(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】培養監視システム、培養監視方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20230928BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230928BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230928BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12M3/00 B
G06T7/60 110
(21)【出願番号】P 2021528786
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025603
(87)【国際公開番号】W WO2020261488
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 歩
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016859(JP,A)
【文献】特開2019-013191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキュベータ内に配置された撮像装置であって、培養容器に収容された生体試料を撮像する前記撮像装置と、
前記撮像装置を制御する制御装置と、を備え、
前記撮像装置は、
前記制御装置からの指示に基づいて、前記生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行し、
前記制御装置からの指示に基づいて、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記撮像装置で取得した前記生体試料の画像に基づいて、前記生体試料の培養プロセスを監視する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の培養監視システムにおいて、
前記撮像装置は、前記第1のシーケンスの実行期間中に、前記複数の断片的な領域の各々の第1の画像を取得し、
前記制御装置は、前記撮像装置で取得した複数の前記第1の画像に基づいて、前記生体試料の生育状態を数値化する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、数値化された前記生育状態の推移(history)を示す画像を表示装置へ出力する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の培養監視システムにおいて、
前記撮像装置は、前記第2のシーケンスの実行期間中に、前記第2の領域を構成する複数の領域の各々の第2の画像を取得し、
前記制御装置は、前記撮像装置で取得した複数の前記第2の画像を貼り合わせることによって、前記第2の領域の画像を生成する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項6】
請求項5に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記第2の領域の画像を表示装置へ出力する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の培養監視システムにおいて、
前記複数の第2の画像の一部が前記複数の第1の画像を兼ねる
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、前記第2のシーケンスで取得した画像に基づいて、前記生体試料の異常、又は、前記培養容器内の培養環境の異常を検出する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の培養監視システムにおいて、
前記第2の領域は、前記培養容器よりも広い連続的な領域である
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、
前記培養容器の種類を特定し、
特定した前記培養容器の種類に応じて、前記第1の領域と前記第2の領域を決定する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項11】
請求項10に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、培養容器の種類と、前記第1のシーケンスで撮像すべき領域の第1の情報と、前記第2のシーケンスで撮像すべき領域の第2の情報と、を関連付けて記憶する記憶装置を備える
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の培養監視システムにおいて、
前記撮像装置は、前記培養容器を基準位置に位置決めする容器ホルダを備える
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の培養監視システムにおいて、
前記制御装置は、
前記第1のシーケンスの実行期間中に、前記複数の断
片的な領域の各々を撮影する複数の指示を、前記撮像装置に順番に送信し、
前記第2のシーケンスの実行期間中に、前記第2の領域を構成する複数の領域の各々を撮影する複数の指示を、前記撮像装置に順番に送信する
ことを特徴とする培養監視システム。
【請求項14】
培養容器に収容された生体試料の培養監視方法であって、
インキュベータ内に配置された撮像装置が、前記生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行することと、
前記撮像装置が、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行することと、を含む
ことを特徴とする培養監視方法。
【請求項15】
インキュベータ内に配置された撮像装置を制御する制御装置に、
前記撮像装置へ、培養容器に収容された生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行させるための指示を送信し、
前記撮像装置へ、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行させるための指示を送信する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、培養監視システム、培養監視方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の培養環境を維持するため、細胞などの生体試料の培養はインキュベータ内で行われている。培養中は生体試料の状態が定期的に確認される。その際、生体試料をインキュベータから取り出すと、生体試料の温度が低下してしまうため、生体試料の生育に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
このため、培養中の生体試料をインキュベータから取り出すことなく監視する細胞培養装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載される細胞培養装置を用いることで、生体試料をインキュベータ外に取り出す回数を大幅に減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生体試料の状態を含む培養プロセスを監視するために生体試料を頻繁に撮像すると、特許文献1に記載される細胞培養装置を用いた場合であっても、生体試料はダメージを受けてしまう。生体試料が受けるダメージは、撮影時の光照射によって引き起こされるかもしれないし、撮影に起因する発熱によって引き起こされるかもしれない。
【0006】
しかしながら、生体試料が受けるダメージを抑えるために撮像頻度を単純に減らしてしまうと、監視に必要な情報が不足してしまう。
【0007】
以上のような実情から、本発明の一側面に係る目的は、生体試料が受けるダメージを抑制しながら生体試料の培養プロセスを適切に監視する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に一態様に係る培養監視システムは、インキュベータ内に配置された撮像装置であって、培養容器に収容された生体試料を撮像する前記撮像装置と、前記撮像装置を制御する制御装置と、を備える。前記撮像装置は、前記制御装置からの指示に基づいて、前記生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行し、前記制御装置からの指示に基づいて、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行する。
【0009】
本発明に一態様に係る培養監視方法は、培養容器に収容された生体試料の培養監視方法であって、インキュベータ内に配置された撮像装置が、前記生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行することと、前記撮像装置が、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行することと、を含む。
【0010】
本発明に一態様に係るプログラムは、インキュベータ内に配置された撮像装置を制御する制御装置に、前記撮像装置へ、培養容器に収容された生体試料内の複数の断片的な領域からなる第1の領域を撮像する第1のシーケンスを、第1のインターバルで繰り返し実行させるための指示を送信し、前記撮像装置へ、前記第1の領域を包含する第2の領域であって、前記第1の領域よりも広い前記第2の領域を撮像する第2のシーケンスを、前記第1のインターバルよりも長い第2のインターバルで繰り返し実行させるための指示を送信する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、生体試料が受けるダメージを抑制しながら生体試料の培養プロセスを適切に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】撮像装置10と制御装置30の間のやり取りについて説明するための図である。
【
図4】撮像装置10による撮像方法について説明するための図である。
【
図5】容器ホルダ18について説明するための図である。
【
図7】断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスのスケジュールの一例を示す図である。
【
図8】第1の領域R1と第2の領域R2の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。
【
図11】制御装置30に記憶されているテーブルの構造の一例である。
【
図14】撮像装置10と制御装置30とクライアント端末の間のやり取りについて説明するための図である。
【
図15】断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスのスケジュールの別の例を示す図である。
【
図16】第2の実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。
【
図17】第3の実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、システム1の構成を例示した図である。
図2は、撮像装置10と制御装置30の間のやり取りについて説明するための図である。以下、
図1及び
図2を参照しながら、システム1について説明する。
【0014】
図1に示すシステム1は、インキュベータ20内で培養されている生体試料を監視する培養監視システムの一例である。システム1は、培養容器Cに収容された生体試料を撮像する撮像装置10と、撮像装置10を制御する制御装置30を備えている。システム1では、
図2に示すように、制御装置30が、撮像装置10へ撮像指示を送信し、撮像装置10が取得した画像を受信する。そして、制御装置30が、撮像装置10で取得した生体試料Sの画像に基づいて、生体試料Sの培養プロセスを監視する。なお、制御装置30は、さらに、クライアント端末(クライアント端末40、クライアント端末50)と通信してもよい。
【0015】
図1には、撮像装置10と制御装置30が有線で接続されている例が示されている。しかしながら、撮像装置10と制御装置30は、データをやり取りできればよい。従って、撮像装置10と制御装置30は、有線に限らず、無線で接続されてもよい。
【0016】
インキュベータ20から取り出すことなく生体試料の培養プロセスを監視するために、撮像装置10は、インキュベータ20内に配置された状態で使用される。より詳細には、
図1に示すように、撮像装置10は、培養容器Cが天板11に載置された状態で、インキュベータ20内に配置される。
【0017】
図1及び
図2には、培養容器Cがフラスコである例が示されている。しかしながら、培養容器Cは、フラスコに限らない。培養容器Cは、他の培養容器であってもよく、例えば、シャーレ(ペトリデッシュ)、マイクロウェルプレート(マイクロプレート)などであってもよい。
【0018】
図3は、撮像装置10の構成を例示した図である。
図4は、撮像装置10による撮像方法について説明するための図である。
図5は、容器ホルダ18について説明するための図である。以下、
図3から
図5を参照しながら、撮像装置10について説明する。
【0019】
撮像装置10は、
図3に示すように、培養容器Cが載置される透明な天板11と、天板11を支持する本体12を備えている。撮像装置10は、さらに、天板11の下方であって本体12内部に、ステージ13と、ステージ13を動かす駆動機構16を備えている。ステージ13には、
図3及び
図4に示すように、2つの光源14と、撮像素子15と、光学系17などが設けられている。
【0020】
撮像素子15は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。2つの光源14は、例えば、発光ダイオード(LED)などであり、ステージ13の下方から培養容器Cを照明する。2つの光源14は、
図3及び
図4に示すように、撮像素子15を挟んで向かい合わせに置かれてもよい。撮像装置10では、光源14から出射した光は、培養容器C内で培養液CLに浸されている生体試料Sを透過し、培養容器Cの上面で反射する。光学系17は、培養容器Cの上面で反射した光を用いて撮像素子15上に生体試料Sの光学像を形成する。
【0021】
駆動機構16は、例えば、モータなどの駆動源を含み、光学系17の光軸と直交する方向(XY方向)にステージ13を動かす。駆動機構16がステージ13をXY方向に動かすことで、撮像装置10は、異なる領域を撮像することができる。駆動機構16は、さらに、光学系17の光軸方向(Z方向)にステージ13を動かしてもよい。撮像装置10は、駆動機構16を用いてステージ13をZ方向に動かすことで、フォーカス位置を調整してもよい。また、撮像装置10は、光学系17に含まれるレンズの少なくとも1つを光軸方向に移動することでフォーカス位置を調整してもよい。
【0022】
撮像装置10は、さらに、容器ホルダ18を備えてもよい。容器ホルダ18は、
図5に示すように、天板11に固定されて、培養容器Cを基準位置に位置決めするために用いられてもよい。なお、容器ホルダ18は、培養容器Cによらず使用されてもよく、培養容器Cに応じて交換されてもよい。
【0023】
撮像装置10は、制御装置30からの指示に基づいて培養容器Cに収容された生体試料Sを撮像することで、生体試料Sの画像を取得する。そして、撮像装置10は、取得した画像を制御装置30へ送信する。
【0024】
図6は、制御装置30の構成を例示した図である。以下、
図6を参照しながら、制御装置30について説明する。
【0025】
制御装置30は、システム1を制御するコンピュータである。制御装置30は、
図6に示すように、プロセッサ31と、メモリ32と、補助記憶装置33と、入力装置34と、出力装置35と、可搬記録媒体39を駆動する可搬記録媒体駆動装置36と、通信モジュール37と、バス38を備えている。補助記憶装置33、及び、可搬記録媒体39は、それぞれプログラムを記録した非一過性のコンピュータ読取可能記録媒体の一例である。
【0026】
プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などを含む任意の処理回路である。プロセッサ31は、補助記憶装置33又は可搬記録媒体39に格納されているプログラムをメモリ32に展開して、その後、実行することでプログラムされた処理を行う。
【0027】
メモリ32は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの任意の半導体メモリである。メモリ32は、プログラムの実行の際に、補助記憶装置33又は可搬記録媒体39に格納されているプログラムまたはデータを記憶するワークメモリとして機能する。補助記憶装置33は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリである。補助記憶装置33は、主に各種データ及びプログラムの格納に用いられる。
【0028】
可搬記録媒体駆動装置36は、光ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の可搬記録媒体39を収容する。可搬記録媒体駆動装置36は、メモリ32又は補助記憶装置33に記憶されているデータを可搬記録媒体39に出力することができ、また、可搬記録媒体39からプログラム及びデータ等を読み出すことができる。可搬記録媒体39は、持ち運びが可能な任意の記録媒体である。可搬記録媒体39には、例えば、SDカード、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などが含まれる。
【0029】
入力装置34は、キーボード、マウスなどである。出力装置35は、表示装置、プリンタなどである。通信モジュール37は、例えば、外部ポートを経由して接続した撮像装置10と通信する有線通信モジュールである。通信モジュール37は、無線通信モジュールであってもよい。無線通信の規格は特に限定しないが、例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以降、BLEと記す。)、Wi-Fi(登録商標)などであってもよい。バス38は、プロセッサ31、メモリ32、補助記憶装置33等を、相互にデータの授受可能に接続する。
【0030】
図6に示す構成は、制御装置30のハードウェア構成の一例である。制御装置30はこの構成に限定されるものではない。制御装置30は、汎用装置であっても専用装置であってもよい。制御装置30は、例えば、専用設計の電気回路、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備えてもよい。また、制御装置30は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて構成されてもよい。
【0031】
制御装置30は、予め決定したスケジュールに従って撮像装置10へ撮像指示を送信し、撮像装置10が取得した生体試料Sの画像を受信する。そして、制御装置30は、撮像装置10で取得した生体試料Sの画像に基づいて、生体試料Sの培養プロセスを監視する。
【0032】
一般に、生体試料の培養プロセスを監視する場合、具体的な監視対象は、2つに大別できる。そのうちの一方は、最新の情報だけではなく、時間の経過に伴ってどのように情報に変化が生じたのか、即ち、推移(history)も併せて監視すべきものである。他方は、最新の情報のみを監視すれば足りるものである。
【0033】
推移(history)を監視すべきものの具体例としては、総細胞数、細胞密度、細胞の分化率、生細胞数、死細胞数に代表される、生体試料Sの生育状態が挙げられる。生体試料Sの生育状態を監視するためには、必ずしも生体試料Sの全体を観察する必要はない。総細胞数、細胞密度、細胞の分化率、生細胞数、死細胞数などの数値は、限られた領域の画像に基づいて算出した値を用いて推定することが可能である。ただし、生育状態の推移を正しく把握するためには、比較的短いインターバルで画像を取得して、生体試料Sの生育状態を代表する数値を推定することが望ましい。
【0034】
最新の情報のみを監視すれば足りるものの具体例としては、局所的に生じた細胞の死滅などに代表される、生体試料Sそのものの異常が挙げられる。また、ゴミなど培養対象以外の細胞の混入(コンタミネーション)に代表される、培養容器C内の培養環境の異常も挙げられる。これらの異常を見落とすことなく検出するためには、生体試料Sのできる限り広い範囲を、望ましくは生体試料Sの全体を撮像することが望ましい。ただし、異常検出の精度は、画像取得のインターバルに直接的には依存しない。このため、画像取得のインターバルは、異常発生から検出までの許容できるタイムラグの範囲内であればよく、比較的長いインターバルで画像を取得しても実害は生じない。
【0035】
以上の点を踏まえ、システム1では、制御装置30が撮像装置10を制御することで、撮像装置10が、撮像対象とする領域が異なる断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスを、異なるインターバル(時間間隔)で実行する。より具体的には、撮像装置10が、
図7に示すように、制御装置30からの指示に基づいて、システム1の第1の撮像シーケンスである断片撮像シーケンスを第1のインターバル(例えば6時間間隔)で繰り返し実行し、制御装置30からの指示に基づいて、システム1の第2の撮像シーケンスである広域シーケンスを第1のインターバルよりも長い第2のインターバル(例えば24時間間隔)で繰り返し実行する。
【0036】
なお、断片撮像シーケンスは、第1の領域R1を撮像するシーケンスである。第1の領域R1は、
図8に示すように、生体試料S内の複数の断片的な領域Rfからなる領域である。これに対して、広域撮像シーケンスは、第1の領域R1よりも広い第2の領域R2を撮像するシーケンスである。第2の領域R2は、
図8に示すように、第1の領域R1を包含する領域である。
【0037】
システム1によれば、生体試料Sへのダメージを抑制しながら培養プロセスを適切に監視することができる。より詳細には、断片撮像シーケンスが比較的短いインターバルで繰り返し実行される。断片撮像シーケンスでは、撮像対象とする領域が限定されている。このため、生体試料Sへのダメージを抑制しながら、断片撮像シーケンスで取得した画像に基づいて生体試料Sの生育状態を数値化することが可能である。その結果として、生体試料Sの生育状態及びその推移を監視することができる。また、システム1では、広域撮像シーケンスが断片撮像シーケンスに比べて長いインターバルで繰り返し実行される。断片撮像シーケンスでは、撮像頻度が抑えられている。このため、生体試料Sへのダメージを抑制しながら、広域撮像シーケンスで取得した画像に基づいて生体試料Sの異常又は培養環境の異常を検出することが可能である。その結果として、異常発生を監視することができる。従って、システム1によれば、生体試料Sへのダメージの抑制と培養プロセスの適切な監視とを、高いレベルで両立することができる。
【0038】
図9は、本実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。
図10は、監視条件設定画面の一例である。
図11は、制御装置30に記憶されているテーブルの構造の一例である。
図12は、解析結果表示画面の一例である。
図13は、貼り合わせ画像表示画面の一例である。以下、
図9から
図13を参照しながら、システム1が行う培養監視方法について具体的に説明する。なお、
図9に示す培養監視方法は、例えば、制御装置30が所定のプログラムを実行することによって開始される。
【0039】
システム1は、まず、監視条件を取得する(ステップS1)。監視条件は、監視開始時刻、断片撮像シーケンスのインターバル、広域撮像シーケンスのインターバル、培養容器の種類などを含んでいる。ステップS1では、制御装置30は、表示装置に
図10に示す画面100を表示する。そして、制御装置30は、利用者が画面100に入力した情報に基づいて、監視条件を取得する。
【0040】
図10に示す例では、制御装置30は、ボタン105が押下されると、テキストボックス101、テキストボックス102、テキストボックス103、ドロップダウンリスト104に入力された情報に基づいて、監視開始時刻、断片撮像シーケンスのインターバル、広域撮像シーケンスのインターバル、培養容器の種類を取得する。なお、ドロップダウンリスト104には、予め登録されている培養容器の種類をリストがされている。
【0041】
監視条件を取得すると、システム1は、撮像対象とする領域を決定する(ステップS2)。ここで、撮像対象とする領域とは、断片撮像シーケンスにおいて撮像対象とする領域である第1の領域R1と、広域撮像シーケンスにおいて撮像対象とする領域である第2の領域R2である。ステップS2では、制御装置30は、ステップS1で取得した情報に基づいて、培養容器の種類を特定し、特定した培養容器の種類に応じて、第1の領域R1と第2の領域R2を決定する。
【0042】
例えば、補助記憶装置33には、培養容器の種類と、第1の領域R1の情報と、第2の領域R2の情報と、が関連付けられて、予め記憶されている。特に限定しないが、
図11に示すように、補助記憶装置33には、培養容器の種類と第1の領域R1の情報が関連付けられたテーブルT1と、培養容器の種類と第2の領域R2の情報が関連付けられたテーブルT2とが設けられてもよい。第1の領域R1の情報、第2の領域R2の情報は、それぞれ撮像位置の座標情報の集合である。その場合、制御装置30は、テーブルT1から培養容器の種類を用いて第1の領域R1の情報を検索することで、第1の領域R1を決定してもよい。また、制御装置30は、テーブルT2から培養容器の種類を用いて第2の領域R2の情報を検索することで、第2の領域R2を決定してもよい。
【0043】
さらに、システム1は、シーケンス開始時刻を決定する(ステップS3)。ここで、シーケンス開始時刻とは、各断片撮像シーケンスの開始時刻と、各広域撮像シーケンスの開始時刻と、を含んでいる。ステップS3では、制御装置30は、ステップS1で取得した監視開始時刻と断片撮像シーケンスのインターバルに基づいて、断片撮像シーケンスの開始時刻を決定する。この例では、断片撮像シーケンスの開始時刻は、毎日0時(24時)、6時、12時、18時である。また、制御装置30は、ステップS1で取得した監視開始時刻と断片撮像シーケンスのインターバルに基づいて、広域撮像シーケンスの開始時刻を決定する。この例では、広域撮像シーケンスの開始時刻は、毎日9時である。広域撮像シーケンスの開始時刻は、広域撮像シーケンスの実行期間と断片撮像シーケンスの実行期間が重ならないように、断片撮像シーケンスの開始時刻の合間に決定される。
【0044】
撮像対象とする領域とシーケンス開始時刻が決定されると、システム1は、シーケンス開始時刻に達したか否かを監視する(ステップS4)。そして、システム1は、シーケンス開始時刻に達すると、断片撮像シーケンス開始時刻か広域撮像シーケンス開始時刻かを判定する(ステップS5)。
【0045】
ステップS5において断片撮像シーケンス開始時刻であると判定されると(ステップS5YES)、システム1は、断片撮像シーケンスを実行する(ステップS6)。ステップS6では、制御装置30は、断片シーケンスの実行期間中に、複数の断片的な領域Rfの各々を撮影する複数の指示を、撮像装置10に順番に送信する。そして、撮像装置10は、断片撮像シーケンスを実行する。具体的には、撮像装置10は、断片撮像シーケンスの実行期間中に、制御装置30からの複数の指示に基づいて、複数の断片的な領域Rfの各々の第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置30へ送信する。
【0046】
断片撮像シーケンスが実行されると、システム1は、生体試料Sの生育状態を数値化する(ステップS7)。ステップS7では、制御装置30は、撮像装置10で取得した複数の第1の画像に基づいて、生体試料Sの生育状態を数値化する。具体的には、制御装置30は、撮像装置10で取得した複数の第1の画像に基づいて、総細胞数、細胞密度、細胞の分化率、生細胞数、死細胞数を算出する。例えば、生体試料Sの総細胞数は、複数の第1の画像に含まれる細胞の数の合計と、第1の領域R1の面積と培養容器内の面積との比率とを用いて推定されてもよい。細胞密度は、複数の第1の画像の各々から算出された複数の細胞密度を平均化することで推定されてもよい。細胞の分化率は、複数の第1の画像の各々から算出された複数の分化率を平均化することで推定されてもよい。生細胞数(又は、死細胞数)は、複数の第1の画像に含まれる生細胞数(又は、死細胞数)の数の合計と、第1の領域R1の面積と培養容器内の面積との比率とを用いて推定されてもよい。
【0047】
生育状態が数値化されると、システム1は、生育状態の推移を表示する(ステップS8)。ステップS8では、制御装置30は、ステップS7で数値化された生育状態の推移を示す画像を表示装置へ出力する。
図12に示す画面200は、表示装置に表示された、生育状態の推移を示す画像を含む画面の一例である。画面200には、領域220に細胞密度の推移を示すグラフG1が含まれていて、領域230に細胞数の推移を示すグラフG2が含まれている。グラフG1とグラフG2を確認することで、利用者は、生体試料Sの生育状態を確認することができる。また、領域210には、培養容器C内における断片領域Rfの位置を示す画像M1が含まれている。画像M1を確認することで、利用者は、断片撮像シーケンスにおける撮像領域を直感的に認識することができる。
【0048】
ステップS5において広域撮像シーケンス開始時刻であると判定されると(ステップS5NO)、システム1は、広域撮像シーケンスを実行する(ステップS9)。ステップS9では、制御装置30は、広域シーケンスの実行期間中に、第2の領域R2を構成する複数の領域の各々を撮影する複数の指示を、撮像装置10に順番に送信する。そして、撮像装置10は、広域撮像シーケンスを実行する。具体的には、撮像装置10は、広域撮像シーケンスの実行期間中に、制御装置30からの複数の指示に基づいて、第2の領域R2を構成する複数の領域の各々の第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置30へ送信する。
【0049】
広域撮像シーケンスが実行されると、システム1は、貼り合わせ画像を生成し(ステップS10)、貼り合わせ画像を表示する(ステップS11)。ステップS10では、制御装置30は、撮像装置10で取得した複数の第2の画像を貼り合わせることによって、第2の領域の画像である貼り合わせ画像を生成する。なお、複数の第2の画像は、複数の第2の画像の各々を取得したときのステージ13の座標情報を用いて貼り合わせてもよく、画像に対するマッチング処理を用いて貼り合わせてもよい。ステップS11では、制御装置は、貼り合わせ画像を表示装置へ出力する。
図13に示す画面300は、表示装置に表示された、貼り合わせ画像を含む画面の一例である。画面300には、領域330に貼り合わせ画像IMが含まれている。なお、貼り合わせ画像IMは、ステップS10で生成した貼り合わせ画像の少なくとも一部である。貼り合わせ画像IMを確認することで、利用者は、生体試料Sの異常が生じている場合には、その異常を検出することができる。また、生体試料Sの培養環境に異常が生じている場合にも、その異常を検出することができる。さらに、領域310には、培養容器C内における、貼り合わせ画像IMに対応する領域(以降、表示領域Rvと記す)の位置を示す画像M2が含まれている。画像M2を確認することで、利用者は、観察範囲を直感的に認識することができる。なお、領域320のドロップダウンリスト321で撮像日時を指定することで、領域330に過去の画像を表示することもできる。
【0050】
ステップS8又はステップS11の表示処理が終了すると、システム1は、監視を終了するか否かを判定する(ステップS12)。そして、監視を終了するまで、システム1は、ステップS4以降の処理を繰り返す。
【0051】
以上のように、システム1が
図9に示す培養監視方法を行うことで、生体試料Sが受けるダメージを抑制しながら生体試料Sの培養プロセスを適切に監視することができる。具体的には、システム1では、コンタミネーションなどの異常の検出を目的とする撮像シーケンスを、生育状態などの分析を目的とする撮像シーケンスから分離することで、撮像に起因する生体試料の負担を軽減しながら、詳細な分析を行うことを可能としている。
【0052】
また、システム1では、生体試料Sの生育状態を数値化してその推移を表示することで、生育状態を客観的に評価することができる。さらに、生育状態の推移を、グラフ等を用いてグラフィカルに表示することで、生育状態の推移をより直感的に把握することができる。
【0053】
また、システム1では、広域撮像シーケンスで撮像対象とした第2の領域の画像を表示装置に表示する。これにより、利用者は、生体試料S又は培養環境の異常を確認することができる。さらに、広域撮像シーケンスで取得した画像を貼り合わせることで、高解像度を有する第2の領域の画像を得ることができる。このため、低解像度の画像では発見しにくい小さな異常も視認することが可能であり、早期に異常を発見することができる。
【0054】
また、システム1では、撮像装置10は、制御装置30からの指示に従って生体試料Sを撮像する。このため、撮像装置10は、撮像スケジュール及び撮像位置を管理する必要がない。このため、撮像装置10に複雑な機能を組み込み必要がなく、撮像装置10での発熱等も抑制することが可能となる。
【0055】
なお、
図9では、撮像シーケンスに続いて表示処理が行われる例を示したが、表示処理は、撮像シーケンスと連動しなくてもよい。表示処理は、スケジュールされている撮像シーケンスとは無関係に行われてもよく、例えば、利用者からの要求に応じて行われてもよい。また、培養監視処理及び表示処理は、システム1外のクライアント端末からの要求に応じて行われてよい。
図14に示すように、例えば、クライアント端末からの要求(INPUT1)に応じて、システム1がスケジュールされた撮像シーケンスを含む培養監視処理を行い、クライアント端末からの別の要求(INPUT2)に応じて、システム1が表示データをクライアント端末に送信してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、断片撮像シーケンスの実行期間と広域撮像シーケンスの実行期間が重ならないように予めスケジュールする例を示したが、必ずしも実行期間が重ならないように予め注意を払って設定しなくてもよい。例えば、制御装置30は、どちらか一方の撮像シーケンスを実行中に、他方の撮像シーケンスの開始時刻になった場合には、断片撮像シーケンスを優先してもよい。具体的には、制御装置30は、広域撮像シーケンスの実行中に断片撮像シーケンスの開始時刻になった場合には、広域撮像シーケンスを中断し、断片撮像シーケンスを実行してもよい。そして、制御装置30は、断片撮像シーケンスが終了した後に、中断された広域撮像シーケンスを、中断された撮像位置から再開してもよい。また、断片撮像シーケンスの実行中に広域撮像シーケンスの開始時刻になった場合には、制御装置30は、断片撮像シーケンスを継続し、断片撮像シーケンスが終了してから広域撮像シーケンスを開始してもよい。このように広域撮像シーケンスは分割して実行されてもよく、その場合であっても、生体試料の育成状態の推移を正確に監視する為の断片撮像シーケンスのインターバルが一定に維持されるため、生体試料の育成状態の推移を正確に監視しながら、生体試料の異常を把握することができる。
【0057】
また、本実施形態では、断片撮像シーケンスの実行期間と広域撮像シーケンスの実行期間が重ならないように予めスケジュールする例を示したが、断片撮像シーケンスのインターバルが短い場合や、広域撮像シーケンスの実行に長い時間がかかる場合には、実行期間が重ならないように設定することができないことがある。そのような場合にも、制御装置30は、断片撮像シーケンスのインターバル中に開始した広域撮像シーケンスの実行中に断片撮像シーケンスの開始時刻になった場合には、広域撮像シーケンスを中断し、断片撮像シーケンスを実行してもよい。そして、制御装置30は、断片撮像シーケンスが終了した後に、中断された広域撮像シーケンスを、中断された撮像位置から再開してもよい。なお、広域撮像シーケンスは、2つ以上の断片撮像シーケンスを跨って行われてもよい。このように広域撮像シーケンスは分割して実行されてもよく、その場合であっても、断片撮像シーケンスのインターバルが一定に維持されるため、生体試料の育成状態の推移を正確に監視しながら、生体試料の異常を把握することができる。
【0058】
[第2の実施形態]
図15は、断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスのスケジュールの一例を示す図である。本実施形態に係るシステムは、撮像装置10と制御装置30を備える点は、システム1と同様である。また、本実施形態に係るシステムは、撮像装置10が、制御装置30からの指示に基づいて、断片撮像シーケンスを第1のインターバル(例えば6時間間隔)で繰り返し実行し、制御装置30からの指示に基づいて、広域シーケンスを第1のインターバルよりも長い第2のインターバル(例えば24時間間隔)で繰り返し実行する点も、システム1と同様である。
【0059】
ただし、断片撮像シーケンスの実行期間と広域撮像シーケンスの実行期間がスケジュール上で重複する場合には、その重複する期間中(12時開始)に、広域撮像シーケンスのみを実行し、断片撮像シーケンスを実行しない点が、システム1とは異なっている。即ち、
図15に示すように、断片撮像シーケンスは0時、6時、18時に実行され、広域シーケンスは12時に実行される。
【0060】
図16は、本実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。以下、
図16を参照しながら、本実施形態に係るシステムが行う培養監視方法について具体的に説明する。なお、
図16に示す培養監視方法は、例えば、制御装置30が所定のプログラムを実行することによって開始される。
【0061】
システムは、まず、監視条件を取得し(ステップS31)、撮像対象とする領域とシーケンス開始時刻を決定する(ステップS32、ステップS33)。これらの処理は、
図9に示すステップS1からステップS3の処理と同様である。
【0062】
撮像対象とする領域とシーケンス開始時刻が決定されると、システムは、シーケンス開始時刻に達したか否かを監視する(ステップS34)。この処理は、
図9に示すステップS4の処理と同様である。その後、シーケンス開始時刻に達すると、システムは、断片撮像シーケンス開始時刻であり且つ広域撮像シーケンス開始時刻であるかを判定する(ステップS35)。つまり、断片撮像シーケンスの実行期間と広域撮像シーケンスの実行期間がスケジュール上重複している時刻か否かを判定する。
【0063】
ステップS35において断片撮像シーケンス開始時刻であり且つ広域撮像シーケンス開始時刻であると判定されると(ステップS35YES)、システムは、広域撮像シーケンスを実行する(ステップS36)。ステップS36の処理は、
図9に示すステップS9の処理と同様である。
【0064】
その後、システムは、生体試料Sの生育状態を数値化する(ステップS37)。ステップS37では、制御装置30は、広域撮像シーケンスにおいて取得した複数の第2の画像の一部に基づいて、生体試料Sの生育状態を数値化する。即ち、本実施形態に係るシステムでは、複数の第2の画像の一部が複数の第1の画像を兼ねている。
【0065】
さらに、システムは、貼り合わせ画像を生成し(ステップS38)、生育状態の推移と貼り合わせ画像を表示する(ステップS39)。ステップS39では、制御装置30は、ステップS37の処理結果とステップS38の処理結果を用いて、表示データを生成する。
【0066】
ステップS35において断片撮像シーケンス開始時刻でない、又は、広域撮像シーケンス開始時刻でない、と判定されると(ステップS35NO)、システムは、ステップS40からステップS46の処理を行う。これらの処理は、
図9に示すステップS5からステップS11の処理と同様である。
【0067】
ステップS39、ステップS43又はステップS46の表示処理が終了すると、システムは、監視を終了するか否かを判定する(ステップS47)。そして、監視を終了するまで、システム1は、ステップS34以降の処理を繰り返す。
【0068】
システムが
図16に示す培養監視方法を行うことによっても、
図9に示す培養監視方法が行われる場合と同様に、生体試料Sが受けるダメージを抑制しながら生体試料Sの培養プロセスを適切に監視することができる。また、断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスを重複して行うことを回避することができるため、不必要な撮像によって生体試料Sがダメージ受けることを防止することができる。
【0069】
なお、断片撮像シーケンスのインターバルが広域撮像シーケンスのインターバルの約数であれば、全ての広域撮像シーケンスの実行期間は、断片撮像シーケンスの実行期間と重なることになる。全ての広域撮像シーケンスの実行期間が断片撮像シーケンスの実行期間と重なったスケジュールが設定されている場合であれば、制御装置30は、
図16のステップS35及びステップS40の代わりに、広域撮像シーケンスの開始時刻か否かを判定してもよい。そして、その場合、広域撮像シーケンスの開始時刻であると判定されると、ステップS36からステップS39の処理を行い、広域撮像シーケンスの開始時刻でないと判定されると、ステップS41からステップS43の処理を行ってもよい。
【0070】
[第3の実施形態]
図17は、本実施形態に係る培養監視方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係るシステムは、撮像装置10と制御装置30を備える点は、第1の実施形態に係るシステム1及び第1の実施形態に係るシステムと同様である。
【0071】
図17に示す培養監視方法は、広域撮像シーケンス後に行う処理が異なる点を除き、
図9に示す培養監視方法と同様である。具体的には、
図17のステップS51からステップS59及びステップS61の処理は、
図9のステップS1からステップS9及びステップS12の処理と同様である。
【0072】
本実施形態に係るシステムは、広域撮像シーケンスが実行されると(ステップS59)、その後、異常を検出したか否かを判定する(ステップS60)。より具体的には、ステップS60では、制御装置30が、広域シーケンスで取得した画像に基づいて、生体試料Sの異常、又は、培養容器内の培養環境の異常を検出する。なお、異常は、複数の第2の画像に基づいて生成した貼り合わせ画像を用いて検出してもよく、複数の第2の画像から直接検出してもよい。そして、異常が検出されると(ステップS60YES)、システムは、培養監視を終了する。
【0073】
システムが
図17に示す培養監視方法を行うことによっても、
図9及び
図16に示す培養監視方法が行われる場合と同様に、生体試料Sが受けるダメージを抑制しながら生体試料Sの培養プロセスを適切に監視することができる。また、異常検出が自動化されるため、培養監視開始後に行う利用者による確認作業を省略することができる。
【0074】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするための具体例を示したものであり、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。上述した実施形態の一部を他の実施形態に適用しても良い。培養監視システム、培養監視方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0075】
上述した実施形態では、撮像装置10の動作制御と撮像装置10で取得した画像の解析処理とを制御装置30で行う例を示したが、撮像装置10の動作制御と画像の解析処理は、別の装置で行われてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、培養容器に応じて撮像対象とする領域を決定する例を示したが、撮像対象とする領域は、利用者が手動で設定してもよい。また、第1の領域が複数の断片的な領域からなることで、培養容器C内で生体試料Sが偏在している場合であっても、細胞数などの統計値を高い精度で算出することができる。従って、複数の断片的な領域は、培養容器C内で均等に分布していることが望ましい。また、第2の領域が培養容器Cよりも広い連続的な領域である例を示したが、これに限らない。第2の領域は、連続した領域でなくてもよい。また、第2の領域は、第1の領域よりも広ければよく、培養容器Cよりも狭くてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、断片撮像シーケンスのインターバルと広域撮像シーケンスのインターバルの両方を利用者が指定する例を示したが、断片撮像シーケンスのインターバルと広域撮像シーケンスのインターバルの一方に基づいて他方のインターバルが自動的に設定されてもよい。また、広域撮像シーケンスのインターバルは、予め決められた固定のインターバル(例えば、24時間)であってもよい。また、断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスのインターバルが一定である例を示したが、断片撮像シーケンスと広域撮像シーケンスは、必ずしも周期的に行われる必要はない。広域撮像シーケンスのインターバルが断片撮像シーケンスとのインターバルよりも長ければよく、それぞれのインターバルは、繰り返し毎に変更されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 システム
10 撮像装置
11 天板
12 本体
13 ステージ
14 光源
15 撮像素子
16 駆動機構
17 光学系
18 容器ホルダ
20 インキュベータ
30 制御装置
31 プロセッサ
32 メモリ
33 補助記憶装置
34 入力装置
35 出力装置
36 可搬記録媒体駆動装置
37 通信モジュール
38 バス
39 可搬記録媒体
40、50 クライアント端末
100、200、300 画面
210、220、230、310、320、330 領域
C 培養容器
CL 培養液
G1、G2 グラフ
IM 貼り合わせ画像
M1、M2 画像
R1 第1の領域
R2 第2の領域
Rf 断片領域
Rv 表示領域
S 生体試料
T1、T2 テーブル