(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】高周波検査用コネクタ装置、高周波検査システム、およびこれらの使用
(51)【国際特許分類】
H01R 24/40 20110101AFI20230928BHJP
G01R 1/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01R24/40
G01R1/04 A
(21)【出願番号】P 2020552099
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 EP2018078908
(87)【国際公開番号】W WO2019115071
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】102017130015.5
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520211177
【氏名又は名称】イングン・プリュフミッテルバウ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】INGUN PRUFMITTELBAU GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】シュロディ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベーラー・ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ネハー・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アバノ・ネビアト
(72)【発明者】
【氏名】ロヤック・ゼルギー
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン・パスカル
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140795(JP,A)
【文献】特開2001-297840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38-24/40
H01R 13/6582
G01R 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体部(22)からみて外側にスリーブ部(14;14’)を有する同軸型の高周波コネクタモジュール、特には同軸型の高周波コネクタソケットの形態の連結相手(16;16’)と切離し可能に高周波接触を確立して機能検査で相互作用する、高周波検査用コネクタ装置(12;12’)であって、
前記連結相手と長手方向の移動連結軸心に沿って手動で又は機械で繋げられる、少なくとも部分的にスリーブ状であるアダプタハウジング、
を備え、前記アダプタハウジングが、
前記連結相手のうちの前記スリーブ部上にセンタリング及びスライディングしながら係合させるか又は前記スリーブ部内へとセンタリングしながら係合させることによって前記連結相手との接地接触を確立させる、スリーブ状のグランドコンタクト部(10;10’)を、軸方向一端に有し、
外部との高周波信号接触を確立する手段(18)、特には高周波接続部又は高周波接続ケーブルを、他端に有し、
前記移動連結軸心と同軸に案内、好ましくはばね付勢によって案内されて、かつ、前記グランドコンタクト部(10;10’)から絶縁されている内部コンタクト(20)を、前記グランドコンタクト部の中央に有する、装置において、
前記グランドコンタクト部が、接地接触を確立させる導電性のばね手段(26;26’,28;42,44;44’,46)を具備しており、当該導電性のばね手段は、
前記連結相手(16)の前記スリーブ部(14)上への係合時に当該連結相手(16)の端側表面(30)が、前記グランドコンタクト部(10)のうちのスリーブ底に形成された当該ばね手段(26)へと、前記移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触を確立することが可能であるように、あるいは、
前記連結相手(16’)の前記スリーブ部(14’)内への係合時に前記グランドコンタクト部(10’)の前側端部から突き出る当該ばね手段(26’)が、前記連結相手のうちの接地用のインナー部(40)、特にはインナーショルダーへと、前記移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触を確立することが可能であるように、振り当てられており、
前記ばね手段が、円周にわたって一様に分布した複数の個別ばねピン(28)として実現されており、各々のばねピン(28)は、前記長手方向の移動連結軸心と平行なピンばね軸心に沿ってばね付勢されることで前記連結相手と接地接触を確立することが可能であり、
少なくとも1つの前記ばねピンが、プロファイル加工された、かつ/あるいは、前記連結相手の方向に少なくとも部分的に先細りした及び/又は尖った、接触ヘッド(34)を有しており、
または、前記ばね手段が、導電性のクッションおよび/またはスポンジモジュールとして形成されており、またはそのように形成されたクッションまたはスポンジ部分を備え
て、
前記ばね手段(26’,28;42,44;44’,46)は、周方向にグランドコンタクト部の端側表面に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、ばねピンの個数が4つ以上であることを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、3つ以上の、好ましくは6つ以上の前記接触脚であって、好ましくは前記接触脚モジュールのうちのリング状支持部(44;44’)と一体的である前記接触脚が、前記リング状支持部に一部沿って配置されており、かつ、互いにオーバーラップ(46)する又は前記リング状支持部から径方向内方に延出(42)するように向いていることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の装置において、前記ばね手段が冠状の金属製モジュールとして実現されており、好ましくは、当該冠状の金属製モジュールが、エッチング及び曲げ加工部品、ダイカット及び曲げ加工部品、またはフライス加工部品として実現されていることを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の装置において、前記ばね手段(26,28;42
,44;44’,46)は、周方向に、グランドコンタクト部によって形成された、連結相手用の収容空間のスリーブ底に配置されている、装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置において、前記ばね手段が、金属製及び/又は高分子製及び/又はエラストマー製のクッション及び/又はスポンジモジュールとして実現されていることを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の高周波検査用コネクタ装置と、外部との接触を確立する前記手段に接続された又は接続可能な高周波検査電子ユニット と、検査対象の高周波電子部品が設けられているか又は検査対象の高周波電子部品に接続されている、連結相手としての、同軸型の少なくとも1つの高周波コネクタモジュールと、を備える、高周波検査システム。
【請求項8】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の高周波検査用コネクタ装置および/または請求項7に記載の高周波検査システムの、1GHz超の、特には2GHz~6GHzの動作周波数範囲および/または検査周波数範囲での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項の前提部に記載されているとおり、高周波検査用コネクタ装置に関する。本発明は、さらに、このような高周波検査用コネクタ装置を用いた高周波検査システムに関する。本発明は、このような高周波検査用コネクタ装置および/またはこのような高周波検査システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人の特許文献1から、主請求項の前提部に記載されているような高周波検査用コネクタ装置が知られている。同文献に一般的な高周波検査用コネクタ装置として開示されている高周波検査用ペンは、1GHz超の典型的な検査周波数及び動作周波数での検査対象となる電子機器に接続されている同軸型の連結相手(接触相手)との、一時的な機能検査接触用に意図及び構成されたものである。この種の一般的な高周波検査用コネクタ装置(高周波検査用ペン)は、内部導体および当該内部導体と同軸なスリーブ状の外部導体によって実現されている。この高周波検査用コネクタ装置は、上記接触相手へと、その外部導体の(環状の)外縁の表面が当該接触相手のうちの相応に環状とされる外部コンタクト上に係合し且つその内部導体(当該内部導体は典型的に軸方向に向いており、すなわち、移動連結軸心に沿って向いている)が当該接触相手のうちの中央コンタクトにばね付勢で当接可能となるようにして配置される。このような一時的な検査用連結接触が確立されると、モバイル無線モジュールや典型的に大量生産用に設計された同様の技術が、指定の高周波数範囲で検査される。
【0003】
上記前提部に開示した一般的な先行技術によると、業界の検査および製造慣習として上記同軸型の高周波連結相手(接触相手)の内部・外部コンタクト構造は機械製造で典型的に大量生産されるが、これら内部導体-外部導体間に必要な(プラスチック製)絶縁体が十分精密に寸法どおりにならないという悪影響が既に見受けられていた。これには、その絶縁材料が外部コンタクトの端側縁よりも軸方向に飛び出してしまうという悪影響があった。その結果、一般的な検査用ペンのうちの前側係合式の外部導体は、当該相手のうちの金属製外部コンタクトとの接触を確立出来ないこととなった。検査時の測定や信号伝達の問題が、不利な結果として生じた。
【0004】
先行技術として言及する特許文献1は、この短所を、本発明の主請求項の前提部に記載されているような、(接地用であり且つスリーブ状の)グランドコンタクト部と内部コンタクトとの間に、同軸型の連結相手の外側スリーブ部を導入又は挿入することが可能な収容空間を形成するという高周波検査用コネクタ装置によって解決している。挿入状態で、この一般的な検査用コネクタ装置のうちの上記内部コンタクトが上記連結(接触)相手のうちの内部導体部に係合することにより、接触が確立されて測定動作が可能となる。
【0005】
特許文献1から知られている技術は、検査用コネクタ装置のうちの(径方向外方の)グランドコンタクト部と連結相手のうちの接地接触を確立させるスリーブ部との間のジャケット(被覆)側の公差補償を、当該グランドコンタクト部のうちの(典型的に中空円筒状である)内壁に環状ばねを具備させて、当該環状ばねを拡げて接触を確立させることで上記連結相手のジャケット外表面との接触を確立可能とし、それによって各々の同軸外部導体同士の接地接触を高い信頼性で確実に確立させることで既に行っている。
【0006】
しかし、実際の動作では、特許文献1から知られているこの技術に改善の必要があるということも判明した。例えば、ジャケット側の環状ばねを用いた接触解決手段に必要となる製造技術、構築及び部品の量は膨大になる。このように小型で、かつ、グランドコンタクト部の内表面に形成した環状スロット(環状溝)への挿入に適した部品には、複雑かつ特殊な製造工程が求められることになる。それだけでなく、このようなきっちりと嵌合する環状ばねは高価になるほか、比較的激しい摩耗にも曝されることになる。これは、製造が複雑になる(かつ高コストにもなり得る)だけでなく、実際の検査寿命(すなわち、連結相手との各連結過程というかたちの検査サイクルの最大回数)が限られてしまうことを意味する。
【0007】
また、上記前提部から知られている技術を用いた実際の経験からは、上記接地接触により可能となる高周波連結の高周波伝送特性に関して、高周波境界抵抗や(周波数依存の)減衰挙動の不均一性が、特に1GHz超の検査周波数及び動作周波数で発生するということが分かった。さらなる短所として、この種の高周波伝送問題が同じ周波数範囲に体系的に限定されたものでないという点が挙げられた。これは、一般的な検査用コネクタ装置(または当該検査用コネクタ装置に基づき構築される検査システム)の品質制御や製造の複雑性の増加にも繋がり、総製造コストへのさらなる悪影響となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国実用新案第20 2010 007 227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、主請求項の前提部に記載されているような高周波検査用コネクタ装置を、費用対効果が高くオートメーションが可能で(検査サイクルの回数を増やすことを含め)長寿命を約束する製造特性及び使用特性の関係で向上させること、および、この種の装置を、高周波伝送特性、特には1GHz超の動作周波数及び検査周波数に関して向上させて、特には伝送特性や減衰特性がこの点で不均一となったり特定の(周波数)範囲で変動したりしないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、主請求項の構成を備えた高周波検査用コネクタ装置により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。本発明の範囲内のさらなる保護を.、本発明にかかる高周波検査用コネクタ装置の、高周波検査システムの関連での使用方法について求める。本発明の範囲内の保護を、高周波検査用コネクタ装置および高周波検査システムの、1GHz超の、特には2GHz~6GHzの、動作周波数範囲および/または検査周波数範囲での使用方法について求める。
【0011】
本発明の有利な様式として、本発明は、同軸型の測定相手同士の間、すなわち、本発明にかかる高周波検査用コネクタ装置のうちのグランドコンタクト部と連結相手のうちの外部導体(スリーブ部)との間の公差補償を端側、すなわち、前側で行う。これは、特許文献1に記載されているような環状ばねや同様のジャケット側ばねアセンブリを追加で使用できないという意味ではないが、本発明は有利なことに、この構成が高周波伝送や1GHz超の広周波数範囲(ここでは、特に関心の高い周波数範囲)にわたって減衰特性を均一にすることに関して必要にならないことを立証している。
【0012】
むしろ、本発明は極めて有利なことに、同軸型の検査用コネクタ装置と同軸型の連結相手との間で接触を確立して機能検査で相互作用するための考えられ得る両方のバリエーション、すなわち、グランドコンタクト部を連結相手のうちのスリーブ部の径方向外側上に係合させるという構成(つまり、特許文献1に記載の一般的な先行技術の設計と同様の設計)、およびグランドコンタクト部を連結相手のうちの径方向外方の接地用スリーブ部内へと係合させるという径方向を逆に入れ替えた構成の双方で、伝送最適化に効果的な軸方向前側の公差補償を所定の様式で確実に行うことができる。
【0013】
本発明の第1のバリエーションでは、このことが、本発明にかかる高周波検査用コネクタ装置のうちのグランドコンタクト部に(連結相手、より厳密には連結相手のスリーブ部との)接地接触を確立する導電性のばね手段を具備し、当該導電性のばね手段を、連結相手のスリーブ部上への係合時に当該連結相手の端側表面が前記グランドコンタクト部のうちのスリーブ底に実現された当該ばね手段へと移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触が確立可能となるように振り当てることにより、本発明に従って有利に行われる。言い換えれば、本発明解決手段のこのバリエーションの場合には、本発明にかかる導電性のばね手段が、前記グランドコンタクト部の軸方向一端部、すなわち、前記グランドコンタクト部のスリーブ底(あるいは、前記グランドコンタクト部により囲い込まれた収容空間の底)に配置されることになる。
【0014】
本発明の代替的な構成では、前記グランドコンタクト部が、接地接触を確立するための本発明にかかる導電性のばね手段を具備しており、かつ、当該導電性のばね手段は、前記連結相手の前記スリーブ部内への係合時に前記グランドコンタクト部の前側端部から突き出る当該ばね手段が、前記連結相手のうちの接地用のインナー部へと前記移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触を確立することが可能であるように振り当てられている。極めて好ましい一構成において、前記連結相手のうちの前記接地用のインナー部は、前記連結相手内部の(さらに好ましくは、底側の)インナーショルダーとして実現され得る。
【0015】
いずれの場合にしろ、本発明にかかる導電性のばね手段によって接地接触が確実に行われ、上記のようにして形成された接地カップリングの伝送特性及び減衰特性が大幅に向上する。特には、当該接地カップリングが、(前側の)寸法公差やその他の不均一性、特には連結相手の寸法公差やその他の不均一性に影響されないものとなる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、本発明にかかる導電性のばね手段が、前記グランドコンタクト部のうちの各振当部分又は各設置部分へと周方向分布で(好ましくは一様な周方向分布で)取り付けられた複数の個別ばねピンとして(典型的には当該個別ばねピンの各々の収容嵌合部を形成する適切な孔内へと挿入されることにより、あるいは、変形例として当該孔内に挿入されるばね付勢プランジャとして実現されることにより)実現され得る。本発明の前記第1のバリエーションの場合には、前記個別ばねピンが、前記グランドコンタクト部により形成された前記連結相手用の前記収容空間の底又はスリーブ底に周方向分布で配置される。前記グランドコンタクト部が前記連結相手の前記スリーブ部内へと係合する場合には、前記個別ばねピンが、前記グランドコンタクト部の端側表面又は前側表面に配置される。
【0017】
また、本発明の好ましい他の実施形態では、本発明に従って複数設けられる(且つ静止側であるスリーブに対して軸方向に可動するばね付勢されたプランジャを既知の様式により形成する)個別ばねピンの用意個数を、4つ以上、さらに好ましくは6つ以上とするのが有利かつ好適であり、これにより前記連結相手との(公差を補償する)接地接触が、好ましくは前記グランドコンタクト部の全周にわたって確実に確立されるということが分かっている。さらなる実施形態では、これらのばねピンの(ばね付勢された可動プランジャの一方の側に設けられている)接触ヘッドを平面状とするか又は変形例としてその輪郭をプロファイル加工(例えば、凸R加工)されたかつ/あるいは先細りしたかつ/あるいは尖ったものとすることが、接触の品質にとって有利である。
【0018】
また、有利なことに、本発明解決手段用に規格化された個別ばねピンが本発明解決手段に使用されてもよいし、あるいは、既に大量生産された部品として常時入手可能な個別ばねピンを本発明解決手段に使用して高い連結品質や伝送品質と低コストとを両立させることも可能である。
【0019】
同じことが、代替的な一実施形態により提供される、本発明にかかる導電性のばね手段を(好ましくは環状である)接触脚モジュールとして構成するという選択肢の場合についても言える。当該接触脚モジュールは周方向に設けられたフィン状の複数の接触脚を含み、当該複数の接触脚の各自由端部は本発明に従って前記連結相手のそれぞれの前記グランドコンタクト部へとばね付勢で係合して接触を確立することが可能である。前記接触脚は、好ましくは互いにオーバーラップしているか又は互いにオーバーラップするように斜めに向いているか、あるいは、変形例として径方向内方に向いている。
【0020】
さらに好ましくは、前記フィン状の接触脚の用意個数は、4つ以上、好ましくは6つ以上である。好ましくは、前記フィン状の接触脚は、円周にわたって等間隔に分布している。このような接触脚モジュールは、冠状とし、かつ、エッチング及び曲げ加工、ダイカット及び曲げ加工、または変形例としてフライス加工により製作されたものとするのが有利であることが分かっている。
【0021】
これらフィン状の複数の接触脚によっても、(端側の)接地接触を全周に沿って基本的に途切れなく確立することが可能である。これは、高周波伝送特性に関して最適化された周波数特性や伝送減衰効果をそのような構成によっても確保できるということを意味している。
【0022】
本発明の他の実施形態では、上述のように前記接触脚モジュールを導電性のばね手段とする実施形態との関連において、あるいは、当該関連なしで、本発明にかかるばね手段を導電性の金属製及び/又は高分子製(好ましくは、エラストマー製)のクッション及び/又はスポンジモジュールとして構成することが意図されている。これにより、減衰特性にとって有利な所望の公差補償型接地接触が、そのようなクッション及び/又はスポンジモジュールの導電性とそれ固有の弾性との組合せによって極めてエレガントに確立されることとなる。
【0023】
以上から、本発明は、高周波検査システム、さらに好ましくは1GHz超の、さらに好ましくは2GHz~6GHzの動作周波数及び検査周波数の高周波検査システムを実現するのに極めて適しており、したがって、さらに追加で好ましくはモバイル電話技術の検査装置に極めて適している。このようなシステムとの関連で、本発明にかかる高周波検査用コネクタ装置は、所望の検査目的用に適切に構成された高周波検査ユニットへと接続される。この高周波検査ユニットへは、その高周波検査用コネクタ装置との電気的接触を確立する手段が係合する。そして、この組立体が一システムとして、連結相手としての同軸型の高周波コネクタモジュールと相互作用する。当該連結相手は、検査対象となる高周波電子部品を別体部品の形態で、回路部品として又は完全な一電子回路として、例えば共通の回路基板の一部等として具備しているか又はその他の様式で高周波接続されたものとして具備している。
【0024】
本発明の文脈で用いる「高周波」という表現は極めて好ましくは1GHz超の検査周波数および/または動作周波数、さらに好ましくは2GHz~6GHzの範囲を指すが、本発明はこの範囲に限定されないものとする。実際、本発明は、一方が検査用コネクタ装置で他方が連結相手としての検査対象であり特には当該連結相手の(しばしば避けられない)製造公差や寸法公差が高周波接続品質に悪影響を及ぼし得る、同軸型相手同士の間のあらゆる種類の高周波接地カップリングに適している。
【0025】
本発明のその他の利点、特徴および詳細は、好適な実施形態例についての以下の説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態における高周波検査用コネクタ装置の部分切開長手方向側面図であり、グランドコンタクト部を連結相手のうちのスリーブ部上に係合させるという本発明の第1の原理が描かれている。
【
図2】
図2の実施形態例において接触を確立させるヘッド部を示した長手方向断面拡大詳細図である。
【
図3】
図1とは異なり、グランドコンタクト部を連結相手のうちのスリーブ部内へと係合させるという本発明の代替的な解決原理を描いた一実施形態例を示す図である。
【
図4】
図3の実施形態例での連結部分を示した長手方向断面拡大詳細図である。
【
図5】(a)及び(b)のばねピンによって導電性のばね手段を実現する、本発明における一実施形態例を示す図であり、
図2と同等の詳細図(a)は、正面図(b)の線A-Aに沿った長手方向断面図である。
【
図6】
図5の実施形態例の連結部分を半分に切断した斜視図である。
【
図7】(a)~(c)は、導電性のばね手段を実現し且つリング状支持部から径方向内方に延出する接触脚を含んだ環状の接触脚モジュールを示す図である。
【
図8】(a)~(c)は、フィン型の接触脚がリング状支持部に一部沿って互いにオーバーラップしてなる冠状の金属製モジュールを導電性のばね手段とする一構成を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の実施形態例に、高周波検査用コネクタ装置12のうちの中空円筒状のグランドコンタクト部10を同軸ソケット16として実現された接触相手のうちの(同じく接地用である)スリーブ部14の外側又はジャケット上に係合するように備えられ、構成したという、本発明の第1の原理を示す。より厳密には、
図1の第1の実施形態例に示す前記中空円筒状のグランドコンタクト部(
図2に拡大図示)は、検査又は測定過程に限られる一時的な検査接触を同軸で形成するための、同軸型の細長い検査用コネクタ12のピンである。当該ピンのうちの前記コンタクト部とは反対側に位置した一端18は、(適切な検査手段へと繋がる)同軸ケーブルなどの高周波接触手段に既知の様式で接続されることが可能である。
図1の細長いペンアセンブリのうち、グランドコンタクト部10により形成される接触部分と反対側の接続部18との間の内部構造は、通常かつ同軸の様式により構成されたもの(さらには、適切なばねを具備したもの)とされ得る。あくまでも一例として、特許文献1に記載のペン構造を参照されたい。当該ペン構造は、そのような間の部分の構成にも同じく適応させることが可能である(
図3の実施形態例にも同様に適用され得る)。
【0028】
また、
図1及び
図2の断面図には、グランドコンタクト部10により中央に囲い込まれた(及び当該グランドコンタクト部10から絶縁されて且つそれ自体が軸方向にばね付勢されている)内部コンタクト20が、連結相手16のうちの適宜構成された(かつ当該相手のうちのグランドコンタクト14から図示の絶縁24により絶縁されている)同軸内部コンタクト部22へと係合することが可能である様子が描かれている。
【0029】
図1及び
図2に概略図示され、陰影を付けられたモジュール26は、本発明の第1の原理における導電性のばね手段、すなわち、
図1(
図2)の場合においてグランドコンタクト部10のうちのスリーブ底に配置されたばね手段を概略的に示している。
【0030】
前記導電性のばね手段26は、
図5の(a)及び(b)を含む詳細図ならびに
図6の斜視図に示すように、例えば複数の(本例では4つの)個別ばねピン28として実現され得る。個別ばねピン28は、グランドコンタクト部28のスリーブ底において円周にわたって一様に分布しており、かつ、前記連結相手のうちの(本例では環状である)前側表面30(
図2)へと係合するように構成されている。
【0031】
より厳密には、前記ばねピンに、圧縮コイルばね32が設けられている。圧縮コイルばね32は、各ばねピンのうちの本例では鍔無し帽子状の輪郭を有している接触ヘッド34を、連結相手16のうちのリング状表面30へと押し付けることにより、最大限に良好な公差補償、高い接触品質及び少ない摩耗を確保しながら接地接触を確立させる。
【0032】
もう一方の実施形態例として、
図3及び
図4には、
図1及び
図2の原理に対する本発明の代替的な解決原理が描かれている。
図3及び
図4の実施形態例では、グランドコンタクト部10’が、(前記接触相手のうちの、検査状態又は接触状態で当該グランドコンタクト部10’を囲い込むグランドコンタクト部14’からみて)径方向内方に位置している。それと同時に、当該検査状態又は接触状態にて、
図3及び
図4の代替的な高周波検査用コネクタ装置12’の内部コンタクト20は、前記相手のうちの対応する割り当てられた同軸内部コンタクト22に合致させられる。本実施形態例において、前記導電性のばね手段は、グランドコンタクト部10’の前端で接地接触を確立するように構成されている。符号26’を付した陰色のモジュール(
図4)で概略的に示すように、当該導電性のばね手段は、(円筒状の)前記グランドコンタクト部の前端に設けられているので、(連結相手16’のうちのスリーブ部14’の底における環状ショルダーとして実現された)接地用のインナー部40へと、本発明によりばね付勢で公差を補償しながら高い接触信頼性で係合することができる。ここでも、当該導電性のばね手段は
図5及び
図6と同様に、円周にわたって分布した(好ましくは一様に分布した)複数の個別ばねピンとして実現されている。
【0033】
図7及び
図8に、本発明の両方のバリエーション(
図1及び
図2のバリエーション、ならびに
図3及び
図4のバリエーション)に好適な、前記ばねピンに対する代替的な前記導電性のばね手段を実現するための選択肢を示す。
【0034】
例えば、
図7の実施形態例には、複数8つのフィン状の接触脚の各自由端部がリング状支持部44から径方向内方斜めに突出してなる環状の接触脚モジュールを本発明にかかる導電性のばね手段とする一構成が開示されている(本発明の意味内において「径方向」とは、
図7の例のようにベクトルの径方向成分としても解釈されるように想定されている)。本実施形態例において、このアセンブリは、ダイカット及び曲げ加工された適切な部品としての単一物として実現されていると共に、接地接触を提供するためのばね特性を有している。
【0035】
図8の実施形態例に、本発明にかかる導電性のばね手段のこの種の冠状の実現の代替的な(かつ概念的に描いたモジュール26,26’のいずれを実現するのにも適した)一実施形態を、複数の図により示す。この場合、フライス加工された部品として実現された多数の(ここでも複数8つの)(ここでも周方向に分布している)接触脚が、
図8に示すようにリング状支持部44’から延出して当該リング状支持部に一部沿って(軸方向で)オーバーラップしている。これにより、接触脚46は環状の支持部44’と略同一平面上ただし当該支持部44’から軸方向距離をもって配置されることになるので、当該接触脚の各自由脚端が、本発明に従って公差補償しつつ接地接触を確立させる環状の一連の接触ポイントとなる。
【0036】
図示の実施形態例は、あくまでも例示に過ぎない。具体的に述べると、例えば
図7や
図8のモジュールを、本発明に従って接触相手同士の間の接地接触を公差補償しながら確立する解決策であることを念頭に置きつつ発泡体状および/またはクッション状の弾性体で補う(さらには、当該弾性体に置き換える)ことも本発明で可能であり且つ想像され得る。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕内部導体部(22)からみて外側にスリーブ部(14;14’)を有する同軸型の高周波コネクタモジュール、特には同軸型の高周波コネクタソケットの形態の連結相手(16;16’)と切離し可能に高周波接触を確立して機能検査で相互作用する、高周波検査用コネクタ装置(12;12’)であって、
前記連結相手と長手方向の移動連結軸心に沿って手動で又は機械で繋げられる、少なくとも部分的にスリーブ状であるアダプタハウジング、
を備え、前記アダプタハウジングが、
前記連結相手のうちの前記スリーブ部上にセンタリング及びスライディングしながら係合させるか又は前記スリーブ部内へとセンタリングしながら係合させることによって前記連結相手との接地接触を確立させる、スリーブ状のグランドコンタクト部(10;10’)を、軸方向一端に有し、
外部との高周波信号接触を確立する手段(18)、特には高周波接続部又は高周波接続ケーブルを、他端に有し、
前記移動連結軸心と同軸に案内、好ましくはばね付勢によって案内されて、かつ、前記グランドコンタクト部(10;10’)から絶縁されている内部コンタクト(20)を、前記グランドコンタクト部の中央に有する、装置において、
前記グランドコンタクト部が、接地接触を確立させる導電性のばね手段(26;26’,28;42,44;44’,46)を具備しており、当該導電性のばね手段は、
前記連結相手(16)の前記スリーブ部(14)上への係合時に当該連結相手(16)の端側表面(30)が、前記グランドコンタクト部(10)のうちのスリーブ底に形成された当該ばね手段(26)へと、前記移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触を確立することが可能であるように、あるいは、
前記連結相手(16’)の前記スリーブ部(14’)内への係合時に前記グランドコンタクト部(10’)の前側端部から突き出る当該ばね手段(26’)が、前記連結相手のうちの接地用のインナー部(40)、特にはインナーショルダーへと、前記移動連結軸心に沿ってばね付勢で係合して接触を確立することが可能であるように振り当てられていることを特徴とする、装置。
〔態様2〕態様1に記載の装置において、前記ばね手段が、複数の個別ばねピン(28)、好ましくは円周にわたって一様に分布した複数の個別ばねピン(28)として実現されており、各々のばねピン(28)は、前記長手方向の移動連結軸心と平行なピンばね軸心に沿ってばね付勢されることで前記連結相手と接地接触を確立することが可能であることを特徴とする、装置。
〔態様3〕態様2に記載の装置において、ばねピンの個数が4つ以上であることを特徴とする、装置。
〔態様4〕態様2または3に記載の装置において、少なくとも1つの前記ばねピンが、プロファイル加工された、かつ/あるいは、前記連結相手の方向に少なくとも部分的に先細りした及び/又は尖った、接触ヘッド(34)を有していることを特徴とする、装置。
〔態様5〕態様1に記載の装置において、前記ばね手段が、好ましくは環状の接触脚モジュール(図7および図8)として実現されており、当該接触脚モジュールのうちの周方向に設けられた複数の接触脚(42;46)の、好ましくはフィン状の接触脚(42;46)の自由端部が、前記連結相手(16;16’)のうちの前記端側表面(30)及び/又は前記接地用のインナー部(40)へとばね付勢で係合して接地接触を確立することが可能であることを特徴とする、装置。
〔態様6〕態様5に記載の装置において、3つ以上の、好ましくは6つ以上の前記接触脚であって、好ましくは前記接触脚モジュールのうちのリング状支持部(44;44’)と一体的である前記接触脚が、前記リング状支持部に一部沿って配置されており、かつ、互いにオーバーラップ(46)する又は前記リング状支持部から径方向内方に延出(42)するように向いていることを特徴とする、装置。
〔態様7〕態様6に記載の装置において、前記ばね手段が冠状の金属製モジュールとして実現されており、好ましくは、当該冠状の金属製モジュールが、エッチング及び曲げ加工された部品、ダイカット及び曲げ加工された部品、またはフライス加工された部品として実現されていることを特徴とする、装置。
〔態様8〕態様1から7のいずれか一態様に記載の装置において、前記ばね手段が、導電性の金属製及び/又は高分子製及び/又はエラストマー製のクッション及び/又はスポンジモジュールとして実現されているか、あるいは、この種のクッション及び/又はスポンジ部を含むことを特徴とする、装置。
〔態様9〕態様1から8のいずれか一態様に記載の高周波検査用コネクタ装置と、
外部との接触を確立する前記手段に接続された又は接続可能な高周波検査電子ユニットと、
検査対象の高周波電子部品が設けられているか又は検査対象の高周波電子部品に接続されている、連結相手としての、同軸型の少なくとも1つの高周波コネクタモジュールと、
を備える、高周波検査システム。
〔態様10〕態様1から8のいずれか一態様に記載の高周波検査用コネクタ装置および/または態様9に記載の高周波検査システムの、1GHz超の、特には2GHz~6GHzの動作周波数範囲および/または検査周波数範囲での使用。