(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】エアロゾル発生デバイス用の装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/53 20200101AFI20230928BHJP
A24F 40/51 20200101ALI20230928BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20230928BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20230928BHJP
A24F 40/57 20200101ALI20230928BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20230928BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20230928BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/51
A24F40/50
A24F40/465
A24F40/57
A24F40/40
H05B6/06 393
H05B6/10 371
H05B6/10 331
(21)【出願番号】P 2021554641
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020056223
(87)【国際公開番号】W WO2020182733
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-27
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ベイデルマン、キース ジョージ
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204205561(CN,U)
【文献】国際公開第2018/073376(WO,A1)
【文献】特開2003-57120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス用の装置であって、
当該装置は、エアロゾル発生材を加熱し、それによりエアロゾルを発生させるように配置され
た加熱素子を
加熱する加熱回路と、
前記加熱素子の温度を感知する温度感知装置と、
前記加熱回路へのエネルギーの供給を制御するコントローラと、を含み、
前記コントローラは、
エネルギーが所与の期間に亘って加熱回路に供給されていることを示す特性を決定し、及び前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の変化を決定し、かつ
前記コントローラが、前記決定された特性と前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に基づいて、前記温度感知装置の障害を示す1つ以上の所定の基準が満たされていると決定した場合、前記加熱回路へのエネルギーの供給を調整するように構成されている、エアロゾル発生デバイス用の装置。
【請求項2】
前記温度感知装置は、前記加熱素子に取り付けて当該加熱素子の温度を感知する温度センサを含み、前記1つ以上の所定の基準は、前記温度センサが前記加熱素子から外れていることを示すことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記所与の期間に亘って前記加熱回路に供給されるエネルギー量の前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に対する比を決定し、
その比が所定の値以上の場合、前記加熱回路へのエネルギー供給を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記比の所定の値は、2000mJ/℃~6000mJ/℃、または約4000mJ/℃であることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上の所定の基準が満たされている場合に前記コントローラは、前記加熱回路へのエネルギーの供給を停止するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上の所定の基準が満たされている場合に前記コントローラは、前記加熱回路へのエネルギーの供給を減らすように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは前記所与の期間の前記1つ以上の所定の基準が満たされているかを決定し、及び前記デバイスの使用期間における1つ以上のさらなる所定の期間のそれぞれについて前記1つ以上の前記所定の基準が1回満たされているかを決定するように構成され、前記所定の期間は、必要に応じてそれぞれ1/80秒~1/20秒の期間、または約1/64秒の期間であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記加熱回路は誘導加熱回路であり、前記加熱素子はこの誘導加熱回路により誘導的に加熱されるサセプタ装置であり、前記温度感知装置は、このサセプタ装置の温度を感知するための温度センサを含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記温度センサは前記サセプタ装置に取り付けるための熱電対であることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記温度感知装置は、
前記デバイス内の第1の温度を測定する第1の温度センサと、
前記デバイス内の第2の温度を測定する第2の温度センサと、を含み、
前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知される温度の上昇は、前記第1の温度の上昇または前記第2の温度の上昇であることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記第1の温度は、前記デバイス内の第1の加熱領域の温度であり、前記第2の温度は、前記デバイス内の第2の加熱領域の温度であることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記加熱回路は、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域を選択的に加熱するように構成され、前記コントローラは、前記所与の期間中に、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域のうちの一方のみを加熱すべく前記加熱回路を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラは前記所与の期間の前記1つ以上の所定の基準が満たされているかを決定し、及び前記デバイスの使用期間中に1つ以上のさらなる所定の期間のそれぞれについて前記1つ以上の前記所定の基準が1回満たされているかを決定するように構成され、各期間中に前記加熱回路は、前記第1の加熱領域および第2の加熱領域のうちの一方のみを選択的に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記温度感知装置により感知され、前記使用期間中の各期間の1つ以上の基準が
満たされているかを決定するために使用される温度上昇は、
前記加熱回路が前記期間中に前記第1の加熱領域を加熱するために作動している場合は、
第1の温度上昇
であり、
前記加熱回路が前記期間中に前記第2の加熱領域を加熱するために作動している場合は、
第2の温度上昇であることを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記加熱回路は、第1の誘導コイルおよび第2の誘導コイルを含む誘導加熱回路であり、
前記加熱素子はサセプタ装置であり、前記第1の加熱領域は、使用中に第1の誘導コイルにより加熱されるように配置された前記サセプタ装置の第1の区域であり、前記第2の加熱領域は、使用中に第2の誘導コイルにより加熱されるように配置された前記サセプタ装置の第2の区域であることを特徴とする請求項11乃至14いずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記第1の温度センサは、前記サセプタ装置の前記第1の区域に取り付けるための第1の熱電対であり、前記第2の温度センサは、前記サセプタ装置の前記第2の区域に取り付けるための第2の熱電対であることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記第1の熱電対および第2の熱電対はそれぞれコンスタンタン線および鉄線を含むJ型熱電対であることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記第1の熱電対が第1のコンスタンタン線を含み、前記第2の熱電対が第2のコンスタンタン線を含み、前記第1の熱電対および第2の熱電対が単一の鉄線を共有することを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記エアロゾル発生デバイスはユーザーにより吸入されるエアロゾルを発生させるためのものであることを特徴とする請求項1乃至18いずれか1項記載の装置を含むエアロゾル発生デバイス。
【請求項20】
前記デバイスは非燃焼加熱装置としても知られるタバコ加熱装置であることを特徴とする請求項19記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項21】
請求項19または請求項20に記載のエアロゾル発生デバイスと、使用時に当該デバイスによって加熱され、それによりエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生材を含む物品とを含むエアロゾル発生システム。
【請求項22】
前記デバイスは請求項20に記載のエアロゾル発生デバイスであり、前記エアロゾル発生材は使用中のデバイスにより加熱されるタバコ材を含むことを特徴とする請求項21記載のエアロゾル発生システム。
【請求項23】
エアロゾル発生デバイス用の装置を制御する方法であって、該装置は、
エアロゾル発生材を加熱してそれによりエアロゾルを発生させるように配置され
た加熱素子を
加熱する加熱回路と、
前記加熱素子の温度を感知するための温度感知装置と、
前記加熱回路へのエネルギーの供給を制御するコントローラと、を含み、
該方法は、
所与の期間中にエネルギーが前記加熱回路に供給されていることを示す特性を決定することと、
前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の変化を決定することと、
前記コントローラが、前記決定された特性と前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に基づいて、前記温度感知装置の障害を示す1つ以上の所定の基準が満たされていると決定した場合、前記加熱回路へのエネルギーの供給を調整することとを含むエアロゾル発生デバイス用の装置を制御する方法。
【請求項24】
実行されると、請求項23に記載の方法が実施されるようにする一連の機械可読命令。
【請求項25】
請求項24に記載の一連の命令を含む機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生デバイス用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、葉巻などの喫煙品は、使用中にタバコを燃やしてタバコの煙を発生する。燃焼せずに化合物を放出する製品を作成することで、タバコを燃焼させるこれらの物品に代わるものを提供する試みがなされてきた。そのような製品としては、例えば、材料を加熱するが、燃焼させずに化合物を放出する加熱装置が挙げられる。この材料は、例えば、タバコまたは他の非タバコ製品であって、それらはニコチンを含む場合も含まない場合もある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様ではエアロゾル発生デバイス用の装置が提供される。この装置は、エアロゾル発生材を加熱し、それによりエアロゾルを発生させるように配置された加熱装置を加熱する加熱回路と、前記デバイスの温度を感知する温度感知装置と、前記加熱回路へのエネルギーの供給を制御するコントローラを含み、前記コントローラは、エネルギーが所与の期間に亘って加熱回路に供給されていることを示す特性を決定し、前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の変化を決定し、かつ前記コントローラが、前記決定された特性と前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に基づいて、温度感知装置の障害を示す1つ以上の所定の基準が満たされていると決定した場合、制御動作を行うように構成されている。
【0004】
前記温度感知装置は、加熱素子に取り付けて加熱素子の温度を感知する温度センサを含み、前記1つ以上の所定の基準は、前記温度センサが前記加熱素子から外れていることを示す。
【0005】
前記コントローラは前記所与の期間に亘って前記加熱回路に供給されるエネルギー量の前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に対する比を決定し、その比が所定の値以上の場合、前記加熱回路へのエネルギー供給が前記制御動作を実行するように構成されてもよい。
【0006】
前記比の所定の値は、2000mJ/℃~6000mJ/℃、または約4000mJ/℃でもよい。
【0007】
前記1つ以上の所定の基準が満たされた場合に前記コントローラによ行われる制御動作は、前記加熱回路へのエネルギーの供給を調整することである。例えば、加熱回路へのエネルギーの供給を停止したり、加熱回路へのエネルギーの供給を減らしたりする。
【0008】
前記コントローラは前記所与の期間の所定の基準を決定し、前記デバイスの使用期間における1つ以上のさらなる所定の期間のそれぞれについて前記所定の基準を1回決定するように構成されてもよく、前記所定の期間は、必要に応じてそれぞれ1/80秒~1/20秒の期間、または約1/64秒の期間であればよい。
【0009】
前記加熱回路は誘導加熱回路であり、前記加熱素子はこの誘導加熱回路により誘導的に加熱されるサセプタ装置であり、前記温度感知装置はこのサセプタ装置の温度を感知するための温度センサを含んでもよい。
【0010】
前記温度センサは前記サセプタ装置に取り付けるための熱電対であってもよい。
【0011】
温度感知装置は、デバイス内の第1の温度を測定するための第1の温度センサと、デバイス内の第2の温度を測定するための第2の温度センサとを含み、、所与の期間に亘って温度感知装置により感知される温度の上昇は、第1の温度の上昇または第2の温度の上昇である。
【0012】
前記第1の温度は、前記デバイス内の第1の加熱領域の温度であり、前記第2の温度は、前記デバイス内の第2の加熱領域の温度であってもよい。
【0013】
前記加熱回路は、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域を選択的に加熱するように構成され、前記コントローラは、前記所定の期間中に、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域のうちの一方のみを加熱すべく前記加熱回路を作動させるように構成されてもよい。
【0014】
前記コントローラは前記所与の期間の所定の基準を決定し、前記デバイスの使用期間中に1つ以上のさらなる所定の期間のそれぞれについて前記所定の基準を1回決定するように構成され、各期間中に前記加熱回路は、前記第1の加熱領域および第2の加熱領域のうちの一方のみを選択的に加熱するように構成されてもよい。
【0015】
前記温度感知装置により感知され、前記使用期間中の各期間の1つ以上の基準を決定するために使用される温度上昇は、前記加熱回路が前記期間中に前記第1の加熱領域を加熱するために作動している場合は、前記第1の温度にあり、前記加熱回路が前記期間中に前記第2の加熱領域を加熱するために作動している場合は、前記第2の温度にあってもよい。
【0016】
前記加熱回路は、第1の誘導コイルおよび第2の誘導コイルを含む誘導加熱回路であり、前記加熱素子はサセプタ装置であり、前記第1の加熱領域は、使用中に第1の誘導コイルにより加熱されるように配置された前記サセプタ装置の第1の区域であり、前記第2の加熱領域は、使用中に第2の誘導コイルにより加熱されるように配置された前記サセプタ装置の第2の区域であってもよい。
【0017】
前記第1の温度センサは、前記サセプタ装置の第1の区域に取り付けるための第1の熱電対であり、前記第2の温度センサは、前記サセプタ装置の前記第2の区域に取り付けるための第2の熱電対であってもよい。
【0018】
前記第1の熱電対および第2の熱電対はそれぞれコンスタンタン線および鉄線を含むJ型熱電対であってもよい。
【0019】
前記第1の熱電対が第1のコンスタンタン線を含み、前記第2の熱電対が第2のコンスタンタン線を含み、前記第1の熱電対および第2の熱電対が単一の鉄線を共有してもよい。
【0020】
本開示の第2の態様では本開示の第1の態様による装置を含むエアロゾル発生デバイスが提供され、このエアロゾル発生デバイスは、ユーザーにより吸入されるエアロゾルを発生させるためのものである。
【0021】
このデバイスは、非燃焼加熱装置としても知られるタバコ加熱装置であってもよい。
【0022】
本開示の第3の態様では第2の態様によるエアロゾル発生デバイスと、使用中の装置により加熱されてエアロゾルを生成するエアロゾル発生材を含む物品とを含むエアロゾル発生システムが提供される。
【0023】
必要に応じて、エアロゾル発生材はタバコ材を含んでもよい。
【0024】
本開示の第4の態様ではエアロゾル発生デバイス用の装置を制御する方法が提供され、この装置は、エアロゾル発生材を加熱してそれによりエアロゾルを発生させるように配置された加熱装置を加熱する加熱回路と、デバイスの温度を感知するための温度感知装置と、前記加熱回路へのエネルギーの供給を制御するコントローラとを含み、該方法は所与の期間中にエネルギーが前記加熱回路に供給されていることを示す特性を決定すること、前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の変化を決定すること、および前記コントローラが、前記決定された特性と前記所与の期間に亘って前記温度感知装置により感知された温度の上昇に基づいて、温度感知装置の障害を示す1つ以上の所定の基準が満たされていると決定した場合、制御動作を行うことを含む。
【0025】
本開示の第5の態様では実行されると、第4の態様による方法が実施されるようにする一連の機械可読命令が提供される。
【0026】
本開示の第6の態様では第5の態様による一連の命令を含む機械可読媒体が提供される。
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して作成された、例としてのみ与えられた、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】エアロゾル発生デバイスの一例の正面図である。
【
図2】外方カバーが取り外された、
図1のエアロゾル発生デバイスの正面図である。
【
図3】
図1のエアロゾル発生デバイスの断面図である。
【
図4】
図2のエアロゾル発生デバイスの分解図である。
【
図5A】エアロゾル発生デバイス内の加熱部材の断面図である。
【
図6】
図1から
図5Bのエアロゾル発生デバイス用の例示的な誘導加熱回路の概略図である。
【
図7A】
図6の例示的な誘導加熱回路のインダクタを流れる電流の概略図である。
【
図7B】
図6の例示的な誘導加熱回路の電流検出抵抗器の両端間の電圧の概略図である。
【
図8】
図6の回路の切り替え装置の両端間の電圧の概略図である。
【
図9】
図1から
図5Bのデバイスの誘導加熱回路の例の別の概略図である。
【
図10】前の図に表された例示的な誘導加熱回路の例示的な制御装置の様々な部分を示す。
【
図11】前の図に表された例示的な誘導加熱回路の例示的な制御装置の様々な部分を示す。
【
図12】前の図に表された例示的な誘導加熱回路の例示的な制御装置の様々な部分を示す。
【
図13】前の図に表された例示的な誘導加熱回路の例示的な制御装置の様々な部分を示す。
【
図14】例示的な誘導加熱回路の状態を制御する例示的な方法を表すフローチャートである。
【
図15】例示的な誘導加熱回路の状態を制御する別の例示的な方法を表すフローチャートである。
【
図16】エアロゾル発生デバイスの使用例の期間全体を通して、サセプタの温度と、サセプタを加熱するために供給される目標電力の概略図である。
【
図17】サセプタおよびサセプタの温度を測定する例示的な温度感知装置の斜視図である。
【
図18】サセプタおよびサセプタの温度を測定する別の例示的な温度感知装置の斜視図である。
【
図19】デバイスに制御機能を提供するための例示的な装置を示し、
図19の例示的な装置により提供される制御機能は、デバイス内の温度に関連する。
【
図20】サセプタを加熱するために供給される電力を制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中では「エアロゾル発生材」なる用語は、加熱すると揮発成分を典型的にはエアロゾルの形体で供する材料を含む。エアロゾル発生材として、あらゆるタバコ含有材が上げられ、例えばタバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品のうちの1つ以上を含む。エアロゾル発生材は、製品によってニコチンを含むまたは含まない他の非タバコ製品を含む。エアロゾル発生材は、例えば、固体、液体、ゲル、ワックスなどの形態であってもよい。エアロゾル発生材はまた、例えば、材料の組み合わせまたはブレンドであってもよい。エアロゾル発生材は、「喫煙可能な材料」としても知られている場合がある。
【0030】
エアロゾル発生材を燃やさずまたは燃焼させずにエアロゾル発生材を加熱してエアロゾル発生材の少なくとも1つの成分を揮発させて、典型的には吸入可能なエアロゾルを形成する装置が知られている。そのような装置は、場合によっては「エアロゾル発生デバイス」、「エアロゾル供給デバイス」、「非燃焼加熱デバイス」、「タバコ加熱製品デバイス」または「タバコ加熱デバイス」またはそれに類似するものとして記載される。同様に通常はニコチンを含むまたは含まない液体の形体のエアロゾル発生材を気化する電子タバコデバイスと呼ばれているものがある。エアロゾル発生材は、ロッド、カートリッジまたはカセットの形体またはそれらの一部として供されてもよい。エアロゾル発生材を加熱し、揮発させるヒーターは装置の「永久」部品として設けられてもよい。
【0031】
エアロゾル供給デバイスは、加熱用のエアロゾル発生材を含む物品を受け入れることができる。本文脈において「物品」は、使用時に加熱されてエアロゾル発生材および任意に他の成分を揮発させるエアロゾル発生材を使用時に含むまたは含有する部品である。ユーザーはエアロゾル発生材が加熱されてエアロゾルを発生させ、その後ユーザーが吸入する前に物品をエアロゾル供給デバイス内に挿入する。物品は、例えば物品を収容する大きさのデバイスの加熱チェンバー内に設置されるように構成された予め定められたまたは特定の大きさであってもよい。
【0032】
図1は、エアロゾル発生媒体/エアロゾル発生材からエアロゾルを発生させるためのエアロゾル供給デバイス100の一例を示している。大筋において、デバイス100は、エアロゾル発生媒体を含む交換可能な物品110を加熱して、デバイス100のユーザーによって吸い込まれるエアロゾルまたは他の吸入可能な媒体を発生させるために使用してもよい。
【0033】
デバイス100は、デバイス100の種々の部品を囲み、収容するハウジング102(外方カバーの形体)を含む。デバイス100は、一端部に開口部104を有し、それを介して物品110が加熱集合体による加熱のために挿入される。使用時、物品110は、加熱集合体に完全にまたは部分的に挿入され、そこで加熱集合体の1つ以上の部品によって加熱される。
【0034】
この例のデバイス100は、第1端部部材106を含み、これは蓋108を含み、この蓋は、物品110が所定の位置に無いときに開口部104を閉じるために第1端部部材106に対して可動である。
図1では蓋108は開放構造に示されているが、蓋108は閉鎖構造に移動してもよい。例えば、ユーザーは蓋108を矢印Aの方向にスライドさせてもよい。
【0035】
デバイス100はまた、デバイス100を操作するボタンまたはスイッチなどのユーザーが操作可能な制御ボタン112を含む。例えば、ユーザーは、ボタン112を操作することでデバイス100を作動させることができる。
【0036】
デバイス100はまた、デバイス100の電池を充電するためのケーブルを受け入れることができるソケット・ポート114などの電気部品を備えてもよい。例えば、ソケット114は、USB充電ポートなどの充電ポートであってもよい。一部の例では、ソケット114は、追加でまたはこれとは別にデバイス100とコンピューターデバイスなどの別のデバイスとの間でデータを転送するために使用してもよい。
【0037】
図2は、外方カバー102を取り外した
図1のデバイス100を示す。デバイス100は、長手方向軸134を画定する。
【0038】
図2に示すように、第1端部部材106がデバイスの一端部に配置され、第2端部部材116がデバイス100の反対の端部に配置されている。第1および第2の端部部材106、116は、共にデバイス100の端部面を少なくとも部分的に画定している。例えば、第2端部部材116の底部面は、少なくとも部分的にデバイス100の底部面を画定している。外方カバー102の縁部も端部面の一部を画定している。この例では蓋108もデバイス100の上面の一部を画定している。また
図2は調整部材112内に関連する第2のプリント基板138を示している。
【0039】
開口部104に近い方のデバイスの端部は、使用時にユーザーの口に近くなるのでデバイス100の近位端部(または吸い口端部)としても知られている。使用時、ユーザーは、開口部104に物品110を挿入し、ユーザー制御部を操作してエアロゾル発生材の加熱を開始し、デバイスに発生したエアロゾルを吸い込む。これによりデバイス100の近位端部に向かう流路に沿ってデバイス100内をエアロゾルが流れるようにする。
【0040】
開口部104から離れている装置の他端部は、使用時にユーザーの口から離れる方の端部となるので、デバイス100の遠位端部としても知られている。ユーザーがデバイスに発生したエアロゾルを吸い込むと、エアロゾルはデバイス100の遠位端部から離れるように流れる。
【0041】
デバイス100は、電源118をさらに含む。電源118は、例えば充電可能なバッテリーまたは充電不可のバッテリーなどのバッテリーであってもよい。好適なバッテリーの例としては、リチウムバッテリー(リチウムイオンバッテリーなどの)、ニッケルバッテリー(ニッケル-カドミウムバッテリーなどの)およびアルカリバッテリーなどが挙げられる。バッテリーは、加熱装置材に電気的に結合されて、必要なときに電力を供給し、エアロゾル発生材を加熱するためのコントローラ(
図2に示されず)の制御下にある。バッテリーは加熱集合体に電気的に接続され、エアロゾル発生材を加熱するために必要に応じてそしてコントローラ(図示せず)の制御の下電力を供給する。この例では、バッテリーはバッテリー118を所定の位置に保持する中央支持部120に接続される。
【0042】
デバイスは少なくとも1つの電子モジュールをさらに含む。電子モジュール122は、例えば印刷回路板 (PCB)を含む。PCB122は、プロセッサなどの少なくとも1つ
のコントローラおよびメモリを保持することができる。PCB122はまた、デバイス100の様々な電子部品を互いに電気的に接続するための1つ以上の電路を含む。例えば、電池端子は、電力をデバイス100全体に分配できるように、PCB122に電気的に接続される。ソケット114はまた、電路を介して電池に電気的に結合される。
【0043】
デバイス100の例では加熱集合体は、誘導加熱集合体であり、誘導加熱工程を介して物品110のエアロゾル発生材を加熱するための種々の部材を含む。誘導加熱は、電磁誘導によって導電性の物体(サセプタなどの)を加熱する工程である。誘導加熱集合体は、誘導部材、例えば1つ以上のインダクタコイルと、交流電流などの変動電流を誘導部材に通すためのデバイスとを含む。誘導部材内の変動電流は、変動磁場を発生させる。変動磁場は、好適には誘導部材に対して位置決めされたサセプタに侵入し、サセプタの内側に渦電流を発生させる。サセプタは渦電流に対して電気抵抗を有し、従って、この抵抗に対する渦電流の流れによってサセプタがジュール加熱によって加熱されるようにする。サセプタが鉄、ニッケルまたはコバルトなどの強磁性材を含む場合、熱がサセプタ内の磁気ヒステリシス損失によって、即ち変動磁場と合致することの結果として磁性材の磁気双極子の向きの変化によって発せられてもい。誘導加熱では例えば伝導による加熱に較べて熱がサセプタの内側に発せられ、素早い加熱を可能にする。さらに誘電ヒーターとサセプタとの間になんら物理的な接触の必要が無く、構造および用途の自由度を高めることができる。
【0044】
デバイス100の例の誘導加熱集合体は、サセプタ構造体132(以下、「サセプタ」とする)、第1のインダクタコイル124と、第2のインダクタコイル126とを含む。第1および第2インダクタコイル124、126は、導電性材料から作製される。この例では第1および第2インダクタコイル124、126は、リッツ線/ケーブルから作製され、これは螺旋状に巻かれ、ヘリカルインダクタコイル124、126を供する。リッツ線は、複数の個別の線を含み、これらは個別に絶縁され、一緒にねじられて1本の線を形成する。リッツ線は、導体中の表皮効果損失を減らすように設計されている。デバイス100の例では第1および第2インダクタコイル124、126は、矩形断面の銅リッツ線から作製される。他の例ではリッツ線は円形などの他の形状の断面を有してもよい。
【0045】
第1インダクタコイル124は、サセプタ132の第1セクションを加熱するための第1の変動磁場を発生させるように構成され、第2インダクタコイル126は、サセプタ132の第2セクションを加熱するための第2の変動磁場を発生させるように構成されている。ここでサセプタ132の第1のセクションは第1のサセプタ域132aと称され、サセプタ132の第2のセクションは第2のサセプタ域132bと称される。この例では第1インダクタコイル124は、デバイス100の長手方向軸134に沿った方向に第2インダクタコイル126と隣接する(即ち、第1および第2インダクタコイル124、126は、重ならない)。この例ではサセプタ装置132は2つの領域を含む単独のサセプタを含むが、他の例ではサセプタ装置132は2つ以上の別個のサセプタを含む。第1および第2インダクタコイル124、126の端部130はPCB122に接続されている。
【0046】
当然のことながら一部の例では第1および第2のインダクタコイル124、126は、互いに異なる少なくとも1つの特性を持っていてもよい。例えば、第1のインダクタコイル124は、第2のインダクタコイル126とは異なる少なくとも1つの特性を持っていてもよい。より具体的には、一例では、第1のインダクタコイル124は、第2のインダクタコイル126とは異なるインダクタンス値を持っていてもよい。
図2に示すように、第1および第2のインダクタコイル124、126は、第1のインダクタコイル124が第2のインダクタコイル126よりもサセプタ132のより小さな部分に巻かれるように異なる長さでのものである。したがって、第1のインダクタコイル124は、第2のインダクタコイル126とは巻数(個々の巻きの間隔が実質的に同じであると仮定)が異なってもよい。さらに別の例では、第1のインダクタコイル124は、第2のインダクタコイル126とは異なる材料でできていてもよい。一部の例では、第1および第2のインダクタコイル124、126は、実質的に同一であってもよい。
【0047】
この例ではインダクタコイル124、126は、互いに同じ方向に巻かれている。即ち、第1のインダクタコイル124および第2のインダクタコイル126の両方が左巻きの螺旋である。別の例では、両方のインダクタコイル124、126は、右巻きの螺旋であってもよい。さらに別の例(図示せず)では、第1のインダクタコイル124および第2のインダクタコイル126は反対方向に巻かれている。これは、インダクタコイルが異なる時間に作動する場合に有効である。例えば、まず第1のインダクタコイル124が物品110の第1の部分を加熱するように作動し、その後、第2のインダクタコイル126が物品110の第2の部分を加熱するように作動してもよい。反対方向に巻くと、特定の種類の制御回路と組み合わせて使用した場合に、非作動コイルに誘導される電流を減らすことができる。コイル124、126が異なる方向に巻かれている一例(図示せず)では、第1のインダクタコイル124が右巻きで、第2のインダクタコイル126左巻きの螺旋であってもよい。別のそのような実施形態では、第1のインダクタコイル124は左巻きの螺旋で、第2のインダクタコイル126は右巻きの螺旋であってもよい。
【0048】
この例のサセプタ132は中空であり、従って中にエアロゾル発生材が収容される受け部を画定する。例えば、物品110はサセプタ132内に挿入される。この例ではサセプタ120は管状で円形の断面を有する。
【0049】
図2のデバイス100は、ほぼ管状であり、少なくとも部分的にサセプタ132を囲む絶縁部材128をさらに含む。絶縁部材128は、例えばプラスチック材料などの任意の絶縁材料で作られる。この特定の例では、絶縁部材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)でできている。絶縁部材128は、サセプタ132で生成された熱からデバイス100の様々な部品を絶縁するのを強化することができる。
【0050】
絶縁部材128はまた、第1および第2のインダクタコイル124、126を完全にまたは部分的に支持することができる。例えば、
図2に示すように、第1および第2のインダクタコイル124、126は、絶縁部材128の周りに配置され、絶縁部材128の半径方向外向きの表面に接している。一部の例では絶縁部材128は、第1および第2のインダクタコイル124、126に隣接しない。例えば、小さな間隙が絶縁部材128の外面と第1および第2のインダクタコイル124、126の内面の間には存在しない。
【0051】
特定の例ではサセプタ132、絶縁部材128、および第1および第2のインダクタコイル124、126は、サセプタ132の中心長手方向軸の周りに同軸である。
【0052】
図3は、部分断面におけるデバイス100の側面を示す。この例でも外方カバー102は存在しない。第1および第2のインダクタコイル124、126の円形断面形状は、
図3でより明確に見ることができる。
【0053】
デバイス100は、サセプタ132の一端を係合してサセプタ132を所定の位置に保持する支持体136をさらに含む。支持体136は、第2の端部部材116に接続されている。
【0054】
デバイス100は、デバイス100の遠位端部に向かって配置された第2の蓋140およびばね142をさらに含む。バネ142は、第2の蓋140を開けて、サセプタ132に触れられるようにする。例えば、第2の蓋140を開いて、サセプタ132および/または支持体136を洗浄する。
【0055】
デバイス100は、サセプタ132の近位端部から離れてデバイスの開口部104の方に延びた膨張チェンバー144をさらに含む。少なくとも部分的に膨張チェンバー144内に配置されているのは、デバイス100内に収容された際に物品110と当接し、保持する保持クリップ146である。膨張チェンバー144は、端部部材106に接続されている。
【0056】
図4は外方カバー102が省略されている
図1のデバイス100の分解図である。
【0057】
図5Aは、
図1のデバイス100の一部の断面を示している。
図5Bは、
図5Aのある領域を拡大して示している。
図5Aおよび5Bは、サセプタ132内に収容された物品110を示し、物品110は、その外面がサセプタ132の内面と当接するような寸法になっている。これにより加熱が最も効率的になる。この例の物品110は、エアロゾル発生材110aを含む。エアロゾル発生材110aはサセプタ132内に位置決めされる。また物品110は、フィルタ包装材および/または冷却構造体などの他の部材を含んでもよい。
【0058】
図5Bは、サセプタ132の外面がサセプタ132の長手方向軸158に垂直な方向に測定して距離150の分だけインダクタコイル124、126の内面から離れていることを示している。1つの特定の例では距離150は、約3mm~4mm、約3~3.5mmまたは約3.25mmである。
【0059】
図5Bは、絶縁部材128の外面がサセプタ132の長手方向軸158に垂直な方向に測定して距離152の分だけインダクタコイル124、126の内面から離れていることをさらに示している。1つの特定の例では距離は、約0.05mmである。別の例ではその距離152は、インダクタコイル124、126が絶縁部材128と当接し、触れるように実質的には0mmである。
【0060】
一例では、サセプタ132は、約0.025mm~1mm、または約0.05mmの壁厚154を有する。
【0061】
一例では、サセプタ132は、約40mm~60mm、約40mm~45mm、または約44.5mmの長さを有する。
【0062】
一例では、絶縁部材128は、約0.25mm~2mm、0.25mm~1mm、または約0.5mmの壁厚156を有する。
【0063】
上記のように例示的なデバイス100の加熱部材は、誘導加熱プロセスにより物品110のエアロゾル発生材を加熱するための様々な部品を含む誘導加熱部材である。特に、第1のインダクタコイル124および第2のインダクタコイル126は、サセプタ132のそれぞれの第1の区域132aおよび第2の区域132bを加熱することで、エアロゾル発生材を加熱してエアロゾルを発生させるのに使用される。次に、
図6から12を参照して、第1および第2のインダクタコイル124、126を使用してサセプタ装置132を誘導加熱する際のデバイス100の動作を詳細に説明する。
【0064】
デバイス100の誘導加熱部材はLC回路を含む。LC回路は、誘導素子によって発生するインダクタンスLと、コンデンサによって発生する静電容量Cを有する。デバイス100において、インダクタンスLは第1および第2のインダクタコイル124、126によって発生し、静電容量Cは、後に説明するように、複数のコンデンサによって発生する。インダクタンスLと静電容量Cを含む誘導加熱回路は、場合によっては、抵抗器の抵抗Rを含むRLC回路として表すことができる。場合によっては、インダクタとコンデンサを接続する回路の部分のオーム抵抗によって抵抗が発生するため、回路に抵抗自体を含める必要はない。このような回路は、回路素子のインピーダンスまたはアドミタンスの虚数部が互いに打ち消し合うときに特定の共振周波数で発生する電気共振を示す場合がある。
【0065】
LC回路の一例は、インダクタとコンデンサが直列に接続された直列回路である。LC回路の別の例は、インダクタとコンデンサが並列に接続されている並列LC回路である。インダクタの崩壊磁場がコンデンサを充電する巻線に電流を生成し、放電コンデンサがインダクタに磁場を構築する電流を供給するため、LC回路で共振が発生する。並列LC回路が共振周波数で駆動される場合、回路の動的インピーダンスは最大になり(インダクタのリアクタンスはコンデンサのリアクタンスに等しいため)、回路電流は最小になる。ただし、並列LC回路の場合、並列インダクタとコンデンサループは電流乗算器として機能する(ループ内の電流を効果的に乗算し、インダクタを流れる電流を乗算する)。したがって、サセプタを加熱するために回路が作動している間、少なくともしばらくの間、RLCまたはLC回路が共振周波数で作動できるようにすると、磁場の最大値を提供することでサセプタを貫通する効果的および/または効率的な誘導加熱を提供することができる。
【0066】
サセプタ132を加熱するためにデバイス100に使用されるLC回路は、以下に説明するように、切り替え装置として機能する1つ以上のトランジスタを利用することができる。トランジスタは、電子信号を切り替えるための半導体装置である。トランジスタは通常、電子回路に接続するための少なくとも3つの端子を備えている。電界効果トランジスタ(FET)は、印加された電界の効果を使用してトランジスタの実効コンダクタンスを変化させることができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、本体、ソース端子S、ドレイン端子D、およびゲート端子Gを含む。電界効果トランジスタは、電荷キャリア、電子または正孔がソースSおよびドレインD間を流れることができる半導体を含む活性チャネルを含む。チャネルの導電率、即ちドレイン端子Dとソース端子S間の導電率は、例えば、ゲート端子Gとソース端子Sの間の電位差の関数であり、例えば、ゲート端子Gに印加された電位によって決まる。エンハンスメントモードのFETでは、ソースS電圧へのゲートGが実質的にゼロの場合、FETはオフ(即ち、電流の通過を実質的に防止)になり、実質的にゼロ以外のゲートG-ソースS電圧がある場合、オン(即ち、電流の通過を実質的に許可)になる。
【0067】
デバイス100の回路で使用できるトランジスタの1つの種類は、nチャネル(またはn型)電界効果トランジスタ(n-FET)である。n-FETは電界効果トランジスタであり、そのチャネルはn型半導体で構成されている。ここで、電子が多数キャリアであり、正孔は少数キャリアである。例えば、n型半導体は、供与体不純物(例えば、リンなど)でドープされた真性半導体(例えば、シリコンなど)を含む。nチャネルFETでは、ドレイン端子Dはソース端子Sよりも高い電位に配置される(即ち、正のドレイン-ソース間電圧、即ち負のソース-ドレイン間電圧がある)。nチャネルFETを「オン」にする(即ち、電流を通過させる)ために、ソース端子Sの電位よりも高い切替電位がゲート端子Gに印加される。
【0068】
デバイス100で使用することができる別種のトランジスタは、pチャネル(またはp型)電界効果トランジスタ(p-FET)である。p-FETは電界効果トランジスタであり、そのチャネルはp型半導体で構成されている。ここで、正孔は多数キャリアであり、電子が少数キャリアである。例えば、p型半導体は、受容体不純物(例えば、ホウ素など)でドープされた真性半導体(例えば、シリコンなど)を含む。pチャネルFETでは、ソース端子Sはドレイン端子Dよりも高い電位に配置される(即ち、負のドレイン-ソース間電圧、即ち正のソース-ドレイン間電圧がある)。pチャネルFETを「オン」にする(即ち、電流を通過させる)ために、ソース端子Sの電位よりも低い切替電位(例えば、ドレイン端子Dの電位よりも高い)がゲート端子Gに印加される。
【0069】
一部の例ではデバイス100で使用される1つ以上のFETは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であってもよい。MOSFETは電界効果トランジスタであり、そのゲート端子Gは絶縁層によって半導体チャネルから電気的に絶縁されている。一部の例では、ゲート端子Gは金属であり、絶縁層は酸化物(例えば、二酸化ケイ素など)、したがって「金属酸化物半導体」であってもよい。しかしながら、他の例では、ゲートは、ポリシリコンなどの金属以外の材料から作製され、および/または絶縁層は、他の誘電体材料などの酸化物以外の材料から作製される。それにもかかわらず、そのような装置は、通常、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)と呼ばれ、本明細書で使用される場合、金属酸化物半導体電界効果トランジスタまたはMOSFETという用語は、そのような装置を含むと解釈されるべきである。
【0070】
MOSFETは、半導体がn型であるnチャネル(またはn型)MOSFETであってもよい。nチャネルMOSFET(n-MOSFET)は、nチャネルFETについて前述したのと同じ方法で操作できる。別の例として、MOSFETは、半導体がp型であるpチャネル(またはp型)MOSFETであってもよい。pチャネルMOSFET(p-MOSFET)は、pチャネルFETについて前述したのと同じ方法で操作できる。n-MOSFETは通常、p-MOSFETよりもソース-ドレイン抵抗が低くなる。したがって、「オン」状態(即ち、電流が通過している状態)では、n-MOSFETはp-MOSFETと比較して発生する熱が少なく、したがって、p-MOSFETよりも作動中のエネルギーの浪費が少ない可能性がある。さらに、n-MOSFETは通常、p-MOSFETと比較して切替時間(即ち、ゲート端子Gに提供される切替電位を変化させてからMOSFETに電流が流れるかどうかを変化させるまでの特徴的な応答時間)が短く、これにより、高い切替速度が高くなり切替制御が改善される。
【0071】
ここで
図6を参照してデバイス100による誘導加熱のための回路について説明する。
図6は、エアロゾル発生デバイス100の誘導加熱回路600の一部の簡略化された概略図を示す。
図6は、第1のサセプタ域132aを加熱するための第1のインダクタコイル124を含む誘導加熱回路600の一部を示す。変動電流が第1のインダクタコイル124を流れる。第1のサセプタ域132aは、サセプタ132が第1のインダクタ124と誘導結合し、渦電流の生成を通じて加熱される方法を表す誘導素子および抵抗素子を有するものとして
図6に表されている。なお、デバイス100は、
図6には示されていない第2のインダクタコイル126をさらに含む。第2のインダクタコイル126もまた、誘導加熱回路600の一部であり、以下に説明するように第2のサセプタ域132bを加熱するように制御される。しかしながら、明確にするために、回路600を、まず、
図6に示すそれらの構造を参照して説明する。
【0072】
回路600は、第1の共振セクション601と、第1の共振セクション601に直流電圧を供給する直流電圧供給部118と、回路600を制御する制御装置をと含む。第1の共振セクション601は、第1のインダクタ124と第1のFET608を含む切替装置を含み、制御装置は、後により詳細に説明するように、回路600で検出された電圧状態に応答して、FET608を第1の状態と第2の状態との間で切り替えて第1のインダクタ124を作動させるように構成される。回路600は、サセプタ132を除いて、デバイス100のPCB122に配置され、インダクタコイル124は、第1の端部130aおよび第2の端部130bでPCB122に接続されている。
【0073】
第1の共振セクション601は、第1のコンデンサ606と、第2のコンデンサ610とを含み、両方とも第1のインダクタ124と並列に配置され、第1の共振セクション601が共振すると、インダクタ124を経て第1のコンデンサ606と第2のコンデンサ610との間に交流電流が流れる。上記のように、第1のFET608、この例ではnチャネルMOSFETは、第1の共振セクション601で切り替え装置として作動するように構成されている。
【0074】
なお、他の例では、共振セクション601は、例えば、第1のコンデンサ606の位置、または第2のコンデンサ610の位置に、1つのコンデンサのみを含む。他の例では、共振セクション601は、3つ以上のコンデンサなど、それ以外の数のコンデンサを含む。例えば、第1のコンデンサ606および第2のコンデンサ610のいずれかまたは両方は、互いに並列に配置された2つ以上のコンデンサによって置き換えられる。当然のことながら、共振セクション601は、共振セクション601のインダクタンスLおよび静電容量Cに依存する共振周波数を有する。共振セクション601内のコンデンサの数、種類、および配置は、回路600で使用される電力水準と回路600の所望の作動周波数を考慮して選択される。例えば、当然のことながら、個々のコンデンサおよび前記コンデンサの配置は、電流を処理する前記コンデンサの能力の制限と同様に、等価直列抵抗(ESR)を有すると見なすことができる。そのような構造は、共振セクション601に静電容量を提供するコンデンサの配置を決定するときに考慮に入れることができる。例えば、所望の電力レベルおよび作動周波数に応じて、複数のコンデンサを並列に提供することには利点があり、より高い静電容量またはより低いESRを提供することができる。この例では、第1および第2のコンデンサ606、610は両方とも、それぞれが約100nFの静電容量を有するセラミックC0Gコンデンサである。他の例では、他種のコンデンサおよび/または他の静電容量値を有するコンデンサ、例えば、この段落で概説されている検討事項に従って、静電容量値が等しくないコンデンサを使用することができる。
【0075】
第1の共振セクション601には、直流電圧供給部器118から直流電圧が供給され、これは、例えば、上記のように、電池によって供給される電圧である。
図6に示すように、直流電圧供給部118は、正の端子118aおよび負の端子118bを備える。一例では、直流電圧供給部118は、約4.2Vの直流電圧を第1の共振セクション601に供給する。他の例では、直流電圧供給部118は、例えば、2V~10V、または約3V~5Vの電圧を供給してもよい。
【0076】
コントローラ1001は、回路600の作動を制御するように構成される。コントローラ1001は、マイクロコントローラ、例えば、複数の入力および出力を含むマイクロ処理装置(MPU)を備えてもよい。一例では、コントローラ1001は、STM32L051C8T6モデルMPUである。一部の例では、回路600に設けられる直流電圧供給部118は、それ自体が電池または他の電源から電力を受け入れるコントローラ1001からの出力によって提供される。
【0077】
直流電圧源118の正端子118aは、第1の接続点600Aに電気的に接続されている。一例では、直流電圧源118は、直流電圧源118から電力を受け取り、回路600を含むデバイスの部品に直流電圧源によって供給される電圧を供給するコントローラ1001を経て接続点600Aに接続される。第1の接続点600Aは、第1のコンデンサ606の第1端部606aおよび第1のインダクタ124の第1端部130aに電気的に接続されている。第1のインダクタ124の第2端部130bは、第2の接続点600B(
図6では回路図の2つの電気的に等価な点で表される)に電気的に接続されている。第2の接続点600Bは、FET608のドレイン端子608Dに電気的に接続されている。この例では、第2の接続点600Bもまた、第2のコンデンサ610の第1の端部610aに電気的に接続されている。第1のFET608のソース端子608Sは、第3の接続点600Cに電気的に接続されている。第3の接続点600Cは、接地616に電気的に接続されており、この例では、第2のコンデンサ610の第2の端部610bに接続されている。第3の接続点600Cは、電流検出抵抗器615を経て第4の接続点600Dに接続され、第4の接続点600Dは、直流電圧源118の負端子118bに電気的に接続され、これは、正端子と同様に一例ではコントローラ1001を介して供給される。
【0078】
なお、第2のコンデンサ610が存在しない例では、第3の接続点600Cは、3つの電気接続、即ち、第1のFETソース端子608S、接地616、および電流検出抵抗器615に対する接続、のみを有する。
【0079】
上記のように、第1のFET608は、第1の共振セクション601で切り替え装置として機能する。第1のFET608は、第1の状態、即ち「オン」状態と第2の状態、即ち「オフ」状態との間で作動可能である。当業者には分かっていることだが、nチャネルFETがオフ状態にあるとき(即ち、適切な制御電圧がそのゲートに印加されていないとき)は、効果的にダイオードとして機能する。
図6では第1のFET608がそのオフ状態にあるときは、第1のダイオード608aがダイオード機能を有する。即ち、FET608がオフ状態にあるとき、第1のダイオード608aが、ドレイン端子608Dからソース端子608Sに流れる電流を大部分阻止するが、第1のダイオード608aが適切に順方向にバイアスされている場合は、電流はソース端子608Sからドレイン端子608Dに流れる。適切な制御電圧がゲートに印加され、ドレインDとソースSの間に導電パスが存在する場合、nチャネルFETはオン状態になる。したがって、第1のFET608がオン状態になると、第1の共振セクション601内で閉じたスイッチのように作動する。
【0080】
上記のように回路600は、第1の共振セクション601と追加の制御装置を含むと見なすことができる。制御装置は、比較器618、ゼロ電圧検出器621、およびフリップフロップ622を含み、第1の共振セクション601内の電圧状態を検出し、検出された電圧状態に応答して第1のFET608を制御するように構成される。次に制御装置による第1のFET608のこの制御について、より詳細に説明する。
【0081】
第2の接続点600Bには、電圧状態、即ち、接地電圧に対して0Vまたはそれに近い電圧を検出するように構成されたゼロ電圧検出器621が、回路600内のゼロ電圧検出器621が接続されている点で電気的に接続されている。ゼロ電圧検出器621は、FET608の状態の切り替えを制御するための信号を出力するように構成される。即ち、ゼロ電圧検出器621は、フリップフロップ622に信号を出力するように構成される。フリップフロップ622は、2つの安定状態間で作動可能な電気回路である。フリップフロップ622は、フリップフロップの状態に応じて第1のFETゲート端子608Gに電圧を印加するように構成された第1のゲート駆動器623に電気的に接続されている。即ち、第1のゲート駆動器623は、フリップフロップが一方の状態にあるときに、FET608をオン状態に切り替えるために第1のFETゲート端子608Gに適切な電圧を提供するように構成されるが、フリップフロップ622が他の状態にあるときは、FET608をオン状態に維持するための適切な電圧を印加しないように構成される。例えば、第1のゲート駆動器623は、フリップフロップ622が状態「1」にあるときにFET608をオンに切り替えるために第1のFETゲート608Gに適切なゲートソース電圧を印加し、第1のゲート駆動器623は、フリップフロップ622が状態「0」にあるときにゲート-ソース電圧を印加しないように構成される。したがって、フリップフロップ手段622の状態によって、第1のFET608がオンであるかオフであるかが制御される。
【0082】
この例では制御装置のゼロ電圧検出器621および第1のゲート駆動器623は、コントローラ1001からそれぞれの信号1011、1021を受信するように構成され、これにより、後により詳細に説明するように、コントローラ1001は、回路600の作動を開始および制御することができる。
【0083】
第4の接続点600Dには制御電圧線619が電気的に接続されている。制御電圧線619は抵抗器617aを介して第5の接続点600Eに電気的に接続され、第5の接続点600Eは電圧比較器618(以下、比較器618)に電気的に接続されている。第5の接続点600Eは比較器618の正端子に電気的に接続されている。比較器618の負端子は接地616に接続されている。この例では、比較器618は、第5の接続点600Eにおける電圧の接地電圧に対する比較に基づいて信号を出力するように構成される。比較器618の出力信号は、フリップフロップ622に送信される。制御電圧1031は、この例では、コントローラ1001から、第2の抵抗器617bを介して制御電圧線619に供給される。
【0084】
上記のように、比較器618は、フリップフロップ622に出力を印加するように電気的に接続されている。フリップフロップ622は、比較器618からの出力信号がフリップフロップ622の状態を切り替え、それにより第1の駆動器623が第1のFET608の状態を切り替える。
【0085】
次に例示的な回路600の機能を、第1のインダクタコイル124が第1のサセプタ域132aを加熱すべく操作されるように、コントローラ1001によって作動される第1の共振セクション601の状況でより詳細に説明する。
【0086】
まず、第1のFET608はオフ状態で、したがってダイオード608aとして機能し、インダクタ124に電流が流れないようにする。コントローラ1001は、回路600の作動を開始して、第1のサセプタ域132aを加熱する。FET608は、オフ状態からオン状態に切り替わる。この例ではコントローラは、ゼロ電圧検出器621にSTART信号1011を印加して回路600の作動を開始する。それによりフリップフロップ622の状態が切り替わり、第1のゲート駆動器623がFETゲート端子608Gに信号を印加し、FETをオン状態に切り替える。
【0087】
FET608がオン状態に切り替わると、回路600の自励発振加熱サイクルと呼ばれ得るものが始まる。現在オン状態にあるFET608は、直流電流が直流電圧源の正の端子118aから第1のインダクタ124を通って流れ始め、電流検出抵抗器615を経て直流電圧源の負の端子118bに戻す閉スイッチとして機能する。第1のインダクタ124は、よく知られているように、電流のこの最初の増加に対抗し、ファラデーおよびレンツの法則により逆直流を生成する。オン状態では、ドレイン端子608Dとソース端子608Sとの間の電圧は実質的にゼロである。
【0088】
図7Aは、時間t0で、FET608がオンにされたときから始まる時間Tに対して第1のインダクタ124を流れる電流の概略的なグラフ表示を示す。時間t0から、直流電流は、インダクタ124のインダクタンスL1、回路600の直流抵抗、および直流供給電圧に依存する速度で、ゼロからインダクタ124に蓄積し始める。一例では電流検出抵抗器615は、約2mΩの抵抗を有し、インダクタ124は、2mΩ~15mΩ、または4mΩ~10mΩ、あるいはこの例では約5.2mΩの直流抵抗を有する。インダクタ内のこの電流の蓄積は、磁気エネルギーを蓄積するインダクタ124に対応し、インダクタ124によって蓄積できる磁気エネルギーの量は、自明のように、そのインダクタンスL1に依存する。
【0089】
図7Bは、FET608がオンにされたときの時間t0からの時間tに対する電流検出抵抗器615の両端部間の電圧の簡略化された表現を示す。FET608がオンになった直後に、インダクタ124の両端に電圧が発生する。これは、インダクタが電流の増加に対抗するときにインダクタ124が生成する逆起電力である。したがって、このとき、直流電源118から印加される電圧差のほとんどすべてがインダクタ124の両端で降下するので、
図7Bに示される電流検出抵抗器615の両端部の電圧は、小さい。次にインダクタ124を流れる電流が増加し、インダクタ124の逆起電力が減衰するにつれて、電流検出抵抗器615の両端部間の電圧が上昇する。これは、
図7Bに示すように、電流検出抵抗器615の両端に負の電圧が発生していると見なされる。即ち、電流検出抵抗器615の両端部の電圧は、FET608がオンになっている時間の長さにつれてますます負になる。
【0090】
電流検出抵抗器615の両端部間の次第に大きくなる負の電圧は、インダクタ124を流れる電流の増加に対応するので、電流検出抵抗器615の両端部の電圧の大きさは、インダクタ124を流れる電流を示す。FET608がそのままの状態のとき、インダクタ124を流れる電流および電流検出抵抗器615の両端部の電圧は、インダクタンスL1および回路600の直流抵抗に依存する時定数で、それぞれの最大値Imax、Vmax(直流電源118によって供給される直流電圧および回路600の直流抵抗に依存する)に向かって実質的に直線的に増加する。なお、インダクタ124を流れる電流は、時間t0の後に変化するので、第1のインダクタ124を流れる直流電流が蓄積する間にサセプタ132の多少の誘導加熱が起こり得る。
【0091】
回路600は、FET608がオンに切り替えられている間に第1のインダクタ124に蓄積されるエネルギーの量を制御装置で決定し、コントローラ1001で制御するように構成される。コントローラ1001は、次に説明するようにインダクタ124に蓄積することができる直流電流の量(したがって、磁気エネルギーの量)を制御する。
【0092】
上記のように制御電圧1031は、制御電圧線619に印加される。この例では制御電圧1031は、正の電圧であり、比較器618の正の端子に入力される電圧(即ち、第5の接続点600Eの電圧)は、どの時点においても、制御電圧1031の値および第4の接続点600Dの電圧に依存している。電流検出抵抗器615の両端部の負電圧が特定の値に達すると、第5の接続点600Eで正の制御電圧1031を相殺し、第5の接続点600Eで0Vの電圧(即ち、接地電圧)を与える。この例では、抵抗器617aの抵抗は2kΩである。抵抗器617bは、70kΩのコントローラ1001に対する実効抵抗を表す。第5の接続点600Eの電圧は、電流検出抵抗器615の両端部の負電圧が制御電圧1031と同じ大きさのときに0Vに達する。
【0093】
比較器618は、その正端子の電圧をその負端子に接続された接地616の電圧と比較し、その結果として信号を出力するように構成される。一例では比較器は、On-Semiconductorから入手できる標準部品FAN156である。したがって、第5の接続点600Eの電圧が0Vに達すると、比較器618は、その正端子で0V信号を受信し、比較器618による比較の結果は、正端子の電圧が負端子の電圧に等しい。その結果、比較器618は、信号をフリップフロップ622に出力し、FET608をオフに切り替える。したがって、FET608のスイッチオフは、回路600で検出された電圧状態、即ち、この例では、比較器618が、その端子間の電圧の比較によって、電流検出抵抗器615の両端部の負の電圧を検出したときに依存する。時間t1で発生する制御電圧1031と同じ大きさに達した場合、FET608はオフに切り替えられる。
図7Aでは、FET608がオフに切り替えられたときに時間t1でインダクタ124を流れる直流電流は、I1で表される。
【0094】
FET608がオフになると時間t1で、FET608は、共振セクション601の閉スイッチのように作動するスイッチからダイオード608aのように作動するように切り替わり、直流電源118からの供給を目的として効果的に開スイッチのように作動する。時間t1において、インダクタ124を経て接地616に至る直流電流の経路は、FET608によって遮断される。これは、第1のインダクタ124に流れる電流が減衰する原因になり(これは
図7Aには示されていない)、インダクタ124誘導電圧を生成することで、この電流の変化に対抗する。したがって、電流は、第1の共振セクション601の共振周波数で、インダクタ124とコンデンサ606、608との間で前後に振動し始める。
【0095】
同様にインダクタ124の両端部、したがって第1のFETドレイン608D端子とソース608S端子との間の電圧は、第1の共振セクション601の共振周波数で発振し始める。インダクタ124の両端の電流および電圧が発振し始めると、サセプタ132は誘導的に加熱される。したがって、FET608をオフ状態に切り替えることは、時間t1でインダクタ124に蓄積された磁気エネルギーを解放して、サセプタ132を加熱するように作用する。
【0096】
図8は、時間t0からt1までオン状態にあるFET608から始まる第1のFET608の両端部の電圧波形800を示す。
図8に示される時間で、第1のFET608は、2回オフおよびオンされる。
【0097】
電圧波形800は、第1のFET608がオンのときの時間t0とt1との間の第1の区分800aと、第1のFET608がオフのときの第2の区分800bから800dを含む。区分800eでは、FET608が再びオンになり、第1の区分800aと同等の第3の区分800fが始まり、第1のFET608はオンのままであり、インダクタ124を通る上記の直流電流の蓄積過程が繰り返される。
図8はまた、FET608の両端の電圧の発振を可能にするために第1のFET608が再びオフに切り替えられたときの第4の区分800gと、第1のFET608がその後再びオンにされたときの第5の区分800hを示す。
【0098】
区分800a、800f、および800hで第1のFET608がオンになっているとき、第1のFET608の両端の電圧はゼロである。区分800bから800dおよび区分800gによって示すように、第1のFET608がオフにされるとき、第1のインダクタ124は、その磁場(この磁場は、第1のFET608がオンのときに蓄積された直流電流の結果であった)に蓄積されたエネルギーを使用し、第1のFET608がオフである結果として、第1のインダクタ124を流れる電流の低下に対抗する電圧を誘導する。第1のインダクタ124に誘導された電圧は、第1のFET608の両端の電圧の対応する変動を引き起こす。この電圧の変動中に、第1のインダクタ124およびコンデンサ606、610は、正弦波形で互いに共振し始める。電圧波形800によって示される電圧は、第1のFET608がオフになっていることによる電流の低下に対抗するために第1のインダクタ124の誘導電圧が増加するにつれて最初に増加し(例えば、800bを参照)、ピークに達する(例えば、800cを参照)。次に、第1のインダクタ124の磁場に蓄積されたエネルギーが減少するにつれて、ゼロに戻って減少する(例えば、800dを参照のこと)。
【0099】
変動電圧800bから800dおよび800gは、対応する変動電流(図示せず)を生成し、第1のFET608のオフ時間の間、コンデンサ606、610および第1のインダクタ124は共振LC回路として作用するので、第1のインダクタ124およびコンデンサ606、610の組み合わせの全インピーダンスは、この時間の間は最小値である。したがって、当然のことだが、第1のインダクタ124を流れる変動電流の最大の大きさは比較的大きい。この比較的大きな変動電流は、第1のインダクタ124に比較的大きな変動磁場を引き起こし、これによりサセプタ132が熱を発生する。この例では区分800bから800dおよび区分800gで示すように、第1のFET608の両端の電圧が変化する期間は、第1の共振セクション601の共振周波数に依存する。
【0100】
ここで
図6および
図8を参照すると、第1のFET608がオフで、第1のFET608の両端の電圧が0Vに向かって減少するとき、ゼロ電圧検出器621がこの電圧状態を検出し、第1のFET608をオン状態に戻すフリップフロップ622に信号を出力するように回路600が構成される。即ち、第1の共振セクション601内で検出されたこの電圧状態に応答して、FET608はオフ状態からオン状態に切り替えられる。ゼロ電圧検出器621は、FET608がオフにされてから、誘導素子と容量素子との間の所与の割合の電流発振のサイクルが完了したことを示す電圧状態を検出すると見なすことができる。即ち、ゼロ電圧検出器621は、FET608の両端の電圧が0Vまたはほぼ0Vに戻ったことを検出するゼロ電圧検出器621によって第1の共振セクション601の共振周波数での電流(および電圧)発振の半サイクルが完了したことを検出する。
【0101】
一部の例ではゼロ電圧検出器621は、第1のFET608の両端の電圧が電圧レベル801以下に戻ったことを検出し、したがって、FET608の両端間電圧が正確に0Vに達する前にFET608の状態の切り替えを引き起こす信号を出力してもよい。
図8に示すように、ゼロ電圧検出器621の作動は、半サイクル後の共振セクション601内の電圧の発振を低減し、したがって、第1のFET608の両端に実質的に半正弦波の電圧波形が得られる。ゼロ電圧検出器621の作動の詳細は、
図9を参照して以下に説明される。
【0102】
第1のFET608が再びオンに切り替えられると、時点800eで、直流源118によって駆動される直流電流が、第1のインダクタ124を介して再び蓄積される。次に第1のインダクタ124は第1のFET608がオフに切り替えられて第1の共振セクション601内で共振を開始するときに放出される磁場の形で再びエネルギーを蓄積する。第1のFET608がこのように繰り返しオンおよびオフに切り替えられると、上記の過程が連続的に繰り返されてサセプタ132を加熱する。
【0103】
なお、
図7Aおよび7Bを参照して説明したインダクタ124を通る上記の電流の蓄積は、コントローラ1001からのSTART信号1011に応答してFET608が最初にオンになったとき、およびFET608が続いて、ゼロ電圧検出器621によって検出されたゼロ電圧状態によってオンに切り替えられたときの両方で起こる。第1の例では、START信号1011に応答して、インダクタ124の電流は、0から実質的に直線的に増加する。第2の例では、時点800eで検出されたゼロ電圧状態に応答してFET608が再びオンになるとき(例えば、FET608のスイッチオンおよびオフの前のサイクルから)、いくらかの過剰電流が回路600内を循環している。ゼロ電圧状態の検出に続いてFET608が再びオンになると、再循環電流は、FET608を介して初期負電流を生成する。次に、FET608がオンのままである間、FET608およびインダクタ124を流れる電流は増加する。再循環電流によって生成された初期の負の電流値から、実質的に直線的に上昇する。インダクタ124を流れる電流が増加するにつれて、電流検出抵抗器615の両端の電圧は、上記の方法で、対応してますます負になる。
【0104】
一部の例ではFET608のオンとオフの切り替えは、約100kHz~2MHz、または約500kHz~1MHz、または約300kHzの周波数で行われてもよい。FET608のオンとオフの切り替えが起こる周波数は、インダクタンスL、静電容量C、電源618によって供給される直流電源電圧、さらに共振セクション601およびサセプタ132の負荷効果を経て電流が再循環し続ける程度に依存する。例えば、直流供給電圧が3.6Vに等しい場合、インダクタ124のインダクタンスは140nHであり、共振セクション601の静電容量は、100nFであり、FET608がオンのままである時間は約2700nsで、FET608がオフのときに発振の半サイクルが完了するまでの時間は約675nsであってもよい。これらの値は、直流電圧供給部器118から共振セクション601に供給される約20Wの電力に対応する。FET608がオンのままである時間の上記の値は、回路内を再循環する電流の量によって影響を受ける。上記のようにこの再循環電流は、FET608のスイッチオン時にインダクタを介して初期の負の電流を発生させる。なお、FET608のスイッチオフを引き起こす値まで電流が蓄積する時間も少なくとも部分的にインダクタ124の抵抗に依存するが、これは、共振セクション601のインダクタンスの効果と比較した場合、この時間に比較的小さな影響を及ぼす。振動の半サイクルが完了するまでの時間(この例では675ns)は、インダクタ124およびコンデンサ606、610のインダクタンスと静電容量の値だけでなくインダクタ124にサセプタ132を負荷することで提供される実効抵抗によっても影響を受ける共振セクション601の共振周波数に依存している。
【0105】
これまで回路600を1つのインダクタ、第1のインダクタ124によってサセプタ132を加熱する動作に関して説明し、デバイス100によって使用される回路600の一部のみを説明してきた。しかしながら、上記のようにデバイス100は、サセプタ132の第2の区域132bを加熱する第2のインダクタ126も含む。
図9は、第1のインダクタ124に加えて第2のインダクタ126を含む回路600を示す。
【0106】
図9に示すように
図6から8を参照して説明した特徴構造に加えて、回路600は、第2のインダクタコイル126、第3のコンデンサ706、第4のコンデンサ710、およびドレイン端子708D、ソース端子708S、およびゲート端子708Gを有する第2のFET708を含む第2の共振セクション701を含む。さらに回路600は、第2のFETゲート端子708Gにゲート源電圧を提供するように構成された第2のゲート駆動器723を含む。コントローラ1001は、
図9には示されていないが、コントローラ1001は、
図6から8を参照して説明した方法で回路600を制御し、さらに制御信号1012を第2のゲート駆動器723に提供するように構成される。
図6を参照して既に説明した回路600の一部は、明確にするために
図9から省略されている。
【0107】
上記のように第1のインダクタ124は、サセプタ132の第1の区域132aを加熱するように配置され、第2のインダクタ126は、サセプタ132の第2の区域132bを加熱するように配置される。第2のインダクタ126、第3および第4のコンデンサ706、710、および第2のFET708は、第1のインダクタ124と同様に、第2の共振セクション701を形成するように配置される。一例では第3および第4のコンデンサ706、710もまたC0Gコンデンサであり、約100nFの容量を持っていてもよい。一例では第2のインダクタ126は、約8mΩの直流抵抗を有する。作動中の場合、第2の共振セクション701は、第1の共振セクション601について上で説明したのと同等の方法でサセプタ132を加熱するように作動するが、この説明はここでは繰り返さない。
【0108】
当然のことながら、インダクタ124、126の直流抵抗の値は、回路600の効率に影響を及ぼす。なぜなら、直流抵抗が高いほど、インダクタ124、126の抵抗損失が高くなるためである。例えば、巻数、またはインダクタ124、126の断面を変更してインダクタの直流抵抗を最小にすることが望ましい場合がある。さらに、当然だが、インダクタ124の交流抵抗は、表皮効果による直流抵抗と比較して増加する。したがって、リッツ線を使用すると、表皮効果が減少し、それによりインダクタ124、126からの交流抵抗および関連する抵抗損失が減少する。例を挙げると、第1のインダクタ124の直流抵抗は約5mΩである。第2のインダクタ126は約8mΩの直流抵抗を有し、回路は約300kHzで作動し、コイルを形成するリッツ線の特定の配置は、インダクタ124、126の実効抵抗をそれらの直流抵抗値の約1.14倍にする。
【0109】
第2の共振セクション701の接続点700Aは、第1の共振セクション601の第1の接続点600Aと同等であり、第1の接続点600Aに、したがって直流電源118の正端子118aに電気的に接続される。接続点700Cは、第1の共振セクション601の第3の接続点600Cと同様に、第2の共振セクション701における同等の位置であり、接続点700Cは、同様に、接地616に接続されている。
【0110】
重要なことは、回路600は、共振セクション601、701のうちの一方だけがどの時点においても作動するように、コントローラ1001によって作動するように構成されることである。この操作の例については、後に詳しく説明する。
【0111】
共振セクション601、701のうちの一方が作動中、ゼロ電圧検出器621は、作動中の共振セクション601、701のゼロ電圧状態を検出し、したがって、作動中の共振セクション601、701のそれぞれのFET608、708の切り替えを制御するように構成される。ゼロ電圧検出器621は、
図8から
図10を参照してより詳細に説明するように、作動中の共振部601、701のそれぞれのFET608、708がいつ作動状態に戻されるか(時点800eなど)を制御する。
【0112】
回路600において、ゼロ電圧検出器621は、第1の共振セクション601の第2の接続点600Bまたは第2の共振セクション701の同等の接続点700Bでゼロ電圧状態を検出するように構成される。第1の共振セクション601および第2の共振セクション701の一方が作動中の場合、ゼロ電圧検出器621は、それぞれのFET608、708がオフに切り替えられるたびに、そのFET608、708の両端の電圧がゼロ(例えば、
図8の点800e)またはゼロ近く、例えばレベル801未満に戻ったことを検出する。この検出を行うゼロ電圧検出器621に応答して、フリップフロップ622の状態を切り替える信号が出力される。次に作動中のそれぞれのゲート駆動器623は、ゲートソース電圧を出力してそれぞれのFETをオン状態に戻す。
【0113】
第1の小信号ダイオード725は、ゼロ電圧検出器621を第1の共振セクションの第2の接続点600Bに接続し、第2の小信号ダイオード726は、ゼロ電圧検出器621を第2の共振セクション701の同等の接続点700Bに接続する。具体的には第1の小信号ダイオード725および第2の小信号ダイオードの各陽極は、共通接続点701Bを介してゼロ電圧検出器621入力に接続され、ダイオード725、726の各陰極は、それぞれ接続点600B、700Bに接続される。
【0114】
次に特定の例におけるゼロ電圧検出器621の動作を、ゼロ電圧検出器621およびフリップフロップ622を示す
図10を参照して説明する。
図10では、ゼロ電圧検出器621は、点線のボックスで囲まれている。第1および第2の小信号ダイオード725、726の各陽極に接続された接続点701Bが示されている。コントローラ1001からゼロ電圧検出器621への開始信号1011も、
図13に示される。
【0115】
この例のゼロ電圧検出器621は、接続点701Bからの入力2と、フリップフロップ622の入力に接続された出力4とを有するインバータゲートU103を備える。インバータゲートU103は、接続部5および3から電力の供給を受け、コンデンサC108は、接続部5を接地電位から絶縁する。この例では、2.5Vの論理電源621aが入力5に印加され、プルアップ抵抗器R111を経てインバータゲートU103の入力2に印加される。論理電源621aは、この例では、コントローラ1001から供給される。インバータゲートU103は、START信号1011および接続点701Bからのゼロ電圧検出信号のORゲートとして機能するように構成される。即ち、インバータゲートU103は、コントローラ1001からSTART信号1011の形で論理低信号を受信して、回路600aの作動を開始するように構成される。START信号1011は、コントローラ1001の「オープンドレイン」信号ピンによって提供される。インバータゲートU103はまた、第1および第2の信号ダイオード725、726の一方が接続点701Bから論理低信号を受信するように構成される。後に説明するように、接続点600B、700Bの一方がゼロボルトまたはその近くにあるために順方向にバイアスされる。これらの論理低信号のいずれかまたは両方がインバータゲート入力2によって受信されると、インバータゲートU103は、受信信号を反転し、論理高信号をフリップフロップ622に出力する。
【0116】
第1のインダクタ124がサセプタ132を加熱するように作動しているとき、第2のFET708はオフのままである。第2のFET708がオフのままの場合、第2の小信号ダイオード726は、論理電源および直流電源118の電圧、即ち、カソード端(接続点に最も近い)の電圧に応じて、バイアスがないか、または逆バイアスされる。第2の小信号ダイオード726の700B)は、第2の小信号ダイオード726の陽極端部(ゼロ電圧検出器621に最も近い)の電圧と実質的に同じか、またはそれよりも高い。
【0117】
第1の共振セクション601の作動中、第1のFET608がオフであり、その両端部の電圧が
図8の800b-dで示すように変化するとき、第1の小信号ダイオード725は逆バイアスされる。この電圧変動の終わりに、電圧が800eで示すように0Vに達するか0Vに近いとき(例えば、レベル801以下で)、第1の小信号ダイオード725は順方向にバイアスする。したがって、第1の小信号ダイオード725が800eで順方向バイアスされると、抵抗器R111の両端の論理信号621aから電圧降下が起こるため、インバータゲートU103の入力2に提供される信号は論理低信号になる。この論理低信号がインバータゲートU103によって反転されると、論理高信号がインバータゲートU103の出力4に提供される。
【0118】
上記の説明ではゼロ電圧検出器621の機能は、第1のFET608の切替の制御に関連して説明されているが、当然のことながら、ゼロ電圧検出器621は、第1の小信号ダイオード725の代わりに第2の小信号ダイオード726を用いて同じように機能して第2のFET708を制御する。
【0119】
さらに
図10を参照すると、フリップフロップ622は、クロック入力CLK、リセット入力/RST、および出力Qを備える。フリップフロップ622はさらに電力を供給するための入力DおよびVCCを備え、この例ではフリップフロップはインバータゲートU103が受信するのと同じ2.5Vの論理電源621aをコントローラ1001から受信する。クロック入力CLKは、インバータゲートU103の出力4に接続され、そこから信号を受信するように構成されている。インバータゲートU103の出力4が論理低から論理高に切り替わるとき(インバータゲートU103の入力2が検出されたゼロ電圧状態または上記のようなSTART信号1011を受信するため)、フリップフロップ622のクロック入力CLKはフリップフロップ622を「クロック」し、フリップフロップ出力の状態Qを高にする論理高の立ち上がりエッジ信号をフリップフロップ622は受信する。フリップフロップ622は、比較器618の出力から信号を受信するように構成されたさらなる入力/RSTを含み、それにより比較器618は、フリップフロップ622の状態を切り替えて、フリップフロップ出力Qを低にすることができる。フリップフロップ出力Qは、第1および第2のゲート駆動器623、723に接続され、フリップフロップ出力Qから高出力を受信すると、ゲート駆動器623、723の一方が作動中のときは(信号1021、1022を受信するため)は、ゲート駆動器信号をそれぞれのFET608、708に提供する。
【0120】
一特定例では、フリップフロップ622は、論理電源621aの電圧の半分で、即ち、この例では1.25Vで切り替わることができる。これは、第1のFET608がオンになるために第1の小信号ダイオード725の順方向バイアス電圧と第1のFETドレイン608Dの電圧との合計が1.25Vにならなければならないことを意味する。したがって、この例では、第1のFET608は、そのドレイン608Dが正確に0Vではなく0.55Vにあるときにオンになる。なお、理想的には、最大の効率を得るために、FET608の両端部で、0Vで切替が発生する可能性がある。このゼロ電圧切替は、第1のFET608がコンデンサ606、610を放電し、それにより前記コンデンサ606、610に蓄積されたエネルギーの浪費を有利に防止する。
【0121】
図11は、第1および第2のゲート駆動器623、723と、それらのそれぞれのFET608、708のゲート608G、708Gへのそれらの接続をより詳細に示す。ゲート駆動器623、723のそれぞれは、コントローラ1001から供給されるヒーター作動信号1021、1022に依存する信号を受信するように構成された入力INを持っている。さらに、ゲート駆動器623、723の入力INによって受信される信号は、フリップフロップ出力Qによって出力される信号が高であるかどうかに依存する。入力INは、この例ではそれぞれ2kΩの値を有するそれぞれの抵抗器R125、R128を経てフリップフロップ622の出力Qに接続されている。
【0122】
ゲート駆動器623、723は、それぞれ2つのさらなる入力VDDおよびXREFを有し、各入力VDDはコントローラ1001から6Vの電力を受け取り、XREFは2.5Vの論理電圧(この例では、コントローラ1001によってフリップフロップ622とインバータゲートU103に供給されるのと同じ論理電圧である)を受け取る。第1および第2のゲート駆動器623、723のそれぞれの入力VDDは、6Vの供給電圧に接続され、入力VDDは、2つのバッファリングコンデンサC120、C121を介して接地電位に接続される。ゲート駆動器623、723はまた、それぞれ、接地電位に接続された端子GNDを有し、端子VDDおよびGNDは、ゲート駆動器623、723に電力を供給するように作用する。この例では、コンデンサC120、C121は、それぞれ1μFの値を有する。ゲート駆動器623、723は、それぞれの出力OUTからゲート駆動電圧を出力するように構成される。ゲート駆動器623、723の出力OUTは、抵抗器R114、R115を介してそれぞれFETゲート608G、708Gに接続されており、この例では、それぞれが4.99Ωの抵抗を有する。
【0123】
各ゲート駆動器623、723は、その入力INで信号を受信し、フリップフロップ出力Qから論理高信号が提供され、ヒーター作動信号1021、1022がコントローラ1001から受信されている間のみにゲート駆動器を作動させるように構成される。「オープンドレイン」信号ピンは、信号1021、1022を提供するように構成されたコントローラ1001に提供される。
【0124】
一部の例では、共振セクション601、701の一方による加熱回路600の開始は、コントローラ1001によって進行し、最初に、ヒーター開始信号1021、1022のそれぞれの一方によってゲート駆動器623、723の所望の1つを開始する。次に、コントローラ1001は、START信号1011をゼロ電圧検出器621に供給する。START信号1011の持続時間は、作動中の共振セクション601、701による変動の半サイクルの周期よりも短くなければならない(この周期を「共振フライバック期間」と称する。)。これにより、検出されたゼロ電圧状態に応答して回路が適切に自励発振を開始できる。別の例では、START信号1011およびそれぞれのヒーターイネーブル信号1021、1022の順序を逆にして、START信号1011を最初に印加してフリップフロップQ出力を高に設定し、ヒーター開始信号1021の一方を逆にすることができる。次に、信号1021、1022を印加して、信号1021、1022が供給されるヒーターに対応する共振セクション601、701の自励発振を開始する。
【0125】
回路600を制御するための制御装置をより詳細に説明するために
図12は、比較器618および関連する部品を含む制御装置の一部を示す。
図12は、直流電源118の正端子118aが、第1および第2の共振セクション601、701の接続点600A、700Aにそれぞれ接続されている接続点1500Aを示す。直流電源の負端子118bは、
図6に示される接続点600Dと同等である接続点1500Bに接続される。接続点1500Bは、電流検出抵抗器615を介して接地616に接続される。この例では、接続点1500Aと1500Bの間にそれぞれ100μFの容量を持つコンデンサC111、C112、C115、およびC116が並列に接続され、接続点1500Aと1500Bの間にバッファリングを提供する。
【0126】
図12は、作動中のインダクタ124または126を流れる電流が所与のレベルに到達したことを検出するための比較器618の機能に関連する部品をより詳細に示す。前の図を参照して説明したように、比較器618は、作動中のインダクタ(124または126)に流れる直流電流の量を示す電圧をコントローラ1001から発生する制御電圧1031と比較するように作動する。比較器618は、100Ωの抵抗R116を経て2.5Vの論理電力信号(この例では、コントローラ1001によって供給され、かつフリップフロップ622によって受信される信号621aと同じ論理信号である)に接続される入力信号に接続された入力6を経て電力を受け取る。比較器電力入力6は、10nFのコンデンサC119を経て接地電位に接続されている。比較器618のさらなる端子2は、直接接地電位に接続されている。
【0127】
一部の例ではコントローラ1001は、制御電圧1031を生成する信号を生成するためのタイマー(図示せず)を含むマイクロ処理装置である。この例では、制御電圧1031は、コントローラ1001によって生成されたパルス幅変調信号PWM_DACによって生成される。コントローラ1001のタイマーは、例えば、約2.5Vの大きさと約20kHzの周波数を有し、特定のデューティサイクルを有するパルス幅変調された方形波形を生成する。パルス幅変調信号PWM_DACは、10nFのコンデンサC127およびC128、および2つの49.9kΩの抵抗R121、R123および10kΩの抵抗R124によってフィルタリングされ、コントローラ1001が制御電圧1031(例えば、例では約64Hz)を制御する周波数で実質的に一定の制御電圧1031を提供する。制御電圧1031を調節するために、例のコントローラ1001は、回路600に印加されるパルス幅変調信号PWM_DACのデューティサイクルを調節するように構成される。したがって、入力PWM_DACと比較器618の正端子との間に配置された部品は、パルス波変調信号によって生成される制御電圧1031と、このパルス波変調信号のデューティサイクルを調整することによって調整される制御電圧1031の大きさを効果的に提供する。したがって、
図6および9に示される制御電圧線619を、これらの部品によって置き換えることができる。しかしながら、他の例では制御電圧1031は、例えば、コントローラ1001によって供給される実質的に一定の電圧によって生成される。そのような例では、信号PWM_DACをフィルタリングするための
図12に示される部品のいくつかまたはすべては、存在しないかもしれない。
【0128】
比較器618の正の入力に繋がる接続点1500Bは、前述のように、回路600の接続点600Dと同等である。
図6を参照して説明したように、接続点1500Bが、抵抗器617aを経て比較器618の正の入力に接続されていることが
図12から分かる。したがって、比較器618の動作は、上記のように制御電圧1031および電流検出抵抗器615の両端の電圧に依存するその正端子で入力を受け取ることである。比較器618の正端子の電圧が接地電圧に達すると、信号/FF RSTが抵抗器R118を介してフリップフロップ622入力/RSTに出力され、フリップフロップ622の状態が切り替わり、それにより作動中のFET608/708をオフに切り替える。
【0129】
図13は、回路600の制御装置の特定の例のさらなる部品を示す。
図13に示す部品は、回路600の作動中に直流電圧供給装置118から引き出される電流の量を示す信号I_SENSEを提供するための電流検出装置1300を規定する。この信号から、コントローラ1001は直流電圧供装置118から引き出される電流を決定し、直流電圧供装置118によって供給される電圧の値とともに使用して回路600に供給される電力の値を決定してもよい。一部の例では、以下に説明するように、決定された電力値は回路600を制御するためにコントローラ1001によって使用されてもよい。
【0130】
電流検出装置1300への入力1301は、
図12に示される抵抗器R120を介して提供される。したがって、入力は、抵抗器R120を介して接続点1500Bに接続され、電流検出抵抗器615の両端の電圧を示す電圧を受け入れる。感知装置1300は、回路600のローサイド電流検出装置として作動する。その点に関して、電流検出装置1300は、オペアンプU110の入力5に供給される3.8Vの電圧で作動するオペアンプU110(部品型TS507)(よく知られているように電流検出抵抗器615を使用してローサイド電流検出用に設定された)を含む。バイアス抵抗を内蔵したトランジスタU109(部品型RN4986)は、コントローラ1001から供給される2.5VをオペアンプU110の3.8V電源に切り替えるように機能する。トランジスタ部品U109からの電源ラインは、10nFのコンデンサC132を経て接地電位に接続されている。さらに1kΩの抵抗器R130がオペアンプU110の正の入力と接地電位の間に接続され、412kΩの抵抗器R129がコントローラ1001からの2.5V入力と比較器U110の正の入力の間に接続される。オペアンプU110の負端子は、電流検出抵抗器615の両端の電圧に依存する電圧を受け入れる。直列の抵抗器R131およびコンデンサC133は、入力1301から受信した電圧信号のフィルタリングを提供する。さらなる抵抗器R133(この例では97.6kΩの抵抗を持つ)と10nFのコンデンサC134が、オペアンプU110の負端子への入力とオペアンプU110の出力の間に並列に接続され、オペアンプが閉ループモードで作動するようになっている。
【0131】
上記のように一例では2mΩの抵抗器である電流検出抵抗器615が回路内のこの位置にあることで複数のパラメータを1個の電流検出抵抗器で測定することができ、効率が向上する。即ち、回路内の電流検出抵抗器615がこの位置にあると、例えば、回路の誘導加熱電力の制御に使用できるFETピーク電流、電池の放電を監視し、誘導電力を設定するのに使用できる電池からの平均電流、および電池の充電を監視する際に使用できる電池への平均電流の測定が可能となる。
【0132】
オペアンプU110は、電流検出抵抗器615を通る電流を示す電圧信号I_SENSEをコントローラ1001に出力するように作動し、したがって、コントローラ1001が、回路600を介して直流電圧供給部装置118から引き出される電流を決定することができる。
【0133】
なお、第1および第2のFET608および708、ならびに回路600の接続形態を考慮して、第1および第2のインダクタコイル124および126の互いに対する位相調節は、第1のインダクタコイル124が作動しているときにサセプタ132の著しい加熱を引き起こすのに十分な電流が第2のインダクタコイル126に流れるのを防ぎ、第2のインダクタコイル126が作動しているときにサセプタ132の著しい加熱を引き起こすのに十分な電流が第1のインダクタコイル124内を流れるのを防止するように選択される。
【0134】
上記のように、第1のFET608および第2のFET708は、オフに切り替えられるとダイオード608a、708aとして効果的に機能し、したがって、それらが順方向にバイアスされると電流を通す可能性がある(即ち、FETは完全なスイッチではない)。したがって、一部の例では、回路600は、第1の124および126インダクタコイルの一方がサセプタ132を加熱するために作動中のとき、他方の非作動中のインダクタコイルの両端に誘導される電圧はその非作動中のインダクタコイルに関連するFETの固有ダイオードを順方向にバイアスせず、代わりに逆方向にバイアスするように構成されている。
【0135】
検出された電圧状態に応答して回路600の切り替え装置608、708を制御するように構成された上記の制御装置の効果は、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701の一方が作動(即ち、そのゲート駆動器623、723がコントローラ1001によって作動)しているときは、その共振セクションが「自励発振」し、他方は作動していない。即ち、共振セクション601、701におけるそれぞれのFET608、708の切り替えは、(比較器618によって検出される)第1の電圧状態でFETがオンからオフに切り替えられ、(ゼロ電圧検出器621によって検出される)第2の電圧状態でFETがオフからオンに切り替えられる状態を高周波で繰り返す。
【0136】
コントローラ1001は、第1のインダクタ124および第2のインダクタ126のうちの一方のみがどの時点においても作動するように、デバイス100の誘導加熱回路600を制御するように構成されている。コントローラ1001は、所定の周波数で、第1のインダクタ124および第2のインダクタ126のどちらを作動させるかを決定するように構成されている。
【0137】
一部の例ではデバイス100の使用中にコントローラ1001は、所定の周波数、即ち、所定の複数の時間間隔のそれぞれについて1回、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701のどちらを作動させるかを決定する。一例ではコントローラ1001が、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701のどちらを作動させるかを決定するたびに、コントローラ1001は、その共振セクションを作動中にして、次の所定の時間間隔にサセプタ132を加熱することを決定することができる。即ち、例えば、所定の周波数(「割り込み率」と呼ばれることがある)が64Hzの場合、コントローラ1001は、1/64秒の所定間隔で決定することができ、共振セクション601、701は、次の1/64秒間隔の終わりにコントローラがどの共振セクション601、701を次に決定するまで、次の1/64秒の期間作動中にする。他の例では、割り込みレートは、例えば、20Hzから80Hzであってもよく、あるいはこれに対応して、所定の間隔は、長さ1/80秒から1/20秒であってもよい。どちらのインダクタ124、126を所定の間隔で作動させるかを決定するために、コントローラ1001は、どちらのサセプタ域132a、132bをその所定の間隔で加熱すべきかを決定する。一部の例では、コントローラ1001は、以下に説明するように、サセプタ域132a、132bの測定温度を参照して、どちらのサセプタ域132a、132bを加熱すべきかを決定する。
【0138】
図14は、2つの共振セクション601、701のどちらを特定の間隔で活性化すべきかを決定する例示的な方法のフローチャートである。この例ではコントローラ1001は、第1のインダクタ124によって加熱された第1のサセプタ域132aの現行温度T1および第2のインダクタ126によって加熱された第2のサセプタ域132bの現行温度T2に基づいて所定の間隔で作動させる第1の共振セクション601および第2の共振セクション701のいずれかを決定する。一例では、第1のサセプタ域132aおよび第2のサセプタ域132bの現行温度T1およびT2は、サセプタ132の各域に取り付けられたそれぞれの熱電対(その例は以下に記載される)によって測定される。熱電対は、コントローラ1001への入力を提供し、コントローラ1001が温度T1、T2を決定する。他の実例では、他の適切な手段を使用して、サセプタ域132a、132bのそれぞれの温度を決定することができる。
【0139】
ブロック1051でコントローラ1001は、温度T1の現行値を決定し、これを第1のインダクタ124によって加熱すように構成された第1の区域132aの目標温度「目標1」と比較する。第1の区域132aの目標温度「目標1」は、回路600を使用するデバイスの使用期間中に可変値を有する。例えば、温度プロファイルは、デバイス100の使用期間中に、「目標1」の値を定義する第1の区域に対して定義される。
【0140】
ブロック1052でコントローラ1001は、ブロック1051で第1のインダクタ124に対して実行されたのと同じ動作を実行し、この時点で第2の区域132bの現行温度T2が第2の区域132bの目標温度「目標2」より低いかどうかを決定する。この場合も第2の区域132bの目標温度は、使用期間全体を通してターゲット2の値を定義する温度プロファイルによって定義される。第2の区域132bの温度は、第1の区域132aと同様に熱電対などの任意の適切な手段によって測定することができる。
【0141】
ブロック1051およびブロック1052での回答が両方とも「いいえ」の場合、即ち、両方のサセプタ域132a、132bが現在それぞれの目標温度「目標1」、「目標2」以上の場合、コントローラ1001は、第1の共振セクション601と第2の共振セクション701のどちらも次の所定の間隔で作動させるという決定をしない。
【0142】
ブロック1051での答えが「いいえ」で、かつブロック1052での答えが「はい」の場合、即ち、第1の区域132aはその目標温度「目標1」以上であるが、第2の区域132bはその目標温度「目標2」より低い場合、コントローラ1001は次の所定の間隔の間、第2の区域132bを加熱するために第2の共振セクション701を作動させるべきと決定する。
【0143】
ブロック1051での答えが「はい」であり、かつブロック1052での答えが「いいえ」の場合、即ち、第1の区域132aがその目標温度「目標1」より低く、第2の区域132bがその目標温度「目標2」以上の場合、コントローラ1001は次の所定の間隔の間、第1の区域132aを加熱するために第1の共振セクション601を作動させるべきであると決定する。
【0144】
ブロック1051での答えが「はい」、かつブロック1052での答えが「はい」の場合、即ち、第1の区域132aおよび第2の区域132bの両方がそれぞれの目標温度「目標1」、「目標2」を下回っている場合、コントローラ1001はブロック1053に続く。ブロック1053で、コントローラ1001は、区域132a、132bの両方がそれぞれの目標温度を下回ったままの所定の間隔ごとに、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701の交互の作動に効果的に作用する。
【0145】
一例では、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701を交互に作動させるために、ブロック1053で、コントローラ1001は、期間の開始から偶数の所定の間隔が経過したかどうかを決定する。期間の開始から偶数の所定の間隔が経過した場合、コントローラ1001は、第1の共振セクション601が次の間隔で作動されるべきであると決定する。期間の開始から奇数の所定の間隔が経過した場合、コントローラ1001は、第2の共振セクション701が次の間隔で作動されるべきであると決定する。他の例では、コントローラ1001は、偶数の間隔が経過したときに第2の共振セクション701を作動し、奇数の間隔が経過したときに第1の共振セクション601を作動することができる。
【0146】
特定の例では共振セクション601、701の一方がゲート駆動器623、624の一方で信号1021または1022の受信によって作動すると、回路600はその共振セクション601/701が作動し続けるようにする。例えば、その共振セクション601/701のゲート駆動器に異なる信号を提供することで、コントローラ1001によって作動を解くまで自励発振する。したがって、所与の間隔中にどちらの共振セクション601、701を作動させるかを決定すると、コントローラ1001は、この作動を開始するために、前の間隔中に作動していた共振セクション601、701の一方を非作動にすることができる。
【0147】
図14に示す方法1050が1/64秒の間隔で実行されるブロック1053の例を説明する。コントローラ1001が、両方の区域132a、132bがそれぞれの目標温度「目標1」、「目標2」より低く、かつデバイス100の使用期間の開始から偶数の1/64秒間隔が経過したと決定した場合、コントローラ1001は、次の1/64秒間隔の間、第1の共振セクション601を作動させ、第2の共振セクション701を休止させる。そのために一部の例では、第2の共振セクション701を休止させるコントローラ1001を必要とする。その次の1/64秒間隔の後、両方の区域132a、132bがそれぞれの目標温度「目標1」、「目標2」を下回ったままの場合、次の1/64秒間隔の間、コントローラ1001は第2の共振セクション701を作動させ、第1の共振セクション601を休止させる。そのために、一部の例では、コントローラ1001が第2の共振セクション701を休止させることを必要とする。両方の区域132a、132bは、それぞれの目標温度を下回ったままであり、この状態は、第1の共振セクション601と第2の共振セクション701の作動を交代させる。
【0148】
要するにこの方法1050は、2つのインダクタ124、126が決して同時に作動されないという効果を有する。両方のインダクタ124、126がそれぞれの区域132a、132bを目標温度にするために作動が必要と決定された場合、コントローラ1001は所定の周波数でインダクタ124、126への電力の供給を交互にして、両方の区域132a、132bをそれぞれの目標温度まで上げる。したがって、使用期間の特定の時点で、各サセプタ域132a、132bを加熱するための誘導コイル124、126の作動は、64Hzなどの特定の周波数で交番することができる。例えば、第1の域132aが実質的にその目標温度より低く、第2の域132bがその目標温度以上である複数の間隔を含む使用期間の間に、この手順1050は、この期間のほぼ100%の間、電力が第1の共振部601に供給されるという効果を有する。しかしながら、これらの域132a、132bの両方がそれらの目標温度を下回る複数の間隔を含む使用期間の間に関しては、各インダクタは、この期間の約50%の間電力を受け取ることができる。
【0149】
一部の例ではコントローラ1001はまた、所定の間隔で作動し、この間隔は、方法1050が実行される所定の間隔と一致し、直流電源118から共振セクション601、701の一方に供給される電力を決定する。
【0150】
上記のように特に
図9から11を参照すると、どの時点においても第1の共振セクション601および第2の共振セクション701のいずれを作動させるように制御するために、コントローラ1001は、回路600の動作を開始する「START」信号1001を送信するだけでなく、第1のヒーター作動信号1011を第1のゲート駆動器623に選択的に送信して第1の共振セクション601を作動させるか、第2のヒーター作動信号1012を第2のゲート駆動器723に送信して第2の共振セクション701を作動させるように構成される。
【0151】
例えば、コントローラ1001が回路600の作動を開始し、かつコントローラ1001が第1のヒーター作動信号1011を送信すると、回路600は上記のように作動して、第1のインダクタ124を作動させて第1のサセプタ域132aを加熱する。コントローラ1001が第2のヒーター作動信号1012を送信すると、回路600は、第2のインダクタ126を作動させて第2のサセプタ域132bを加熱するように作動する。コントローラ1001が第1のヒーター信号1011と第2のヒーター信号1012のどちらも送信しない場合、インダクタ124、126のどちらも作動されず、サセプタ132は加熱されない。
【0152】
コントローラ1001は、回路600に供給される電力の測定値と目標電力との比較に基づいて、サセプタ132の誘導加熱のために直流電圧供給部装置118から回路600に供給される電力を制御するように構成される。コントローラ1001は、回路600の切り替え装置を制御して、即ち、FET608、708の切り替えを制御して、回路600に供給される電力を制御するように構成される。コントローラ1001は、FET608、708がオフになる前に、そのFET608、708に対応するインダクタ124、126に蓄積できる直流電流を決定する制御電圧1031を設定することによって、FET608、708の切り替えを制御してもよい。
【0153】
図15は、回路600に供給される電力を制御するためにコントローラ1001によって実行される例示的な方法1100を示す。ブロック1101において、コントローラ1001は、直流電源118から回路600に供給される電力Pを決定する。例えば、コントローラ1001は、前の所定の間隔の間に回路600に供給された電力の平均を決定することができる。一部の例ではこの間隔中に回路600に供給される電力Pは、共振セクション601、701のうちの一方を介して駆動される両端の電圧および直流電流の測定によって決定される。次にコントローラ1001は、共振セクション601、701の一方の電圧と直流電流の積を決定して、その共振セクション601、701供給される電力Pを決定してもよい。
【0154】
一部の例では決定された電力Pは、所定の間隔に亘って直流電源118から供給された平均電力であり、これはその前の間隔で直流電源118の両端の平均直流電圧と直流電源118から引き出された平均直流電流の積から決定される。
【0155】
例示的なデバイス100では、直流電源118は、コントローラ1001に接続された電池であり、コントローラ1001は、直流電源118の電圧を回路600に出力する。コントローラ1001は、電池118から供給される直流電圧を決定するように構成される。電池118から引き出される電流は、電流検出装置1300の作動によって決定される。コントローラ1001は、1/64秒間隔ごとに1回、直流電圧と直流電流を決定する。直流電圧は、この短い期間に亘って本質的に一定であると見なすことができる。ただし、電流は回路のオンとオフを切り替える高速速度に依存する速度で変化する。上記のように、これは一部の例では約300kHzである。
図13を参照して上で説明した電流検出装置1300は、この約300kHzの信号を除去するためにフィルタされる信号I_SENSEを出力する。したがって、1/64秒間隔の平均直流電流は、このフィルタされた信号I_SENSEの測定を行うことで取得され、I_SENSEの測定は1/64秒間隔の終了直前に行われ、フィルタからの信号を確定させる。これによりコントローラ1001は、1/64秒間隔の直流電圧と直流電流測定値を取得し、これらの値の積を計算して電力Pを取得することができる。電力Pは、1/64秒間隔で直流電源118により供給された電力の平均値としてもよい。
【0156】
ブロック1101で決定された供給電力Pを、ブロック1102で目標電力と比較する。決定された電力Pが所定の間隔に亘る平均電力の場合、目標電力は、同じ間隔に亘る目標平均電力である。一例では、目標電力は、所定の間隔に亘って供給される平均電力の目標であり、10W~25W、または15W~23W、または約20Wの値を取る。この例ではターゲット電力は、例えば20W~21Wまたは15W~25Wの範囲である。したがって、コントローラ1001は、ブロック1102で、ブロック1101で決定された供給電力値Pを目標範囲と比較し、供給電力が範囲を下回るか、目標範囲内にあるか、または目標範囲を超えているかを決定することができる。例えば、目標範囲が20W~21Wの場合、ブロック1102で、コントローラ1001は、P<20W、または20W≦P≦21W、またはP>21Wであるかどうかを決定する。
【0157】
供給電力Pと目標範囲との比較に基づいて、コントローラ1001は、目標電力範囲に向けた次の事前に決定された間隔の間に作動中のインダクタ124または126に実際の電力を供給する目的で、次の所定の間隔の電力を調節するかどうかと調節する方法を決定する。即ち、供給電力Pが目標範囲を下回っている場合、コントローラ1001は、次の所定の間隔に亘って回路600に供給される電力を増加させることを決定する。供給電力Pが目標範囲を超える場合、コントローラ1001は、次の所定の間隔に亘って回路600に供給される電力を減少させることを決定する。供給電力Pが目標範囲を下回っている場合、コントローラ1001は、次の所定の間隔に亘って回路600に供給される電力を調節しないことを決定する。
【0158】
上記の回路600の構成により、所与の所定の間隔に対する供給電力Pは、その間隔に対する制御電圧1031の値に依存する。第1の共振セクション601が作動中の1つの1/64秒間隔の例をとると、この1/64秒間隔は、電圧波形800の区分800aから区分800eとその繰り返しを含む多くの繰り返しサイクルを含む。時間t1~t0の各サイクルについて、共振セクション601は共振することができ、この期間中、FET608はオフであるため、直流電源118から第1の共振セクション601経由では電力が引き出されない。したがって、共振セクション601に電力を供給するために所与の1/64秒間隔中に直流電源118から引き出される電力は、インダクタ124が電流で「通電」されている間、即ち、FET608がオンである間、t0~t1の間の期間に引き出される。t1とt0との間の時間は、第1の共振セクション601の共振周波数によって決定される。この共振周波数は、少なくとも所与の1/64秒間隔全体に亘って実質的に一定のままであってもよい(ただし、回路600の作動期間に亘って変化し得る。コイルとサセプタの温度と電池電圧に依存する)。時間t0からt1までの長さは、制御電圧1031の値、直流電源118によって供給される直流電圧、ならびに第1の共振セクション601の抵抗とインダクタンス(第2の共振セクション701に適用されるのと同じ)によって決定される。即ち、所与の直流供給電圧に対して、制御電圧1031は、インダクタ124に蓄積することができる電流I1をt0とt1との間に設定するが、直流供給電圧が低下する場合、所与のI1の値の蓄積に必要な時間が増加する。したがって、1/64秒間隔中に供給される平均電力は、制御電圧1031の値に依存する。
【0159】
したがって、一部の例ではコントローラ1001は、次の間隔の制御電圧1031の値を設定し、次の間隔中に回路600に供給される電力を制御する。一部の例では、共振セクション601、701の一方が作動中の所定の間隔にわたる所与の直流電源118について、制御電圧1031の正の値がより大きいと、回路600に供給される電力値Pもより大きい。したがって、そのような例ではコントローラ1001が最後の間隔に亘って供給された電力Pが目標範囲を超えたと決定した場合、コントローラ1001は、次の間隔のために制御電圧1031を下げる。コントローラ1001が最後の間隔に亘って供給された電力Pが目標範囲を下回ったと決定した場合、コントローラ1001は、次の間隔のために制御電圧1031を上げる。コントローラ1001が最後の間隔に亘って供給された電力Pが目標範囲を超えていると決定した場合、コントローラ1001は、次の間隔の間、制御電圧1031を変えない。
【0160】
なお、上記の方法1100の一例では供給される電力Pは、ブロック1101で決定され、共振セクション601、701の特定の一方に供給される電力である。例えば、電力Pは、第1の共振セクション601の両端部の電圧および第1の共振セクション601を通る直流電流を測定することで決定される。このような例では、制御電圧1031を制御するのに使用されるのは、第1の共振セクション601に供給される電力Pである。なお、所与の制御電圧1031について、一部の例ではそれぞれの共振セクション601、701が作動中のときにインダクタ124、126のそれぞれに供給される電力は異なる可能性がある。これは、例えば、インダクタ124、126が異なる値のインダクタンスまたは直流抵抗を有するか、または2つの共振セクション601、701の静電容量が等しくないためであるかもしれない。したがって、この例では所定の間隔中に、目標電力範囲外の目標電力を第2の共振セクション701に供給することができるが、制御電圧1031は、第1の共振セクション601に供給される電力Pに基づいて制御されるので、コントローラ1001は、制御電圧1031を調節しないかもしれない。
【0161】
例えば、制御電圧1031の所与の値について、コントローラ1001は、ブロック1101で所与の間隔に亘って20Wの平均電力が第1の共振セクション601に供給され、この例の目標電圧は20Wから21Wであると決定することができる。ブロック1102で、コントローラ1001は、供給された電圧が目標範囲内にあると決定し、したがって、コントローラ1001は、制御電圧1031を調節しないと決定する。次の所定の間隔について、コントローラ1001は、(例示的な方法1050によって)第1の共振セクション601ではなく第2の共振器部701が作動されるべきであると決定するとする。制御電圧1031の所与の値に対して、この例では、22.5Wが、第1の共振セクション601および第2の共振セクション701の電気的特性の違いのために供給される。しかしながら、この例では、ブロック1102で、コントローラ1001は、第1の共振セクション601に供給された電力Pの最後の測定値を比較し、ブロック1103で、制御電圧1031を調節しないことを決定する。方法1100の一例において、回路600に供給される実際の電力は、目標範囲外にある可能性がある。しかしながら、これにより、2つの共振セクション601、701の一方に供給される電力Pのみを測定することでインダクタ124、126に供給される電力を制御することができる。これは、回路600に供給される電力を維持するための単純で有用な解決策を提供する。例えば、共振セクション601、701およびその部品がほぼ同様の電気的特性を有する場合、許容範囲内にある。
【0162】
上記のように一部の例では直流電源118は、約2~10V、または3V~5V、または一例では約4.2Vの電圧を有する電池である。一部の例では直流電源118によって生成される直流電圧は、例えば、変化する可能性がある。回路600が操作される時間とともに減少する。例えば、直流電圧源118が電池の場合、電池は最初に4.2Vの電圧を供給するが、電池によって供給される電圧は、電池が消耗するにつれて低下する。したがって、所与の期間の後、直流電圧源118は、例えば初期4.2Vの代わりに3.5Vを供給してもよい。
【0163】
上記のように、所与の供給電圧において、制御電圧1031の値は、それぞれのFET608/708がオフにされる前に、作動中のインダクタ124/126に蓄積することができる電流の量を制御する。電力は、直流電圧供給部器118から供給されて、FET608、708がオンのときに直流電流の蓄積を可能にすることで、作動中のインダクタ124/126に「エネルギーを与える」。また上で説明したように、電流がFET608/708の切り替えを起こす値まで増加する時間t1は、直流電圧供給に依存する。したがって、例えば、直流電源118によって供給される電圧が減少すると、インダクタコイル124に電流が蓄積する速度が減少し、その結果、回路600に供給される電力Pが減少する。
【0164】
例示的な方法1100は、直流電源118からの供給電圧が変化した場合でも、目標電力が維持されるようにすることができる。即ち、実際の供給電力Pが決定され、制御電圧1031を制御するために使用されるので、コントローラ1001は、制御電圧1031を調節することで目標電力を維持するように作用することができる。コントローラ1001は、所与の制御電圧1031で回路600に供給される電力Pが減少したことを測定し、制御電圧1031を増加させることで回路に供給される電力Pを増加させるように作用する。したがって、回路600に電力を供給するために使用される電池が消耗する間、目標電力レベルを維持することができる。これは、誘導加熱回路600の作動の最適効率を提供するので、有利である。例えば、供給電力を実質的に一定に維持することは、供給電圧に関係なくエアロゾル化可能な材料110aの一貫した加熱を可能にする。同様に例示的な方法1100は、サセプタ132の温度が上昇したときにサセプタ132によって提供される回路600への異なる負荷など、供給される電力の量に影響を及ぼし得る回路内の他の変動要因に関係なく、実質的に一定の電力を提供する。これは、例えば、最初の吸引までの一貫した時間を提供することで、即ち、デバイス100が作動されてからユーザーによって吸入されるエアロゾルを提供する準備ができるまでの間に一貫した時間を提供することで、消費者に一貫して良好な体験を提供する。
【0165】
別の例では制御電圧1031の制御の基礎となる測定電力値Pは、使用期間中に変更される。例えば、特定の使用期間中、使用期間の第1の部分(例えば、使用期間の開始約60秒)に関して、第1のインダクタ124が主に作動し、第2のインダクタ126は非作動の温度特性でもよい。使用期間のこの第1の部分では、第1の共振セクション601に供給される電力の測定に基づいて制御電圧1031の制御を行うことが適切である。しかし、使用期間のそれより後の部分では、やはりその期間の温度特性により、第2のインダクタ126が主に作動し、第1のインダクタ124がより短い時間作動してもよい。したがって、使用期間の第2の部分(例えば、約60秒後)では、第2の共振セクション701に供給される電力の測定に基づいて制御電圧1031を制御することが有利である。したがって、コントローラ1001は、第1の共振セクション601に供給される電力の測定に関する制御電圧1031の基本制御から第2の共振セクション701に供給される電力の測定に関する制御電圧1031の基本制御に切り替える。このようにして、例えば、制御電圧1031は、作動中のインダクタ124、126に供給される実際の電力と目標電力範囲との比較に基づいて設定されるので、目標電力は、使用期間全体に渡りより厳密に順守される。
【0166】
一部の例ではコントローラ1001がブロック1103で電力を調節する必要があると決定する場合、コントローラ1001は、所定の工程で制御電圧1031を調節することができる。例えば、コントローラ1001は、所定の時間間隔ごとに所定の量だけ制御電圧1031を調節するように構成される。ブロック1102で、コントローラ1001が、供給された電力Pが目標電力範囲を下回ったと決定した場合、コントローラ1001は、次の所定の間隔の間、制御電圧1031を所定の電圧(ボルト)だけ上げることができる。逆にブロック1102でコントローラ1001が供給された電力が目標電力範囲を超えていると決定した場合、コントローラ1001は、次の所定の間隔の間、制御電圧1031を所定の量だけ上げることができる。
【0167】
特に
図12を参照して上で説明した例では、制御電圧1031は、パルス波変調信号PWM_DACによって生成される。上記のように、信号PWM_DACは2.5Vで長方形の波形を持っている。信号PWM_DACのデューティ信号は、PWM_DACデューティサイクルに0から800の値を設定するコントローラ1001によって制御可能であり、この値は、0で0%、800で100%のデューティサイクルに対応する。フィルタされたときの信号PWM_DACは、実質的に一定の制御電圧1031を提供し、したがって、PWM_DAC信号のデューティサイクルを0から800に設定すると、制御電圧1031は0Vから2.5Vの大きさを有する。この例では、コントローラ1031は、所定の間隔ごとに、PWM_DAC信号のデューティサイクルを設定量(800のうちの8など)だけ調節するか、または設定を変更しないことができる。別の例では、コントローラ1001は、制御電圧1031が他の何らかの手段によって調節されるようにし、コントローラ1001が、制御電圧1031を調節すべきと決定した場合、コントローラ1001は、例えば、制御電圧1031を次の所定の間隔の制御電圧1031の最大値の1%、または2%、または5%だけ調節してもよい。
【0168】
一部の例では、例えば、回路600を含むデバイス100の使用期間を開始するために、コントローラ1001が回路600の作動を開始するとき、制御電圧1031は、所定の初期値に設定される。一例では、目標電力レベルに対応する制御電圧1031の値(例えば、制御電圧1031のこの値を生成する信号PWM_DACのデューティサイクル設定)は、回路600のセットアップ中に決定される。即ち、回路600に供給される電力は、例えば、較正曲線を生成するために、制御電圧1031のいくつかの値について決定される(例えば、理論的に測定または決定される)。次に、目標電力に対応する制御電圧1031の値を決定することができる。一例では、直流電源118は4.2Vを供給し、20Wの目標電力を達成するために、コントローラ1001は、例示的な較正において、800のうち約344のPWM_DAC信号設定のデューティサイクルの値を決定してもよい。
【0169】
一例では、コントローラ1001は、制御電圧1031を決定された値に基づく初期値に制御電圧1031を設定するように構成される。例えば、制御電圧1031を決定するPWM_DACのデューティサイクルの初期値を目標電力に対応する決定値の半分に設定することができる。例えば、目標電力に対応することが分かっている制御電圧1031のデューティサイクル設定が800のうちの344の場合、コントローラ1001は、設定が800のうちの152に設定された状態で期間を開始し、測定された電力Pが目標範囲内に入るまで、設定を所定の間隔ごとに所定の量だけ増加させることができる。これは、使用期間の開始時に、供給される電力が目標電力をはるかに下回り、その後、供給される電力が、目標電力範囲に到達するまで(制御電圧1031のコントローラ1001によって増加することで)増加するという効果を有する可能性がある。供給される電力のこの最初の増加は、回路600の作動の安全性が改善され、期間の開始時のサセプタの過熱を防ぎ、回路600がコントローラ1001によって決定された実際の電力供給に応答する。
【0170】
一例では所定の間隔は、第1の124および第2の126のインダクタのどれを作動中にするかを決定する方法1050でコントローラ1001が使用するものと同じ所定の間隔である。そのような一例では、上記のように、所定の間隔は、長さが1/64秒である。所定の間隔の長さ(または同等に割り込み率)は、コントローラが回路を監視し、それに応じてパラメータを調節できる有利な時間間隔を提供するように選択することができる。例えば、64Hzの割り込み率、または約10から100Hzの範囲内の割り込み率を使用できる。これらの例示的な割り込み率では、コントローラ1001は、サセプタ132の区域132a、132bが目標温度よりはるかに超えて上昇する前に、特定のインダクタ124、126による加熱の停止を決定することができる十分に高い割り込み率でサセプタ域の温度の上昇を測定することができる。同様に、割り込み率について与えられた例は、インダクタ124、126に供給される電力を安全な目標範囲内に適切に制御できるように制御電圧1031を調節できる有利な周波数を提供する。
【0171】
回路600の作動の例示的な方法では、回路600に供給される電力を制御する際にコントローラ1001によって使用される目標電力は、計画された使用期間の特性に基づいて事前に決定される。例えば、目標電力範囲は、使用期間を通して調節される。
【0172】
図16は、使用期間の一部の温度特性「目標1」の概略例を示す。この例では単一のサセプタ域132aの目標温度である。この例では最初に使用期間の部分の第1の部分1201において、第1の区域132aは、その目標温度「目標1」を実質的に下回っている。この第1の部分1201で回路600は、第1の区域132aを目標温度「目標1」まで上げるように作動する。使用期間のそのような例示的な部分では目標電力P1は、例えば、20W~21Wの値の範囲を取り得る。期間の第1の部分1201の間の目標電力は、サセプタ132、したがってエアロゾル化可能な材料110aを、ユーザーが吸入するエアロゾルを発生させるのに適した温度まで急速に上昇させるために比較的高くてもよい。
【0173】
使用期間が進行するにつれて、第1の区域132aは、その目標温度「目標1」に実質的に到達する。使用期間の第2の部分1202は、第1の区域132aがその目標温度「目標1」に到達した直後に開始すると規定される。例えば、使用期間のこの部分1202の場合、第1の区域132aは、実質的にその目標温度「目標1」、例えば、250℃であってもよく、方法1050に従って、目標温度「目標1」に維持される。同様に、これは
図16には示されていないが、第2の区域132bは、方法1050によってそれ自体の目標温度「目標2」に維持され、第2の区域132bの目標温度「目標2」は「目標1」で規定されたものとは異なる温度特性を規定することができる。
【0174】
第1の区域132aが実質的に温度「目標1」に到達した後の使用期間の部分1202は、第1の部分1201における様に、第1の区域132aの温度を「目標1」まで上げるのではなく、第1の区域132a(または両方の域132a、132b)の温度を維持するようにコントローラ1001が作動していることを特徴としてもよい。そのため、使用期間の部分1202の間、サセプタ域132aを目標温度「目標1」まで上げるのに必要な電力と比較した場合、目標温度「目標1」を維持するためにサセプタ域132aに供給される必要のある電力は比較的少ない場合がある。使用期間の第2の部分1202では、部分1201の値と比較して、目標電力P1の値を下げることが有利な可能性がある。一例では目標電力レベルP1は、部分1201の20W~21Wに下げることができる。使用期間の部分1202の間に約15Wに下げられる。別の例では、目標電力P1は、約12W~13Wまたは約9Wに下げることができる。このように目標電力P1を下げることは、一部の例では有利な可能性がある。なぜなら、より低水準の電力を使用することで、回路におけるエネルギー損失が減少し、したがって効率が向上する可能性があるからである。
【0175】
使用期間の第3の部分1203では、目標温度「目標1」の値は0である、即ち、第1のインダクタ124は作動されるべきではない。この時点で、使用期間が終了した場合、目標電力P1を0まで下げ、または第2のインダクタ126がまだ作動中の場合、目標電力P1を0以外の値に維持してもよい。第2のインダクタ126が作動してもよい。したがって、目標電力は、使用期間の任意の時点での両方の区域132a、132bの温度特性を考慮に入れることができる。例えば、使用期間の一部でこれらの区域の一方で大幅に温度を上げる必要がある場合は、比較的高い目標電力が適切な場合がある。逆に、区域132a、132bのどちらも実質的な加熱を必要としない使用期間の部分については、比較的低い目標電力を使用することができる。
【0176】
上記のように使用期間の特定の期間中に低い電力水準を使用すると、ある一定の期間に亘ってエネルギー節約が達成されるという利点がある。例えば、目標電力レベルが第1の期間の20W-21Wから第2の期間の約15Wに減少する場合、一部の例では、低電力で作動している場合は回路600におけるエネルギー損失の減少により、約5%から10%のエネルギー節約が達成される。一例では、長さが約260秒の典型的な期間の過程で、期間の全期間に亘って目標電力を約20Wに維持すると、約1000Jのエネルギー使用量になる可能性がある。しかしながら、第1の区域132aが最初にその設定温度に達したときに目標電力を約15Wに減らし、実質的に同じ長さの期間の残りの間目標電力レベルを15Wに維持すると、900~950Jのエネルギー使用量になる可能性がある。一部の例では、デバイスによって使用される電力のほとんどすべては、サセプタ132を加熱するために供給されるエネルギーによるものである。LED指示器とマイクロコントローラは、約0.1W未満の場合があり、一部の例では、約0.01W未満の場合がある。
【0177】
例示的な供給デバイス100は、サセプタ132の温度を感知するための温度感知装置を含む。例えば、温度感知装置は、1つ以上の温度センサを含み、一実例では、サセプタ132の各領域に対して1つの温度センサを含む。一実例として、上記のように、サセプタは、第1の領域132aおよび第2の領域132bを含み、コントローラ1001は、前述の図を参照して供給デバイス100の誘導加熱回路600を作動させて、それぞれのインダクタ124、126により各領域を加熱する。
【0178】
実例では、コントローラ1001は、温度感知装置の障害を示す1つ以上の基準が満たされているかどうかを決定するように構成される。コントローラが前記1つ以上の所定の基準が満たされていると判断した場合、コントローラ1001は、制御動作を実行し、例えば、サセプタ132を加熱するためのエネルギーの供給を停めるか減らし、または障害の発生を示す警告信号を発する。この所定の基準の例を以下に説明する。したがって、温度感知装置の障害が識別された場合にコントローラ1001による制御動作を実行する安全機能が提供される。
【0179】
図17は、サセプタ132のさらなる詳細を示す。サセプタ132は、上記のように、第1の領域132a、および第2の領域132bを含む。第1の熱電対133aは、第1のサセプタ領域132aの温度を測定するように配置され、第2の熱電対133bは、第2のサセプタ領域132bの温度を測定するように配置される。よく分かっていることだが、熱電対は、2つの異なる導電体を含み温度を感知するのに使用される器具である。2つの導体は、第1の測定端部で同じ電位に保たれ、一方、導体の第2の端部は、第2の参照端部を形成するために既知の温度に保たれる。実例によっては、2本の線の各端部は、測定端部で接続されるか、または他の実例では、2本の線はサセプタ132の表面のような単一の導電性表面に接続される。ゼーベック効果に従って、測定端部と参照端部の間の温度差に依存する電圧が導体間に生じる。参照端部の温度が、例えば温度センサ、本明細書の一実例では10kΩサーミスタを使用する測定で分かっている場合、測定端部の温度は、導体間に生成される電圧から決定することができる。
【0180】
図17の実例では、第1の熱電対133aは、第1の対の線1704、1705を含み、第2の熱電対133bは、第2の対の線1708、1709を含む。一例では、両方の熱電対はJ型熱電対である。各対の第1の線1704、1708はコンスタンタンで形成され、各対の第2の線1705、1709は鉄で形成される。他の例では、例えばE、K、M型熱電対などの異なる対の異なる導体を含む異なる種類の熱電対を使用することができ、または異なる種類の熱電対を各サセプタ領域132a、132bに使用することができる。
【0181】
第1の熱電対133aは、第1の熱電対133aのコンスタンタン線1704と鉄線1705が接合され、かつ第1のサセプタ領域132aに取り付けられた第1の測定接合部1706を含む。この例では、第1の測定接合部1706は、サセプタ132の表面にスポット溶接することで第1のサセプタ領域132aに取り付けられている。同様に、第2の熱電対133bは、第1の熱電対133aのコンスタンタン線1708および鉄線1709が接合された第2の測定接合部1310を含み、第2のサセプタ領域132bでサセプタ132にスポット溶接されている。絶縁シース1707、1711は、第1の熱電対133aおよび第2の熱電対133bの各線を覆っている。第1の熱電対133aは、線1704、1705それぞれの参照端部電圧をコントローラ1001に提供するための一対の端子1704a、1705bで終端し、コントローラ1001が第1の測定接合部1706の温度を測定することができる。同様に第2の熱電対133bは、線1708、1709それぞれの参照端部電圧をコントローラ1001に提供するための一対の端子1708a、1709aで終端し、コントローラ1001が第2の測定接合部1710の温度を測定できる。端子1704a、1705a、1708a、1709aは、コントローラ1001の対応する入力ピンに接続され得るか、またはPCB122、したがってコントローラ1001に取り付けられる。例えば、端子1704a、1705a、1708a、1709aは、それぞれPCB122にはんだ付けされ、コントローラ1001に入力を提供する。
【0182】
サセプタ132の温度感知装置の別の例を
図18に示す。この例でも、温度感知装置は、それぞれがコンスタンタン線を含む2つの熱電対を含む。ただし、この例では、2つの熱電対が鉄線を共有している。即ち、第1の熱電対183aは、コントローラ1001が第1のサセプタ領域132aの温度を決定するためのもので、測定端部1806で第1のサセプタ領域132aに取り付けられた第1のコンスタンタン線1804を含む。鉄線1805は第1の熱電対183aの第2の線であり、この例では第2のサセプタ領域132bに取り付けられている。第2のサセプタ領域132bの温度を測定するための第2の熱電対183bは、点1810で第2のサセプタ領域132bに取り付けられた第1のコンスタンタン線1808を含む。鉄線1805は第2の熱電対183bの第2の線をも形成する。第1の熱電対183aの第1のコンスタンタン線1804は参照端部1804aを含み、第2の熱電対183bの第1のコンスタンタン線1808は参照端部1808aを含み、また第1および第2の熱電対183a、183bの両方の第2の線を形成する鉄線1805は参照端部1805aを含む。参照端部1804a、1805a、1808aは、線1804、1805、1808のそれぞれの参照端部電圧をコントローラ1001に提供して、コントローラ1001が第1および第2のサセプタ領域132a、132bの温度を決定できるようにする。即ち、第1の熱電対183aのコンスタンタン線参照端部1804aにより提供される参照電圧および鉄線参照端部1805aにより提供される参照電圧により、コントローラ1001は第1のサセプタ領域132aの温度を決定することができる。同様に、第2の熱電対183bのコンスタンタン線参照端部1808aにより提供される参照電圧および鉄線参照端部1805aにより提供される参照電圧により、コントローラ1001は第2のサセプタ領域132bの温度を決定することができる。
図17に示す例を参照して説明すると、各線の接合端部1804a、1805a、1808aは、PCB122に取り付けられてコントローラ1001に参照電圧を提供する。
図18に示す配置で、サセプタ132は鉄である。これにより、共通の鉄参照線1805の使用が可能になる、というのは鉄線1805とサセプタ132は同じ材料でできており、鉄線1805がサセプタ132に接合する点は熱電対接合部ではないからである。
図18に示す配置のように3本の線を提供することは、
図17の配置のように4本の線を提供する場合に比べて、接続、例えば、PCB122にはんだ付けを要する線が少ないという点で有利な場合がある。
【0183】
図19は、供給デバイス100内の温度に関連する制御機能を提供する装置1900の概略を示す。
図19から分かるように、装置1900は、
図18の温度感知装置に示す熱電対線1804、1805、1808の参照端部1804a、1805a、1808aから提供される参照電圧を受け取るように配置されている。まず第1の熱電対183aのコンスタンタン線1804からの入力を記述すると、第1の熱電対183aのコンスタンタン線参照端部1804aが点P8で装置1300に取り付けられる。そこから、1804aにおける参照電圧信号は、第1の熱電対オペアンプU4A(コンポーネント型OPA2376)の正および負の入力端子に供給されるように配置される。点P8は、2.49kΩの抵抗器R26と2.2nFのコンデンサC20を経てオペアンプU4Aの正端子に接続されている。点P8は、抵抗器R26と第2の2.49kΩ抵抗器R27を経てオペアンプU4Aの負端子に接続されている。オペアンプU4Aは、536kΩの抵抗器R23と2.2nFのコンデンサC19が出力とオペアンプU4Aの負端子の間に並列に配置された閉ループ部で接続されている。オペアンプU4Aの正端子は接地にも接続されている。オペアンプU4Aには、コントローラ1001により3.8V電源から電力が供給され、100Ω抵抗器R17を経てオペアンプの電源入力に接続されている。オペアンプU4Aの電源入力は、10nFのコンデンサC14を経て接地されている。
【0184】
第1の熱電対オペアンプU4Aは、点P8で第1の熱電対コンスタンタン線1804から信号を受信し、この信号を増幅してコントローラ1001に出力するように構成される。この例では、オペアンプU4Aは、熱電対参照端部1804aからの入力信号に対して107.63の利得を提供する。この利得は、例えば抵抗器R26、R27、およびR23に適切な値を選択することで提供できる。オペアンプU4Aの利得を選択する際に、熱電対183aにより測定される温度の範囲、その温度範囲でJ型により生成される参照電圧、およびコントローラ1001に提供される適切な電圧範囲が考慮される。一例では、23.228mVの熱電対参照電圧は425℃の温度測定値に対応する。この参照電圧を2.5Vの値に増幅してコントローラ1001に提供するには、
図19に示す例示的な部品の数値により提供されるように、107.63の利得が必要である。増幅された第1の熱電対電圧TC1は、1kΩ抵抗器R22を経てオペアンプU4Aの出力に接続された点1901でコントローラ1001に提供される。点1901は、100nFのコンデンサC21を経て接地されている。点1901で提供される電圧信号TC1から、コントローラ1001が、第1のサセプタ領域132aの温度に対応する、第1の熱電対183aにより測定された温度値を決定するように構成される。
【0185】
第2の熱電対183bもまた、上記のように、J型熱電対であり、第1の熱電対参照電圧TC1がコントローラ1001に提供されるのと同じ手順で、点1902で第2の熱電対参照電圧TC2をコントローラ1001に提供する。これにより、コントローラ1001は、第1の熱電対183bについて説明したのと同じ手順で、第2のサセプタ領域132bの温度を決定することができる。当然だが、第2のオペアンプU4Bに接続された複数の抵抗器R37、R38、R39、R40およびコンデンサC30、C31、C32は、第1の熱電対オペアンプU4Aとの関連で上に述べた抵抗器R22、R23、R26、R27およびコンデンサC19、C20、C21と同等の機能を提供する。
【0186】
コントローラ1001に増幅された熱電対電圧TC1、TC2を提供することに加えて、装置1900はまた、熱電対183a、183bのいずれかにより測定された温度が所与の閾値を超える場合に安全機能を提供するように構成される。即ち、第1の熱電対オペアンプU4Aの出力は、第1の精密比較器U3A(部品型AS393)の負端子入力に接続されている。高精度比較器U3Aの正の入力は、3.3kΩの抵抗器R42を経て2.5V信号に接続され、10kΩの抵抗器R43を経て接地されている。精密比較器U3Aは、オペアンプU4Aから受信した増幅熱電対電圧が特定の値を超える温度を示す場合、第1の精密比較器U3Aが停止信号/FFRSTを出力して、誘導加熱回路600によるサセプタ132の加熱を停止するように構成される。実例では、信号/FF RSTは、フリップフロップ622の入力RSTに送られ、前の図を参照して上記の手順で、フリップフロップ622の出力値Qをリセットし、それにより回路600による加熱を停止する。一例では、装置1900が信号を送信して回路600による加熱を停止するように構成される閾値温度値は280℃である。
【0187】
第2の精密比較器U3Bは、第2の熱電対183bに対して同等の機能を実行し、第2の熱電対オペアンプU4Bからその負端子で入力を受信し、第2の熱電対183bが閾値を超える温度を測定していることをオペアンプU4Bからの受信信号が示す場合、信号/FF RSTを送信するように構成される。
【0188】
第3の比較器U6も
図19に含まれており、信号/FF RSTを送信してサセプタ132の加熱を停止することができる別の機構を提供する。比較器U6は、絶縁部材128上にあるサーミスタ(図示せず)からコイル124、126に近接している絶縁部材128の外側の温度を示す信号COIL TEMPを受信する。比較器U6は、この信号COIL TEMPを閾値と比較し、信号、この例では信号/FF RSTをフリップフロップ622に提供し、比較器U6がCOIL TEMPにより表される温度の値が高すぎると決定した場合、回路600の動作を停止してサセプタ132を加熱するように構成される。
【0189】
当然だが、サセプタ領域132a、132bの温度を正確に測定するために、各測定端部(
図17の例では1706、1710、または
図18の例では1806、1810、1805)は、温度が測定されている領域132a、132bのそれぞれの温度と実質的に同じ温度でなければならない。したがって、サセプタ132と熱電対183a、183bとの間の良好な熱伝導率を維持する必要がある。
【0190】
実例を参照してこれを説明すると、当然のことだが、例えば、第1のコンスタンタン線1804の取り付け点1806が第1のサセプタ領域132aから脱離した場合、そのサセプタ領域132aと第1の熱電対183a間の熱伝導は失われるか少なくとも大幅に減少する。そのような状況では、第1の熱電対183aは、例えば、サセプタ132から脱離したままか、サセプタ132のすぐ近くにある(さらに、例えば、輻射または対流によりある程度サセプタ132により加熱され続けることがある)。しかしながら、サセプタ132と脱離した第1の熱電対183aとの間では熱はもはや適切に伝わらないので、第1のサセプタ領域132aが加熱されるにつれて、第1のサセプタ領域132a(第1の熱電対183aが測定を意図している)と脱離した熱電対線1804の温度差は広がる。この状況では、例えば、前記領域132aが加熱されると、コントローラ1001はその対応する第1のサセプタ領域132aの上昇温度を第1の熱電対183aで正確に決定することはできない。第1の熱電対183aを用いてその温度を適切に測定せずに、第1のサセプタ領域132aの加熱をこのように継続すると、サセプタ132の過熱の危険が生じる可能性がある。当然だが、第2の熱電対183bがそこから脱離している状況では、上記と同じ原理が第2のサセプタ領域132bにも応用される。
【0191】
一例では、供給デバイス100は、サセプタ熱電対183a、183bのどちらかがサセプタ132の温度を正しく測定していないことが示された場合に、サセプタ132の加熱を遮断するように構成される。コントローラ1001がサセプタ132の温度が適切に測定されていないと決定したときに、サセプタ132を加熱する電力を遮断する安全機能が提供される。
【0192】
一例では、供給デバイス100の誘導加熱回路600に関して上記したように、サセプタ132を加熱するために誘導加熱回路に供給される電力は、直流電源および直流により供給される直流電圧を測定して決定される。直流電源から供給される電流と、これらの値の積を計算して電力を取得する。この電力の測定から、コントローラ1001は、所与の期間に亘って回路に供給されるエネルギーの量を決定するように構成される。上記のように、コントローラ1001は熱電対183a、183bから温度測定値を受信するようにも構成される。コントローラ1001は、所与の期間に亘って熱電対183a、183bにより測定された温度の変化を決定するように構成される。次に、一例では、コントローラ1001は、サセプタ熱電対183a、183bのうちの一方で測定された温度の1℃上昇ごとに供給されるエネルギーの量を決定することができる。例えば、コントローラ1001は、所与の期間に亘って第1のサセプタ領域132aに供給されたエネルギー量のその期間に亘って第1の熱電対183aにより測定された温度の上昇に対する比を決定することができる。同様に、コントローラ1001は、第2の熱電対183bにより測定された1℃の温度上昇あたりの第2のサセプタ領域132bに供給されるエネルギー量を決定することができる。実例によっては測定温度1℃あたりのこのエネルギーは第1および第2のインダクタ124、126の異なる特性による第1の区域とは異なるかもしれない。
【0193】
一例では、例えば、供給デバイス100のセットアップ中に、そのインダクタ124、126の対応するサセプタ領域132a、132bを加熱するためにインダクタ124、126のうちの一方に供給される(各熱電対183a、183bにより測定される所与の量の温度上昇をもたらす)エネルギーの量を決定することができる。即ち、試験またはその他の方法により、例えば、第1の熱電対183aを第1のサセプタ領域132aに適切に取り付け、通常の動作で平均して400~1000mJ、または約500mJを第1のインダクタ124に供給すると、1℃の温度上昇が第1の熱電対183aにより測定される。つまり、供給エネルギーの測定温度上昇に対する比は、400~1000mJ/℃、または約500mJ/℃の可能性がある。別の例では、デバイスの通常の動作中の任意の時点で、第1のインダクタ124に供給されるエネルギーの第1の熱電対183aにより測定された温度上昇に対する比の最大値は500mJ/℃と決定される。
【0194】
しかしながら、上記のように、第1の熱電対183aが第1のサセプタ領域132aから熱的に脱離した場合、第1の熱電対183aにより測定される1℃の温度上昇をもたらす第1のインダクタ124に供給されるエネルギー量は大幅に増加する。例えば、試験中に、第1の熱電対183aが第1のサセプタ領域132aから脱離した場合、第1のインダクタ124に供給されるエネルギー(mJ)の第1のインダクタにより測定される温度の上昇に対する比が見出される。熱電対183aは、40,000~100,000J/℃などの非常に高い数値になる場合がある。即ち、第1の熱電対183aがサセプタ領域132aから脱離し、その温度をもはや適切に測定しなくなった場合、サセプタ132aがインダクタ124により加熱されていても、熱電対はわずかな温度上昇を記録するに過ぎない。したがって、第1のサセプタ領域132aを加熱するのに供給されるエネルギーの第1の熱電対183aにより測定された温度上昇に対する比が所与の量よりも大きい場合、第1の熱電対183aはもはや第1のサセプタ領域132aの温度を正しく測定していない可能性がある、例えば第1の熱電対183aは、サセプタ132から脱離された可能性がある、とコントローラ1001は判断するかもしれない。同様に、コントローラ1001は、第2のサセプタ領域132bを加熱するために供給されるエネルギーの第2の熱電対183bにより測定された温度上昇に対する比が所与の量よりも大きいかどうかを決定することができる。その場合、第2の熱電対183bは、第2のサセプタ領域132bの温度をもはや正しく測定していない可能性がある。
【0195】
この例では、コントローラ1001は、サセプタ132を加熱するのに供給されるエネルギーの第1および第2の熱電対183a、183bの1つにより測定された温度上昇に対する比が所定の値より大きい場合、サセプタ132を加熱するための電力の供給を停止するように構成される。この手順でサセプタ132を加熱するための電力の停止は、熱電対183a、183bの一方(または両方)がサセプタ132から脱離した場合またはもはや正確なサセプタ温度測定を提供しない場合のサセプタ132の過熱を防ぐ安全装置として機能する。コントローラ1001は、例えば、誘導加熱回路600の制御部に送信される信号を使用して回路600を非作動にして、サセプタ132を加熱するためのエネルギーの供給を停止することができる。別の例では、コントローラ1001は、比が所定の値よりも大きいとの決定に応答して別の制御動作をとってもよい。例えば、コントローラ1001は、回路600に供給される電力を削減してサセプタ132を加熱してもよい。例えば、コントローラ1001は、制御電圧1031を下げて、サセプタ132を加熱するために供給される電力を削減することができる。
【0196】
一例では、通常の動作でサセプタ領域132a、132bの1つを加熱するエネルギーの対応する熱電対183a、183bにより測定される温度上昇に対する比の予想される測定値は、約500mJ/℃であり、比が2000mJ/℃から4000mJ/℃までの例示的な値以上になったと判断した場合、コントローラ1001はサセプタ132を加熱する電力の供給を停止するように構成されている。したがって、この例では、この場合、期待値を約1500mJ/℃から3500mJ/℃上回るマージンが設けられ、これにより、コントローラ1001で電源の遮断などの制御動作を行うことなく、期待水準を超える比のわずかな増加を許容する。
【0197】
実例によっては、供給デバイス100の動作中に、サセプタ132を加熱するために供給されるエネルギーの熱電対183a、183bの1つにより感知される測定された温度上昇に対する比の値を、所定の間隔で決定することができる。所定の間隔は、例えば、上記のような誘導加熱回路600を制御するのに使用されるものと同じでよく、一例では、長さ1/64秒でもよい。熱電対183a、183bの1つがサセプタ132から脱離した場合、一例では、その熱電対の4000mJ/℃の比が約0.5秒以内に超えることが見出された。このように、カットオフ比が4000mJ/℃に設定されているこの例では、電力の供給は約0.5秒以内に中断され、サセプタ132の実質的な過熱は回避される。
【0198】
図20は、供給デバイス100を制御する例示的な方法1400のフローチャートである。一例では、方法1400は、コントローラ1001により実行される。ブロック1402で、電力は、サセプタ132を加熱するために電源から供給される。ブロック1404で、所与の期間に亘ってサセプタ132を加熱するのに加熱回路に供給されるエネルギーΔEが決定される。上記のように、どの時点でも、電力は所与の期間中に第1のインダクタ124および第2のインダクタ126のいずれかにのみ供給される。したがって、ブロック1404で測定される電力は、所与の期間中に作動中の第1のインダクタ124および第2のインダクタ126のうちの1つに供給される電力である。これは、例えば、直流電源により加熱回路に供給される直流電圧と直流電流を測定し、これらの値の積を計算して、上記のように決定することができる。例えば、この期間に亘って使用されるエネルギーは、その期間にわたる平均電力を決定し、これにその期間の、例えば1/64秒の作動時間を掛けて決定される。
【0199】
ブロック1406で、サセプタ熱電対183a、183bのうちの1つにより測定される温度変化ΔTはその期間に亘って決定される。温度変化ΔTは、実例によっては、所定の期間中に電力が供給されたインダクタに対応する熱電対により測定された温度変化に対応する。即ち、例えば、所与の期間中に電力が第1のインダクタ124に供給される場合、エネルギーΔEは所与の期間中に第1のインダクタ124に供給されるエネルギーであり、温度変化ΔTは、ある所与の期間中の第1の熱電対183aにより記録される温度変化である。ブロック1408で、全期間に亘って供給されたエネルギーΔEの所与の期間に亘ってそれぞれのサセプタ熱電対183a、183bにより測定された温度ΔTの変化に対する比ΔE/ΔTが決定される。ブロック1410で、比ΔE/ΔTをカットオフ値と比較する。カットオフ値は、ΔE/ΔTに対する閾値であり、これは、上記のように、供給デバイス100のセットアップ中に事前に決定することができる。カットオフ値は、供給デバイス100が正常に動作しているときの比ΔE/ΔTの期待値よりも大きくてもよい。カットオフ値は、期待値よりも所定のマージン、例えば、約500mJ/℃または約1000mJ/℃のマージンだけ大きくなる場合がある。
【0200】
ブロック1410で、コントローラ1001は比ΔE/ΔTの決定された値がカットオフ値よりも小さいと決定した場合、この処理はブロック1402に戻り、コントローラ1001は、指定された期間の別の例に対して、サセプタ132を加熱するために電力を供給し続けるように制御する。ただし、ブロック1410で、コントローラ1001が所与の期間の比ΔE/ΔTがカットオフ値以上であると決定した場合、処理はブロック1412に進む。
【0201】
ブロック1412で、コントローラ1001は、例えば0.2~1秒または約0.5秒の所定の時間、インダクタ124、126がサセプタ132を加熱するために作動していたかどうかを決定する。所定の時間の長さは、例えば、いくつかの連続する所定の期間の数を含んでもよい。例えば、ブロック1412で、コントローラ1001は、サセプタ132を1/64秒の32回の連続する期間、合計で0.5秒の間、回路600が加熱するために作動していたかどうかを決定することができる。答えが「いいえ」である場合、ブロック1410で決定された比ΔE/ΔTがカットオフ値を超えているにもかかわらず、処理はブロック1402に戻り、コントローラ1001は引き続きサセプタ132を加熱するように制御する。ブロック1412で実行される工程では、コントローラ1001が例えば、第1のサセプタ領域132aの温度を上昇させるのではなくこの領域132aの温度を維持すべく動作しているときのことを処理1400は考慮に入れることができる。この場合、エネルギーを供給して域132aを加熱することができ、温度の比較的小さな上昇が第1の熱電対183aにより記録される。したがって、カットオフ値を超えるΔE/ΔTの値が得られてもよく、これは、第1のサセプタ領域132aの温度を測定する熱電対183aの動作の障害を必ずしも示してない。
【0202】
別の例では、ΔTおよびΔEが計算される所定の期間は、ブロック1412で使用される時間の長さと同じであってもよい。即ち、一例では、ΔTは、0.5秒の期間にわたる測定温度の変化であり、ΔEはその0.5秒の期間に供給されたエネルギーである。したがって、この例では、ブロック1412で、回路600が前の0.5秒の時間間隔中ずっとサセプタ132を加熱するために作動していたかどうかをコントローラ1001は決定し、答えが「はい」である場合、コントローラ1001はブロック1414に進む。なお、この例では、0.5秒の期間中に、コントローラ1001は、インダクタ124、126のどちらがサセプタ132を加熱するために作動すべきかを1/64秒ごとに一回決定し、したがってコントローラ1001は、インダクタ124、126のうちの1つがその前の32個の1/64秒間隔のそれぞれに対して作動していたことをブロック1412は決定する。
【0203】
ブロック1414で、コントローラ1001は、サセプタ132を加熱するための電力の供給を遮断する。これは、熱電対183a、183bの一方または両方が所定の時間のサセプタ132の温度変化を適切に測定しない場合に、サセプタ132の過熱を防止し得る安全機構として機能する。
【0204】
上記実例では、コントローラ1001は、サセプタ132の温度および回路600に供給されるエネルギーに基づいて所定の基準が満たされるかどうかを決定することで、説明された安全機能を実装するように構成される。他の実例では、コントローラ1001は、供給デバイス100で測定された異なる温度を用いて、1つ以上の所定の基準に基づいて、加熱回路へのエネルギーの供給を停止するなどの制御動作を行うかどうかを決定してもよい。測定された温度上昇と加熱回路に供給されるエネルギー量との比較に基づいて、供給デバイス100の温度を測定する際の障害を示す基準が満たされている場合、上記の手順は供給デバイス100の他の場所で使用することができる。
【0205】
上記の例は、例示的な誘導加熱装置100のコントローラ1001は温度の測定に伴う障害を示す1つ以上の所定の基準が満足されれば、サセプタを加熱するエネルギーの供給を停止する手順を実行するように構成される例を説明した。しかしながら、他の例では、上記の手順は、誘導加熱回路を含むデバイスとは異なる種類のエアロゾル発生デバイスのコントローラにより行われてもよい。例えば、上記の例示的な手順は、誘導加熱回路ではない加熱回路を含むエアロゾル発生デバイスに応用することができる。そのような例では、加熱回路は、電流が前記抵抗性加熱素子を通過するときにエアロゾル発生材を加熱する熱を生成する1つ以上の抵抗性加熱素子を含み得る。一例では、温度感知装置は、1つ以上の抵抗性加熱素子の温度を感知する温度センサを含み、そのような温度センサは、通常の使用中に前記加熱素子に取り付けられるか、またはその近くに取り付けられる。そのような装置のコントローラは、
図20を参照して上に説明した手順により、温度センサの1つが発熱体から外れるなど、配置に関する障害を決定するように構成することができる。
【0206】
上記の例は、熱電対183a、183bの測定された温度上昇に依存する所定の基準を決定するコントローラ1001を説明している。他の例では、コントローラ1001は、例えば、所定期間に亘って熱電対183a、183bで温度の低下を測定し、その期間に亘ってサセプタ132を加熱するためにエネルギーが供給されたとコントローラが判断した場合、熱電対183a、183bによるサセプタ132の温度感知で障害が発生したと判断してもよい。
【0207】
本明細書で説明される特定の方法は、非一時的な記憶媒体上に格納可能な非一時的なコンピュータプログラムコードによって実装される。例えば、特定の例では、コントローラ1001は、その上に格納された一組のコンピュータ可読命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と、コントローラ1001によって実行されるときに本明細書に記載の方法を実行するプロセッサとを備えてもよい。コントローラ1001は1台以上のプロセッサで構成される。例えば、一部の例では上記のようにコントローラ1001は、プログラム可能なマイクロ処理装置である。コントローラ1001は、一組の機械可読命令、例えば、コンピュータコードの形式で、機械可読命令を含む記憶媒体を含み、コントローラ1001によって実行されると、本明細書に記載の方法が実行される。
【0208】
本明細書に記載の回路例のいくつかは、特定の切替機能のためにシリコンFETを利用するが、他の適切な部品をそのようなFETの代わりに使用することができる。例えば、炭化ケイ素、SiC、または窒化ガリウム、GaNなどの広バンドギャップ材料を含む部品を使用することができる。このような部品は、一部の例ではFETの場合があるが、他の例では高電子移動度トランジスタ(HEMT)の場合がある。このような部品は、シリコンFETよりも高速で降伏電圧が高い場合があり、これは場合によっては有利となる。
【0209】
上記の実施形態は、本発明の説明のための例として理解されるべきである。本発明のさらなる実施形態が想定される。当然だが、任意の1つの実施形態に関して記載された任意の特徴は、単独、または記載された他の特徴と組み合わせて使用され、また、他の任意の実施形態の1つ以上の特徴、または他の実施形態のいずれか任意の組み合わせと組み合わせて使用できる。さらに、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記に記載されていない均等物および修正を使用することもできる。