(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】偏光レンズの製造方法、偏光フィルム及び偏光レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/12 20060101AFI20230928BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G02C7/12
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021527653
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024652
(87)【国際公開番号】W WO2020262399
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019122173
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 敬介
(72)【発明者】
【氏名】松江 葵
(72)【発明者】
【氏名】山下 照夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 強
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/021466(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077339(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077338(WO,A1)
【文献】特開2003-128945(JP,A)
【文献】特開2017-007219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムを湿潤下で最大収縮率5%以上30%以下収縮させること、
前記偏光フィルムを曲面に加工すること、
前記偏光フィルムを温度T
1で乾燥すること、
前記偏光フィルムが内部に配置されたキャビティを有する成形型を用意すること、
前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
前記硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、及び
前記偏光レンズを温度T
2でアニーリングすること、
を含み、
前記温度T
1と前記温度T
2の関係が以下の式(1)を満た
し、
T
1>T
2・・・(1)
前記温度T
1
と前記温度T
2
の差(T
1
-T
2
)が、5℃以上40℃以下である、偏光レンズの製造方法。
【請求項2】
前記温度T
1が、120℃超え160℃以下である、請求項1に記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項3】
前記温度T
2が、100℃以上130℃以下である、請求項1又は2に記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項4】
前記偏光レンズが、80℃以上150℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項5】
前記成形型を調製することが、上型モールド、乾燥後の前記偏光フィルム、及び下型モールドをこの順にそれぞれ間隔をもって配置して、前記上型モールドと前記下型モールドとの間隔をシール部材により閉塞することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項6】
前記上型モールドのキャビティ側面と前記偏光フィルムとの距離の最小値が0.05mm以上2.0mm以下である、請求項5に記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項7】
前記偏光レンズがマイナス度数を有する、請求項6に記載の偏光レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光レンズの製造方法、偏光フィルム及び偏光レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水面等により反射された所定の偏光方向の光を遮断する偏光レンズが知られている。より具体的には、例えば、眼鏡レンズ用基材の中に偏光フィルムを有する偏光レンズが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車運転での使用基準を満たすためや、デザイン上の要請から、偏光レンズは、高い視感透過率を有することが求められるようになった。また、フォトクロミック層を積層することや、染色すること等の機能性付与のため、偏光層による視感透過率の低下が比較的少ないことが求められる。
【0005】
偏光フィルムは、色素の濃度を低くすれば視感透過率を高めることができるが、偏光度を高く保つため、色素の濃度を低くすることにも限界がある。
偏光レンズに用いられる偏光フィルムは、曲面加工して用いられることがあるが、曲面加工は、歪を軽減するため偏光フィルムを湿潤させて収縮させてから行われる。当該収縮によって、偏光フィルム内の色素の濃度が高まり、視感透過率が低下するという課題がある。
【0006】
しかしながら、視感透過率の低下を抑えるため、偏光フィルムの収縮率を低くすると、偏光レンズの製造過程における眼鏡レンズのアニーリングによって、偏光フィルムが変形し、偏光レンズの物体側の表面が歪み、非点収差が高くなるといった課題がある。非点収差が高くなると、装用者の視界に影響がある。
【0007】
そこで、本開示の一実施形態は、視感透過率及び偏光度が高く、非点収差が低く抑えられた偏光レンズの製造方法、偏光フィルム及び偏光レンズに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
湿潤下での収縮における、偏光フィルムの最大収縮率を所定範囲とし、加工後の偏光フィルムを温度T1で乾燥し、当該温度T1とアニーリング温度T2との関係をT1>T2とすることで、視感透過率及び偏光度が高く、非点収差が低く抑えられた偏光レンズが得られることが見いだされた。
【0009】
すなわち、本開示に係る一実施形態は、
偏光フィルムを湿潤下で最大収縮率5%以上30%以下収縮させること、
当該偏光フィルムを曲面に加工すること、
当該偏光フィルムを温度T1で乾燥すること、
当該偏光フィルムが内部に配置されたキャビティを有する成形型を用意すること、
当該キャビティに硬化性組成物を注入すること、
当該硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、及び
当該偏光レンズを温度T2でアニーリングすること、
を含み、
当該温度T1と当該温度T2の関係が以下の式(1)を満たす、偏光レンズの製造方法である。
T1>T2・・・(1)
【0010】
本開示に係る一実施形態は、
偏光フィルムを湿潤下で最大収縮率5%以上30%以下収縮させること、
当該偏光フィルムを曲面に加工すること、
当該偏光フィルムを温度T1で乾燥すること、
を含み、
当該温度T1が、130℃以上150℃以下である、曲面加工された偏光フィルムの製造方法である。
【0011】
本開示に係る一実施形態は、上述の製造方法により得られる偏光フィルムである。
【0012】
本開示に係る一実施形態は、
物体側表面を形成する第1のレンズ要素部と、
眼球側表面を形成する第2のレンズ要素部と、
当該第1のレンズ要素部と当該第2のレンズ要素部との間に設けられた上述の偏光フィルムとを備える、偏光レンズである。
【0013】
上述の実施形態においては以下が好ましい。
温度T1は、好ましくは120℃以上160℃以下である。
温度T2が、好ましくは100℃以上130℃以下である。
偏光レンズは、好ましくは80℃以上150℃以下のガラス転移温度を有する。
上述の成形型を用意することが、好ましくは上型モールド、乾燥後の偏光フィルム、及び下型モールドをこの順にそれぞれ間隔をもって配置して、上型モールドと下型モールドとの間隔をシール部材により閉塞することを含む。
上型モールドのキャビティ側面と偏光フィルムとの距離の最小値が好ましくは0.05mm以上2.0mm以下である。当該偏光レンズが好ましくはマイナス度数を有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一実施形態によれば、視感透過率及び偏光度が高く、非点収差が低く抑えられた偏光レンズの製造方法、偏光フィルム及び偏光レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態の偏光レンズ100の断面図である。
【
図2】
図2は、マイナス度数を有する本実施形態の偏光レンズ100aの断面図である。
【
図3】
図3は、プラス度数を有する本実施形態の偏光レンズ100bの断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の偏光レンズの製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、球面の成形面を有する雄型を備える曲面加工台の概略構成図である。
【
図6】
図6は、上型モールド16、乾燥後の偏光フィルム14、及び下型モールド18の概略断面図である。
【
図7】
図7は、上型モールド16に偏光フィルム14を保持するための接着剤からなる保持部材20が形成された状態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、上型モールド16に偏光フィルム14を保持するための接着剤からなる保持部材20が形成された状態のA-A'線の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本開示の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
本実施形態の偏光レンズの製造方法は、
偏光フィルムを湿潤下で最大収縮率5%以上30%以下収縮させること、
当該偏光フィルムを曲面に加工すること、
当該偏光フィルムを温度T1で乾燥すること、
当該偏光フィルムが内部に配置されたキャビティを有する成形型を用意すること、
当該キャビティに硬化性組成物を注入すること、
当該硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、及び
当該偏光レンズを温度T2でアニーリングすること、
を含む。
本実施形態の偏光レンズの製造方法では、当該温度T1と当該温度T2の関係が以下の式(1)を満たす。
T1>T2・・・(1)
以上の構成を有することで、本実施形態の製造方法によれば、視感透過率及び偏光度が高く、非点収差が低く抑えられた偏光レンズが得られる。
【0018】
本開示において、各種用語の意味は以下のとおりである。
「物体側表面」とは、偏光レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側表面」とは、その反対、即ち偏光レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。面形状に関して、一態様では、物体側表面は凸面であり、眼球側表面は凹面である。ただし、この態様に限定されるものではない。
【0019】
「最大収縮率」とは、以下の式で表される偏光フィルムの収縮率であって、その値が最大となる方向における収縮率である。
収縮率(%)=(〔収縮前の偏光フィルムの幅〕-〔収縮後の偏光フィルムの幅〕)/〔収縮前の偏光フィルムの幅〕×100
偏光フィルムは、一態様では、二色性色素を含むフィルムを延伸したものが用いられるため、最大収縮率は、当該延伸方向における収縮率となる。ただし、この態様に限定されるものではない。
【0020】
[偏光レンズ]
図1は、本実施形態の偏光レンズ100の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の偏光レンズ100は、メニスカス形状を有するプラスチックレンズであり、第1のレンズ要素部110と、第2のレンズ要素部120と、その両レンズ要素部の間に、曲面加工された偏光フィルム14とを有するレンズ基材(積層構造)を備える。第1のレンズ要素部110は、偏光フィルム14に対して偏光レンズ100の物体側表面111(凸面側)に設けられ、第2のレンズ要素部120は、偏光レンズ100の眼球側表面121(凹面側)に設けられている。また、偏光レンズ100の樹脂基材(基材)を構成している第1のレンズ要素部110及び第2のレンズ要素部120は、ともにメニスカス形状を有しており、第1のレンズ要素部110において、物体側が偏光レンズ100の物体側表面111であり、眼球側が偏光フィルム14に当接する面である。同様に、第2のレンズ要素部120において、眼球側が偏光レンズ100の眼球側表面121であり、物体側が偏光フィルム14に当接する面である。
【0021】
偏光レンズ100内部に埋設される偏光フィルム14としては、例えば、市販のヨウ素系偏光フィルムをプレス成形によって所定の曲率に曲面加工してレンズ形状に対応させて、外形が円形にカットされた偏光フィルムを使用することができる。曲面加工の詳細については、後述する。
【0022】
偏光レンズ100の物体側表面111と偏光フィルム14との距離の最小値W1は、好ましくは、0.05mm以上2.0mm以下である。最小値W1となる位置は、レンズの処方等に基づく偏光レンズの形状によって異なる。つまり、マイナス度数のレンズの場合は中心から外周に向かう方向に従って、レンズ厚が厚くなり、プラス度数のレンズの場合はこの逆である。
【0023】
図2は、マイナス度数を有する本実施形態の偏光レンズ100aの断面図である。
図2に示される偏光レンズ100aは、ベースカーブが2ベース、偏光フィルム14の曲率が3ベースで、処方度数がマイナス度数の単焦点レンズである。マイナス度数を有する偏光レンズ100aにおいては、物体側表面111の中心の頂点Tと偏光フィルム14との距離が、上述の最小値W1であり、頂点Tと偏光フィルム14との距離が、0.05mm以上2.0mm以下である。当該最小値W1は、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上0.7mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上0.6mm以下である。頂点Tは、球面設計の場合では幾何学中心であり、また、光学中心である。
【0024】
一般的に偏光フィルムを有する偏光レンズは、全体として厚くなりやすい。例えば、
図2に示す偏光レンズ100aは、眼球側表面121に曲面を設け、眼鏡レンズの光学中心の肉厚が最も薄く、周縁部が厚い構造を有する。偏光レンズ100aでは、物体側表面111から偏光フィルムの位置までの厚みよりも薄くすることはできない。つまり、偏光レンズ100aの最薄となる光学中心の肉厚は、物体側表面111から偏光フィルム14の位置までの厚みに制限されてしまう。さらには光学中心の肉厚に伴い周縁部の厚みが顕著になり、偏光レンズ全体として厚い印象を与えることとなってしまう。このような観点から、偏光フィルム14は、偏光レンズの物体側の表面に可能な限り近い位置に配置されることが好ましい。そこで、偏光フィルムを曲面加工することで、偏光レンズの中心部においても、物体側の表面に可能な限り近い位置に配置され、中心部の肉厚を薄くすることができる。
【0025】
図3は、プラス度数を有する本実施形態の偏光レンズ100bの断面図である。
図3に示される偏光レンズ100bは、ベースカーブが10ベース、偏光フィルム14の曲率が8ベースで処方度数がプラス度数の単焦点レンズである。プラス度数を有するレンズ100bにおいては、偏光フィルム14と外周部との距離が、上述の最小値W1であり、外周部と偏光フィルム14との距離が、0.05mm以上2.0mm以下である。当該最小値W1は、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上0.7mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上0.6mm以下である。
【0026】
図1に示すような、偏光フィルムを2枚のレンズ要素部で挟み込むタイプの偏光レンズでは、第1のレンズ要素部110の物体側表面111の屈折面は回転対称面であることが好ましく、特に球面であることが好ましい。モールド製造や偏光フィルムの曲面創成が容易になるからである。
【0027】
本実施形態によれば、屈折率が1.60以上の高屈折レンズモノマーを使用し、偏光フィルムと物体側表面111のカーブとの差を2ベース以内に設定すれば、物体側表面111と偏光フィルム14との距離であるクリアランスの最小値を、0.05mm以上2.0mm以下に設定しやすくなり、その結果として、上述の最小値W1が小さい(例えば、1.1mm)の偏光レンズを得ることができる。
【0028】
偏光レンズとしては、フィニッシュレンズ、セミフィニッシュレンズのいずれであってもよい。
偏光レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、前述の下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
偏光レンズとしては、通常無色のものが使用されるが、透明性を損なわない範囲で着色したものを使用することもできる。
【0029】
偏光レンズの基材の厚さ及び直径は、特に限定されるものではないが、厚さは通常1~30mm程度、直径は通常50~100mm程度である。
偏光レンズの基材の屈折率neは、好ましくは1.50以上であり、より好ましくは1.53以上であり、更に好ましくは1.55以上であり、より更に好ましくは1.60以上である。偏光レンズの基材の屈折率neは、その上限は特に限定されないが、好ましくは1.80以下である。
【0030】
本実施形態に係る偏光レンズは、好ましくはガラス転移温度を有する。当該ガラス転移温度は、好ましくは80℃以上150℃以下であり、より好ましくは90℃以上140℃以下であり、更に好ましくは100℃以上130℃以下である。ガラス転移温度が当該範囲にあることで、後述する偏光レンズのアニーリング温度を低くすることができるため、偏光フィルムの変形を防ぐことができる。
なお、ここで偏光レンズのガラス転移温度とは、偏光レンズの基材のガラス転移温度を意味する。
【0031】
本実施形態におけるガラス転移温度は、以下の熱機械分析法(TMA法)により測定することができる。
(熱機械分析法)
針入プローブ(先端径0.5~1.0mm)に、98mNの荷重を加えて試料の変位を測定することでガラス転移温度を測定する。測定はφ5mm×3mmの試料を室温から10℃/分の割合で昇温させて、熱機械分析装置で試料の変位を測定することで行う。通常試料は昇温に伴う熱膨張により大きくなる。ところがガラス転移温度付近では測定値は試料が膨張から収縮に転じることを示すことがある。これは試料が荷重に耐え切れなくなり針入プローブが試料にめり込んだ時に起こる現象であり、このピークトップ温度をガラス転移温度Tgとする。ピークトップが明確でない場合はピークトップ付近の測定値前後の接線が交差する点の温度をガラス転移温度とする。
【0032】
本実施形態に係る偏光レンズは、好ましくは30%以上の視感透過率を有する。30%以上の視感透過率を有することで、デザイン上の要請を満たしやすくなり、他の層の形成を考慮した視感透過率の設定の自由度を高めることができる。また、視感透過率を高めることで、発色性の低い濃色系の染料(例えば、青色系染料、緑色系染料)により、染色した場合であっても優れた発色性を有する。偏光レンズの視感透過率は、好ましくは31%以上であり、より好ましくは32%以上である。偏光レンズの視感透過率は、その上限は特に限定されないが、製造のしやすさの観点から、60%以下であってもよく、50%以下であってもよく、40%以下であってもよく、35%であってもよい。偏光レンズの視感透過率とは、機能層を有する場合には、機能層を含めた全体の視感透過率を意味する。視感透過率は、JIS T7333:2005に従って測定する。
【0033】
本実施形態に係る偏光レンズは、好ましくは90%以上の偏光度を有する。90%以上の偏光度を有することで、反射光のカットなど偏光レンズとしての充分な性能が得られる。偏光レンズの偏光度は、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95%以上であり、更に好ましくは98%以上である。偏光度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
本実施形態に係る偏光レンズは、好ましくは0.14以下の非点収差を有する。0.14以下の非点収差を有することで、眼鏡装用者が装用不良を感じない又は感じることが少ない偏光レンズが得られる。
偏光レンズの非点収差は、好ましくは0.09以下であり、より好ましくは0.07以下であり、更に好ましくは0.05以下であり、より更に好ましくは0.04以下であり、更により好ましくは0.03以下である。偏光レンズの非点収差は、その下限は特に限定されないが、製造のしやすさの観点から、0.01以上であってもよく、0.02以上であってもよい。非点収差は、物体側表面の非点収差を意味する。また、非点収差は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
<機能層>
偏光レンズは、機能層を有していてもよい。上述の機能層としては、例えば、ハードコート層、下地層、反射防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、フォトクロミック層、帯電防止層、防曇層が挙げられる。これらの機能層は、1種を単独又は2種以上を組合せて用いてもよい。これらの機能層については、眼鏡レンズに関する公知技術を適用することができる。これらの中でも、ハードコート層、下地層、及び反射防止層を有することが好ましい。
【0036】
(ハードコート層)
ハードコート層は、例えば、無機酸化物とケイ素化合物とを含むハードコート組成物による硬化膜である。ハードコート組成物は、好ましくは多官能エポキシ化合物を更に含む。
【0037】
無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、これらのうち2種以上の無機酸化物による複合酸化物が挙げられる。これらは、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機酸化物の中でも、酸化ケイ素が好ましい。なお、無機酸化物として、コロイダルシリカを用いてもよい。
【0038】
無機酸化物の含有量は、ハードコート組成物の固形分中、好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以上50質量%以下である。
【0039】
ケイ素化合物は、例えば、アルコキシ基などの加水分解性基を有するケイ素化合物である。ケイ素化合物は、好ましくは、ケイ素原子に結合する有機基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である。ケイ素原子に結合する有機基は、好ましくは、グリシドキシ基などのエポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等の官能基を有する有機基であり、より好ましくはエポキシ基を有する有機基である。なお、ケイ素化合物は、ケイ素に結合するアルキル基を有していてもよい。
【0040】
上述のシランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、製品名、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007が挙げられる。
【0041】
ケイ素化合物の含有量は、ハードコート組成物の固形分中、好ましくは20質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上75質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以上75質量%以下である。
【0042】
多官能エポキシ化合物は、一分子中に2つ以上のエポキシ基を含む多官能エポキシ化合物であり、より好ましくは一分子中に2つ又は3つのエポキシ基を含む多官能エポキシ化合物である。多官能エポキシ化合物の市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製、製品名「デナコール」シリーズのEX-201,EX-211,EX-212,EX-252,EX-313,EX-314,EX-321,EX-411,EX-421,EX-512,EX-521,EX-611,EX-612,EX-614,EX-614Bが挙げられる。
【0043】
多官能エポキシ化合物の含有量は、ハードコート組成物の固形分中、好ましくは0質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
【0044】
上述のハードコート組成物は、以上説明した成分の他、必要に応じて、有機溶剤、レベリング剤、硬化触媒等の任意成分を混合して調製することができる。
上述のハードコート層は、硬化性組成物を基材上に塗布し、硬化処理(熱硬化、光硬化等)を施すことにより形成することができる。硬化性組成物の塗布手段としては、ディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法を適用することができる。硬化処理は、多官能エポキシ化合物を含む硬化性組成物については、通常、加熱により行われる。加熱硬化処理は、例えば上述の硬化性組成物を塗布したレンズを50~150℃の雰囲気温度の環境下に30分~3時間程度配置することで行うことができる。
【0045】
(下地層)
上述の下地層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を含む水系樹脂組成物により形成することができる。
【0046】
上述の水系樹脂組成物としては、市販されている水性ポリウレタンをそのまま、又は必要に応じて水系溶媒で希釈して使用することも可能である。市販されている水性ポリウレタンとしては、例えば、日華化学株式会社製の製品名「エバファノール」シリーズ、第一工業製薬株式会社製の製品名「スーパーフレックス」シリーズ、株式会社ADEKA製の製品名「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学株式会社製の製品名「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業株式会社製の製品名「ボンディック」シリーズ、製品名「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の製品名「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン株式会社製の製品名「ソフラネート」シリーズ、花王株式会社製の製品名「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業株式会社製の製品名「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業株式会社製の製品名「アイゼラックス」シリーズ、ゼネカ株式会社製の製品名「ネオレッツ」シリーズが挙げられる。
【0047】
下地層は、例えば、上述の水系樹脂組成物を基材の表面に塗工及び乾燥させることによりを形成することができる。
【0048】
(反射防止層)
反射防止層は、例えば、交互に配置された低屈折率層及び高屈折率層を有する。反射防止層が有する層数は、好ましくは4~11層であり、より好ましくは5~8層である。
【0049】
低屈折率層の屈折率は、波長500~550nmにおいて、好ましくは1.35~1.80であり、より好ましくは1.45~1.50である。低屈折率層は、無機酸化物からなり、好ましくは酸化ケイ素からなる。
【0050】
高屈折率層の屈折率は、波長500~550nmにおいて、好ましくは1.90~2.60であり、より好ましくは2.00~2.40である。高屈折率層は、例えば、無機酸化物からなる。高屈折率層に用いられる無機酸化物は、好ましくは、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化チタニウム、酸化ニオブ及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは酸化ジルコニウム及び酸化タンタルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0051】
反射防止層は、真空蒸着法にて、低屈折率層及び高屈折率層を交互に積層することで、反射防止層を形成することができる。
【0052】
本実施形態に係る染色偏光レンズは、上述の偏光レンズが染色されたものである。染色する偏光レンズとしては、特に限定されないが、例えば、上述のレンズ基材、上述の機能層(好ましくはハードコート層)とレンズ基材とを有する偏光レンズが挙げられる。染色は、青色、赤色、緑色、黄色等のいかなる色であってもよいが、好ましくは、青色、緑色等の濃色系の色である。濃色系の色は発色しにくいが、本実施形態に係る偏光レンズは、視感透過率が高く、これらの色に染色した場合であっても優れた発色性を示す。なお、染色は、公知の方法により行うことができる。
【0053】
[偏光レンズの製造方法]
次に、本実施形態の偏光レンズの製造方法について、図面を参照し、説明する。
【0054】
図4は、本実施形態の偏光レンズの製造方法の概要を示すフローチャートである。
本実施形態の偏光レンズ100の製造方法は、偏光フィルム14を湿潤下で最大収縮率5%以上30%以下収縮させる工程、偏光フィルム14を曲面に加工する工程、偏光フィルム14を温度T
1で乾燥する工程、偏光フィルム14が内部に配置されたキャビティを有する成形型を用意する工程、キャビティに硬化性組成物を注入する工程、硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルム14が配置された偏光レンズ100を得る工程、及び、偏光レンズ100を温度T
2でアニーリングする工程を含む。本実施形態の偏光レンズ100の製造方法は、上記の順に上述の工程を含むことが好ましい。
なお、図示しないが、セミレンズを製造する場合には、アニーリング後の偏光レンズ100の眼球側表面121を、処方にあわせて研削及び研磨してもよい。その後、偏光レンズ100の表面に機能層を形成する工程を有していてもよい。また、偏光レンズは、所望のフレーム形状に縁摺りし、枠入れされる。
【0055】
<偏光フィルム>
偏光フィルムは、好ましくは、二色性色素と、ポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」ともいう)、ポリエチレンテレフタレート(以下、単に「PET」ともいう)等の樹脂とを含む延伸フィルムである。これらの樹脂の中でもPVAが好ましい。PVAは、透明性、耐熱性、ヨウ素等の二色性染料との親和性、及び延伸時の配向性に優れるため、偏光フィルムの材料として好ましい。偏光フィルムの偏光層は、樹脂中にヨウ素を含浸させた樹脂フィルムを一軸方向に延伸することで得られる。
【0056】
偏光フィルムは、延伸フィルムの片面又は両面に保護層を備えていてもよい。保護層としては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム(以下、「TAC」ともいう)を含有するフィルムが挙げられる。
【0057】
偏光フィルムの厚さは、フィルムの曲面加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以上500μm以下であり、より好ましくは15μm以上200μm以下であり、更に好ましくは20μm以上100μm以下であり、より更に好ましくは20μm以上50μm以下である。厚さが10μm以上であることで、剛性が強く、取り扱いが容易であり、500μm以下であることで、偏光フィルムの曲面加工が容易になる。
【0058】
<湿潤下での収縮,最大収縮率>
はじめに、偏光フィルムを湿潤下で収縮させる。当該工程により偏光フィルムの曲面加工が容易になるためである。
【0059】
偏光フィルムの最大収縮率は、湿潤前の偏光フィルムに対して、5%以上30%以下である。当該範囲の最大収縮率とすることで、偏光フィルムの収縮による視感透過率の低下を抑制し、更には、ひずみを適度に取り除き、後述の乾燥の条件と組み合わせることで、非点収差を低く抑えることができる。偏光フィルムの最大収縮率は、好ましくは5%以上20%以下であり、より好ましくは8%以上18%以下であり、更に好ましくは10%以上16%以下であり、より更に好ましくは12%以上15%以下である。
【0060】
湿潤は、例えば、恒湿恒温装置に偏光フィルムを所定時間放置する、水をミスト状にして偏光フィルムに噴霧する、等の方法で行うことができるが、偏光フィルムの含水率を高めることができれば、方法は特に限定されるものではない。湿潤は、通常、50~90℃程度の加熱雰囲気中で行われる。
【0061】
湿潤させた偏光フィルムは、吸水した水の多くがフィルムに保持された状態で曲面加工するために、冷却することが好ましい。例えば、恒湿恒温装置から取り出した偏光フィルムを、そのまま室温(20~25℃程度)に放置することで、偏光フィルムを冷却することができる。
【0062】
<偏光フィルムの曲面加工>
偏光フィルムの曲面加工は、フィルム形状を、所望の曲面形状にすることができる方法であれば、いずれの方法を採用することもできる。好ましい方法としては、プレス成形法が挙げられる。例えば、凸面型の上に偏光フィルムを配置した状態で押圧することにより、凸面形状を偏光フィルムに転写し、曲面形状を有する偏光フィルム14が得られる。
【0063】
より具体的には、例えば、温度調整部(ヒ-ター、冷却媒体等)と加圧部とを備え、球面の成形面を有する雄型と雌型とが一対となった成形型を有するプレス成形装置に、平面シート状偏光フィルムを挟み込んで、押圧して、偏光フィルムを成形面の形状に曲面加工する。
【0064】
図5は、球面の成形面を有する雄型を備える曲面加工台の概略構成図である。曲面加工台60は、加工基台部60aと、球面の成形面を有する第1の雄型部61aと、第2の雄型部61bとを備える。図中、雄型部が2つ示してあるが、その数は特に限定されない。第1の雄型部61a及び第2の雄型部61bは、左右眼の眼鏡レンズ用として構成されたものであってもよい。
【0065】
加工基台部60aに平面シート状偏光フィルム10を載置させ、図示しない雌型を押し当てて、例えば室温(20~25℃程度)にてプレスすることで、曲面形状を偏光フィルムに転写し、偏光フィルム14の曲面加工が行われる。
【0066】
偏光フィルム14は、好ましくは、物体側表面111の形状に対応させて曲面加工する。偏光フィルム14の曲面の曲率は、製造される偏光レンズ100の物体側表面111のベースカーブに対応して形成されることが好ましい。処方レンズが累進レンズや非球面レンズなど、球面以外の面形状を有する場合には、曲面は物体側表面111の形状に合わせた面形状としてもよい。なお、偏光フィルム14の曲面の曲率は、偏光レンズ100のベースカーブと異なっていてもよいが、セミフィニシュレンズの場合、眼球側表面121の研削又は研磨が可能な範囲で偏光レンズ100の物体側表面111のベースカーブと異なっていてもよい。
【0067】
偏光フィルム14は、例えば、1.0ベース以上10.0ベース以下のベースカーブを有する。ベースカーブは、例えば、2.0ベース以上8.0ベース以下であってもよい。
偏光フィルム14のベースカーブと、偏光レンズ100の物体側表面111のベースカーブとの差の絶対値は、好ましくは2.0ベース以下であり、より好ましくは1.5ベース以下であり、更に好ましくは1.0ベース以下である。
【0068】
<偏光フィルムの乾燥,温度T1>
本実施形態の製造方法では、曲面加工後の偏光フィルム100を温度T1で乾燥する。なお、本実施形態において、温度T1とは、乾燥のための加熱処理を行う雰囲気の温度をいうものとする。本実施形態においては、偏光フィルムの視感透過率を高く維持するため、偏光フィルムの収縮率を低くするので、偏光フィルムの変形が顕著になるが、温度T1を後述の式(1)の条件を満たすように設定することで、偏光フィルムの変形を防ぐことができる。上記の乾燥は、大気中で行うことができる。
【0069】
温度T1は、好ましくは120℃超え160℃以下である。温度T1を120℃超えとすることで、偏光フィルムの変形を防ぐことができ、160℃以下とすることで、偏光フィルムに変色やクラックが発生することを防ぐことができる。温度T1は、好ましくは125℃以上155℃以下であり、より好ましくは130℃以上150℃以下であり、更に好ましくは135℃以上145℃以下である。
【0070】
乾燥方法としては、種々の方法が採用できるが、上記温度T1に加熱した熱風循環式オーブンに偏光フィルムを載置し、熱風を当てる方式を用いることができる。乾燥時間としては、特に制限はない。乾燥では、偏光フィルムは、曲面加工を行った型から外して乾燥させてもよく、型にはめたままの状態で乾燥させてもよい。
【0071】
<成形型の準備>
本実施形態の製造方法は、偏光フィルムが内部に配置されたキャビティを有する成形型を用意することを含む。本実施形態の製造方法は、偏光レンズを、例えば、注型重合法(キャスティング法)を用いて製造する。キャスティング法は、上型モールドと、下型モールドと、上型モールド及び下型モールド間の距離を調整し、レンズ厚を決定するシール部材とにより形成されるキャビティ内で、硬化性組成物を硬化させることで、偏光レンズを得る方法である。
【0072】
図6は、上型モールド16、乾燥後の偏光フィルム14、及び下型モールド18の概略断面図である。乾燥後の偏光フィルム14は、上型モールド16及び下型モールド18よりも、約2mm小さい直径を有することが好ましい。これにより、後述する硬化性組成物の注入において、偏光フィルム14の両側に硬化性組成物が回り込むことができるようになり、キャビティへの硬化性組成物の注入をスムーズに行うことができる。
【0073】
図7は、上型モールド16に偏光フィルム14を保持するための接着剤からなる保持部材20が形成された状態を示す平面図である。
図8は、上型モールド16に偏光フィルム14を保持するための接着剤からなる保持部材20が形成された状態のA-A'線の概略断面図である。
【0074】
上型モールド16は、周縁に平面形状のフランジ部16aを有していてもよい。
図7において、上型モールド16のフランジ部16aのキャビティ側面に90°間隔で4カ所に、偏光フィルム14を保持するための保持部材20a、20b、20c、20dが配設されている。この保持部材20a、20b、20c、20dは、偏光フィルムを接着、支持するためのもので、偏光フィルムがこれら保持部材20a、20b、20c、20dに載置されたとき、上型モールド16のキャビティ側面に接触しないように、所定のクリアランス(間隔)を維持しながら偏光フィルムを保持できるように接着剤柱の高さ及び位置が制御されている。なお、偏光レンズは、枠入れする眼鏡フレームの玉型形状300に併せてカットされるため、保持部材20は、枠入れ加工後は、偏光レンズ内に残らないように構成されている。保持部材を用いることで、偏光フィルム14表面と上型モールド16のキャビティ側面とが接触せず、所定の間隔(以下、「クリアランス」という。)を保ちながら、偏光フィルム14が保持される。なお、保持部材の数は特に限定されない。
【0075】
上型モールド16のキャビティ側面と偏光フィルム14との距離の最小値は、好ましくは0.05mm以上2.0mm以下である。当該最小値は、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上0.7mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上0.6mm以下である。
【0076】
保持部材は接着剤である。接着剤は、好ましくは、柱状(円柱、立方体等)又は塊状に、好ましくは柱状に、上型モールドのキャビティ側面の周縁部上、又は偏光フィルムの物体側表面の周縁部上に、載せられる。
【0077】
上型モールド及び下型モールドの材料としては、例えば、ガラス、セラミック、金属、樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガラスであることが好ましい。
【0078】
上型モールドは、通常、キャビティ側に配置される面(成形面)が凹面であって、この凹面の面形状が転写されることにより、重合硬化により得られるレンズの凸面の屈折面が形成される。上型モールドの成形面は、上型モールドがガラスモールドの場合、通常、荒摺り、砂かけ、研磨等の鏡面加工された面となっている。
【0079】
一方、下型モールドは、通常、成形面が凸面であって、この凸面の面形状が転写されることにより、重合硬化により得られるレンズの凹面の屈折面が形成される。下型モールドにも、通常、上述の上型モールドと同様の加工が施される。
【0080】
シール部材としては、ガスケット、片面に接着剤層を有するテープ(以下、「粘着テープ」という)を使用することができる。ガスケットを使用する場合には、通常、バネ等の弾性体からなるクランプ部材で上型モールド及び下型モールドを挟持して固定してもよい。一方、粘着テープの場合には、通常、クランプ部材は必要とされない。
【0081】
粘着テープの基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン、ABSなどのポリスチレン系フィルム、ポリイミド、アセテート、紙、布、金属が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンが好ましい。
【0082】
また、粘着テープの形状は、上型モールド及び下型モールドの周囲に巻回できるものであればよい。粘着テープの厚さは、成形型を組み立てた際、座屈が起こらない程度の厚さであればよいが、通常、200μm未満であることが好ましい。
【0083】
粘着テープの粘着剤としては、例えば、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤が挙げられる。硬化性組成物への溶け出し、耐熱性の観点からは、粘着成分として、シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0084】
また、粘着テープを使用した成形型の組み付けについては、眼鏡用プラスチックレンズの注型重合法に用いられている各種の組み付け方法を採用することができる。例えば、上型モールド16、偏光フィルム14、及び下型モールド18をこの順にそれぞれ間隔をもって配置して、上型モールド16と下型モールド18との間隔をシール部材により閉塞することが好ましい。より詳細には、例えば、特開2001-330806号公報を参照できる。
【0085】
<硬化性組成物の注入>
成形型に、硬化性組成物を注入する。硬化性組成物は、注入孔より注入器を用いて、上型モールド16と下型モールド18と粘着テープとで形成されたキャビティ内に、気泡が残らないように充填することが好ましい。注入孔は、上型モールド16と偏光フィルム14との間、及び下型モールド18と偏光フィルム14との間のいずれに形成されていてもよい。
【0086】
(硬化性組成物)
硬化性組成物は、重合などにより硬化する反応型硬化性組成物であっても、溶融状態の熱可塑性樹脂を含む組成物であって冷却することで相転移型硬化性組成物であってもよい。
【0087】
硬化性組成物としては、例えば、樹脂のモノマーを含む組成物が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリチオウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系樹脂;ポリスルフィド樹脂等のエピチオ系樹脂;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の付加重合樹脂;が挙げられる。相転移型硬化性組成物としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリチオウレタン樹脂又はポリカーボネート系樹脂が好ましく、ポリチオウレタン樹脂がより好ましい。
【0088】
(ポリチオウレタン樹脂)
ポリチオウレタン樹脂のモノマーは、ポリイソシアナート成分と、ポリチオール成分である。
【0089】
(ポリイソシアナート成分)
ポリイソシアナート成分としては、例えば、芳香族ポリイソシアナート化合物、脂環式ポリイソシアナート化合物、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ポリイソシアナート化合物が挙げられる。
【0090】
芳香族ポリイソシアナート化合物としては、例えば、ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4'-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル-4,4'-ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、2-イソシアナトフェニル-4-イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-6-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メトキシ-4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メトキシ-3-イソシアナトフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
【0091】
脂環式ポリイソシアナート化合物としては、例えば、ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-2-メチル-1,3-ジチオランが挙げられる。
【0092】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリイソシアナート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11-ウンデカントリイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアナート-2-イソシアナトメチル-3-ペンタン、1,2,3-トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5-ジチア-1,2,6,7-ヘプタンテトライソシアナート、2,6-ジイソシアナトメチル-3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジイソシアナート、2,5-ジイソシアナートメチルチオフェン、4-イソシアナトエチルチオ-2,6-ジチア-1,8-オクタンジイソシアナート、1,2-ジイソチオシアナトエタン、1,6-ジイソチオシアナトヘキサンが挙げられる。
これらのポリイソシアナート化合物は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0093】
ポリイソシアナート化合物は、好ましくは、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、及びビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンからなる群より選ばれる1種以上である。
【0094】
(ポリチオール成分)
ポリチオール成分としては、例えば、ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物、脂環構造を有するポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0095】
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物において、ポリオール化合物とは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物である。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0096】
メルカプト基含有カルボン酸化合物としては、例えば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸化合物、チオサリチル酸が挙げられる。
【0097】
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物としては、例えば、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0098】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2-メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオール等が挙げられる。
【0099】
脂環構造を有するポリチオール化合物としては、例えば、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、メチルシクロヘキサンジチオール、ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、ビス(メルカプトメチル)ジチアン等が挙げられる。
【0100】
芳香族ポリチオール化合物としては、例えば、ジメルカプトベンゼン、ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、トリメルカプトベンゼン、トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、4,4'-ジメルカプトビベンジル、2,5-トルエンジチオール、ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
これらのポリチオール化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても
よい。
【0101】
ポリチオール化合物は、好ましくは、ビス(メルカプトメチル)ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオール、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンからなる群より選ばれる1種以上である。
なお、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオールは、好ましくは、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物である。
【0102】
ポリイソシアナート成分とポリチオール成分との組合せの好適例としては、
(1)キシリレンジイソシアナートを含むポリイソシアナート成分と、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物を含むポリチオール成分、
(2)ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含むポリイソシアナート成分と、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及び、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンを含むポリチオール成分、
(3)ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートを含むポリイソシアナート成分と、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物を含むポリチオール成分、
が挙げられる。
つまり、第1のレンズ要素部110及び前記第2のレンズ要素部120が、上述のイソシアナート成分と、上述のポリチオール成分により得られるポリチオウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0103】
ポリイソシアナート成分とポリチオール成分との配合割合は、イソシアナート基/メルカプト基のモル比が、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.80以上であり、より好ましくは0.95以上である。当該モル比は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.20以下であり、更に好ましくは1.05以下である。
【0104】
ポリイソシアナート成分、及びポリチオール成分の他、紫外線吸収剤、重合触媒、離型剤、抗酸化剤、着色防止剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤等の各種添加剤を配合してもよい。上記各種成分を通常の方法により混合することで、硬化性組成物が得られる。
【0105】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、好ましくは、クロロホルム溶液中において、345nm以上の極大吸収波長を有する。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0106】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン及び2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール及び2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0107】
紫外線吸収剤の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以上2質量部以下であり、更に好ましくは0.3質量部以上2質量部以下であり、更に好ましくは0.5質量部以上2質量部以下であり、更に好ましくは0.8質量部以上2質量部以下である。
【0108】
(重合触媒)
重合触媒は、好ましくは有機スズ化合物であり、より好ましくはアルキルスズハライド化合物又アルキルスズ化合物である。
【0109】
アルキルスズハライド化合物としては、例えば、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、モノメチルスズトリクロライド、トリメチルスズクロライド、トリブチルスズクロライド、トリブチルスズフロライド、ジメチルスズジブロマイドが挙げられる。
【0110】
アルキルスズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。
【0111】
これらの中でも、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0112】
重合触媒の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは0.005質量部以上0.5質量部以下であり、更に好ましくは0.005質量部以上0.1質量部以下である。
【0113】
(離型剤)
硬化性組成物は、離型剤を含有することが好ましく、離型剤としてリン酸エステル化合物を含有することが好ましい。リン酸化合物を含有することで、成形型からの離形性を高めるのみならず、偏光フィルムと基材の接着性を向上させることができる。
【0114】
リン酸化合物としては、例えば、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、ノニルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、プロピルフェニルアシッドフォスフェート、ブチルフェニルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。リン酸エステル化合物は、リン酸モノエステル化合物、リン酸ジエステル化合物のいずれであってもよいが、リン酸モノエステル化合物、及びリン酸ジエステル化合物の混合物が好ましい。
【0115】
離型剤の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上1.00質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.50質量部以下である。
【0116】
(付加重合樹脂)
付加重合樹脂のモノマーとしては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを含む。付加重合樹脂は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを含む付加重合性組成物の硬化物である。第1のレンズ要素部110及び前記第2のレンズ要素部120が、上述の付加重合性組成物の硬化物を含有することが好ましい。
【0117】
付加重合性組成物は、そのほか、単量体を含んでいてもよい。
単量体は、三次元架橋された光学用樹脂を得るために、好ましくは重合性不飽和結合を分子内に2以上有する単量体を含む。
重合性不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリレート基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレート基とは、メタクリレート基、及びアクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
これらの中でも、好ましくは、メタアクリレート基及びアリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0118】
重合性不飽和結合を分子内に2以上有する単量体としては、好ましくは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを含み、より好ましくは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ベンジルメタクリレート、ジアリルフタレート及びアルキル基の炭素数が1~4のアルキルメタクリレートを含む。
【0119】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの配合量は、単量体全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0120】
ベンジルメタクリレート、ジアリルフタレート及びアルキル基の炭素数が1~4のアルキルメタクリレートと組み合わせて使用する場合、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの配合量は、単量体全量に対して、より好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0121】
ベンジルメタクリレートの配合量は、単量体全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0122】
ジアリルフタレートとしては、ジアリルイソフタレート及びジアリルテレフタレートからなる群から選ばれる1種又は2種が挙げられる。
【0123】
ジアリルフタレートの配合量は、単量体全量に対して、好ましくは14質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは88質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0124】
アルキル基の炭素数が1~4のアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、及びtert-ブチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0125】
アルキルメタクリレートの配合量は、単量体全量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0126】
重合に用いられるラジカル開始剤としては、1,1-アゾビスシクロヘキサンカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1'-アゾビスシクロヘキサンナイトレート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0127】
ラジカル開始剤の配合量は、単量体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0128】
<硬化性組成物の硬化>
硬化性組成物を注入した成形型を加熱炉に入れて加熱することにより、硬化性組成物を硬化させることができる。ここで、加熱条件は、硬化性組成物の種類により決定することができ、好ましくは0℃以上150℃以下、より好ましくは10℃以上130℃以下、好ましくは5時間以上50時間以下、より好ましくは10時間以上25時間以下かけて昇温し、硬化を行う。硬化後、基材の内部に偏光フィルム14が配置された偏光レンズ100が得られる。
【0129】
<偏光レンズのアニーリング,温度T2>
得られた偏光レンズ100は、温度T2でアニーリングされる。なお、本実施形態において、温度T2とは、偏光レンズのアニーリングのための加熱処理を行う雰囲気の温度をいうものとする。偏光レンズのアニーリングにおいては、通常、硬化性組成物に硬化によって生じた内部ひずみが取り除かれる。偏光レンズが高温条件に曝されることで、高い視感透過率を有し、収縮率を低くした偏光フィルムは、特に変形が生じやすくなるが、本実施形態の製造方法においては、偏光フィルムの乾燥時に温度T1をT2よりも高く設定することで、偏光レンズのアニーリングにおける偏光フィルムの変形を防ぐことができる。そのため、非点収差が低く抑えられた偏光レンズが得られる。なお、上記のアニーリングは、大気中で行うことができる。
【0130】
温度T2は、好ましくは100℃以上130℃以下であり、より好ましくは110℃以上125℃以下であり、更に好ましくは115℃以上125℃以下である。温度T2が当該範囲であることで、非点収差がより低く抑えられた偏光レンズが得られる。
【0131】
温度T1と温度T2の差(T1-T2)は、好ましくは5℃以上40℃以下であり、より好ましくは10℃以上30℃以下であり、更に好ましくは15℃以上25℃以下である。当該差(T1-T2)の範囲とすることで、非点収差がより低く抑えられた偏光レンズが得られる。
【0132】
温度T2は、好ましくは偏光レンズのガラス転移温度よりも3℃以上高い温度であり、より好ましくは偏光レンズのガラス転移温度よりも5℃以上高い温度である。温度T2が当該範囲であることで、非点収差がより低く抑えられた偏光レンズが得られる。
【0133】
アニーリングの方法としては、種々の方法が採用できるが、上記温度T2に加熱した加熱炉内で処理する方式を用いることができる。アニーリング時間としては、特に制限はない。アニーリングは、偏光レンズは、硬化性組成物を硬化させた後、成形型から外してアニーリングしてもよく、成形型にはめたままの状態でアニーリングしてもよい。
【0134】
成形型を加熱炉より取り出し、粘着テープを剥離し、上型モールド16及び下型モールド18から離型させて、偏光レンズを得ることができる。
【0135】
得られた偏光レンズがセミフィニシュレンズの場合には、その後、偏光レンズ100の眼球側表面121をカーブジェネレーター及び研磨装置にて研削/研磨加工して、処方度数に合致した視力補正用眼鏡レンズを得ることができる。
【0136】
(機能層の形成)
偏光レンズは、上述の機能層が形成されていてもよい。各層の形成方法は、上述の方法等の公知の方法が用いられる。
【0137】
以上説明した本開示の実施形態によれば、視感透過率及び偏光度が高く、非点収差が低く抑えられた偏光レンズが得られる。
【実施例】
【0138】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0139】
[測定方法]
<視感透過率>
視感透過率は、JIS T7333:2005に従って測定した。
【0140】
<偏光度>
偏光度(Peff)は、ISO8980-3に従って、紫外可視近赤外分光光度計「V-660」(日本分光株式会社製)を使用し、直線偏光光に対して偏光素子の透過軸が平行方向のときの視感透過率(T//)及び偏光素子の透過軸が直行方向のときの視感透過率(T⊥)を求め、次式により算出した。視感透過率(T//)及び視感透過率(T⊥)は、可視分光光度計と偏光子(グラントムソンプリズム)を用いて測定した。測定光は、偏光レンズの物体側表面から入射させた。
Peff(%)=〔(T//-T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
【0141】
<非点収差>
偏光レンズの物体側表面幾何学中心での最大曲率半径(mm)(Rmax)と最小曲率半径(mm)(Rmin)を曲率半径測定装置「FOCOVISON」(Automation&Robotics社製)で測定した。最大曲率半径(mm)と最小曲率半径(mm)との曲率差(Rmax-Rmin)を非点収差とし、偏光レンズの変形の指標とした。
【0142】
<実施例A1:偏光レンズA1の製造>
1.偏光フィルムの収縮、曲面加工、及び乾燥
偏光フィルムとして、二色性色素及びポリビニルアルコールを含む延伸フィルム(厚さ35μm)を、恒湿恒温装置内に配置し湿潤処理し、曲面加工開始時の含水率が約4%となるよう湿潤させた。湿潤させた偏光フィルムを、室温(20~25℃)に2分程度放置し、最大収縮率11%まで収縮させた。その後、
図5に基づき説明した前述の方法により曲面加工した。曲面加工も、同様に室温で行った。
次いで、型から外した曲面加工した偏光フィルムを、市販の熱風循環式オーブンを用い、140℃で65分間加熱した。加熱後、上型モールドのキャビティ側面の周縁部の4ヶ所に接着剤柱を設けた。その後、接着剤柱上に偏光フィルムを介在させて、上型モールド及び下型モールドを、これらの間隔をシール部材として粘着テープを用いて、閉塞し成形型を組み立てた。上型モールド及び下型モールドの表面形状は球面とし、内径は80mm、曲率半径は130.4mmとした。
【0143】
2.注型重合法によるレンズの成形、離型
眼鏡レンズ用基材の原料として、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを50.6質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を23.90質量部、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンを25.48質量部、紫外線吸収剤として2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを2.8質量部、内部離型剤として、リン酸エステル化合物「ゼレックUN」(製品名、Stepan社製)を0.050質量部、ブルーイング剤を0.0250質量部添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散又は溶解させた眼鏡レンズ用基材の原料中に、触媒としてジブチルスズジクロライドを0.05質量部添加し、室温で十分に撹拌して均一液とし、その組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行い、硬化性組成物を調製した。
調製した硬化性組成物を、上述の曲面加工した偏光フィルムが内部に配置された成形型(ベースカーブ2.50ベース)に注入した。
その後、成形型を加熱炉に配置し、30℃で7時間保持し、その後30℃から120℃まで10時間かけて昇温し、加熱硬化を行った。
加熱硬化後、成形型を加熱炉より取り出し、粘着テープを剥離し、上型モールド及び下型モールドから偏光レンズを離型させて、偏光レンズA1を得た。得られた偏光レンズA1を加熱炉に配置し、120℃で2時間アニーリングした。得られた偏光レンズA1の屈折率neは、1.60、ガラス転移温度は118℃であった。
得られた偏光レンズA1について、上述の測定方法により、各種物性を測定した。なお、偏光レンズの物体側表面は球面設計であり、物体側表面幾何学中心とは、偏光レンズを平面視でみた円の中心を通る垂線と眼球側表面との交点である。
【0144】
<実施例A2~A8、比較例A1~A2:偏光レンズA2~A8、A51~A52の製造>
偏光フィルムの最大収縮率及び乾燥温度を表1に示すとおりとした以外は、実施例A1と同様の方法で偏光レンズA2~A8、A51~A52を得た。
【0145】
【0146】
【0147】
以上、実施例及び比較例の結果から、本実施形態に係る製造方法によれば、高い視感透過率及び低い非点収差を有する偏光レンズが得られる。
【0148】
実施例A1と比較例A1及びA2との対比によれば、最大収縮率を低くすることで、高い視感透過率が得られ、更には、式(1)の条件を満たすことで、非点収差を低く抑えることができることがわかる。
実施例A1~A6の結果から、広い範囲の最大収縮率で、式(1)の条件を満たすことで、高い視感透過率が得られ、非点収差を低く抑えることができることがわかる。
実施例A1,A7,A8の結果から、広い範囲の乾燥温度T1で、式(1)の条件を満たすことで、高い視感透過率が得られ、非点収差を低く抑えることができることがわかる。
【0149】
<実施例B1:染色>
実施例A1で得られた偏光レンズA1を、赤色系染料を含む染色液中に浸漬して染色した。染色された偏光レンズについて、上述の方法で視感透過率を測定しその結果は32.8%であった。
【0150】
<実施例B2:染色>
実施例A1で得られた偏光レンズA1を、黄色系染料を含む染色液中で処理して染色した。染色された偏光レンズについて、上述の方法で視感透過率を測定しその結果は、31.7%であった。
【0151】
<実施例B3:染色>
実施例A1で得られた偏光レンズA1を、青色系染料を含む染色液中で処理して染色した。染色された偏光レンズについて目視で観察すると、発色性の低い濃色系の染料である青色系染料を用いたにもかかわらず、青色の発色が良好であった。
【0152】
<実施例B4:染色>
実施例A1で得られた偏光レンズA1を、緑色系染料を含む染色液中で処理して染色した。染色された偏光レンズについて、目視で観察すると、発色性の低い濃色系の染料である緑色系染料を用いたにもかかわらず、緑色の発色が良好であった。
【0153】
以上、実施例及び比較例の結果から、本実施形態に係る製造方法によれば、高い視感透過率及び低い非点収差を有する偏光レンズが得られる。
【符号の説明】
【0154】
14…偏光フィルム、16…上型モールド、16a…フランジ部、18…下型モールド、20a、20b、20c、20d…保持部材、100…偏光レンズ、110…第1のレンズ要素部、111…物体側表面、120…第2のレンズ要素部、121…眼球側表面、300…玉型形状、W1…最小値