(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230928BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M4/139
H01G11/86
(21)【出願番号】P 2021159248
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】増澤 直貴
(72)【発明者】
【氏名】安枝 賢吾
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228349(JP,A)
【文献】特開2015-026562(JP,A)
【文献】特開2001-015146(JP,A)
【文献】特開2020-228350(JP,A)
【文献】特開2017-228351(JP,A)
【文献】中国実用新案第212967759(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの製造方法において、
長手方向に延びる帯状の集電箔の表面に電極合材層が積層された帯状の合材積層部と、前記集電箔のうち、前記電極合材層が積層されることなく、前記合材積層部に対して前記長手方向に直交する幅方向の両側に隣り合って前記長手方向に延びる帯状の一対の合材非積層部と、を有する幅広帯状電極板のうち、前記合材積層部をロールプレスするロールプレス工程と、
前記幅広帯状電極板のうち前記一対の合材非積層部を前記長手方向に延伸させる非積層部延伸工程と、
前記合材積層部のうち前記合材非積層部側に位置する一対の合材非積層部側部分を前記長手方向に延伸させる積層部延伸工程と、を備え、
前記ロールプレス工程、前記非積層部延伸工程、及び、前記積層部延伸工程は、いずれの順番で行っても良く、
前記ロールプレス工程、前記非積層部延伸工程、及び、前記積層部延伸工程を終えた前記幅広帯状電極板を、前記幅方向の中心位置において前記長手方向に切断して、2本の帯状電極板に分割する切断工程と、
前記2本の帯状電極板を、それぞれ、長手方向に張力を掛けつつ巻芯の周りにロール状に巻き取って、2つの電極ロールにする巻き取り工程と、
前記電極ロールをそれぞれ保管する保管工程と、
前記保管工程を経た前記電極ロールを構成する前記帯状電極板を、所定の長さに切断して、複数の電極板を作製する電極板作製工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記積層部延伸工程は、前記合材積層部の前記合材非積層部側部分のうち、前記電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、前記一対の合材非積層部側部分を前記長手方向に延伸させる
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記非積層部延伸工程は、前記合材非積層部のうち前記電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、前記一対の合材非積層部を前記長手方向に延伸させる
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電デバイスであるリチウムイオン二次電池の製造方法が開示されている。具体的には、長手方向に延びる帯状の集電箔の表面に電極合材層が積層された帯状の合材積層部と、集電箔のうち、電極合材層が積層されることなく、合材積層部に対して長手方向に直交する幅方向の両側に隣り合って長手方向に延びる帯状の一対の合材非積層部と、を有する電極シート(以下、幅広帯状電極板ともいう)について、一対の合材非積層部を長手方向に延伸させる非積層部延伸工程を行う。その後、ロールプレス工程において、非積層部延伸工程を行った幅広帯状電極板について、合材積層部をロールプレスする。この製造方法では、非積層部延伸工程による合材非積層部の長手方向への伸び率と、ロールプレス工程による合材積層部の長手方向への伸び率を同程度にすることで、幅広帯状電極板に発生する皺や歪みを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の非積層部延伸工程及びロールプレス工程を終えた幅広帯状電極板は、例えば、切断工程において、幅方向の中心位置において長手方向に切断されて、2本の帯状電極板に分割される。その後、巻き取り工程において、2本の帯状電極板を、それぞれ、長手方向に張力を掛けつつ巻芯の周りにロール状に巻き取って、2つの電極ロールにする。その後、保管工程において、電極ロールはそれぞれ保管される。その後、電極板作製工程において、保管工程を経た電極ロールを構成する帯状電極板を所定の長さに切断して、複数の電極板を作製する。この電極板を用いて、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスが製造される。
【0005】
ところで、幅広帯状電極板の電極合材層の厚みは、幅方向について、中央部分が厚く、両側部分(合材非積層部側部分)が薄くなる。このため、前述の切断工程において、幅広帯状電極板を幅方向の中心位置において長手方向に沿って切断して作製された2本の帯状電極板では、合材積層部のうち、切断面側部分が厚く、合材非積層部側部分が薄い形態となる。このような形態の帯状電極板を、巻き取り工程において、長手方向に張力を掛けつつ巻芯の周りにロール状に巻き取って2つの電極ロールにし、その後、保管工程においてこれらの電極ロールを保管すると、合材積層部のうち厚みの厚い切断面側部分に相対的に強い張力が掛かった状態で保管される。これにより、保管している間に、合材積層部の切断面側部分が引き伸ばされ、合材積層部において合材非積層部側部分が相対的に短くなる。このような、合材積層部の切断面側部分と合材非積層部側部分との長さの差によって、帯状電極板において幅方向に湾曲が生じることがあった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、保管工程を経た帯状電極板について、幅方向の湾曲を小さくすることができる蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、蓄電デバイスの製造方法において、長手方向に延びる帯状の集電箔の表面に電極合材層が積層された帯状の合材積層部と、前記集電箔のうち、前記電極合材層が積層されることなく、前記合材積層部に対して前記長手方向に直交する幅方向の両側に隣り合って前記長手方向に延びる帯状の一対の合材非積層部と、を有する幅広帯状電極板のうち、前記合材積層部をロールプレスするロールプレス工程と、前記幅広帯状電極板のうち前記一対の合材非積層部を前記長手方向に延伸させる非積層部延伸工程と、前記合材積層部のうち前記合材非積層部側に位置する一対の合材非積層部側部分を前記長手方向に延伸させる積層部延伸工程と、を備え、前記ロールプレス工程、前記非積層部延伸工程、及び、前記積層部延伸工程は、いずれの順番で行っても良く、前記ロールプレス工程、前記非積層部延伸工程、及び、前記積層部延伸工程を終えた前記幅広帯状電極板を、前記幅方向の中心位置において前記長手方向に切断して、2本の帯状電極板に分割する切断工程と、前記2本の帯状電極板を、それぞれ、長手方向に張力を掛けつつ巻芯の周りにロール状に巻き取って、2つの電極ロールにする巻き取り工程と、前記電極ロールをそれぞれ保管する保管工程と、前記保管工程を経た前記電極ロールを構成する前記帯状電極板を、所定の長さに切断して、複数の電極板を作製する電極板作製工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0008】
ロールプレス工程を行うことにより、幅広帯状電極板のうち、電極合材層が存在する合材積層部は長手方向に圧延されるが、電極合材層が存在しない合材非積層部は、長手方向に圧延されず、相対的に短くなる。このような合材積層部と合材非積層部との長さの差によって、帯状電極板(幅広帯状電極板を切断して2分割したもの)において、幅方向に湾曲が生じることがある。
【0009】
これに対し、上述の製造方法では、非積層部延伸工程において、幅広帯状電極板のうち一対の合材非積層部を、長手方向に延伸させる。これにより、ロールプレス工程において長手方向に伸ばされる合材積層部に加えて、一対の合材非積層部も長手方向に伸ばすことができる。これによって、幅方向の全体にわたって幅広帯状電極板(集電箔)を長手方向に伸ばすことができるので、切断工程後の帯状電極板に生じる幅方向の湾曲を低減することができる。
【0010】
また、前述のように、切断工程において幅広帯状電極板を切断した帯状電極板では、合材積層部のうち、切断面側部分が厚く、合材非積層部側部分が薄い形態となる。このような形態の帯状電極板をロール状に巻き取った電極ロールを、保管工程におい保管すると、合材積層部のうち厚みの厚い切断面側部分に相対的に強い張力が掛かった状態で保管されるため、保管している間に、合材積層部の切断面側部分が引き伸ばされる。このため、従来の製造方法では、合材積層部において合材非積層部側部分が相対的に短くなり、このような、合材積層部の切断面側部分と合材非積層部側部分との長さの差によって、保管工程を経た帯状電極板において、幅方向に湾曲が生じることがあった。
【0011】
これに対し、上述の製造方法では、切断工程前の積層部延伸工程において、合材積層部のうち合材非積層部側(幅方向の両外側)に位置する一対の合材非積層部側部分を長手方向に延伸させる。このように、合材積層部のうち、後の保管工程において長手方向に伸ばされる切断面側部分(合材積層部のうち切断工程における切断によって形成された切断面側に位置する部位)に加えて、合材非積層部側部分も、予め長手方向に伸ばしておくことで、保管後の帯状電極板において、切断面側部分と合材非積層部側部分との長さの差を小さくすることができる。従って、保管工程を経た帯状電極板について、幅方向の湾曲を小さくすることができる。さらに、上述の製造方法では、電極板作製工程において、幅方向の湾曲が小さい帯状電極板から電極板を作製することができるので、電極板を適切に作製することができる。
【0012】
なお、上述の製造方法では、ロールプレス工程、非積層部延伸工程、及び、積層部延伸工程の3つの工程は、いずれの順番で行っても良いが、ロールプレス工程を最初に行うのが好ましい。また、非積層部延伸工程と積層部延伸工程とを、同時に行っても良い。すなわち、合材非積層部と合材積層部の合材非積層部側部分とを同時に延伸させるようにしても良い。また、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池などの二次電池のほか、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタが挙げられる。
【0013】
さらに、前記の蓄電デバイスの製造方法であって、前記積層部延伸工程は、前記合材積層部の前記合材非積層部側部分のうち、前記電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、前記一対の合材非積層部側部分を前記長手方向に延伸させる蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0014】
前述のように、保管工程において電極ロールを保管すると、合材積層部の切断面側部分が引き伸ばされるが、その伸び量は、電極ロールの内周側に配置された部位よりも外周側に配置された部位のほうが大きくなる。電極ロールの外周側ほど、合材積層部の切断面側部分と合材非積層部側部分との厚み差により生じる切断面側部分と合材非積層部側部分との外径差が大きくなるので、電極ロールの外周側ほど切断面側部分にかかる張力が大きくなるからであると考えられる。
【0015】
これに対し、上述の製造方法では、積層部延伸工程において、合材積層部の合材非積層部側部分のうち、後の巻き取り工程において形成される電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部側部分を長手方向に延伸させる。具体的には、例えば、合材非積層部側部分のうち積層部延伸工程において先に延伸される長手方向先端側部位よりも後で延伸される長手方向後端側部位のほうが延伸量が大きくなるように、積層部延伸工程において一対の合材非積層部側部分を長手方向に延伸させる。
【0016】
このように、積層部延伸工程における合材非積層部側部分の延伸量について、保管後の切断面側部分と同様に、電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるようにすることで、保管後の切断面側部分と合材非積層部側部分との間の伸び差を、長手方向の全体にわたって小さくすることができるので、保管後の帯状電極板における幅方向の湾曲をより一層低減することができる。
【0017】
さらに、前記いずれかの蓄電デバイスの製造方法であって、前記非積層部延伸工程は、前記合材非積層部のうち前記電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、前記一対の合材非積層部を前記長手方向に延伸させる蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
前述のように、保管工程において電極ロールを保管すると、合材積層部の切断面側部分が引き伸ばされるが、その伸び量は、電極ロールの内周側に配置された部位よりも外周側に配置された部位のほうが大きくなる。
【0019】
これに対し、上述の製造方法では、非積層部延伸工程において、合材非積層部のうち電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部を長手方向に延伸させる。具体的には、例えば、合材非積層部のうち非積層部延伸工程において先に延伸される長手方向先端側部位よりも後で延伸される長手方向後端側部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部を長手方向に延伸させる。
【0020】
このように、非積層部延伸工程における合材非積層部の延伸量について、保管後の合材積層部の切断面側部分と同様に、電極ロールの内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるようにすることで、保管後の合材非積層部と切断面側部分との間の伸び差を、長手方向の全体にわたって小さくすることができるので、保管後の帯状電極板における幅方向の湾曲をより一層低減することができる。
【0021】
さらに、前記いずれかの蓄電デバイスの製造方法であって、前記非積層部延伸工程は、軸線方向に延びる円柱状の第1小径部、及び、前記第1小径部に対して前記軸線方向の両外側に位置する円柱状で前記第1小径部よりも径大な一対の第1大径部を有する第1延伸ロールを用い、前記第1延伸ロールの前記一対の第1大径部の外周面に、前記幅広帯状電極板のうち前記一対の合材非積層部を巻き付けつつ前記長手方向に張力を掛けて、前記一対の合材非積層部を前記長手方向に延伸させ、前記積層部延伸工程は、軸線方向に延びる円柱状の第2小径部、及び、前記第2小径部に対して前記軸線方向の両外側に位置する円柱状で前記第1小径部よりも径大な一対の第2大径部を有する第2延伸ロールを用い、前記第2延伸ロールの前記一対の第2大径部の外周面に、前記合材積層部のうち合材非積層部側に位置する一対の合材非積層部側部分を巻き付けつつ前記長手方向に張力を掛けて、前記一対の合材非積層部側部分を前記長手方向に延伸させる蓄電デバイスの製造方法とするのが好ましい。
【0022】
なお、上述の製造方法では、第1延伸ロールと第2延伸ロールとを1つの延伸ロールとして、非積層部延伸工程と積層部延伸工程とを同時に行うようにしても良い。この場合は、例えば、延伸ロールとして、小径部(第1小径部と第2小径部が同一の小径部である)と、小径部に対して軸線方向両側に位置する一対の第2大径部(合材非積層部側部分を巻き付ける部位)と、それぞれの第2大径部に対して軸線方向外側に位置する第1大径部(合材非積層部を巻き付ける部位)とを有する延伸ロールを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態にかかる帯状電極板の製造装置の概略図である。
【
図2】実施形態にかかる幅広帯状電極板の平面図である。
【
図4】実施形態にかかる帯状電極板の平面図である。
【
図6】実施形態にかかる蓄電デバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態にかかるロールプレス工程を説明する図である。
【
図8】実施形態にかかる非積層部延伸工程を説明する図である。
【
図9】実施形態にかかる積層部延伸工程を説明する図である。
【
図10】実施形態にかかる帯状電極板の巻き取り長さと張力との関係を示す図である。
【
図11】実施形態にかかる保管工程を説明する図である。
【
図13】実施形態にかかる蓄電デバイスの断面概略図である。
【
図14】変形形態にかかる帯状電極板の製造装置の概略図である。
【
図16】従来の帯状電極板の幅方向の湾曲を説明する図である。
【
図17】従来の帯状電極板の巻き取り長さと幅方向の湾曲量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
次に、実施形態にかかる帯状電極板及び蓄電デバイスの製造方法について説明する。なお、本実施形態では、蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池200を製造する例について説明する。
図1は、実施形態にかかる帯状電極板120の製造装置1の概略図である。製造装置1は、巻出部10とロールプレス部20と第1延伸ロール30と第2延伸ロール40とダンサーロール51と張力検出部53とニップロール61,62と切断部70と第1巻き取り部80と第2巻き取り部90とを備え、これらがこの順で搬送方向DFに配置されている。なお、搬送方向DFは、幅広帯状電極板110及び帯状電極板120の搬送方向であり、幅広帯状電極板110及び帯状電極板120の長手方向DAに一致する。
【0025】
幅広帯状電極板110は、
図2及び
図3に示すように、帯状の合材積層部114と帯状の一対の合材非積層部115とを有する。このうち、合材積層部114は、長手方向DAに延びる帯状の集電箔111の第1表面111b及び第2表面111cに電極合材層112が積層された部位である。一方、合材非積層部115は、集電箔111のうち、電極合材層112が積層されることなく、合材積層部114に対して長手方向DAに直交する幅方向DBの両側に隣り合って長手方向DAに延びる部位である。
【0026】
また、帯状電極板120は、幅広帯状電極板110を、幅方向DBの中心位置CLにおいて長手方向DAに切断して分割したものである。具体的には、
図4及び
図5に示すように、帯状の合材積層部124と帯状の合材非積層部125とを有する。このうち、合材積層部124は、長手方向DAに延びる帯状の集電箔121の第1表面121b及び第2表面121cに電極合材層122が積層された部位である。一方、合材非積層部125は、集電箔121のうち、電極合材層122が積層されることなく、合材積層部124に対して長手方向DAに直交する幅方向DBに隣り合って長手方向DAに延びる部位である。
【0027】
なお、幅広帯状電極板110の電極合材層112の厚みは、幅方向DBについて、中央部分112cが厚く、両側部分(合材非積層部側部分112b)が薄くなっている(
図3参照)。従って、幅広帯状電極板110の合材積層部114では、幅方向DBの中央部分114cの厚み寸法T2が、両側部分(合材非積層部側部分114b)の厚み寸法T1よりも小さくなっている。このため、幅広帯状電極板110を幅方向DBの中心位置CLにおいて長手方向DAに切断して分割した帯状電極板120では、合材積層部124のうち、切断面側部分124cの厚み寸法T2が、合材非積層部側部分124bの厚み寸法T1よりも小さくなる(
図5参照)。なお、合材非積層部側部分124bは、合材積層部124のうち合材非積層部125側に位置する部位である。また、切断面側部分124cは、合材積層部124のうち、幅広帯状電極板110の切断によって形成された切断面126側に位置する部位である。本実施形態では、T1とT2の差は1μm程度になる。
【0028】
ここで、製造装置1について詳細に説明する。巻出部10は、巻出しロール11を備え、幅広帯状電極板110を送り出す。また、ロールプレス部20は、プレスロール21,22を備え、幅広帯状電極板110の合材積層部114をロールプレスする(
図7参照)。第1延伸ロール30は、軸線方向(幅方向DBに一致する)に延びる円柱状の第1小径部31、及び、第1小径部31に対して軸線方向の両外側に位置する円柱状で第1小径部31よりも径大な一対の第1大径部35を有し、幅広帯状電極板110のうち一対の合材非積層部115を長手方向DAに延伸させる(
図8参照)。第2延伸ロール40は、軸線方向(幅方向DBに一致する)に延びる円柱状の第2小径部41、及び、第2小径部41に対して軸線方向の両外側に位置する円柱状で第2小径部41よりも径大な一対の第2大径部45を有し、合材積層部114のうち一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる。
【0029】
ダンサーロール51は、図示しないエアシリンダの伸縮によって
図1の左右方向に移動可能に設けられている。張力検出部53は、プレスロール21,22とニップロール61,62との間に位置する幅広帯状電極板110にかかる張力を検出する。切断部70は、円盤状の切断刃71,72を有し、幅広帯状電極板110を、幅方向DBの中心位置CLにおいて長手方向DAに切断して、2本の帯状電極板120に分割する。第1巻き取り部80は、巻芯81を有し、一方の帯状電極板120を、長手方向DAに張力を掛けつつ巻芯81の周りにロール状に巻き取って、電極ロール180にする。第2巻き取り部90は、巻芯91を有し、他方の帯状電極板120を、長手方向DAに張力を掛けつつ巻芯91の周りにロール状に巻き取って、電極ロール190にする。
【0030】
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池200の製造方法について詳細に説明する。本実施形態では、まず、製造装置1によって、搬送方向DF(長手方向DAに一致する方向)に搬送される幅広帯状電極板110または帯状電極板120に対し、
図6に示すステップS1~S5の処理を順に行う。具体的には、ステップS1(ロールプレス工程)において、一対のプレスロール21,22によって、幅広帯状電極板110のうち合材積層部114をロールプレスする(
図1及び
図7参照)。これにより、電極合材層112が厚み方向DTに圧密化されると共に、合材積層部114が長手方向DAに圧延される。
【0031】
次いで、ステップS2(非積層部延伸工程)に進み、第1延伸ロール30を用いて、幅広帯状電極板110のうち一対の合材非積層部115を長手方向DAに延伸させる(
図1、
図8参照)。具体的には、第1延伸ロール30の一対の第1大径部35の外周面に、幅広帯状電極板110のうち一対の合材非積層部115を抱き角θ1で巻き付けつつ、合材非積層部115に対して長手方向DAに張力を掛けて(張力を集中させて)、一対の合材非積層部115を長手方向DAに延伸させる。これにより、ロールプレス工程において長手方向DAに伸ばされた合材積層部114に加えて、一対の合材非積層部115も長手方向DAに伸ばすことができる。これによって、幅方向DBの全体にわたって幅広帯状電極板110(集電箔111)を長手方向DAに伸ばすことができるので、後述する切断工程後の帯状電極板120に生じる幅方向DBの湾曲を低減することができる。
【0032】
次に、ステップS3(積層部延伸工程)に進み、第2延伸ロール40を用いて、合材積層部114のうち合材非積層部115側(幅方向DBの両外側)に位置する一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる(
図1、
図9参照)。具体的には、第2延伸ロール40の一対の第2大径部45の外周面に、合材積層部114のうち一対の合材非積層部側部分114bを抱き角θ2で巻き付けつつ、合材非積層部側部分114bに対して長手方向DAに張力を掛けて(張力を集中させて)、一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる。
【0033】
次に、ステップS4(切断工程)に進み、切断刃71,72によって、幅広帯状電極板110を、幅方向DBの中心位置CLにおいて長手方向DAに切断して、2本の帯状電極板120に分割する。次いで、ステップS5(巻き取り工程)に進み、2本の帯状電極板120のうち一方の帯状電極板120を、長手方向DAに張力を掛けつつ巻芯81の周りにロール状に巻き取って、電極ロール180にすると共に、他方の帯状電極板120を、長手方向DAに張力を掛けつつ巻芯91の周りにロール状に巻き取って、電極ロール190にする。
【0034】
次いで、ステップS6(保管工程)において、電極ロール180,190を保管する(
図11参照)。その後、ステップS7(電極板作製工程)進み、保管工程を経た電極ロール180,190を構成する帯状電極板120を所定の長さに切断して、複数の電極板130を作製する(
図12参照)。電極板130は、合材積層部134と合材非積層部135とを有する。このうち、合材積層部134は、長手方向DAに延びる集電箔131の表面(両面)に電極合材層132が積層された部位である。一方、合材非積層部135は、集電箔131のうち、電極合材層132が積層されることなく、合材積層部134に対して幅方向DBに隣り合って長手方向DAに延びる部位である。
【0035】
次いで、ステップS8(電極体作製工程)に進み、電極板130(例えば正極板)と他の電極板140(例えば負極板)とセパレータ150とを捲回(または積層)することによって、電極体250を作製する(
図13参照)。その後、ステップS9(組み付け工程)において、電極体250を構成する電極板130の合材非積層部135に、第1電極端子220(例えば正極端子)の接続部221を接合すると共に、電極板140の合材非積層部145に、第2電極端子230(例えば負極端子)の接続部231を接合した後、電池ケース210内に、電極体250及び電解液(図示なし)を収容して、リチウムイオン二次電池200が製造される(
図13参照)。
【0036】
ところで、切断工程(ステップS4)において幅広帯状電極板110を切断した帯状電極板120では、合材積層部124のうち、切断面側部分124cが厚く、合材非積層部側部分124bが薄い形態となる(
図5参照)。このような形態の帯状電極板120をロール状に巻き取った電極ロール180,190を、保管工程(ステップS6)において保管すると、合材積層部124のうち厚みの厚い切断面側部分124cに相対的に強い張力が掛かった状態で保管されるため、保管している間に、合材積層部124の切断面側部分124cが引き伸ばされる。このため、従来の製造方法では、合材積層部124において合材非積層部側部分124bが相対的に短くなり、このような合材積層部124の切断面側部分124cと合材非積層部側部分124bとの長さの差によって、保管工程(ステップS6)を経た帯状電極板520において、幅方向DBに湾曲が生じた(
図16参照)。
【0037】
これに対し、本実施形態では、切断工程(ステップS4)前の積層部延伸工程(ステップS3)において、幅広帯状電極板110の合材積層部114のうち合材非積層部115側(幅方向DBの両外側)に位置する一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる。このように、合材積層部114のうち、後の保管工程(ステップS6)において長手方向DAに伸ばされる切断面側部分124cに加えて、合材非積層部側部分114b(切断工程後に124bになる)も、予め長手方向DAに伸ばしておくことで、保管後の帯状電極板120において、切断面側部分124cと合材非積層部側部分124bとの長さの差を小さくすることができる。従って、保管工程を経た帯状電極板120について、幅方向DBの湾曲を小さくすることができる。さらに、本実施形態では、電極板作製工程(ステップS7)において、幅方向DBの湾曲が小さい帯状電極板120から電極板130を作製することができるので、電極板130を適切に作製することができる。
【0038】
また、前述のように、保管工程において電極ロール180,190を保管すると、合材積層部124の切断面側部分124cが長手方向DAに引き伸ばされるが、その伸び量は、電極ロール180,190の内周側に配置された部位よりも外周側に配置された部位のほうが大きくなる。電極ロール180,190の外周側ほど、合材積層部124の切断面側部分124cと合材非積層部側部分124bとの厚み差により生じる切断面側部分124cと合材非積層部側部分124bとの外径差(ra-rb)が大きくなるので、電極ロール180,190の外周側ほど切断面側部分124cにかかる張力が大きくなるからであると考えられる(
図11参照)。
【0039】
これに対し、本実施形態では、積層部延伸工程において、合材積層部114の合材非積層部側部分114bのうち、後の巻き取り工程において形成される電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる。具体的には、合材非積層部側部分114bのうち積層部延伸工程において先に延伸される長手方向先端側部位よりも後で延伸される長手方向後端側部位のほうが延伸量が大きくなるように、積層部延伸工程において、一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させる。
【0040】
より具体的には、積層部延伸工程において合材積層部114の合材非積層部側部分114bに掛ける張力の大きさを、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが大きくなるようにして、合材非積層部側部分114bを延伸させる。換言すれば、幅広帯状電極板110のうち積層部延伸工程が行われた合材非積層部側部分114bの長さが長くなるにしたがって、すなわち、第1巻き取り部80及び第2巻き取り部90において巻き取られる帯状電極板120の巻き取り長さが長くなるにしたがって、合材非積層部側部分114bに掛ける張力を増大させる。
【0041】
このように、積層部延伸工程における合材非積層部側部分114bの延伸量について、保管後の切断面側部分124cと同様に、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるようにすることで、保管後の切断面側部分124cと合材非積層部側部分124bとの間の伸び差を、長手方向DAの全体にわたって小さくすることができるので、保管後の帯状電極板120における幅方向DBの湾曲をより一層低減することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、非積層部延伸工程において、合材非積層部115のうち電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部115を長手方向DAに延伸させる。具体的には、非積層部延伸工程において合材非積層部115に掛ける張力の大きさを、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが大きくなるようにして、合材非積層部115を延伸させる。換言すれば、幅広帯状電極板110のうち非積層部延伸工程が行われた合材非積層部115の長さが長くなるにしたがって、すなわち、第1巻き取り部80及び第2巻き取り部90において巻き取られる帯状電極板120の巻き取り長さが長くなるにしたがって、合材非積層部115に掛ける張力を増大させる。
【0043】
このように、非積層部延伸工程における合材非積層部115の延伸量について、保管後の合材積層部124の切断面側部分124cと同様に、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるようにすることで、保管後の合材非積層部125と切断面側部分124cとの間の伸び差を、長手方向DAの全体にわたって小さくすることができるので、保管後の帯状電極板120における幅方向DBの湾曲をより一層低減することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、幅広帯状電極板110のうち積層部延伸工程が行われた合材非積層部側部分114bの長さが長くなるにしたがって、すなわち、第1巻き取り部80及び第2巻き取り部90において巻き取られる帯状電極板120の巻き取り長さが長くなるにしたがって、ダンサーロール51を
図1の左側へ移動させるように図示しないエアシリンダを駆動させて、幅広帯状電極板110のうちプレスロール21,22とニップロール61,62との間に位置する部位にかかる張力を増大させている。これにより、積層部延伸工程において合材非積層部側部分114bに掛ける張力を増大させると共に、非積層部延伸工程において合材非積層部115に掛ける張力を増大させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、ダンサーロール51が移動しないように、プレスロール21,22とニップロール61,62との間において、幅広帯状電極板110の搬送速度について速度制御を行いつつ、幅広帯状電極板110に掛ける張力を変動させている。なお、本実施形態では、
図10に示す関係を満たすように張力を変動させている。
図10に示すデータは、従来の製造方法によって製造された帯状電極板520の巻き取り長さと保管後の幅方向DBの湾曲量Fとの関係(
図17参照)に基づいて求めたものである。幅方向DBの湾曲量Fは、長さ2mの帯状電極板520について、合材非積層部125の側辺125dの両端を結ぶ線Lと側辺125dの長手方向DAの中央位置M(すなわち、長さ1mの位置)との最短距離である(
図16参照)。
【0046】
<変形形態>
図14及び
図15は、変形形態の製造装置1の一部の概略図である。
図14は、帯状電極板120の製造開始時の状態を示す図であり、
図15は、帯状電極板120の製造終了直前の状態を示す図である。第1延伸ロール30は、図示しないサーボモータの駆動により、
図14及び
図15の左右方向に移動可能とされている。第2延伸ロール40も、図示しないサーボモータの駆動により、
図14及び
図15の左右方向に移動可能とされている。変形形態では、帯状電極板120の製造が進むにしたがって、すなわち、第1巻き取り部80及び第2巻き取り部90において巻き取られる帯状電極板120の巻き取り長さが長くなるにしたがって、第1延伸ロール30及び第2延伸ロール40を、
図14及び
図15の左側へ移動させる。なお、本変形形態では、第1延伸ロール30及び第2延伸ロール40と共にダンサーロール51を、
図14及び
図15の左側へ移動させることによって、幅広帯状電極板110のうちプレスロール21,22とニップロール61,62との間に位置する部位にかかる張力を一定に保つようにしている。
【0047】
これにより、本変形形態では、積層部延伸工程において、合材非積層部側部分114bに掛ける張力を変動させるのではなく、第2大径部45に対する合材非積層部側部分114bの抱き角θ2の大きさを、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが大きくなるようにして、合材非積層部側部分114bを延伸させる(
図14、
図15参照)。これにより、積層部延伸工程において、合材積層部114の合材非積層部側部分114bのうち、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部側部分114bを長手方向DAに延伸させることができる。
【0048】
さらに、非積層部延伸工程においても、合材非積層部115に掛ける張力を変動させるのではなく、第1大径部35に対する合材非積層部115の抱き角θ1の大きさを、電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが大きくなるようにして、合材非積層部側部分114bを延伸させる(
図14、
図15参照)。これにより、非積層部延伸工程において、合材非積層部115のうち電極ロール180,190の内周側に配置される部位よりも外周側に配置される部位のほうが延伸量が大きくなるように、一対の合材非積層部115を長手方向DAに延伸させることができる。
【0049】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、実施形態等では、ロールプレス工程、非積層部延伸工程、及び、積層部延伸工程の3つの工程を、この順番で行うようにしたが、いずれの順番で行っても良い。但し、ロールプレス工程を最初に行うのが好ましい。また、非積層部延伸工程と積層部延伸工程とを、同時に行うようにしても良い。すなわち、合材非積層部115と合材積層部114の合材非積層部側部分114bとを同時に延伸させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
21,22 プレスロール
30 第1延伸ロール
40 第2延伸ロール
110 幅広帯状電極板
111,121,131 集電箔
112,122,132 電極合材層
114,124,134 合材積層部
114b,124b 合材非積層部側部分
115,125,135 合材非積層部
120 帯状電極板
130 電極板
180,190 電極ロール