(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】熱アブレーションのレベルを推定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A61B8/08
(21)【出願番号】P 2020565945
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063565
(87)【国際公開番号】W WO2019228942
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/088842
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュンボ
(72)【発明者】
【氏名】チェン イーナン
(72)【発明者】
【氏名】フアン リンギュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジャンガン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオミン
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0256530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243668(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0289840(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織領域の3次元超音波エコーデータに基づいて前記組織領域に対する熱アブレーションのレベルを推定する装置であって、前記装置は、
前記組織領域の前記3次元超音波エコーデータを受信するように構成されるデータインターフェースと、
前記受信される超音波エコーデータに基づいて前記組織領域に関する面内歪み及び面外運動を測定するように構成されるデータプロセッサであって、前記面内歪みは、前記超音波エコーデータの撮像面内の前記組織領域の歪みであり、前記面外運動は、前記撮像面に直交する方向に沿った前記組織領域の運動である、データプロセッサと
を有し、
前記データプロセッサは、前記面内歪み、前記面外運動、及び所定のモデルに基づいて前記組織領域に対して組織アブレーションのレベルを推定するように構成され、前記所定のモデルは、前記面内歪みと前記組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係及び前記面外運動と前記組織アブレーションのレベルとの間の第2の因果関係を少なくとも反映する、
装置。
【請求項2】
前記面外運動と前記組織アブレーションのレベルとの間の前記第2の関係は、組織アブレーションのより高いレベルに関連する、より大きな面外運動を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記データプロセッサは、前記測定される面外運動に基づいて前記面内歪みを測定するとき、動き補償を適用するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データプロセッサは、前記組織領域内の複数の組織サブ領域のそれぞれに関する面内歪み及び面外運動を測定し、前記複数の組織サブ領域のそれぞれに関する面内歪み及び前記面外運動と前記所定のモデルとに基づいて、前記複数の組織サブ領域のそれぞれに対して前記組織アブレーションのレベルを推定するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記データプロセッサは、前記複数の組織サブ領域に関する前記測定される面内歪みを示す第1のパラメトリックマップと、前記複数の組織サブ領域に関する前記測定される面外運動を示す第2のパラメトリックマップとのうちの少なくとも1つを導出するようにさらに構成され、
前記データインターフェースは、前記第1及び第2のパラメトリックマップのうちの前記導出される少なくとも1つを出力するようにさらに構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記データプロセッサは、前記複数の組織サブ領域に対する前記組織アブレーションの前記推定レベルに基づいて、前記組織領域の少なくとも一部を切除ゾーンとして決定するようにさらに構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記データインターフェースに結合され、前記組織領域に対する前記組織アブレーションの推定されるレベルを提供するように構成されるユーザインターフェースをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記データプロセッサは、3次元超音波データフレームの時間シーケンスを入力して面外方向に沿う前記組織領域の位置のフレーム間相関を示す相関係数を計算し、前記計算される相関係数と、前記面外方向に沿う相関係数及び変位の間の所定の関係とに基づいて、前記面外運動を計算することによって、前記面外運動を測定するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記面外方向に沿う相関係数と変位との間の前記所定の関係は、前記超音波エコーデータを取得するための超音波プローブ構成に依存する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
組織領域の熱アブレーションを監視するための超音波システムであって、
前記組織領域の超音波エコーデータを取得するための超音波プローブと、
前記組織領域の前記取得される超音波エコーデータを受信するように前記超音波プローブに結合される、請求項1に記載の装置と
を有する、超音波システム。
【請求項11】
前記超音波プローブは、トランスデューサ素子の2次元マトリックスを有する、請求項10に記載の超音波システム。
【請求項12】
組織領域の熱アブレーションのためのシステムであって、
前記組織領域を切除するための熱アブレーション装置と、
請求項10に記載の前記組織領域の前記熱アブレーションを監視するための超音波システムと
を有する、システム。
【請求項13】
組織領域に対する熱アブレーションのレベルを推定する
装置の作動方法であって、
前記装置は、データインターフェースと、データプロセッサとを有し、前記
作動方法は、
前記
データインターフェースが、前記組織領域の3次元超音波エコーデータを受信するステップと、
前記データプロセッサが、前記受信される超音波エコーデータに基づいて前記組織領域に関する面外運動を測定するステップであって、前記面外運動は、前記超音波エコーデータの撮像面に直交する方向に沿った前記組織領域の運動である、ステップと、
前記データプロセッサが、前記受信される超音波エコーデータに基づいて、前記組織領域に関する面内歪みを測定するステップであって、前記面内歪みは、前記超音波エコーデータの撮像面内の前記組織領域の歪みである、ステップと、
前記データプロセッサが、前記面内歪み、前記面外運動、及び所定のモデルに基づいて、前記組織領域に対する組織アブレーションのレベルを推定するステップであって、前記所定のモデルは、前記面内歪みと前記組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係及び前記面外運動と前記組織アブレーションのレベルとの間の第2の因果関係を少なくとも反映する、ステップと
を有する、
作動方法。
【請求項14】
前記装置に結合される超音波プローブが、前記組織領域の前記3次元超音波エコーデータを取得するステップをさらに有する、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項15】
実行されるとき、プロセッサに、請求項13に記載の
作動方法を実行させる実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織の熱アブレーションを評価することに関し、より詳細には、超音波エコーデータを使用して熱アブレーションのレベルを推定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱治療又は切除は標的病巣などの標的組織領域を切除するために、例えば、高周波、マイクロ波、又はHIFU(高強度集束超音波)の手段によって誘導される熱を使用する。それは低侵襲で、回復時間が短く、合併症も少なく、繰り返し使用でき、他の治療選択肢と併用できる。それは肝癌、腎癌、肺癌、心臓リズム障害などの治療に広く用いられてきた。熱アブレーションの手順を監視することが重要である。
【0003】
熱アブレーション監視のためのいくつかのタイプの既存の技術がある。それは、(1) 超音波画像におけるエコー輝度の変化を使用することであって、エコー輝度の変化(すなわち、熱アブレーションによって引き起こされる明るいキャビテーションバブル)が、アブレーション位置の大まかな推定として臨床現場で使用されていること、 (2)コントラスト強調CT又はMRIを使用すること、(3)温度変化を検出するために熱電対又は熱抵抗を使用すること、(4)正確でリアルタイムの組織温度マップを得るために磁気共鳴温度測定を使用すること、(5)温度を測定するために超音波温度測定を使用すること、(6)組織歪みを測定するために超音波エラストグラフィを使用することを含む。US2016015417A1は、組織の熱治療又は切除のためのシステムを開示した。このシステムは超音波エコー歪みを測定して、組織の熱誘導構造変化を推定するように構成され、さらに、超音波エコー歪みを計算するときに運動アーチファクトを補償するように構成される。運動アーチファクトは組織サンプルの滑り、又は機械的3D超音波プローブの位置誤差から生じ得る。超音波エラストグラフィーに基づくアブレーションモニタリングの明確な前提は、アブレーションされる領域が組織壊死により硬くなるということである。しかしながら、組織はアブレーション中に軟化し、その後、冷却後に硬くなることがある。さらに、アブレーション後、アブレーションされるゾーンの周囲に軟らかい浮腫領域があるかもしれない。これらの複雑な組織固有の剛性変化はすべて、剛性マップの解釈を困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波エコーデータを使用して、組織の熱アブレーションのレベル(組織アブレーションのレベルとも呼ばれる)を推定するための改善されるアプローチを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
熱アブレーションは組織をより硬くすることが知られており、したがって、例えば、US2016015417A1において、超音波エラストグラフィを使用して、熱アブレーションのレベルを推定することが提案されている。本発明者らは最初に、切除の前に、切除されるべき組織(例えば、病変)が通常、病変に接続し、病変に供給する微小血管のために周囲の組織に粘着し、切除の間に、組織は熱アブレーションの際の細胞壊死のために、周囲の組織に粘着性がより少なくなり(例えば、微小血管が破壊され)、より多くの面外運動を生じることを認識した。そのような観察又は認識に基づいて、本発明者らは組織治療又は切除のレベルを推定するために、熱アブレーションのレベルと面外運動との間の関係を利用することを提案した。
【0006】
本発明の第1の態様の実施形態によれば、組織領域の超音波エコーデータに基づいて組織領域の熱アブレーションのレベルを推定するための装置が提案される。装置は、組織領域の3次元超音波エコーデータを受信するように構成されるデータインターフェースと、受信される超音波エコーデータに基づいて組織領域に関する面内歪み及び面外運動を測定するように構成されるデータプロセッサとを備える。データプロセッサはさらに、面内歪み、面外運動、及び所定のモデルと、面内歪みと組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係、及び面外運動と組織アブレーションのレベルとの間の第2の因果関係を少なくとも反映する所定のモデルとに基づいて、組織領域に対する組織アブレーションのレベルを推定するように構成される。
【0007】
用語「歪み」はエラストグラフィーとしても知られている。当該技術分野でよく理解されているように、用語「面」は軸方向(すなわち、超音波信号の伝播方向)に沿って延在する撮像面を指し、面内歪みは撮像面内で推定される歪みを指し、面外運動は撮像面に直交する方向に沿う運動を指す。撮像面に直交する方向は撮像面を外側に向ける方向であり、したがって、面外方向とも呼ばれる。例えば、撮像面が軸方向及び方位方向に延在する場合、面外方向が仰角方向である。撮像面は、3次元超音波エコーデータが取得される物理的撮像面であってもよく、3次元超音波エコーデータから合成される仮想撮像面であってもよい。
【0008】
このようにして、面内歪みとの因果関係だけでなく、面外運動との因果関係を利用して、組織アブレーションのレベルを推定する。したがって、推定は、より正確及び/又は信頼できることが期待される。特に、面内歪みは組織の剛性を反映し、面外運動はその周囲に対する組織領域の粘着性を反映する。これとは対照的に、従来の超音波エラストグラフィに基づくアブレーション監視では、面内歪みに関する因果関係のみを利用して組織アブレーションのレベルを推定し、面外運動は単に面内歪みを導出する際に補償されるアーチファクトとみなされる。本発明はまず、アブレーションを監視するために、面外運動と組織アブレーションのレベルとの間の因果関係を利用することを提案する。
【0009】
一実施形態では、面内歪みと組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係はより高いレベルの組織アブレーションに関連するより小さい歪みを有する。
【0010】
一実施形態では、面外運動と組織アブレーションのレベルとの間の第2の関係はより高いレベルの組織アブレーションに関連するより大きな面外運動を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、データプロセッサは、測定される面外運動に基づいて面内歪みを測定するときに動き補償を適用するようにさらに構成される。換言すれば、面内歪みを測定するステップは、測定される面外運動に基づいて動き補償を適用するステップを有する。動き補償によって、測定される面内歪みは、より正確であり、及び/又は信頼性がある。
【0012】
いくつかの実施形態では、データプロセッサはさらに、組織領域内の複数の組織サブ領域のそれぞれに関する面内歪み及び面外運動を測定し、複数の組織サブ領域のそれぞれに関する面内歪み及び面外運動と所定のモデルとに基づいて、複数の組織サブ領域のそれぞれに関する組織アブレーションのレベルを推定するように構成される。組織サブ領域は、組織領域内の1つ以上の隣接する空間点を含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、データプロセッサは、複数の組織サブ領域に関する測定される面内歪みを示す第1のパラメトリックマップと、複数の組織サブ領域に関する測定される面外運動を示す第2のパラメトリックマップとのうちの少なくとも1つを導出するようにさらに構成され、データインターフェースは、導出される第1及び第2のパラメトリックマップのうちの少なくとも1つを出力するようにさらに構成される。
【0014】
一実施形態では、データインターフェースは、ユーザインターフェースに通信可能に接続することができ、導出される第1及び第2のパラメトリックマップのうちの少なくとも1つをユーザインターフェースに出力するように構成することができ、その結果、導出される第1及び第2のパラメトリックマップのうちの少なくとも1つをユーザインターフェースを介して提供又は表示することができる。ユーザインターフェースは装置の一部であってもよく、別個の装置であってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、データプロセッサは、複数の組織サブ領域についての組織アブレーションの推定レベルに基づいて、組織領域の少なくとも一部を切除ゾーンとして決定するようにさらに構成される。例えば、切除ゾーンは、組織アブレーションの推定レベルが所定のレベルを超える組織領域の部分を有するものとして決定することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は、データインターフェースに結合され、組織領域に対する組織アブレーションの推定レベルを提供するように構成されるユーザインターフェースをさらに備える。組織アブレーションの推定レベルは、テクスチャ、グラフィック、又はオーディオフォーマットを有する様々なフォーマットで提供することができる。いくつかの実施形態ではパラメータマップは導出され、提供されることができ、パラメータマップの各点は組織領域内の対応する空間点の組織アブレーションの推定レベルを表す。
【0017】
いくつかの実施形態では、データプロセッサは、面外方向に沿う組織領域の相関係数を計算し、計算される相関係数と、面外方向に沿う相関係数と変位との間の所定の関係とに基づいて面外運動を計算することによって、面外運動を測定するようにさらに構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、面外方向に沿う相関係数と変位との間の所定の関係は、超音波エコーデータを取得するための超音波プローブ構成に依存する。
【0019】
一実施形態では、所定の関係が所定のルックアップテーブルとして具現化することができる。
【0020】
一実施形態では面外方向に沿う相関係数と変位との間に複数の所定の関係があり、各所定の関係は特定の超音波プローブ構成に対応する。
【0021】
本発明の第2の態様の実施形態によれば、組織領域のアブレーションを監視するための超音波システムが提案される。超音波システムは、組織領域の3次元超音波エコーデータを取得するための超音波プローブと、超音波プローブから受信される3次元超音波エコーデータに基づいて組織領域の熱アブレーションのレベルを推定するための装置とを備える。いくつかの実施形態では、超音波プローブは、トランスデューサ素子の2次元マトリックスを有することができる。いくつかの他の実施形態では、超音波プローブは、一次元リニアアレイ又は湾曲アレイを含んでもよい。超音波プローブが2D超音波プローブである場合、掃引スキャンを行って3次元データを取得してもよい。
【0022】
本発明の第3の態様の実施形態によれば、組織領域の熱アブレーションのためのシステムが提案される。システムは、組織領域を切除するための熱アブレーション装置と、上述のように組織領域の熱アブレーションを監視するための超音波システムとを備える。
【0023】
本発明の第4の態様の実施形態によれば、組織領域の熱アブレーションのレベルを推定する方法が提案される。提案される方法は、組織領域の3次元超音波エコーデータを受信するステップと、受信される超音波エコーデータに基づいて組織領域に関する面内歪み及び面外運動を測定するステップと、前記面内歪み、前記面外運動、及び所定のモデルに基づいて、前記組織領域に対する前記組織アブレーションのレベルを推定するステップとを有する。前記所定のモデルは、前記面内歪みと前記組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係及び前記面外運動と前記組織アブレーションのレベルとの間の第2の因果関係を少なくとも反映する。いくつかの実施形態では、本方法は、超音波プローブを介して、組織領域の3次元超音波エコーデータを取得するステップをさらに有する。
【0024】
本発明の第5の態様の実施形態によれば、実行されるとき、プロセッサに、提案される方法の何れかを実行させる実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体が提案される。
【0025】
本発明の他の目的及び利点は添付の図面と組み合わせてなされる説明を参照することによって、より明らかになり、容易に理解され得る。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図中の同じ参照符号は、類似又は対応する特徴及び/又は機能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、組織領域の熱アブレーションを監視するための超音波システムを示す。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、組織領域のための熱アブレーションのレベルを推定する方法を示す。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、組織領域のための熱アブレーションのレベルを推定する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は特定の実施形態に関して、及び特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求項の範囲によってのみ限定される。記載される図面は、概略的なものにすぎず、非限定的なものである。図面において、いくつかの素子のサイズは、説明の目的のために誇張され、縮尺通りに描かれていないことがある。
【0029】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、組織領域の熱アブレーションを監視するための超音波システム100を示す。
【0030】
超音波システム100は、組織領域に対する熱アブレーションのレベルを推定するための装置110と、超音波プローブ120と、ユーザインターフェース130とを備える。装置110は、有線接続又は無線接続、ローカル接続又はリモート接続などを有する様々な方法で、超音波プローブ120及びユーザインターフェース130に通信可能に接続される。ユーザインターフェース130は、任意選択で、超音波プローブ120にも通信可能に接続され得る。装置110、超音波プローブ120、及びユーザインターフェース130は、単一のデバイスに統合され得るか、又は互いに物理的に分離され得る。装置110、超音波プローブ120、及びユーザインターフェース130のそれぞれは、1つ又は複数のデバイスを備えることができる。
【0031】
超音波プローブ120は、超音波信号を送信及び/又は受信することができる複数のトランスデューサを備える任意の種類のデバイスとすることができる。典型的には、超音波プローブ120は関心領域に向けて超音波信号を送信し、関心領域から、送信される超音波信号のエコーを受信するように構成される。本発明のいくつかの実施形態によれば、超音波プローブ120は、組織領域の3次元超音波データを取得するように構成される。いくつかの例では、超音波プローブ120はボリュームをスキャンすることができるトランスデューサのマトリクスを備えることができる。他のいくつかの例では、超音波プローブ120は平面を直接スキャンすることができるトランスデューサのアレイを含んでもよい。トランスデューサのアレイは自動又は手動のいずれかで、複数の異なる平面をスキャンするように再配置され、及び/又は再配向され、複数の平面の2次元超音波データは、関心領域のボリュームの3次元超音波データに組み立てることができる。例えば、超音波プローブ120は、機械的三次元超音波プローブであり得る。
【0032】
更に、超音波プローブ120は、面内歪み及び面外運動を導出するのに十分な三次元超音波エコーデータを取得するように構成される。いくつかの実施形態では、3次元超音波エコーデータは3次元超音波データフレームの時間シーケンスを有する。
【0033】
図1に示すように、装置110は、データインターフェース111と、データプロセッサ113とを有する。データインターフェース111は、組織領域の3次元超音波エコーデータを受信するように構成される。典型的にはトランスデューサによって受信される超音波エコー信号はビーム形成され、ビーム形成される信号は帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、高調波信号分離、スペックル低減、信号複合化、及び/又はノイズ除去のような種々の信号処理によって処理され、処理される信号はさらに処理され、Bモードデータ、ドップラーデータ、歪みデータ、運動データ等を得ることができる。これらの信号/データ処理の大部分は、超音波プローブ120又は装置110のいずれかによって実行されることができる。いくつかの実施形態では、超音波プローブ120は無線周波数超音波信号のような生の超音波信号のみを提供するように構成されてもよく、Bモードデータを提供するように構成されてもよく、歪みデータ又は運動データを提供するように構成されてもよい。これに対応して、データインターフェース111によって受信される超音波エコーデータは、様々なフォーマットであり得る。
【0034】
データプロセッサ113は、受信される超音波エコーデータに基づいて、組織領域に関する面内歪み及び面外運動を測定するように構成される。面内歪み及び面外運動は、将来開発されるあらゆる種類の既存のアプローチ又はアプローチで測定することができる。組織領域は、二次元又は三次元であり得る。いくつかの実施形態では、面内歪み及び面外運動は組織領域内の各点について測定される。より一般的にはいくつかの実施形態では組織領域は複数のサブ領域を含み、各サブ領域は1つ以上の隣接する点を含み、面内歪み及び面外運動は各組織サブ領域に対して測定される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、データプロセッサ113は面内歪み、面外運動、及び所定のモデルに基づいて、組織領域の組織アブレーションのレベルを推定するように構成される。所定のモデルは、面内歪みと組織アブレーションのレベルとの第一の因果関係及び面外運動と組織アブレーションのレベルとの第二の因果関係を少なくとも反映する。
【0036】
所定のモデルは、通常、大量のデータに基づいてオフラインで訓練され、使用中に任意選択でアップグレードされることができる。所定のモデルは、様々な技術によって生成することができる。所定のモデルは、決定論的特徴と固定しきい値又は適応しきい値を有する従来の決定論的モデルとすることができる。所定のモデルは、深層学習などのより高度な技法によって生成されることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、測定される面外運動は、面内歪みのより信頼できる測定を得るように面内歪みに動き補償を適用するためにさらに使用される。いくつかの実施形態では、動き補償は所定のモデルによって実行される。他のいくつかの実施形態では、所定のモデルに入力される前に、面内歪みは動き補償され、動き補償される面内歪みは所定のモデルに入力される。
【0038】
図1を参照すると、ユーザインターフェース130は、装置120に通信可能に接続されている。ユーザインターフェース130は、組織領域に対する組織アブレーションの推定レベルを提供するように構成される。組織アブレーションの推定レベルの提供は、内容及び/又はフォーマットに関して様々であり得る。いくつかの実施形態では、組織アブレーションの推定レベルはパラメータマップとしてフォーマットすることができる。例えば、パラメトリックマップは、着色することができる。パラメータマップは、ユーザインターフェースを介して表示することができる。例えば、パラメトリックマップは、組織領域のBモード画像上のオーバーレイとして表示することができる。パラメトリックマップは選択される平面に対して二次元であってもよく、選択される体積に対して三次元であってもよく、組織領域の全体積であってもよい。いくつかの実施形態では、データプロセッサ113は組織アブレーションの推定レベルに基づいて、切除ゾーンとして組織領域の少なくとも一部を決定するようにさらに構成される。例えば、切除ゾーンは、組織アブレーションの推定レベルが所定の閾値に達する組織領域の部分を有する。決定される切除ゾーンは、ユーザーインターフェースを介して表示できる。これに加えて、又はこれに代えて、決定されるアブレーションゾーンをターゲットアブレーションゾーンと比較することができる。典型的には、熱アブレーションは、ターゲットアブレーションゾーンが所定の許容範囲内でアブレーションされると判定されるときに完了したとみなされる。例えば、アブレーションの進行を示すためのインジケータを生成することができ、インジケータは、視覚的及び/又は聴覚的な方法でユーザに提供することができる。
【0039】
いくつかの実施形態ではデータプロセッサ113は、複数の組織サブ領域に関する、測定される面内歪みを示す第1のパラメトリックマップと、複数の組織サブ領域に関する、測定される面外運動を示す第2のパラメトリックマップとのうちの少なくとも1つを導出するようにさらに構成され、ユーザインターフェース130は第1及び第2のパラメトリックマップのうちの少なくとも1つを提供するようにさらに構成される。
【0040】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、組織領域の熱アブレーションのレベルを推定する方法200を示す。ステップ210において、組織領域の3次元超音波エコーデータは、データインターフェースを介して受信される。ステップ230では、受信される超音波エコーデータに基づいて、組織領域に関する面外運動が測定される。ステップ250では、受信される超音波エコーデータに基づいて、組織領域に関する面内歪みを求める。面外運動を測定するステップ230及び面内歪みを測定するステップ250は同時に、又は連続して実行することができ、ステップ230及び250の順序を変更することができる。ステップ270において、組織領域に対する組織アブレーションのレベルは、面内歪み、面外運動、及び所定のモデルに基づいて推定され、所定のモデルは、面内歪みと組織アブレーションのレベルとの間の第1の因果関係、及び面外運動と組織アブレーションのレベルとの間の第2の因果関係を少なくとも反映する。
【0041】
いくつかの実施形態では、方法200は超音波プローブを介して、組織領域の3次元超音波エコーデータを取得するステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法200は、ユーザインターフェースを介して、組織アブレーションの推定レベル及び/又は決定される切除ゾーンなどの組織アブレーションの推定レベルから導出される他の出力を提供するステップをさらに有することができる。
【0042】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、組織領域に対する熱アブレーションのレベルを推定する概略図を示す。
【0043】
図3を参照すると、ブロック310は、3次元超音波データフレームの時間シーケンスのような超音波データが切除後に取得されることを示している。ブロック320は、取得される超音波データを使用して超音波エラストグラフィは生成されることを示す。超音波エラストグラフィは、軟組織の弾性特性(面内歪みなど)をマッピングする超音波イメージングモダリティとして知られている。例えば、歪みマップは、Bモード画像へのオーバーレイとして表示される。ブロック360は、仰角方向に沿う運動を示す仰角運動マップが、取得される超音波データを使用して生成されることを示す。ブロック370は、歪みマップ及び仰角運動マップに基づいて組織アブレーションのレベルを推定することができる所定のモデルを示している。ブロック380は、熱アブレーションの推定レベルを示す。例えば、切除されるゾーン390は、熱アブレーションの推定されるレベルに基づいて描写される。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、データプロセッサは、面外方向に沿う組織領域の相関係数を計算することによって面外運動を測定するようにさらに構成される。非線形スペックル非相関により、相関係数は、面外運動に変換されるように較正されなければならない。いくつかの実施形態では、データプロセッサは、計算される相関係数と、相関係数と面外方向に沿う変位との間の所定の関係とに基づいて面外運動を計算するようにさらに構成される。組織領域のより低い相関係数は、通常、組織領域のより大きな変位に対応する。面外方向に沿う相関係数と変位との間の所定の関係は、超音波エコーデータを取得するための超音波プローブ構成に依存する。いくつかの実施形態では、既知の仰角距離を有する事前取得ファントムデータを使用して、所定の関係を生成することができる。任意選択で、ルックアップテーブルを生成して、所定の関係を表すことができる。
【0045】
図3を参照すると、ブロック330は、仰角相関係数マップが、取得される超音波データを使用して計算されることを示す。ブロック340は、既知の仰角距離を有するファントムの超音波データが、熱アブレーションが適用される組織領域から超音波エコーデータを取得するためのものと同じ構成を有する超音波プローブを用いて事前に取得されることを示す。例えば、ファントムの超音波データは、既知の距離によって分離される複数のスキャン面の超音波データフレームを有する。ブロック350は、ルックアップテーブルを示す。例えば、ルックアップテーブルの各エントリは、係数値及び対応する距離値を有する。
【0046】
本明細書で説明される技術プロセスは、様々な手段によって実施され得る。例えば、これらの技法は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せで実施することができる。ハードウェア実装の場合、技術プロセスは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書で説明される機能を実行するように設計される他の電子ユニット、又はそれらの組合せ内で実装され得る。ソフトウェアを使用すると、インプリメンテーションは本明細書に記載する機能を実行するモジュール(例えば、手順、機能など)を介して行うことができる。ソフトウェアコードは、揮発性又は不揮発性の記憶媒体に記憶され、プロセッサによって実行されてもよい。
【0047】
さらに、特許請求される特定事項の態様は特許請求される特定事項の様々な態様を実装するためにコンピュータ又はコンピューティング構成要素を制御するために、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組合せを生成するための標準的なプログラミング技法及び/又はエンジニアリング技法を使用して、方法、装置、システム、又は製造品として実装され得る。本明細書で使用される「製造品」という用語は、任意のコンピュータ可読デバイス、キャリア、又は媒体からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することが意図される。例えば、コンピュータ可読媒体は磁気記憶装置(例えば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストライプ…)、光ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル汎用ディスク(DVD)…)、スマートカード、及びフラッシュメモリ装置(例えば、カード、スティック、キードライブ…)を有することができるが、これらに限定されない。もちろん、当業者は、本明細書に記載されるもの範囲又は精神から逸脱することなく、この構成に多くの修正を行うことができることを認識するのであろう。
【0048】
本出願で使用されるように、データプロセッサのような「データインターフェース」、「プロセッサ」という用語は、汎用プロセッサ、特定目的プロセッサ、コンピュータプロセッサ、又はコンピュータ関連エンティティ、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、又は実行中のソフトウェアを指すことが意図されている。例えば、成分はプロセッサ、プロセッサ、オブジェクト、実行可能、実行スレッド、プログラム、及び/又はコンピュータ上で実行されるプロセスであってもよいが、これらに限定されない。説明のために、サーバ上で実行されているアプリケーションとサーバの両方を成分にすることができる。一つ以上の成分はプロセス及び/又は実行スレッド内に存在することができ、成分は、一つのコンピュータ上にローカライズされ、及び/又は二つ以上のコンピュータ間に分散されることができる。
【0049】
上記で説明したものは、1つ又は複数の実施形態の例を有する。もちろん、前述の実施形態を説明する目的で、コンポーネント又は方法の考えられるあらゆる組合せを説明することは可能ではないが、当業者は様々な実施形態の多くのさらなる組合せ及び置換が可能であることを認識することができる。したがって、記載される実施形態は、添付の特許請求の範囲の思想及び範囲内にあるすべてのそのような変更、修正、及び変形を包含することが意図される。さらに、用語「有する」が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、特許請求の範囲において遷移語として使用される場合に「備える」と解釈される、用語「有する」と同様の方法で包括的であることが意図される。