(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体燃料組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/22 20060101AFI20230928BHJP
C10L 10/08 20060101ALI20230928BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C10L1/22
C10L10/08
C10L1/06
(21)【出願番号】P 2020573038
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019067585
(87)【国際公開番号】W WO2020007790
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】サウスビー,マーク・クリフト
(72)【発明者】
【氏名】ウイツ-チョイ,レナーテ
(72)【発明者】
【氏名】クラックネル,ロジャー・フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,ジョセフ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,ニール・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】コントウ,アルテミス
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-521824(JP,A)
【文献】特表2016-540849(JP,A)
【文献】特表2002-533479(JP,A)
【文献】特表2009-542884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/22
C10L 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンにおける液体燃料組成物の使用であって、
前記燃料組成物が、ガソリン燃料組成物であり、
前記内燃エンジンが、前記内燃エンジンを潤滑するための潤滑組成物を含有し、前記液体燃料組成物が、前記潤滑組成物中の煤の存在によって引き起こされるエンジンの摩耗を低減する目的で、少なくとも1つの窒素含有洗浄剤添加剤を含
み、
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、85~20000の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素ラジカルと、以下のもの:
(A1)最大6個の窒素原子を有し、そのうちの少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有する、モノ-またはポリアミノ基、
(A2)ポリオキシ-C2~C4-アルキレン基であって、少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有するモノ-もしくはポリアミノ基によって、またはカルバメート基によって末端停止されている、ポリオキシ-C2~C4-アルキレン基、
(A3)無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/もしくはイミド基を有する部分、ならびに/または
(A4)置換フェノールとアルデヒドおよびモノ-またはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られた部分、
ならびに上で定義した化合物の混合物、から選択される少なくとも1つの極性部分と、を有する化合物から選択され、
前記潤滑組成物が、少なくとも1つの亜鉛含有耐摩耗性添加剤を含む、
使用。
【請求項2】
前記極性部分が、(A3)無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/またはイミド基を有する部分から選択される、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、ポリアルケンスクシンイミドである、請求項1
または2に記載の使用。
【請求項4】
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、ポリイソブチレンスクシンイミドである、請求項1~
3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、前記燃料組成物の重量により、0.001重量%~0.1重量%のレベルで、前記燃料組成物中に存在する、請求項1~
4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記内燃エンジンが、直噴ガソリンエンジンである、請求項1~
5のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン摩耗を低減するための、具体的には、潤滑エンジンオイル組成物中の煤、特に亜鉛含有耐摩耗性化合物を含む潤滑エンジンオイル組成物中の煤の存在によって引き起こされるエンジン摩耗を低減するための、内燃エンジンにおける液体燃料組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスおよび燃料効率に関してますます厳しくなる自動車規制により、エンジン製造業者および潤滑剤配合業者の双方に、燃費を改善するための効果的な解決策を提供することが次第に求められている。
【0003】
高性能ベースストックおよび新規添加剤を使用して潤滑剤を最適化することは、増大する課題に対する柔軟な解決策を意味している。
【0004】
有機モリブデンおよび亜鉛含有耐摩耗性化合物などの耐摩耗性添加剤は、燃料消費を減らすために低粘度の配合物を所望することから生じる問題を緩和するために重要であり、かかる様々な添加剤は、当技術分野ですでに知られている。
【0005】
潤滑組成物における使用がよく知られている一般的な耐摩耗性添加剤は、ジチオリン酸亜鉛、例えば、ジアルキル-、ジアリール-、またはアルキルアリール-ジチオリン酸亜鉛などである。ジチオリン酸亜鉛は、一般式IIによって便宜的に表すことができ、
【0006】
【0007】
式中、R2~R5は、同じでも異なっていてもよく、各々1~20個の炭素原子、好ましくは3~12個の炭素原子を含有する第一級アルキル基、3~20個の炭素原子、好ましくは3~12個の炭素原子を含有する第二級アルキル基、アリール基またはアルキル基で置換されたアリール基であり、当該アルキル置換基は、1~20個の炭素原子、好ましくは3~18個の炭素原子を含有する。
【0008】
市販されている好適なジチオリン酸亜鉛の例としては、例えば、商品名「Lz 1097」および「Lz 1395」でLubrizol Corporationから入手可能なジチオリン酸亜鉛、例えば、商品名「OLOA 267」および「OLOA 269R」でChevron Oroniteから入手可能なジチオリン酸亜鉛、ならびに、例えば、商品名「HITEC 7197」でAfton Chemicalから入手可能なジチオリン酸亜鉛、商品名Infineum C9417でInfineumから入手可能なジチオリン酸亜鉛、商品名「Lz 677A」、「Lz 1095」、および「Lz 1371」でLubrizol Corporationから入手可能なジチオリン酸亜鉛、例えば、商品名「OLOA 262」でChevron Oroniteから入手可能なジチオリン酸亜鉛、ならびに、例えば、商品名「HITEC 7169」でAfton Chemicalから入手可能なジチオリン酸亜鉛、例えば、商品名「Lz 1370」および「Lz 1373」でLubrizol Corporationから入手可能なジチオリン酸亜鉛、ならびに、例えば、商品名「OLOA 260」でChevron Oroniteから入手可能なジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0009】
これらの亜鉛系耐摩耗性添加剤は、単独で使用することができるか、または有機モリブデン耐摩耗性化合物などの他の耐摩耗性添加剤と組み合わせて使用することができる。
【0010】
ジチオリン酸亜鉛化合物は、潤滑組成物において摩耗を低減するのに有用であるが、煤の存在下で、エンジンの金属表面上のジチオリン酸亜鉛層が、煤によって除去され、それにより、具体的に特定された摩耗メカニズムを介して摩耗を増加させ得ることが最近分かった。腐食/摩損の摩耗メカニズムは、2010年に特定され、公開された、Olomolehin,Y.,Kapadia,R.G.,Spikes,H.A.,“Antagonistic interaction of antiwear additives and carbon black.”Trib Letters 37,49-58,(2009)を参照されたい。より近時の論文では、このメカニズムが最近再確認されていて、Salehi,F.Motamen,D.N.Khaemba,A.Morina,and A.Neville,“Corrosive-Abrasive Wear Induced by Soot in Boundary Lubrication Regime.”Trib Letters 63,1-11,(2016)を参照されたい。
【0011】
同様の問題は、内燃エンジン内の接触面に使用され、かつ潤滑剤中の煤の存在によって除去される得る合成ダイヤモンド状コーティング(DLC)の状況でも存在し得る。
【0012】
ジチオリン酸亜鉛化合物の文脈で上記の2つのTrib Letters論文で特定された問題に加えて、潤滑組成物中に煤が存在すると、金属系耐摩耗性化合物が存在していない場合においても、エンジン摩耗に関する問題が生じる場合がある。
【0013】
例えば、煤分子が大量の潤滑剤内に分散されるように分散剤として作用し得る潤滑配合物内に分子を含めることによって、潤滑配合物中の煤の問題に対処する試みがなされている。しかしながら、潤滑剤中に存在する分散剤の量が常に十分であるとは限らない場合がある。
【0014】
さらに、ガソリン潤滑剤は、有意な量の燃焼煤を処理できるように常に配合されているとは限らない。歴史的に、火花点火燃焼はあまり煤を生成しないが、直接噴射燃焼の導入は、燃焼の濃厚な領域をもたらし、その結果、煤が発生した。
【0015】
さらに、潤滑剤配合物は、新鮮なときは燃焼煤粒子を十分に分散させることができ得るが、それを行う能力は、潤滑剤が劣化し、煤濃度が増加するにつれて低下する。潤滑剤組成物は、典型的には、「オイル排出間隔(oil drain interval)」にわたって劣化する。この劣化の1つの測定基準は、アミン基の濃度を部分的に反映する潤滑剤の総塩基数(TBN)の減少である。
【0016】
したがって、特に、潤滑組成物が亜鉛系耐摩耗性添加剤を含有するときには、煤の存在下での潤滑組成物のエンジン摩耗を低減する方法を見出すことが望ましいであろう。
【0017】
驚くべきことに、内燃エンジンに燃料を供給するために使用される液体燃料組成物に特定の窒素含有洗浄剤を使用すると、潤滑エンジンオイル組成物において、特に、亜鉛ジチオホスフェート(ZTP)化合物および亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(「ZDDP」または「ZDTP」として知られる)化合物などの亜鉛系耐摩耗性添加剤を含む潤滑エンジンオイル組成物において、煤の存在によって引き起こされるエンジン摩耗の減少が観察されることが見出された。
【0018】
欧州特許出願第17168538.1号は、ジチオリン酸亜鉛化合物および煤の存在下での摩耗を低減する目的で、潤滑組成物における窒素含有無灰分散剤の使用に関する。その中の一実施形態では、窒素含有無灰分散剤は、少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミドを含む。しかしながら、潤滑エンジンオイル組成物において、特に、ジチオリン酸亜鉛(ZTP)およびジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDTP)化合物などの亜鉛系耐摩耗性化合物を含有する潤滑エンジンオイル組成物において、煤の存在によって引き起こされるエンジン摩耗を低減させる燃料組成物において窒素含有洗浄剤を使用することついては、本文書には開示がない。
【発明の概要】
【0019】
本発明によれば、内燃エンジンにおける液体燃料組成物の使用が提供され、その内燃エンジンは、当該内燃エンジンを潤滑するための潤滑組成物を含有し、その液体燃料組成物は、当該潤滑組成物中の煤の存在によって引き起こされるエンジン摩耗を低減する目的で、少なくとも1つの窒素含有洗浄剤添加剤を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される「煤」という用語は、主に非晶質炭素からなる濃黒色の粉状または薄片状の物質を意味する。気相煤は多環芳香族炭化水素(PAH)を含有する。煤は、炭化水素系燃料などの有機物の不完全燃焼によって生成される。それは、直径が6~30nmの凝集したナノ粒子からなる。煤粒子は、金属酸化物および鉱物と混合することができ、硫酸でコーティングすることができる。新鮮な潤滑剤は、典型的には、煤を含んでいないが、燃料の燃焼中に煤で汚染される可能性がある。内燃エンジンの文脈では、煤は、燃焼室から、吹き抜けを介して潤滑剤中に移動し、潤滑剤中に蓄積する可能性がある。このメカニズムについては、以下の論文で説明されている:La Rocca,A.,Di Liberto,G.,Shayler,P.J.and Fay,M.W.,2013;‘The nanostructure of soot-in-oil particles and agglomerates from an automotive diesel engine’;Tribology International.61(May),80-87。
【0021】
本発明の文脈において、潤滑組成物中に存在する蓄積された煤の量は、潤滑組成物の重量により、典型的には、0.1重量%~10重量%のレベルである。一実施形態では、煤のレベルは、潤滑組成物の重量により、2~7重量%である。別の実施形態では、煤のレベルは、潤滑組成物の重量により、3.5~7重量%である。別の実施形態では、煤のレベルは、潤滑組成物の重量により、5~6重量%である。
【0022】
内燃エンジンの潤滑に好適である限り、本明細書で使用することができる潤滑組成物の種類に制限はない。概して、本明細書で使用する典型的な潤滑組成物は、基油、耐摩耗性添加剤、例えば、亜鉛含有耐摩耗性添加剤および1つ以上の追加の添加剤成分を含むことになる。
【0023】
上記のように、潤滑組成物における使用がよく知られている好適な耐摩耗性添加剤は、ジチオリン酸亜鉛、例えば、ジアルキル-、ジアリール-、またはアルキルアリール-ジチオリン酸亜鉛などである。
【0024】
本発明の液体燃料組成物は、窒素含有洗浄剤添加剤を含む。
【0025】
以下で説明するように、窒素含有洗浄剤添加剤は、燃料燃焼プロセス中に、燃料組成物から潤滑剤組成物に移動し得る。窒素含有洗浄剤添加剤が燃料組成物から潤滑組成物に移動すると、通常、それは窒素含有分散剤と称される。
【0026】
本明細書の液体燃料組成物に使用するのに好ましい窒素含有洗浄剤添加剤は、典型的には、85~20000の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素ラジカルと、以下から選択される少なくとも1つの極性部分とを有する:
(A1)最大6個の窒素原子を有し、そのうちの少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有する、モノ-またはポリアミノ基、
(A2)少なくとも1つの窒素原子が塩基性を有するモノ-もしくはポリアミノ基によって、またはカルバメート基によって末端停止されているポリオキシ-C2~C4-アルキレン基、
(A3)無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/もしくはイミド基を有する部分、ならびに/または
(A4)置換フェノールとアルデヒドおよびモノ-またはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られた部分。
【0027】
本明細書で使用する窒素含有洗浄剤添加剤は、上記(A1)~(A4)によって定義される化合物の混合物から選択することもできる。
【0028】
本明細書の好ましい実施形態では、極性部分は、(A3)無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/またはイミド基を有する部分から選択される。
【0029】
ベース流体における十分な溶解性を保証する、上記の洗浄剤添加剤中の疎水性炭化水素ラジカルは、85~20,000、特に113~10,000、特に300~5000の数平均分子量(Mn)を有する。典型的な疎水性炭化水素ラジカルとしては、特に、極性部分(A1)、(A3)、および(A4)と併せて、ポリプロペニル、ポリブテニル、およびポリイソブテニルラジカル、ならびにそれらの混合物などのポリアルケン(ポリオレフィン)が挙げられ、それぞれ、300~5000、好ましくは500~2500、より好ましくは700~2300、特に700~1000のMnを有する。
【0030】
窒素含有洗浄剤添加剤の上記の群の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
モノ-またはポリアミノ基(A1)を含む添加剤は、好ましくは、ポリプロペンまたは従来の(すなわち、主に内部二重結合を有する)ポリブテンまたは300~5000のMnを有するポリイソブテンに基づくポリアルケンモノ-またはポリアルケンポリアミンである。主に内部二重結合(通常はベータおよびガンマ位置)を有するポリブテンまたはポリイソブテンを、添加剤の調製における出発物質として使用するとき、可能な調製経路は、塩素化に続くアミノ化によって、または空気もしくはオゾンによる二重結合の酸化によって、カルボニルまたはカルボキシル化合物を得て、その後の還元(水素化)条件下でのアミノ化である。アミノ化のためにここで使用されるアミンは、例えば、アンモニア、モノアミン、またはポリアミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、またはテトラエチレンペンタミンであり得る。ポリプロペンに基づく対応する添加剤は、特に、WO-A-94/24231に記載されている。
【0031】
モノアミノ基(A1)を含むさらに好ましい添加剤は、特にWO-A-97/03946に記載されているように、5~100の平均重合度を有するポリイソブテンと、窒素酸化物または窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物の水素化生成物である。
【0032】
モノアミノ基(A1)を含むさらなる好ましい添加剤は、特に、DE-A-196 20 262に記載されているように、アミンとの反応およびその後の脱水およびアミノアルコールの還元によって、ポリイソブテンエポキシドから得ることができる化合物である。
【0033】
ポリオキシ-C2~C4-アルキレン部分(A2)を含む添加剤は、好ましくは、C2~C60-アルカノール、C6~C30-アルカンジオール、モノ-もしくはジ-C2~C30-アルキルアミン、C1~C30-アルキルシクロヘキサノール、またはC1~C30-アルキルフェノールと、ヒドロキシル基またはアミノ基1つあたり1~30molのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応によって、そしてその後の、アンモニア、モノアミン、またはポリアミンとの還元的アミノ化によって得ることができるポリエーテルアミンである。本明細書では、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドの混合物を含有するポリエーテルアミンも好適である。かかる生成物は、特にEP-A-310 875、EP-A-356 725、EP-A-700 985、およびUS-A-4 877 416に記載されている。これらのうちの典型的な例は、アンモニアと、以下の化合物:トリデカノールブトキシレート、イソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート、およびポリイソブテノールブトキシレート、ならびにプロポキシレートのうちの1つとの反応生成物である。
【0034】
無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/またはイミド基(A3)を有する部分を含む添加剤は、好ましくは、300~5000のMnを有する従来のまたは反応性の高いポリイソブテンを、熱経路によってまたは塩素化ポリイソブテンを介して、無水マレイン酸と反応させることによって得ることができるポリイソブテニルコハク酸無水物の対応する誘導体である。特に興味深いのは、脂肪族ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、またはテトラエチレンペンタミンとの誘導体である。かかる添加剤は、特にUS-A-4 849 572に記載されている。
【0035】
置換フェノールとアルデヒドおよびモノ-またはポリアミン(A4)とのマンニッヒ反応によって得られた部分を含む添加剤は、好ましくは、ポリイソブテン置換フェノールと、ホルムアルデヒドおよびモノ-またはポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、またはジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換フェノールは、300~5000のMnを有する従来のまたは反応性の高いポリイソブテンから由来し得る。かかる「ポリイソブテン-マンニッヒ塩基」は、特に、EP-A-831 141に記載されている。
【0036】
好ましくは、窒素含有洗浄剤添加剤は、ポリアルケンモノアミン、ポリエーテルアミン、ポリアルケンマンニッヒアミン、およびポリアルケンスクシンイミド、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0037】
本明細書の好ましい実施形態では、窒素含有洗浄剤添加剤は、ポリアルケンスクシンイミド、好ましくはポリイソブテニル(PIB)スクシンイミドである。PIBスクシンイミド化合物は、燃料および潤滑剤組成物の分野では分散剤添加剤として知られており、したがって、本明細書ではこれ以上説明しない。好適なPIBスクシンイミドは、例えば、商品名Infineum C9280でInfineumから、および商品名OLOA 11000でChevron Oroniteから入手することができる。
【0038】
窒素含有洗浄剤添加剤は、液体燃料組成物(活性物質ベースで、すなわち、溶媒/担体流体材料などを含まない)中に、燃料組成物の重量により、0.001重量%~0.1重量%、好ましくは0.0015重量%~0.095重量%、より好ましくは0.0017重量%~0.07重量%、特に0.0019重量%~0.04重量%のレベルで存在する。液体燃料組成物が、ガソリン燃料組成物であるとき、窒素含有堆積物制御添加剤は、液体燃料組成物の重量により、好ましくは0.0019重量%~0.04重量%、より好ましくは0.002重量%~0.035重量%のレベルで存在する(活性物質ベースで、すなわち、担体/溶媒流体材料などを含まない)。液体燃料組成物がディーゼル燃料組成物であるとき、窒素含有洗浄剤添加剤は、好ましくは、ガソリン燃料組成物について上で与えられたものと同じレベルで存在する。
【0039】
窒素含有洗浄剤添加剤は、煤の存在下で潤滑組成物によって提示されるエンジン摩耗を低減するために、本明細書では液体燃料組成物で使用され、好ましくは、その潤滑組成物は、亜鉛含有耐摩耗性添加剤を含む。したがって、本明細書で使用される「エンジン摩耗を低減する」という用語は、エンジン摩耗のレベルを、潤滑組成物によって、好ましくは、ジチオリン酸亜鉛などの亜鉛含有耐摩耗性添加剤を含む潤滑組成物によって提示されるレベルよりも低いレベルに低減することを意味しており、煤で汚染されてはいるが、内燃エンジンに燃料を供給するために使用される液体燃料組成物は、本明細書に記載の窒素含有洗浄剤添加剤を含有していない。
【0040】
本明細書の好ましい実施形態では、窒素含有洗浄剤添加剤は、煤の存在下で、潤滑組成物、好ましくはジチオリン酸亜鉛含有潤滑組成物によって提示される摩耗を、同じ潤滑組成物の摩耗と比較して、少なくとも5%だけ、より好ましくは少なくとも10%だけ、さらにより好ましくは少なくとも50%だけ、特に少なくとも80%だけ、さらにより特に少なくとも90%だけ低減するために使用されるが、内燃エンジンに燃料を供給するために使用される液体燃料組成物は、本明細書に記載の窒素含有洗浄剤添加剤を含有していない。
【0041】
理論によって制限されることを望まないが、燃料組成物内で本明細書に記載の選択された窒素含有洗浄剤添加剤(複数可)を使用すると、燃焼室内の煤濃度が低くなると考えられる。インジェクターの汚れは、エンジン、例えば、直接噴射火花点火エンジンの燃焼性能の低下につながり、その1つの徴候は、エンジンで生成される煤の量の有意かつ急速な増加である。Henkel,S.,Hardalupas,Y.,Taylor,A.,Conifer,C.et al.,“Injector Fouling and Its Impact on Engine Emissions and Spray Characteristics in Gasoline Direct Injection Engines,”SAE Int.J.Fuels Lubr.10(2):287-295,2017に記載されているように、選択された窒素含有洗浄剤添加剤(複数可)の使用は、インジェクターを清潔に保つか、または既存の堆積物をクリーンアップするのに役立つ。さらに、選択された窒素含有洗浄剤添加剤は、燃料から潤滑剤に移動する可能性があり、したがって、燃焼室に存在する煤を分散させるのに役立つ。以下のSAE論文では、ガソリン燃料から潤滑剤への燃料添加剤の移動の現象について説明している:S.Remmert,A.Felix-Moore,I.Buttery,P.Ziman and S.Smith,“Demonstration of FE benefit of friction modifier additives via fuel to lubricant transfer in Euro 5 gasoline fleet”.SAE Paper 2013-01-2611。
【0042】
本明細書の液体燃料組成物は、ベース燃料(base fuel)を含む。ベース燃料は、好ましくは、ガソリンベース燃料またはディーゼルベース燃料から選択する。ベース燃料がガソリンベース燃料である場合、本発明の液体燃料組成物はガソリン組成物である。ベース燃料がディーゼルベース燃料である場合、本発明の液体燃料組成物はディーゼル組成物である。
【0043】
窒素含有洗浄剤添加剤は、典型的には、1つ以上の他の添加剤と一緒にブレンドされて、燃料に投入される性能添加剤パッケージを生成する。次いで、性能添加剤パッケージを、1つ以上の他の添加剤成分とブレンドして、添加剤ブレンドを生成することができる。次いで、添加剤ブレンドをベース燃料に添加して、液体燃料組成物を生成することができる。
【0044】
代替的に、窒素含有洗浄剤添加剤は、ベース燃料と直接、好ましくは溶媒と一緒に、ブレンドすることができる。
【0045】
窒素含有洗浄剤添加剤に加えて、添加剤ブレンドの任意選択的であるが好ましい成分は、溶媒である。本発明で使用することができる溶媒の種類に関しては、それが添加剤ブレンドでの使用に適しているという条件で、特に制限はない。添加剤ブレンドにおいて溶媒を使用すると、安定性が向上し、粘度が低下する。
【0046】
燃料での使用に好適な任意の溶媒または溶媒の混合物が、本明細書において使用され得る。燃料に使用するのに好適な溶媒の例としては、非極性炭化水素溶媒、例えば、灯油、重質芳香族溶媒(「重質ナフサ溶媒(solvent naphtha heavy)」、「Solvesso 150」)、トルエン、キシレン、パラフィン、石油、揮発油、Shell companiesから商標「SHELLSOL」で販売されているものなどが挙げられる。好適な溶媒のさらなる例としては、極性溶媒、例えば、エステル、特にアルコール(例えば、t-ブタノール、i-ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、デカノール、イソトリデカノール、ブチルグリコール、およびアルコール混合物、例えば、Shell companiesから商標「LINEVOL」で販売されているもの、特に、C7-9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、または市販されているC12~14アルコール混合物)が挙げられる。
【0047】
溶媒は、好ましくは、添加剤ブレンド(性能添加剤パッケージに存在する溶媒を含まない)の重量により、5重量%~50重量%のレベルで、より好ましくは5重量%~20重量%のレベルで存在する。
【0048】
添加剤ブレンド中の性能パッケージ(複数可)の量は、好ましくは、添加剤ブレンドの重量により、0.1~99.8重量%の範囲、より好ましくは5~50重量%の範囲である。
【0049】
好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する性能添加剤パッケージの量は、液体燃料組成物の総重量に基づいて、15ppmw(重量百万分率)~10重量%の範囲である。より好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する性能添加剤パッケージの量は、以下に列挙したパラメータ(i)~(xv)のうちの1つ以上とさらに一致する:
(i)少なくとも100ppmw
(ii)少なくとも200ppmw
(iii)少なくとも300ppmw
(iv)少なくとも400ppmw
(v)少なくとも500ppmw
(vi)少なくとも600ppmw
(vii)少なくとも700ppmw
(viii)少なくとも800ppmw
(ix)少なくとも900ppmw
(x)少なくとも1000ppmw
(xi)少なくとも2500ppmw
(xii)最大5000ppmw
(xiii)最大10000ppmw
(xiv)最大2重量%
(xv)最大5重量%。
【0050】
組成物の残りは典型的には、例えば、以下により詳細に記載されるように、任意選択的に1つ以上の燃料添加剤と一緒に、1つ以上の自動車用ベース燃料からなる。
【0051】
従来、ベース燃料は、液体燃料組成物中に過半量、例えば、液体燃料組成物の50重量%超えで存在し、最大90重量%、または95重量%、または99重量%、または99.9重量%、または99.99重量%、または99.999重量%の量で存在し得る。好適には、液体燃料組成物は、1つ以上の窒素含有洗浄剤添加剤、および任意選択的に、以下に指定されるような1つ以上の従来の燃料添加剤と組み合わせたベース燃料を含有するか、または本質的にそれらからなる。
【0052】
本発明に従って調製される液体燃料組成物中に存在する1つ以上の窒素含有洗浄剤添加剤、ベース燃料成分、および任意の他の成分または添加剤の相対的割合は、密度、排気性能、および粘度などの他の所望の特性にも左右され得る。
【0053】
本発明の液体燃料組成物が、ガソリンベース燃料を含有している場合、この液体燃料組成物は、ガソリン燃料組成物である。ガソリンは、自動車エンジン、ならびに、例えば、オフロードおよび航空機エンジンなどの他のタイプのエンジンを含む、当技術分野で知られている火花点火(ペトロール)型の内燃エンジンでの使用に好適な任意のガソリンであり得る。本発明の液体燃料組成物にベース燃料として使用されるガソリンはまた、便宜上「ベースガソリン」とも称され得る。
【0054】
通常、ガソリンは、25~230℃(EN-ISO 3405)の範囲で沸騰する炭化水素の混合物を含み、通常、最適な範囲および蒸留曲線は、その年の気候および季節によって変化する。ガソリン中の炭化水素は、当技術分野で知られている任意の手段によって得ることができ、便宜的には、炭化水素は、直留ガソリン、合成的に生成された芳香族炭化水素混合物、熱的分解もしくは接触分解炭化水素、水素化分解石油留分、接触改質炭化水素、またはこれらの混合物から任意の既知の様式で得ることができる。
【0055】
ガソリンの特定の蒸留曲線、炭化水素組成、リサーチオクタン価(RON)、およびモータオクタン価(MON)は、重要ではない。
【0056】
便宜的には、ガソリンのリサーチオクタン価(RON)は、少なくとも80、例えば、80~110の範囲であってもよく、好ましくはガソリンのRONは、少なくとも90、例えば、90~110の範囲であり、より好ましくはガソリンのRONは、少なくとも91、例えば、91~105の範囲であり、さらにより好ましくはガソリンのRONは、少なくとも92、例えば、92~103の範囲であり、さらにより好ましくはガソリンのRONは、少なくとも93、例えば、93~102の範囲であり、最も好ましくはガソリンのRONは、少なくとも94、例えば、94~100の範囲である(EN 25164);ガソリンのモータオクタン価(MON)は、便宜的には、少なくとも70、例えば、70~110の範囲であってもよく、好ましくはガソリンのMONは、少なくとも75、例えば、75~105の範囲であり、より好ましくはガソリンのMONは、少なくとも80、例えば、80~100の範囲であり、最も好ましくはガソリンのMONは、少なくとも82、例えば、82~95の範囲である(EN 25163)。
【0057】
通常、ガソリンには、以下の群のうちの1種類以上から選択される成分が含まれる:飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、および酸素化炭化水素。便宜的には、ガソリンには、飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、および任意選択的に酸素化炭化水素の混合物が含まれてもよい。
【0058】
典型的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0~40体積パーセントの範囲であり(ASTM D1319)、好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0~30体積パーセントの範囲であり、より好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて0~20体積パーセントの範囲である。
【0059】
典型的には、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて25~50体積パーセントの範囲であり(ASTM D1319)、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンに基づいて30~35体積パーセントの範囲である。
【0060】
ガソリンのベンゼン含有量は、ガソリンに基づいて、最大で1体積パーセント、好ましくは0.5パーセント以下である。
【0061】
ガソリンは、例えば、最大で1000ppmw(重量百万分率)、好ましくは500ppmw以下、より好ましくは100以下、さらにより好ましくは50以下、および最も好ましくはさらに10ppmw以下の低いまたは非常に低い硫黄含有量を有することが好ましい。
【0062】
また、ガソリンは、好ましくは最大で0.005g/lなどの低い総鉛含有量を有し、最も好ましくは鉛を含んでいない、鉛化合物がガソリンに添加されていない(すなわち、無鉛)。
【0063】
ガソリンが酸素化炭化水素を含むとき、非酸素化炭化水素の少なくとも一部が、酸素化炭化水素に置き換えられる。ガソリンの酸素含有量は、ガソリンに基づいて最大35重量パーセント(EN1601)(例えば、エタノール自体)であり得る。例えば、ガソリンの酸素含有量は、最大25重量パーセント、好ましくは最大10重量パーセントであってもよい。便宜的には、酸素化物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、および1.2重量パーセントのうちのいずれか1つから選択される最小濃度、ならびに5、4.5、4.0、3.5、3.0、および2.7重量パーセントのうちのいずれか1つから選択される最大濃度を有する。
【0064】
ガソリン中に組み込むことができる酸素化炭化水素の例には、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、およびそれらの誘導体、ならびに酸素含有複素環式化合物が含まれる。好ましくは、ガソリン中に組み込むことができる酸素化炭化水素は、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、イソ-ブタノール、および2-ブタノールなど)、エーテル(好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテルおよびエチルtert-ブチルエーテル)、ならびにエステル(好ましくは、1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエステル)から選択され、特に好ましい酸素化炭化水素は、エタノールである。
【0065】
酸素化炭化水素がガソリン中に存在するとき、ガソリン中の酸素化炭化水素の量は、広範囲にわたって変化してもよい。例えば、主要な割合の酸素化炭化水素を含むガソリン、例えば、エタノール自体およびE85、ならびにわずかな割合の酸素化炭化水素を含むガソリン、例えば、E10およびE5は、現在、ブラジルおよび米国などの国々で市販されている。したがって、ガソリンは、最大100体積パーセントの酸素化炭化水素を含有していてもよい。好ましくは、ガソリン中に存在する酸素化炭化水素の量は、ガソリンの所望の最終配合に応じて、以下の量のうちの1つから選択される:最大85体積%、最大70体積%、最大65体積%、最大30体積%、最大20体積%、最大15体積%、および最大10体積%。便宜的には、ガソリンは、少なくとも0.5、1.0、または2.0体積パーセントの酸素化炭化水素を含有していてもよい。
【0066】
適切なガソリンの例には、0~20体積パーセントのオレフィン系炭化水素含有量(ASTM D1319)、0~5重量パーセントの酸素含有量(EN 1601)、0~50体積パーセントの芳香族炭化水素含有量(ASTM D1319)、および最大で1体積パーセントのベンゼン含有量を有するガソリンが含まれる。
【0067】
また、本明細書での使用に適しているものは、生物源に由来し得るガソリンブレンド成分である。そのようなガソリンブレンド成分の例は、WO2009/077606、WO2010/028206、WO2010/000761、欧州特許出願第09160983.4号、同第09176879.6号、同第09180904.6号、および米国特許出願第61/312307号に見出すことができる。
【0068】
本発明の液体燃料組成物が、ディーゼルベース燃料を含有している場合、その液体燃料組成物は、ディーゼル燃料組成物である。
【0069】
本発明においてベース燃料として使用されるディーゼル燃料としては、自動車の圧縮点火エンジンで、ならびに、例えば、オフロード、船舶、鉄道、および固定エンジンなどの他のタイプのエンジンで使用するためのディーゼル燃料が挙げられる。本発明の液体燃料組成物においてベース燃料として使用されるディーゼル燃料は、便宜上「ディーゼルベース燃料」とも称し得る。
【0070】
ディーゼルベース燃料は、それ自体が2つ以上の異なるディーゼル燃料成分の混合物を含んでいてもよく、かつ/または以下に記載されるように添加されてもよい。
【0071】
かかるディーゼル燃料は、典型的には、液体炭化水素中間蒸留軽油(複数可)、例えば、石油由来の軽油を含み得る1つ以上のベース燃料を含有する。かかる燃料は、典型的には、グレードおよび用途に応じて、150~400℃の通常のディーゼル範囲内の沸点を有する。それらは、典型的には、15℃で、750~1000kg/m3、好ましくは780~860kg/m3の密度(例えば、ASTM D4502またはIP 365)、および35~120、より好ましくは40~85のセタン価(ASTM D613)を有する。それらは、典型的には、150~230℃の範囲の初期沸点、および290~400℃の範囲の最終沸点を有する。40℃でのそれらの動粘度(ASTM D445)は、好適には、1.2~4.5mm2/秒であり得る。
【0072】
石油由来の軽油の例は、スウェーデンのクラス1ベース燃料であり、それは、スウェーデンの国家規格EC1で規定されているように、15Cで800~820kg/m3の密度(SS-EN ISO 3675、SS-EN ISO 12185)、320℃以下のT95(SS-EN ISO 3405)、および40℃で1.4~4.0mm2/秒の動粘度(SS-EN ISO 3104)を有する。
【0073】
任意選択的に、バイオ燃料またはフィッシャー・トロプシュ由来燃料などの非鉱油系燃料も、ディーゼル燃料中に形成され得るか、または存在し得る。かかるフィッシャー・トロプシュ燃料は、例えば、天然ガス、天然ガス液、石油またはシェールオイル、石油またはシェールオイルの処理残留物、石炭またはバイオマスに由来し得る。
【0074】
ディーゼル燃料に使用されるフィッシャー・トロプシュ由来燃料の量は、総ディーゼル燃料の0%~100%v、好ましくは5%~100%v、より好ましくは5%~75%vであり得る。かかるディーゼル燃料は、10%v以上、より好ましくは20%v以上、さらにより好ましくは30%v以上のフィッシャー・トロプシュ由来燃料を含有することが望ましい場合がある。かかるディーゼル燃料は、フィッシャー・トロプシュ由来燃料を30~75%v、特に30~70%v含有することが特に好ましい。ディーゼル燃料の残りは、1つ以上の他のディーゼル燃料成分で構成される。
【0075】
かかるフィッシャー・トロプシュ由来燃料成分は、(任意選択的に水素化分解された)フィッシャー・トロプシュ合成生成物から単離され得る中間蒸留燃料範囲の任意の留分である。典型的な留分は、ナフサ、灯油、または軽油範囲内で沸騰する。好ましくは、灯油または軽油範囲内で沸騰するフィッシャー・トロプシュ生成物が使用され、これは、これらの生成物が、例えば、家庭環境での取り扱いがより容易であるためである。かかる生成物は、好適には、160~400℃、好ましくは370℃まで沸騰する90重量%を超える留分を含む。フィッシャー・トロプシュ由来の灯油および軽油の例は、EP-A-0583836、WO-A-97/14768、WO-A-97/14769、WO-A-00/11116、WO-A-00/11117、WO-A-01/83406、WO-A-01/83648、WO-A-01/83647、WO-A-01/83641、WO-A-00/20535、WO-A-00/20534、EP-A-1101813、US-A-5766274、US-A-5378348、US-A-5888376、およびUS-A-6204426に記載されている。
【0076】
フィッシャー・トロプシュ生成物は適切には、80重量%を超える、より適切には95重量%を超えるイソパラフィンおよびノルマルパラフィンと、1重量%未満の芳香族とを含有し、残りは、ナフテン系化合物である。硫黄および窒素の含有量は、非常に低く、通常は、かかる化合物の検出限界を下回る。このため、フィッシャー・トロプシュ生成物を含有するディーゼル燃料組成物の硫黄含有量は、非常に低い場合がある。
【0077】
ディーゼル燃料組成物は、好ましくは5000ppmw以下、より好ましくは500ppmw以下、または350ppmw以下、または150ppmw以下、または100ppmw以下、または70ppmw以下、または50ppmw以下、または30ppmw以下、または20ppmw以下、または最も好ましくは10ppmw以下の硫黄を含有する。
【0078】
本明細書で使用する他のディーゼル燃料成分としては、生物学的材料に由来する、いわゆる「バイオ燃料」が挙げられる。例としては、脂肪酸アルキルエステル(FAAE)が挙げられる。かかる成分の例は、WO2008/135602に見出すことができる。バイオ燃料には、水素化処理(HVO)された植物油も含まれ得る。
【0079】
ディーゼルベース燃料自体が、添加(添加剤を含む)または無添加(添加剤を含まない)であり得る。それは、例えば、精製所で添加される場合、例えば、帯電防止剤、パイプライン抗力低減剤(pipeline drag reducers)、流動性向上剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑性添加剤、酸化防止剤、およびワックス沈降防止剤から選択される少量の1つ以上の添加剤を含有する。
【0080】
本発明には重要ではないが、本発明のベース燃料または液体燃料組成物は、上記の必須の1つ以上の窒素含有洗浄剤添加剤に加えて、1つ以上の任意選択的な燃料添加剤を、性能添加剤パッケージの一部として、または別様便宜的に含み得る。本発明のベース燃料または液体燃料組成物に含まれ得る任意選択的な燃料添加剤(複数可)の濃度および性質は重要ではない。
【0081】
ガソリン添加剤
上記のベースガソリン、または性能添加剤パッケージ、またはガソリン組成物、または添加剤ブレンド中に含まれ得る好適な種類の燃料添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤(上記の窒素含有洗浄剤添加剤以外)、曇り除去剤(dehazer)、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、表面改質剤または摩擦調整剤、バルブシート後退保護化合物、染料、溶媒、分散媒、希釈剤、およびマーカーが挙げられる。好適なそのような添加剤の例は、米国特許第5,855,629号に全般的に記載されている。
【0082】
便宜的には、燃料添加剤は、1つ以上の溶媒とブレンドされて、添加剤濃縮物を形成することができ、次いで、その添加剤濃縮物は、本明細書に記載のベースガソリンまたはガソリン組成物と混和することができる。
【0083】
本明細書のベースガソリンまたはガソリン組成物に存在するあらゆる任意選択的な添加剤の(活性物質)濃度は、好ましくは最大1重量パーセント、より好ましくは5~2000ppmwの範囲であり、有利には300~1500ppmwの範囲であり、例えば、300~1000ppmwの範囲である。
【0084】
上記のように、ガソリン組成物は、合成またはミネラルキャリアオイルおよび/もしくは溶媒も含み得る。
【0085】
好適なミネラルキャリアオイルの例は、例えば、SN 500~2000クラスの粘度を有するブライトストックまたは基油などの原油処理で得られる留分であり、また、芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素、およびアルコキシアルカノールである。また、ミネラルキャリアオイルとして有用なのは、鉱油の精製で得られ、かつ「水素化分解オイル」として知られる留分である(約360~500℃の沸点範囲を有する真空留出物カットであり、高圧下で接触水素化され、異性化され、さらに脱パラフィンされた天然鉱油から得ることができる)。
【0086】
好適な合成キャリアオイルの例は、ポリオレフィン(ポリ-アルファ-オレフィンまたはポリ(内部オレフィン))、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール開始ポリエーテル、アルキルフェノール開始ポリエーテルアミン、および長鎖アルカノールのカルボン酸エステルである。
【0087】
好適なポリオレフィンの例は、オレフィンポリマー、特にポリブテンまたはポリイソブテン(水素化または非水素化)に基づくオレフィンポリマーである。
【0088】
好適なポリエーテルまたはポリエーテルアミンの例は、好ましくは、C2~C60-アルカノール、C6~C30-アルカンジオール、モノ-もしくはジ-C2~C30-アルキルアミン、C1~C30-アルキルシクロヘキサノール、またはC1~C30-アルキルフェノールと、ヒドロキシル基またはアミノ基1つあたり1~30molのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応によって、そして、ポリエーテルアミンの場合には、その後のアンモニア、モノアミン、またはポリアミンとの還元的アミノ化によって得ることができるポリオキシ-C2~C4-アルキレン部分を含む化合物である。かかる生成物は、特に、EP-A-310 875、EP-A-356 725、EP-A-700 985、およびUS-A-4,877,416に記載されている。例えば、使用されるポリエーテルアミンは、ポリ-C2~C6-アルキレンオキシドアミンまたはその官能性誘導体であり得る。その典型的な例は、トリデカノールブトキシレートまたはイソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート、ならびにまたポリイソブテノールブトキシレートおよびプロポキシレート、ならびにまたアンモニアとの対応する反応生成物である。
【0089】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特にDE-A-38 38 918に記載されているように、特にモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸と長鎖アルカノールまたはポリオールとのエステルである。使用されるモノ-、ジ-、またはトリカルボン酸は、脂肪族酸または芳香族酸であってよく、好適なエステルアルコールまたはポリオールは、特に、例えば、6~24個の炭素原子を有する長鎖の代表物である。エステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、およびイソトリデカノールのアジペート、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、およびトリメリテート、例えば、ジ-(n-またはイソトリデシル)フタレートである。
【0090】
さらに好適なキャリアオイル系は、例えば、DE-A-38 26 608、DE-A-41 42 241、DE-A-43 09 074、EP-A-0 452 328、およびEP-A-0 548 617に記載されており、それらは参照として本明細書に組み込まれる。
【0091】
特に好適な合成キャリアオイルの例は、例えば、プロピレンオキシド、n-ブチレンオキシド、およびイソブチレンオキシド単位、またはそれらの混合物から選択される、約5~35、例えば、約5~30、C3~C6-アルキレンオキシド単位を有するアルコール開始ポリエーテルである。好適な開始アルコールの非限定的な例は、長鎖アルキルラジカルが特定の直鎖状もしくは分岐状C6~C18-アルキルラジカルである、長鎖アルキルによって置換された長鎖アルカノールまたはフェノールである。好ましい例としては、トリデカノールおよびノニルフェノールが挙げられる。
【0092】
さらに好適な合成キャリアオイルは、DE-A-10 102 913.6に記載されているように、アルコキシル化アルキルフェノールである。
【0093】
ミネラルキャリアオイルの混合物、合成キャリアオイルの混合物、およびミネラルと合成キャリアオイルとの混合物も使用することができる
【0094】
燃料での使用に好適な任意の溶媒および任意選択的な共溶媒を使用することができる。燃料での使用に好適な溶媒の例としては、非極性炭化水素溶媒、例えば、灯油、重質芳香族溶媒(「重質ナフサ溶媒(solvent naphtha heavy)」、「Solvesso 150」)、トルエン、キシレン、パラフィン、石油、揮発油、Shell companiesから商標「SHELLSOL」で販売されているものなどが挙げられる。好適な共溶媒の例としては、極性溶媒、例えば、エステル、特にアルコール(例えば、t-ブタノール、i-ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、デカノール、イソトリデカノール、ブチルグリコール、およびアルコール混合物、例えば、Shell companiesから商標「LINEVOL」で販売されているもの、特に、C7~9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、または市販されているC12~14アルコール混合物)が挙げられる。
【0095】
液体燃料での使用に適した曇り除去剤/抗乳化剤は、当技術分野でよく知られている。非限定的な例としては、グリコールオキシアルキレートポリオールブレンド(商品名TOLAD(商標)9312で販売されているものなど)、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド、またはC1~18エポキシドおよびジエポキシドによるオキシアルキル化によって修飾されたC1~18アルキルフェノール/-ホルムアルデヒド樹脂オキシアルキレート(商品名TOLAD(商標)9308で販売されているものなど)、ならびにジエポキシド、二酸、ジエステル、ジオール、ジアクリレート、ジメタクリレート、またはジイソシアネートと架橋されたC1~4エポキシドコポリマー、およびそれらのブレンドが挙げられる。グリコールオキシアルキレートポリオールブレンドは、C1~4エポキシドでオキシアルキル化されたポリオールであり得る。C1~18エポキシドおよびジエポキシドによるオキシアルキル化によって修飾されたC1~18アルキルフェノールフェノール/-ホルムアルデヒド樹脂オキシアルキレートは、例えば、クレゾール、t-ブチルフェノール、ドデシルフェノールもしくはジノニルフェノール、またはフェノールの混合物(t-ブチルフェノールとノニルフェノールとの混合物など)に基づくことができる。曇り除去剤は、曇り除去剤を含まないガソリンが水と接触したときに発生し得る532曇りを抑制するのに十分な量で使用するべきであり、この量を本明細書では「曇り抑制量」と称する。一般に、この量は、ガソリンの重量に基づいて、約0.1~約20ppmw(例えば、約0.1~約10ppm)、より好ましくは1~15ppmw、さらにより好ましくは1~10ppmw、有利には1~5ppmwである。
【0096】
ガソリンで使用するためのさらなる慣習的な添加剤は、腐食防止剤、例えば、膜を形成する傾向がある有機カルボン酸のアンモニウム塩に基づく腐食防止剤、または非鉄金属腐食保護のための複素環式芳香族のアンモニウム塩に基づく腐食防止剤;酸化防止剤または安定剤、例えば、フェニルジアミンなどのアミン、例えば、p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニルジアミン、ジシクロヘキシルアミン、もしくはそれらの誘導体、またはフェノールの誘導体、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェノールもしくは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニルプロピオン酸に基づく;帯電防止剤;メタロセン、例えば、フェロセン;メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル;潤滑性添加剤、例えば、ある特定の脂肪酸、アルケニルコハク酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミド、またはヒマシ油;また、染料(マーカー)である。必要に応じて、例えば、WO 03/076554に記載されているように、アミンを添加してもよい。任意選択的に、ポリマー有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩などの弁座凹み防止用添加剤(anti valve seat recession additive)を使用し得る。
【0097】
本明細書のガソリン組成物はまた、上記の必須の窒素含有洗浄剤添加剤に加えて、洗浄剤添加剤も含むことができる。好適な洗浄剤添加剤としては、参照により本明細書に組み込まれるWO2009/50287に開示されているものが挙げられる。
【0098】
ガソリン燃料およびガソリン性能パッケージの組成物はまた、摩擦調整剤、粘度制御剤、およびそれらの混合物、例えば、WO2012163935に開示されているものを含むこともできる。
【0099】
上記において、成分の量(濃度、体積%、ppmw、重量%)は、活性物質の量、すなわち揮発性溶媒/希釈剤材料を除いた量である。
【0100】
ディーゼル添加剤
洗浄剤含有ディーゼル燃料添加剤は知られており、市販されている。かかる添加剤は、エンジン堆積物の蓄積を低減する、除去する、または遅延させることを目的としたレベルで、ディーゼル燃料に添加され得る。例は、洗浄剤(上記の窒素含有洗浄剤添加剤を除く);潤滑性向上剤;曇り除去剤、例えばアルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えば、ポリエーテル修飾ポリシロキサン);着火性向上剤(セタン価向上剤)(例えば、2-エチルヘキシルニトレート(EHN)、シクロヘキシルニトレート、ジ-tert-ブチルペルオキシド、WO96/03397およびWO99/32584に開示されている過酸化物化合物、およびUS-A-4208190の第2欄、第27行目~第3欄、第21行目に開示されている着火性向上剤);防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン-1,2-ジオールセミエステル、またはコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、20~500個の炭素原子を含有する非置換または置換の脂肪族炭化水素基を、アルファ炭素原子のうちの少なくとも1つの上に有するコハク酸の誘導体、例えば、ポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル);腐食防止剤;付香剤;耐摩耗性添加剤;抗酸化剤(例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどのフェノール類、またはN,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン);金属不活性化剤;燃焼改善剤;静的散逸剤添加剤;低温流動性向上剤;およびワックス沈降防止剤である。
【0101】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、特に、ディーゼル燃料組成物が低い(例えば、500ppmw以下)硫黄含有量を有するとき、潤滑性向上剤を含有し得る。添加されたディーゼル燃料組成物において、潤滑性向上剤は、1000ppmw未満、好ましくは50~1000ppmw、より好ましくは70~1000ppmwの濃度で便宜的に存在する。好適な市販の潤滑性向上剤としては、エステル系および酸系添加剤が挙げられる。他の潤滑性向上剤は、特に硫黄含有量が低いディーゼル燃料でのそれらの使用に関連して、特許文献に、例えば、以下の文献に記載されている:
Danping WeiおよびH.A.Spikesによる論文“The Lubricity of Diesel Fuels”,Wear,III(1986)217-235、
WO-A-95/33805-低硫黄燃料の潤滑性を高めるための低温流動性向上剤、
US-A-5490864-低硫黄ディーゼル燃料のための耐摩耗性潤滑性添加剤としての特定のジチオリン酸ジエステル-ジアルコール、および
WO-A-98/01516-特に低硫黄ディーゼル燃料において耐摩耗性潤滑効果を付与するために、芳香核に結合された少なくとも1つのカルボキシル基を有する特定のアルキル芳香族化合物。
【0102】
ディーゼル燃料組成物は、消泡剤を含有し、より好ましくは防錆剤および/または腐食防止剤および/または潤滑性増強添加剤と組み合わせて、消泡剤を含有することも好ましい場合がある。
【0103】
特に明記しない限り、添加ディーゼル燃料組成物中のかかる任意選択的な各添加剤成分の(活性物質)濃度は、好ましくは最大10000ppmwであり、より好ましくは0.1~1000ppmw、有利には0.1~300ppmw、例えば、0.1~150ppmwの範囲である。
【0104】
ディーゼル燃料組成物中の任意の曇り除去剤の(活性物質)濃度は、好ましくは0.1~20ppmw、より好ましくは1~15ppmw、さらにより好ましくは1~10ppmw、特に1~5ppmwの範囲内であろう。存在する任意の着火性向上剤(例えば、2-EHN)の(活性物質)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、より好ましくは2000ppmw以下、さらにより好ましくは300~1500ppmwであろう。ディーゼル燃料組成物中の任意の洗浄剤の(活性物質)濃度は、好ましくは5~1500ppmw、より好ましくは10~750ppmw、最も好ましくは20~500ppmwの範囲であろう。
【0105】
ディーゼル燃料組成物の場合、例えば、燃料添加剤混合物は、典型的には、上記のような他の成分、ならびに鉱油であり得るディーゼル燃料適合性希釈剤、「SHELLSOL」という商標でShell companiesから販売されているような溶媒、エステルなどの極性溶媒、特にアルコール、例えば、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール、および「LINEVOL」という商標でShell companiesから販売されているようなアルコール混合物、特に、C7~9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、または市販されているC12~14アルコール混合物と任意選択的に一緒に、洗浄剤を含有する。
【0106】
ディーゼル燃料組成物中の添加剤の総含有量は、好適には0~10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であり得る。
【0107】
上記において、成分の量(濃度、体積%、ppmw、重量%)は、活性物質の量、すなわち揮発性溶媒/希釈剤材料を除いた量である。
【0108】
本明細書の液体燃料組成物は、好ましくは、ガソリン燃料組成物またはディーゼル燃料組成物、特にガソリン燃料組成物である。本明細書の液体燃料組成物はまた、航空ガソリン組成物または船舶燃料組成物などの他の目的に使用することもできる。
【0109】
液体燃料組成物を調製するプロセス
本発明の液体燃料組成物は、好ましくは性能添加剤パッケージの一部として必須の1つ以上の窒素含有洗浄剤添加剤を、内燃エンジンでの使用に好適なガソリンまたはディーゼルベース燃料と混合することによって、生成することができる。
【0110】
本発明は、以下の実施例からさらに理解されよう。特に明記しない限り、実施例で開示されるすべての量および濃度は、完全に配合された燃料組成物の重量に基づいている。
【実施例】
【0111】
基油(GTL 4、100℃において約4cStの動粘度を有するフィッシャー・トロプシュ由来基油、Shellから入手可能)をZDTPと組み合わせることによって、様々な潤滑組成物を調製した。ZDTPは、最終潤滑組成物に0.08重量%のリンが提供される量で添加した。配合物はまた、窒素含有洗浄剤添加剤(以下の表1においてD1、D2と指定)を様々な量で含有し、様々な量の窒素を有する潤滑組成物(最終潤滑組成物の重量により0.05重量%のN、0.07重量%のN、または0.1重量%のN)を得た。潤滑剤における煤の存在の影響をシミュレートするために、最終潤滑組成物の重量により、5重量%の量で潤滑組成物にカーボンブラックも添加した。
【0112】
本実施例で使用した窒素含有洗浄剤は、Infineumから市販されている商品名Infineum C9280(1.2重量%のNを含有する)(以下の表1でD1として指定)およびChevron Oroniteから市販されているOLOA 11000(以下の表1でD2として指定)を有するポリイソブチレンスクシンイミドであった。
【0113】
HFRR摩耗試験
潤滑剤配合物のHFRR摩耗試験を行った。HFRR(高摩擦往復運動装置、High-Friction Reciprocating Rig)は、燃料および潤滑剤の性能を評価するために用いられる、制御された往復運動摩擦および摩耗試験デバイスである。試験では、潤滑剤中に浸漬させた固定スチールディスクの平らな表面に対して荷重をかけて、往復運動させる直径6mmのスチールボールを使用する。各試験の終わりに、ボールおよびディスクを試験装置から取り出し、トルエンおよびイソプロパノールですすぎ、次いで、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の0.05重量%溶液で60秒間処理した。これは、光学系摩耗測定に干渉する可能性があるため、表面のZDTP耐摩耗性フィルムを除去するためであった。次いで、SWLI Veeco Wyko model NT9100を使用して、ボールおよびディスクの摩耗傷の摩耗量を判定するために、トポグラフィー画像を取得し分析した。その装置は、ナノメートルの検出範囲で粗い表面を測定するために較正された垂直走査干渉法(VSI)モードに設定した。
【0114】
これらの摩耗試験の結果を以下の表1に示す。
【0115】
【0116】
考察
表1の結果から、ポリイソブチレンスクシンイミド洗浄剤添加剤D1およびD2を含有するZDTP含有潤滑剤配合物の摩耗特性は、潤滑組成物中に存在する窒素のレベルが増加するにつれて改善していることが分かる。したがって、これらの結果は、使用中に燃料から潤滑剤に移動することができる窒素含有洗浄剤添加剤を燃料中に含めることの利点を実証しており、したがって、ZDTP含有潤滑剤中の窒素含有洗浄剤添加剤のレベルを高めるのに役立ち、煤の存在下でのZDTP含有潤滑剤の摩耗特性が向上する(すなわち、煤の存在下でZDTP含有潤滑剤によって摩耗の低減が提示された)。
以下に実施態様を記載する。
態様1
内燃エンジンにおける液体燃料組成物の使用であって、前記内燃エンジンが、前記内燃エンジンを潤滑するための潤滑組成物を含有し、前記液体燃料組成物が、前記潤滑組成物中の煤の存在によって引き起こされるエンジンの摩耗を低減する目的で、少なくとも1つの窒素含有洗浄剤添加剤を含む、使用。
態様2
前記潤滑組成物が、少なくとも1つの亜鉛含有耐摩耗性添加剤を含む、態様1に記載の使用。
態様3
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、85~20000の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素ラジカルと、以下のもの:
(A1)最大6個の窒素原子を有し、そのうちの少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有する、モノ-またはポリアミノ基、
(A2)ポリオキシ-C2~C4-アルキレン基であって、少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有するモノ-もしくはポリアミノ基によって、またはカルバメート基によって末端停止されている、ポリオキシ-C2~C4-アルキレン基、
(A3)無水コハク酸から誘導され、かつアミドおよび/もしくはイミド基を有する部分、ならびに/または
(A4)置換フェノールとアルデヒドおよびモノ-またはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られた部分、
ならびに上で定義した化合物の混合物、から選択される少なくとも1つの極性部分と、を有する化合物から選択される、態様1または2に記載の使用。
態様4
前記極性部分が、(A3)無水コハク酸から誘導され、かつ
アミドおよび/またはイミド基を有する部分から選択される、態様3に記載の使用。
態様5
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、ポリアルケンスクシンイミドである、態様1~4のいずれかに記載の使用。
態様6
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、ポリイソブチレンスクシンイミドである、態様1~5のいずれかに記載の使用。
態様7
前記窒素含有洗浄剤添加剤が、前記燃料組成物の重量により、0.001重量%~0.1重量%のレベルで、前記燃料組成物中に存在する、態様1~6のいずれかに記載の使用。
態様8
前記内燃エンジンが、直噴ガソリンエンジンである、態様1~7のいずれかに記載の使用。
態様9
前記内燃エンジンが、ディーゼルエンジンである、態様1~7のいずれかに記載の使用。
態様10
前記燃料組成物が、ガソリン燃料組成物である、態様1~7のいずれかに記載の使用。
態様11
前記燃料組成物が、ディーゼル燃料組成物である、態様1~7のいずれかに記載の使用。