(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ガス注入部材、かかる部材を備える炉およびその使用
(51)【国際特許分類】
F23D 14/78 20060101AFI20230928BHJP
F27B 3/20 20060101ALI20230928BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F23D14/78 A
F27B3/20
F27D7/02 A
(21)【出願番号】P 2021547901
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2019079084
(87)【国際公開番号】W WO2020084076
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】521181024
【氏名又は名称】ソードビーム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジャン-フィリップ
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161460(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016211477(DE,A1)
【文献】特開2013-209704(JP,A)
【文献】国際公開第2011/044676(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/100441(WO,A2)
【文献】米国特許第08142711(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0153654(US,A1)
【文献】特表2011-513682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/78
F27B 3/20
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱応力を受けることができ、近位端および遠位端(11)を有する管状壁(3)と、
この遠位端で、少なくとも1種類のガスが噴射される少なくとも1つの先端開口部(10)と、
前記管状壁(3)内に配置される冷却システムであって、
近位末端と遠位末端との間で、前記管状壁の前記遠位端(11)に向かって軸方向に延び、その内部で冷却流体が循環される複数の軸方向チャネル(12)と、
前記複数の軸方向チャネル(12)をそれらの遠位末端で円周方向に互いに結合する複数の接続チャネル(13)と、を有し、
これらの接続チャネルは、前記管状壁の前記遠位端の方向に丸みを帯びた形状を有する冷却システムと、を備えるガス注入システムにおいて、
前記管状壁(3)は、モノブロックであり、
前記複数の軸方向チャネル(12)は、このモノブロック管状壁を軸方向に通過し、このモノブロック管状壁は、前記複数の軸方向チャネルの前記遠位末端
で、円周溝を有し、
該注入システムはさらに、前記モノブロック管状壁の前記円周溝を閉じる閉鎖クラウンを備え、
前記複数の丸みを帯びた接続チャネル(13)は、前記円周溝と前記閉鎖クラウンとの間に配置されることを特徴とする、ガス注入システム。
【請求項2】
前記冷却システムが配置される前記モノブロック管状壁を備えたバーナーインジェクタを形成することを特徴とする、請求項1に記載のガス注入システム。
【請求項3】
前記冷却システムが配置される前記モノブロック管状壁を備えたシース(2)を形成することを特徴とする、請求項1に記載のガス注入システム。
【請求項4】
前記シース(2)は、バーナーインジェクタ(1)の一端に配置され、少なくとも部分的にそれを覆うことを特徴とする、請求項3に記載のガス注入システム。
【請求項5】
冷却システムは、複数の軸方向チャネル(12)をそれらの近位末端で円周方向に結合する複数の通路チャネル(14)を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項6】
複数の軸方向チャネル(12)を円周方向に結合する複数の通路チャネル(14)は、前記管状壁(3)の前記遠位端(11)と反対方向に丸みを帯びた形状を有することを特徴とする、請求項5に記載のガス注入システム。
【請求項7】
前記モノブロック管状壁(3)は、前記複数の軸方向チャネル(12)の前記近位末端と前記管状壁(3)の前記近位端との間で
、より薄いチップ(22)の形状をとり、
該注入システムはさらに、前記モノブロック管状壁の前記チップに取り付けられるフランジを備え、
前記複数の通路チャネル(14)は、前記チップ(22)と前記フランジ(18)との間に配置されることを特徴とする、請求項5および6のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項8】
前記モノブロック管状壁(3)は、前記複数の軸方向チャネル(12)の前記近位末端で
、追加の円周溝(23)を有し、
該注入システムはさらに、好ましくは少なくとも2つのクラウン要素から形成された追加の閉鎖クラウンを備え、
該追加の閉鎖クラウンは、前記モノブロック管状壁の追加の円周溝を封止し、
前記複数の通路チャネル(14)は、前記追加の円周溝と前記追加の閉鎖クラウンとの間に配置されることを特徴とする、請求項5および6のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項9】
前記冷却システムは、前記管状壁(3)内に連続して平行に配置され、接続チャネル(13)によって、次いで、通路チャネル(14)によって、次いで、再度接続チャネル(13)によって、等々によって、連続的に互いに接合される、いくつかの軸方向チャネル(12)を備える、少なくとも1つの冷却コイルから構成されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項10】
前記各冷却コイルは、前記管状壁(3)内にその前記遠位端(11)から距離を隔てて配置される、前記冷却流体のための入口(15)および出口(16)を備えることを特徴とする、請求項9に記載のガス注入システム。
【請求項11】
前記複数の軸方向チャネル(12)、前記複数の接続チャネル(13)、および前記複数の通路チャネル(14)は、実質的に一定の流れ断面を有することを特徴とする、請求項5から10のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項12】
前記冷却システムは、前記注入システムの前記管状壁の半分をそれぞれ覆う2つの冷却コイルを備えることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項13】
前記少なくとも1種類の噴射ガスは、酸素、超音速酸素、空気、炭素ガス、窒素、およびそれらの混合物からなるグループから選択され、これらのガスは、それらの燃焼後に火炎の形態であることができることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項14】
前記閉鎖クラウンは、少なくとも2つのクラウン要素を備えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のガス注入システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのガス注入システムを備える炉。
【請求項16】
炉内で金属材料を処理するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の少なくとも1つのガス注入システムの使用。
【請求項17】
電気炉においてスクラップを溶融し、鉄鋼を精錬する、または、スラブを再加熱するための、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はガス注入システムに関する。該ガス注入システムは、熱応力を受けることができ、近位端および遠位端を有する管状壁と、この遠位端で、少なくとも1種類のガスが噴射される少なくとも1つの先端開口部と、前記管状壁内に配置される冷却システムであって、近位末端と遠位末端との間で、前記管状壁の前記遠位端に向かって軸方向に延び、その内部で冷却流体が循環される複数の軸方向チャネルと、前記複数の軸方向チャネルをそれらの遠位末端で円周方向に互いに結合する複数の接続チャネルと、を有し、これらの接続チャネルは、前記管状壁の前記遠位端の方向に丸みを帯びた形状を有する冷却システムと、を備える。
【0002】
このようなガス注入システムは、鉄鋼生産の電気セグメントにおいて、さらに特には電気炉において、使用される。電気アーク炉では、「キャスティング(casting)」と呼ばれる各生産サイクルが、スクラップのロード、その溶融、溶鋼の精錬および炉からそれを注ぐことの、4つの段階を含む。
【0003】
溶融段階では主に、固体スクラップの溶融を加速する観点から、できるだけ効率的に熱を供給することに関心がもたれる。それは、この目的のためのエネルギーを、炉内で生じる電気アーク、炉の壁に置かれたバーナーからの火炎ならびに鉄の脱炭および酸化反応の、3つの発生源から取り出す。
【0004】
精錬段階では、供給した酸素による、炭素および他の化学元素の化学的な酸化反応が優先される。精錬は、その化学エネルギーを、溶融金属浴(molten metal bath)への超音速での酸素の噴射から取り出す。
【0005】
各製鋼所のプロセスの特異性に応じて様々なアタッチメントが必要である。アタッチメントは大部分が炉の側壁に取り付けられ、該浴に向かって斜めに吹き付ける。これらのアタッチメントの中には、バーナーがある。バーナーは、火炎を形成できるように、可燃性ガスおよび酸化剤としての酸素を噴射する。コンビネーションバーナーもまた含まれる。このコンビネーションバーナーは火炎を発生させることができるだけでなく、該浴に向かって超音速の酸素を噴射することもまたなし得る。
【0006】
バーナーまたはコンビネーションバーナーは、電気アーク炉での製鋼における生産性と品質とに関わる本質的な要素である。
【0007】
熱源の要素として、また、精錬反応の原動力、すなわち酸素、を噴射する要素として、バーナーは、使用されるプロセスおよび転炉に特化したサイズでなければならない。
【0008】
問題は、転炉のさまざまな産出量を維持するために、何千ものキャスティングの間、バーナーの特性および品質を長期間にわたって保持することと同様に、バーナーの特性および品質を確保することにある。
【0009】
実際に、一連のキャスティングによって誘起される熱-機械的サイクルの間、バーナーは、多数のかつ様々な応力の結果として、腐食および亀裂によって摩耗する。熱応力は、該浴からの放射熱、火炎、大気(atmosphere)、スクラップ上での跳ね返りによるフラッシュバック、電気アークの近さ、および高温発泡スラグの被覆によるものである。機械的応力も生じる。例えば膨張および除去サイクル、スクラップの衝突、およびアーク閃光である。
【0010】
これらの応力に耐えるためには、バーナーを冷却流体で冷却する必要がある。最も激しい応力を受ける領域は一般に、炉の内部に面するバーナーの前部、すなわちその遠位端、および、バーナーの火炎に曝されるバーナーの内部またはその混合チャンバの内部である。
【0011】
これらの問題を改善する試みは既に知られている。
【0012】
例えば、冷却流体がインジェクタの外壁周囲に配置された同軸チャネル内を循環する、バーナー冷却システムがある(WO2007/100441およびUS2010/0252968を参照)。これらの同軸チャネルのうちの1つの同軸チャネルの中心チャネル内に、低温冷却流体がインジェクタの遠位端に向かって注入される。そこで、熱交換の後、それは中心チャネルを囲む同軸チャネルによって戻され、進行方向に対して180°の急激な変化を行わなければならない。この配置は、同軸チャネルの遠位端、すなわち、冷却が最も効率的であるべき場所で、冷却流体、一般的には水、の発泡をもたらす。この発泡流体は、熱絶縁性であり、避けられるべきである。さらに、チャネルの同軸配置により、回帰同軸チャネルの高温流体は、中心チャネルを通過する流体と熱交換を、最も熱応力を受ける領域にそれが達する前に行う。これは明らかに望ましくない。
【0013】
並んで配置されたいくつかの長手方向セグメントから形成されたバーナー冷却ジャケット(US5176875およびDE20 2007 019294 U1を参照)も知られている。冷却流体が循環する2つのチャネルが、このジャケットの各セグメントにおいて軸方向に延びている。これらの2つの軸方向チャネルは、それらに垂直にドリル加工された横方向チャネルによって接続されている。冷却流体は、軸方向チャネルの一方によって入り、他方によって出て行く。それは、進行方向の急激な変化を受け、熱絶縁性の発泡もここで生じる。このアセンブリの他の欠点は、並んで配置された長手方向セグメント間の複数のインターフェースが、ジャケット内の熱の均一な伝播に対する障害物となることであり、すると冷却効率が低下してしまう。
【0014】
冷却チャネルがノズルの内側の冷却金型(cooling die)に端をもつバーナーも知られており、全て3Dプリンティングシステムによって製造される(DE 10 2016 211 477 A1を参照)。この先行技術文献によるバーナーは、開発にかなりの時間を必要とする。これは、次の部材を3Dプリントする前に、ただ1つの部材のみしか3Dプリントすることができないからである。これは工業的に実現可能ではない。さらに、材料のコンパクトさの不足と冶金学的品質の低さのために、熱伝達が著しく不利になる。そのうえ、この文献によるバーナーの表面状態は、制御が困難である。
【0015】
最後に、装置の中には、互いに適合する2つのスリーブから形成された管状ジャケットを有し、管状ジャケットはそれらの間に軸方向溝を形成するように成形され、軸方向溝は丸みを帯びるように接続してもよいものもある(JP 2015 161460 AおよびWO 2011/044676を参照)。同様に、これらの装置も、機械的に壊れやすく熱絶縁性である大きな接合面を有する。
【0016】
本発明の目的は、従来技術によるガス注入システムによって引き起こされる問題を解決すること、特に、その寿命を延ばすことであり、すべては同時に、冷却流体のいかなる流れに対しても高い熱伝達を確保する。
【0017】
この目的のために、本発明は、本明細書のプリアンブルに記載されるようなガス注入システムを提供する。該ガス注入システムでは、前記管状壁は、モノブロック(一体鋳造されたもの)であり、前記複数の軸方向チャネルは、このモノブロック管状壁を軸方向に通過し、このモノブロック管状壁は、前記複数の軸方向チャネルの前記遠位末端で、円周溝を有し、該注入システムはさらに、前記モノブロック管状壁の前記円周溝を閉じる閉鎖クラウンを備え、
前記複数の丸みを帯びた接続チャネルは、前記円周溝と前記閉鎖クラウンとの間に配置される。
【0018】
有利には、前記閉鎖クラウンは、少なくとも2つのクラウン要素から構成されてもよい。
【0019】
モノブロック管状壁は、本発明に係る注入システムの溝付き管状壁が1つの部材であることを意味する。したがって、管状壁の溝を閉じるために設けられるクラウンは、モノブロック管状壁部材の本体内に包囲される。
【0020】
閉鎖クラウンによって溝が封止されるとき、それと管状壁の残りの部分との間に金属的連続性がある。
【0021】
モノブロック管状壁によって形成されたコンパクトなジャケットにより、熱伝導の連続性は、例えば圧入されたインターフェースからの耐熱性なしに得られる。したがって、温度分布はより均一であり、熱流はより大きい。モノブロック管状壁を形成する高伝導性材料、例えば高純度銅は、高熱源(モノブロック壁)からの多量の熱を低熱源(集積水回路)に迅速にもたらすことを可能にする。これは、流体回路への高い熱伝達をもたらし、従って、モノブロック壁材料のより低くより均一な温度をもたらす。これは、その腐食を減速させ、その寿命を増加させる。
【0022】
さらに、本発明に係るモノブロック管状壁は、ガス注入システムの端部の種々の構成要素の接合面で一般に生じる亀裂の現象を実質的に減少させることを有利に可能にする。本発明によれば、例えば管状壁に長手方向にドリル加工された複数の軸方向チャネルは、それらの間を接続することを可能とするために、小面積の円周溝を掘削し、次いでこの溝をクラウンで閉鎖することを必要とする。溝とクラウンとの間の接合面は小さく、それはモノブロック管状壁の周囲に位置し、その中実材によって枠組みされている。本体の膨張による熱応力は、主に半径方向である。したがって、それらは接合面内にあり、一方、それは主に、亀裂を引き起こし得る接合面に垂直な応力である。最後に、接合部は、モノブロック管状壁の中実材によって枠組みされ、したがって、追加の補強の恩恵を受ける。
【0023】
加えて、発泡体が熱絶縁性であるため、冷却流体経路全体にわたって管状壁の効率的な冷却を確保するためには、冷却流体発泡の現象を防止することが不可欠である。この発泡は、冷却流体経路の形状に変化があるときに生じる。管状壁の遠位端の方向におけるそれらの丸みを帯びた形状のために、本発明に係る冷却システムの複数の接続チャネルは移動方向の突然の変化を防止し、また、圧力損失および不安定性を制限する。本発明によれば、丸みを帯びた形状は、2つの軸方向チャネルの端部間の滑らかな移行を意味する。この形状は、それが、粗いまたは鋭い縁部を回らなくてもよいようにする。それは、円周溝の底部、該溝を閉鎖するために用いるクラウン要素、またはこれら全ての構成要素を同時に形成することにより容易に得てもよい。
【0024】
本発明によれば、管状壁の遠位端は、ガス注入システムの管状壁の、例えば、炉またはバーナーに取り付けるために使用される端部とは反対側の端部を意味する。前者は近位端と呼ばれる。
【0025】
複数の軸方向チャネルは、管状壁の軸に平行に延びるチャネルを意味する。
【0026】
有利には、前記複数の接続チャネルは、円弧、楕円、または放物線形状を有する。しかしながら、これらの形状は限定的なものではない。
【0027】
複数の接続チャネルのこの特定の丸みを帯びた形状は、流体の安定した伝導を可能にする。これにより、形状に変化があるときに生じるような圧力損失および不安定性に遭遇したり増大したりすることなく、高い流速、従って高いレイノルズ数を可能にする。従って、回路を流れる流体の高速度に対して得られる乱流レジーム、すなわち高いレイノルズ数を有する流動レジームを実施することが可能である。このタイプの流れは、流体内の激しい熱交換を促し、金属/流体インターフェースにおける動力学的および熱的境界層の過剰な肥厚を防止する。これにより、冷たい流体と熱い金属との間に高い熱勾配が確保され、その熱抽出(heat extraction)が促される。これはまた、温度上昇の場合に現れる、管状壁と接触する断熱発泡水の層が生成されることを防止する。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、ガス注入システムは、前記冷却システムが配置される前記モノブロック管状壁を備えたバーナーインジェクタを形成する。これは、特に、火炎を形成し、例えば、スクラップを溶融するときに使用されるバーナーの場合である。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、ガス注入システムは、前記冷却システムが配置される前記モノブロック管状壁を備えたシースを形成する。しばしば、バーナーの先端は、少なくとも部分的にシースで覆われなければならない。それは、インジェクタの先端に取り付けられるバーナとは別個のシステムであってもよい。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記シースは、バーナインジェクタの一端に配置され、少なくとも部分的にそれを覆う。次いで、ガス注入システムは、モノブロックシステムであってもよいバーナー-シースアセンブリを形成する。
【0031】
シースは、インジェクタの先端から突出して混合チャンバを形成する。混合チャンバでは、例えば、火炎を形成するための混合ガスを発生させてもよく、また、超音速酸素を噴射してもよく、これは組合せバーナーである。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、複数の通路チャネルは、複数の軸方向チャネルにそれらの近位端で円周方向に接合する。
【0033】
これらの通路チャネルはまた、丸みを帯びた形状を有し得るが、前記管状壁の前記遠位端とは反対方向である。
【0034】
有利には、前記モノブロック管状壁は、前記複数の軸方向チャネルの前記近位末端で、追加の円周溝を有し、該注入システムはさらに、少なくとも2つのクラウン要素から形成された追加の閉鎖クラウンを備え、該追加の閉鎖クラウンは、前記モノブロック管状壁の追加の円周溝を封止する。さらに、前記複数の通路チャネルは、前記追加の円周溝と前記追加の閉鎖クラウンの前記少なくとも2つの要素との間に配置される。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、前記モノブロック管状壁は、前記複数の軸方向チャネルの前記近位末端と前記管状壁の前記近位端との間で、より薄いチップの形状をとり、該注入システムはさらに、前記モノブロック管状壁の前記チップに取り付けられるフランジを備え、前記複数の通路チャネルは、前記チップと前記フランジとの間に配置される。
【0036】
これらの通路チャネルは、追加の円周溝の底部、追加の溝を閉鎖するために使用されるクラウン要素、またはこれらすべての構成要素を同時に形成することによって容易に得ることができる。モノブロック管状壁の先端にフランジを取り付けるとき、通路チャネルは先端上、フランジ内、または両要素に同時に成形されてもよい。
【0037】
本発明の完全な実施形態によれば、前記冷却システムは、前記管状壁内に連続して平行に配置され、接続チャネルによって、次いで、通路チャネルによって、次いで、再度接続チャネルによって、等々によって、連続的に互いに接合される、いくつかの軸方向チャネルを備える、少なくとも1つの冷却コイルからなる。有利には、前記各冷却コイルは、前記管状壁内にその前記遠位端から距離を隔てて配置される、前記冷却流体のための入口および出口を備える。特に、前記冷却システムは、前記ガス注入システムの前記管状壁の半分をそれぞれ覆う2つの冷却コイルを備える。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、前記管状壁の前記遠位端は、より強く熱応力を受ける部分を有する。前記軸方向チャネルまたは前記複数の軸方向チャネルは、このより強く熱応力を受ける部分において、前記冷却流体入口端部によって直接供給される。
【0039】
このようにして、低温入口冷却流体は、最も保護されなければならない最も適切な領域に直接送られる。一方、熱交換によってすでに加熱されている冷却流体は、出て行く前に、管状壁の熱応力があまり強くない領域に配置される複数の軸方向チャネルを通って流れる。
【0040】
有利には、前記複数の軸方向チャネル、接続チャネルおよび通路チャネルは、一定の流れ断面を有する。複数のチャネルのこの一定の断面は、流れの妨げとなる変動を防止する。
【0041】
好ましくは、前記少なくとも1種類の噴射ガスは、酸素、超音速酸素、空気、炭素ガス、窒素、およびそれらの混合物からなるグループから選択され、これらのガスは、それらの燃焼後に火炎の形態であることができる。有利には、管状壁は、銅または銅合金から作られる。
【0042】
本発明はまた、本発明に係る少なくとも1つのガス注入システムを備える炉に関する。
【0043】
本発明はまた、炉内で金属材料を処理するための、特に電気炉においてスクラップを溶融し、鉄鋼を精錬する、または、スラブを再加熱するための、本発明に係る少なくとも1つのガス注入システムの使用に関する。
【0044】
本発明の他の詳細および特徴は、添付の図面に示される、本発明に係るガス注入システムの例示的な実施形態の、限定ではない以下の説明から明らかになるだろう。
【0045】
図1は、本発明によるガス注入システムの側面図を示す。
【0046】
図2は、
図1のガス注入システムのII-II線に沿った断面図を拡大して示す。
【0047】
図3は、
図1のガス注入システムのIII-III線に沿った断面図を拡大して示す。
【0048】
図4は、
図1のガス注入システムのIV-IV線に沿った断面図を拡大し分解した状態で示す。
【0049】
図5は、
図1によるガス注入システムの端部の正面図を拡大して示す。
【0050】
【0051】
図中のガス注入システムは、シースを備えるバーナーである。それは管状インジェクタ1を含み、その先端開口部は、全般的に2で示されるシースによって、部分的に覆われている。それはインジェクタの周囲にジャケットを形成するモノブロック管状壁3を有し、図に示されるように、ジャケットは冷却システムによって冷却される。
【0052】
図1では、バーナーが斜めに取り付けられている炉の垂直壁が、破線4によって模式的に示されている。
【0053】
バーナーインジェクタには、注入口5を介して燃料、例えば天然ガスが供給され、注入口9を介して酸化剤、例えば工業用酸素が供給される。動作中、管状壁3によって囲まれた混合チャンバ内に火炎が形成され、その遠位端11で開口10によって該火炎が出ていく。超音速酸素はまた、供給ダクト6によってインジェクタ1に供給されてもよい。
【0054】
これらの図に示す実施例では、シース2の該冷却システムは、冷却流体用の供給ダクト7と、その排出ダクト8と、を備える。
【0055】
図2、
図4および
図6に示すように、該冷却システムは、管状壁の遠位端11に向かって軸方向に延びるいくつかの軸方向チャネル12を備える。冷却流体、例えば水は、これらのチャネル内を循環し、供給ダクト7から来て、次いで、排出ダクト8に向かって流れる。これらのチャネルは、モノブロック管状壁の本体にドリル加工されている。
【0056】
円周方向に隣り合う軸方向チャネルは、管状壁3の遠位端11において、この端の方向に丸みを帯びた形状を有する接続チャネル13によって、接合されている。
図6に示す実施例では、接続チャネル13は丸みを帯びた形状を有し、こうして、接続チャネルが接合する複数の軸方向チャネル間の円滑な移動を保証する。
【0057】
管状壁の遠位端11からある一定の距離において、すなわち炉の壁のより近くで、円周方向に隣り合う軸方向チャネルは、前述の遠位端11とは反対方向にわずかに丸みを帯びた形状を有する通路チャネル14によって、接合されている。
【0058】
図示した例では、管状壁3の周囲に連続して配置された複数の軸方向チャネル12は、丸みを帯びた接続チャネル13によって互いに連続して接合されており、次いで、丸みを帯びた通路チャネル14によって接合されており、次いで、丸みを帯びた接続チャネル13によって再び接合されており、ということが繰り返され、その結果、管状壁3内には少なくとも1つの冷却コイルが形成されている。複数の軸方向チャネル間の接続は、段階的に、別々に行われ、発泡を生じる同軸チャネルは必要とされず、または、複数のチャネル間の合流は必要とされない。
【0059】
図示した例では、特に
図3および
図6を参照するとき、それぞれが管状壁3の半分を覆う2つの冷却コイルがこのように供給され得るように、冷却流体用の供給ダクト7は、2つの軸方向チャネル12の入口15の向かい側に開口していることが分かる。
図5において、矢印は、管状壁の背面における供給ダクト7の位置を示す。これらのコイルの2つの出口16は、冷却流体用の排出ダクト8の向かい側に端をもつ周囲チャネル17内に開口している。このように、該複数のチャネルは、管状壁内の別々の円周方向範囲に分割された、2つの冷却回路を形成する。これらの回路は、同一の流体源、ダクト7により供給され、同一の排出口、ダクト8に端をもつ。
【0060】
特に
図1、
図4および
図6に示すように、管状壁はモノブロックであり、図示の例示的な実施形態では、軸方向チャネル12の遠位末端に円周溝19を有する。この溝は、図示の例では2つのハーフクラウン20および21で形成された、閉鎖クラウンによって封止される。接続チャネル13は、図示の例では部分的には円周溝19の底部に、そして部分的にはハーフクラウン20および21の内側に、形成されている。もちろん、それらを該溝の底部のみに、または、該複数のハーフクラウンの内側のみに配置することも可能である。
【0061】
本発明によるガス注入システムの端部におけるこのモノブロック構成は、その最も機械的および熱的に応力を受ける部分において、最小限の金属不連続性まで低減することを可能にし、したがって、熱源から冷却液への熱の迅速な伝達と共に、使用される金属合金における温度場をバランスさせる優れた能力を生み出すことを可能にする。ハーフクラウン20および21を、円周溝19に半径方向に組み込むことにより、すなわち、一体鋳造管状壁3の中実材では、高耐亀裂性の構成が得られる。これは同時に、冷却システム内における流体の流れを最適化することを可能にする。
【0062】
炉が作動している間に、管状壁3の遠位端11は、炉からの熱源、例えば溶融金属浴または電気アーク、によってだけでなく、バーナーインジェクタキャビティ内の火炎によっても、特に熱応力を受ける。炉の耐火壁上のバーナーの角度の付いた配置のために、シースの管状壁3の遠位端の一部は炉内にさらに突出し、その結果、より特に熱応力を受ける。
【0063】
図示した例では、冷却流体用の供給ダクト7は、管状壁3のこの突出した部分に配置された2つの軸方向チャネル12に直接、供給するように配置されている。このようにして、2つの軸方向チャネル12はそれぞれ、管状壁の遠位端の最も熱応力を受ける部分に直接、端をもつ。それらは、2つの冷却コイルの開始点を形成し、入ってきた、従って「冷えた」冷却流体を最も応力のかかる(複数の)点に位置付けることを可能にする。
【0064】
特に
図1、
図3および
図6に示すように、その近位端において、モノブロック管状壁は、より細い先端22の形状をしている。この先端には、フランジ18が取り付けられている。図示の例では、通路チャネル14、ならびに、供給ダクト7および排出ダクト8に至る入口15および出口16は、部分的には先端22の表面に、そして部分的にはフランジの内側に、形成されている。もちろん、それらをフランジ18内にのみに、または、先端22内にのみに配置することも可能である。
【0065】
溝19と同等の追加の溝23と、ハーフクラウン20および21と同等の2つ以上のクラウン要素から形成されるクラウンと、で構成される、別の構成も考えることができる。この追加の溝の可能な位置は、
図1に一点鎖線で示されている。
【0066】
本発明は、上述の実施形態に決して限定されず、添付の特許請求の範囲内で変更されてもよいことを理解されたい。
【0067】
例えば、1つの冷却コイルを有することも、3つ以上の冷却コイルを有することも可能である。
【0068】
チャネルの断面積の大きさが自由に決められてもよい任意の個数の冷却回路を分布させることで、非常に広範囲の冷却流体の流量、従って、熱交換係数と直接結びつく高いレイノルズ数を得るために、流体速度を調節することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本発明によるガス注入システムの側面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のガス注入システムのII-II線に沿った断面図を拡大して示す。
【
図3】
図1のガス注入システムのIII-III線に沿った断面図を拡大して示す。
【
図4】
図1のガス注入システムのIV-IV線に沿った断面図を拡大し分解した状態で示す。
【
図5】
図1によるガス注入システムの端部の正面図を拡大して示す。