(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】鉛蓄電池の蓋及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/256 20210101AFI20230928BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M50/256 101
H01M50/15 101
(21)【出願番号】P 2021528578
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2019024575
(87)【国際公開番号】W WO2020255352
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 幸治
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204538098(CN,U)
【文献】登録実用新案第3040746(JP,U)
【文献】実開昭57-115166(JP,U)
【文献】特開2006-172782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の電槽の上部に取り付けられる蓋本体と、
前記蓋本体に対して回動可能に取り付けられるハンドルと、
前記蓋本体に対して前記ハンドルを所定の回動位置に維持するロック機構と、を備え
、
前記蓋本体は、前記ハンドルが収容される収容凹部を有し、
前記ロック機構は、前記ハンドルを、前記ハンドルが収容凹部に収容された回動位置に維持し、
前記ロック機構は、前記蓋本体に設けられて前記蓋本体に対して前記ハンドルを回動可能に軸支するための軸部と、前記ハンドルに設けられて前記軸部が嵌め込まれる穴部と、を有し、
前記穴部は、前記穴部に嵌め込まれた前記軸部が摺動可能な長穴である、
鉛蓄電池の蓋。
【請求項2】
前記ハンドルは、基端側に前記穴部が形成されるとともに前記軸部が前記穴部に嵌め込まれることにより前記蓋本体に回動可能に取り付けられるアーム部を有し、
前記穴部は、第一位置と、前記第一位置よりも前記アーム部の先端側に位置する第二位置と、を有し、
前記アーム部は、前記軸部が前記穴部の前記第一位置に位置する際に、前記蓋本体に対して回動可能な形状であり、前記軸部が前記穴部の前記第二位置に位置する際に、前記蓋本体に対して回動不能な形状である、
請求項
1に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項3】
前記ハンドルは、基端側に前記穴部が形成されるとともに前記軸部が前記穴部に嵌め込まれることにより前記蓋本体に回動可能に取り付けられるアーム部を有し、
前記アーム部は、前記ハンドルが前記収容凹部に収容された際に前記収容凹部の底面に面する第一平面を有し、
前記穴部は、第一位置と、前記第一位置よりも前記アーム部の先端側に位置する第二位置と、を有し、
前記第一平面の前記アーム部の前記基端側の先端は、前記軸部が前記穴部の前記第一位置に位置する際に、前記収容凹部の底面に垂直で前記軸部の中心を通る基準線上、又は、前記基準線よりも前記アーム部の先端側に位置し、前記軸部が前記穴部の前記第二位置に位置する際に、前記基準線よりも前記アーム部の前記基端側に位置する、
請求項
1又は
2に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項4】
前記アーム部は、前記第一平面から延びる円弧面を有し、
前記円弧面の中心は、前記軸部が前記穴部の前記第一位置に位置する際の前記軸部の中心であり、
前記円弧面の半径は、前記軸部が前記穴部の前記第一位置に位置する際の前記軸部の中心から前記収容凹部の底面までの距離以下である、
請求項
3に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項5】
前記アーム部は、前記円弧面から延びるとともに前記ハンドルが前記蓋本体に対して垂直に直立した際に前記収容凹部の前記底面に面する第二平面を有する、
請求項
4に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の鉛蓄電池の蓋を備える、
鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の蓋及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓋に対してハンドルが回動可能に取り付けられた鉛蓄電池が記載されている。この鉛蓄電池では、取手を直立状態とすることで取手を握りやすくなり、取手を倒した状態とすることで従来の締付金具で鉛蓄電池を車両に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、蓋に対してハンドルが回動可能に取り付けられた鉛蓄電池を車両に搭載したところ、車両の振動に伴い鉛蓄電池の方から異音が発生することを発見した。そこで、この異音の原因を調べたところ、車両の振動に伴いハンドルが蓋に対して回動し、これによりハンドルが蓋に衝突して異音が発生することを突き止めた。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、車両の振動に伴う鉛蓄電池からの異音の発生を抑制することができる鉛蓄電池の蓋及び鉛蓄電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池の蓋は、鉛蓄電池の電槽の上部に取り付けられる蓋本体と、蓋本体に対して回動可能に取り付けられるハンドルと、蓋本体に対してハンドルを所定の回動位置に維持するロック機構と、を備える。
【0007】
この鉛蓄電池の蓋では、ハンドルが蓋本体に対して回動可能に取り付けられているが、ロック機構により、ハンドルを蓋本体に対して所定の回動位置に維持することができる。このため、例えば、鉛蓄電池を車両に搭載した際に、ロック機構により、ハンドルを蓋本体に対して所定の回動位置に維持しておくことで、車両が振動しても、ハンドルが蓋本体に衝突することによる振動の発生を抑制することができる。
【0008】
蓋本体は、ハンドルが収容される収容凹部を有し、ロック機構は、ハンドルを、ハンドルが収容凹部に収容された回動位置に維持してもよい。この鉛蓄電池の蓋では、ロック機構により、ハンドルを蓋本体の収容凹部に収容した状態に維持することができるため、ハンドルに邪魔されることなく鉛蓄電池を車両に搭載することができる。
【0009】
ロック機構は、蓋本体に設けられて蓋本体に対してハンドルを回動可能に軸支するための軸部と、ハンドルに設けられて軸部が嵌め込まれる穴部と、を有し、穴部は、穴部に嵌め込まれた軸部が摺動可能な長穴であってもよい。この鉛蓄電池の蓋では、蓋本体に設けられた軸部がハンドルに設けられた穴部に嵌め込まれることで、蓋本体に対してハンドルを回動可能とすることができる。そして、この穴部が、穴部に嵌め込まれた軸部が摺動可能な長穴であるため、穴部に対する軸部の位置を変えることで、軸部を中心としたハンドルの回動半径を変えることができる。このため、例えば、軸部を中心としたハンドルの回動半径の違いにより、ハンドルの回動軌跡と蓋本体との重なり具合が変わるように、軸部の位置、穴部の位置、及び穴部の長さを設定する。これにより、穴部に対する軸部の位置を変えることで、蓋本体に対してハンドルが回動可能となる状態と、蓋本体に対してハンドルが所定の回動位置に維持される状態とを、切り換えることができる。
【0010】
ハンドルは、基端側に穴部が形成されるとともに軸部が穴部に嵌め込まれることにより蓋本体に回動可能に取り付けられるアーム部を有し、穴部は、第一位置と、第一位置よりもアーム部の先端側に位置する第二位置と、を有し、アーム部は、軸部が穴部の第一位置に位置する際に、蓋本体に対して回動可能な形状であり、軸部が穴部の第二位置に位置する際に、蓋本体に対して回動不能な形状であってもよい。この鉛蓄電池の蓋では、軸部を穴部の第一位置に位置することで、蓋本体に対してアーム部が回動可能となり、軸部が穴部の第二位置に位置することで、蓋本体に対してアーム部が回動不能となる。これにより、蓋本体に対してハンドルを回動可能としつつ、ロック機構により、蓋本体に対してハンドルを所定の回動位置に維持することができる。
【0011】
ハンドルは、基端側に穴部が形成されるとともに軸部が穴部に嵌め込まれることにより蓋本体に回動可能に取り付けられるアーム部を有し、アーム部は、ハンドルが収容凹部に収容された際に収容凹部の底面に面する第一平面を有し、穴部は、第一位置と、第一位置よりもアーム部の先端側に位置する第二位置と、を有し、第一平面のアーム部の基端側の先端は、軸部が穴部の第一位置に位置する際に、収容凹部の底面に垂直で軸部の中心を通る基準線上、又は、基準線よりもアーム部の先端側に位置し、軸部が穴部の第二位置に位置する際に、基準線よりもアーム部の基端側に位置してもよい。この鉛蓄電池の蓋では、軸部が穴部の第一位置に位置する際は、アーム部の第一平面が収容凹部の底面に押し当てられることなく、蓋本体に対してハンドルを回動することができる。一方、軸部が穴部の第二位置に位置する際は、蓋本体に対してハンドルを回動しようとしても、アーム部の第一平面が収容凹部の底面に押し当てられることで、蓋本体に対するハンドルの回動が阻止される。これにより、蓋本体に対してハンドルを回動可能としつつ、ロック機構により、蓋本体に対してハンドルを所定の回動位置に維持することができる。
【0012】
アーム部は、第一平面から延びる円弧面を有し、円弧面の中心は、軸部が穴部の第一位置に位置する際の軸部の中心であり、円弧面の半径は、軸部が穴部の第一位置に位置する際の軸部の中心から収容凹部の底面までの距離以下であってもよい。この鉛蓄電池の蓋では、軸部が穴部の第一位置に位置する際に、アーム部の円弧面が収容凹部の底面に押し当てられないため、蓋本体に対してハンドルを回動することができる。
【0013】
アーム部は、円弧面から延びるとともにハンドルが蓋本体に対して垂直に直立した際に収容凹部の底面に面する第二平面を有してもよい。この鉛蓄電池の蓋では、蓋本体に対してハンドルを持ち上げると、アーム部の第二平面が収容凹部の底面に当接されることで、ハンドルが蓋本体に対して立ち上げられた状態で保持される。これにより、ハンドルを持ちやすくなる。
【0014】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、上記の何れかの鉛蓄電池の蓋を備える。この鉛蓄電池では、上記の蓋を備えるため、車両が振動しても、ハンドルが蓋本体に衝突することによる振動の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の振動に伴う鉛蓄電池からの異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】
図3に示す鉛蓄電池の、ハンドルを持ち上げた状態の側面図である。
【
図8】
図8(a)はハンドルの正面図、
図8(b)はハンドルの背面図、
図8(c)はハンドルの底面図である。
【
図9】
図9(a)はハンドルの側面図、
図9(b)は
図8(a)に示すIXb-IXb線における断面図である。
【
図11】軸部が穴部の第一位置にある場合の蓋本体及びハンドルの断面図である。
【
図12】軸部が穴部の第一位置にある場合の蓋本体及びハンドルの断面図である。
【
図13】軸部が穴部の第二位置にある場合の蓋本体及びハンドルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一側面に係る鉛蓄電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下等の方向は、鉛蓄電池における上下等の方向をいう。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0018】
図1~
図5に示すように、鉛蓄電池1は、液式鉛蓄電池である。鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋(鉛蓄電池の蓋)3と、を備えている。電槽2及び蓋3は、例えば、ポリプロピレンで形成されている。電槽2の内部には、複数の電極群及び電解液等が収容されている。
【0019】
蓋3は、蓋本体10と、蓋本体10に対して回動可能に取り付けられたハンドル20と、を備えている。蓋本体10は、蓋本体10に対してハンドル20を回動することで、蓋本体10にハンドル20を収容することもでき、蓋本体10からハンドル20を立ち上げることもできる。
図1及び
図2は、ハンドル20が蓋本体10に収容された状態を示しており、
図3~
図5は、ハンドル20が蓋本体10から立ち上げられた状態を示している。
【0020】
図6及び
図7に示すように、蓋本体10は、電槽2の開口を閉じるように電槽2の上部に取り付けられており、蓋本体10の天面11Aは、略平面状をなしている。蓋本体10は、上方から見たときに、略長方形状をなしている(
図1参照)。以下、説明の便宜上、
図1に示すように、蓋本体10の長手方向をX軸方向、蓋本体10の短手方向をY軸方向とする。なお、電槽2の内部には、X軸方向に沿って複数のセル室が設けられており、各セル室には、電極群が挿入されている。
【0021】
蓋本体10は、一対の端子12,12と、カバー部13と、収容凹部14と、凹部15と、一対の軸部16,16と、を備えている。なお、端子12,12は、一対の端子を意味し、具体的には端子12及び端子12を意味する。他の要素についても同様である。
【0022】
端子12,12は、鉛蓄電池1の出力端子である。端子12,12の何れか一方は、鉛蓄電池1の正極端子であり、端子12,12の何れか他方は、鉛蓄電池1の負極端子である。電槽2内の電極群は、端子12,12に電気的に接続されている。端子12,12は、蓋本体10のX軸方向における両端部において、蓋本体10の天面11Aから上方に突出している。
【0023】
カバー部13は、蓋本体10に設けられた注液口(不図示)を閉塞する液口栓(不図示)を覆っている。カバー部13の天面は、蓋本体10の天面11Aと略面一となっている。
【0024】
収容凹部14は、ハンドル20を収容するために天面11Aから窪んだ凹部である。収容凹部14は、底面14Aと、底面14Aから立ち上がって天面11Aに至る側面14Bと、を有する。収容凹部14は、ハンドル20に略対応する形状となっている。但し、後述するように、収容凹部14内でハンドル20をY軸方向に移動可能とするために、収容凹部14は、ハンドル20よりもY軸方向に少し大きい形状となっている。そして、収容凹部14は、収容凹部14にハンドル20が収容された際に、ハンドル20が天面11Aから突出しない深さとなっている。収容凹部14は、蓋本体10の天面11Aだけでなく蓋本体10の側面11Bにも開放されている。収容凹部14の他の詳細については後述する。
【0025】
凹部15は、収容凹部14に収容されたハンドル20を指などで引っ掛けるために天面11Aから窪んだ凹部である。凹部15は、収容凹部14と繋がるように天面11Aから窪んでいる。
【0026】
軸部16,16は、蓋本体10に対してハンドル20を軸支するための部位である。軸部16,16は、ハンドル20を軸支するために収容凹部14においてX軸方向に延びている。軸部16,16は、X軸方向から見て、互いに同じ位置に形成されている。軸部16,16の他の詳細については後述する。
【0027】
図8及び
図9に示すように、ハンドル20は、一対のアーム部21,21と、グリップ部22と、を備えている。ハンドル20は、アーム部21,21及びグリップ部22により、略U字状に形成されている。具体的には、アーム部21,21は、互いに対向して平行に延びており、グリップ部22は、アーム部21,21の対向方向に延びている。アーム部21,21は、その基端21A,21A側の端部において、蓋本体10に対して回動可能に取り付けられている。また、アーム部21,21は、その先端21B,21B側の端部において、グリップ部22に接続されている。アーム部21,21の基端21A,21Aは、アーム部21,21のグリップ部22とは反対側の先端であり、アーム部21,21の先端21B,21Bは、アーム部21,21のグリップ部22側の先端である。アーム部21,21の基端21A,21A側の端部には、アーム部21,21の対向方向とは反対側に膨らむ膨出部23,23が接続されている。つまり、膨出部23,23は、アーム部21,21から互いに反対方向に延びるように膨出している。
【0028】
図6及び
図7に示すように、蓋本体10の収容凹部14は、ハンドル20のアーム部21,21が収容される第一収容部14C,14Cと、ハンドル20のグリップ部22が収容される第二収容部14Dと、ハンドル20の膨出部23,23が収容される第三収容部14E,14Eと、を有する。Y方向における第二収容部14Dの一方側は、蓋本体10の側面11Bに開放されており、Y方向における第二収容部14Dの他方側は、凹部15に繋がっている。収容凹部14は、収容凹部14内でハンドル20をY軸方向に移動可能とするために、ハンドル20よりもY軸方向に少し大きい形状となっている。具体的には、第一収容部14C,14C、第二収容部14D,14D、及び第三収容部14E,14EのY軸方向の長さは、それぞれ、アーム部21,21、グリップ部22、及び膨出部23,23よりも少し長く形成されている。
【0029】
軸部16,16は、第一収容部14C,14Cにおいて、X軸方向に沿って、収容凹部14の側面14Bから、互いに反対方向に延びるように第三収容部14E,14Eに向けて延びている。軸部16,16は、円柱状に形成されており、その先端部に傾斜面16A,16Aが形成されている。傾斜面16A,16Aは、軸部16,16の底面14Aとは反対側の部分(上部)に形成されており、軸部16,16の先端に向けて底面14A側(下側)に向かうように傾斜している。
【0030】
図8~
図10に示すように、アーム部21,21は、側面21C,21Cと、第一平面21D,21Dと、円弧面21Eと、第二平面21F,21Fと、第三平面21Gと、を有する。
【0031】
側面21C,21Cは、アーム部21,21の対向方向内側に面して、アーム部21,21の軸線方向に延びる平面状の面である。第一平面21D,21Dは、側面21C,21Cと隣接して、アーム部21,21の軸線方向に延びる平面状の面である。第一平面21D,21Dは、ハンドル20が収容凹部14に収容された際に、収容凹部14の底面14Aに面する(
図11及び
図13参照)。円弧面21Eは、第一平面21D,21Dの基端21A,21A側に隣接して、第一平面21D,21Dから延びる円弧状の面である。第二平面21F,21Fは、側面21C,21C及び円弧面21Eの基端21A,21A側に隣接して、円弧面21Eから延びる平面状の面である。第二平面21F,21Fは、アーム部21,21の基端21A,21Aを成す。第二平面21F,21Fは、ハンドル20が蓋本体10に対して垂直に直立した際に、収容凹部14の底面14Aに面する(
図13参照)。第三平面21Gは、第一平面21D,21Dの反対側において側面21C,21Cと隣接し、アーム部21,21の軸線方向に延びる平面状の面である。第三平面21Gは、ハンドル20が収容凹部14に収容された際に、蓋本体10の天面11Aと略面一となる。
【0032】
アーム部21,21の基端21A,21A側の端部には、蓋本体10の軸部16,16が嵌め込まれる穴部24,24が形成されている。穴部24,24は、アーム部21,21の側面21C,21Cに形成された穴であり、X軸方向に沿って、側面21C,21Cから、互いに反対方向に延びるように膨出部23,23に向けて延びている。穴部24,24は、X軸方向から見て、互いに同じ位置に形成されている。
【0033】
アーム部21,21は、軸部16,16が穴部24,24に嵌め込まれることにより、蓋本体10に回動可能に取り付けられる。後述するように、軸部16,16と穴部24,24とは、蓋本体10に対してハンドル20を所定の回動位置に維持するロック機構を構成する。本実施形態では、ロック機構は、ハンドル20を、ハンドル20が収容凹部14に収容された回動位置に維持する。
【0034】
また、アーム部21,21には、穴部24,24の側面21C,21C側の一部を第一平面21D,21D側に開放する切欠き25,25が形成されている。このため、第一平面21D,21D側から見た場合に、切欠き25,25が形成された部分において、穴部24,24が浅くなっている。このため、穴部24,24に軸部16,16を嵌め込む際は、軸部16,16に形成された傾斜面16A,16Aを、アーム部21,21に形成された切欠き25,25に当接させ、ハンドル20を収容凹部14の底面14A側に押し込む。これにより、穴部24,24に軸部16,16を容易に嵌め込むことができる。
【0035】
穴部24,24は、穴部24,24に嵌め込まれた軸部16,16が摺動可能な長穴である。本実施形態では、穴部24,24は、アーム部21,21の軸線方向に延びている。穴部24,24は、第一位置24A,24Aと、第一位置24A,24Aよりもアーム部21,21の先端21B,21B側に位置する第二位置24B,24Bと、を有する。第一位置24A,24A及び第二位置24B,24Bは、軸部16,16が位置し得る穴位置である。第一位置24A,24Aは、例えば、長穴である穴部24,24の基端21A,21A側の端部の穴位置であり、第二位置24B,24Bは、例えば、長穴である穴部24,24の先端21B,21B側の端部の穴位置である。
【0036】
図11~
図13に示すように、アーム部21,21は、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際に、蓋本体10に対して回動可能となる形状であるとともに、軸部16,16が穴部24,24の第二位置24B,24Bに位置する際に、蓋本体10に対して回動不能となる形状となっている。なお、
図11は、
図3に示すXI-XI線における断面図であり、
図13は、
図1に示すXIII-XIII線における断面図である。
【0037】
具体的に説明すると、収容凹部14の底面14Aに垂直で軸部16,16の中心Oを通る線を、基準線A,Aとする。そして、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際に(
図11及び
図12参照)、第一平面21D,21Dのアーム部21,21の基端21A,21A側の先端は、基準線A,A上、又は、基準線A,Aよりもアーム部21,21の先端21B,21B側に位置する。これにより、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際は、アーム部21,21の第一平面21D,21Dが収容凹部14,14の底面14A,14Aに押し当てられることなく、蓋本体10に対してハンドル20を回動することができる。なお、軸部16,16が第二位置24B,24Bに位置している場合は、凹部15に指を差し込み、凹部15からハンドル20を押すことで、軸部16,16を穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置させることができる。
【0038】
また、軸部16,16が穴部24,24の第二位置24B,24Bに位置する際に(
図13参照)、第一平面21D,21Dのアーム部21,21の基端21A,21A側の先端は、基準線A,Aよりもアーム部21,21の基端21A,21A側に位置する。これにより、軸部16,16が穴部24,24の第二位置24B,24Bに位置する際は、蓋本体10に対してハンドル20を回動しようとしても、アーム部21,21の第一平面21D,21Dが収容凹部14,14の底面14A,14Aに押し当てられることで、蓋本体10に対するハンドル20の回動が阻止される。つまり、蓋本体10に対してハンドル20を所定の回動位置に維持することができる。なお、軸部16,16が第一位置24A,24Aに位置している場合は、蓋本体10の側面11B側からハンドル20を押すことで、軸部16,16を穴部24,24の第二位置24B,24Bに位置させることができる。
【0039】
蓋本体10に対してハンドル20を所定の回動位置に維持する観点からは、穴部24,24の短軸の長さ(短径)は、軸部16,16の径と同じ、又は、軸部16,16が摺動可能な範囲で軸部16,16の径よりも小さくすることができる。これにより、軸部16,16と穴部24,24との間で適度の摩擦が生じるため、更に、蓋本体10に対してハンドル20を所定の回動位置に維持しやすくなる。
【0040】
また、円弧面21E,21Eの中心(円弧中心)は、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際の軸部16,16の中心Oとなっている。更に、円弧面21E,21Eの半径(円弧半径)は、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際の軸部16,16の中心Oから収容凹部14,14の底面14A,14Aまでの距離以下となっている。これにより、軸部16,16が穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置する際は、アーム部21,21の円弧面21E,21Eが収容凹部14,14の底面14A,14Aに押し当てられないため、蓋本体10に対してハンドルを回動することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、ハンドル20が蓋本体10に対して回動可能に取り付けられているが、ロック機構を構成する軸部16,16と穴部24,24とにより、ハンドル20を蓋本体10に対して所定の回動位置に維持することができる。このため、例えば、鉛蓄電池1を車両に搭載した際に、ハンドル20を蓋本体10に対して所定の回動位置に維持しておくことで、車両が振動しても、ハンドル20が蓋本体10に衝突することによる振動の発生を抑制することができる。
【0042】
また、ハンドル20を蓋本体10の収容凹部14に収容した状態に維持することができるため、ハンドル20に邪魔されることなく鉛蓄電池1を車両に搭載することができる。
【0043】
また、蓋本体10に設けられた軸部16,16がハンドル20に設けられた穴部24,24に嵌め込まれることで、蓋本体10に対してハンドル20を回動可能とすることができる。そして、この穴部24,24が、穴部24,24に嵌め込まれた軸部16,16が摺動可能な長穴であるため、穴部24,24に対する軸部16,16の位置を変えることで、軸部16,16を中心としたハンドル20の回動半径を変えることができる。このため、例えば、軸部16,16を中心としたハンドル20の回動半径の違いにより、ハンドル20の回動軌跡と蓋本体10との重なり具合が変わるように、軸部16,16の位置、穴部24,24の位置、及び穴部24,24の長さを設定する。これにより、穴部24,24に対する軸部16,16の位置を変えることにより、蓋本体10に対してハンドル20が回動可能となる状態と、蓋本体10に対してハンドル20が回動不能となる状態とを、切り換えることができる。具体的には、軸部16,16を穴部24,24の第一位置24A,24Aに位置させることで、蓋本体10に対してアーム部21,21を回動可能とすることができる。一方で、軸部16,16が穴部24,24の第二位置24B,24Bに位置させることで、蓋本体10に対してアーム部21,21を回動不能とすることができる。つまり、蓋本体10に対してアーム部21,21を所定の回動位置で維持することができる。
【0044】
また、アーム部21,21の第二平面21F,21Fは、円弧面21E,21Eから延びるとともにハンドル20が蓋本体10に対して垂直に直立した際に収容凹部14の底面14Aに面する。このため、蓋本体10に対してハンドル20を持ち上げると、アーム部21,21の第二平面21F,21Fが収容凹部14の底面14Aに当接されることで、ハンドル20が蓋本体10に対して立ち上げられた状態で保持される。これにより、ハンドル20を持ちやすくなる。
【0045】
また、穴部24,24がアーム部21,21の軸線方向に延びているため、容易に、蓋本体10に対してハンドル20を回動可能としつつ、ロック機構により、蓋本体10に対してハンドル20を所定の回動位置に維持することができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、ハンドルが二つのアーム部を備え、それぞれのアーム部にロック機構を設けるものとして説明したが、例えば、片方のアーム部にのみロック機構を設けるものとしてもよく、アーム部が一つのハンドルを用いるものとしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、蓋本体の収容凹部は、蓋本体の天面及び蓋本体の側面に開放されているものとして説明したが、例えば、蓋本体の天面に開放されるが蓋本体の側面には開放されないものとしてもよい。
図14及び
図15に示す鉛蓄電池1Aでは、収容凹部14は、蓋本体10Aの天面11Aに開放されているが、蓋本体10Aの側面11Bに開放されていない。つまり、Y方向における第二収容部14Dの両側は、蓋本体10Aの側面11Bに開放されていない。このため、Y方向における第二収容部14Dの両側に凹部15A及び凹部15Bが形成されている。凹部15A及び凹部15Bは、上記実施形態の凹部15と同様に、収容凹部14に収容されたハンドル20Aを指などで引っ掛けるために天面11Aから窪んだ凹部である。これにより、凹部15A又は凹部15Bからハンドル20AをY方向に押すことができる。
【0049】
また、上記実施形態では、蓋本体に対してハンドルを回動可能に軸支する軸部及び穴部がロック機構を構成するものとして説明したが、例えば、このような軸部及び穴部とは別の要素によりロック機構を構成してもよい。例えば、
図16に示すように、蓋本体10Bに、軸部とは別に凸部18を形成するとともに、ハンドル20に、穴部とは別に凹部28を形成する。このようにしても、蓋本体10Bに対してハンドル20を回動させ、凸部18を凹部28に嵌め込むことで、蓋本体10Bに対するハンドル20の回動位置を維持させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…鉛蓄電池、2…電槽、3…蓋(鉛蓄電池の蓋)、11A…天面、11B…側面、12…端子、13…カバー部、14…収容凹部、14A…底面、14B…側面、14C…第一収容部、14D…第二収容部、14E…第三収容部、15,15A,15B…凹部、16…軸部(ロック機構)、16A…傾斜面、18…凸部、20,20A…ハンドル、21…アーム部、21A…基端、21B…先端、21C…側面、21D…第一平面、21E…円弧面、21F…第二平面、21G…第三平面、22…グリップ部、23…膨出部、24…穴部(ロック機構)、24A…第一位置、24B…第二位置、25…切欠き、28…凹部、A…基準線、O…中心。