(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】非バイタル小麦タンパク質を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
A23J 3/18 20060101AFI20230928BHJP
A23J 1/12 20060101ALI20230928BHJP
C07K 14/415 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
A23J3/18
A23J1/12
C07K14/415
(21)【出願番号】P 2020569759
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019065726
(87)【国際公開番号】W WO2019238941
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ミンダウガス ジェトヴィラス
(72)【発明者】
【氏名】エディタ マゾニエネ
(72)【発明者】
【氏名】ラサ ヨオトキエネ
(72)【発明者】
【氏名】ダナス ヴァリヨナヴィチウス
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】P. Cantagalli et al.,Purification and Properties of Three Albumins from Triticum aestivum Seeds,Journal of the Science of Food and Agriculture,1971年,Vol.22,p.256-259
【文献】山本 佳代子、中溝 裕子,小麦胚芽中のアルブミン系タンパク質の分離およびその2,3の性質,食物学会誌,1978年,第33号,p.12-15
【文献】J. A. D. Ewart,Isolation and Characterization of a wheat albumin,Journal of the Science of Food and Agriculture,1969年,Vol. 20,p.730-733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質1g当たり600gを超える油
の乳化活性を有する非バイタル小麦タンパク質
を製造するプロセスであって、
1.小麦種子から出発して、外側繊維、小麦胚芽、デンプン、及び小麦グルテンを抽出し、小麦可溶物と称される画分を得るステップと、
2.前記小麦可溶物に精密濾過を適用し、精密濾過透過液を得るステップと、
3.前記精密濾過透過液にカチオンクロマトグラフィーを適用し、濃縮小麦アルブミンの3つの画分の製造を可能にするステップと、
4.さらにアルブミンに富む残余分を得るために、一緒に又は単独で前記濃縮小麦アルブミンの画分に限外濾過を適用するステップと、
5.前記アルブミンに富む残余分を濃縮及び/又は乾燥するステップと、
を含んでなり、
前記ステップ3の前記カチオンクロマトグラフィーが、
a.タンパク質を結合させるために、カチオン樹脂上に前記精密濾過透過液を供給するステップと、
b.前記樹脂上に結合したタンパク質を遊離させ分離するために、様々な溶出剤を前記樹脂上に供給するステップと、を含んでなり、
前記ステップaへの前記様々な溶出剤が、連続して、
i)pH6.2の20mMのリンゴ酸及び3mMの炭酸ナトリウム溶液、
ii)pH6.2の20mMのリンゴ酸、3mMの炭酸ナトリウム、及び0.5MのNaCl溶液、
iii)pH12の30mMの炭酸ナトリウム及び0.45MのNaCl溶液、であることを特徴とする、非バイタル小麦タンパク質を製造するプロセス。
【請求項2】
前記非バイタル小麦タンパク質が、ヒトパネルによって消費されたとき、又は電子舌によって分析されたときに低苦味オフフレーバー味を有する、請求項1に記載の非バイタル小麦タンパク質
を製造するプロセス。
【請求項3】
前記非バイタル小麦タンパク質が、250%を超
えるホイップ性を有する、請求項1又
は2に記載の非バイタル小麦タンパク質
を製造するプロセス。
【請求項4】
前記非バイタル小麦タンパク質が、乾燥物の80%を超
える、乾燥物基準N×6.25で表される濃度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非バイタル
小麦タンパク質
を製造するプロセス。
【請求項5】
前記濃縮ステップが限外濾過で行われる、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の
非バイタル小麦タンパク質を製造するプロセス。
【請求項6】
前記非バイタル小麦タンパク質が、前記ii)pH6.2の20mMのリンゴ酸、3mMの炭酸ナトリウム、及び0.5MのNaCl溶液の溶出剤から得られる前記濃縮小麦アルブミンの画分に由来する、請求項1に記載の非バイタル小麦タンパク質を製造するプロセス。
【請求項7】
前記非バイタル小麦タンパク質が、前記iii)pH12の30mMの炭酸ナトリウム及び0.45MのNaCl溶液の溶出剤から得られる前記濃縮小麦アルブミンの画分に由来する、請求項1に記載の非バイタル小麦タンパク質を製造するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高乳化活性、高気泡形成能、及び低苦味を特徴とする、非バイタル小麦タンパク質、好ましくは小麦アルブミンに関する。本発明はまた、このような非バイタル小麦タンパク質、好ましくは小麦アルブミンの工業的製造を可能にするプロセスに関する。最後に、本発明は、食品、飼料、化粧品、及び製薬用途をはじめとする工業的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦は、食品、飼料、化粧品、及び製薬産業で使用される、デンプン、脂質、タンパク質を工業的に製造できるようにする種子として良く知られている。求められる主成分は、小麦デンプン及び小麦グルテンである。小麦からのデンプン及びグルテンの製造に最も一般的に用いられる2つの方法は、いわゆるHalle法又は発酵法と、Martin法である。
【0003】
発酵法において、マッシュされた穀粒は、長期にわたる自然発酵のプロセスを受け、それによって小麦グルテンの特性は、もはやデンプンの洗い流しを深刻に妨げないように改変される。次に発酵マッシュは、細かく穿孔された容器内で水と共に撹拌され、その結果、容器の穿孔壁を通って逃げる水中のデンプンの懸濁を引き起こす。発酵中に生じる腐敗プロセスは、この方法を操作上非常に不快なものにする。また、このプロセスでは、小麦グルテンは商業的形態で回収され得ない。
【0004】
Martin法では、小麦粉は水と共に生地に練り込まれ、水のジェット噴射で澱粉を洗い流しながら、篩面で挟まれた固定床上で、繰り返し生地を伸ばしたりひっくり返したりする溝付きローラーによって、生地が撹拌され混練される。このプロセスの操作は非常に面倒であり、通常の精製方法では分離され得ない微細に分割されたグルテンで強く汚染された、低品質の澱粉の割合が比較的大きくなるという欠点がある。
【0005】
全ての小麦デンプン抽出プロセスにおいて、タンパク質は、小麦グルテンと小麦アルブミンの2つの主要な流れに分離される。小麦グルテンは不溶性なので、最初に分離される。小麦アルブミンは、可溶性画分に濃縮される。全てのプロセスは、小麦可溶物と称される液体画分をもたらす。小麦製粉精製所のこのような典型的な副産物は、典型的には、30%の残留デンプン、4~7%の灰分、及び15~35%の可溶性タンパク質を含む。これらのタンパク質は、主に小麦アルブミンである。
【0006】
小麦可溶物は、主に飼料及び発酵産業で使用される。食品分野では、ヒト用食品市場で販売するために、いくつかの企業が小麦アルブミンを精製することに成功している。例えば、日清ファルマは、JP2009000017686号明細書で、小麦アルブミンの精製画分を得るためのプロセスを開示している。このプロセスは、全粒小麦粉の水性抽出と、煮沸及び限外濾過による汚染化合物及びその他の温度安定性の低いタンパク質の沈殿とを含んでなる。この精製画分は、そのまま、又はスープに入れて消費され得る(宮崎ら著「小麦アルブミン含有飲料及び粉末スープの保存安定性」を参照されたい)。Hassanはまた2010年に、小麦アルブミンの価格安定政策を探求している。その研究では、小麦アルブミンは、それらの機能的な特性のために興味深いと結論づけられている。残念なことに、起泡能力(ホイップ性とも称される)は、溶液1ml当たりわずか1.68mlの気泡(百分率で表すと168%の気泡量)に達し得、この値は、タンパク質に有害であり得る約9~10の非常にアルカリ性のpHで得られる(Hassan,2010の表10を参照されたい)。気泡性のより高いタンパク質が産業によって求められているので
、小麦アルブミンの機能特性をアップグレードして、より多くの気泡を発現させる必要がある。
【0007】
小麦アルブミンのもう一つの主な欠点は、消費時に非常に強い苦味効果を有することである。この極度な苦味のために、食品産業は使用分野でない。アルブミンを含有するこのような小麦可溶物を食品会社が含める場合、苦味のカバー/遮蔽を目的とする配合化合物を添加しなくてはならない。例えば、花王株式会社に付与された米国特許第9259454号明細書は、小麦アルブミンベースの苦味のない食品配合物を提供することを意図した、小麦アルブミンと、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、又はそれらの任意の組み合わせとを含んでなる、固形組成物を教示する。
【0008】
最後に、小麦可溶物は非常に低い乳化活性も有するので、仔ウシ乳の代替品又はアイスクリーム産業などの食品業界でのいくつかの特定用途が回避される。当業者が、ポリオールを添加することによって苦味を除去し得れば、高い乳化性のアルブミンに富む画分は達成され得ない。
【0009】
結論として、外的化合物を添加することなしに低苦味オフフレーバーを有し、高い乳化能力及び高い起泡能力(ホイップ性とも称される)を有する、精製され濃縮された小麦アルブミン画分に対する必要性がなおもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の目的は、非バイタル小麦タンパク質、好ましくは小麦アルブミン、より好ましくは天然小麦アルブミンであって、それは、500gを超え、好ましくは600gを超え、より好ましくは1000gを超える、タンパク質1g当たりの油の乳化活性(以下の試験Aを参照されたい)を特徴とする。
【0011】
好ましい実施形態では、本発明のタンパク質は、ヒトパネルによって消費されたときに、低苦味オフフレーバーを有する。このような苦味はまた、電子舌をはじめとする当該分野で既知の方法によっても評価され得る。
【0012】
別の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質はまた、250%を超え、好ましくは300%を超えるホイップ性(起泡能力とも称される)も有する。
【0013】
より好ましい実施形態では、上記の実施形態の本発明のタンパク質は、タンパク質中で80%を超え、好ましくは90%を超える、乾燥物基準N×6.25として表される濃度を有する。
【0014】
本発明の第2の目的は、
1.小麦種子から出発して、外側繊維、小麦胚芽、デンプン、及び小麦グルテンを抽出し、小麦可溶物と称される画分を得るステップと、
2.小麦可溶物に精密濾過を適用し、精密濾過透過液を得るステップと、
3.精密濾過透過液にカチオンクロマトグラフィーを適用し、濃縮小麦アルブミンの画分の製造を可能にするステップと、
4.さらにアルブミンに富む残余分を得るために、一緒に又は単独で上記の濃縮小麦アルブミンの画分に限外濾過を適用するステップと、
5.上記アルブミンに富む残余分を濃縮及び/又は乾燥するステップと
を含んでなる、上記の本発明のタンパク質の製造を可能にするプロセスである。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、ステップ3のカチオンクロマトグラフィ
ーが、
a.タンパク質を結合させるために、カチオン樹脂上に精密濾過透過液を供給するステップと、
b.前記樹脂上に結合したタンパク質を遊離させ分離するために、様々な溶出剤を前記樹脂上に供給するステップと
を含んでなることを特徴とする。
【0016】
より好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、ステップaへの前記様々な溶出剤が、連続して
a)pH6.2の20mMのリンゴ酸及び3mMの炭酸ナトリウム溶液、
b)pH6.2の20mMのリンゴ酸、3mMの炭酸ナトリウム、及び0.5MのNaCl溶液、
c)pH12の30mMの炭酸ナトリウム及び0.45MのNaCl溶液
であることを特徴とする。
【0017】
好ましい実施形態では、ステップ5の濃縮は逆浸透法で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】PN1、PN2、及びPN3ピークを示すクロマトグラフィーピークを表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、「非バイタル小麦タンパク質」は、小麦グルテンを除く小麦種子から得られたタンパク質として理解されるべきである。グリアジンとグルテニンからなる小麦グルテンは、その粘弾性特性によって容易に特徴付けられ得る。「バイタル」という特性は、「活性小麦グルテンは、水和時の粘弾性が高いことを特徴とする。非バイタル化された小麦グルテンは、変性のために水和時の粘弾性が低下することを特徴とする。」と明確に述べる、“Codex Standard for Wheat Protein Products Including Wheat Gluten”(コーデックス規格163-1987、改訂1-2001)を読めばより良く理解され得る。当業者は、「非バイタル小麦タンパク質」が、アルブミンを含むが全ての小麦グルテンを除く、全ての小麦タンパク質であると理解すべきである。
【0020】
本発明によれば、「小麦」は、世界的な主食である穀類であり、その種子のために広く栽培されている草として理解されるべきである。小麦の多くの種が共にコムギ属(Triticum)を構成し;最も広く栽培されているのは、普通小麦(T.aestivum)である。
【0021】
本発明によれば、「タンパク質」は、アミノ酸残基の1つ又は複数の長鎖からなる、大型生体分子又は高分子として理解されるべきである。このようなタンパク質は、天然であり得て、又は加水分解又は化学修飾をはじめとする修飾を受けたものであり得る。
【0022】
本発明において、「エマルション」は、通常は不混和性(混和不能又は混合不能)である、2つ以上の液体の混合物として理解されるべきである。エマルションは、コロイドと称される物質の二相系のより一般的なクラスの一部である。コロイド及びエマルションという用語は同義的に使用されることがあるが、分散相と連続相の双方が液体である場合には、エマルションが用いられるべきである。エマルション中では、一方の液体(分散相)が他方の液体(連続相)中に分散する。エマルションの例としては、ビネグレットソース、均質化乳、マヨネーズ、及びいくつかの金属加工用切削液が挙げられる。
【0023】
本発明において、「乳化活性」は、タンパク質1グラム当たりの水で乳化され得る油の最大量として理解されるべきである。
【0024】
本発明において、「アルブミン」は、球状タンパク質のファミリーとして理解されるべきである。アルブミンファミリーの全てのタンパク質は水溶性で、濃縮塩溶液に中程度に可溶性であり、熱変性を受ける。
【0025】
本発明において、「苦味」とは、味覚の中で最も敏感なものとして理解されるべきであり、多くの人々が不快で、辛く、又は不快と認識するが、時には望ましくあって、様々な苦味剤を介して意図的に添加されることもある。一般的な苦味食品及び飲料としては、コーヒー、無糖ココア、南米マテ茶、ゴーヤ、オリーブ、柑橘類の皮、アブラナ科(Brassicaceae)の多くの植物、タンポポ菜、野生チコリ、及びキクヂシャが挙げられる。アルコール飲料中のエタノールは苦い味がする[30]が、ビール中のホップやビターズ中のオレンジをはじめとする、いくつかのアルコール飲料中に見られる追加的な苦味成分も同様である。キニーネもまた、その苦味が知られており、トニックウォーター中に見られる。
【0026】
上述のように本発明の第1の目的は、非バイタル小麦タンパク質、好ましくは小麦アルブミン、より好ましくは天然小麦アルブミンであって、それは、500gを超え、好ましくは600gを超え、より好ましくは1000gを超える、タンパク質1g当たりの油の乳化活性を特徴とする(以下の試験Aを参照されたい)。
【0027】
以下で例示されるように、小麦精製産業によって製造される小麦可溶物は、小麦アルブミンを濃縮したものである。天然小麦アルブミンとは、加水分解されていない天然状態で存在するアルブミンのことを意図する。アルブミンは、気泡性、透明性、及び乳化力をはじめとする、それらの特性が良く知られている。残念なことに、小麦可溶物はアルブミンが濃縮されていても、低い乳化力又は乳化活性を有する。食品、飼料、化粧品、及び医薬品などの工業的用途では、これらのアルブミン源は、機能性化合物として製品に使用され得ない。
【0028】
乳化活性は、上記で定義される。当業者は、この乳化活性を測定するのに役立ち得る、様々なプロトコルを承知している。乳化特性は、乳化活性(EA)及びエマルション安定性(ES)の2つの因子によって一般的に記述され得る。(Boye& al.,2010a)。乳化活性(EA)は、乳化相の分解又は反転の前に、既知の量の乳化剤を含有する水溶液中に分散させ得る油の最大量によって、定義され得る。(Sherman,1995)。
【0029】
本発明の出願人は、先行技術に基づいて、以下に記載する試験Aを開発し、容易に、迅速に、且つ確実に乳化特性を定量化できるようにした。
1.20mlの水への0.2gのタンパク質サンプルの導入、
2.Ultraturax IKA T25を利用した9500rpmで30秒間の均質化、
3.上記ステップ2と同一条件の均質化の下での20mlのコーンオイルの添加、
4.3100gで5分間の遠心分離。
a.エマルションが良好な(エマルションの破壊又は反転がない)場合は、水と油の量を50%上昇させた後に、新たな実験を実施する。
b.エマルションが不良な(エマルションの破壊又は反転がある)場合は、水と油の量を50%低下させた後に、新たな実験を実施する。
5.乳化され得る最大の油量(Qmaxと称される、ml単位)を繰り返して判定する。
6.乳化力=(Qmax/0.2)×100
【0030】
このような乳化能力の分析は、その影響を評価するために様々なpHで実行され得る。
【0031】
好ましい実施形態では、上記の本発明のタンパク質は、ヒトパネルによって消費されたときに、低苦味オフフレーバーを有する。このような苦味はまた、電子舌をはじめとする当該分野の既知の方法によっても評価され得る。
【0032】
苦味の評価は、訓練を受けたヒトパネルを利用して、容易且つ正確に実行され得る。このような評価のための好ましいプロトコルは、以下に記載される:
苦味を検知する訓練を受けた6人のパネラーを選択する。味見マトリックスは、水(Evian)中の5%懸濁と、それに続く手動での均質化、70℃/30分間で低温殺菌したものである。パネルは各製品を同じ順序で試食し、苦味体験の感想を伝えた。「苦味」記述語が、特に追跡される。
【0033】
苦味はまた、Insentによって製造販売される電子舌SA402Bなどの電子舌を利用しても評価され得る。このような評価のための好ましいプロトコルを以下に説明する:
1.250.0mLのメスフラスコ内に約4gのサンプルを計量する、
2.サンプルに100mLの精製水を添加し、機械的振盪機上で約60分間混合する、
3.懸濁液を約3000rpmで約10分間遠心分離する、
4.電子舌による分析のために上清を2つの試料採取カップに移し、分析は、上清中に電子舌を導入し、安定した測定(苦味だけでなく、うま味、渋味及び濃厚さ)になるまで待つことからなる。
【0034】
別の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質又は、250%を超え、好ましくは300%を超えるホイップ性(起泡能力とも称される)も有する。
【0035】
起泡能力とも称されるホイップ性は、本明細書で試験Bと称される、以下の手順に従って分析され得る:
・ 1gのサンプルの40mlの蒸留水による分散(以下でViと称される体積)、
・ Ultraturax IKA T25による8000rpmで30秒間の撹拌、
・ Ultraturax IKA T25による9500rpmで8分間の2回目の撹拌、
・ 100mlの目盛り付き試験管内への移入
・ 直後及び90分後の気泡体積(以下でVfと称される体積)の測定
・ ホイップ性=Vf(気泡量)/Vi(撹拌前体積)。
【0036】
ホイップ性はまた、百分率でも表され得る。
ホイップ性=(Vf(気泡量)/Vi(撹拌前体積))×100
【0037】
より好ましい実施形態では、上記2つの実施形態を提示する本発明のタンパク質は、乾燥物基準N×6.25で表される80%を超え、好ましくは90%を超える濃度を有する。
【0038】
アルブミンの濃度は、電気泳動及び窒素供与量をはじめとする、当業者によって知られている周知のプロトコルによって測定され得る。最も好ましいプロトコルは、ケルダール分析を伴うプロトコルである。
【0039】
本発明の第2の目的は、
1.小麦種子から出発して、外側繊維、小麦胚芽、デンプン、及び小麦グルテンを抽出し、小麦可溶物と称される画分を得るステップと、
2.精密濾過透過液を得るために、小麦可溶物の前記画分に精密濾過を適用するステップと、
3.前記精密濾過透過液にカチオンクロマトグラフィーを適用し、濃縮小麦アルブミンの画分の製造を可能にするステップと、
4.さらにアルブミンに富む残余分を得るために、一緒に又は単独で、濃縮小麦アルブミンの前記画分に限外濾過工程を適用するステップと、
5.上記アルブミンに富む残余分を濃縮及び/又は乾燥するステップと
を含んでなる、本発明によるタンパク質の製造を可能にするプロセスである。
【0040】
ステップ1では、小麦可溶物を得るために、周知のプロトコルが適用され得る。
【0041】
小麦可溶物を回収するのに適したプロセスの一例として、小麦粒は温水に浸漬され、ローラーミルで粉砕される。粉砕中に、気流及び篩掛けによって麹と胚芽が分離され、小麦粉が得られる。次にこのような小麦粉は2部の水と混合され、グルテニン及びグリアジンがネットワークを形成するように10分間撹拌されて、粘弾性グルテンが製造される。次にこの小麦粉のパルプは、遠心分離される。デンプン、繊維、グルテンペーストは沈着する。「小麦可溶物」と称される、塩類、糖類、そして小麦アルブミンもまた含む、残存する上清水が得られる。
【0042】
小麦可溶物は、例えば、湿式小麦デンプン製粉工程中のデンプン分離に起因する、小麦「B」デンプンの分離流から得られる。Bデンプン又は「第2のデンプン」とは、小型のデンプン顆粒又は破損した顆粒の比率が優るデンプンから本質的になる。このBデンプンに加えて、小麦可溶物には、関心のある微生物の窒素源を構成できる無視できない量の高分子量タンパク質もまた含まれることが知られている。
【0043】
ステップ2では、精密濾過が残留高分子を除去し、透過液中に濾過された透明な小麦可溶物が含まれるようにする。透過性勾配(GP)を有する、0.1μmの孔径のセラミック精密濾過膜が好ましい。精密濾過(MF)透過液が次のステップに導かれる一方で、タンパク質及び油が豊富な、洗い流し(透析濾過)後の残余分は、高タンパク質飼料の製造に使用され又はリサイクルされ得る。精密濾過は、好ましくは3つの必然的なスタックシステム内で実行され、その中では、次の各ステップが前のステップの残余分によって供給され、透過液は3つのスタック全てから併せて収集される。最終残余分の透析濾過は実施されないが、3番目のスタック又は追加的なスタック内で実行されるかもしれない。
【0044】
ステップ3は、特定の濃縮アルブミン画分のクロマトグラフ分離からなる。好ましくは、カチオン交換クロマトグラフィーが使用される。カチオン交換体としては、プロピルスルホン基を有するメタクリル酸グリシジルの親水性共重合体のマクロ孔質ビーズが好ましい。樹脂は、低pH(2.5)低イオン強度酸(HCl又は乳酸、又はリンゴ酸)溶液で予備調節されている。精密濾過透過液を酸(HCl又は乳酸、又はリンゴ酸)でpH3.8~4.0に調節し、(樹脂の出口でタンパク質が漏れることで検出され得る)タンパク質吸収の飽和まで樹脂を通過させる。いわゆるラフィネート流中の主に繊維を含有する未結合化合物は、可溶性繊維の回収に向けられ得て、又は(おそらく任意のナノ濾過又は限外濾過の後に)単に再循環されて元のストリームデンプンプロセス水に戻され得る。結合したタンパク質は、(リンゴ酸又は炭酸で緩衝化したNaOH及びNaCl溶液を使用して)pH及びイオン強度勾配を増加させることで、3~6つの別々のピーク、好ましくは3つのピークで樹脂から回収される。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、ステップ3のカチオンクロマトグラフィ
ーが、
c.タンパク質を結合させるために、カチオン樹脂上に精密濾過透過液を供給するステップと、
d.前記樹脂上に結合したタンパク質を遊離させ分離するために、様々な溶出剤を前記樹脂上に供給するステップと
を含んでなることを特徴とする。
【0046】
より好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、ステップaへの前記様々な溶出剤が、
i)pH6.2の20mMのリンゴ酸及び3mMの炭酸ナトリウム溶液、
ii)pH6.2の20mMのリンゴ酸、3mMの炭酸ナトリウム、及び0.5MのNaCl溶液、
iii)pH12の30mMの炭酸ナトリウム及び0.45MのNaCl溶液
で連続していることを特徴とする。
【0047】
さらなる処理のために、ピークは、別々に順送りされるか、又は特にそれらの美味性に応じて、いわゆるPN1、PN2、及びPN3画分に混合され得る。以下の特性を有する、3つの別々のタンパク質画分が収集される:
●PN1:pH6.1~6.3;導電率3~3.5mS;低苦味
●PN2:pH6.1~6.4;導電率45~50mS;低苦味
●PN3:pH12.0~12.2;透過率45~50mS;高苦味
【0048】
ステップ4では、接線流濾過(TFF)システム内におけるPES膜を用いた限外濾過(UF)によって、タンパク質画分が濃縮される。1kDaから6kDaまでの異なるカットオフが用いられ得る。タンパク質含有量を増加させるために、限外濾過の終了時に、PN2画分は逆浸透品質水でダイアフィルター処理される。UF前のPN3画分には、追加的なpH調節(5.5~6まで低下)、及び遠心分離機による浄化が必要である。UF透過液又はダイアパーミエートは、(任意選択的に逆浸透法濾過後に)PWとしてデンプン製造にリサイクルされ得る。このステップの後、9~10乾燥物%、さらに好ましくは10~20乾燥物%、より好ましくは20~30乾燥物%の精製タンパク質画分が得られ得る。
【0049】
ステップ5は、水を除去することを目的とする。可能な解決策は、限外濾過、滞留時間の短い蒸発、又は正浸透である。正浸透の場合、浸透圧剤は、逆浸透又は蒸発によって再濃縮される。濾液又は凝縮液は、デンプンプロセスに戻され再利用される。
【0050】
ステップ6は、タンパク質を乾燥させることを目的とする。噴霧乾燥機が好ましい。一般に、生成物は非粘着性であり乾燥が容易である。タンパク質単離物は、乾燥物含有量が約95%で、タンパク質含有量が約85~97%の軽量でクリーム色の乾燥粉末として得られる。より良い商業的特性のためには、噴霧/流動床組み合わせのような特殊な乾燥解決策を必要とする、マイクロ凝集化製品が所望されるかもしれない。
さらに好ましい実施形態では、ステップ5の濃縮は逆浸透法で実行される。
本発明は、以下の実施例によってより良く理解されるであろう。
【実施例】
【0051】
実施例1:先行技術の一般的なプロセスによる小麦可溶物の製造
小麦粒を28℃に加熱した水中で、8時間テンパリングする。水を除去し、ローラーミルで粉砕する。粉砕後、およそ14%の水分と0.8%の灰分(乾燥量基準)の小麦粉を得るために、1400、530、そして最終的に300ミクロンの篩掛けの組み合わせで、麹及び胚芽を分離する。得られた小麦粉を2部の水と混合し、グルテニン及びグリアジ
ンがネットワークを形成するように10分間撹拌し、粘弾性グルテンを製造する。次に、この小麦粉パルプを3~10×1000Gの力で5分間遠心分離する。デンプン、繊維、及びグルテンペーストは沈着する。塩類、糖類、そして小麦アルブミンもまた含む残存する上清水が得られ、「小麦可溶物」と称される。このような小麦可溶物の平均組成は、以下の表1に要約される:
【0052】
【0053】
実施例2:苦味のない乳化活性の高い小麦アルブミン抽出物の製造
本実施例には、乾燥物基準で20%のタンパク質を含有する1000kgの小麦可溶物が関与する。小麦可溶物を膜分画精密濾過ユニット、より正確には透過率勾配(GP)を有する0.1μm孔径のPALLセラミック精密濾過膜に供給する。精密濾過透過液を次のステップに供給する一方で、洗い流し(透析濾過)後の残余分は廃棄する。3つの必然的なスタックシステムを使用し、その中では、次の各ステップが前のステップの残余分によって供給され、透過液を3つのスタック全てから併せて収集する。最終残余分の透析濾過は実施されないが、3番目のスタック又は追加的なスタック内で実行されるかもしれない。VCF(体積濃縮係数)が5に達した時点で、濾過を終了する。精密濾過(MF)の主なパラメータは、以下の表2に要約される:
【0054】
【0055】
このステップは、6.5kgのタンパク質を含有する722kgの清澄化透過液を生成する。次に、この透過液をクロマトグラフィーによって、より正確にはカチオン交換クロマトグラフィー固相を伴って精製する。カチオン交換体としては、プロピルスルホン基を有するメタクリル酸グリシジルの親水性共重合体のマクロ孔質ビーズを使用する。ビーズを低pH(2.5)低イオン強度酸(HCl又は乳酸、又はリンゴ酸)溶液で予備調節し、標準的な交換カラムに充填する。清澄化透過液を酸(HCl又は乳酸、又はリンゴ酸)でpH3.8~4.0に調節し、線速度2cm/分、20℃で樹脂上に供給する。2.3乾燥物%で840kgに相当する、ラフィネートとも称される第1の未結合流は廃棄する。結合したタンパク質は、pH及びイオン強度勾配を増加させることで、3つの明瞭なピークを生じさせて、樹脂から回収する。このような3つの明瞭なピークでの分離を達成するために、表3に記載されるように、3つの溶出剤を樹脂上に連続して供給する。
【0056】
【0057】
3つの異なるピークは、樹脂の出口に配置されたUV検出器を使用し、280nmでスキャンして検出する(
図2を参照されたい)。表4に要約される以下の特性を有する、ピークタンパク質画分を収集する。
【0058】
【0059】
このステップは、2.21kgのタンパク質を含有する442kgのPN1画分、7.80kgのタンパク質を含有する195kgのPN2画分、及び4.47kgのタンパク質を含有する149kgのPN3画分を生成する。次に、PN1、PN2、及びPN3を限外濾過によって別々に精製する。限外濾過前のPN3画分には、追加的なpH調節(5.5~6まで低下)、及び遠心分離機による浄化が必要である。接線流濾過(TFF)システムのPES膜が好ましく、カットオフは6kDaである。タンパク質含有量を増加させるために、限外濾過の終了時に、PNx(PNxは、PN1、PN2、及びPN3画分を意味する)画分を逆浸透品質の水でダイアフィルター処理する。UF透過液又はダイア
パーミエートは、(任意選択的にRO濾過後に)PWとしてデンプン製造にリサイクルされ得る。このステップの後、N×6.25で表される9~10%のDSに達し、90%を超えるタンパク質濃度を有する、PNxタンパク質画分が得られ得る。主な限外濾過パラメータは、以下の表5に要約される:
【0060】
【0061】
全てのPNxタンパク質画分の濃度は、乾燥物では噴霧乾燥するには低すぎる。乾燥物を限外濾過膜濾過プロセスによって20%まで濃縮し、透過液は廃棄して残余分を保持し、小麦アルブミンを濃縮する。限外濾過(UF)の主なパラメータは、以下の表6に要約される:
【0062】
【0063】
最後に、全ての濃縮されたPNxタンパク質画分を藤崎噴霧乾燥機で乾燥させる。乾燥物含有量が約95%で、タンパク質含有量が約85~97%の軽量でクリーム色の乾燥粉末として、タンパク質単離物を得る。現在用いられている噴霧乾燥機のパラメータは、以下の表7に要約される:
【0064】
【0065】
実施例3:本発明と先行技術の比較
【0066】
【0067】
表8に記載されるように、PN2画分及びPN3画分は、サンプル1g当たり500mlを超える油を乳化し得る。さらにPN2画分のみが、約1000mlの油/gタンパク質を乳化できる。
【0068】
他方、本発明のプロセスのおかげで、PN2画分及びPN3画分は300%を超えるホイップ性を示し、同一量のタンパク質で大量の気泡が製造できるようになることが分かる。最後に、N2画分が非常に安定した気泡の製造を可能にすることが分かる。
【0069】
実施例4:感覚パネルによる官能的比較
製品:
●エンドウ豆単離物、NUTRALYS S85F バッチW122K
●加水分解小麦グルテン、NUTRALYS W バッチE5166
●ホエータンパク質単離物WPI 894
●ミルクカゼイネート
●精密濾過清澄化透過液、本発明のクロマトグラフィー供給物
●実施例2で得られたPN1ピーク
●実施例2で得られたPN2ピーク
●実施例2で得られたPN3ピーク
【0070】
苦味を検知する訓練を受けた6人のパネラーが、試験に参加した。
【0071】
味見マトリックスは、水(Evian)中の5%懸濁、手動での均質化後、70°C/30分間での低温殺菌である。
【0072】
パネルは各製品を同じ順序で試食し、苦味の感想を伝えた。
【0073】
結果
●NUTRALYS S85F:強いエンドウ豆/青臭い香りと味、苦味、渋味、ヒヨコマメのスープ
●Nutralys W:匂いと味が強い:青臭さ、米、発酵臭(中国緑茶のような)、非常に苦い
●WPI 894:ミルク、調理された卵白、砂質、乾燥
●ミルクカゼイネート:ミルク、洗浄水、辛味、酸味と苦味
●精密濾過清澄化透過液、本発明のクロマトグラフィー供給物:苦味
●PN2及びPN1ピーク画分:香りは非常にニュートラルで、少しフルーティー、アイスティー様。苦味/渋味なし。
●PN3部分:非常に苦く、供給物よりもさらに苦い。
【0074】
結論として、本発明のプロセスは、先行技術で教示されているようにポリオールを用いて配合することなく、苦味のない小麦タンパク質単離物(PN2)をもたらすが、非常に苦味のある小麦タンパク質単離物(PN3)もまたもたらし得る。非常に苦い画分は、必要であればいくつかの工業的用途で使用され得る。
【0075】
実施例5:本発明の非バイタル小麦タンパク質の抗酸化力
本実施例は、HaCaTヒトケラチノサイト細胞モデル上でLUCS技術を用いて、一般的なタンパク質サンプルと対比して、実施例4からのPN2サンプルの抗酸化力を評価することを目的とする。
【0076】
LUCSアプローチは、培養培地への光誘導性蛍光核酸バイオセンサーの添加に続く、細胞のラジカル種の生成に基づく。細胞バイオセンサーの存在下における光照射の効果は、一重項酸素の生成を誘発し、それは次に、放射された蛍光の増加につながる生化学的カスケードにおける、ROS(活性酸素種)の生成を引き起こす。
【0077】
LUCSアッセイは、生細胞内のROSを消去して酸化ストレスを中和する、抗酸化剤化合物の能力を測定する。この効果は、蛍光放射の動態進展の遅延によって測定される。このアプローチは、高スループット96ウェルプレート上で標準化されており、信頼性の高い統計解析を可能にする(欧州特許第2235505号明細書、米国特許第20110008783号明細書、及びDerick S.et al.,Sci Rep.2017,7(1):18069)。
【0078】
実験に先立って、タンパク質サンプルを生体外胃腸(GI)プロトコルに従って消化した。最初に、実施例4からの5gのPN2サンプルを95mLの超純水と250μLの0.3MCaCl2に、37℃で1時間の磁気撹拌下で溶解した。次いで、80mLの超純
水、15mLの1Mの塩酸、及び50μLの0.3MのCaCl2から構成される胃液をタンパク質溶液に添加した。ペプシン添加に先立って、pHを4MのHClで2に調節した。0.5gの量のペプシン(豚胃粘膜EC 3.4.23.1、CAS 9001-75-6、参照番号Sigma P7000)を溶液に添加し、37℃で2時間磁気撹下に置いた。30分毎にpHを測定し、必要があれば2に調節した。次に、pH7.4の175mLリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液、35mLの超純水、400μLの0.3MのCaCl2、及び4.5mLの1MのNaOHから構成される腸液をGIシステムに添加し、必要があれば4MのNaOHでpHを6.8に調節した。1gの量のパンクレアチン(豚膵臓EC 232-468-9、CAS 8049-47-6、参照番号Sigma P7545)を溶液に添加し、全システムを37℃で2時間磁気撹拌下に置いた。30分毎にpHを測定し、必要があれば6.8~7に調節した。生体外GI消化が完了したら、溶液を90℃で10分間加熱して酵素を不活性化した。サンプルを10000gで10分間遠心分離し、上清を-20℃で保存した。
【0079】
FCS(ウシ胎児血清)非含有の10mlの容積のDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)細胞培養培地を500mgの各サンプル(ホエータンパク質、卵白タンパク質、及び実施例4からのPN2サンプル)に添加した。溶液(50mg/ml/v)をボルテックス処理し、遠心分離(8700rpm、10分間)がそれに続いた。上清を分注し、実験当日まで-20℃で保存した。サンプルのpH価は8であり、AOPアッセイと適合した。次に実験に先立って、サンプルを90℃まで10分間加温し、消化酵素を不活性化する。試験は、ヒトHaCaT細胞上で実施した。細胞は、ウシ胎児血清(FCS)を補充したDMEM培地中で75000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、37℃/5%CO2で24時間インキュベーター内に保持した。次に、細胞を37℃/5%CO2で4時間にわたり、(連続log2希釈によって得られた8つの濃度の)サンプルの存在下で、インキュベートした。実験は、FCS非含有DMEM培地中で実施した。2つの独立した実験を各3つのウェルで具現化した。
【0080】
蛍光バイオセンサーと共に4時間インキュベートした後、1時間の間に細胞を処理し、繰り返しの480nmのLED適用手順(20回の反復)に従って、96ウェルプレート全体の蛍光を測定した(535nmでのRFU)。動態プロファイルを記録した。
【0081】
抗酸化セル指数(AOP指数)は、次式に従って正規化された動的プロファイルから計算する:
AOP指数(%)=100-100(0∫20RFUサンプル/0∫20RFU対照)
【0082】
サンプル濃度の対数(10)に従ってAOP指数を集計して得られた用量反応曲線は、以下の式に従ってシグモイドフィットにかける:
AOP指数=AOP最小指数+(AOP最大指数-AOP最小指数)/(1+10(Log(EC50-SC)×HS))
式中、SC=サンプル濃度、及びHS=Hill勾配である。次に、可能であればEC50(50%有効濃度)、EC10、及びEC90を評価する。
【0083】
以下の表9に結果を示す:
【0084】
【0085】
結果は、PN2サンプルのタンパク質が、一般的な動物性の先行技術タンパク質と対比して、強い抗酸化活性を有することを明確に示す。