(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ミクロフィブリル化セルロースを含む組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20230928BHJP
C08B 15/00 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230928BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
D21H11/18
C08B15/00
C08K3/34
C08L1/02
(21)【出願番号】P 2020545119
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2019051288
(87)【国際公開番号】W WO2019166912
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホカンソン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-506179(JP,A)
【文献】米国特許第01765774(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0239744(US,A1)
【文献】特表2013-527876(JP,A)
【文献】特表2015-522097(JP,A)
【文献】特表2015-518512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0260348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/18
C08B 15/00
C08K 3/34
C08L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維をフィブリル化してミクロフィブリル化セルロース(MFC)を形成することを含み、そのフィブリル化は、アルカリ金属ケイ酸塩の存在下で行われ、それにより、MFC及びケイ酸塩混合物が形成さ
れ、酸性媒体がフィブリル化後に組成物に添加される、組成物を製造する方法。
【請求項2】
アルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィブリル化前又はフィブリル化中に繊維をアルカリ金属ケイ酸塩と混合するステップをさらに含み、アルカリ金属ケイ酸塩と混合されてフィブリル化される繊維が、15~80、好ましくは25~70のSR値を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属ケイ酸塩が、繊維の全固形分に基づいて1~99重量%、好ましくは1~90重量%、最も好ましくは1~80重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
形成されたMFC及びケイ酸塩混合物を少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の固形分まで脱水するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
初期pHが5を超える、好ましくは6を超える、又は7を超える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フィブリル化中に顔料が存在する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に従って製造された組成物。
【請求項9】
紙又は板紙の製造における、請求項
8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
セメント製造における請求項
8に記載の組成物の使用。
【請求項11】
複合材料における請求項
8に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを含む組成物の製造方法、その方法に従って製造された組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いくつかの産業用途でミクロフィブリル化セルロース(MFC)を使用することに関心が高まっている。製紙及び板紙製造では、MFCは、例えば、製品の強度を高め、供給源を削減したり、保持力を高めたりするために使用できる。セメント及びコンクリート用途では、MFCを使用して補強を提供したり、脱水又は乾燥を制御したり、レオロジー特性を調整したりできる。MFCはさらに、接着剤、コーティング、フィルム、塗料、パッケージングなど、多くの複合用途で使用できる。
【0003】
MFCは通常、セルロース繊維から、例えば、均質化、マイクロ流動化、粉砕、精製又は叩解の使用により繊維をフィブリル化することにより製造される。酵素的、化学的又は機械的前処理などの前処理を好ましくは使用して、フィブリル化のエネルギーを低減するか、又は官能基を導入し、MFCの物理的寸法を調整する。フィブリル化を増強するか、又はフィブリル化エネルギーを低減するための多くの異なる方法が提案されてきた。WO2007091942は、酵素処理とそれに続く均質化によりMFCを製造する方法を開示している。WO2014106684では、MFCは、異なる濃度(コンシステンシー)でいくつかのステップで繊維状パルプのフィブリル化によって生成される。WO2011004284は、酵素的及び機械的同時処理によりMFCを生成するプロセスを開示する。
【0004】
MFCの産業利用に関連する1つの問題は、水結合能力が非常に高いため、水をゆっくり放出することである。その特徴的な物理的及び化学的特性により、MFCの生産は非常に低い固形分(通常は約0.1~3重量%)の水性懸濁液をもたらす。このような固形分が少ないMFCの輸送又は処理(混合、脱水、乾燥、ポンプ)は、持続可能ではなく、コスト効率もよくない。MFCを高固形分に乾燥又は脱水すると、その特性をさらに低下させる、例えば湿った角質化を引き起こし、その性能を変化させる場合がある。
【0005】
水及び高濃度(>1重量%)では、MFCはゲルを形成する。MFCゲルの問題は、1つ又は複数の他の反応性化学物質を含む複合材料に混合する場合、高強度の混合と制御された反応条件が必要になることである。MFCを活性前駆体として、又は試薬若しくは担体材料として使用する場合、競合反応、又は副産物若しくは他の中間化学物質の形成を回避するために、投入を最適化することが不可欠である。そのような反応性化学物質の一例はケイ酸ナトリウムであり、セルロース又は修飾セルロースとの反応は制御された条件を必要とする。特定の応用では、MFCを中又は高濃度(コンシステンシー)で添加するのが有益であり、これによりMFCの分散が重要になる。MFCとケイ酸ナトリウムを別々に投入すると、複数の生成物又は中間体が形成され、通常は最終生成物の特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
この一例は、製紙原料などのプロセスフローへの低濃度(コンシステンシー)MFCの添加である。そのような添加に関連する課題は、凝集、制御された相互作用(定量的保持など)、及び懸濁液とその形成された生成物における添加剤と成分の均一な分布をどのように達成するかである。添加剤の保持が不十分だと、走行性と品質の問題が発生する可能性がある。
【0007】
WO2014132119は、保持剤のインライン生産のための方法を開示している。この特許は、MFCの存在下での水性ケイ酸塩のコロイドシリカへの重合を記載している。MFCは、ケイ酸塩及び酸性媒体の供給とは別に、又はプレミックスとしてストック懸濁液に供給されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MFCの工業生産及び使用をより効率的にすること、並びにMFCの混合、再分散及び取り扱いを改善することの両方が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
第1の態様によれば、本発明は組成物を製造する方法を開示し、その方法は、アルカリ金属ケイ酸塩の存在下で繊維をフィブリル化してMFCを形成し、それによりMFC及びケイ酸塩混合物が形成されることを含む。アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは、そのフィブリル化の前又は最中に繊維懸濁液に添加される。
【0010】
繊維をMFCにフィブリル化する際にアルカリ金属ケイ酸塩が存在すると、粘度が低下し、脱水効率が向上するため、より高い濃度でフィブリル化を達成でき、MFCとケイ酸塩のより均一な混合物が得られる。したがって、本発明の方法によって形成される組成物は、従来の技術に従って生成されるMFCより通常高い固形分を含むことができ、それにより、そのような組成物の輸送及び処理がより効果的である。さらに、本発明に従って製造されたMFC-ケイ酸塩混合物は、プロセスフローへの成分の制御された添加を可能にし、それにより、望ましくない副反応が回避される。本発明の方法は、強いMFCゲルが形成されるのを防ぎ、MFCの水への再分散を容易にすることがさらに示されている。
【0011】
アルカリ金属は、好ましくはケイ酸ナトリウム(水ガラス)である。代わりに、カルシウム、カリウム及び/又はリチウムなどの他のアルカリ金属を使用してもよい。しかしながら、その費用効率、反応性及びアルカリ性のためにナトリウムが好ましい。
【0012】
フィブリル化は、40を超える、好ましくは50を超える、又は最も好ましくは60を超えるSR(Schopper-Riegler、ショッパー・リーグラー)値を有するMFC及びケイ酸塩混合物を生成するために行われることが好ましい。
【0013】
この方法は、フィブリル化の前及び/又は間に、繊維をアルカリ金属ケイ酸塩と混合するステップをさらに含んでもよい。一実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩と混合されてフィブリル化される繊維は、混合及びフィブリル化のステップの前に、15~80、好ましくは25~70又は35~70のSR値を有する。この実施形態では、方法は、アルカリ金属ケイ酸塩と混合される前に、繊維を事前にフィブリル化するステップを含むことができる。このようにして、プロセスを最適化し、コスト効率を高めることができる。
【0014】
アルカリ金属ケイ酸塩は、繊維の全固形分に基づいて、好ましくは1~99重量%、好ましくは1~90重量%、最も好ましくは1~80重量%の量で存在する。ケイ酸塩/繊維の比率は最終用途によって異なる。一実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは1~15重量%、例えば1~10重量%又は5~10重量%の量で存在する。
【0015】
一実施形態では、この方法は、混合物を少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又はさらには少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%の固形分まで脱水するステップをさらに含む。最終的な固形分はさらに、ケイ酸塩/MFCの比率に依存する。ケイ酸塩が少なくとも1~10重量%の量で存在する実施形態では、混合物は、例えば、3重量%~20重量%、又は少なくとも5~20重量%又は10~20重量%の固形分まで脱水されるが、ケイ酸塩がより高い量で存在する実施形態では、最終固形分もより高くなり得る。
【0016】
一実施形態では、初期pH(すなわち、フィブリル化プロセスが開始されるときのpH)は5を超え、好ましくは6を超えるか又は7を超える。このようにして、繊維は膨潤し、処理にさらに利用できる。一部の実施形態では、フィブリル化の間、pHは9.5~14又は10~14、好ましくは10~13である。
【0017】
別の実施形態では、初期pHは5未満、例えば1~5の範囲である。この実施形態では、水ガラスの添加後、しかしフィブリル化の前に、繊維懸濁液に酸を添加することができる。このようにして、脱水抵抗がさらに減少する。
【0018】
一実施形態では、炭酸カルシウムカオリン、ベントナイト、プラスチック顔料、デンプン顔料、ナノクレイ、PCC及び/又は滑石などの顔料が、フィブリル化中に存在する。
【0019】
フィブリル化のステップの後、酸性媒体がMFCとケイ酸塩の混合物に加えられ、それによって陰イオンに帯電したコロイド粒子が形成され、少なくとも部分的にMFC繊維上に沈殿する。これらのコロイド粒子は、それ自体で、又はカチオン性ポリマーと組み合わせて、プロセスフロー、例えば製紙ファーニッシュ(紙料)に加えることができる。これは効果的な保持システムを形成する。酸性媒体は、硫酸、リン酸、塩酸などの鉱酸;ポリ塩化アルミニウム(PAC)及び/又は二酸化炭素などの酸性金属塩のいずれでもよい。酸性媒体は、好ましくは、pHを9未満、又は7未満、又は6未満、又は5未満、又はさらには3未満に低下させるために加えられる。pHは例えば、1~6又は1~5に低下させることができる。必要に応じて、MFC及びケイ酸塩混合物の酸性媒体との処理の前又は同時に、温度を少なくとも25oC、又は少なくとも45℃又は少なくとも65oCにさらに上げる。フィブリル化中及び酸性化後のpHは、懸濁液に添加した水ガラス及び他の共添加剤の量に依存する。好ましくは、pHは、MFC及びケイ酸塩混合物の酸性化時に少なくとも1つ又は少なくとも2つの単位だけ下げられるべきである。
【0020】
第2の態様では、本発明は、本発明による方法により製造された組成物を開示する。
【0021】
第3の態様では、本発明は、紙又は板紙の製造における組成物の使用を開示する。ケイ酸塩-MFCを含む組成物は、例えば、このようにして製造された紙又は板紙の強度を高めるために紙又は板紙ファーニッシュに添加する。組成物は、カチオン性ポリマーと共に紙又は板紙ファーニッシュにさらに添加されて、効率的な保持システムを提供し得る。
【0022】
組成物はまた、セメント製造において、又は、例えば、接着剤、コーティング、フィルム、塗料、洗剤、及び包装においてさらに使用するための組成物の製造に使用されてもよい。その他の可能な最終用途には、脱墨プロセス又はパルプビーチングでの添加剤が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、さまざまなテストポイントでMFC含有量が増加すると、水分保持値がどのように変化するかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明によれば、セルロース繊維はフィブリル化されてミクロフィブリル化セルロースを形成し、そのフィブリル化はアルカリ金属ケイ酸塩の存在下で行われる。
【0025】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、特許出願の文脈では、少なくとも1次元が100nm未満のナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味する。MFCは、部分的又は完全にフィブリル化されたセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径又は粒径分布、及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、供給源と製造方法によって異なる。
【0026】
最小のフィブリルは基本フィブリルと呼ばれ、約2~4nmの直径を有しているが(例えば、Chinga-Carrasco, G., Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view(セルロース繊維、ナノフィブリル及びマイクロフィブリル:植物生理学及び繊維技術の視点からのMFC成分の形態学的シーケンス), Nanoscale research letters 2011, 6:417を参照)、基本フィブリルの凝集形態は、ミクロフィブリルとしても定義され(Fengel, D., Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides(細胞壁多糖の超微細構造挙動), Tappi J., March 1970, Vol 53, No. 3)、例えば、拡張された精製プロセス又は圧力低下崩壊プロセスを使用することによりMFCを作成するときに得られる主な製品であることは一般的である。供給源と製造プロセスに応じて、フィブリルの長さは約1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードには、かなりの割合のフィブリル化繊維、つまり、仮道管(セルロース繊維)から突き出ているフィブリルが含まれている可能性があり、一定量のフィブリルが仮道管(セルロース繊維)から解放されている。
【0027】
MFCには、セルロースマイクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体、及びセルロースミクロフィブリル凝集体など、さまざまな頭字語がある。MFCは、広い表面積や、水に分散したときに低固形分(1~5重量%)でゲル状の材料を形成する能力など、さまざまな物理的又は物理化学的特性によっても特徴付けられる。セルロース繊維は、凍結乾燥した材料についてBET法で測定された場合、形成されたMFCの最終比表面積が約1~約300m2/g、例えば1~200m2/g、又はより好ましくは50~200m2/gであるような程度にフィブリル化されることが好ましい。
【0028】
単一又は複数パスの精製、前加水分解、それに続く精製又は高剪断崩壊又はフィブリルの遊離など、MFCを作成するためのさまざまな方法が存在する。MFC製造をエネルギー効率と持続可能なものの両方にするためには、通常、1つ又は複数の前処理ステップが必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすために、酵素的又は化学的に前処理されてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に修飾することができ、セルロース分子は、元のセルロースに見られるものとは異なる(又はそれ以上の)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N‐オキシル媒介酸化、例えば「TEMPO」によって得られるセルロース)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法の1つで修飾又は酸化された後、繊維をMFC又はナノフィブリルサイズのフィブリルに分解することがより簡単になる。
【0029】
ナノフィブリル状セルロースには、いくつかのヘミセルロースが含まれる場合がある。量は植物源に依存している。前処理した繊維の機械的分解、例えば加水分解、予備膨潤、又は酸化されたセルロース原料は、リファイナー、グラインダー、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦グラインダー、超音波ソニケーター、マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー又はフルイダイザータイプのホモジナイザーなどの流動化装置などの適切な装置で実行される。MFCの製造方法によっては、生成物は微粉、又はナノ結晶セルロース、又は例えば木質繊維や製紙プロセスに存在する他の化学物質が含まれている場合もある。生成物には、効率的にフィブリル化されていないさまざまな量のミクロンサイズの繊維粒子が含まれている場合もある。
【0030】
MFCは、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方から、木材セルロース繊維から製造される。また、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業用繊維、又は他の非木材繊維源からも製造できる。それは好ましくはバージンファイバーからのパルプを含むパルプ、例えば、機械、化学及び/又は熱機械パルプから作ることができる。古紙や再生紙から作ることもできる。
【0031】
上記のMFCの定義には、結晶領域とアモルファス領域の両方を持つ複数の基本フィブリルを含むセルロースナノファイバー材料を定義するセルロースナノフィブリル(CMF)に関する新たに提案されたTAPPI標準W13021が含まれるが、これに限定されない。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、セルロース繊維及びアルカリ金属ケイ酸塩を含む懸濁液がフィブリル化される。アルカリ金属ケイ酸塩は、フィブリル化の前又は最中に、セルロース繊維を含む懸濁液に添加することができる。アルカリ金属ケイ酸塩は、固形分が少なくとも5重量%、又は少なくとも10又は少なくとも15重量%の溶液として繊維懸濁液に添加することができる。セルロース繊維は、広葉樹及び/又は針葉樹繊維であってよい。フィブリル化は、例えばホモジナイザーを使用して、好ましくは1~4重量%の濃度(コンシステンシー)で、スーパーリファイナーで、好ましくは1~10重量%の濃度(コンシステンシー)で、又はコンパクター、シュレッダー、リファイナー、デファイブレーター、スクリュー、パルパー、ポンプ、又は高剪断混合デバイスでの機械的処理によって、5~30重量%の好ましい濃度(コンシステンシー)で、達成できる。
【0033】
一実施形態では、フィブリル化の前又は最中に、温度を30℃超、又は50℃超、好ましくは75℃超に上昇させる。
【0034】
任意選択で、この方法は、フィブリル化ステップの前に、酵素的又は機械的前処理を含み得る前処理ステップをさらに含む。
【実施例】
【0035】
例1
本発明に従って製造されたMFC含有組成物(サンプル2~6)の耐脱水性を参照MFC組成物(サンプル1及びサンプル7)と比較する一連の試験が行われた。参照サンプル1は、水ガラスを添加せずに、100重量%のクラフト(kraf)繊維から製造されたMFCである。参照サンプル7は、クラフトファイバーと水ガラスから製造されたMFCの混合物であり、MFCと水ガラスは精製後に混合されている(後混合)。参照サンプル2~6は、クラフト繊維が水ガラスの存在下でフィブリル化された、本発明による組成物である。
【0036】
実験は、30000回転(英国標準の湿式崩壊装置)で3重量%の濃度(コンシステンシー)で湿式崩壊によって前処理されたクラフト繊維(松)の繊維懸濁液を使用して行われた。
【0037】
ケイ酸ナトリウムを加える前に、繊維懸濁液のpHを約9.5に調整した。フィブリル化の前に、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)をサンプル2~6に添加した。添加した水ガラスはケイ酸ナトリウム(乾燥含量50,17重量%、Be48~50、密度1.40~1.52kg/dm3、SiO2、Na2Oモル比2~2.1)であった。フィブリル化前後のプロセス条件を表1に示す。添加される水ガラスの量は、フィブリル化前の懸濁液中の繊維の総量に基づいて計算される(20は、繊維の乾燥量の20重量%を意味する)。「pH、初期」は、ケイ酸ナトリウムの添加後であってフィブリル化前のpHを指す。サンプル6では、フィブリル化の前に硫酸を添加してpHを3.9に調整した。
【0038】
繊維懸濁液は流動化によりフィブリル化された。流動化は、懸濁液を400/200ミクロンのチャンバーに2回、次に200/100ミクロンのチャンバー(マイクロフルイダイザー)に1回流すことによって行われた。試験の前後に温度調整は行われなかった。
【0039】
【0040】
耐脱水性を調査するために、参照MFCサンプル1、本発明のMFC‐水ガラスサンプル(サンプル2~6)及び参照サンプル7(後混合)を、それぞれ0.65μmDVPPフィルターを備えた真空ろ過装置で脱水した。ろ過の前に、サンプルをRO水を使用して0.1重量%の濃度(コンシステンシー)に希釈した。混合は、ロッドミキサー(30秒)を使用し、続いて少なくとも2分間磁気攪拌して行われた。希釈した懸濁液を真空ろ過漏斗に注いだ。真空吸引を開始すると同時にタイムレコーダーを起動した。可視水層がフィブリルパッド(フィルム)の上部から消えるのに必要な時間を監視した(=脱水時間)。参考及び本発明のサンプルの結果を表2に示す。
【0041】
【0042】
結果は、本発明による共フィブリル化により、耐脱水性が著しく低下することを明確に示している。
【0043】
例2
本発明の組成物の水分保持値(WRV)を調査するために、別の一連の試験が行われた。
【0044】
参照MFCサンプル1、本発明のサンプル4、及び参照後混合サンプル7(すべて実施例1と同様に製造されるが、流動化濃度は3%)を、漂白した未乾燥バーチクラフトパルプ(未精製)と表3に従って混合した。ここで、TP1は、サンプル1とクラフトパルプの混合物を指し、TP4は、サンプル4とクラフトパルプの混合物を指し、TP7は、サンプル7とクラフトパルプの混合物を指す。
【0045】
【0046】
遠心分離用のパルプパッドは、0.65μmDVPPフィルターを装備した真空ろ過装置を使用して形成した。約7~15重量%の乾燥含量のケーキを遠心分離にかけ、SCAN-C 62:00に従って水分保持値を測定した。結果を表3に示す。
【0047】
図1は、さまざまなテストポイントでMFC含有量が増加すると、水分保持値がどのように変化するかを示している。100重量%MFCを含むサンプルのWRVは、
図1(表4)に示すチャートからのトレンドラインの外挿を使用して計算された。
【0048】
【0049】
図1及び表4において見られるように、本発明に従って作製された組成物の水分保持値(TP4)は、特により高いMFC含有量で、参照(TP4及びTP7)の水分保持値よりも著しく低い。