(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】膨張を誘導する熱処理を施して二元金属部品を作製する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20230928BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20230928BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
B23K20/12 360
C22F1/04 A
C22F1/00 691B
(21)【出願番号】P 2020570197
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 FR2019051597
(87)【国際公開番号】W WO2020008129
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519326703
【氏名又は名称】コンステリウム イソワール
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM ISSOIRE
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】エルストロム,ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】アルセーヌ,シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ワルヌー,ティモティ
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0054666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアルミニウム合金(M1)で形成される第1の構成部材(11)と第2のアルミニウム合金(M2)で形成される第2の構成部材(12)とを用いて二元金属部品(10)を作製する方法であって、前記第1及び第2のアルミニウム合金は互いに対して異なっており、前記第1の構成部材及び前記第2の構成部材は、
-長手軸に沿って、5メートルを上回る長さに従って、
-及び、その長手軸に垂直な側面軸に沿って、前記長さの10分の1を下回る幅に従って
延びており、
前記方法が以下の工程:
-組合せ部品(10
a)を得るように前記長手軸に沿って前記第1の構成部材(11)を前記第2の構成部材(12)に組み合わせることと、
-前記組合せ部品(10
a)に熱処理を100℃~250℃の温度に従って施すことと、前記熱処理は前記組合せ部品の変形を誘導する、前記第1のアルミニウム合金内の及び/又は前記第2のアルミニウム合金内の冶金的性質の変化に影響された、いわゆる誘導変形であり、
-その後に前記誘導変形が残存する、室温への冷却と
を含み、
前記方法が、前記組合せの前に、
a)前記作製の終わりに取得したい形に対応する参照形(10
ref)を決定することと、
b)前記熱処理による前記組合せ部品(10
a)の誘導変形を推定することと、
c)前記熱処理の後に前記部品(10)が前記参照形(10
ref)に従って延びるように、前記工程a)の際に定義された前記参照形と前記工程b)の際に推定された前記誘導変形とを考慮して、前記第1の構成部材の初期形(11
i)と第2の構成部材の初期形(12
i)とを定義することと、
d)前記第1の構成部材(11)及び前記第2の構成部材(12)を、前記工程c)の際に定義されたそれぞれの初期形(11
i、12
i)に従って得ることと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱処理が焼き戻しであり、前記冶金的性質の変化が合金要素の再結晶化又は可溶化又は析出である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組合せが溶接により実行される、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記工程b)の際に、前記組合せ部品(10
a)の誘導変形の推定が数値モデル化により実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程b)が、以下の副工程:
bi)仮想の第1の熱膨張率(α
1)を前記第1の合金(M1)に割り当て、仮想の第2の熱膨張率(α
2)を前記第2の合金(M2)に割り当て、仮想の時間的温度変動(T(t))を定義することと、
bii)前記仮想の第1及び第2の熱膨張率と前記仮想の時間的温度変動(T(t))とを考慮して、前記熱処理の際の組合せ部品(10)の変形をモデル化することと
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記副工程bi)の際に定義された前記仮想の温度変動(T(t))が、前記熱処理の際に前記組合せ部品が曝される温度変化とは異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記副工程bi)の際に定義された前記仮想の温度変動(T(t))が最小温度と最大温度との間に広がり、前記最小温度と前記最大温度との間の幅が、前記熱処理の際に前記組合せ部品が曝される前記温度変化とは異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記副工程bi)の際に、前記仮想の第1の熱膨張率(α
1)、前記仮想の第2の熱膨張率(α
2)及び前記仮想の温度変動(T(t))が、
-変形された試験部品(20
d)を得るために、前記組合せ部品(10
a)を代表する試験部品(20)に熱処理を施すことと、
-モデル化された変形を得るために、前記試験部品を数値でモデル化することと、前記モデル化は前記仮想の第1の熱膨張率、前記仮想の第2の熱膨張率及び前記仮想の温度変動を考慮しており、
-前記モデル化された変形が前記試験部品の変形に対応するように、前記仮想の第1の熱膨張率、前記仮想の第2の熱膨張率及び前記仮想の温度変動を調整すること
により実験的に定義される、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記副工程bi)の際に、前記仮想の第1の熱膨張率(α
1)、前記仮想の第2の熱膨張率(α
2)及び前記仮想の温度変動(T(t))が、試験片についての膨張率測定による計測から実験的に定義され、各々の試験片がそれぞれ前記第1の構成部材及び前記第2の構成部材を代表するものである、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程b)の際に、前記モデル化が、それぞれ前記第1の合金(M1)及び前記第2の合金(M2)のヤング率を考慮している、請求項4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の合金(M1)が2XXX型のアルミニウム合金であり、前記第2の合金(M2)が7XXX型のアルミニウム合金である、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の合金(M1)が2XXX型のアルミニウム合金であり、前記第2の合金(M2)が7XXX型のアルミニウム合金であって、前記熱処理が焼き戻しであり、前記仮想の第1の熱膨張率(α
1)が最低限、前記仮想の第2の熱膨張率(α
2)を上回る、請求項
5に記載の方法。
【請求項13】
前記組合せが溶接により実行され、前記熱処理が焼き戻しである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接と前記焼き戻しとの間の前記組合せ部品(10
a)の中間形(10
int)を定義するために、前記溶接中の前記第1の構成部材(11)及び/又は前記第2の構成部材(12)の変形を推定する工程b’)を同様に含むので、前記工程c)の際に、前記組合せ部品(10
a)の参照形(10
ref)及び中間形(10
int)を考慮して、前記第1の構成部材及び前記第2の構成部材の初期形(11
i)(12
i)を定義する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程b’)が数値モデル化により実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程b’)が、以下の副工程:
b’i)補助的な仮想の第1の熱膨張率(α’
1)を前記第1の合金(M1)に割り当て、補助的な仮想の第2の熱膨張率(α’
2)を前記第2の合金(M2)に割り当て、補助的な仮想の温度変動(T’(t))を定義することと、
b’ii)前記補助的な仮想の第1及び第2の熱膨張率と前記補助的な仮想の時間的温度変動(T’(t))とを考慮して、前記溶接中の前記部品の変形をモデル化することと
を含む、請求項15に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、互いに対して2つの構成部材を含む部品、とりわけ構成要素を作製する方法である。本作製は、1つの構成部材又は2つの構成部材の変形を誘導する熱処理を実施する。本方法により、その幾何学形状が参照形に対応する部品を得るように、その誘導変形を考慮することができる。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、航空構造体において、特に胴体要素又は翼要素において壁板又は縦材の形でよく使用される材料である。飛行機の翼の作製は、翼の上部(上面)の領域に配置される壁板と翼の下部(下面)の領域に配置される壁板とを使用することを想定している。上部壁板及び下部壁板はそれぞれ異なる応力に曝される。上部壁板は、高い圧縮応力に耐えるように良好な静的機械耐性を示さなければならない。下部壁板は、引張応力に曝され得るように高い損傷耐性を示さなければならない。翼において、下部壁板及び上部壁板はとりわけ縦材により繋がれている。これらの縦材は、上面に繋がる縦材の上部分が高い圧縮機械耐性を示し、一方で下面に繋がる縦材の下部分が高い損傷耐性を示すように最適化されていなければならない。
【0003】
国際公開第2007068943号は、構造要素作製方法を記載している。国際公開第9858759号は、摩擦攪拌溶接による作製方法を記載している。
【0004】
欧州特許出願公開第1799391号明細書は、2つの異なるアルミニウム合金を溶接することにより得られ且つそれぞれ高い圧縮機械耐性と高い損傷耐性とを呈する構造要素、例えば縦材を得るのを可能にする作製方法を記載している。2つの合金の溶接はとりわけ、英語用語の摩擦攪拌溶接(friction stir welding)で表記される摩擦攪拌溶接により実行され得る。摩擦攪拌溶接により、溶接されるべき部品がその間中液相にある、融接方法によっては溶接不可能な合金の組合せを確かに実行することができる。そのように、摩擦攪拌溶接の際、溶接されるべき部品は固相にある。その溶接により、2XXX型の合金と7XXX型の合金とを組み合わせることができる。2XXX型の合金が下面の仕様書に適合しており、一方で7XXX型の合金が上面の仕様書に適合していることが知られている。それらの溶接により、下面と上面とを繋ぐのに最適な特徴を有する構造要素を得ることができる。
【0005】
以前に引用された文献によれば、溶接後の焼き戻しは、幾つかの機械特性、例えば腐食耐性を向上させるように実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2007068943号
【文献】国際公開9858759号
【文献】欧州特許出願公開第1799391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
後に記載される本発明の発明者は、以前に記載された方法の改良を、特に5メートルを超える、さらには10又は15メートルをも超えるかなりの長さの部品を作製するための方法の改良を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、第1のアルミニウム合金で形成される第1の構成部材と第2のアルミニウム合金で形成される第2の構成部材とを用いて二元金属部品を作製する方法であり、第1及び第2のアルミニウム合金は互いに対して異なっており、第1の構成部材及び第2の構成部材は、
-長手軸に沿って、5メートルを上回る長さに従って、
-及び、その長手軸に垂直な側面軸に沿って、長さの10分の1を下回る幅に従って
延びており、
本方法は以下の工程:
-組合せ部品を得るように、長手軸に沿って第1の構成部材を第2の構成部材に組み合わせることと、
-組合せ部品に熱処理を100℃~250℃の温度に従って施すことと、その熱処理は組合せ部品の変形を誘導する、第1のアルミニウム合金内の及び/又は第2のアルミニウム合金内の冶金的性質の変化に影響された、いわゆる誘導変形であり、
-その後に上記誘導変形が残存する、室温への冷却と
を含み、
本方法は、組合せの前に、
a)作製の終わりに取得したい形に対応する参照形を定義することと、
b)熱処理による組合せ部品の誘導変形を推定することと、
c)熱処理後に部品が参照形に従って延びるように、工程a)の際に定義された参照形と工程b)の際に推定された変形とを考慮して、第1の構成部材の初期形と第2の構成部材の初期形とを定義することと、
d)第1の構成部材及び第2の構成部材を、工程c)の際に定義されたそれぞれの初期形に従って得ることと
を含むことを特徴とする。
【0009】
熱処理は、とりわけ焼き戻しであり得る。組合せは溶接により実行され得る。
【0010】
合金の冶金的性質の変化とは、例えば、熱処理後に、とりわけ合金が室温に戻る際に存続する合金要素の再結晶化又は可溶化又は析出を意味する。特に凝固相析出が取り上げられ得る。この凝固相析出は、合金により形成された構成部材の変形をもたらし、その変形は合金要素の固溶体から凝固析出物への移行に関連している。
【0011】
工程b)の際に、組合せ部品の変形の推定はとりわけ数値モデル化により実行され得る。工程b)は以下の副工程:
bi)仮想の第1の熱膨張率を第1の合金に割り当て、仮想の第2の熱膨張率を第2の合金に割り当て、仮想の時間的温度変動を定義することと、
bii)仮想の第1及び第2の熱膨張率と仮想の時間的温度変動とを考慮して、熱処理の影響下で組み合わされた部品の変形をモデル化することと
を含み得る。
【0012】
副工程bi)の際に定義された仮想の時間的温度変動はとりわけ、熱処理の際に組合せ部品が曝される温度変化とは異なる。仮想の温度変動は最小温度と最大温度との間に広がり得る。最小温度と最大温度との間の幅は、熱処理の際に組合せ部品が曝される温度変化とは異なる。
【0013】
副工程bi)の際に、仮想の第1の熱膨張率及び仮想の第2の熱膨張率並びに仮想の温度変動は実験的に定義され得る。一実施形態によれば、仮想の第1及び第2の熱膨張率並びに仮想の温度変動は、
-実験的な誘導変形を得るために、組合せ部品を代表する試験部品に熱処理を施すことと、
-モデル化された変形を得るために試験部品を数値でモデル化することと、そのモデル化は仮想の第1の熱膨張率、仮想の第2の熱膨張率及び仮想の温度変動を考慮しており、
-モデル化された変形が試験部品の変形に対応するように、仮想の第1の熱膨張率、仮想の第2の熱膨張率及び仮想の温度変動を調整すること
により定義することができる。
【0014】
別の実施形態によれば、各々の構成部材の熱処理前と熱処理後との間の寸法差に対応する冶金的変形を膨張率測定により計測することから、仮想の第1の熱膨張率、仮想の第2の熱膨張率及び仮想の温度変動を定義することができる。計測は試験片について実行され、各々の試験片はそれぞれ第1の構成部材及び第2の構成部材を代表するものである。合金間の仮想の熱膨張率の差は、仮想の温度変動の考慮によって、膨張率測定により実行された計測に調整され得る。
【0015】
工程b)の際に、モデル化は2つの合金の弾性挙動を考慮している。そのモデル化は、各々の合金に対して異なるヤング率を考慮してもよい。
【0016】
一実施形態によれば、第1の合金は2XXX型のアルミニウム合金であり、第2の合金は7XXX型のアルミニウム合金である。熱処理が焼き戻しである場合、仮想の第1の熱膨張率は最低限、仮想の第2の熱膨張率を上回り得る。
【0017】
一実施形態によれば、組合せは溶接により実行され、熱処理は焼き戻しである。本方法は、溶接と焼き戻しとの間の組合せ部品の中間形を定義するために、溶接に起因する組合せ部品の変形を推定する工程b’)を含むことができるので、工程c)の際には、組合せ部品の参照形及び中間形を考慮して、第1の構成部材及び第2の構成部材の初期形を定義する。工程b’)を、とりわけ数値モデル化により実行することができる。その工程は以下の副工程:
b’i)補助的な仮想の第1の熱膨張率を第1の合金に割り当て、補助的な仮想の第2の熱膨張率を第2の合金に割り当て、補助的な仮想の時間的温度変動を定義することと、
b’ii)補助的な仮想の第1及び第2の熱膨張率と補助的な仮想の時間的温度変動とを考慮して、溶接中の部品の変形をモデル化することと
を含み得る。
【0018】
本発明の第2の目的は、5メートルを上回る、好ましくは10メートルを上回る長さにわたり延びている、本発明の第1の目的に従って実現される部品である。
【0019】
本発明の第3の目的は、輸送車両の構成部材、例えば航空機の構成部材、例えば飛行機の翼又は尾翼の縦材を作製するために本発明による部品を使用することである。
【0020】
他の利点及び特徴は、限定されない例として与えられ且つ以下に列挙される図上に表される本発明の特定の実施形態の以下の記述からはっきりと判明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、作製されるべき二元金属部品、この場合は縦材を示す。
【
図1B】
図1Bは、二元金属部品の対向する2つの末端の詳細を示す。
【
図1C】
図1Cは、二元金属部品の対向する2つの末端の詳細を示す。
【
図1E】
図1Eは、部品、いわゆる試験部品を用いて実験で得られた変形を概略的に示す。その図では変形が誇張されている。
【
図2A】
図2Aは、焼き戻しの影響下での部品の変形のモデル化を実行するために考えられた仮想の温度変動を示す。横軸及び縦軸はそれぞれ温度及び時間を表す。
【
図2B】
図2Bは、焼き戻しの影響下での部品の変形のモデル化を示す。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態による方法の主工程を示す。
【
図3B】
図3Bは、第2の実施形態による方法の主工程を示す。
【
図5】
図5は、溶接に起因する、さらには焼き戻し、いわゆる溶接後の焼き戻しに起因する部品の変形のモデル化を示す。
【
図6A】
図6Aは、溶接による組合せ部品の形に対応する形、いわゆる中間形のモデル化を示す。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示される中間形からの、焼き戻しに起因する変形のモデル化を示す。
【
図7B】
図7Bは、焼き戻し後のその変形により
図7Aで示された参照形を得ることができる、組合せ部品の形を示す。
【
図7C】
図7Cは、その組合せにより
図7Bに示された組合せ部品を得ることができる、2つの構成部材を示す。
【
図8B】
図8Bは、溶接後に
図8Aに示される部品を得るのを可能にする2つの構成部材を示す。
【0022】
図3A、4、5、6A及び6B、7A~7C、8A~8Bでは、Z軸に沿った変形は、Y軸に用いられる寸法に対して10倍に増大されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
他に指定されない限り、合金の表記は、米国アルミニウム協会により規定された表記に対応する。
【0024】
構造要素とは、装備品の構造体の構成要素を意味する。本請求において構造要素は、例えば飛行機の翼に、とりわけ航空構造物の胴体又は別の要素用の補強芯を特に指し示す。
【0025】
図1Aは、第1のアルミニウム合金M1に従って作製された第1の構成部材11と、第2のアルミニウム合金M2に従って作製された第2の構成部材12とを含む縦材10を概略的に示す。第1のアルミニウム合金M1は例えば2XXX型の合金であり得るのに対し、第2のアルミニウム合金M2は7XXX型の合金であり得る。第1の構成部材11及び第2の構成部材12は、長手軸Yに沿って、長さlの界面13に沿って互いに対して配置される。本発明は主に、かなりの長さに沿って組み合わされる異なる材料の2つの構成部材を組み合わせることにより作製される部品に関する。界面13の長さは通常、5m又は10mを上回る。その長さは例えば5m~20mである。縦材10は長手軸Yに沿って、2つの末端AとBとの間に延びており、その末端の各々の詳細は
図1B及び1Cに示されている。側面軸Zに沿った部品10の幅は、末端Aと末端Bとの間で、それぞれおよそ500mm~800mmと150mm~400mmとの間で変化する。横手軸Xに沿った部品の厚さは、例えば50mmと150mmとの間である。Y軸及びZ軸により定義される平面は主平面P
YZである。
【0026】
従来技術の作製方法によれば、第1の構成部材11は溶接により第2の構成部材12に組み合わされる。従来技術に関連して示されるように、摩擦攪拌溶接は特に、融接方法では溶接され得ないアルミニウム合金の溶接を実行するのに適している。摩擦攪拌溶接は界面13に沿って行われる。溶接後、縦材10は、幾つかの特性、特に腐食耐性及び/又は機械耐性を向上させるように焼き戻し、いわゆる溶接後の焼き戻しを施される。焼き戻しは、以下のパラメータ:毎時30℃での155℃までの上昇、続いて155℃で18時間の維持を有し得る。
【0027】
発明者は、溶接が縦材10の変形を誘導することを確認した。発明者は同様に思いがけずに、溶接後の焼き戻しが同様に、主平面PYZでの曲がりの出現で表される縦材10の十分な変形を誘導することを確認した。溶接後の焼き戻しの際に2つの変形現象が生じ、組合せ部品の誘導変形に至る。それらは、
-焼き戻し後に室温に戻る際に熱膨張が全く観測されないという意味で可逆性である熱膨張と、
-応力の導入及び緩和、合金要素の再結晶化又は可溶化又は析出のような冶金的性質の変化に起因する冶金的変形である。熱膨張とは異なり、冶金的変形は室温に戻る際に存続する。冶金的変形は、実施される冶金的現象に応じて膨張又は収縮をもたらし得る。例えば、凝固相析出は、合金要素の固溶体から凝固析出物への移行に関連する体積変化に主に原因があるとする変形を誘導する。作製されるべき部品が例えば1メートル程度のわずかな長さの部品である場合、そのような変形はあまり知覚され得ないが、長さが増し、例えば5又は10メートルを超える場合、対応する寸法の変化は十分になり得る。
【0028】
熱処理を組合せ部品上に施した後、その組合せ部品の誘導変形はとりわけ、各々の構成部材に影響を及ぼす、以前に記載されたような冶金的変形に起因する。同様に、2つの構成部材が互いに対して繋がっていることに関連する応力を考慮しなければならない。組合せのために、第1の構成部材の変形は、第2の構成部材の弾性により影響を受け、その逆も同様である。
【0029】
試行実験は、第1の合金M1が2050型合金であり、第2の合金M2が7140型合金であり、界面長が16mに等しい場合、焼き戻しによる部品の変形が、59mmの矢印Fを画定する曲がりをもたらすことを示した。
図1Dは、焼き戻し前では
図1Aに示されるような直線形に従って現れる試験部品20を概略的に示す。
図1Eでは、焼き戻しに起因する変形後の試験部品20
dを主平面P
YZにおいて示した。
【0030】
図1Eに示されているように、矢印Fは、検討される部品、この場合は試験部品20
dとその試験部品の末端を繋ぐ直線Dとの間の最大距離に対応する。
【0031】
そのように、通常5又は10メートルを上回る長い長さにわたり延びる2つの構成部材の溶接を実行し、そのように組み合わされた部品10aに焼き戻しを実行する際、その形が焼き戻し前の組合せ部品10aの形とはかなり異なる部品を得る。
【0032】
現時点では、そのような変形のシミュレーションを可能にする計算コードは存在しない。それは、焼き戻し中の合金内での析出に起因する構成部材の膨張を正確にシミュレートするのが困難であるということに由来する。発明者は変形モデルmodを設定することで、焼き戻しにより生じる変形をモデル化しようとした。
【0033】
発明者により提案されるモデル化は、仮想の第1の熱膨張率α1を第1の合金M1に割り当て、仮想の第2の熱膨張率α2に第2の合金M2を割り当てることから成る。検討される実施例では、仮想の第2の熱膨張率α2は零とみなされる。このように、焼き戻しの影響下の組合せ部品10aの誘導変形は、合金M1の構成部材11と合金M2の構成部材12との間の冶金的変形の差と、構成部材が組み合わされているために自由に膨張することから解放されていないことにより生じる弾性変形とに原因がある。
【0034】
本発明者により提案されるモデルmodによれば、焼き戻しは、時間tに応じた単純な温度変動T(t)と同等にみられる。とりわけ温度の連続変動、例えば線形変動が取り上げられ得る。温度変動T(t)はモデル化を目的として仮想的に定義されており、焼き戻し中の実際の温度変化には対応していない。その変動を用語「仮想の温度変動」で表記する。モデルmodは、単純な膨張を考慮しつつ、部品の構成部材のうちの1つを形成する合金の等方性熱膨張のみに基づいて、組合せ部品10aの変形をシミュレートすることを目指す。
【0035】
発明者により提案されるモデルmodは、合金M1及びM2の機械特性、例えばヤング率及びポアソン比を考慮している。モデル化は、有限要素法による計算ソフトウェア、例えば出版元MSC社により市販のシミュレーションソフトウェアMARCにより実行され得る。それにより、仮想の温度変動T(t)の影響下の各々の構成部材の熱機械的変形を推定することができる。
【0036】
モデルmodの目的は、組合せ部品10aが焼き戻し中に被る変形を容易に予想することである。組合せ部品10aの形から、変形部品10dのモデル化を得るように、焼き戻しにより誘導される変形をモデル化する。モデル化の目的は、焼き戻し後に部品が参照形10refに従って延びているように、焼き戻し前の組合せ部品10aの形を定義し得ることである。参照形は、焼き戻し後に部品10に与えたい形に対応する。
【0037】
重要な面はモデルmodのパラメータ表示であり、特にアルミニウム合金M1及びM2の仮想の熱膨張率α
1及びα
2を決定し、仮想の温度変動T(t)を定義することである。それらのパラメータは、試験部品20で実行される試行実験に基づいて又は各々の合金に対して同一温度で2つの計測の間で観測される膨張の計測に基づいて実験的に決定される。試験部品20を用いる場合、この試験部品は、好ましくは組合せ部品10
aと同一の寸法及び/又は組成のものである。試験部品20が組合せ部品10
aと全く同一である必要はない。しかしながら試験部品20の組成は、焼き戻しに由来する変形の十分に精密なモデル化を可能にし得るために、組合せ部品10
aの組成を十分に表しているものでなければならない。試験部品20で行われる試行実験により、
図1D及び1Eに概略的に示されているように、実験で決定される変形20
dを得ることができる。観測された変形から、モデルmodのパラメータ、この場合はα
1、α
2及びT(t)を定義することができる。
【0038】
金属合金の挙動についての利用可能な知識に応じて、モデルmodの幾つかのパラメータを先験的に固定することができる。例えば、第1の合金M1が2050型であり、第2の合金M2が7140型である場合、先験的にα2=0と考えられ得ることを確認した。
【0039】
本発明の特異性は、本モデルを考慮した仮想の温度変動T(t)が焼き戻しを左右する温度変化に必ずしも対応していないことである。仮想の温度変動T(t)は、変形の正しいモデル化を可能にするように実験で観測される変形に基づいて任意に定義される。以下の実施例において、仮想の温度変動T(t)は線形増加関数である。仮想の、つまり部品で行われる焼き戻しと相関のない温度変動に基づくことにより、組合せ部品の熱機械的変形の現実的なシミュレーションを得るのを可能にする、熱膨張モデルのみに基づいた単純なモデル化を得ることができる。
【0040】
第1の合金M1及び第2の合金M2にそれぞれ割り当てられた仮想の熱膨張率α1、α2に関して、それらの仮想の熱膨張率は、本モデルで考慮された仮想の温度変動T(t)を考慮することで、実験上の変形を正しく推定するのを可能にするように決定される。
【0041】
一実施例によれば、先験的に、仮想の温度変動T(t)を定義し、次に第1及び第2の合金にそれぞれ、試験部品20について実験で観測される変形を正しくモデル化するのを可能にする仮想の熱膨張率α1、α2を割り当てる。
【0042】
モデルmodのパラメータが固定されている場合、焼き戻し後に参照形10refを得るのを可能にする組合せ部品10aの形を定義するように変形をモデル化することができる。
【0043】
第1の実施例によれば、
図1A~1Cに示された部品に類似の試験部品20は焼き戻しを被る。本部品の実験的な変形20
dが観察され、その変形に基づいてモデルmodのパラメータを決定する。
【0044】
別の実施例によれば、試験片について実行された膨張率測定による計測に基づいて、モデルmodのパラメータを決定することができる。その場合、計測された膨張間の差に応じて仮想の第1の熱膨張率と仮想の第2の熱膨張率とを決定する。各々の試験片は第1の合金若しくは第2の合金を代表するものである。そのような計測に基づいて、第2の合金、この場合は合金7140に仮想の熱膨張率α
2=0を割り当てた。
図2Aに表示されるような線形増加する仮想の温度変動T(t)を定義した。この変動は焼き戻し期間を通して1℃の漸次増加を表している。
図2Aにおいて横軸は時間tを表し、座標t=1は焼き戻しの終了に対応する。縦軸は初期温度からの温度変動を摂氏度で表す。第1の合金(合金2050)の仮想の熱膨張率α
1は実験で膨張率測定により決定された。この実施例ではα
1=0.05%/℃である。
【0045】
本モデルにおいて考慮される仮想の温度変動T(t)が最小温度Tminと最高温度Tmaxとの間に広がっていることに注目する。温度較差Tmax-Tminは1℃である。その温度較差は従って、焼き戻し中に誘導される温度変化ΔTとは異なる。本モデルにおいて考慮される仮想の温度変動T(t)の目的は、焼き戻しを通しての実際の温度変化を表すことではない。変形が熱膨張効果のみに起因すると仮定して、その温度変動により、焼き戻しに起因する変形のみをモデル化することができる。
【0046】
そのように開発されたモデルmodを、
図2Bにおいて点線で表されたモデル化された部品10
aに適用する。
図2Bにおいて濃淡表示される変形部品10
dのモデル化を得た。濃淡度は、側面軸Zに沿って計測された変形に対応する。そのモデルによれば、56mmの高さ方向の撓みを得る。実験で計測された値は59mmに達する。モデルにより及び実験によりそれぞれ得られた撓み値の間の一致は、モデルにより与えられたモデル化の質を証明している。
【0047】
変形モデルmodを定義したので、次に、組合せ後に組合せ部品10aを得るのを可能にする第1及び第2の構成部材の初期形11i、12iを得ることができ、焼き戻し後の組合せ部品の形は、先験的に決定された参照形10refに対応する。
【0048】
図3Aは、本発明による部品作製方法の主工程を概説している。
【0049】
工程100:2つの構成部材11及び12を組み合わせ、組合せ部品10aに熱処理を実行した後に取得したい参照形10refを決定する。
【0050】
工程110:焼き戻し後に部品10refを与えることになる第1の構成部材11及び第2の構成部材12の組み合わせにより形成される部品10aの変形を反復法により推定するように、変形モデルmodを適用する。変形モデルmodはとりわけ、以前に言及され且つ後続の実施例に記載されるような、数値変形モデルである。そのモデルはとりわけコンピュータを用いて実現され得る。
【0051】
工程120:工程110に際に推定された変形に応じて、第1の構成部材11の第1の初期形11iと第2の構成部材12の第2の初期形12iとを定義する。
【0052】
工程130:第1の初期形11iに従って第1の構成部材11を得て、第2の初期形12iに従って第2の構成部材12を得る。
【0053】
工程140:組合せ部品10aを得るように、第1の構成部材を第2の構成部材に組み合わせる。その組合せを、溶接により、又は第1の構成部材11と第2の構成部材12との接着又は締め付けにより得ることができる。
【0054】
工程150:作製された部品10が焼き戻し後に変形して参照形10refを得るように、組合せ部品10aに焼き戻しを施す。
【0055】
工程110は、焼き戻しの際に変形する部品のモデル化を求める必要がある。そのようなモデル化は、工程90の対象である変形モデルmodを事前に設けることを想定している。工程90は以下の2つの副工程を含む。
【0056】
副工程92:試験片について膨張率測定による計測を実行する。各々の試験片は第1の合金又は第2の合金を代表するものである。代わりに副工程92は、以前に記載されたような試験部品の変形を実験で観測することを含んでもよい。
【0057】
副工程94:副工程92による計測から、熱機械的変形モデルのパラメータを定義する。以前に記載されたように、パラメータは仮想の熱膨張率α1及びα2並びに仮想の温度変動T(t)である。
【0058】
図3Bと関連して記載される一実施形態によれば、組み合わせはそれ自体で、例えば膨張を介して第1の構成部材11及び/又は第2の構成部材12の変形をもたらす。本方法は、組合せの際の変形を考慮することもあり得る。それはとりわけ、組み合わせが溶接である場合である。変形モデルmod
aux、いわゆる補助変形モデルにより、組合せの際の変形をモデル化することができる。
【0059】
その場合、工程110は同様に、第1の構成部材11及び第2の構成部材12の組合せの際の変形を推定することを含む。工程120の際、
-参照形10refから、変形モデルmodにより、焼き戻しに起因する変形を考慮して組合せ部品10aの形、いわゆる中間形10intを定義し、
-中間形10intから、中間形10intから、溶接に関する補助変形モデルmodauxを考慮して、第1の構成部材の初期形11iと第2の構成部材の初期形12iとを定義する。
【0060】
この場合、工程110は、溶接時に変形される部品のモデル化を求める必要がある。そのようなモデル化は、工程80の対象である補助変形モデルmodauxを事前に設けることを想定している。補助変形モデルの設定は以下の2つの副工程を含む。
【0061】
副工程82:作製されるべき部品10を代表する試験部品に溶接を実行し、実験的な変形を得る。
【0062】
副工程84:実験的な変形から、補助変形モデルのパラメータを定義する。後に記載されるように、パラメータは補助的な仮想の熱膨張率α’1及びα’2並びに補助的な仮想の温度変動T’(t)である。
【0063】
補助変形モデルmod
auxの設定は、以下に
図4と関連付けて記載される。
【0064】
補助変形モデルmodauxは、焼き戻しに対応する変形モデルに類似している。そのモデルは、
-仮想の温度変動、いわゆる補助的な仮想の温度変動T’(t)と、
-第1の構成部材11に割り当てられる補助的な仮想の第1の熱膨張率α’1と、
-第2の構成部材12に割り当てられる補助的な仮想の第2の熱膨張率α’2と
を考慮している。
【0065】
補助モデルmodauxのパラメータ、つまり補助的な仮想の熱膨張率α’1及びα’2並びに補助的な仮想の温度変動T’(t)は、溶接操作を表す試行実験に応じて調整される。工程80に関連して示されるように、試行実験は試験部品を用いて実行される。溶接中に、試験部品を形成する構成部材は変形し、それらの変形の特徴が表れる。次に、実験で得られた変形の正しいモデル化を可能にする補助変形モデルmodauxのパラメータを決定する。
【0066】
実験にて、そのような補助変形モデルmod
auxを定義した。第1の合金、この場合は合金2050に補助的な仮想の熱膨張率α’
1=0を割り当てた。
図2Aに示される温度変動に類似する線形増加する温度変動T’(t)を定義した。横軸の座標1は溶接の終了に対応する。縦軸は、初期温度からの温度変動を摂氏度で表している。第2の合金(合金7140)の補助的な仮想の熱膨張率α’
2は、試験部品の変形のモデル化が、実験で観測される変形によく対応するように決定された。その実施例では、α’
2=0.12%/℃である。補助変形モデルmod
auxを設定する際に各々の金属にそれぞれ割り当てられる補助的な仮想の熱膨張率が、変形モデルmodを設定する際に各々の合金にそれぞれ割り当てられる仮想の熱膨張率とは異なっていることに注目する。
【0067】
図4A及び4Bでは、補助変形モデルmod
auxの第1の構成部材11及び第2の構成部材12への適用例を示した。補助変形モデルを適用する前、各々の構成部材は初期の参照形11
i、12
iに従って延びている(
図4Aを参照)。溶接後、変形部品10
dを得る(
図4Bを参照)。事前に記載された補助変形モデルによれば、13mmの高さ方向の撓みを得る。実験で計測された値は12mmに達する。それは、補助変形モデルが、部品が溶接中に被る変形を正しくシミュレートすることができることを示す。
【0068】
図5、6A及び6Bに関連して記載される実施例は、焼き戻しを表す変形モデルmodと溶接、この場合は摩擦攪拌溶接を表す補助変形モデルmod
auxの連続した適用を記載している。それらの図では初期部品10
iから、
-まず、溶接に対応する補助変形モデルmod
auxを設定した。このモデルによれば、第1の合金及び第2の合金にそれぞれ補助的な仮想の熱膨張率α’
1=0%/℃、α’
2=0.12%/℃を割り当てる。補助的な仮想の温度変動T’(t)は、
図2Aに記載されるようなものである。横座標t=1は、溶接が終了する瞬間を指し示す。
-次に、
図3A及び3Bに関連して記載される、焼き戻しに対応する変形モデルmodを設定した。このモデルによれば、第1の合金及び第2の合金にそれぞれ、仮想の熱膨張率α
1=0.05%/℃、α
2=0.0%/℃を割り当てる。仮想の温度変動T(t)は、
図2Aに記載されるようなものである。横座標t=1は、溶接が終了する瞬間を指し示す。
【0069】
図5は、2つの変形モデルを以前に記載されたような部品10に連続して適用する例を示す。濃淡表示された形は、2つの変形モデルmod及びmod
auxを連続して適用した後の変形10
dのモデル化に対応する。濃淡度は、側面軸Zに沿って計測された変形に対応する。モデルによれば、42mmの高さ方向の撓みを得る。実験で計測された値は47mmに達する。2つのモデルの組み合わせは従って、部品が溶接及び焼き戻し中にそれぞれ連続して被る変形を忠実に表しているものとみなされる。
【0070】
参照形10refを知ることで、中間形10interを得るように変形モデルmodを適用することができる。この中間形は、焼き戻し後に参照形10refを得るのを可能にする組合せ部品の形に対応する。中間形10interを知ることで、初期形10initを定義するように補助変形モデルを適用する。
【0071】
図6A及び6Bは、2つの変形モデルの連続した適用例を示す。モデルを適用する前は、部品10が初期形10
iに従って延びているので、溶接及び焼き戻し後、部品10は参照形10
refに従って現れる。
【0072】
図6Aにおいて濃淡で表示される形は、補助変形モデルmod
auxを適用した後の中間形10
intに対応する。
図6Bは、
図6Aに示された中間形10
intからの、焼き戻しの変形を表す変形モデルmodを適用した結果の形を示す。濃淡度は、Z軸に沿って計測された変形に対応する。焼き戻しにより生じた変形により、熱処理後に参照形10
refに沿って延びている部品10を得ることができる。
【0073】
図7A、7B及び7Cは、第1の構成部材11を第2の構成部材12に組み合わせることで変形が生じていない場合の本発明の適用例を示す。通常は接着による組み合わせが取り上げられる。
図7Aは、得るべき参照形10
refを示す。
図7Bは、組合せ部品10
aの形を定義するために変形モデルmodを参照形10
refに適用することにより得られる。組合せ部品は、第1の構成部材11と第2の構成部材12とを接着することにより得られ、その初期形11
i及び12
iは
図7Cに示されている。
【0074】
図8A及び8Bは、第1の構成部材11を第2の構成部材12に組み合わせることで変形が生じる場合の本発明の適用例を示す。通常は溶接が取り上げられる。
図8Aは、得るべき参照形10
refを示す。補助変形モデルmod
auxを参照形10
refに適用することにより、組合せ部品10
aの形、いわゆる中間形を定義することができる。組合せ部品の中間形から、補助変形モデルを適用することにより、第1の構成部材の初期形11
iと第2の構成部材の初期形12
iとを得ることができる。初期形11
i及び12
iは
図8Bに示されている。
【0075】
本発明は、特にかなりの長さにわたり、通常は5メートル、さらには10メートルを上回る長さにわたり延びる構造要素を形成するのに用いられる部品の作製において実施され得る。
【符号の説明】
【0076】
10 縦材
11 第1の構成部材
12 第2の構成部材
13 界面
20 試験部品
A、B 末端
t 時間
T(t) 仮想の温度変動
α1、α2 仮想の熱膨張率