ素系防汚化学物質を含有する防汚配合物に添加することができる。さらに、PLAのPEGエステルを、フッ素系防汚化学物質を含有する防汚配合物に添加する場合、フッ素系化学物質の量を最大で25%、50%又は75%減少させることができ、防汚剤は依然として、PLAのPEGエステルを含まない、典型的な量(すなわち、5.0重量%~10.0重量%)のフッ素系化学物質を含有する防汚剤と同等の又はより良好な防汚結果をもたらすことができる。
【0026】
PLAのエステルは、界面活性剤として作用し、パーソナルケア物品、例えば石鹸、シャンプー及びコンディショナーに使用することができる。PLAのエステルを含む組成物は、他の界面活性剤、例えば完全天然ポリグルコシドを含み得る。
【0027】
また別の態様では、本発明は、PLAのエステルで処理されたテキスタイルに関する。PLAのエステルで処理されたテキスタイルは、親水性等の改善された表面特性を有する。一実施形態では、テキスタイルは不織テキスタイル、例えばスパンボンド、メルトブロー、カード、エアレイド、ウェットレイド及び/又はそれらの組合せである。別の実施形態では、テキスタイルは、織り又は編みテキスタイルである。一実施形態では、テキスタイルはポリエステル、例えばPLA及び/又はポリエチレンテレフタレートで作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルは、ポリプロピレンで作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルは、ポリエチレンで作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルは、ポリプロピレンとポリエチレンとの組合せで作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルはポリアミド、アクリル、アラミド及び/又はそれらの組合せで作製される。別の更なる実施形態では、テキスタイルは、人造繊維(例えば、アセテート、リヨセル及びレーヨン)で作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルは、天然繊維(例えば、竹、綿、亜麻、麻、羊毛及び/又はそれらの組合せ)で作製されるか又はそれを含む。別の実施形態では、テキスタイルは、「PBO」としても知られるポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)で作製され得る。別の実施形態では、テキスタイルは、「PEEK」としても知られるポリエーテルエーテルケトンで作製され得る。別の実施形態では、テキスタイルは、「PEKK」としても知られるポリエーテルケトンケトンで作製される。PLAのエステルは、テキスタイルに塗布することで、改善された湿潤特性(例えば、比較的急速な滲み出し及び複数回滲み出し時間、及び/又は比較的低い再湿潤(又は液戻り))を与える。
【0028】
本発明のPLAのエステルを含む組成物は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwoven Association))及びINDA(米国不織布工業会(Association of the Nonwovens Fabrics Industry))の不織布カバーストックの液体滲み出し時間についての標準試験:WSP 070.3.R3(12)によって決定されるように、ポリプロピレン又はPLAで作製された、12グラム毎平方メートル(gsm)のスパンボンド不織布上で5秒間以下、4秒間以下又は3秒間以下の単回液体滲み出し時間をもたらすことができる。EDANA(欧州不織布協会)及びINDA(米国不織布工業会)の不織布カバーストックの液体滲み出し時間についての標準試験:WSP 070.3.R3(12)は、引用することにより本明細書の一部をなす。本発明のPLAのエステルを含む組成物は、反復液体滲み出し時間についての標準試験:WSP 070.7.R4(12)によって決定されるように、15gsmのPLA又はポリプロピレンスパンボンド不織布上で最初の3回の滲み出しについて5秒間以下又は4秒間以下の複数回又は反復液体滲み出し時間をもたらすことができる。反復液体滲み出し時間についての標準試験:WSP 070.7.R4(12)は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0029】
本発明のPLAのエステルを含む組成物は、不織布カバーストックの液戻りについての標準試験:WSP 080.10.R3(12)によって決定されるように、12gsmのPLAスパンボンド不織布上で少なくとも0.25g以下の再湿潤をもたらすこともできる。不織布カバーストックの液戻りについての標準試験:WSP 080.10.R3(12)は、引用することにより本明細書の一部をなす。1つ以上のPLAのエステルを含む組成物は通例、組成物中の1つ以上のPLAのエステルの重量パーセントが、0.1重量%~99.9重量%、0.1重量%~80.0重量%、0.1重量%~50.0重量%、0.1重量%~25.0重量%、0.1重量%~10.0重量%、すなわち0.1重量%超の1つ以上のPLAのエステルとなり得るように水を含む。
【0030】
PLAのエステルを含む組成物は、仕上げ剤、例えば漂白、精練、親水性、静電気防止、防汚(又は着色防止)、耐着色及び減摩仕上げ剤、及び/又はそれらの組合せをもたらすことができる。一実施形態では、これらの仕上げ剤に使用されるPLAのPEGエステルは、市販のPEG 200、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 800、PEG 1000、PEG 1200、PEG 1400、PEG 1450及び/又はそれらの混合物から作製することができる。PLAのPEGエステルは、100~1000、200~800及び300~700の分子量を有するPEGから作製することもできる。PLAのPEGエステルは、30:70~70:30、40:60~60:40及び45:55~55:45のPEG:PLA比を有し得る。好ましい実施形態では、PLAのPEGエステルはPEG 400から作製され、PEG:PLA比は50:50である。PLAのPEGエステル、すなわち44:56のPEG:PLA比を有するPLAのPEG 400エステル、50:50のPEG:PLA比を有するPLAのPEG 200エステル、50:50のPEG:PLA比を有するPLAのPEG 400エステル、50:50のPEG:PLA比を有するPLAのPEG 600エステル、50:50のPEG:PLA比を有するPLAのPEG 1450エステルは、有利な発煙点及び引火点特性(すなわち、発煙点が171°F未満であり、引火点が244°F未満である)、並びに有利な摩擦特性を有する。例えば、防汚仕上げ剤は、上記に特定されるもののようなPLAのPEGエステル、撥油/撥水剤、湿潤/ウィッキング剤及び親水性バインダを含み得る。一実施形態では、防汚仕上げ剤は、PLAのエステル、パーマネントプレス樹脂、パーマネントプレス樹脂の触媒、湿潤剤、高密度ポリエチレン樹脂、フッ素系防汚化学物質、及び/又はpH調整のための酸(例えば、酢酸、クエン酸又はグリコール酸)を含む。PLAのエステルの添加は、同等の又は改善された防汚結果をもたらした上で、高価なフッ素系防汚化学物質の必要性を最大で10%、20%、30%、40%、50%又は60%減らすことができる。PLAのエステルの添加は、液滴反射を改善する。1Lの防汚仕上げ剤は、1g~40g、1g~30g、1g~20g、1g~15g又は1g~10gのPLAのPEGエステルを含み得る。例えば、2Lの仕上げ剤は、PLAのPEGエステルの1L量の2倍を含むことができ、3Lの仕上げ剤は、PLAのPEGエステルの1L量の3倍を含むことができる。
【0031】
PLAのエステルを含む組成物は、所望の滲み出し及び/又は再湿潤特性をもたらす量でロールコーティング、パディング、滴下又は吹付けによってテキスタイルに塗布することができる。例えば、PLAのエステルを含む組成物は、0.1重量%~10.0重量%FOY、0.2重量%~3.0重量%、0.3重量%~1.0重量%及び0.3重量%~0.8重量%の糸上の仕上げ剤(finish on yarn;FOY)のレベルをもたらすように塗布することができる。このため、本発明の別の態様は、上記の1つ以上のPLAのエステル又は上記の1つ以上のPLAのエステルを含有する組成物で処理されたテキスタイルである。
【0032】
PLAのPEGエステルを含まない従来の防汚配合物とPLAのPEGエステルを含む防汚配合物とを比較する試験の結果を下記の表2b及び表2c、表3b及び表3c、表4b及び表4c、表5b~表5d、表6b~表6d、並びに表7b~表7dに提示する。PLAのPEGエステルを含有する防汚配合物を100%ポリエステル、ポリエステル/綿混紡(65重量%:35重量%のポリエステル/綿)及びナイロンの布地上で試験した。結果を、Pulcra Chemicalsによって販売されている、離型剤として使用される従来のポリエステルコポリマーであるNONAX(登録商標)MMと比較した。
【0033】
ポリエステルコポリマーは、合成繊維が水を吸収する又は吸い上げるようにするために、特に服飾品及びスポーツ用の布地に使用される。ポリエステルコポリマーは、布地の防汚特性を改善するとも言われている。PLAのPEGエステルを、PLAのPEGエステルがテキスタイル上の静電気を改善するかを決定するためにも試験した。3つのPLAのエステルを、Pulcra Chemicals LLCによってNONAX(登録商標)MMの商品名で販売されている一般的なポリエステルコポリマー仕上げ剤と比較した。NONAX(登録商標)MM及びPLAのPEGエステルをパディング法によって布地に塗布した後、布地上で乾燥させ、硬化させた。配合物は100%ポリエステル布地、65重量%/35重量%ポリエステル/綿布地及び100%ナイロン布地に塗布した。ウィッキング(wicking)を決定するために、処理した布地の切れ端の一端を水に浸し、水を布地に吸い上げさせた。水が布地により高く吸い上げられるほど、ウィッキング特性(wicking property)がより良好となる。布地に吸い上げられる水の距離をミリメートル(「mm」)で測定した。防汚剤中のPLAのエステルのウィッキング特性を測定する場合、下記の防汚剤配合物をパディングした後、177℃にて布地上で乾燥させ、硬化した。防汚配合物及び試験の結果を下記の表に記載する。下記で論考する試験についての布地の洗浄は、現行のAATCC試験法135に従って行った。
【0034】
【表2a】
【0035】
【表2b】
【0036】
【表2c】
【0037】
【表2d】
【0038】
【表3a】
【0039】
【表3b】
【0040】
【表3c】
【0041】
【表4a】
【0042】
【表4b】
【0043】
【表4c】
【0044】
【表4d】
【0045】
ウィッキング及び防汚の試験を、上記の100%ポリエステル、65%/35%ポリエステル/綿及び100%ナイロンに対して記載のように繰り返した。100%ポリエステルについての結果を下記の表5b~表5dに示す。防汚剤のpHは、pH4~5に調整した。その後の防汚剤試験を上記の100%ポリエステルに対して繰り返した。洗浄剤で洗浄する前の最初の布地、5回の洗浄サイクル後の布地及び10回の洗浄サイクル後の布地に対するウィッキング、防汚についての試験結果、並びに白色度を下記の表5a~表5eに示す。同じ洗浄手順を全サンプルの全洗浄サイクルに使用した。各防汚剤のpHは、pH4~5に調整した。
【0046】
【表5a】
【0047】
【表5b】
【0048】
【表5c】
【0049】
【表5d】
【0050】
【表5e】
【0051】
その後のウィッキング剤及び防汚剤の試験を上記の65/35%ポリエステル/綿に対して繰り返した。洗浄前の最初の布地、5回の洗浄サイクル後の布地及び10回の洗浄サイクル後の布地に対するウィッキング剤及び防汚剤についての試験結果を下記の表6a~表6dに示す。各防汚剤のpHは、pH4~5に調整した。
【0052】
【表6a】
【0053】
【表6b】
【0054】
【表6c】
【0055】
【表6d】
【0056】
その後のウィッキング剤及び防汚剤の試験を上記の100%ナイロン6のニット試験布地スタイル304に対して繰り返した。洗浄前の最初の布地、5回の洗浄サイクル後の布地及び10回の洗浄サイクル後の布地に対するウィッキング剤及び防汚剤についての試験結果を下記の表7a~表7dに示す。各防汚剤のpHは、pH4~5に調整した。
【0057】
【表7a】
【0058】
【表7b】
【0059】
【表7c】
【0060】
【表7d】
【0061】
上記の表2a、表3a、表4a、表5a、表6a及び表7aに示す試験結果から、PLAのPEGエステルが3つ全てのタイプの布地(ポリエステル、ポリエステル/綿及びナイロン)に対して良好なウィッキング剤であることが分かり、生分解性及び/又は堆肥化可能であり得ることが実証される。
【0062】
PLAのエステルを精練剤としての使用について試験した。PLAのエステルを従来の発泡剤の代わりに布地の精練に使用した。界面活性剤の評価試験については、活性物含量(%)を同等の固形分(%)が得られるように調整した。布地の湿潤試験(「湿潤試験」)により、界面活性剤が100%円形生機綿を濡らす速度が示される。全ての製品を、活性物含量を調整しない場合と同様に1g/L、2g/L及び4g/Lの濃度で試験した。これらの試験は二連で行った後、平均化した。液滴吸収度は、1滴の水が消える時間(秒)である。評価のこの部分では、PLA界面活性剤及びSYNTERGENT(登録商標)APWが布地に塗布され、試験される化学配合物の一部である。ワーリングブレンダー泡立ち試験を用いて、試験される各界面活性剤の1g/L溶液を用いて生じる泡高を測定する。泡高は、60秒間の混合の直後及び30秒後に測定する。2回目の測定は、30秒間の静置後に発泡がどの程度安定しているかを示す。この試験方法は、ジェット機器等の高乱流加工装置に用いられる。苛性ソーダアルカリ安定性試験により、様々な苛性ソーダ溶液中で4時間後に界面活性剤が安定している100%苛性ソーダの量が測定される。本発明者らの標準試験は、100%NaOHの1%~6%苛性ソーダ溶液について行うことである。5g/L量の各界面活性剤を各苛性ソーダレベルに添加する。
【0063】
デンプンを用いずにサイジングした65重量%/35重量%生機ポリエステル綿綾織布を用いて、各界面活性剤を標準一段階漂白評価において評価した。この評価については、同じ漂白剤配合物を各界面活性剤の評価に使用した。しかしながら、同じ活性物量の各界面活性剤を各界面活性剤についての湿潤、洗浄及びサイズ除去特性の真の比較に用いた。
【0064】
[一段階布地漂白の配合物及び手順]
(化学組成)
10.0g/Lの界面活性剤SYNTERGENT(登録商標)APW対SYNTERGENT(登録商標)APW PLA改質(SYNTERGENT(登録商標)は、Pulcra Chemicals LLCによって販売されている)
7.0g/LのPulcra Chemicals LLCによって販売されているSECURON(登録商標)540
14.6g/Lのケイ酸ナトリウム42°Be’
37.4g/Lの50%苛性ソーダ
53.7g/Lの50%過酸化水素
【0065】
(漂白手順)
1.布地を含浸量について飽和させる。(布地のタイプによって異なる)
2.布地を100℃で20分間蒸気処理する。
3.布地を最低180°Fで8回洗浄する/すすぐ。
4.布地を取り出し、乾燥させる。
【0066】
【表8】
最初の数字は材料の部数であり、2番目の数字は、標準発泡剤と同等の固形分を達成するための水の部数である。
**希釈なし。単に配合混合物中で2倍濃縮。
【0067】
下記の表9に示されるように、PLAのPEGエステルによるSYNTERGENT(登録商標)APWの改質は、標準SYNTERGENT(登録商標)APWのように安定した泡を構築しない。精練は同等か、又は場合によってはより良好である。湿潤は変動があるが、幾つかのサンプル改質では標準混合物に非常によく似ていた。液滴吸収度試験の幾らかの変動も同様である。全ての改質が試験した2つの温度範囲にて苛性アルカリ中で安定していた。全体として、PEG 400が100%綿ニットに対して最良の結果をもたらした。
【0068】
【表9】
【0069】
下記の表10はPLAのPEG 400、PEG 1450、トリグリセロール及びペンタグリセロールエステルについての12gsmのポリプロピレンの単回滲み出し試験の結果を示す。
【0070】
【表10】
【0071】
下記の表11は、表10に特定される同じサンプルに対して行った、同じPLAのPEG 400、PEG 1450、トリグリセロール及びペンタグリセロールエステルについての12gsmのポリプロピレンの単回滲み出し試験の結果を示す。
【0072】
【表11】
【0073】
単回滲み出し(「SST」)及び複数回滲み出し(「MST」)試験の結果を、0.52重量%の糸上の仕上げ剤(「FOY」)を塗布した12gsmのポリプロピレン不織布に対する44:56、50:50、30:70及び56:44のPEG:PLAの重量比を有するPLAのPEGエステルについて下記の表12に示す。PLAのPEG 400及びPEG 600エステルは、SST及びMSTの要件を満たし、Pulcra Chemicals LLCによってSTANTEX(登録商標)の商品名で販売されている従来の仕上げ剤と同等であるか又はより良好である。
【0074】
【表12】
【0075】
1%の糸上の仕上げ剤(「FOY」)を塗布した300デニールのポリプロピレンに対するPLAのPEGエステル(PEG 400MW、1450MW及び4000MW)の静電気及び摩擦試験の結果を下記の表13a及び表13bに示し、未仕上げの糸についての結果及びPulcraによってSTANTEX(登録商標)の商品名で販売されている従来の仕上げ剤についての結果と比較する。PLAのPEGエステルは、従来の仕上げ剤と同等の結果をもたらした。
【0076】
【表13a】
【0077】
【表13b】
【0078】
本明細書及び/又は図面において、実施形態の例を開示した。本発明は、かかる例示的な実施形態に限定されない。特に指定のない限り、特定の用語は、限定を目的とするものではなく、包括的及び記述的な意味で使用されている。用語「及び/又は」の使用は、関連の列挙した項目の1つ以上の任意のあらゆる組合せを含む。上記の温度、パーセンテージ、ダルトン等の範囲(すなわち、「_と_との間」)について、「の間」は、範囲に示す数字が範囲内に含まれるような「包括的な間」を意味する(例えば、1と10との間は1及び10を含む)。
図1