(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電界による癌治療用の癌治療システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A61N1/32
(21)【出願番号】P 2020542721
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 US2018057120
(87)【国際公開番号】W WO2019084016
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-28
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、ジェイコブ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハースル、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0086073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105793(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298895(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004507(US,A1)
【文献】特表2009-520509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0239213(US,A1)
【文献】特表2015-503365(JP,A)
【文献】特表2008-515544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療システムであって、
植え込み可能な容量充填リードを備え、該リードは、
基端部と先端部とを有するリード本体であって、内腔を画定する、リード本体と、
前記リード本体の前記先端部に接続された拡張可能なリードヘッドであって、体内空隙を充填するために、第1の非拡張位置と第2の拡張位置との間で拡張するように構成されており、前記体内空隙は癌性腫瘍の外科的切除後に存在する空隙によって画定されており、前記拡張可能なリードヘッドは前記体内空隙によって規定される形状をとるように構成された拡張可能なバルーンを含む、リードヘッドと、
前記拡張可能なバルーンの外部表面上に配置された3つ以上の電極と、
前記3つ以上の電極と前記リード本体の前記基端部との間に電気通信を提供するように構成された3つ以上の電気伝導体と、を含み、
前記拡張可能なリードヘッドの直径は前記第1の非拡張位置においてゼロより大きく且つ2センチメートル未満、及び前記第2の拡張位置において2センチメートル超であり、
制御回路をさらに備え、該制御回路は1V/cm~10V/cmの範囲から選択される1つ以上の電界強度で電界を発生させるよう電界発生回路に指示するように構成され、
前記3つ以上の電極は、癌性細胞の細胞有糸分裂を破壊すべく、前記3つ以上の電極の位置
同士を正極から負極に向かって結ぶ直線であって前記癌性細胞を通過する前記直線によって規定された少なくとも2つのベクトルに沿って前記電界を送達するように構成されている、癌治療システム。
【請求項2】
前記リードヘッドは基端部及び先端部を含み、前記リードヘッドは、前記基端部と前記先端部との間に延びる1つ以上の可撓性支持体を含む、請求項1に記載の癌治療システム。
【請求項3】
前記1つ以上の可撓性支持体は外側に曲がるように付勢され、前記リードヘッドに前記第2の拡張位置をとらせる、請求項1または2に記載の癌治療システム。
【請求項4】
前記1つ以上の可撓性支持体は基端部及び先端部を含み、前記可撓性支持体の前記基端部及び前記先端部のうちの少なくとも1つは前記リード本体に対して移動し、前記可撓性支持体を外側に曲げるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の癌治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての指定国の出願人として、カーディアックペースメーカーズインコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers,Inc.)(米国企業)、及び全ての指定国の発明者として、ブライアン L.シュミット(Brian L.Schmidt)(米国国民)及びジェイコブ M.ルドウィグ(Jacob M.Ludwig)(米国国民)及びベンジャミン J.ハースル(Benjamin J.Haasl)(米国国民)及びマイケル J.ケーン(Michael J.Kane)(米国国民)の名義で、2018年10月23日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、2018年10月22日出願の米国特許出願第16/167,087号明細書、及び2017年10月23日に出願の米国仮特許出願第62/575,693号明細書の優先権を主張し、それらの内容全体を参照により本明細書中に援用する。
【0002】
本明細書の実施形態は、容積充填リードを含む医療デバイス、及び身体組織内の癌性腫瘍を治療するためにこれを使用する方法に関する。より具体的には、本明細書の実施形態は、容積充填リードと、癌性腫瘍の部位に治療電界を発生させるように構成された電極とを使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
米国がん協会によれば、癌は、米国内で毎年発生する死亡の約25%を占める。癌性腫瘍の現在の標準治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法などのファーストライン治療を含み得る。追加的なセカンドライン治療には、放射性シード注入、凍結療法、ホルモン又は生物学的製剤治療、アブレーション等を含み得る。ファーストライン治療とセカンドライン治療の組み合わせもまた、1つの特定の治療が単独で効果的でない場合に患者の利益となり得る。
【0004】
癌性腫瘍は、体のいずれかの部分の1つの正常細胞が突然変異し、その後過剰に及び過度に急激に成長及び増殖し始めると形成され得る。癌性腫瘍は、細胞分裂中に発生する細胞のDNA又はRNAの遺伝子突然変異、イオン化放射線又は非イオン化放射線などの外部刺激、発癌性物質への曝露の結果、又は遺伝性の遺伝子突然変異の結果であり得る。病因論に関わらず、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂の結果である。
【0005】
有糸分裂は細胞分裂の過程であり、多くの種類の癌性細胞を含む体内の全ての体細胞の細胞周期の一部である。有糸分裂は、4つの基準期:前期、中期、後期、及び終期を含む。前期の直前に、細胞はその染色体を複製し、2つの同一姉妹染色分体を作る。前期中に、染色体は凝縮し始め、核を取り囲む核膜が消失する。有糸分裂紡錘体も前期中に形成され始める。有糸分裂紡錘体は、微小管及び中心体の自己組織化された双極性の配列を含む。微小管は、一般に、高極性のα-チューブリンタンパク質とβ-チューブリンタンパク質との重合で形成される。中心体は同じくタンパク質ベースの細胞小器官であり、この段階で、その2つは分裂細胞の両側に移動する。微小管の負に荷電した端部は中心体に付着する。微小管の正に荷電した端部は分裂細胞の赤道面に向かって放射状に広がり、各姉妹染色分体の動原体に最終的に付着する。中期は、全ての染色体が分裂細胞の赤道面に整列し、有糸分裂紡錘体と結合することと定義され得る。次いで、後期中に、同数の姉妹染色分体が細胞の両側に向かって引っ張られる。全ての染色体が分離されると、終期の過程が始まり、細胞膜は、2つの新たに形成される姉妹細胞間に分裂溝を形成し始め、細胞が細胞質分裂と呼ばれる過程で互いに物理的に分離すると、細胞分裂は完了する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書の実施形態は、容積充填リードを含む医療デバイス、及び身体組織内の癌性腫瘍を治療するためにこれを使用する方法に関する。第1の態様では、癌治療システム用のリードが提供される。リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含むことができ、リード本体は内腔を画定し得る。リードはまた、リード本体の先端部に接続された拡張可能なリードヘッドを含み得る。リードヘッドは、体内空隙を充填するために、第1の非拡張位置と第2の拡張位置との間で拡張するように構成され得る。リードはまた、リードヘッドの外部表面上に配置された2つ以上の電極と、2つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体と、を含み得る。
【0007】
第2の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リードヘッドは基端部及び先端部を含むことができ、リードヘッドは、基端部と先端部との間に延びる1つ以上の可撓性支持体を含む。
【0008】
第3の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の可撓性支持体は外側に曲がるように付勢され、リードヘッドに第2の拡張位置をとらせることができる。
【0009】
第4の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の可撓性支持体は基端部及び先端部を含み、可撓性支持体の基端部及び先端部のうちの少なくとも1つはリード本体に対して移動し、可撓性支持体を外側に曲げるように構成されている。
【0010】
第5の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、拡張可能なリードヘッドの直径は第1の非拡張位置において2センチメートル未満、及び第2の拡張位置において2センチメートル超である。
【0011】
第6の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の可撓性支持体上に2つ以上の電極が配置されている。
第7の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リードヘッドは拡張可能なバルーンを含む。
【0012】
第8の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、2つ以上の電極は、拡張可能なバルーンの外側に配置されている。
第9の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リード本体内に内腔を配置することができ、拡張可能なバルーンは内腔と流体連通することができる。
【0013】
第10の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、以前に癌と診断された患者を治療する方法が提供される。当該方法は、患者内にリードを植え込むことを含み得る。リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含むことができ、リード本体は内腔を画定し得る。リードは、リード本体の先端部に接続された拡張可能なリードヘッドであって、体内空隙を充填するために、第1の非拡張位置と第2の拡張位置との間で拡張するように構成されている、リードヘッドを含み得る。リードは、リードヘッドの外部表面上に配置された2つ以上の電極と、2つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体と、を含み得る。当該方法は、体内空隙内にリードヘッドを配置することを含み得る。当該方法はまた、1つ以上の電極によって1つ以上の電界を発生させることを含み得る。
【0014】
第11の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、当該方法は、リードヘッドを配置する操作の後に体内空隙内でリードヘッドを拡張させることを含み得る。
【0015】
第12の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、当該方法は、1つ以上の電極によって1つ以上の電界を発生させることは、治療部位に、1V/cm~10V/cmの電界強度を有する電界を発生させることを含む、を含み得る。
【0016】
第13の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の電極は、少なくとも2つの異なる電界ベクトルを画定する電極対を形成する。
【0017】
第14の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、2つの異なる電界ベクトルは、互いに対して少なくとも10度の角度を成すことができる。
【0018】
第15の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌治療システム用のリードが提供される。リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含むことができ、リード本体は内腔を画定し得る。リードは、リード本体の先端部の外部表面上に配置された2つ以上の電極と、2つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体と、を含み得る。リード本体の先端部は螺旋部を含み得る。
【0019】
第16の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の電極は、螺旋部の中心軸線から外側に面した螺旋部の表面上に配置されている。
【0020】
第17の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、螺旋部は可撓性であり、内側に加えられる圧力が増加するにつれて直径を減少させることができ、内側に加えられる圧力が減少するにつれて直径を増加させることができる。
【0021】
第18の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、螺旋部は、圧力が内側に加えられていないとき、少なくとも1センチメートルの外径を有することができる。
【0022】
第19の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌性腫瘍を治療する方法が提供される。当該方法は、患者内にリードを植え込むことを含み得る。リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含むことができ、リード本体は内腔を画定し得る。リードはまた、リード本体の先端部の外部表面上に配置された2つ以上の電極と、2つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体と、を含み得る。先端部は螺旋部を含み得る。当該方法はまた、1つ以上の電極によって1つ以上の電界を発生させることを含み得る。
【0023】
第20の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、医療デバイスが含まれる。医療デバイスはリードを含み得る。リードは、リードの表面上又は表面内に配置された1つ以上の電極と、リードの長手方向の長さの少なくとも一部分を貫通する薬物送達内腔と、を含み得る。リードはまた、リードの表面上又は表面内に配置されたポートを含むことができ、ポートは薬物送達内腔と流体連通することができ、薬物送達内腔を通して、薬物が治療部位に送達され得る。
【0024】
この発明の概要は、本願の教示のいくつかの概要であり、本対象の排他的又は網羅的治療を意図するものではない。更なる詳細は詳細な説明及び付属の特許請求の範囲に記載されている。当業者には、他の態様は、それぞれ限定の意味で解釈されるべきではない、以下の詳細な説明を読み、理解すると共に、その一部を成す図面を見ると明らかであろう。本明細書の範囲は、付属の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物により定義される。
【0025】
態様は、以下の図訳と絡めて、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
【
図2】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
【
図3】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略断面図である。
【
図4】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
【
図5】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの構成要素の概略図である。
【
図6】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
【
図7】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図8】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図9】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図10】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図11】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図12】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図13】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図14】
図13の線14-14’に沿ったリードの概略断面図を示す。
【
図15】本明細書中の各種実施形態による例示的な治療パラメータのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態には様々な変更及び代替的形態が考えられるが、その詳細を例及び図面として示すと共に、詳しく述べる。しかしながら、本明細書の範囲は記載される特定の実施形態に限定されないことは理解すべきである。反対に、本発明は、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれる変更、等価物、及び代替物を包含することを意図する。
【0028】
上で述べたように、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂により生じ得る。癌性腫瘍を治療するためのいくつかの従来のファーストライン治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法を含み得る。しかしながら、多くのファーストライン治療は、いくつかの例を挙げると、疲労、脱毛、免疫抑制、及び長期の手術回復時間などの付随する望ましくない副作用を有する。
【0029】
理論により拘束されるものではないが、交流電界は、細胞分裂に関与する主要タンパク質(特にチューブリン及びセプチン)の双極子配列を障害することにより癌性腫瘍内の有糸分裂を破壊することができると考えられる。微小管紡錘糸を形成しているチューブリンタンパク質の重合を破壊することができ、それゆえ、染色体分離に必要な紡錘糸の形成が阻止される。これにより、有糸分裂の中期における細胞分裂を停止することができる。いくつかの場合では、交流電界は、既に成長している紡錘糸の重合を停止することができ、細胞がそれほど長く生存している場合には、後期中の不完全な紡錘体及び一様でない染色体分離に至る。いずれの場合においても、微小管の不完全重合に起因する後期中の微小管紡錘体形成の停止及び一様でない染色体分離は、アポトーシス(即ちプログラム細胞死)につながる可能性がある。
【0030】
また、交流電界は、終期中の分裂細胞の分裂溝の近傍における電界密度の増加につながり得ると考えられる。分裂溝の領域における電界密度の増加は、高電界密度の分裂溝への、タンパク質及び核酸などの荷電巨大分子の誘電泳動を生じ得る。分裂溝の部分における細胞分裂に必要な主要巨大分子の一様でない濃度は、終期中の姉妹細胞の最終分離を破壊することができ、最終的にアポトーシスに至る。
【0031】
電界の形状及び大きさは、空間中の電極の配置、及びいくつかの異なる電極構成の電界を変化させることにより調整することができる。時として、電界の形状は、個々の電極アレイ内又は医療デバイスシステム全体内の個別電極の極性を交番する又は切り替えることによって操作することができる。
【0032】
癌性腫瘍が外科的に切除されると、空隙が残ることがしばしばある。切除後に外科的縁に残り得る任意の癌性細胞に対する更なる治療ラインを提供するために、容積充填電界による空隙の処置が実施され得る。
【0033】
ここで
図1を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略図が示される。医療デバイス100は、患者101の体内の、身体組織内にある癌性腫瘍の部位又はその近傍に完全に植え込むことができる。四肢、上部胴体、腹部領域、頭部等などの領域を含む様々な植え込み部位を使用することができる。
【0034】
ここで
図2を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス200の別の概略図が示される。医療デバイス200は患者101の体内に部分的に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、部分的に植え込まれ、且つ部分的に患者の体外にあることができる。他の実施形態では、部分的に植え込まれた医療デバイスは、体内に配置された構成要素と体外に配置された構成要素との間の経皮的接続を含み得る。部分的に植え込まれた医療デバイスは医療デバイスの部分的に外部にある部分と無線接続を介して無線通信することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、医療デバイスの一部分は完全に植え込むことができ、医療デバイスの一部分は完全に外部にあることができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の電極又はリードは体内に完全に植え込むことができる一方で、電界発生器などの電界を発生させる医療デバイスの部分は完全に体外にあることができる。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、記載する電界発生器は、パルス発生器と同じ構成要素の多くを含むことができ、且つパルス発生器と同じ機能の多くを実施するように構成され得ることは理解されるであろう。医療デバイスの一部分が完全に植え込まれ、医療デバイスの一部分が完全に外部にある実施形態では、完全に外部にある医療デバイスの部分は、完全に内部にある医療デバイスの部分と無線通信することができる。しかしながら、他の実施形態では、有線接続を使用することはできる。
【0036】
医療デバイス100又は医療デバイス200は、筺体102と、筺体102に結合されたヘッダ104と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体102は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体102又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ104は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ104は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ104は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ104は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。
【0037】
医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にあるいくつかの実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、耐久性高分子材料製の保護ケーシングにより包囲することができる。医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にある他の実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、高分子材料、金属材料、及び/又はガラスを組み合わせて作製された保護ケーシングにより包囲することができる。
【0038】
ヘッダ104は1つ以上のリード106に結合され得る。ヘッダ104は、1つ以上のリード106の基端部の固定を提供し、筺体102内の1つ以上の構成要素に1つ以上のリード106を電気的に接続するように機能し得る。1つ以上のリード106は、電気リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電極108は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極108は電界検知電極を含み得る。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。他の実施形態では、リード106は、任意の数の電界検知及び電界発生の両方の電極を含み得る。本明細書の医療デバイスの多くの実施形態はリードと共に機能するように設計されているが、電界を発生させるリードレス医療デバイスもまた、本明細書で企図されることは理解されるであろう。
【0039】
ここで
図3を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略断面図が示される。筺体102は内部容積302を画定することができ、内部容積302は、中空であり得る、且ついくつかの実施形態では医療デバイス100の外側の領域304から密閉されている。他の実施形態では、筺体102は、非中空となるように、構成要素及び/又は構造材料で充填され得る。医療デバイス100は制御回路306を含むことができ、制御回路306は、筺体102内に配置された様々な構成要素308、310、312、314、316、及び318を含むことができる。いくつかの実施形態では、これら構成要素は統合することができ、他の実施形態では、これら構成要素は分離することができる。更に他の実施形態では、統合構成要素及び分離構成要素の両方の組み合わせが存在し得る。医療デバイス100は、単方向又は双方向無線データ通信を可能にするためのアンテナ324も含み得る。いくつかの実施形態では、医療デバイス100の構成要素は、それに通信的に接続された又は取り付けられた、充電回路を介した医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイル(図示せず)を含み得る。
【0040】
制御回路306の各種構成要素308、310、312、314、316、及び318としては、とりわけ、マイクロプロセッサ、メモリ回路(ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)など)、レコーダ回路、コントローラ回路、遠隔測定回路、電源回路(バッテリーなど)、タイミング回路、及び特定用途用集積回路(ASIC)、充電回路が挙げられ得るがこれらに限定されない。制御回路306は電界発生回路320と通信することができ、電界発生回路320は、電流を発生させて、1つ以上の電界を生成するように構成され得る。電界発生回路320は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306と別個の構成要素とすることができる。制御回路306は、電界発生回路320からの電流の供給を制御するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界発生回路320は、体外にある医療デバイスの一部分内に存在し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz~1MHzの範囲から選択される1つ以上の周波数を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~500kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~300kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1MHzを超える1つ以上の周波数を使用して電界を定期的に送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、電界は、癌性細胞の細胞有糸分裂の破壊に有効であり得る。電界は、1つより多いベクトルに沿って癌性腫瘍の部位に送達され得る。いくつかの例では、電界は、リード電極のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクトルに沿って送達され得る。いくつかの実施形態では、2つのベクトル間に空間的多様性を持つ少なくとも2つのベクトルが使用され得る。ベクトルは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80又は90度で空間的に分離され得る(例えば、ベクトルは互いに対して角度を成して配置され得る)。
【0043】
所望の電界強度は、2つの電極間に電流を送達することにより得ることができる。電界が送達される特定の電流及び電圧は異なることができ、被治療組織の部位において所望の電界強度を得るように調整することができる。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp~1000mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、20mAmp~500mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、30mAmp~300mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp、2mAmp、3mAmp、4mAmp、5mAmp、6mAmp、7mAmp、8mAmp、9mAmp、10mAmp、15mAmp、20mAmp、25mAmp、30mAmp、35mAmp、40mAmp、45mAmp、50mAmp、60mAmp、70mAmp、80mAmp、90mAmp、100mAmp、125mAmp、150mAmp、175mAmp、200mAmp、225mAmp、250mAmp、275mAmp、300mAmp、325mAmp、350mAmp、375mAmp、400mAmp、425mAmp、450mAmp、475mAmp、500mAmp、525mAmp、550mAmp、575mAmp、600mAmp、625mAmp、650mAmp、675mAmp、700mAmp、725mAmp、750mAmp、775mAmp、800mAmp、825mAmp、850mAmp、875mAmp、900mAmp、925mAmp、950mAmp、975mAmp、又は1000mAmpを含む電流を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電流で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限よりも小さい値であることを前提として、前述の電流のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0045】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms~50Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、5Vrms~30Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、10Vrms~20Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms、2Vrms、3Vrms、4Vrms、5Vrms、6Vrms、7Vrms、8Vrms、9Vrms、10Vrms、15Vrms、20Vrms、25Vrms、30Vrms、35Vrms、40Vrms、45Vrms、又は50Vrmsを含む1つ以上の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限のよりも小さい値であることを前提として、前述電圧のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0047】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、60kHz、70kHz、80kHz、90kHz、100kHz、125kHz、150kHz、175kHz、200kHz、225kHz、250kHz、275kHz、300kHz、325kHz、350kHz、375kHz、400kHz、425kHz、450kHz、475kHz、500kHz、525kHz、550kHz、575kHz、600kHz、625kHz、650kHz、675kHz、700kHz、725kHz、750kHz、775kHz、800kHz、825kHz、850kHz、875kHz、900kHz、925kHz、950kHz、975kHz、1MHzを含む1つ以上の周波数を使用して、及び電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320は、ある範囲内の周波数を使用して電界を送達することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の周波数のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0048】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm~1000V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cmを超える1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1V/cm~10V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cm~5V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0049】
他の実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm、0.5V/cm、0.75V/cm、1.0V/cm、2.0V/cm、3.0V/cm、5.0V/cm、6.0V/cm、7.0V/cm、8.0V/cm、9.0V/cm、10.0V/cm、20.0V/cm、30.0V/cm、40.0V/cm、50.0V/cm、60.0V/cm、70.0V/cm、80.0V/cm、90.0V/cm、100.0V/cm、125.0V/cm、150.0V/cm、175.0V/cm、200.0V/cm、225.0V/cm、250.0V/cm、275.0V/cm、300.0V/cm、325.0V/cm、350.0V/cm、375.0V/cm、400.0V/cm、425.0V/cm、450.0V/cm、475.0V/cm、500.0V/cm、600.0V/cm、700.0V/cm、800.0V/cm、900.0V/cm、1000.0V/cmを含む1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320はある範囲内の電界強度を有する電界を治療部位に発生させることができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の電界強度のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位にリード106を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位に医療デバイス100の筺体102を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、リード106と医療デバイス100の筺体102との間に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は、リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含むことができ、電極108は、電界発生回路320と電気通信することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、医療デバイス100内の各種構成要素は、検知された電界に対応する信号を生成するように構成された電界検知回路322を含み得る。電界検知回路322は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306から分離することができる。
【0052】
検知電極は、医療デバイスの筺体上若しくはその近傍に、筺体に接続された1つ以上のリード上に、腫瘍の近傍若しくは腫瘍内に植え込まれる別個のデバイス上に、又はこれら位置の任意の組み合わせで配置され得る。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の検知電極332及び第2の検知電極334を含み得る。他の実施形態では、筺体102自体が、電界検知回路322の検知電極として機能することができる。電極332及び電極334は、電界検知回路322と通信することができる。電界検知回路322は、第1の電極332と第2の電極334との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の電極332又は第2の電極334と1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路は、検知された電界を測定し、電界強度(V/cm)を記録するように構成され得る。
【0053】
電界検知回路322は更に、第1の電極332又は第2の電極334と筺体102自体との間の電位差を測定することができることは理解されるであろう。他の実施形態では、医療デバイスは、電界検知電極又は電界発生電極であり得る第3の電極336を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の検知電極はリード106に沿って配置することができ、電界を検知するための追加的な位置として機能することができる。本明細書の実施形態による、1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極と筺体102との間の電位差を測定するための多くの組み合わせが考えられ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。
図1及び
図2に示すように、1つ以上のリード106は1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電気伝導体326及び電気伝導体328などの各種電気伝導体は、ヘッダ104から貫通構造330を通して、医療デバイス100の内部容積302に通すことができる。したがって、電気伝導体326及び電気伝導体328は、1つ以上のリード106と筺体102の内部容積302内に配置された制御回路306との間に電気通信を提供するように機能し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、レコーダ回路は、電界検知回路322によって生成されたデータを記録し、これに関するタイムスタンプを記録するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は各種機能を実行するために有線接続することができ、他の実施形態では、制御回路306は、マイクロプロセッサ又は他の外部計算デバイス上で実行する命令を実施するように指示され得る。遠隔測定回路もまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/又はモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスと通信するために提供され得る。
【0056】
ここで
図4を参照すると、本明細書の実施形態によるリードレス医療デバイス400が示される。リードレス医療デバイス400は、筺体402と、筺体402に結合されたヘッダ404と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体402は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体402又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ404は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ404は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ404は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ404は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。いくつかの実施形態では、リードレス医療デバイス400は、リードレス医療デバイス400を体内の癌性腫瘍の部位又はその近傍に配置させ続けるための固定要素406を含み得る。いくつかの実施形態では、固定要素406は、爪、歯、螺旋部、バイアス部等を含み得る。
【0057】
図5に、本明細書中に記載される医療デバイスの各種実施形態の要素を示す。しかしながら、いくつかの実施形態は
図5に示すもの以外の追加的な要素を含むことができることは理解されるであろう。加えて、いくつかの実施形態では、
図5に示すいくつかの要素がなくてもよい。本明細書で具現化される医療デバイスは、1つ以上の検知チャネルを介して情報を収集することができ、1つ以上の電界生成チャネルを介して情報を出力することができる。マイクロプロセッサ502は双方向データバスを介してメモリ504と通信することができる。メモリ504は、プログラム格納用のリードオンリーメモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ(RAM)、及びデータ格納用のRAMを含み得る。マイクロプロセッサ502はまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部デバイスと通信するための遠隔測定インターフェイス518に接続され得る、又はセルラー若しくは他のデータ通信ネットワークにより容易になるクラウド若しくは別の通信ネットワークに直接接続され得る。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、それに通信的に接続された又は取り付けられた、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイルインターフェイス(図示せず)を含み得る。
【0058】
医療デバイスは、1つ以上の電界検知電極508と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界センサチャネルインターフェイス506と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の電界発生電極512と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界発生チャネルインターフェイス510と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の生理学的センサ、呼吸センサ、又は化学センサ516と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の生理学的/呼吸/化学センサチャネルインターフェイス514と、を含み得る。チャネルインターフェイス506、510、及び514は、信号入力をデジタル化するためのアナログ/デジタル変換器、検知増幅器、レジスタ(検知増幅器、ソースドライバ、変調器、復調器、マルチプレクサ等のゲイン値及び閾値を調整するために制御回路により書き込むことができる)などの各種構成要素を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、生理学的センサは、体温、血流量、血圧等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、呼吸センサは、呼吸数、呼吸ピーク振幅等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、化学センサは、血液尿素窒素、クレアチニン、フィブリン、フィブリノーゲン、免疫グロブリン、デオキシリンボ核酸、リボ核酸、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ヒドロニウム、リン酸水素、重炭酸塩等などの分析物を含むがこれらに限定されない、センサ周囲の治療領域内に存在する分析物の量を測定することができる。しかしながら、本明細書では他の多くの分析物も考えられる。例示的な化学/分析物センサは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ケーン(Kane)らの共有の米国特許第7,809,441号明細書に開示されている。
【0060】
図5では、生理学的、呼吸、又は化学センサ516は、医療デバイスの一部として示されるが、いくつかの実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は医療デバイスから物理的に分離され得ることは認識されたい。各種実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに通信的に接続される植え込まれた別の医療デバイス内にあり得る。更に他の実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、体外にあることができ、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに接続される。
【0061】
ここで
図6を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイス600の概略図が示される。医療デバイス600は、筺体102、ヘッダ104、及び1つ以上のリード106を含み得る。リード106は、リード106の長さに沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614などの1つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界検知電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。
【0062】
リード106の基端部はヘッダ104内に配置されている。電気リード106の先端部は、電極604、606、608、610、612、又は614を癌性腫瘍602に近接させるように、癌性腫瘍602を包囲することができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電極604、606、608、610、612、又は614が癌性腫瘍602に隣接する又は癌性腫瘍602内に配置されるように、脈管系内に配置され得る。しかしながら、リード106は癌性腫瘍602内又はその周囲の様々な場所に配置され得ることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、リード106は癌性腫瘍602に直接通すことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、リード106は、リードの長さに沿って、腫瘍に対する電極の厳密な位置の決定に使用するための1つ以上のトラッキングマーカ616又は618を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のトラッキングマーカは、リード上に配置された1つ以上の電極のすぐ先端側又はすぐ基端側に配置され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは磁性材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカはX線撮影材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは蛍光撮影材料で形成され得る。
【0064】
電界を生成するために、リード106に沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614の各種組み合わせの間に複数の電界ベクトルを発生させることができることは理解されるであろう。例えば、電極604と電極610との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。同様に、電極606と電極612との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせの間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができることも理解されるであろう。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせと医療デバイス400の筺体102との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。本明細書の実施形態による1つ以上の単極又は多極リードを使用することができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、単極リードと多極リードの組み合わせが使用され得る。他の実施形態では、円形リード、クランプリード、カフリード、パドルリード、又はパッチリードが使用され得る。
【0065】
ここで
図7を参照すると、本明細書の実施形態による容量充填リード702が示される。リード702は、基端部706と先端部708とを有するリード本体704を含み得る。リード本体704は内腔を画定し得る。リード702はまた、リード本体704の先端部708に接続された拡張可能なリードヘッド710を含み得る。拡張可能なリードヘッド710は、癌性腫瘍の外科的切除後に存在する可能性のある空隙などの体内空隙を充填するために、第1の非拡張位置と第2の拡張位置との間で拡張するように構成され得る。リード702は、拡張可能なリードヘッド710の外部表面上に配置された2つ以上の電極712を含み得る。リード702は、2つ以上の電極712とリード本体704の基端部706との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体(図示せず)を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、拡張可能なリードヘッド710は、基端部714及び先端部716を含むことができ、拡張可能なリードヘッド710は、拡張可能なリードヘッド710の基端部714と先端部716との間に延びる1つ以上の可撓性支持体718を含む。1つ以上の可撓性支持体718は外側に曲がるように付勢され、拡張可能なリードヘッド710に第2の拡張位置をとらせることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の可撓性支持体718は、基端部714及び先端部716を含むことができ、基端部714及び先端部716のうちの少なくとも1つは、リード本体704に対して移動し、可撓性支持体718を外側に曲げるように構成され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極は、1つ以上の可撓性支持体上に又は1つ以上の可撓性支持体を覆って配置され得る。
【0067】
可撓性支持体718は、ポリマー、金属、複合材料等を含むがこれらに限定されない様々な材料で形成することができる。拡張可能なリードヘッドの大きさは様々であり得る。いくつかの実施形態では、拡張可能なリードヘッドの直径は第1の非拡張位置において2センチメートル未満、及び第2の拡張位置において2センチメートル超である。
【0068】
ここで
図8を参照すると、本明細書の実施形態による別の種類の容量充填リード802が示される。リード802は、基端部806と先端部808とを有するリード本体804を含み得る。リード本体804は内腔を画定し得る。リード802はまた、リード本体804の先端部808に接続された拡張可能なリードヘッド810を含み得る。拡張可能なリードヘッド810は、体内空隙を充填するために、
図8に示すような第1の非拡張位置と、
図9に示すような第2の拡張位置との間で拡張するように構成され得る。いくつかの実施形態では、拡張は、自己拡張システムと同様に、デリバリーカテーテルの除去時に解放される、下に存在するリードに保存された張力により受動的に行われ得る。他の実施形態では、拡張はバルーン拡張により行われ得る。リード802は、拡張可能なリードヘッド810の外部表面上に配置された2つ以上の電極812を含み得る。リード802は、2つ以上の電極812と、リード本体804の基端部806との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体(図示せず)を含み得る。
【0069】
ここで
図9を参照すると、本明細書の実施形態による、ヘッド810が第2の拡張位置にある拡張可能なバルーンとして示される容量充填リード802が示される。いくつかの実施形態では、拡張可能なバルーンの外側に2つ以上の電極812が配置され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極812は、拡張可能なバルーンの外側にアレイで配置され得る。拡張可能なバルーンの外側のアレイ内の各電極812は、拡張可能なバルーンの周囲に1つ以上の電界の空間的多様性を提供するために、逐次的に作動され得る又は作動停止され得る。拡張可能なバルーンは、エラストマー材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、拡張可能なバルーンは、ポリイソブチレン(PIB)及びその誘導体などのエラストマー材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、拡張可能なバルーンは、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、パリレンポリマーなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー、ペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド、ナイロン、又はこれらの誘導体を含むがこれらに限定されないエラストマー材料で形成され得る。拡張可能なバルーンは、その拡張構成において、球形、楕円形、円筒形等を含むいくつかの形状をとることができる。いくつかの実施形態では、拡張可能なバルーンは、その第2の拡張位置において、拡張可能なバルーンが中で拡張する空隙の壁によって画定される不定形をとることができる。したがって、拡張可能なバルーンは拡張可能とすることができ、それが配置される空隙にぴったりと収まるように柔軟であり得る。いくつかの実施形態では、リード本体内に内腔を配置することができ、拡張可能なバルーンは、バルーンに流体を送達し、これを拡張させるために、又はバルーンから流体を抜き、これを収縮させるために、内腔と流体連通することができる。
【0070】
ここで
図10を参照すると、本明細書の実施形態による容量充填リード1002が示される。リード1002は、基端部1006と先端部1008とを有するリード本体1004を含み得る。リード本体1004は内腔を画定し得る。リード1002はまた、リード本体1004の先端部1008に接続された拡張可能なリードヘッド1010を含み得る。拡張可能なリードヘッド1010は、体内空隙を充填するために、
図10に示すような第1の非拡張位置と、
図11に示すような第2の拡張位置との間で拡張するように構成され得る。リード1002は、拡張可能なリードヘッド1010の外部表面上に配置された2つ以上の電極1012を含み得る。リード1002は、2つ以上の電極1012とリード本体1004の基端部1006との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体(図示せず)を含み得る。
【0071】
ここで
図11を参照すると、本明細書の実施形態による、拡張可能なリードヘッド1010が第2の拡張位置にある拡張可能な電極球として示される容量充填リード1002が示される。拡張可能なリードヘッド1010は、基端部及び先端部を含み得る。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極球を拡張させるために、拡張可能なリードヘッド1010の先端部は、リード1002のガイド1014の長手方向軸線に沿って移動することができる。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極球を拡張させるために、拡張可能なリードヘッド1010の基端部は、リード1002のガイド1014の長手方向軸線に沿って移動することができる。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極球を拡張させるために、拡張可能なリードヘッド1010の先端部及び基端部の両方は、リード1002のガイド1014の長手方向軸線に沿って移動することができる。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極球の外側に2つ以上の電極1012が配置され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極1012は、拡張可能な電極球の内側に配置され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極1012は、拡張可能な電極球の外側にアレイで配置され得る。拡張可能な電極球の外側のアレイ内の各電極1012は、拡張可能な電極球の周囲に1つ以上の電界の空間的多様性を提供するために、逐次的に作動され得る又は作動停止され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、リード702、802、及び/又は1002は、その上に配置された2~36個の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、リード702、802、及び/又は1002は、その上に配置された2~50個の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、リード702、802、及び/又は1002は、その上に配置された3~12個の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード702、802、及び/又は1002は、その上に配置された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50個の電極を含み得る。1つ以上のリード702、802、及び/又は1002は、前述のリストから選択される範囲内のいくつかの電極を含むことができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、あらゆる数が当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0073】
本明細書中に記載されるリード702、802、及び1002の拡張可能なリードヘッドは、拡張構成では「自由状態」で存在することができるが、体内の脈管系及び周囲領域へと最小限の外傷でこれらを植え込むことができるように、折り畳み可能であることは理解されるであろう。拡張可能なリードヘッドの拡張サイズは、既知の距離を有する空間に適合するように監視することができるため、拡張可能なリードヘッドの圧力による壊死を最小限にできることも理解されるであろう。距離が既知でないいくつかの実施形態では、拡張可能なリードヘッドは、圧力が高すぎるかどうかを決定するために局所環境を監視するための1つ以上のセンサを含むことができ、それに応じて、リードヘッドは大きさを低減させることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、上述の容量充填リード702、802、及び1002は、以前に癌と診断された患者を治療する方法において使用され得る。当該方法は、患者内にリードを植え込むことを含み得る。リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含むことができ、リード本体は内腔を画定し得る。リードはまた、リード本体の先端部に接続された拡張可能なリードヘッドを含み得る。リードヘッドは、体内空隙を充填するために、第1の非拡張位置と第2の拡張位置との間で拡張するように構成され得る。リードはまた、リードヘッドの外部表面上に配置された2つ以上の電極を含み得る。リードは、2つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体を更に含み得る。当該方法はまた、体内空隙内にリードヘッドを配置することと、1つ以上の電極によって1つ以上の電界を発生させることと、を含み得る。
【0075】
ここで
図12を参照すると、本明細書の実施形態による癌治療システムのリード1202が示される。リード1202は、基端部1206と先端部1208とを有するリード本体1204を含むことができ、リード本体1204は内腔を画定し得る。リード1202は、リード本体1204の先端部1206の外部表面上に配置された2つ以上の電極1212を含み得る。リード1202はまた、2つ以上の電極1212とリード本体1204の基端部1206との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体(図示せず)を含み得る。いくつかの実施形態では、リード本体1204の先端部1208は、螺旋部1210の形状にすることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極1212は、螺旋部の中心軸線から外側に面し、螺旋部1210の表面上に配置されている。いくつかの実施形態では、螺旋部1210は可撓性とすることができ、内側に加えられる圧力が増加するにつれて直径を減少させることができ、内側に加えられる圧力が減少するにつれて直径を増加させることができる。螺旋部は、内側の圧力が加えられていないとき、様々な外径を有するような大きさに作られ得る(最大直径又は完全拡張直径)。いくつかの実施形態では、螺旋部は、約0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、若しくは10.0センチメートルの外径、又は前述のいずれかが範囲の上限若しくは下限として機能し得る範囲内の外径を有することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、リード本体1204は、第2の内腔内に配置された、例えば剛性ワイヤなどの実質的に剛性要素を有する第2の内腔を含むことができ、剛性要素の除去により、リード本体1204の先端部1208に螺旋形状をとらせることができる。換言すると、剛性要素は真直とすることができ、内腔内のその存在により、リード本体の先端部1208を実質的に真直に留めることができるが、剛性要素が除去されると、リード本体の先端部1208は螺旋形状にねじれることができる。
【0078】
リード1202は、癌性腫瘍を治療する方法において使用され得る。当該方法は、患者内にリードを植え込むことを含み得る。リード1202は、基端部1206と先端部1208とを有するリード本体1204を含むことができ、リード本体1204は内腔を画定し得る。リード1202は、リード本体1204の先端部の外部表面上に配置された2つ以上の電極1212を含み得る。リード1202はまた、2つ以上の電極1212とリード本体1204の基端部1206との間に電気通信を提供するように構成された2つ以上の電気伝導体(図示せず)を含み得る。リード本体1204の先端部1208は、螺旋部1210の形状にすることができる。当該方法はまた、1つ以上の電極1212によって1つ以上の電界を発生させることを含み得る。
【0079】
ここで
図13を参照すると、癌性腫瘍1314を包囲するリードシステム1300が示される。リード1301は、半閉鎖円形ループを有する円形リードである。リード1301は、その周囲に配置された電極1302、1304、1306、1308、1310、及び1312を含む。リード1301は、1つ以上のポート1316を含むことができ、ポート1316は、リード1301の長手方向の長さに延びる薬物送達内腔の出口を提供する。いくつかの実施形態では、薬物送達内腔は、リード1301の長手方向の長さの約20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100パーセント、又はリードの長手方向の長さの前述のパーセントのいずれかが範囲の上限若しくは下限として機能し得る範囲内の長さに延びる。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポート1316は、基端部とリード1301の先端部との間に配置され得る。いくつかの実施形態では、ポート1316は、リード1301の全長の中間の10、20、30、40又は50パーセントなど、リード1301の中間部分に又はそれに隣接して配置され得る。いくつかの実施形態では、ポート1316は、リード1301の先端側先端に又はそれに隣接して配置され得る。いくつかの実施形態では、ポート1316は、リード1301の長手方向の全長の先端側半分に沿ったリード1301の表面上又は表面内にあり得る。薬物送達内腔は、1つ以上のポート1316を通して癌性腫瘍3114の部位に1つ以上の薬物1318を送達するために使用され得る。
【0081】
ここで
図14を参照すると、
図13の線14-14’に沿ったリード1301の概略断面図が示される。リード1301は、薬物送達内腔1402、ガイドワイヤ内腔1404、及び伝導性コアワイヤ1406を含むがこれらに限定されない1つ以上の構成要素を含み得る。薬物送達内腔1402は、ステロイド又は化学療法剤などの1つ以上の薬物を腫瘍の部位に定量ポンプにより1回のボーラスで又は定期的に送達することができる。いくつかの実施形態では、薬物送達内腔1402は、リード1301の先端部又はその近傍で定量ポンプに接続され得る。
リード及び電極
本明細書中に記載されるリードは、いくつかの手法を用いて、体内の、癌性腫瘍の部位近傍に配置され得る。1つ以上のリードの配置には、経血管配置、皮下腔へのトンネリング、及び/又は外科的配置などの手法を使用することを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリードの配置は、1つ以上の天然身体開口部を通した配置を含み得る。リードは、癌性腫瘍に隣接して又は癌性腫瘍内に配置され得る。いくつかの実施形態では、癌性腫瘍の近くで又は遠くで複数のリードが使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上のリードは、皮下腔内に配置され得る。皮下腔内に配置されたリード上の電極は、一次近距離発生電極(primary near-field generating electrode)として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。いくつかの実施形態では、皮下腔内に配置されたリード上の電極は、医療デバイスの筺体と共に、一次近距離発生電極として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。同様に、1つ以上のリードは、癌性腫瘍の部位若しくはその近傍の電極と共に、又は医療デバイスの筺体と共に、遠距離電界発生電極として機能するように、経血管的に配置され得る。
【0083】
本明細書中に記載されるリード及び電極は、更なる機能的及び構造的特徴を含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、MRI(磁気共鳴映像法)、X線イメージング、脳深部刺激療法、及び/又は放射線治療を含むがこれらに限定されない画像化及び治療技術に対応するものを含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、伝導性材料で作製された1つ以上の導体コアを含み得る。導体コアは、金属を含む伝導性材料及び/又はその他の伝導性材料で形成され得る。金属には、パラジウム、白金、銀、金、銅、アルミニウム、ステンレス鋼を含む各種合金、MP35N(登録商標)などのニッケル-コバルト合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、導体コアは、バイファイラコイル、トリファイラコイル、及びクアッドファイラコイルを含むがこれらに限定されないマルチファイラコイルであり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、電極は、本明細書中に記載される1つ以上のリードの長さに沿って配置され得る。本明細書中に記載される電極での使用に適した材料は、磁界中におけるカップリング及びアーティファクト発生を最小限にするための、パラジウムなどの金属を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、他の金属及び/又は他の伝導性材料で作製され得る。金属には、パラジウム、白金、白金-イリジウム合金などの白金合金、金、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼を含む各種合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極は、電極の可撓性を損なうことなく表面積の増加という付加的な利点を提供することができる巻かれたコイルの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、植え込み型デバイスの筺体は、電極として機能することができる。
【0085】
本明細書中に記載されるリードはまた、リードの長さに沿って配置された1つ以上の電極を含み得る。リードは、リードの長さに沿って配置された2つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、リードの先端部にある先端電極であり得る。他の実施形態では、電極は、リードに沿って存在するが、リードの先端には存在しないリング電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極はコイル電極であり得る。いくつかの実施形態では、リング又は先端電極は、腫瘍若しくは癌性組織内に又はこれに隣接して配置することができ、コイル電極は、発生する電界に空間的多様性を与えるのを補助するために、腫瘍又は癌性組織よりも遠くに配置され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、7.5、10、15、20、30、40、50、75、100mm又はそれ以上の、長手方向の軸線(例えば、基端側から先端側までの軸線)に沿った長さを有し得る。いくつかの実施形態では、電極の1つ以上は、ある範囲内の長さを有することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の距離のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得る。
【0086】
リードは、単極、双極、又は多極とすることができる。いくつかの実施形態では、単極リードは、1つの電極と医療デバイスの筺体との間に電界を発生させるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、双極リードは、リードに沿って配置された2つの電極間に、又は両電極と医療デバイスの筺体との間に及び電界を発生させることができるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、多極リードは、リードに沿って配置された2つより多い電極間に、2つより多い電極と医療デバイスの筺体との間に、又は任意の数の組み合わせの電極の構成と医療デバイスの筺体との間に、電界を発生させることができるリードを含み得る。
【0087】
本明細書での使用に適した電極は、カーボン充填シリコーン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリティオフェン(polytiophene)、ポリフラン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリパラフェニレン等などの導電性ポリマーで作製され得る。他の実施形態では、電極は絶縁され得る。いくつかの実施形態では、及び電極を包囲する絶縁体は、細胞付着は防ぐものの電流が流れることはなお可能な微多孔質絶縁体を含み得る。微多孔質絶縁体は、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、パリレンポリマーなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー、ペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド、ナイロン、又はこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない本明細書中に記載されるいくつかの絶縁材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、電極は、ヒドロゲル、又は酸化イリジウム、酸化チタン、五酸化タンタル、他の金属酸化物などのフラクタルコーティング、パリレンなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー等を含むがこれらに限定されない様々な材料でコーティングされ得る。
【0088】
本明細書の実施形態に従い、いくつかのリード固定法及び構成が使用され得る。リード固定法のいくつかの非限定的な例としては、生体適合性接着剤固定、爪固定、ヘリックスコイル固定、脈管系内におけるリードの受動調心、局所脈管系内における歯固定、局所脈管系内における螺旋バイアス固定、圧縮固定、縫合スリーブ固定等が挙げられ得る。いくつかの例では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位を取り囲む又はこれに隣接する脈管系内に配置され得る。他の実施形態では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位に又はその内部に又はその周囲に外科的に配置され得る。
【0089】
本明細書での使用に適したリードはまた、リードの長手方向の長さ全体又はリードの長手方向の長さの選択部分に延びる1つ以上の開口内腔を含み得る。いくつかの実施形態では、開口内腔は、疾患の進行及び/又は退行を監視するために癌性腫瘍部位から生検試料を定期的に得るのに適した内蔵生検装置を含み得る。開口内腔を有するリードはまた、ステロイド又は化学療法剤などの1つ以上の薬物を腫瘍の部位に定量ポンプにより1回のボーラスで又は定期的に送達することができる、内蔵された薬物送達内腔を含むように構成され得る。リードは、リードの長さに沿って配置された、癌性腫瘍の部位又はその近傍に薬物送達のための出口を提供するための1つ以上の門を含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、リードの一部分又はリード全体は、薬物溶出コーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、ステロイドなどの抗炎症薬を含み得る。いくつかの実施形態では、ステロイドはデキサメサゾンであり得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは化学療法剤を含み得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、パクリタキセル、ドセタクセル等を含むがこれらに限定されないタキサン又はこの誘導体を含み得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは、アルキル化薬、ビンカアルカロイドなどの植物アルカロイド、細胞毒性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬等を含むがこれらに限定されない更なるクラスの化学療法剤を放出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、コーティングから薬物を持続放出式で放出するように構成され得る。
【0091】
本明細書中のリードは、多くの形状又は構成をとることができる。いくつかの実施形態では、リードは線形とすることができ、他の実施形態では、リードは円形とすることができる。円形リードは完全に閉じたループであってもよい、又は半分閉じたループであってもよい。いくつかの実施形態では、リードは、U字形、S字形、螺旋形、半円形、楕円形等を含むがこれらに限定されない多くの構成にリードを成形することを可能にすることができる曲げられるコアを含み得る。
【0092】
更に他の例では、本明細書での使用に適したリードは、臨床医が癌性腫瘍の部位又はその近傍に精密配置するのを補助することができる蛍光定量マーカ又は磁気マーカを含み得る。リードはまた、癌性腫瘍又はその近傍のpHの変化を検知するための内蔵pHセンサ又は目的化学分析物の濃度の分析に適した他の化学センサを含み得る。
治療パラメータ
癌性腫瘍の成功的治療は、電界強度、周波数、細胞の不均一性、細胞の大きさ、癌細胞の種類、腫瘍の大きさ、及び体内の位置を含むいくつかの変数に依存し得る。本明細書中に記載される医療デバイスを使用し、様々な治療パラメータが実施され得る。1つ以上の治療的パラメータセットは医療デバイスのメモリにプログラムされ、
図3に示される制御回路306によって実施され得る。例示的な治療的パラメータセットは、以下の概念を実施するものを含み得る:様々な周波数の掃引、1つ以上の周波数の同時スタッキング、1つ以上の周波数の逐次ステッピング、1つ以上の電界の空間的又は時間的送達、様々な電界強度の掃引、有効な回転電界の印加、電圧制御モード又は電流制御モードの調整、1つ以上のデューティサイクルの実施、パルス幅変調、波形形状及び/又はパルス系列の操作、並びに高周波又は高電界強度パルスの時折の使用。
【0093】
治療的パラメータセットは、自律的に動作するように医療デバイスにプログラムすることができる、又は患者若しくは臨床医が、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することにより照会及び操作され得る。他の実施形態では、治療的パラメータセットは、外部計算デバイスから医療デバイスに無線通信され得る。本明細書中の治療的パラメータセットのいずれかで使用するのに適した周波数及び/又は電界強度は、電界発生回路320に関して上で述べた。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは同時に実施することができる。他の実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは交互に実施することができる。
【0094】
ここで
図15を参照すると、例示的なプロット1502は、癌性腫瘍の部位における様々な周波数の掃引の一例を示す。プロット1502は、治療が癌性腫瘍に適用されるにつれて周波数が経時的に増加する交流電界を示す。いくつかの実施形態では、周波数掃引は、約100kHz~300kHzの範囲を含む第1の周波数掃引と約200kHz~500kHzの範囲を含む第2の周波数との間の交番を含み得る。記載されるような第1及び第2の周波数範囲の掃引は、治療の過程全体を通して無期限に実施され得ることは理解されるであろう。
電界発生器
本明細書で具現化される医療デバイスは、癌性腫瘍の治療過程中に使用される治療法及び診断法に特に適した電界発生器を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に適した電界発生器は、癌性腫瘍の主要治療として指示されることの多い放射線治療の有害な作用にその構成要素が耐えるようにするために放射硬化で処理されたものを含み得る。電界発生器は、上記の
図3及び
図5を参照して説明したものなどの構成要素を含み得る。
【0095】
本明細書で具現化される電界発生器は、記載したような任意の数の治療的パラメータセットをプログラムすることができる。電界発生器は、植え込み前にプログラムすることができる、又は臨床医がプログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することによりプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、遠隔測定回路を介して電界発生器に送られ得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルに通信的に接続された、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための充電回路を含み得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルと外部充電デバイスとの間で無線通信することができる。
【0096】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容に別段の明確な指示のない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの化合物(a compound)」を含有する組成物に言及する場合、2つ以上の化合物の混合物を含む。用語「又は(or)」は、内容に別段の明確な指示のない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で全般的に用いられることにも留意されたい。
【0097】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、文言「構成される(configured)」は、特定のタスクを実施する又は特定の構成をとるように構築若しくは構成されたシステム、装置、又は他の構造を説明することにも留意されたい。文言「構成される(configured)」は、配置及び構成される(arranged and configured)、構築及び配置される(constructed and arranged)、構築される(constructed)、製造及び配置される(manufactured and arranged)等のような他の類似の文言と区別なく使用することができる。
【0098】
本明細書内の全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の水準を示す。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的且つ個々に示されたかのような程度と同程度まで参照により本明細書中に組み込まれる。
【0099】
様々な特定の及び好ましい実施形態及び手法を参照して態様を記載してきた。しかしながら、本明細書の趣旨及び範囲内にありながらも多くの変更及び修正を施すことができることは理解すべきである。